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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149966
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20220929BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052331
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】樫野 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
3B096AC14
(57)【要約】
【課題】シートヒータのレイアウトの自由度を向上させる。
【解決手段】乗物用シート10が、乗員が着座するシート本体と、シート本体に設けられ、発熱体によってシート本体の座面を加熱するシートヒータSHと、シートヒータSHに電力を供給する無線給電機構50と、を備えており、無線給電機構50は、電源部2からの電力供給を受ける送電部51と、送電部51から無線で電力供給を受ける受電部52と、を有している。受電部52は、シートヒータSHにおける発熱体として機能する。又は、受電部52は、シートヒータSHにおける発熱体と一体的に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体に設けられ、発熱体によって前記シート本体の座面を加熱するシートヒータと、
前記シートヒータに電力を供給する無線給電機構と、を備えており、
前記無線給電機構は、
電源部からの電力供給を受ける送電部と、
前記送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有しており、
前記受電部は、前記シートヒータにおける前記発熱体として機能することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体に設けられ、発熱体によって前記シート本体の座面を加熱するシートヒータと、
前記シートヒータに電力を供給する無線給電機構と、を備えており、
前記無線給電機構は、
電源部からの電力供給を受ける送電部と、
前記送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有しており、
前記受電部は、前記シートヒータにおける前記発熱体と一体的に接続されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
前記送電部と前記受電部は、前記シート本体の表裏方向に間隔を空けて、かつ、前記シート本体の表裏方向においてラップして配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記送電部と、当該送電部から無線で電力供給を受ける前記受電部の個数の比が、1:1又は1:N(Nは2以上の正の整数)となっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記シート本体は、
骨格を構成するシートフレームと、
前記シートフレームによって支持されるパッドと、
前記シートフレーム及び前記パッドを被覆するシートカバーと、を備えており、
前記発熱体は、前記シートカバーの内側に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記送電部と前記受電部は、前記シート本体の表裏方向に間隔を空けて、かつ、前記シート本体の表裏方向においてラップして配置されており、
前記受電部は、前記パッドの表面側に配置される第一部位と、前記パッドの裏面側に配置される第二部位と、を有しており、
前記送電部と、前記受電部における前記第二部位がラップして配置されていることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記受電部は、前記第一部位と前記第二部位とを連結する第三部位を有しており、
前記パッドには、当該パッドの表裏方向に沿って前記第三部位が通される貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートフレームは、左右の骨格を構成するサイドフレームを有しており、
前記送電部は、前記サイドフレームに沿って取り付けられていることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記送電部は、前記サイドフレームの左右方向内側面に取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シート本体は、前記シートカバーの一部が前記パッドに形成された凹溝内に吊り込まれることで形成された表面の凹みを有しており、
前記発熱体は、前記凹みを避けて配置されていることを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートにおけるシートカバーの内側にシートヒータを配置することにより乗物用シートの座面を加熱する技術が知られている。例えば特許文献1には、シートヒータが、通電されて熱を帯びる金属製のヒータ線を備え、当該ヒータ線が、左右に蛇行しながらシートクッションの前後方向又はシートバックの上下方向に延在して配置された乗物用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-052498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートカバーは、シートクッション及びシートバックにおけるパッドの表面に密着した状態で装着させる必要があるため、パッド表面に凹溝などの窪みを形成し、この凹溝にシートカバーの縫合部を吊り込んで装着させている。このとき、シートカバーの内側に配置されるヒータ線は一繋ぎの閉回路の状態で、車体側の電線と繋がるコネクタと接続されているため、パッドの凹溝を跨いで配置される場合がある。
ところが、パッドにおける凹溝の部分は、その周囲の部分よりも凹んだ状態に形成されて変形しやすく、シートカバーの縫合部の吊り込み処理も行われ、構造的に複雑な箇所となっている。そのため、シートカバーの内側にシートヒータを配置する際は、ヒータ線の断線などに留意しなければならず、シートヒータのレイアウトの自由度が制限されてしまう場合があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、シートヒータのレイアウトの自由度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、乗物用シートであり、
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体に設けられ、発熱体によって前記シート本体の座面を加熱するシートヒータと、
前記シートヒータに電力を供給する無線給電機構と、を備えており、
前記無線給電機構は、
電源部からの電力供給を受ける送電部と、
前記送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有しており、
前記受電部は、前記シートヒータにおける前記発熱体として機能することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、乗物用シートであり、
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体に設けられ、発熱体によって前記シート本体の座面を加熱するシートヒータと、
前記シートヒータに電力を供給する無線給電機構と、を備えており、
前記無線給電機構は、
電源部からの電力供給を受ける送電部と、
前記送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有しており、
前記受電部は、前記シートヒータにおける前記発熱体と一体的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部と前記受電部は、前記シート本体の表裏方向に間隔を空けて、かつ、前記シート本体の表裏方向においてラップして配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部と、当該送電部から無線で電力供給を受ける前記受電部の個数の比が、1:1又は1:N(Nは2以上の正の整数)となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シート本体は、
骨格を構成するシートフレームと、
前記シートフレームによって支持されるパッドと、
前記シートフレーム及び前記パッドを被覆するシートカバーと、を備えており、
前記発熱体は、前記シートカバーの内側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部と前記受電部は、前記シート本体の表裏方向に間隔を空けて、かつ、前記シート本体の表裏方向においてラップして配置されており、
前記受電部は、前記パッドの表面側に配置される第一部位と、前記パッドの裏面側に配置される第二部位と、を有しており、
前記送電部と、前記受電部における前記第二部位がラップして配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の乗物用シートにおいて、
前記受電部は、前記第一部位と前記第二部位とを連結する第三部位を有しており、
前記パッドには、当該パッドの表裏方向に沿って前記第三部位が通される貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シートフレームは、左右の骨格を構成するサイドフレームを有しており、
前記送電部は、前記サイドフレームに沿って取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部は、前記サイドフレームの左右方向内側面に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項5から9のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シート本体は、前記シートカバーの一部が前記パッドに形成された凹溝内に吊り込まれることで形成された表面の凹みを有しており、
前記発熱体は、前記凹みを避けて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、送電部から無線で電力供給を受ける受電部が、シートヒータにおける発熱体として機能するので、送電部から無線で電力供給を受けられる範囲で受電部の配置を変更できる。これにより、シートヒータのレイアウトの自由度を向上することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、送電部から無線で電力供給を受ける受電部が、シートヒータにおける発熱体と一体的に接続されているので、送電部から無線で電力供給を受けられる範囲で受電部の配置を変更できるとともに、受電部との接続が断たれない範囲で発熱体の配置を変更できる。これにより、シートヒータのレイアウトの自由度を向上することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、送電部がシート本体の表面から離れて配置されていても、送電部と受電部は、シート本体の表裏方向においてラップして配置されているので、受電部は、送電部から無線で電力供給を受けることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、送電部と、当該送電部から無線で電力供給を受ける受電部の個数の比が、1:1又は1:N(Nは2以上の正の整数)となっているので、送電部に対する受電部の個数においても自由度が向上する。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、発熱体が、シートカバーの内側に配置されているので、発熱体によってシート本体の表面を温めやすい。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、送電部と、受電部における第二部位がラップして配置されているので、送電部からの無線での電力供給を第二部位で受けて、パッドの表面側に配置される第一部位によってシート本体の表面を温めることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、パッドには、当該パッドの表裏方向に沿って受電部における第三部位が通される貫通孔が形成されているので、たとえパッドが変形しても、第一部位と第二部位とを連結する第三部位によって、第一部位と第二部位との位置ずれを抑制できる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、送電部は、シートフレームにおけるサイドフレームに沿って取り付けられているので、送電部は、シート本体の左右方向中央から左右にずれた位置に配置されることとなり、シート本体に着座する乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、送電部は、シートフレームにおけるサイドフレームの左右方向内側面に取り付けられているので、例えば左右方向外側面などに取り付けられる場合に比して、シート本体の小型化に貢献できる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、発熱体は、シート本体の表面に形成された凹みを避けて配置されているので、当該凹みに跨って発熱体を配置する場合の構造的な制限を受けにくく、シートヒータのレイアウトの自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】シートヒータを搭載した乗物用シートの概要を説明する側面図である。
図2】シートフレームの構成を示す斜視図である。
図3】シートクッションフレームに対する無線給電機構の配置例を示す平面図である。
図4】シートクッションに対する受電部の配置例を示す平面図である。
図5】シートバックに対する受電部の配置例を示す正面図である。
図6】シートヒータ及び無線給電機構の変形例について説明する図である。
図7】シートヒータ及び無線給電機構の変形例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0028】
また、以下に説明する乗物用シートは、船舶、飛行機、スノーモービル、水上バイク等の乗物用シートを含むが、主に車両用シートを指すものとし、車両は、跨座式又は非跨座式の自動二輪車や自動車(乗用車)だけでなく、自転車、原動機付自転車、建設車両、軍用車両、産業車両、鉄道車両、その他にも耕運機やトラクター等の農業用の車両等が挙げられる。そして、乗物用シートには乗員が着座する。
本実施形態においては、自動車における乗物用シート10を例に挙げて説明する。
【0029】
乗物用シート10は、シート本体として、人の大腿部及び臀部を支持するシートクッション11と、下端部がシートクッション11に支持され、かつ背凭れとなるシートバック12と、シートクッション11に対してシートバック12を傾動させるリクライニング機構13と、人の頭部を支持するヘッドレスト14と、を少なくとも備える。このようなシート本体は、自動車の車体1に固定される支持ベース16によって支持されている。
また、必要に応じて、人の腕部を支持するアームレストや、人の脚部を支持するオットマン等の補助支持部が設けられる。
なお、支持ベース16は、シート本体を少なくとも前後方向(及び左右方向)にスライド移動させるスライド機構と、シート本体の高さを調節する高さ調節機構と、を有する。
【0030】
乗物用シート10は、骨格を構成するシートフレーム20と、シートフレーム20に支持されたパッド30が、表皮となるシートカバー40で被覆されることによって構成されている。
シートカバー40は、複数のカバー部材が縫合されて構成されている。また、シートカバー40は、シートクッション11及びシートバック12におけるパッド30の表面に密着した状態で装着させる必要があるため、パッド30の表面には、シートカバー40の縫合部を収納できる凹溝が形成されている。シートカバー40の縫合部は裏側(シートクッション11の場合は下方、シートバック12の場合は後方)から引っ張られる状態で凹溝に収納される。なお、シートカバー40の縫合部が裏側から引っ張られる状態を維持するために、シートフレーム20に係合するクリップ等が適宜用いられている。
このようにシートカバー40の縫合部がパッド30の凹溝に収納されて、シートクッション11及びシートバック12の表面に凹凸(凹み)が生じた部位を、以下、吊り込み部11a,12aと称する(図4図5参照)。
【0031】
シートフレーム20及びパッド30には、乗物用シート10に対して様々な機能を付与するために必要な電装品や制御機器等が設けられる。シートカバー40は、これら電装品や制御機器等も被覆している。
【0032】
シートフレーム20は、図2に示すように、シートクッション11の骨格を構成するシートクッションフレーム21と、シートバック12の骨格を構成するシートバックフレーム22と、ヘッドレスト14の骨格を構成するヘッドレストフレーム(図示省略)と、を備える。
【0033】
シートクッションフレーム21上にはパッド30が設けられ、これらシートクッションフレーム21及びパッド30は、シートカバー40によって被覆される。
【0034】
シートクッションフレーム21は、左右一対のクッションサイドフレーム21a,21bと、バックパイプフレーム21cと、パンフレーム21dと、受圧部材21eと、を有する。
【0035】
左右一対のクッションサイドフレーム21a,21bは、前後方向に長尺に形成されており、後端部において、リクライニング機構13を介してシートバックフレーム22と連結される。
【0036】
バックパイプフレーム21cはパイプ材である。バックパイプフレーム21cは、上方に湾曲した左右一対のクッションサイドフレーム21a,21bの後端部間に架け渡されて、左右一対のクッションサイドフレーム21a,21bの後端部を連結している。
【0037】
パンフレーム21dは、乗員の荷重を受ける金属製又は樹脂製の板材からなる受圧部材であって、各クッションサイドフレーム21a,21bの前端部を連結しており、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の大腿部の下方に位置している。
【0038】
受圧部材21eは、例えばSバネによって構成されており、後端部がバックパイプフレーム21cに引っ掛けられ、前端部がパンフレーム21dにおける後端部に引っ掛けられている。この受圧部材21eは、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の臀部の下方に位置している。
【0039】
シートバックフレーム22の前側にはパッド30が設けられ、これらシートバックフレーム22及びパッド30は、シートバック12の表面を構成するシートカバー40によって被覆される。
【0040】
シートバックフレーム22は、左右一対のバックサイドフレーム22a,22bと、アッパーフレーム22cと、ロアフレーム22dと、受圧部材22eと、一対のホルダー22fと、を有する。
【0041】
左右一対のバックサイドフレーム22a,22bは、上下方向に長尺に形成されており、下端部において、リクライニング機構13を介してシートクッションフレーム21と連結される。
【0042】
アッパーフレーム22cはパイプ材であり、コ字状に折曲形成されている。そして、左右の端部(下端部)が、左右一対のバックサイドフレーム22a,22bにおける上端部に対して溶接されて接合され、各バックサイドフレーム22a,22bにおける上端部を連結している。
なお、本実施形態におけるアッパーフレーム22cはパイプ材であるとしたが、金属板を板金加工することによって形成されたものであってもよい。
【0043】
ロアフレーム22dは、金属板を板金加工することによって形成されたものであり、左右の端部が、左右一対のバックサイドフレーム22a,22bにおける下端部の後部側に対して溶接されて接合され、各バックサイドフレーム22a,22bにおける下端部を連結している。
【0044】
受圧部材22eは、例えばSバネによって構成されており、左右の端部が、左右一対のバックサイドフレーム22a,22bの左右方向内側に取り付けられている。この受圧部材22eは、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の背中の後方に位置している。
【0045】
一対のホルダー22fは、ヘッドレスト14におけるピラーが差し込まれるヘッドレストガイドを保持する筒状体であり、アッパーフレーム22cの中央部において左右に離間して配置されている。
【0046】
以上のように構成された乗物用シート10には、図1に示すように、電装品として、乗物用シート10の座面を加熱するシートヒータSHが設けられている。より詳細には、乗物用シート10のうち、シートクッション11とシートバック12におけるシートカバー40の内側に、シートヒータSHが設けられている。
シートヒータSHは、発熱体への給電を無線給電機構50によって行うものであり、無線給電機構50は、送電部51と、受電部52と、を備える。
【0047】
ここで、無線給電機構50が、無線(すなわち、非接触)で電力を供給する方式(無線給電方式)としては、例えば電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式、電波受信方式などが挙げられる。
電磁誘導方式は、送信側コイルと受信側コイルを接近させた状態で送信側コイルに電流を流すことで送信側コイルと受信側コイルとの間に誘導磁束を発生させ、この誘導磁束を媒介にして受信側コイルに誘導起電力を生じさせる方式である。
磁界共鳴方式とは、送電側と受電側にコイルとコンデンサを埋め込み、それぞれの共振器を磁界共鳴させて、電力を供給する方式である。
電界結合方式とは、送電側と受電側にそれぞれ電極を設置し、それぞれの電極が近接したときに発生する電界を利用して電力を供給する方式である。
電波受信方式とは、送電側で電流を電磁波に変換して受電側に送ることによって電力を供給する方式である。この電波受信方式では、受電側は、アンテナから電磁波を受信し、整流回路を通じて直流電流に変換し、電力として利用する。
【0048】
本実施形態においては、無線給電方式として、電磁誘導方式が採用されている。
送電部51は、筐体の内部に送信側コイルが設けられて構成されており、車体1側から電力供給を受ける。
受電部52は、面状の基材に受信側コイルが配置固定されて構成されており、送電部51から無線で電力供給を受ける。より詳細には、車体1側から送電部51に供給された電力によって発生した誘導磁束を媒介にして、受電部52に起電力を生じさせている。
【0049】
送電部51と受電部52との間には、例えば金属製の無線給電を阻害する障害物が存在しないか、若しくは、磁束が通過する位置に障害物が配置されないようにする。
また、送電部51と受電部52は、良好な送電効率を確保するために、なるべく一定間隔(一定距離)を保つように配置されている。すなわち、乗物用シート10に乗員が着座してパッド30の変形が起きても、送電部51と受電部52の間隔はなるべく変わらないようにすることが望ましい。
また、送電部51と受電部52との間隔は、良好な送電効率の確保と、送電部51の小型化を図るため、なるべく最短となるように配置されている。
さらに、送電部51と受電部52は、良好な送電効率を確保するために、側面視においてなるべく平行となるように配置されている。
加えて、送電部51と受電部52は、良好な送電効率を確保するために、なるべく縦横方向の位置ずれが小さくなるように配置されている。すなわち、シート本体の表面を垂直方向から見た場合の、送電部51と受電部52との縦方向及び横方向の位置ずれを小さくすることが望ましく、より詳細には、送電部51と受電部52はラップするように配置されている(後述する)。
【0050】
送電部51における筐体は、少なくとも受電部52側の面が、送電部51と受電部52との間の無線給電を阻害しない例えば樹脂等の材料によって構成されている。
また、送電部51は、シートクッションフレーム21における左右一対のクッションサイドフレーム21a,21bの左右方向内側面と、シートバックフレーム22における左右一対のバックサイドフレーム22a,22bの左右方向内側面に取り付けられている。
【0051】
送電部51の取り付け位置は、上記に限られるものではなく、図3のシートクッションフレーム21の例に示すように、クッションサイドフレーム21a,21bの上面や、クッションサイドフレーム21a,21bの左右方向外側面に取り付けられてもよい。
シートバックフレーム22の場合も、バックサイドフレーム22a,22bの前面や、バックサイドフレーム22a,22bの左右方向外側面に取り付けられてもよい。
また、例えば、クッションサイドフレーム21a,21bの左右方向内側面と、クッションサイドフレーム21a,21bの左右方向外側面の双方に取り付けられてもよい。
【0052】
送電部51の取り付け位置については、シートクッションフレーム21の場合、バックパイプフレーム21cやパンフレーム21d、受圧部材21eの上面側に設けられてもよい。シートバックフレーム22の場合も、アッパーフレーム22cやロアフレーム22d、受圧部材22eの前面側に設けられてもよい。ただし、乗物用シート10に着座する乗員の快適性を損なわない工夫が望まれる。
【0053】
以上のような送電部51は、シートクッション11及びシートバック12におけるパッド30に形成された凹部又は切欠部(図示省略)に嵌め込まれて設けられている。そして、パッド30と共にシートカバー40によって被覆されている。パッド30に内包されるような状態で送電部51が設けられるので、送電部51によって、乗物用シート10に着座する乗員の快適性が損なわれにくい。
【0054】
本実施形態における受電部52は、シートヒータSHにおける発熱体を構成している。
すなわち、受電部52は、送電部51から無線で電力供給を受ける機能を有するとともに、通電することによって発熱する機能を有する。
より具体的に説明すると、受電部52における受信側コイルは、通電可能な金属製のヒータ線(電熱線)によって構成されており、当該ヒータ線が、そのまま受信側コイルとして機能するようになっている。
【0055】
このような受電部52は、シートクッション11及びシートバック12のそれぞれに対して複数個(枚)ずつ設けられている。また、本実施形態においては、シートクッション11及びシートバック12のそれぞれに対し、送電部51が左右に一つずつ設けられている。そして、片側の一つの送電部51に対して、複数の受電部52が割り当てられて設けられている。すなわち、本実施形態においては、送電部51と、当該送電部51から無線で電力供給を受ける受電部52の個数の比が、1:N(Nは2以上の正の整数)となっている。ただし、これに限られるものではなく、送電部51と、当該送電部51から無線で電力供給を受ける受電部52の個数の比は、1:1であってもよい。
【0056】
また、本実施形態における受電部52は、基材が、図3に示すように、平面視において台形状に形成されている。ただし、基材の形状は、台形以外の矩形状でもよいし、円形状でもよく、特に限定されるものではない。すなわち、基材の形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
ヒータ線は、このような基材の上面に、例えば接着剤によって固定されているが、基材の下面に固定されてもよいし、上下の基材に挟まれて固定されてもよいし、一枚の基材の内部に縫い込まれるような状態で設けられてもよい。
【0057】
複数の受電部52は、送電部51とラップするように配置されている。
すなわち、シートクッション11においては、上方から下方に向かって投影視した場合に、複数の受電部52が、左右一対のクッションサイドフレーム21a,21bに取り付けられた送電部51と重なるように配置されている(図3参照)。
また、シートバック12においては、前方から後方に向かって投影視した場合に、複数の受電部52が、左右一対のバックサイドフレーム22a,22bに取り付けられた送電部51と重なるように配置されている。
換言すれば、送電部51は、上方(前方)から下方(後方)に向かって投影視した場合に、複数の受電部52と重なるような位置取りで配置されるのはもちろんのこと、複数の受電部52と重なることが可能な形状やサイズに設定されている。
同様に、複数の受電部52も、送電部51と重なることが可能な形状やサイズに設定されている。複数の受電部52の形状やサイズは個々に異なっていてもよい。
【0058】
複数の受電部52は、図4及び図5に示すように、シートクッション11及びシートバック12における吊り込み部11a,12aを避けて、パッド30の表面側(乗員側)に配置されている。
また、シートクッション11において、複数の受電部52は、シートクッション11の両サイドにおける盛り上がり部分であるサイドボルスター11b(土手ともいう)よりも左右方向中央側の箇所に配置されている。なお、サイドボルスター11bの箇所に配置されてもよい。
シートバック12においては、複数の受電部52は、シートバック12の両サイドにおける盛り上がり部分であるサイドボルスター12bの箇所と、サイドボルスター12bよりも左右方向中央側の箇所の双方に配置されている。
【0059】
以上のように構成されたシートヒータSHは、送電部51が車体1側から電力供給を受ける。そのため、図示はしないが、送電部51は、車体1に設けられた電源部2及びアース3と接続されたコネクタ4(インバータ)を有する(図6参照)。
送電部51は、当該送電部51から受電部52への電圧をコントロールして受電部52の温度調整を行うコントローラを更に有する。
また、電源部2と送電部51との間には、電源部2から送電部51への電力供給をオンオフするためのオンオフスイッチが設けられているものとする。電源部2が、自動車の制御装置を構成するECU(Electronic Control Unit)によって制御されるものである場合、オンオフスイッチは、電源部2と送電部51との間に設けられる必要はない。すなわち、例えば自動車用ナビゲーションシステムに電源部2を操作するボタンを表示したり、インストルメントパネル(いわゆるインパネ)周りに電源部2を操作するスイッチを設けたりして、送電部51への電力供給をオンオフできるようにしてもよい。オンオフスイッチと同様に、コントローラも、自動車用ナビゲーションシステムにボタンを表示したり、インパネ周りにスイッチを設けたりしてもよい。
さらに、オンオフスイッチやコントローラは、シートクッション11用とシートバック12用を別個に用意してもよい。
複数の受電部52は温度センサを有していてもよく、温度センサのセンシング結果を、電源部2又は送電部51の制御に利用してもよい。
【0060】
また、複数の受電部52は、上記のように通電可能な金属製のヒータ線(電熱線)によって構成されており、当該ヒータ線が、そのまま受信側コイルとして機能するようになっている。そのため、電源部2から磁界に一度変換し、シート本体側で磁界から電気に変換する場合の変換ロスの熱を、シートヒータSHの熱としてそのまま利用できるようになっている。
【0061】
以上のような乗物用シート10は、シートヒータSHによって座面を加熱することができる。これにより、乗物用シート10に着座した乗員に対し、大腿部や臀部、腰から背中にかけての範囲で温もりを感じさせることができる。
【0062】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本実施形態における乗物用シート10は、乗員が着座するシート本体と、シート本体に設けられ、発熱体によってシート本体の座面を加熱するシートヒータSHと、シートヒータSHに電力を供給する無線給電機構50と、を備えており、無線給電機構50は、電源部2からの電力供給を受ける送電部51と、送電部51から無線で電力供給を受ける受電部52と、を有しており、受電部52は、シートヒータSHにおける発熱体として機能するので、送電部51から無線で電力供給を受けられる範囲で受電部52の配置を変更できる。これにより、シートヒータSHのレイアウトの自由度を向上することができる。
【0063】
また、送電部51と受電部52は、シート本体の表裏方向に間隔を空けて配置されているので、送電部51はシート本体の表面から離れて配置されることになる。さらに、送電部51と受電部52は、シート本体の表裏方向においてラップして配置されているので、送電部51がシート本体の表面から離れて配置されていても、受電部52は、送電部51から無線で電力供給を受けることができる。
【0064】
また、送電部51と、当該送電部51から無線で電力供給を受ける受電部52の個数の比が、1:1又は1:N(Nは2以上の正の整数)となっているので、送電部51に対する受電部52の個数においても自由度が向上する。
【0065】
また、シート本体は、骨格を構成するシートフレーム20と、シートフレーム20によって支持されるパッド30と、シートフレーム20及びパッド30を被覆するシートカバー40と、を備えており、発熱体は、シートカバー40の内側に配置されているので、発熱体によってシート本体の表面を温めやすい。
【0066】
また、送電部51は、シートフレーム20におけるサイドフレーム(クッションサイドフレーム21a,21b、バックサイドフレーム22a,22b)に沿って取り付けられているので、送電部51は、シート本体の左右方向中央から左右にずれた位置に配置されることとなり、シート本体に着座する乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。
【0067】
また、送電部51は、シートフレーム20におけるサイドフレーム(クッションサイドフレーム21a,21b、バックサイドフレーム22a,22b)の左右方向内側面に取り付けられているので、例えば左右方向外側面などに取り付けられる場合に比して、シート本体の小型化に貢献できる。
さらに、送電部51が、シートフレーム20におけるサイドフレーム(クッションサイドフレーム21a,21b、バックサイドフレーム22a,22b)の左右方向外側面に取り付けられる場合は、シートヒータSHによる加熱範囲を外側に広げることができる。
加えて、送電部51が、シートフレーム20におけるサイドフレーム(クッションサイドフレーム21a,21b、バックサイドフレーム22a,22b)の表面側(乗員側)に取り付けられる場合は、サイドボルスター11b,12bに受電部52を配置したときの送電効率を向上させることができる。
【0068】
また、発熱体は、シート本体の表面に形成された凹み(吊り込み部11a,12a)を避けて配置されているので、当該凹みに跨って発熱体を配置する場合の構造的な制限を受けにくく、シートヒータSHのレイアウトの自由度を向上することができる。
【0069】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
また、以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0070】
〔変形例1〕
上記の実施形態においては、受電部52そのものが、シートヒータSHにおける発熱体として機能していたが、本変形例においては、図6に示すように、受電部52が、発熱体52aと一体的に接続されている。
すなわち、本変形例における受電部52は、送電部51から無線で電力供給を受ける機能を有する。換言すれば、本変形例における受電部52は、送電部51から無線で受けた電力を、発熱体52aに向かって流すことができればよい。
【0071】
本変形例における乗物用シート10は、乗員が着座するシート本体と、シート本体に設けられ、発熱体52aによってシート本体の座面を加熱するシートヒータSHと、シートヒータSHに電力を供給する無線給電機構50と、を備えており、無線給電機構50は、電源部2からの電力供給を受ける送電部51と、送電部51から無線で電力供給を受ける受電部52と、を有しており、受電部52は、シートヒータSHにおける発熱体と一体的に接続されているので、送電部51から無線で電力供給を受けられる範囲で受電部52の配置を変更できるとともに、受電部52との接続が断たれない範囲で発熱体52aの配置を変更できる。これにより、シートヒータSHのレイアウトの自由度を向上することができる。
【0072】
〔変形例2〕
本変形例における受電部52は、図7に示すように、パッド30の表面側に配置される第一部位52aと、パッド30の裏面側に配置される第二部位52bと、第一部位52aと第二部位52bとを連結する第三部位52cと、を有している。
換言すれば、受電部52は、パッド30に対する部位として、これら第一部位52a、第二部位52b、第三部位52cを有するものとしている。そのため、本変形例における第一部位52aは、上記の変形例1と同様に発熱体とするが、これに限られるものではなく、上記の実施形態と同様に受電部52そのものが発熱体として機能してもよい。
【0073】
本変形例における第二部位52b及び第三部位52cは、送電部51から無線で電力供給を受ける機能を有しており、送電部51から無線で受けた電力を、発熱体である第一部位52aに向かって流すことができる。
また、受電部52のうち少なくとも第二部位52bは、送電部51とラップして配置されている。そのため、たとえパッド30が変形して第一部位52aが送電部51とラップしていなくても、第一部位52aは、第三部位52cを介して第二部位52bからの電力供給を受けることができる。
【0074】
さらに、パッド30には、当該パッド30の表裏方向に沿って貫通孔30aが形成されており、この貫通孔30aに第三部位52cが通されている。換言すれば、受電部52は、第三部位52cがパッド30に埋め込まれた状態となっている。
パッド30は、図7に示すように、例えば乗員荷重によって変形する。そのため、受電部52のうち第三部位52cも、パッド30の変形に合わせて撓む。これにより、第一部位52aは、第三部位52cを介して第二部位52bからの電力供給を受けることができる。
【0075】
本変形例によれば、送電部51と、受電部52における第二部位52bがラップして配置されているので、送電部51からの無線での電力供給を第二部位52bで受けて、パッド30の表面側に配置される第一部位52aによってシート本体の表面を温めることができる。
【0076】
しかも、パッド30には、当該パッド30の表裏方向に沿って受電部52における第三部位52cが通される貫通孔30aが形成され、この貫通孔30aには第三部位52cが通されているので、たとえパッド30が変形しても、第一部位52aと第二部位52bとを連結する第三部位52cによって、第一部位52aと第二部位52bとの位置ずれを抑制できる。
【符号の説明】
【0077】
1 車体
2 電源部
3 アース
4 コネクタ
10 乗物用シート
11 シートクッション
11a 吊り込み部
12 シートバック
12a 吊り込み部
20 シートフレーム
21 シートクッションフレーム
21a クッションサイドフレーム
21b クッションサイドフレーム
22 シートバックフレーム
22a バックサイドフレーム
22b バックサイドフレーム
30 パッド
30a 貫通孔
40 シートカバー
50 無線給電機構
51 送電部
52 受電部(発熱体)
52a 第一部位(発熱体)
52b 第二部位
52c 第三部位
SH シートヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7