(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149969
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220929BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20220929BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
B60N2/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052334
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】樫野 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、ケーブルの配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減する。
【解決手段】乗物用シート310が、乗員が着座するシート本体と、シート本体に設けられた無線給電機構350と、を備えており、シート本体は、一方の部材と、一方の部材に対し、回転軸を中心にして回動可能に連結された他方の部材と、を有しており、無線給電機構350は、回転軸の周辺領域のうち一方の部材側に配置され、電源部からの電力供給を受ける送電部351と、回転軸の周辺領域のうち他方の部材側に配置され、送電部351から無線で電力供給を受ける受電部352と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体に設けられた無線給電機構と、を備えており、
前記シート本体は、
一方の部材と、
前記一方の部材に対し、回転軸を中心にして回動可能に連結された他方の部材と、を有しており、
前記無線給電機構は、
前記回転軸の周辺領域のうち前記一方の部材側に配置され、電源部からの電力供給を受ける送電部と、
前記回転軸の周辺領域のうち前記他方の部材側に配置され、前記送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記送電部と前記受電部は、前記回転軸の軸方向に沿う方向においてラップして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記送電部及び前記受電部は、前記他方の部材が前記回転軸を中心にして回動動作する軌跡をなぞるようにして配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記送電部と前記受電部のうち少なくとも一方は、前記他方の部材における回動動作の軌跡をなぞる円弧状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記シート本体には、複数の前記無線給電機構が設けられており、
前記複数の無線給電機構のうち、一方の前記無線給電機構における受電部と、他方の前記無線給電機構における送電部と、が給電可能に接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記一方の部材は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションであり、
前記他方の部材は、乗員の背中を支持するシートバックであり、
前記シート本体は、前記シートバックを、前記シートクッションに対し、前記回転軸を中心にして回動可能に連結するリクライニング機構を更に有しており、
前記送電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記シートクッション側に配置され、
前記受電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記シートバック側に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記リクライニング機構は、前記回転軸の周辺領域を被覆するリクライニングカバーを備えており、
前記リクライニングカバーの裏面に、前記送電部が取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記一方の部材は、乗員の背中を支持するシートバックであり、
前記他方の部材は、乗員の腕部を支持するアームレストであり、
前記シート本体は、前記アームレストを、前記シートバックに対し、前記回転軸を中心にして回動可能に連結する角度調整機構を更に有しており、
前記送電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記シートバック側に配置され、
前記受電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記アームレスト側に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シート本体は、骨格を構成するシートフレームを含んで構成されており、
前記送電部と前記受電部のうち、一方は、前記シートフレームの内側面に配置され、他方は、前記シートフレームの外側面に配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記受電部は、前記シート本体に付属する物品に対して給電可能に接続されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年における乗物用シートには多くの電装品や制御機器等が搭載され、車体側からの電力供給や情報通信が不可欠となっている。そのため、車体側からシートクッションやシートバックに対し、通信や電力供給のための多くのケーブルが配線される(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-155139号公報
【特許文献2】特開2010-285082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、通信や電力供給のための多くのケーブルが配線されると、これら多くのケーブルによってスペースが占有されてしまい、電装品や制御機器等を搭載させるにあたってのレイアウトの自由度が制限されてしまう場合があった。
さらに、リクライニング機構の動作時には、シートバック側に配線されたケーブルがその都度折り曲げられることになるので、ケーブルの耐久性を向上させる必要があるが、その分、手間やコストが余計にかかってしまうことになる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、ケーブルの配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、乗物用シートにおいて、
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体に設けられた無線給電機構と、を備えており、
前記シート本体は、
一方の部材と、
前記一方の部材に対し、回転軸を中心にして回動可能に連結された他方の部材と、を有しており、
前記無線給電機構は、
前記回転軸の周辺領域のうち前記一方の部材側に配置され、電源部からの電力供給を受ける送電部と、
前記回転軸の周辺領域のうち前記他方の部材側に配置され、前記送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部と前記受電部は、前記回転軸の軸方向に沿う方向においてラップして配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部及び前記受電部は、前記他方の部材が前記回転軸を中心にして回動動作する軌跡をなぞるようにして配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の乗物用シートにおいて、
前記送電部と前記受電部のうち少なくとも一方は、前記他方の部材における回動動作の軌跡をなぞる円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シート本体には、複数の前記無線給電機構が設けられており、
前記複数の無線給電機構のうち、一方の前記無線給電機構における受電部と、他方の前記無線給電機構における送電部と、が給電可能に接続されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記一方の部材は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションであり、
前記他方の部材は、乗員の背中を支持するシートバックであり、
前記シート本体は、前記シートバックを、前記シートクッションに対し、前記回転軸を中心にして回動可能に連結するリクライニング機構を更に有しており、
前記送電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記シートクッション側に配置され、
前記受電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記シートバック側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の乗物用シートにおいて、
前記リクライニング機構は、前記回転軸の周辺領域を被覆するリクライニングカバーを備えており、
前記リクライニングカバーの裏面に、前記送電部が取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記一方の部材は、乗員の背中を支持するシートバックであり、
前記他方の部材は、乗員の腕部を支持するアームレストであり、
前記シート本体は、前記アームレストを、前記シートバックに対し、前記回転軸を中心にして回動可能に連結する角度調整機構を更に有しており、
前記送電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記シートバック側に配置され、
前記受電部は、前記回転軸の周辺領域のうち前記アームレスト側に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シート本体は、骨格を構成するシートフレームを含んで構成されており、
前記送電部と前記受電部のうち、一方は、前記シートフレームの内側面に配置され、他方は、前記シートフレームの外側面に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記受電部は、前記シート本体に付属する物品に対して給電可能に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、無線給電機構は、回転軸の周辺領域のうち一方の部材側に配置され、電源部からの電力供給を受ける送電部と、回転軸の周辺領域のうち他方の部材側に配置され、送電部から無線で電力供給を受ける受電部と、を有するので、一方の部材側から他方の部材側に電力を供給する場合に無線で行うことができる。これにより、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、一方の部材側から他方の部材側に跨るケーブルの配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減しやすい。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、送電部と受電部は、回転軸の軸方向に沿う方向においてラップして配置されているので、他方の部材が一方の部材に対して回動動作を行っても、受電部は、送電部から無線で電力供給を受けることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、送電部及び受電部は、他方の部材が回転軸を中心にして回動動作する軌跡をなぞるようにして配置されているので、他方の部材が一方の部材に対して回動動作を行っても、受電部は、送電部から無線で電力供給を受けやすい。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、送電部と受電部のうち少なくとも一方は、他方の部材における回動動作の軌跡をなぞる円弧状に形成されているので、他方の部材が一方の部材に対して回動動作を行っても、受電部は、より一層、送電部から無線で電力供給を受けやすくなる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、複数の無線給電機構のうち、一方の無線給電機構における受電部と、他方の無線給電機構における送電部と、が給電可能に接続されているので、一つのシート本体において複数の無線給電機構を連携して使用することができる。これにより、シート本体内部での配線を極力減らすことができ、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、送電部は、リクライニング機構における回転軸の周辺領域のうちシートクッション側に配置され、受電部は、リクライニング機構における回転軸の周辺領域のうちシートバック側に配置されているので、シートクッション側からシートバック側に電力を供給する場合に無線で行うことができる。これにより、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、シートクッション側からシートバック側に跨るケーブルの配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減しやすい。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、回転軸の周辺領域を被覆するリクライニングカバーの裏面に、送電部が取り付けられているので、回転軸の周辺領域に送電部を配置しやすい。また、シート本体側に送電部を取り付けないので、シート本体側に加工を施す必要がなく、送電部を取り付ける上で都合がよい。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、送電部は、アームレストの角度調整機構における回転軸の周辺領域のうちシートバック側に配置され、受電部は、アームレストの角度調整機構における回転軸の周辺領域のうちアームレスト側に配置されているので、シートバック側からアームレスト側に電力を供給する場合に無線で行うことができる。これにより、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、シートバック側からアームレスト側に跨るケーブルの配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減しやすい。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、送電部と受電部のうち、一方は、シートフレームの内側面に配置され、他方は、シートフレームの外側面に配置されているので、送電部と受電部のうち一方を、シート本体の内部側に納めることができ、シート本体の小型化に貢献できる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、受電部は、シート本体に付属する物品に対して給電可能に接続されているので、シート本体に対し、付属する物品による機能を付与して、着座時における快適性の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】乗物用シートの概要を説明する側面図である。
【
図2】リクライニング機構付近の構成を示す側面図である。
【
図3】リクライニング機構付近の構成を示す背面図である。
【
図4】リクライニング機構におけるカバー部の裏面側を示す図である。
【
図6】アームレスト付近の概要を説明する背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0028】
また、以下に説明する乗物用シートは、船舶、飛行機、スノーモービル、水上バイク等の乗物用シートを含むが、主に車両用シートを指すものとし、車両は、跨座式又は非跨座式の自動二輪車や自動車(乗用車)だけでなく、自転車、原動機付自転車、建設車両、軍用車両、産業車両、鉄道車両、その他にも耕運機やトラクター等の農業用の車両等が挙げられる。そして、乗物用シートには乗員が着座する。
本実施形態においては、自動車における乗物用シート310を例に挙げて説明する。
【0029】
乗物用シート310は、シート本体として、人の大腿部及び臀部を支持するシートクッション311と、下端部がシートクッション311に支持され、かつ背凭れとなるシートバック312と、シートクッション311に対してシートバック312を傾動(回動)させるリクライニング機構313と、人の頭部を支持するヘッドレスト314と、人の腕部を支持するアームレスト315と、を少なくとも備える。このようなシート本体は、自動車の車体1に固定される支持ベース316によって支持されている。
また、必要に応じて、人の脚部を支持するオットマン等の補助支持部が設けられる。
なお、支持ベース316は、シート本体を少なくとも前後方向(及び左右方向)にスライド移動させるスライド機構と、シート本体の高さを調節する高さ調節機構と、を有する。
【0030】
リクライニング機構313及びアームレスト315は、シート本体における可動部とされている。すなわち、本実施形態における可動部とは、乗員の身体の部位を支持し、その身体の部位の位置を調整するために動作する機構を指すものとする。
【0031】
乗物用シート310は、骨格を構成するシートフレーム320と、シートフレーム320に支持されたパッド330が、表皮となるシートカバー340で被覆されることによって構成されている。
シートフレーム320及びパッド330には、乗物用シート310に対して様々な機能を付与するために必要な電装品や制御機器等が設けられる。シートカバー340は、これら電装品や制御機器等も被覆している。
【0032】
シートフレーム320は、
図2~
図6に示すように、シートクッション311の骨格を構成するシートクッションフレーム321と、シートバック312の骨格を構成するシートバックフレーム322と、リクライニング機構313を構成するリクライニング構成部材323a,323b,323cと、ヘッドレスト314の骨格を構成するヘッドレストフレーム(図示省略)と、アームレスト315の骨格を構成するアームレストフレーム325と、を備える。
【0033】
シートクッションフレーム321上にはパッド330が設けられ、これらシートクッションフレーム321及びパッド330は、シートカバー340によって被覆される。
【0034】
シートクッションフレーム321は、左右一対のクッションサイドフレーム321aと、バックパイプフレーム321cと、パンフレーム(図示省略)と、受圧部材(図示省略)と、を有する。
【0035】
左右一対のクッションサイドフレーム321aは、前後方向に長尺に形成されており、後端部において、リクライニング機構313を介してシートバックフレーム322と連結される。
【0036】
バックパイプフレーム321cはパイプ材である。バックパイプフレーム321cは、左右一対のクッションサイドフレーム321aの後端部間に架け渡されて、左右一対のクッションサイドフレーム321aの後端部を連結している。
【0037】
パンフレームは、乗員の荷重を受ける金属製又は樹脂製の板材からなる受圧部材であって、各クッションサイドフレーム321aの前端部を連結しており、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の大腿部の下方に位置している。
【0038】
受圧部材は、例えばSバネによって構成されており、後端部がバックパイプフレーム321cに引っ掛けられ、前端部がパンフレームにおける後端部に引っ掛けられている。この受圧部材は、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の臀部の下方に位置している。
【0039】
続いて、シートバックフレーム322の前側にはパッド330が設けられ、これらシートバックフレーム322及びパッド330は、シートバック312の表面を構成するシートカバー340によって被覆される。
【0040】
シートバックフレーム322は、左右一対のバックサイドフレーム322aと、アッパーフレーム322cと、ロアフレーム322dと、受圧部材(図示省略)と、を有する。
【0041】
左右一対のバックサイドフレーム322aは、上下方向に長尺に形成されており、下端部において、リクライニング機構313を介してシートクッションフレーム321と連結される。
【0042】
アッパーフレーム322cはパイプ材であり、コ字状に折曲形成されている。そして、左右の端部(下端部)が、左右一対のバックサイドフレーム322aにおける上端部に対して溶接されて接合され、各バックサイドフレーム322aにおける上端部を連結している。
なお、本実施形態におけるアッパーフレーム322cはパイプ材であるとしたが、金属板を板金加工することによって形成されたものであってもよい。
【0043】
ロアフレーム322dはパイプ材であり、左右の端部が、左右一対のバックサイドフレーム322aにおける下端部の後部側に対して溶接されて接合され、各バックサイドフレーム322aにおける下端部を連結している。
【0044】
受圧部材は、例えばSバネによって構成されており、左右の端部が、左右一対のバックサイドフレーム322aの左右方向内側に取り付けられている。この受圧部材は、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の背中の後方に位置している。
【0045】
続いて、リクライニング構成部材323a,323b,323cによって構成されるリクライニング機構313は、シートクッションフレーム321とシートバックフレーム322を連結させるとともに、シートバックフレーム322をシートクッションフレーム321に対して回動させることが可能となっている。
リクライニング機構313は、リクライニングアジャスタ323aと、ブラケット323bと、軸棒323cと、付勢部材(図示省略)と、を備えている。
【0046】
リクライニングアジャスタ323aは、シートバック312の傾斜角度を調整するための複数の部材からなる角度調整機構であり、シートバックフレーム322における左右一対のバックサイドフレーム322aの側面下部に設けられている。
【0047】
ブラケット323bは、シートクッションフレーム321に一体的に固定されるとともにリクライニングアジャスタ323aに連結されて、シートクッション311とシートバック312とを連結している。これにより、シートクッション311に対するシートバック312の回動を可能としている。
このようなブラケット323bは、金属板を板金加工することによって形成されたものであり、左右一対で設けられている。各ブラケット323bは、シートクッションフレーム321の側面と平行に広がる板状をなしている。
【0048】
軸棒323cは、左右一対のバックサイドフレーム322aにおける下端部と、左右のリクライニングアジャスタ323aと、左右のブラケット323bとを貫通し、シートクッション311に対してシートバック312を回転(回動)可能に支持している。つまり、シートバック312は、軸棒323cを回転軸にして、シートクッション311に対して回動する回動部材である。
軸棒323cの一端には図示しないレバーが取り付けられており、レバーを前後動(又は上下動)させると、レバーの動きに合わせて回動する。
【0049】
付勢部材は、シートバックフレーム322を付勢するものであり、リクライニングアジャスタ323aのバックサイドフレーム322a側に配置されている。本実施形態に係る付勢部材は、軸棒323cを中心に一巻き以上巻かれた巻きバネとなっている。付勢部材の一端はシートバックフレーム322に係合し、他端はブラケット323bに直接又は間接的に係合している。これにより、付勢部材は、シートバックフレーム322を、前方に向かうように付勢している。
【0050】
以上のように構成された本実施形態に係るリクライニング機構313は、図示しないレバーが引かれると、その動きに合わせてリクライニング機構313は、ロックされていない状態となる。この状態をしている間は、シートバックフレーム322を任意の角度に調節することができる。一方、レバーが離されると、リクライニング機構313は、ロックされた状態となる。
【0051】
また、本実施形態におけるリクライニング機構313は、
図1,
図4に示すように、リクライニング機構313と、シートクッション311の側面と、支持ベース316の上端部側面を同時に被覆するリクライニングカバー313aによって被覆されている。
【0052】
続いて、アームレストフレーム325は、表面にパッド330が設けられ、これらアームレストフレーム325及びパッド330は、アームレスト315の表面を構成するシートカバー340によって被覆される。
【0053】
アームレストフレーム325は、上下方向の角度を調整する角度調整機構325aを介して、バックサイドフレーム322aに取り付けられている。すなわち、回動部材であるアームレスト315は、角度調整機構325aによって、シートバックフレーム322に対して上下方向に回転し、その角度を調整できるようになっている。
【0054】
角度調整機構325aは、バックサイドフレーム322aから側方のアームレストフレーム325側に突出する回転軸325bを有している。つまり、アームレスト315は、角度調整機構325aの回転軸325bを中心にして、シートバック312に対して回動する回動部材である。
【0055】
以上のように構成された乗物用シート310には、上記のように乗物用シート310に対して様々な機能を付与するために必要な電装品や制御機器等が設けられる。従来は、
図3に示すように、ケーブル5(ハーネスともいう)によって電源部から電装品まで有線接続していたが、リクライニング機構313やアームレスト315は、回動部材であって、上記のような動作を行う可動部であるため、ケーブル5の省略が望まれていた。
そこで、乗物用シート310には、可動部(リクライニング機構313、アームレスト315)の近傍であって、可動部の動作を阻害しない位置に、電装品や制御機器に対して無線で電力供給を行うための無線給電機構350が設けられる。本実施形態における無線給電機構350は、送電部351と、受電部352と、を備える。
【0056】
ここで、無線給電機構350が、無線(すなわち、非接触)で電力を供給する方式(無線給電方式)としては、例えば電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式、電波受信方式などが挙げられる。
電磁誘導方式は、送信側コイルと受信側コイルを接近させた状態で送信側コイルに電流を流すことで送信側コイルと受信側コイルとの間に誘導磁束を発生させ、この誘導磁束を媒介にして受信側コイルに誘導起電力を生じさせる方式である。
磁界共鳴方式とは、送電側と受電側にコイルとコンデンサを埋め込み、それぞれの共振器を磁界共鳴させて、電力を供給する方式である。
電界結合方式とは、送電側と受電側にそれぞれ電極を設置し、それぞれの電極が近接したときに発生する電界を利用して電力を供給する方式である。
電波受信方式とは、送電側で電流を電磁波に変換して受電側に送ることによって電力を供給する方式である。この電波受信方式では、受電側は、アンテナから電磁波を受信し、整流回路を通じて直流電流に変換し、電力として利用する。
【0057】
本実施形態においては、無線給電方式として、電磁誘導方式が採用されている。
送電部351は、筐体の内部に送信側コイルが設けられて構成されており、車体1側から電力供給を受ける。
受電部352は、筐体の内部に受信側コイルが設けられて構成されており、送電部351から無線で電力供給を受ける。より詳細には、車体1側から送電部351に供給された電力によって発生した誘導磁束を媒介にして、受電部352に起電力を生じさせている。
送電部351及び受電部352における筐体は、
図2,
図5に示すように、円弧状に形成されている。
【0058】
送電部351と受電部352との間には、例えば無線給電を阻害する障害物が存在しないか、若しくは、磁束が通過する位置に障害物が配置されないようにする。
また、送電部351と受電部352は、良好な送電効率を確保するために、なるべく一定間隔(一定距離)を保つように配置されている。
また、送電部351と受電部352との間隔は、良好な送電効率の確保と、送電部351の小型化を図るため、なるべく最短となるように配置されている。
さらに、送電部351と受電部352は、良好な送電効率を確保するために、
図3,
図6に示すように、なるべく平行となるように配置されている。
加えて、送電部351と受電部352は、良好な送電効率を確保するために、なるべく縦横方向の位置ずれが小さくなるように配置されている。より詳細には、送電部351と受電部352はラップするように配置されている(後述する)。
【0059】
送電部351における筐体は、少なくとも受電部352側の面が、送電部351と受電部352との間の無線給電を阻害しない例えば樹脂等の材料によって構成されている。
【0060】
また、リクライニング機構313の場合、送電部351は、
図2に示すように、リクライニング機構313におけるブラケット323bの上縁に配置されている。
リクライニング機構313の場合の送電部351は、リクライニングカバー313aによって側方から被覆されている。
図4は、リクライニングカバー313aの裏面側を示しており、リクライニングカバー313aの上端部における円弧状の部分に対応して送電部351が取り付けられている。すなわち、リクライニングカバー313aの裏面には送電部351が取り付けられ、リクライニングカバー313aによってリクライニング機構313を被覆すると、送電部351は、ブラケット323bの上縁の位置に配置されるようになっている。
なお、リクライニングカバー313aの裏面に取り付けられた送電部351の、円弧状に形成された筐体の弧の角度及び長さは、ブラケット323bの上縁における弧の角度及び長さと略等しく設定されている。
【0061】
アームレスト315の場合、送電部351は、
図5及び
図6に示すように、アームレスト315の基端部に対向するバックサイドフレーム322aの内側面に取り付けられている。バックサイドフレーム322aの内部に配置された送電部351は、パッド330と共にシートカバー340によって被覆される。
バックサイドフレーム322aの内側面に取り付けられた送電部351の、円弧状に形成された筐体の弧の角度及び長さは、アームレスト315の基端部における弧の角度及び長さと略等しく設定されている。
【0062】
なお、送電部351の取り付け位置は、筐体を配置できる隙間が確保できて、かつ、可動部(リクライニング機構313、アームレスト315)の近傍であって、受電部352とラップして配置できれば、上記の箇所(リクライニングカバー313aの裏面、バックサイドフレーム322aの内側面)に限定されるものではない。
例えば上記においては、リクライニングカバー313aの裏面に送電部351が取り付けられるものとしたが、ブラケット323bの上縁に送電部351が取り付けられてもよい。
【0063】
受電部352は、送電部351から無線で電力供給を受ける機能を有する。このような受電部352は、送電部351とラップするように配置されている。また、受電部352は、供給された電力を、自身に接続された電装品や制御機器に対して供給している。
【0064】
すなわち、リクライニング機構313の場合、受電部352は、
図2,
図3に示すように、リクライニング機構313におけるリクライニングアジャスタ323aの上縁及びバックサイドフレーム322aの側面に取り付けられている。
円弧状に形成された筐体の弧の角度及び長さは、リクライニングアジャスタ323aの上縁における弧の角度及び長さと略等しく設定されている。
なお、受電部352は、表面積の広いバックサイドフレーム322aの側面に取り付けられているため、磁界から電気に変換する場合の変換ロスの熱を、表面積の広いバックサイドフレーム322aによって放熱しやすい。
【0065】
アームレスト315の場合、受電部352は、
図5に示すように、アームレスト315における基端部の上縁に取り付けられている。
円弧状に形成された筐体の弧の角度及び長さは、アームレスト315の基端部における弧の角度及び長さと略等しく設定されている。
【0066】
受電部352は、送電部351とラップして配置されているが、双方ともに筐体の形状が可動部の形状に基づくものであるため、可動部であるリクライニング機構313及びアームレスト315が動作した場合も、受電部352と送電部351はラップして配置されることとなる。
要するに、リクライニング機構313の場合、送電部351及び受電部352は、可動部であるリクライニング機構313の動作の軌道(軌跡)をなぞるように形成されるとともに配置されている。
さらに、アームレスト315の場合、送電部351及び受電部352は、可動部であるアームレスト315の動作の軌道(軌跡)をなぞるように形成されるとともに配置されている。
ただし、送電部351と受電部352の形状やサイズを、いずれか一方を大きく、他方を小さく形成して、小さい方が、大きい方の面積の範囲内で移動する場合には、常にラップして配置された状態を維持できるので、送電部351と受電部352の形状やサイズを揃える必要はない。
【0067】
なお、リクライニング機構313の場合における送電部351と受電部352との間隔は、5mm程度に設定されている。
また、アームレスト315の場合においては、送電部351と受電部352との間にバックサイドフレーム322aが介在するため、バックサイドフレーム322aのうち、送電部351と受電部352との間に位置する箇所には開口部を形成したり、当該箇所を非金属で無線給電を阻害しない材料で形成したりして無線給電を確実に行えるようにする。
【0068】
以上のような乗物用シート310は、可動部であるリクライニング機構313やアームレスト315を動作させても、送電部351から受電部352への無線給電が行われ、受電部352に接続された電装品や制御機器への電力供給が確実に行われる。
より詳細に説明すると、車体1側の電源部からの電力は、まず、リクライニング機構313付近の送電部351に供給される。そして、当該送電部351からの電力は、対向する受電部352に無線で供給される。
また、リクライニング機構313近傍の受電部352は、自身に接続された電装品や制御機器に対して電力を供給することができる。また、この受電部352が、アームレスト315付近の送電部351とケーブル接続されていれば、当該送電部351に対して電力を供給することができる。すなわち、一つのシート本体で、複数の無線給電機構350を接続して使用することができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、シート本体のうち、シートクッション311を一方の部材とし、シートバック312を他方の部材とするパターンと、シートバック312を一方の部材とし、アームレスト315を他方の部材とするパターンについて説明したが、その他のパターンであってもよい。例えば、支持ベース316に対して回動して折りたためるシートクッション311のパターンでもよいし、シートバック312に対して回動して角度調整できるヘッドレスト314のパターンでもよい。
【0070】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、無線給電機構350は、回転軸323c,325bの周辺領域のうち一方の部材側に配置され、電源部からの電力供給を受ける送電部351と、回転軸323c,325bの周辺領域のうち他方の部材側に配置され、送電部351から無線で電力供給を受ける受電部352と、を有するので、一方の部材側から他方の部材側に電力を供給する場合に無線で行うことができる。これにより、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、一方の部材側から他方の部材側に跨るケーブル5の配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減しやすい。
【0071】
また、送電部351と受電部352は、回転軸323c,325bの軸方向に沿う方向においてラップして配置されているので、他方の部材が一方の部材に対して回動動作を行っても、受電部352は、送電部351から無線で電力供給を受けることができる。
【0072】
また、送電部351及び受電部352は、他方の部材が回転軸323c,325bを中心にして回動動作する軌跡をなぞるようにして配置されているので、他方の部材が一方の部材に対して回動動作を行っても、受電部352は、送電部351から無線で電力供給を受けやすい。
【0073】
また、送電部351と受電部352のうち少なくとも一方は、他方の部材における回動動作の軌跡をなぞる円弧状に形成されているので、他方の部材が一方の部材に対して回動動作を行っても、受電部352は、より一層、送電部351から無線で電力供給を受けやすくなる。
【0074】
また、複数の無線給電機構350のうち、一方の無線給電機構350における受電部352と、他方の無線給電機構350における送電部351と、が給電可能に接続されているので、一つのシート本体において複数の無線給電機構350を連携して使用することができる。これにより、シート本体内部での配線を極力減らすことができ、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上できる。
【0075】
また、送電部351は、リクライニング機構313における回転軸323cの周辺領域のうちシートクッション311側に配置され、受電部352は、リクライニング機構313における回転軸323cの周辺領域のうちシートバック312側に配置されているので、シートクッション311側からシートバック312側に電力を供給する場合に無線で行うことができる。これにより、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、シートクッション311側からシートバック312側に跨るケーブル5の配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減しやすい。
【0076】
また、回転軸323cの周辺領域を被覆するリクライニングカバー313aの裏面に、送電部351が取り付けられているので、回転軸323cの周辺領域に送電部351を配置しやすい。また、シート本体側に送電部351を取り付けないので、シート本体側に加工を施す必要がなく、送電部351を取り付ける上で都合がよい。
【0077】
また、送電部351は、アームレスト315の角度調整機構325aにおける回転軸325bの周辺領域のうちシートバック312側に配置され、受電部352は、アームレスト315の角度調整機構325aにおける回転軸325bの周辺領域のうちアームレスト315側に配置されているので、シートバック312側からアームレスト315側に電力を供給する場合に無線で行うことができる。これにより、シート本体に設けられる電装品や制御機器等のレイアウトの自由度を向上させるとともに、シートバック312側からアームレスト315側に跨るケーブル5の配線にかかっていた余計な手間やコストを軽減しやすい。
【0078】
また、送電部351と受電部352のうち、一方は、シートフレーム320の内側面に配置され、他方は、シートフレーム320の外側面に配置されているので、送電部351と受電部352のうち一方を、シート本体の内部側に納めることができ、シート本体の小型化に貢献できる。
【0079】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
また、以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0080】
本変形例におけるアームレスト315は、付属品としてリモコン315aを備える。
リモコン315aは、例えば自動車のナビゲーションシステムを操作するためのものであり、アームレスト315aの上面に形成された収納凹部315bに収納できるようになっている。
【0081】
本変形例における送電部351及び受電部352は、可動部に設けられるものではないため、上記の実施形態における送電部351及び受電部352のように円弧状に形成されていない。
【0082】
収納凹部315bの底部には、無線給電機構350における送電部351が設けられており、リモコン315aには、無線給電機構350における受電部352が設けられている。また、リモコン315aには、蓄電可能なバッテリが内蔵されて、受電部352と接続されている。
これにより、リモコン315aは、収納凹部315bから出してワイヤレスで使用することができるので、例えば運転者が運転で手が離せない場合でも、後部座席にいる乗員がリモコン315aを使用し、ナビゲーションシステムの操作を行うことができる。
【0083】
なお、収納凹部315bの底部に設けられた送電部351は、他の無線給電機構350における受電部352とケーブル接続されて、当該他の無線給電機構350における受電部352から電力供給を受けてもよい。
【0084】
本変形例によれば、受電部352は、シート本体に付属する物品(リモコン315a)に対して給電可能に接続されているので、シート本体に対し、付属する物品による機能を付与して、着座時における快適性の向上に貢献できる。
【符号の説明】
【0085】
1 車体
5 ケーブル
310 乗物用シート
311 シートクッション
312 シートバック
313 リクライニング機構
313a リクライニングカバー
314 ヘッドレスト
315 アームレスト
315a 収納凹部
316b リモコン
320 シートフレーム
321 シートクッションフレーム
322 シートバックフレーム
322a バックサイドフレーム
323a リクライニングアジャスタ
323b ブラケット
323c 軸棒
325 アームレストフレーム
325a 角度調整機構
350 無線給電機構
351 送電部
352 受電部