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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149972
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】エアバッグカバー
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2165 20110101AFI20220929BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20220929BHJP
【FI】
B60R21/2165
B60R21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052343
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】高井 一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 千春
(72)【発明者】
【氏名】政次 美徳
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB09
3D054BB11
3D054BB12
3D054BB13
3D054BB16
3D054BB23
3D054BB24
3D054DD11
(57)【要約】
【課題】意匠性を良好にできて、かつ、テア部の破断時に、突出用開口を迅速に形成可能なエアバッグカバーを提供すること。
【解決手段】基材21と、基材の表面側に接着された表皮層と、を有する構成とされて、基材に、肉厚を薄くするような凹部24を線状に配設させるようにして、テア部22が、形成され、テア部の破断時に、基材においてテア部の周縁の部位から構成されるドア部35F,35Rを開かせることにより、突出用開口を形成する構成とされる。テア部が、破断時における表皮層の破断の起点を構成する破断起点構成部22bと、破断起点構成部の両側に配置される一般部22aと、を備える。破断起点構成部が、平面視において、両側の一般部から凹みの開口幅寸法を小さくするように形成される狭小部から、構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面側に接着された表皮層と、を有する構成として、折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、膨張する前記エアバッグによって突出用開口を形成して、前記エアバッグを突出させる構成とし、
前記基材に、肉厚を薄くするような凹部を線状に配設させるようにして、テア部が、形成され、該テア部の破断時に、前記基材において前記テア部の周縁の部位から構成されるドア部を開かせることにより、前記突出用開口を形成する構成のエアバッグカバーであって、
前記テア部が、破断時における前記表皮層の破断の起点を構成する破断起点構成部と、該破断起点構成部の両側に配置される一般部と、を備える構成とされ、
前記破断起点構成部が、平面視において、両側の前記一般部から凹みの開口幅寸法を小さくするように形成される狭小部から、構成されていることを特徴とするエアバッグカバー。
【請求項2】
前記破断起点構成部が、前記表皮層側となる表面側を、平面状として、前記一般部に連ならせるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグカバー。
【請求項3】
前記破断起点構成部が、前記ドア部の開き時における先端側の略中央となる位置に、配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグカバー。
【請求項4】
前記テア部が、
破断時に前記ドア部の開きの先端側を構成する横棒部位と、該横棒部位の両端側から前記横棒部位に対して交差するように延びて破断時に前記ドア部の側縁側を構成する縦棒部位と、を有する構成として、前記破断起点構成部を、前記横棒部位の略中央となる位置に配置させるとともに、
平面視での外形形状を、前記横棒部位の両側に前記扉部を形成可能な略H字形状、前記横棒部位の一方側に前記ドア部を形成可能な略U字形状、あるいは、前記横棒部位の両側に前記ドア部を形成可能なダブルY字形状のいずれかとして、構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグカバー。
【請求項5】
前記表皮層が、平面に沿った方向の破断強度において、脆弱方向と非脆弱方向とを具備する構成とされるとともに、前記横棒部位に対して直交する方向側での破断強度を脆弱とするように、配設されていることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、基材の表面側に接着された表皮層と、を有する構成として、折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、膨張するエアバッグによって突出用開口を形成して、エアバッグを突出させる構成のエアバッグカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグカバーとしては、表皮層を表面側に接着させている基材の裏面側に、裏面側から配設される線状のテア部を有し、このテア部を、エアバッグの膨張時に破断させて、テア部の周縁の部位から構成されるドア部を開かせることにより、突出用開口からエアバッグを突出させる構成のものがあった。(例えば、特許文献1参照)。この種のエアバッグカバーでは、表皮層として、車室内の意匠性の向上のために、破断強度の高いものを使用する場合があり、破断強度の高い表皮層を使用している場合にも、テア部の破断時に、表皮層を円滑に破断させて、突出用開口を迅速に形成する点に、改善の余地があった。
【0003】
また、エアバッグカバーとしては、テア部の破断時に、表皮層に応力集中を生じさせるために、基材の表面側(表皮層側)に、破断時の起点となる突状部を、配設させる構成のものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-157840公報
【特許文献2】特開2004-352179公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載のエアバッグカバーでは、基材における表皮層側の面に、部分的に突出するような突状部を配設させる構成であることから、この突状部を起点として、表皮層を円滑に破断させることができるものの、表皮層の表面を平滑として、意匠性を良好にする点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、意匠性を良好にできて、かつ、テア部の破断時に、突出用開口を迅速に形成可能なエアバッグカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグカバーは、基材と、基材の表面側に接着された表皮層と、を有する構成として、折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、膨張するエアバッグによって突出用開口を形成して、エアバッグを突出させる構成とし、
基材に、肉厚を薄くするような凹部を線状に配設させるようにして、テア部が、形成され、テア部の破断時に、基材においてテア部の周縁の部位から構成されるドア部を開かせることにより、突出用開口を形成する構成のエアバッグカバーであって、
テア部が、破断時における表皮層の破断の起点を構成する破断起点構成部と、破断起点構成部の両側に配置される一般部と、を備える構成とされ、
破断起点構成部が、平面視において、両側の一般部から凹みの開口幅寸法を小さくするように形成される狭小部から、構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時に、基材が、テア部を破断させて、テア部の周縁の部位から構成されるドア部を開かせることにより形成される突出用開口から、エアバッグを膨張させる構成であり、このテア部の破断時に、表皮層も破断させることとなる。このとき、表皮層は、テア部に形成される破断起点構成部を接触させることにより、破断の起点を形成され、この起点から破断を伝搬される構成である。そして、本発明のエアバッグカバーでは、破断起点構成部は、平面視において、両側に配置される一般部よりも、凹みの開口幅寸法を小さく設定される狭小部から構成されており、換言すれば、基材表面に沿った方向側で、一般部に対して部分的に突出するように構成されていることから、テア部の破断当初に、この狭小部の先端(部分的に突出している突出端)を、裏面側から表面側に突き刺すように、表皮層に接触させることにより、表皮層に確実に破断の起点を設けることができて、起点から両側に破断を伝搬させるようにして、表皮層を迅速に破断させることができる。また、本発明のエアバッグカバーでは、破断起点構成部は、平面視において、一般部に対して部分的に開口幅寸法を狭められるような構成とされていることから、基材の表面側(表皮層側)に部分的に突出することを抑制でき、表皮層の表面を平滑として、意匠性を良好にすることができる。
【0009】
したがって、本発明のエアバッグカバーでは、意匠性を良好にできて、かつ、テア部の破断時に、突出用開口を迅速に形成することができる。
【0010】
また、本発明のエアバッグカバーにおいて、破断起点構成部を、表皮層側となる表面側を平面状として、一般部に連ならせるように、構成すれば、破断起点構成部が、基材の表面側から突出することを、確実に防止でき、表皮層の表面側の意匠性を一層良好にすることができて、好ましい。
【0011】
さらに、上記構成のエアバッグカバーにおいて、破断起点構成部を、ドア部の開き時における先端側の略中央となる位置に、配設させる構成とすれば、エアバッグの展開膨張時に、テア部と表皮層とを、ドア部の開きの先端側の略中央から破断させることができることから、ドア部を迅速に開くことが可能となって、好ましい。
【0012】
具体的には、テア部として、
破断時にドア部の開きの先端側を構成する横棒部位と、横棒部位の両端側から横棒部位に対して交差するように延びて破断時にドア部の側縁側を構成する縦棒部位と、を有する構成として、破断起点構成部を、横棒部位の略中央となる位置に配置させるとともに、
平面視での外形形状を、横棒部位の両側に前記ドア部を形成可能な略H字形状、前記横棒部位の一方側に前記ドア部を形成可能な略U字形状、あるいは、前記横棒部位の両側に前記ドア部を形成可能なダブルY字形状のいずれかとして、構成されるものを例示できる。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグカバーにおいて、表皮層を、平面に沿った方向の破断強度において、脆弱方向と非脆弱方向とを具備する構成とするとともに、横棒部位に対して直交する方向側での破断強度を脆弱とするように、配設させる構成とすれば、狭小部の先端(部分的に突出している突出端)を突き刺して破断させる破断初期時に、狭小部の先端が表皮層の脆弱方向に沿って移動することから、表皮層を円滑に破断させることが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態であるエアバッグカバーを使用するエアバッグ装置の概略斜視図である。
図2図1のエアバッグ装置の概略縦断面図である。
図3】実施形態のエアバッグカバーの底面図である。
図4】実施形態のエアバッグカバーに設けられるテア部において、横棒部位の中央側部位を示す部分拡大底面図である。
図5】実施形態のエアバッグカバーにおいて、テア部における一般部の部位を示す部分拡大断面図である。
図6】実施形態のエアバッグカバーにおいて、テア部における破断起点構成部の部位を示す部分拡大断面図である。
図7】実施形態のエアバッグカバーのテア部において、破断起点構成部を形成する突状部の部位を示す部分拡大概略斜視図である。
図8】実施形態のエアバッグカバーのテア部において、破断起点構成部を形成する突状部の部位を示す部分拡大概略正面図である。
図9】テア部の他の例を示す概略底面図である。
図10】テア部のさらに他の例を示す概略底面図である。
図11】テア部を構成する破断起点構成部の変形例を示す部分拡大概略底面図である。
図12】テア部を構成する破断起点構成部のさらなる変形例を示す部分拡大概略底面図である。
図13】テア部を構成する破断起点構成部のさらなる変形例を示す部分拡大概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグカバーは、図1,2に示すように、車両1のインストルメントパネル(インパネ)2に配置されて、助手席用のエアバッグ装置10に、使用されている。インパネ2は、車両1の前席の前方側に配設されるもので、運転席の前方の運転席側部2a、助手席の前方の助手席側部2b、及び、運転席と助手席との間に配設されるセンターコンソールの前方側の中央部2cを、備えて構成され、助手席側部2bの部位を、エアバッグ11(図2参照)の膨張時に、エアバッグ11を円滑に突出させるように突出用開口60を形成するエアバッグカバー20の部位として、構成されている。
【0016】
エアバッグ装置10は、図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ11と、エアバッグ11に膨張用ガスGを供給するインフレーター14と、折り畳まれたエアバッグ11とインフレーター14とを収納して保持するケース15と、折り畳まれて収納されたエアバッグ11を覆うエアバッグカバー20と、を備える構成とされている。ケース15は、図示しないブラケットにより、車両1のボディ側に連結されている。エアバッグカバー20を設けたインパネ2は、外周縁付近等を車両1のボディ側に保持されるとともに、エアバッグカバー20の後述するケース側部41を、ケース15の側壁部17に連結させる構成とされている。
【0017】
エアバッグ11は、詳細な図示を省略するが、膨張完了形状を、前端側にかけて収束させるような略四角錐形状として、前端側の下面に、膨張用ガスGを内部に流入させるための流入用開口11aを、有している。流入用開口11aは、円形に開口して形成されるもので、周縁を、エアバッグ11内に配設されるリテーナ12により押えられて、ケース15の底壁部16に取り付けられている。リテーナ12は、略四角環状とされて、四隅に、下方に延びるボルト12aを突設させている。各ボルト12aは、エアバッグ11の流入用開口11aの周縁、ケース15の後述する底壁部16、及び、インフレーター14の後述するフランジ部14cを貫通して、ナット13を締結されることとなり、リテーナ12は、このボルト12aとナット13とによって、ケース15の底壁部16に、エアバッグ11とインフレーター14とを取付固定している。
【0018】
インフレーター14は、略円柱状として上部に膨張用ガスGを吐出するガス吐出口14bを設けた本体部14aと、本体部14aの外周面から突出する略四角板状のフランジ部14cと、を備えている。
【0019】
ケース15は、略長方形板状の底壁部16と、底壁部16の外周縁から上方に延びる略四角筒形状の側壁部17と、を備えて構成されている。底壁部16には、インフレーター14の本体部14aを下方から挿入させる挿通孔16aが、開口され、挿通孔16aの周縁には、リテーナ12の各ボルト12aを貫通させる貫通孔(図符号省略)が、配設されている。そして、底壁部16には、上述したごとく、エアバッグ11の流入用開口11aの周縁やインフレーター14のフランジ部14cが、リテーナ12のボルト12aとナット13とによって、取付固定されている。側壁部17には、エアバッグカバー20の後述するケース側部41の係止孔42に係止させるための係止フック17aが、形成されている。係止フック17aは、側壁部17の前後の部位に配設されるとともに、左右方向に沿って複数個並設されている。
【0020】
エアバッグカバー20は、基材21と、基材21の表面側に接着された表皮層50と、を有する構成とされている。基材21は、ポリプロピレン等からなる合成樹脂製とされている。このエアバッグカバー20は、助手席側部20bの部位では、基材21と表皮層50とに加えて、ケース15と連結される連結部材40を、備える構成である。連結部材40は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等からなる合成樹脂製である。
【0021】
連結部材40は、ケース15の側壁部17を囲むように配設される略四角筒形状のケース側部41と、基材21の裏面側に結合されるドア側部44と、を備える構成とされている。ケース側部41において、前後方向側で対向する前壁部41aと後壁部41bとには、ケース15の側壁部17に形成される係止フック17aを挿入させて係止させるための係止孔42が、形成されている。ドア側部44(44F,44R)は、実施形態の場合、基材21に設けられる後述するドア部35F,35Rに対応して、前後方向側で2個配設されている。具体的には、ドア側部44F,44Rは、後述するテア部22の下方の領域を除くように、前後方向側で離隔され、左縁側と右縁側とをケース側部41から分離させるようにして、配設されるもので(図3参照)、それぞれ、基材21のドア部35F,35Rの裏面側に溶着されている。具体的には、各ドア側部44F,44Rの上面側には、複数の突状の溶着部44aが形成されており(図4参照)、各ドア側部44F,44Rは、この溶着部44aを利用して、振動溶着等により、ドア部35F,35Rの裏面側に溶着されている。また、ドア側部44F,44Rにおけるケース側部41の前壁部41aや後壁部41bの近傍には、ドア側部44F,44Rをドア部35F,35Rとともに容易に撓ませて開き可能とするように、薄肉のヒンジ部45が、配設されている。
【0022】
基材21における連結部材40の配設部位には、テア部22とドア部35F,35Rとが、配設されている。ドア部35F,35Rは、テア部22の周縁の部位から、構成されるもので、実施形態の場合、テア部22における後述する横棒部位30を間にして、横棒部位30の両側に2個配設されている。実施形態のエアバッグカバー20では、テア部22の破断時に、表皮層50を破断させつつドア部35F,35Rを開かせることにより、突出用開口60が形成される構成である。
【0023】
テア部22は、基材21に、肉厚を薄くするような凹溝24を線状に配設させるようにして、形成されている。実施形態の場合、テア部22は、図3に示すように、平面視での外形形状を略H字形状とされるもので、破断時にドア部35F,35R間に配置されてドア部35F,35Rの開きの先端側を構成する横棒部位30と、横棒部位30の両端から前後に延びて破断時にドア部35F,35Rの側縁側を構成する縦棒部位31,31と、を有する構成とされている。横棒部位30は、車両搭載時において左右方向に略沿うように配設されるものであり、縦棒部位31,31は、横棒部位30に対して略直交しつつ、横棒部位30の両端から前後に延びるように、前後方向に略沿って配置されている。具体的には、実施形態の場合、テア部22は、後述する破断起点構成部22bの部位を除いて(すなわち、後述する一般部22aにおいて)、基材21全体を切り抜く(厚さ方向の全域にわたって切り抜く)ような凹溝24(スリット)を配設させるようにして、形成されるもので(図5参照)、各縦棒部位31,31は、凹溝24を、前後の全域にわたって前後方向に沿って連続的に配設させるようにして、形成され、横棒部位30は、凹溝24を左右方向に沿って断続的に配設させるようにして、形成されている(図3参照)。横棒部位30は、各縦棒部位31,31側となる端側に配置されて縦棒部位31,31と連なるように配置される端側部位30b,30cと、左右の中央側に配置される中央側部位30aと、を備えている。
【0024】
また、テア部22は、破断時における表皮層50の破断の起点を構成する破断起点構成部22bと、破断起点構成部22bの両側に配置される一般部22aと、を備える構成とされている。実施形態の場合、破断起点構成部22bは、横棒部位30の中央側部位30aにおける左右の略中央となる一箇所のみに、形成され、中央側部位30aにおける破断起点構成部22bの両側の領域や、横棒部位30における端側部位30b,30c、及び、縦棒部位31,31は、全て一般部22aから構成されている。一般部22aは、上述したごとく、基材21全体を切り抜く(厚さ方向の全域にわたって切り抜く)ような幅寸法を一定とした凹溝24から構成されている(図5参照)。詳細には、一般部22aを構成している凹溝24は、基材21の表面21a側にかけて僅かに狭幅とされるように、形成されている。
【0025】
破断起点構成部22bは、平面視(エアバッグカバー20を上方あるいは下方から見た状態)において、両側の一般部22aから凹みの開口幅寸法を小さくするように形成される狭小部25から、構成されている。具体的には、実施形態の場合、破断起点構成部22bは、凹溝24における後面24bから部分的に前方に突出するように形成される突状部27を配設させることにより、凹溝24に部分的に狭小部25を設けられる構成とされている(図4参照)。突状部27は、平面視における外形形状を、前端側となる突出端27aと、凹溝24における前面24aと、の間に僅かに隙間を設けられるような略二等辺三角形状として、かつ、この突出状態を、基材21の裏面21b側から表面21a側にかけて漸増させるように、構成されている。すなわち、破断起点構成部22bを構成する突状部27は、左右の側方から見た状態において、図6に示すように、突出端27aの軌跡を、表面21a側にかけて後方に突出させるように、厚さ方向(上下方向)に対して傾斜させて、構成されている。具体的には、突状部27の突出端27aの軌跡は、裏面21b側となる下端側を凹溝24の後面24bと略一致させるように、構成されている。すなわち、突状部27の外形形状は、基材21の表面21a側となる上面27bを底面として、下端側にかけて収束されるような略三角錐状とされている(図7,8参照)。さらに詳細には、破断起点構成部22bを形成している突状部27は、平面視における外形形状を、底辺側(後端側)の幅寸法を、前側への突出量の2倍程度として、突出端27a側の角度を略直角とした略二等辺三角形状として、構成されている(図4参照)。また、突状部27の上面27bは、基材21の表面21aと略面一として、基材21の表面21aから連なるように、構成されている(図6,7参照)。すなわち、破断起点構成部22bは、表皮層50側となる表面側を、平面状として、一般部22a(具体的には、一般部22aを構成している凹溝24の周縁部位)に連ならせるように、構成されている。
【0026】
表皮層50は、図6,7に示すように、表面側に配設される表皮としてのファブリック51と、ファブリック51を接着させたシート状のクッション層52と、を備えたシート状とされている。ファブリック51は、ポリエステル製の糸を使用した織布であり、実施形態の場合、破断強度を異ならせた経糸VSと緯糸HSとを織成して形成されて、平面に沿った方向の破断強度において、脆弱方向と非脆弱方向とを具備する構成とされている。このファブリック51は、緯糸HSと比較して脆弱とされる経糸VSを、テア部22における横棒部位30に対して直交させ、緯糸HSを横棒部位30に沿わせるようにして、表皮層50の表面側に配置されている。そして、このように配置させることにより、ファブリック51は、脆弱方向を横棒部位30と直交させるように前後方向に沿わせて配置されることとなり(図6参照)、テア部22の横棒部位30に対して直交する方向側での破断強度を脆弱とされている。クッション層52は、ポリプロピレンやポリウレタン等からなるフォーム材やクッション材から、形成されている。表皮層50は、接着剤層55により、基材21の表面21aに全面にわたって接着されて、配設されている。
【0027】
次に、実施形態のエアバッグカバー20の製造について、説明をする。まず、ファブリック51を、接着剤を塗布したクッション層52に対して、真空成形により吸着させて、表皮層50を形成した後、この表皮層50を、表面21a側に接着剤を塗布して接着剤層55を形成した基材21に、圧着させる。次いで、テア部22を、エンドミル加工等により、基材21の裏面21b側から形成し、連結部材40のドア側部44F,44Rを、ドア部35F,35Rに溶着すれば、エアバッグカバー20を設けたインパネ2を形成することができる。
【0028】
その後、内部にリテーナ12を収納させた状態で、エアバッグ11を折り畳み、図示しないラッピング材により、折り畳んだエアバッグ11を包んで、ケース15内に収納する。このとき、リテーナ12の各ボルト12aは、ケース15の底壁部16から下方に突出している。次いで、底壁部16に設けられる挿通孔16aに対して、下方からインフレーター14の本体部14aを挿入させて、リテーナ12の各ボルト12aをインフレーター14のフランジ部14cに貫通させ、各ボルト12aにナット13を締結させれば、ケース15に、折り畳んだエアバッグ11とインフレーター14とを取付固定することができる。
【0029】
その後、インパネ2を車両1に固定するとともに、エアバッグカバー20のケース側部41に設けられる係止孔42に、ケース15の係止フック17aを挿入して係止させ、所定の制御装置から延びる作動信号入力用の図示しないリード線を、インフレーター14に結線させれば、エアバッグ装置10を車両1に搭載することができる。
【0030】
このエアバッグ装置10では、車両搭載後に、インフレーター14が作動すれば、エアバッグ11が、内部に膨張用ガスGを流入させて膨張することとなる。そして、エアバッグ11の膨張時、エアバッグカバー20の基材21が、テア部22を破断させて、表皮層50も破断させつつ、テア部22の周縁の部位から構成されるドア部35F,35Rを開かせることにより、突出用開口60を開口させることとなり、この突出用開口60からエアバッグ11を膨張させる構成である。このとき、実施形態のエアバッグカバー20では、表皮層50は、テア部22に形成される破断起点構成部22bを接触させることにより、破断の起点を形成されて、この起点から破断を伝搬される構成である。そして、実施形態のエアバッグカバー20では、破断起点構成部22bは、平面視において、両側に配置される一般部22aよりも、凹みの開口幅寸法を小さく設定される狭小部25から構成されており、換言すれば、基材21の表面21aに沿った方向側で、一般部22aに対して部分的に突出するような突状部27を有する構成とされていることから、テア部22の破断当初に、この狭小部25の先端(部分的に突出している突状部27の突出端27a)を裏面側から表面側に突き刺すように、表皮層50に接触させることにより(図7の二点鎖線参照)、表皮層50(ファブリック51)に確実に破断の起点を設けることができて、起点から両側に破断を伝搬させるようにして、表皮層50(ファブリック51)を迅速に破断させることができる。また、実施形態のエアバッグカバー20では、破断起点構成部22bは、平面視において、一般部22aに対して部分的に開口幅寸法を狭められるような構成とされていることから、基材21の表面21a側(表皮層50側)に部分的に突出することを抑制でき、表皮層50の表面を平滑として、意匠性を良好にすることができる。
【0031】
したがって、実施形態のエアバッグカバー20では、意匠性を良好にできて、かつ、テア部22の破断時に、突出用開口60を迅速に形成することができる。
【0032】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、破断起点構成部22bが、表皮層50側となる表面側を平面状として、一般部22aに連ならせるように、構成されている。具体的には、破断起点構成部22bを構成する突状部27が、上面27bを、基材21の表面21aと略面一として、基材21の表面21aから連ならせるように、構成されている。そのため、破断起点構成部22bが、基材21の表面21a側から突出することを、確実に防止でき、表皮層50の表面側の意匠性を一層良好にすることができる。
【0033】
さらに、実施形態のエアバッグカバー20では、破断起点構成部22bが、ドア部35F,35Rの開き時における先端側の略中央となる位置(具体的には、横棒部位30における中央側部位30aの左右の中央)に、配設される構成であることから、エアバッグ11の展開膨張時に、テア部22と表皮層50とを、ドア部35F,35Rの開きの先端側の略中央から破断させることができて、ドア部35F,35Rを迅速に開くことができる。なお、このような点を考慮しなければ、破断起点構成部は、横棒部位の左右の中央を除いた領域や、あるいは、縦棒部位の領域に、配設させる構成としてもよい。破断時の応力集中を考慮すれば、破断起点構成部は、テア部において、一箇所のみに配設させることが望ましい
【0034】
さらにまた、実施形態のエアバッグカバー20では、表皮層50が、平面に沿った方向の破断強度において、脆弱方向と非脆弱方向とを具備する構成とされるとともに、テア部22の横棒部位30に対して直交する方向側での破断強度を脆弱とするように、配設されている。具体的には、実施形態のエアバッグカバー20では、表皮層50を構成するファブリック51が、破断強度を異ならせた経糸VSと緯糸HSとを織成して形成されるとともに、緯糸HSと比較して脆弱とされる経糸VSを、横棒部位30に対して直交させるように、配置させることにより、テア部22の横棒部位30に対して直交する方向側での破断強度を脆弱とされている。そのため、テア部22の破断時に、狭小部25の先端(突状部27の突出端27a)を突き刺して破断させる破断初期時に、突状部27の突出端27aが表皮層50(ファブリック51)の脆弱方向に沿って移動することから、表皮層50を円滑に破断させることができる。なお、実施形態では、表皮層50の表面側に配置される表皮として、ファブリック51が使用されているが、表皮を構成する素材は織布に限定されるものではなく、脆弱方向と非脆弱方向とを具備する構成であれば、編地や、合成皮革、合成樹脂製のフィルム素材等を使用してもよい。勿論、上記…を考慮しなければ、表皮層を構成する表皮として、破断強度に差を設けられていないファブリック等を使用してもよい。
【0035】
実施形態のエアバッグカバー20では、テア部22は、平面視での外形形状を、略H字形状としているが、テア部としては、図9に示すごとく、横棒部位30Aの一方側にドア部35Aを形成可能な略U字形状のテア部22Aや、図10に示すごとく、横棒部位30Bの両側にドア部35Bを形成可能として、横棒部位30Bの両端側に配置される縦棒部位31Bを、横棒部位30Bから離隔する端部を相互に離隔させるように、横棒部位30Bに対して傾斜させるようにして配置させたダブルY字形状のテア部22Bも、例示することができる。
【0036】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、テア部22における破断起点構成部22bを形成する狭小部25の外形形状、すなわち、突状部27の外形形状を、平面視(エアバッグカバー20を上方あるいは下方から見た状態)において、底辺側(後端側)の幅寸法を、前側への突出量の2倍程度に設定されて、突出端27a側の角度を略直角とした略二等辺三角形状として、構成されている。この狭小部25(突状部27)の外形形状は、両側の一般部22aから凹みの開口幅寸法を小さくするような形状であれば、実施形態に限定されるものではなく、例えば、図11,12に示すごとく、平面視において突出端27a側の角度を鈍角あるいは鋭角とした略二等辺三角形状の突状部27A,27Bを凹溝24A,24Bの後面24bから突出させるように形成し、突状部27A,27Bと凹溝24A,24Bの前面24aとの間の領域から、狭小部25A,25Bを構成してもよく、さらには、図13に示すごとく、平面視において略二等辺三角形状の突状部27C,27Cを凹溝24Cの前面24a側と後面24b側とから突出させるように形成し、この突状部27C,27C間の領域から、狭小部25Cを構成してもよい。実施形態のエアバッグカバー20では、狭小部25を構成する突状部27は、基材21の表面21a側にかけて突出状態を大きくするように、構成されているが、突状部としては、基材の厚さ方向側で突出量を変化させず、一定としてもよい。
【0037】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、テア部22を構成する凹溝24は、基材21を厚さ方向の全域にわたって切り抜くようなスリット状として、構成されているが、凹溝は、基材を、厚さ方向の全域にわたって切り抜かず、裏面側から表面側にかけて凹ませるようにして、形成してもよい。さらに、実施形態の場合、横棒部位30においては、凹溝24を断続的に配置させ、縦棒部位31において、凹溝24を連続的に配置させているが、凹溝は、テア部の全てにわたって断続的に配置させてもよく、勿論、連続的に配置させてもよい。
【0038】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、表皮層50は、接着剤層55により、基材21の表面21aに全面にわたって接着されている構成であるが、勿論、基材の表面に部分的に接着させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2…インストルメントパネル(インパネ)、10…エアバッグ装置、11…エアバッグ、14…インフレーター、20…エアバッグカバー、21…基材、21a…表面、21b…裏面、22,22A,22B…テア部、22a…一般部、22b…破断起点構成部、24,24A,24B,24C…凹溝、25,25A,25B,25C…狭小部、30,30A,30B…横棒部位、31,31A,31B…縦棒部位、35F,35R,35A,35B…ドア部、50…表皮層、51…ファブリック(表皮)、60…突出用開口、HS…緯糸、VS…経糸。
図1
図2
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図7
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図11
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図13