(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149980
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】レーザダイオードの製造方法、レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H01S5/343 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052358
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 陽
(72)【発明者】
【氏名】張 梓懿
(72)【発明者】
【氏名】久志本 真希
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA21
5F173AF22
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP23
5F173AP33
5F173AR23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発振閾値電流および閾値電圧を低減することができるレーザダイオードの製造方法およびレーザダイオードを提供する。
【解決手段】レーザダイオード1の製造方法において、第1導電型クラッド層21、発光層22および第2導電型クラッド層23を含む半導体積層部20のうちヒロックが形成された領域をエッチングし、第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成し、露出した第1導電型クラッド層の表面において、ヒロックが露出した領域に第1電極31を形成し、第2導電型クラッド層上に第2電極32を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを含む窒化物半導体基板の表面の一部の領域に、直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度のマイクロパーティクルで構成された凸部を形成し、
前記窒化物半導体基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層を形成し、
前記第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体により発光層を形成し、
前記発光層上に、第2導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出した前記ヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成し、
前記第1導電型クラッド層、前記発光層および前記第2導電型クラッド層を含む半導体積層部のうち前記ヒロックが形成された領域をエッチングし、前記第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成し、
露出した前記第1導電型クラッド層の表面において、前記ヒロックが露出した領域に第1電極を形成し、
前記第2導電型クラッド層上に第2電極を形成する、
レーザダイオードの製造方法。
【請求項2】
Alを含む窒化物半導体基板の表面の一部の領域を露出させ、該表面の残余の領域を覆うレジストマスクを形成し、
エッチング法により前記窒化物半導体基板の表面の前記一部の領域をエッチングして、前記一部の領域に直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度の凸部を形成し、
前記窒化物半導体基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層を形成し、
前記第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体により発光層を形成し、
前記発光層上に、第2導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出した前記ヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成し、
前記第1導電型クラッド層、前記発光層および前記第2導電型クラッド層を含む半導体積層部のうち前記ヒロックが形成された領域をエッチングし、前記第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成し、
露出した前記第1導電型クラッド層の表面において、前記ヒロックが露出した領域に第1電極を形成し、
前記第2導電型クラッド層上に第2電極を形成する、
レーザダイオードの製造方法。
【請求項3】
Alを含む窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、
を備え、
前記半導体積層部は、
前記窒化物半導体基板上に配置され、第1導電型の窒化物半導体を含む第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に配置され、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、
前記発光層上に配置され、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有し、
前記半導体積層部のうち前記第1導電型クラッド層の一部、前記発光層および前記第2導電型クラッド層は、共振器を有するメサ構造を形成し、
前記第1導電型クラッド層上において、前記メサ構造を形成しない領域に第1電極が配置され、前記第1導電型クラッド層の前記第1電極と対向する表面には、1個以上30個以下のヒロックが存在し、
前記第2導電型クラッド層上には第2電極が配置されており、前記第2導電型クラッド層の前記第2電極と対向する表面にはヒロックが存在しない、
レーザダイオード。
【請求項4】
前記第1導電型クラッド層上には、前記ヒロックの外周面に沿ってヒロック外周部が形成され、
前記ヒロックと前記ヒロック外周部とで構成されるヒロック構造部の直径は、1μm以上30μm以下である、
請求項3に記載のレーザダイオード。
【請求項5】
前記ヒロック構造部は、平面視において多角形状を有する、
請求項4に記載のレーザダイオード。
【請求項6】
前記ヒロック構造部の高さは、前記第1導電型クラッド層における前記第1電極と対向する表面を基準とした場合に10nm以上1000nm以下である、
請求項4または5に記載のレーザダイオード。
【請求項7】
前記ヒロックに含まれるGa量は、前記第1導電型クラッド層における前記窒化物半導体基板の表面と平行な面内において、前記ヒロック以外の領域に含まれるGa量よりも多い
請求項3から6のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項8】
前記ヒロックの電気抵抗は、前記窒化物半導体基板の表面と平行な面内において、前記ヒロック以外の領域の電気抵抗よりも低い
請求項3から7のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項9】
前記ヒロックは前記窒化物半導体基板の表面から上方に向かって径が拡大するn角錘形状(nは3以上の整数)である
請求項3から8のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項10】
前記メサ構造は、平面視における前記共振器の端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下である
請求項3から9のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項11】
前記窒化物半導体基板がAlN単結晶基板である
請求項3から10のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項12】
前記第1導電型クラッド層と前記発光層との間に配置されて、前記発光層へ光を閉じ込める第1導電型導波路層と、
前記第2導電型クラッド層と前記発光層との間に配置されて、前記発光層へ光を閉じ込める第2導電型導波路層と、を備える、
請求項3から11のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項13】
前記第2導電型クラッド層上に配置され、GaNを含む窒化物半導体で形成された第2導電型コンタクト層を備え、
前記第2導電型クラッド層は、
AleGa1-eN(0.1≦e≦1)を含み、前記窒化物半導体基板から遠ざかるにつれてAl組成eが小さくなる組成傾斜を有し、膜厚が500nm以下である第2導電型縦伝導層と、AlfGa1-fN(0<f≦1)を含む第2導電型横伝導層と、を有する、
請求項12に記載のレーザダイオード。
【請求項14】
前記第2導電型縦伝導層と前記第2導電型導波路層との間に配置され、AlgGa1-gN(0<g≦1.0)で形成された中間層を備える、
請求項13に記載のレーザダイオード。
【請求項15】
前記第2導電型縦伝導層の膜厚は、250nm以上450nm以下である、
請求項13または14に記載のレーザダイオード。
【請求項16】
前記第2導電型縦伝導層のうちの前記第2導電型導波路層との界面を含む一部または全ての領域は、不純物がドープされていない領域である、
請求項13から15のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項17】
前記第1導電型クラッド層は、AlaGa1-aN(0.6<a≦0.8)で形成されており、
前記第2導電型縦伝導層および前記第2導電型横伝導層は、前記窒化物半導体基板に対して完全歪で形成されている、
請求項13から16のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項18】
前記第2導電型横伝導層の前記第2導電型縦伝導層と対向する面における前記Al組成fは、前記第2導電型縦伝導層の前記Al組成eの最小値よりも大きい、
請求項13から17のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項19】
前記第2電極は、平面視において前記第2導電型クラッド層上の前記メサ構造の側面から5μm以上離れた領域に設けられている、
請求項3から18のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項20】
前記第1導電型クラッド層において、前記第1電極と対向する表面には102個/cm2以上105個/cm2以下の密度で前記ヒロックが存在している
請求項3から19のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザダイオードの製造方法及びレーザダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザダイオードを形成するための材料として窒化物半導体が用いられている。窒化物半導体は、直接遷移の再結合形態を有することから、高い再結合効率および高い光学利得を得ることができる点でレーザダイオードのための材料として適している。このような窒化物半導体が用いられたレーザダイオードの一例として、紫外領域での電流注入型のレーザダイオードを発振させる技術が開示されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】K.Sato et al., Applied Physics Express 13、031004(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した紫外レーザダイオードはパルス駆動であり、実際のアプリケーションへの応用には連続発振が必要とされる。この連続発振には発振閾値電流および閾値電圧の低減が必要とされる。
本開示の目的は、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができるレーザダイオードの製造方法およびレーザダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係るレーザダイオードの製造方法は、Alを含む窒化物半導体基板の表面の一部の領域に、直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度のマイクロパーティクルで構成された凸部を形成し、前記窒化物半導体基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層を形成し、前記第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体により発光層を形成し、前記発光層上に、第2導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出した前記ヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成し、前記第1導電型クラッド層、前記発光層および前記第2導電型クラッド層を含む半導体積層部のうち前記ヒロックが形成された領域をエッチングし、前記第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成し、露出した前記第1導電型クラッド層の表面において、前記ヒロックが露出した領域に第1電極を形成し、前記第2導電型クラッド層上に第2電極を形成することを特徴とする。
【0006】
また上述した課題を解決するために、本開示の他の態様に係るレーザダイオードの製造方法は、Alを含む窒化物半導体基板の表面の一部の領域を露出させ、該表面の残余の領域を覆うレジストマスクを形成し、エッチング法により前記窒化物半導体基板の表面の前記一部の領域をエッチングして、前記一部の領域に直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度の凸部を形成し、前記窒化物半導体基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層を形成し、前記第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体により発光層を形成し、前記発光層上に、第2導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出した前記ヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成し、前記第1導電型クラッド層、前記発光層および前記第2導電型クラッド層を含む半導体積層部のうち前記ヒロックが形成された領域をエッチングし、前記第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成し、露出した前記第1導電型クラッド層の表面において、前記ヒロックが露出した領域に第1電極を形成し、前記第2導電型クラッド層上に第2電極を形成することを特徴とする。
【0007】
また、上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係るレーザダイオードは、Alを含む窒化物半導体基板と、前記窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、を備え、前記半導体積層部は、前記窒化物半導体基板上に配置され、第1導電型の窒化物半導体を含む第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に配置され、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、前記発光層上に配置され、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有し、前記半導体積層部のうち前記第1導電型クラッド層の一部、前記発光層および前記第2導電型クラッド層は、共振器を有するメサ構造を形成し、前記第1導電型クラッド層上において、前記メサ構造を形成しない領域に第1電極が配置され、前記第1導電型クラッド層の前記第1電極と対向する表面には、1個以上30個以下のヒロックが存在し、前記第2導電型クラッド層上には第2電極が配置されており、前記第2導電型クラッド層の前記第2電極と対向する表面にはヒロックが存在しないことを特徴とする。
なお、上述した発明の概要は、本開示の特徴の全てを列挙したものではない。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、発振閾値電流および閾値電圧を低減することが可能なレーザダイオードの製造方法およびレーザダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの一構成例を示す平面模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの一構成例を示す断面模式図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す平面模式図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を通じて本開示に係るレーザダイオードおよびレーザダイオードの製造方法を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
また、以下の説明では、Z軸の正方向を「上」と称し、Z軸の負方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、面、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0011】
1.実施形態
本開示の実施形態に係るレーザダイオードおよびレーザダイオードの製造方法について説明する。
(1.1)レーザダイオードの構成
本実施形態に係るレーザダイオードは、Alを含む窒化物半導体基板と、窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、を備えている。半導体積層部は、窒化物半導体基板上に配置され、第1導電型の窒化物半導体を含む第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層上に配置され、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、発光層上に配置され、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有している。半導体積層部のうち前記第1導電型クラッド層の一部、発光層および第2導電型クラッド層は、共振器を有するメサ構造を形成している。第1導電型クラッド層上において、メサ構造を形成しない領域に第1電極が配置され、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面には、1個以上30個以下のヒロックが存在している。また、第2導電型クラッド層上には第2電極が配置されており、第2導電型クラッド層の第2電極と対向する表面にはヒロックが存在しない。
【0012】
(窒化物半導体基板)
窒化物半導体基板(以下、基板と記載することがある)は、Alを含む窒化物半導体を含んでいる。Alを含む窒化物半導体は、例えばAlNである。すなわち、基板はAlN単結晶基板であることが好ましい。また、Alを含む窒化物半導体は、AlNに限定されず、例えばAlGaNであってよい。例えば、基板がAlN、AlGaN等の窒化物半導体単結晶基板である場合、基板の上側に形成される窒化物半導体層との格子定数差が小さくなり、窒化物半導体層を格子整合系で成長させることで貫通転位を少なくできる。
基板の貫通転位密度は、5×104cm-2以下であることが好ましい。特に、発振閾値電流の低減の観点から、貫通転位密度は1×103以上1×104cm-2以下であることがより好ましい。
【0013】
ここで、「窒化物半導体を含む」という表現における「含む」とは、窒化物半導体を主に層内に含むことを意味するが、その他の元素を含む場合もこの表現に含まれる。具体的には、窒化物半導体以外の元素を少量(例えばGa(Gaが主元素でない場合)、In、As、P、またはSb等の元素を数%以下)加える等してこの層の組成に軽微な変更を加える場合についてもこの表現に含まれる。その他の層の組成の表現においても、「含む」という文言は、同様の意味を有する。また、含まれる少量元素については前述の限りではない。
【0014】
また、基板は、ドナー不純物またはアクセプタ不純物によって、n型またはp型にドーピングされてよい。また、基板は、AlN等の窒化物半導体と、サファイア(Al2O3)、Si、SiC、MgO、Ga2O3、ZnO、GaNまたはInNとの混晶であってもよい。
【0015】
基板は、一例として100μm以上600μm以下の層厚を有することが好ましい。
また、面方位はc面(0001)、a面(11-20)、m面(10-10)などが挙げられるが、c面(0001)基板がより好ましい。さらに、c面(0001)法線方向からいくらかの角度(例えば-4°~4°、好ましくは-0.4°~0.4°)に傾いた面上に形成することができるが、これに限らない。
【0016】
(第1導電型クラッド層)
第1導電型クラッド層は、基板上に形成される。ここで、例えば「第1導電型クラッド層は基板上に形成される」という表現における「上に」という文言は、基板の一方の面上に第1導電型クラッド層が形成されることを意味する。また、基板と第1導電型クラッド層との間に別の層がさらに存在する場合も上述の表現に含まれる。その他の層同士の関係においても、「上の」という文言は、同様の意味を有する。例えば、後述する第1導電型導波路層上に電子ブロック層を介して第2導電型クラッド層が形成される場合も、「第2導電型クラッド層は第1導電型導波路層上に形成される」という表現に含まれる。また、本実施形態の説明において、「第1導電型」および「第2導電型」は、それぞれ異なる導電型を示す半導体であることを意味し、例えば、一方がn型導電性である場合は、他方がp型導電性となる。
【0017】
第1導電型クラッド層は、AlおよびGaを含む窒化物半導体の層である。第1導電型クラッド層は、例えばAlaGa(1-a)N(0<a<1)により形成される。これにより、深紫外領域のバンドギャップエネルギーに対応する材料を発光層として形成する場合に、発光層の結晶性を高め、発光効率を向上させることが可能となる。高い発光効率を実現する観点から、第1導電型クラッド層を構成する窒化物半導体は、AlNおよびGaNの混晶であることが好ましい。また、基板に対して完全歪で成長させる観点から、第1導電型クラッド層は、AlaGa(1-a)N(0.6<a≦0.8)により形成されることがより好ましい。
【0018】
第1導電型クラッド層は、縦伝導率を制御する目的などから、Al組成が基板から遠ざかるほど増加するような傾斜層であって良い。この場合、上述したAl組成に対する限定は、第1導電型クラッド層内の膜厚方向の位置におけるAl組成を第1導電型クラッド層の膜厚で平均したAl組成とすることができる。
【0019】
第1導電型クラッド層がn型導電性半導体層の場合は、In、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物を含んでいてもよいが、不純物の元素の種類としてはこの限りではない。電気抵抗を低減する観点および原料の入手難易度の観点から、第1導電型クラッド層に含まれる不純物はSiであることが好ましく、不純物濃度は5×1018cm-3以上5×1019cm-3であることが好ましい。
【0020】
第1導電型クラッド層は、第1導電型クラッド層内での格子緩和の観点と膜抵抗の観点から、200nm以上800nm以下の層厚を有することが好ましく、300nm以上750nm以下の層厚を有することがより好ましく、300nm以上500nm以下の層厚を有することが更に好ましい。
【0021】
(発光層)
発光層は、AlおよびGaを含む窒化物半導体の層である。発光層が含む窒化物半導体は、高い発光効率を実現する観点から例えばAlN、GaNの混晶であることが好ましく、たとえばAlbGa(1-b)N(0<b<1)により形成される。発光層には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、この限りではない。
【0022】
また、発光層は、多重量子井戸構造も単層量子井戸構造も取り得る。第1導電型クラッド層および第2導電型クラッド層の縦伝導率によって異なるが、量子井戸構造の数は好ましくは1から3のいずれかであることが好ましい。
また、発光層の結晶欠陥の影響を低減する目的などから、発光層の一部または全てにSi,Sb,Pなどの元素が1×1015cm-3以上含まれていても良い。
【0023】
(導波路層)
本実施形態のレーザダイオードは、光閉じ込めの観点から、発光層を挟み込むように発光層の上下に形成され、発光層から放出された光を発光層内に閉じ込める効果を有する導波路層を備えていても良い。導波路層は、発光層に対して第1導電型クラッド層側に配置された第1導電型導波路層と、発光層に対して第2導電型クラッド層側に配置された第2導電型導波路層の2層から構成されることが好ましい。
すなわち、本実施形態のレーザダイオードは、例えば、第1導電型クラッド層と発光層との間に配置されて、発光層へ光を閉じ込める第1導電型導波路層と、第2導電型クラッド層と発光層との間に配置されて、発光層へ光を閉じ込める第2導電型導波路層と、を備えていても良い。
【0024】
導波路層は、光閉じ込めの観点から、発光層よりエネルギーの高いバンドギャップを持つAl、Gaを含む窒化物半導体であることが好ましい。導波路層は、デバイス内で定在する光の電界強度分布と発光層の重なりを増大させるAl組成と膜厚とを有することが好ましい。発光層へのキャリア閉じ込めの観点から、発光層をAlbGa(1-b)N(0<b<1)とし、導波路層をAlcGa(1-c)N(0<c<1)としたとき、b<cであり、c≧b+0.05であることがより好ましい。たとえば発光波長が265nmの発光層を例とした場合、c=0.52であり、dは0.57以上であることが好ましい。また、光閉じ込めと、層抵抗の観点から、導波路層の膜厚は70nm以上150nm以下であることが好ましい。
【0025】
第1導電型導波路層および第2導電型導波路層のAl組成のそれぞれは、膜厚方向において均一であることが好ましいが、この限りではない。後述する第2導電型クラッド層の上方に存在する金属(例えば第2電極)への光吸収を回避するために、第2導電型導波路層のAl組成が第1導電型導波路層のAl組成より高くなっていてもよい。同様の目的で、第2導電型導波路層の膜厚が第1導電型導波路の膜厚より厚くなっていてもよい。
【0026】
第1導電型導波路層がn型導電性半導体層の場合は、第1導電型クラッド層と同じ伝導型を得る目的などからNの他にP、As、Sb等のN以外のV族元素,H、C、O、F、Mg、Si等の不純物が混入していて良いが、この限りではない。
【0027】
(第2導電型クラッド層)
第2導電型クラッド層は、発光層上に形成され、第2導電型の導電性を有するAlおよびGaを含む窒化物半導体層である。第2導電型クラッド層は、例えばAldGa(1-d)N(0<d<1)により形成される。また、発光層上に導波路層(第2導電型導波路層)が設けられている場合には、第2導電型クラッド層は、導波路層(第2導電型導波路層)上に形成される。これにより、第2導電型クラッド層は、発光層または導波路層に対して格子整合が容易であり、貫通転位密度の抑制が可能となる。
【0028】
第2導電型クラッド層は、キャリア(電子または正孔)を発光層へ注入するに足りる導電性を有しており、デバイス内で定在する光モードの電界強度分布と発光層の重なりを増大させる(すなわち光閉じ込めを増大させる)ことが可能であれば、導電型は特に限定されない。第2導電型クラッド層は、たとえばMgをドーピングしたp型AlGaNであってよい。
また、第2導電型クラッド層がp型導電性半導体層の場合は、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、不純物の元素の種類としてはこの限りではない。
【0029】
キャリアをより効率よく発光層へ注入する観点から、第2導電型クラッド層は、基板から遠ざかるにつれてAl組成eが小さくなる、すなわちAl組成eが基板の上面から遠ざかる方向へ減少する様に傾斜したAleGa(1-e)N(0.1≦e≦1)で形成された組成傾斜層(第2導電型縦伝導層)と、AlfGa(1-f)N(0<f≦1)を含む第2導電型横伝導層とを備えることが好ましい。
以下、第2導電型縦伝導層および第2導電型横伝導層について説明する。
【0030】
(第2導電型縦伝導層)
第2導電型縦伝導層は、第2導電型クラッド層のうちの発光層側の領域を構成する層である。
第2導電型縦伝導層は、AleGa(1-e)Nを含む層である。第2導電型縦伝導層におけるAl組成eのプロファイル(傾斜)は、連続的に減少してもよいし、断続的に減少してもよい。ここで、「断続的に減少する」とは、第2導電型縦伝導層の膜中の一部にAl組成fが同じ(膜厚方向に一定)になっている部分を含むことを意味する。つまり、第2導電型縦伝導層には、基板から遠ざかる方向にAl組成fが減少しない部分が含まれていてもよいが、増加する部分は含まれていない。
【0031】
第2導電型縦伝導層の膜厚は、格子整合の観点から500nm以下であることが好ましい。また、第2導電型縦伝導層の膜厚は、発光層への光閉じ込めおよびキャリア注入の観点から、250nm以上450nm以下であることがより好ましく、300nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
第2導電型縦伝導層は、不純物の拡散を抑制する目的などから、第2導電型縦伝導層のうちの発光層に近い領域においてH、Mg、Be、Zn、Si、B等の不純物がドープされていない(意図的に混入されていない)、すなわちアンドープの状態であることが好ましい。ここで、「アンドープ」とは、対象の層を形成する過程で元素として上述した不純物が意図的に供給されないことを意味するが、原料、製造装置由来の元素が例えば1×1016cm-3以下の範囲で混入される場合は、この限りではない。また、第2導電型縦伝導層のアンドープ状態の領域は、少なくとも発光層(第2導電型導波路層を備える場合には第2導電型導波路層)との境界を含むが、その大きさは限定されない。例えば、第2導電型縦伝導層の全ての領域がアンドープの状態であってよい。また、別の例として、第2導電型縦伝導層のうち、発光層に近い50%の領域がアンドープの状態であってよい。また、別の例として、第2導電型縦伝導層のうち、発光層に近い約10%の領域がアンドープの状態であってもよい。
【0033】
(第2導電型横伝導層)
第2導電型横伝導層は、第2導電型クラッド層のうちの発光層と反対側の領域を構成する層であり、第2導電型縦伝導層上に形成される。
第2導電型縦伝導層は、AlfGa(1-f)N(0<f≦1)を含む層である。ここで、第2導電型横伝導層の第2導電型縦伝導層と対向する面におけるAl組成fは、第2導電型縦伝導層のAl組成eの最小値よりも大きいことが好ましい。
第2導電型横伝導層は、第2導電型横伝導層の縦抵抗率を制御する目的などから、H、Mg、Be、Zn、Si、B等の不純物を意図的に混入させていてもよい。混入される不純物の量は、第2導電型横伝導層の表面および内部に誘積される正味の電界量に応じて、一例として、1×1019cm-3以上5×1021cm-3であってよい。
【0034】
第2導電型横伝導層の膜厚は、第2導電型横伝導層を貫通するキャリアの量子透過を容易とする観点から20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
第2導電型横伝導層の上に後述する第2導電型コンタクト層が設けられる場合、第2導電型横伝導層の第2導電型コンタクト層との界面におけるAl組成は、第2導電型コンタクト層におけるAl組成よりも小さく、かつ基板に対して完全歪であることが好ましい。このような第2導電型横伝導層は、第2導電型横伝導層の表面および表面付近の内部に蓄積される正味内部電界が負となって、界面にキャリアが誘積されることで横伝導率を向上させることができる。
【0036】
このように、第2導電型縦伝導層は、分極ドーピング効果によりキャリア(例えば第2導電型縦伝導層がp型半導体により形成されている場合には正孔)を生成させて、キャリアを効率良く発光層内の活性層に注入する作用を有する。このため、第2導電型縦伝導層が発光層上に設けられることで、レーザダイオードのキャリア注入効率を高め、閾値電圧を低減することができる。
また、第2導電型横伝導層は、電極下部に集中する電界によって狭められるキャリア分布を横方向(第2導電型横伝導層の面内)に広げる効果を有する。この効果により、第2導電型横伝導層は、第2導電型縦伝導層と同様に発光層へのキャリア注入効率を高めることができる。
【0037】
(中間層)
第2導電型クラッド層および導波路の間、すなわち第2導電型縦伝導層と第2導電型導波路層との間には、キャリアの伝導率を向上させる観点かつ/または第2導電型横伝導層および第2導電型コンタクト層を完全歪で形成させるためなどの観点から、基板の上面から遠ざかる方向へAl組成gが増加するようなAlgGa(1-g)N(0<g≦1.0)から成る中間層を設けることができる。中間層は、所望する発光波長の光を吸収しないバンドギャップでない混晶であって良く、さらに50nm以下の膜厚であることが好ましく、不純物が含まれていないアンドープ層であって良い。
【0038】
(第2導電型コンタクト層)
本実施形態のレーザダイオードの半導体積層部は、第2導電型クラッド層上に配置された第2導電型コンタクト層を更に備えていても良い。第2導電型コンタクト層を構成する窒化物半導体は、例えばGaN、AlNまたはInNおよび、それらを含む混晶で形成されることが好ましく、GaNを含む窒化物半導体であることがより好ましい。
【0039】
第2導電型コンタクト層は、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si、Be等の不純物が混入していてよい。原料ガスの汎用性から、第2導電型コンタクト層に含まれる不純物はMgであることが好ましい。コンタクト抵抗低減の観点から、Mgの濃度が8×1019cm-3以上5×1021cm-3以下であることが好ましく、5×1020cm-3以上5×1021cm-3以下であることがより好ましい。
【0040】
また、第2導電型コンタクト層の層厚は、1nm以上20nm以下であることが好ましい。第2導電型コンタクト層の層厚が薄いほどレーザダイオードのキャリア注入効率が向上し、層厚が厚いほどキャリア注入効率が低下する。
【0041】
(電子ブロック層)
本実施形態のレーザダイオードの半導体積層部は、発光層よりも上方に、バンドギャップが第2導電型導波路層より大きい電子ブロック層を更に有していても良い。電子ブロック層は、例えば第2導電型導波路層の内部、第2導電型導波路層と発光層との間または第2導電型導波路層と第2導電型縦伝導層との間に設けることができる。
電子ブロック層の層厚は、電子ブロック層をキャリア(正孔)が量子貫通しやすいように、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
(メサ構造と共振器)
メサ構造は、第2導電型層と第1導電型層を電気的に分離するために形成される。メサ構造は、半導体積層部の一部を除去した構造である。ここで、「半導体積層部」とは、少なくとも第1導電型クラッド層、発光層および第2導電型クラッド層をいい、上述した導波路層(第1導電型導波路層および第2導電型導波路層)、中間層および第2導電型コンタクト層が設けられている場合にはこれらの層も含む。
【0043】
メサ構造は、レーザの電流狭窄および端面における反射による増幅の観点から、平面視において長辺と短辺とをそれぞれ有する矩形状であり、長辺が<1-100>方向に伸びていることが好ましい。これは、劈開法やエッチング法など、さまざまな方法によってレーザ共振器の端面(例えば共振ミラー端面)を得る場合に、原子的に平坦な(1-100)面が最も容易に形成できるためである。
つまり、メサ構造は、窒化物半導体基板の結晶面(1-100)面に平行なメサ端面を共振ミラー端面とする共振器を有している。これにより、本実施形態のレーザダイオードは、メサ構造が<1-100>方向に光を射出する端面発光型レーザダイオードとなっている。
【0044】
また、メサ構造の側面間の距離は閾値電圧および発振閾値電流と相関がある。このため、矩形のメサ構造において、平面視におけるメサ構造の側面同士の間の距離と共振器の端面同士の間の距離との比は、1:5以上1:500以下であることが好ましい。平面視において、メサ構造の側面同士の間の距離は共振器の端面の長さに相当し、共振器ミラー端面同士の間の距離はメサ構造の側面の長さに相当する。つまり、メサ構造は、平面視における共振器の端面の長さとメサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下であることが好ましい。
【0045】
メサ構造は、半導体積層部を誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)等でエッチングすることで形成できる。
【0046】
(電極)
レーザダイオードは、第2導電型クラッド層上に配置された第2電極と、第1導電型クラッド層上に配置された第1電極によって電流を注入することにより発振を行うことができる。このとき、第1電極は、第1導電型クラッド層と電気に接触するように形成されており、第2電極は、第2導電型クラッド層と電気に接触するように形成されている。
第1電極は、例えば、基板の裏側に電極を配置することができる。また、第1電極は、半導体積層部の第1導電型クラッド層よりも上部の層を例えば化学エッチングまたはドライエッチングによって除去することにより露出した第1導電型クラッド層上に配置される。つまり、第1電極は、第1導電型クラッド層においてメサ構造を形成しない領域上に配置される。
【0047】
第1導電型クラッド層がn型クラッド層の場合、第1電極は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等により形成される。
第1導電型クラッド層がp型クラッド層の場合、第1電極は、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cu、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Ir、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等により形成される。
【0048】
第2導電型クラッド層がn型クラッド層の場合、第2電極は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等により形成される。
第2導電型クラッド層がp型クラッド層の場合、第2電極は、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cu、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Ir、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等により形成される。
【0049】
第1電極および第2電極の配置領域および形状は、第1導電型クラッド層と第2導電型クラッド層(第2導電型コンタクト層を備える場合には第2導電型コンタクト層)とのそれぞれと電気的接触が得られていれば限定はされない。転位が多く存在する箇所ではキャリアが補足されて優先的に消費されて内部損失が悪化することから、第2電極は、平面視において第2導電型クラッド層上のメサ構造の側面から5μm以上離れた領域に配置されることが好ましい。
【0050】
(バッファ層)
バッファ層は、基板と、第1導電型クラッド層との間に形成されており、基板の全面に形成されていることが好ましい。バッファ層を備えることにより、バッファ層上には格子定数差及び熱膨張係数差が小さく欠陥の少ない窒化物半導体層が形成される。また、バッファ層を備えることにより、圧縮応力下で第1導電型クラッド層を成長させることができ、第1導電型クラッド層におけるクラックの発生を抑制することができる。このため、基板がAlN又はAlGaN等の窒化物半導体で形成されている場合でも、バッファ層の上方に欠陥の少ない窒化物半導体層を形成することができる。
【0051】
バッファ層は、例えばAlN又はAlGaN等の窒化物半導体で形成される。また、バッファ層には、C,Si,Fe、Mg等の不純物を含んでいても良い。
【0052】
バッファ層は、例えば数μmの厚さを有している。具体的には、バッファ層の厚さは、10nmより厚く10μmより薄いことが好ましい。バッファ層の厚さが10nmより厚い場合、AlN等の窒化物半導体の結晶性が高くなる。また、バッファ層の厚さが10μmより薄い場合、ウエハ全面に結晶成長により形成されたバッファ層にクラックが発生しにくくなる。また、バッファ層は、50nmより厚く5μmより薄いことがより好ましい。バッファ層の厚さが50nmより厚い場合、結晶性の高い層を形成することができる。また、バッファ層の厚さが5μmより薄い場合、バッファ層のクラックがより発生しにくくなる。
【0053】
(ヒロック)
第1導電型クラッド層の表面には、ヒロックが形成されている。ヒロックは、AlおよびGaを含む窒化物半導体で形成されている。ヒロックは、第1導電型クラッド層の表面において突出した形状を有する。ヒロックは、第1導電型クラッド層上にメサ構造を形成しない領域の表面上に形成されている。より具体的には、ヒロックは、第1導電型クラッド層上において、第1電極と対向する表面に形成されている。
詳しくは後述するが、ヒロックは基板表面に形成された突起や凹凸を起点として、半導体積層部の成長に伴って形成される。つまり、ヒロックは、基板表面上から第1導電型クラッド層の厚さ方向に伸長して形成され、第1導電型クラッド層上に突出している。
【0054】
ヒロックは、基板の表面から上方に向かって径が拡大するn角錐形状(nは3以上の整数)を有している。ヒロックは、成長し易い面が優先的に形成されるため、平面視においてn角形の形状を形成する。より具体的には、ヒロックは、平面視において三辺または六辺を有する形状を形成し易い。つまり、ヒロックは、3角錐形状または6角錐形状を形成し易い。なお、ヒロックの平面視での形状(上面形状)三辺または六辺を有する形状に限られず、三辺以上を有する多角形状に形成され得る。ヒロックは、平面視において凹多角形状、すなわち凹多角錐であってもよい。ヒロックは、基板表面を起点として半導体積層部の成長に伴って径を拡大しながら形成される。つまりヒロックは、基板表面側を頂部とするn角錐形状である。このため、第1導電型クラッド層の表面には、n角錐形状のヒロックの底面側領域が突出し、残余の部分は第1導電型クラッド層内に形成されている。このとき、ヒロックの頂部は点に限られず、ヒロックの底面よりも面積の小さい面であってもよい。
【0055】
半導体積層部の形成時において、例えば薄膜有機金属堆積法(MOVPE法)によってAlGaNを含む薄膜を成長させる場合、ヒロックの起点となる突起や凹凸の端部には熱拡散長の差により、Ga原子がAlに対して優先的に凝集する。このため、ヒロックのGa含有量は、ヒロック以外の領域のGa含有量よりも多い。つまり、基板の表面と同一高さの領域、すなわち基板の表面に平行な面(平行面)内において、ヒロックのGa含有量「x」と、ヒロック以外の領域におけるGa含有量「y」とは、「x>y」の関係となる。例えば、第1導電型クラッド層内におけるヒロックのGa含有量は、第1導電型クラッド層内におけるヒロック以外の領域のGa含有量よりも多い。ここで、ヒロックのGa濃度(含有量)は、ヒロック以外の領域のGa濃度よりも5%以上高いことが好ましく、5%から10%高いことがより好ましい。
【0056】
また、上述のように第1導電型クラッド層における平行面内においてヒロックのGa含有量がヒロック以外の領域に含まれるGa量よりも多いため、ヒロックの電気抵抗は、該平行面内において、ヒロック以外の領域の電気抵抗よりも低い。したがって、本実施形態によるレーザダイオードにおいて、第1クラッド層上の第1電極と対向する表面にヒロックが存在することにより、閾値電圧を低減することができる。
【0057】
また、閾値電圧低減の観点から、第1導電型クラッド層において、第1電極と対向する表面には、1個以上30個以上のヒロックが存在していることが好ましい。このとき、第1導電型クラッド層において、第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、102個/cm2以上105個/cm2以下であることが好ましい。
【0058】
また、発振閾値電流を下げる観点から、ヒロックは、半導体積層部においてメサ構造を形成する領域には形成されない。具体的には、ヒロックがメサ構造において第2電極の下部に位置する領域に存在するとヒロック部で優先的にキャリアが消費されて、発振閾値電流が悪化する。したがって、半導体積層部において第2電極の下部に位置する領域(第2電極と対向する表面)にヒロックが存在しないことにより、注入した電流が発光層で効率的に結合できるため、発振閾値電流を低減させることができる。
このように、第1導電型クラッド層上において第1電極と対向する表面、すなわち、平面視で第1電極と重なる領域にヒロックが存在し、第2導電型クラッド層上において第2電極と対向する表面、すなわち平面視で第2電極と重なる領域にヒロックが存在しない構成とすることで、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができるレーザダイオードを実現することができる。
【0059】
また、第1導電型クラッド層の表面には、ヒロックの外周面に沿ってヒロック外周部が形成されている。つまり、第1導電型クラッド層上には、ヒロックと前記ヒロック外周部とで構成されるヒロック構造部が形成されている。また、第1導電型クラッド層上において、第1電極は、ヒロックおよびヒロック外周部で構成されるヒロック構造部を覆うようにして形成されている。
上述のように、ヒロックは、基板上における薄膜成長、つまり半導体積層部の成長に伴って第1導電型クラッド層上に形成された突出構造である。これに対し、ヒロック外周部は、半導体積層部を除去して第1導電型クラッド層を露出させる際に、第1導電型クラッド層上に形成される突出構造である。つまり、第1導電型クラッド層上のヒロック構造部は、形成工程が異なる2種類の成分で構成されている。
【0060】
ここで、ヒロック及びヒロック外周部で構成されるヒロック構造部の形状および大きさ(最大径、高さ)について説明する。
【0061】
ヒロック構造部は、平面視において多角形状を有している。より具体的には、ヒロック構造部は、平面視において3つ以上の辺を有する形状である。平面視でのヒロック構造部の形状(ヒロック構造部の上面形状)は、ヒロックの上面形状に基づいて形成される。上述のように、ヒロックは、n角錐形状(nは3以上の整数)であって、平面視においてn角形状を有する。したがって、ヒロック構造部は、平面視において、ヒロックと同様のn角形状となる。例えば、ヒロックが平面視において三辺を有する形状であれば、ヒロック外周部も同様に、平面視において三辺を有する形状となる。また、例えばヒロックが平面視において六辺を有する形状であれば、ヒロック外周部も同様に、平面視において六辺を有する形状となる。
【0062】
電気抵抗の低減およびプロセスの歩留まりの観点から、ヒロック構造部の最大径、すなわちヒロックを含むヒロック外周部の最大径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。ここで、直径とは、平面視におけるヒロック構造部の最大径を示す。
また、第1導電型クラッド層と第1電極との密着性の観点から、ヒロック構造部の高さは、第1導電型クラッド層における第1電極と対向する面を基準とした場合に10nm以上1000nm以下であることが好ましい。なお、ヒロックの高さとヒロック外周部の高さとは同じであるため、ヒロック構造部の高さは、すなわちヒロックの高さを示している。
【0063】
(1.2)紫外線発光素子の製造方法 本実施形態のレーザダイオードは、基板上に各層を形成する工程を経て製造される。
【0064】
(基板の形成)
基板は、昇華法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法等の気相成長法および液相成長法等の一般的な基板成長法により形成される。
【0065】
(基板上の凸部の形成)
また、形成された基板の表面の一部の領域には、ヒロックの起点となる凸部を形成する。凸部は、例えば、直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度で形成すればよい。凸部の密度を上述の範囲内とすることにより、凸部を起点として形成されるヒロックの密度も上述の範囲内に制御することができる。凸部は、基板表面において突出した形状であればよく、球形状や半球形状、多面体形状であってもよいし、山形状の突起であってもよい。
【0066】
基板表面上の凸部は、例えばマイクロパーティクルで構成してもよい。マイクロパーティクルは、直径が300nm以上1000nm以下であれば、材料は限定されないが、例えばアルミナ(Al2O3)の粒子を用いることができる。また、マイクロパーティクルは、基板の表面の一部の領域において102個/cm2以上105個/cm2以下の密度で打ち込まれていればよく、打ち込みに用いる装置は特に限定されない。例えばマイクロエアブラスター装置を使用して、マイクロパーティクルを基板表面に上述範囲の密度で打ち込む(噴霧する)ことにより、基板表面に凸部を形成することができる。また、この場合、基板上においてヒロックが形成されることが好ましくない領域、すなわち表面の一部の領域を除く残余の領域には、SiO2等のマスクによって保護しておくことが好ましい。
【0067】
また、基板表面の凸部は、パターニングにより形成してもよい。より詳細には、基板表面の凸部は、エッチング法によって基板の表面上の一部の領域をエッチングして、形成してもよい。
パターニングにより凸部を形成する場合、例えば基板の表面上の一部の領域を露出させ、残余の領域を覆うレジストマスクを形成する。次いで、エッチング法によって基板の表面上の一部の領域をエッチングして、直径が300nm以上1000nm以下であり102個/cm2以上105個/cm2の密度の凸部を形成すればよい。基板表面のエッチングに用いる装置は、上述範囲の直径、密度の凸部を形成可能であればよく、特に限定されないが、例えば、誘導結合プラズマ装置(ICP)を用いることができる。また、基板表面の残余の領域、つまり凸部を形成しない領域を覆うレジストマスクの材料は限定されないが、例えばフォトレジストやSiO2またはNiなどのマスクを用いることができる。
【0068】
上述のように、基板表面上の凸部は、ヒロックの起点となる構成であって、当該凸部上にヒロックが形成される。したがって、レーザダイオードにおいて第1電極が形成される領域に相当する基板表面の一部の領域に凸部を形成することにより、レーザダイオードにおいて第1導電型クラッド層上の第1電極と対向する表面にヒロックを形成することができる。また、基板表面の当該一部の領域において、凸部の密度を均一とすることで、第1導電型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度、つまりヒロックの個数をより高い精度で制御することができる。
【0069】
(半導体積層部の形成)
基板上に形成される半導体積層部の各層は、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法または有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等により形成することができる。
【0070】
ここで、基板上に形成された各層のうち窒化物半導体の層は、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)を含むAl原料、トリメチルガリウム(TMGa)またはトリエチルガリウム(TEGa)等を含むGa原料、もしくはアンモニア(NH3)を含むN原料を用いて形成することができる。
【0071】
ヒロックは、基板表面に形成された凸部を起点として、上述の原料による窒化物半導体を含む薄膜成長に伴って形成される。
具体的には、まず基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含む第1導電型クラッド層を形成する。このとき、第1導電型クラッド層の成長に伴い、基板表面の凸部上方を起点としてヒロックも成長する。ヒロックは、第1導電型クラッド層と同様の窒化物半導体で構成される。第1導電型クラッド層がAlおよびGaNを含む窒化物半導体(AlGaN)であれば、ヒロックもAlGaNで形成される。薄膜の形成時において、基板表面の凸部が薄膜で被覆されると、薄膜において凸部被覆箇所が他の領域よりも突出する。このため、第1導電型クラッド層の成長に伴って、第1導電型クラッド層の厚み方向に伸長したヒロックは、第1導電型クラッド層上に突出した形状となる。
このようにして、基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ基板表面の凸部上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層が形成される。
第1導電型クラッド層が形成された時点では、第1導電型クラッド層上にヒロック外周部は形成されておらず、ヒロックは第1導電型クラッド層の表面上において突出した形状で露出している。
【0072】
次いで、第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体(AlGaN等)により発光層を形成し、発光層上に、第2導電型の窒化物半導体(AlGaN等)を含み、且つ基板表面の凸部上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成する。これにより、半導体積層部が形成される。発光層および第2導電型クラッド層の形成時においても、第1導電型クラッド層の形成時と同様に、各層の成長に伴って、厚さ方向に伸長するヒロックが形成される。
成膜後の半導体積層部において、ヒロックは、基板表面上の凸部を起点として、薄膜成長に伴って半導体積層部の厚さ方向に伸長し、半導体積層部の最上層(例えば、第2導電型クラッド層)の表面において突出した形状で露出している。
【0073】
なお、必要に応じて、基板と第1導電型クラッド層との間にAlN又はAlGaN等の窒化物半導体によるバッファ層を形成してもよいし、発光層の上下にAlGaN等の窒化物半導体による導波路層を形成してもよい。また、第2導電型クラッド層および導波路の間にAlGaN等の窒化物半導体による中間層を形成してもよいし、第2導電型クラッド層上にGaN等を含む窒化物半導体第2導電型コンタクト層を設けてもよいし、発光層よりも上方に電子ブロック層を形成してもよい。第2導電型コンタクト層が設けられる場合、成膜後においてヒロックは第2導電型コンタクト層上に突出して形成される。
【0074】
ヒロックは平面視における形状、つまり上面形状としてn角形(nは3以上の整数)を保持しつつ成長していくため、基板上に形成される積層膜(第1導電型クラッド層、発光像、第2導電型クラッド層等)の膜厚が増えるに従い、上面形状の大きさ、すなわち最大径が拡大していく。このため、ヒロックは、上述のように基板表面の凸部から上方に向かって径が拡大するn角錐の形状で成長する。
【0075】
上述のような形成メカニズムから、ヒロックの上面形状の大きさ(最大径))は、半導体積層部の成長膜厚および各層(薄膜)の成長条件によって変化する。具体的には、ヒロックは、上述のように基板上の各層の膜厚によって上面形状の大きさが変わる。このため、例えば半導体積層部の最上層の第2導電型クラッド層上に露出しているヒロックの上面形状は、第1導電型クラッド層の形成時点で第1導電型クラッド層上に露出しているヒロックの上面形状よりも最大径が大きい。
【0076】
また例えば、有機金属堆積法(MOVPE法)によって薄膜を成長している場合、基板表面上の起点部の端部には熱拡散長の差により、Ga原子が優先的に凝集する。ここで、熱拡散長の制御の観点から、一例としてV族とIII族原料の比であるV/III比は500以上10000以下であることが好ましい。これにより、半導体積層部の最上層におけるヒロックの最大径を1μm以上30μm以下とすることができる。また、薄膜の成長レートは0.1μm/h以上3.0μm/h以下であることが好ましい。これにより、半導体積層部の最上層の表面を基準としたヒロックの高さ(突出形状の高さ)を10nm以上1000nm以下とすることができる。
【0077】
成膜時において半導体積層部の最上層に突出したヒロックのサイズは、上面形状の直径(最大径)が1μm以上かつ30μm以下であり、最上層の表面を基準とした高さが10nm以上1000nm以下であること好ましい。したがって、基板表面に形成される凸部は、最大径及び高さが上述の範囲内であるヒロックを、半導体積層部の最上層に形成できる構成であればよい。またヒロックの起点は凸部に限られない、例えば、ヒロックは、基板表面に形成された凹部上に形成されてもよい。基板表面において、ヒロックの起点となる構成(突起や凹凸形状)を、「起点部」とも称する。
【0078】
さらにヒロックの密度は、基板に形成された凸部の密度に基づいて変化する。つまり、上述のように、基板において凸部が102個/cm2以上105個/cm2の密度で形成されている場合、半導体積層部において平面視で凸部が形成された基板表面の一部領域と重なる領域には、102個/cm2以上105個/cm2の密度でヒロックが形成される。つまり、半導体積層部において平面視で凸部が形成された基板表面の一部領域と重なる領域のヒロックの個数は、当該基板表面の一部領域の凸部の個数によって変化する。
【0079】
レーザダイオードは、基板上に形成された半導体積層部の各層の不要部分をエッチングによって除去する工程(メサ構造形成工程)を経て製造される。メサ構造形成工程では、ヒロックが形成された領域をエッチング法により除去して、共振器を有するメサ構造が形成される。半導体積層部の各層の不要部分の除去は、例えば誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング等で行うことができる。
【0080】
メサ構造形成工程では、エッチングによって導体積層部の各層の不要部分が除去されることで、第1導電型クラッド層の一部が露出される。また、メサ構造形成工程では、物理的に半導体積層部のエッチングを行うため、半導体積層部の最上層の表面の形状を保持したままエッチングが行われる。このため、半導体積層部の最上層(第2導電型クラッド層)上におけるヒロックの突出形状、すなわち最上層に突出したヒロックの上面形状(平面視での形状)および大きさ(高さ、最大径)を保持したまま、第1導電型クラッド層までエッチングが行われる。これにより、第1導電型クラッド層上に突出したヒロックの外周面を囲むようにして、ヒロック外周部が形成される。ヒロックの外周部は、半導体積層部の最上層に突出していたヒロックの形状およびサイズの履歴として形成されるため、p型コンタクト層のヒロックと同一の形状(外観)を有する。半導体積層部の最上層にヒロックが複数形成されている場合は、メサ構造形成工程において、露出した第1導電型クラッド層上の各ヒロックの外周にヒロックの外周部が形成される。
【0081】
このようにして、第1導電型クラッド層上には、成膜時に形成されたヒロックとエッチングによる履歴として形成されたヒロック外周部とで構成されたヒロック構造部が形成される。上述のように、メサ構造形成工程後には、ヒロック外周部で覆われたヒロック、すなわちヒロック構造部がヒロックの外観として観察されることとなる。
【0082】
(電極の形成)
また、レーザダイオードは、電極を形成する工程を経て製造され得る。第1電極および第2電極等の電極は、例えば抵抗加熱蒸着、電子銃蒸着またはスパッタ等のように電子線蒸着(EB)法によって金属を蒸着させる種々の方法により形成されるが、これら方法には限定されない。各電極は、単層で形成してもよく、複数層積層して形成してもよい。また、各電極は、層の形成後に酸素、窒素または空気雰囲気等で熱処理が行われてもよい。
最後に、上述した工程を経て各層が形成された基板を、ダイシングにより個片へと分割してレーザダイオードが製造される。
【0083】
具体的には、第1導電型クラッド層上において、ヒロックが露出した表面上、つまりヒロック構造部が形成されている表面上に第1電極を形成する。このとき、第1導電型クラッド層上において第1電極と対向する表面には、ヒロックが1個以上30個以下存在している。また、当該第1電極と対向する表面には、102個/cm2以上105個/cm2以下の密度でヒロックが存在している。これは、凸部形成時に、基板表面の一部領域(平面視において第1電極と重なると想定される領域)のにおいて凸部が当該密度で形成されているためである。このように、基板表面において凸部が形成される領域が、平面視において、第1導電型クラッド層上の第1電極が形成される領域と重なっている。これにより、第1導電型クラッド層上において第1電極と対向する表面にヒロックを形成することができ、レーザダイオードにおいて閾値電圧を低減することができる。
【0084】
また、第2電極は、半導体積層部の一部形成されるメサ構造の最上層(例えば、第2導電型クラッド層)に形成される。基板表面に凸部を形成する際おいて、平面視で第2導電型クラッド層上の第2電極の領域と重なると想定される領域(残余の領域)は、例えばマスクによって保護されており、凸部は形成されない。これにより、第2導電型クラッド層上において第2電極と対向する表面に、確実にヒロックを形成しない構成とすることができる。
ヒロックが存在しないメサ構造に第2電極を形成する、すなわちメサ構造において第2電極と対向する表面にヒロックが存在しないことにより、レーザダイオードにおいて、発振閾値電流を低減することができる。
このように、本実施形態によるレーザダイオードの製造方法によれば、発振閾値電流及び閾値電圧を低減することができる。
【0085】
2.紫外線発光素子の物性等の測定方法
上述したレーザダイオードの物性等は、以下のようにして測定することができる。
【0086】
(不純物濃度及びドーピング濃度の測定)
レーザダイオードを構成する基板及び半導体積層部の各層に含まれるドーパントや不純物の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定することができる。
半導体積層部の各層に含まれるドーパントや不純物の濃度を、デバイスに加工された後にSIMSで測定する場合は、化学的なエッチングや物理研磨により電極を除去した状態で測定することができる。また、半導体積層部の各層に含まれるドーパントや不純物の濃度は、電極が形成されていない基板側からスパッタして測定することもできる。
具体的には、エバンス・アナリティカル・グループ(EAG)社が提供する測定条件によりSIMS測定を実施する。測定時の試料のスパッタには、14.5keVのエネルギーを有したセシウム(Cs)イオンビームを用いる。
【0087】
(層厚の測定方法)
レーザダイオードを構成する各層の層厚は、基板に垂直な所定断面を切り出して、この断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により観察し、TEMの測長機能を使用することで測定できる。測定方法としては、先ず、TEMを用いて、レーザダイオードの基板の主面に対して垂直な断面を観察する。具体的には、例えば、レーザダイオードの基板の主面に対して垂直な断面を示すTEM画像内の、基板の主面に対して平行な方向において2μm以上の範囲を観察幅とする。この観察幅の範囲において、組成の異なる2層の界面にはコントラストが観察されるので、この界面までの厚さを、幅200nmの連続する観察領域で観察する。この200nm幅の観察領域内に含まれる各層の厚さの平均値を、上述した2μm以上の観察幅から任意に抽出した5箇所から算出することで、各層の層厚を得ることができる。
【0088】
(各層の原子濃度の測定方法)
レーザダイオードを構成する各層に含まれる原子濃度を測定する方法としては、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)法による逆格子マッピング測定(RSM:Reciprocal Space Mapping)が挙げられる。具体的には、非対称面を回折面として得られる回折ピーク近傍の逆格子マッピングデータを解析することにより、下地に対する格子緩和率とAl組成が得られる。回折面としては、例えば(10-15)面や(20-24)面が挙げられる。
また、発光層や傾斜層、各層に形成されたヒロックなどのXRDで十分な反射強度が得られない層や領域は、X線光電分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)、及び電子エネルギー損失分光法(EELS:Electron Energy-Loss Spectroscopy)によって測定することができる。
【0089】
EELSでは、電子線が試料を透過する際に失うエネルギーを測定することで、試料の組成を分析する。具体的には、例えば、TEM観察等で使用する薄片化試料において、透過電子線の強度のエネルギー損失スペクトルを測定・解析する。そして、エネルギー損失量20eV付近に現れるピーク位置が、各層の組成に応じて変化することを利用し、ピーク位置から組成を求めることができる。
上述のTEM観察による層厚算出方法と同様にして、観察幅200nmにおけるAl組成の平均値を、2μm以上の観察領域から任意に抽出した5箇所から算出することで、各層のAl組成を得る。
【0090】
EDXでは、上述のTEM観察等で使用する薄片化試料において電子線によって発生する特性X線を測定・解析する。上述のTEM観察による層厚算出方法と同様にして、観察幅200nmにおけるAl組成の平均値を、2μm以上の観察領域から任意に抽出した5箇所から算出することで、各層のAl組成を得る。
【0091】
XPSでは、イオンビームを用いたスパッタエッチングを行いながらXPS測定を行うことで、深さ方向の評価が可能である。イオンビームには一般的にAr+が用いられるが、XPS装置に搭載されたエッチング用イオン銃で照射できるイオンであれば、例えばArクラスターイオンなどの他のイオン種でもよい。Al、Ga、NのXPSピーク強度を測定・解析して各層のAl組成の深さ方向分布を得る。スパッタエッチングの代わりに、基板の主面に対して垂直な断面が拡大されて露出されるようにレーザダイオードを斜め研磨して、露出断面をXPSで測ってもよい。
【0092】
XPSだけでなくオージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)を用いても各層の組成を測定できる。この場合、スパッタエッチングあるいは斜め研磨により露出させた断面においてオージェ電子分光法による測定を行うことで、組成を測定できる。また、斜め研磨により露出させた断面に対するSEM-EDX測定によっても、各層の組成を測定できる。
【0093】
(ヒロック構造部の大きさ、上面形状の測定)
レーザダイオードに形成されたヒロックを含むヒロック構造部の大きさ(最大径および高さ)、及び上面形状は、レーザダイオードの製造時におけるメサ構造の形成後、第1電極の形成前に測定する。また、これに限らず、レーザダイオードにおいて第一電極を除去した上で測定してもよい。
具体的には、ヒロック構造部の最大径および高さは、例えばメサ構造の形成後において露出した第1導電型クラッド層を白色干渉計レーザ顕微鏡によって観察することで、測定することができる。
任意の測定箇所においてヒロックを含むヒロック構造部が複数存在する場合、測定箇所における複数のヒロック構造部の最大径の中央値、高さの中央値を求め、それぞれをヒロック構造部の最大径、高さとする。また、ヒロック構造部の上面形状は、例えばメサ構造の形成後において露出した第1導電型クラッド層を白色干渉計レーザ顕微鏡によって観察することで、測定することができる。
【0094】
(ヒロック構造部の個数の測定)
ヒロックが形成されると、レーザダイオード構造では合わせてヒロック外周部が形成される。したがって、ヒロック個数、密度は、すなわちヒロック構造部の個数である。ヒロック構造部の個数は、レーザダイオードの作製後において、第1電極に覆われたヒロック構造部、すなわち第1電極上に現れたヒロック構造部を対象として計測する。ヒロック構造部の個数は、白色干渉計レーザ顕微鏡によって第1電極上を観察することで、測定することができる。また、これに限らず、レーザダイオードにおいて第一電極を除去した上で測定してもよい。
ヒロック構造部の個数については、ヒロック構造部の表面積の半分以上が測定箇所に重なっている場合、測定箇所におけるヒロックの個数を1として数える。これはヒロックおよびヒロック外周部を含むヒロック構造部において、表面積の半分以上が測定箇所に重なっている場合に、ヒロック構造部に含まれるヒロックが測定箇所に重なっていると考察されるためである。一例として「第1導電型クラッド層上において、第1電極と対向する表面にヒロックがp個(pは1以上の整数)ある」という表現は、第1電極が形成される領域に対して表面積が半分以上重なっているヒロック構造部の数がp個であることを意味する。
【0095】
また、測定箇所と重なる表面積が半分未満であるヒロック構造部については、個数を計測しない。つまり、測定箇所に重なる表面積が半分未満であるヒロック構造部が複数存在する場合も、該複数のヒロック構造部については、ヒロックの個数としては計測しない。
一例として「第2導電型クラッド層上において、第2電極と対向する表面にヒロックがない」という表現は、第2電極の領域と表面積が半分以上重なっているヒロック構造部の数が0個であることを意味する。第2電極と重なる領域には凸部を起点とするヒロックは形成しないが、意図せずにヒロックが発生する場合もある。この場合であっても、発生したヒロックにおいて、第2電極の領域と重なる表面積が半分未満であれば、「ヒロックがない」といえる。
(ヒロック構造部の密度の算出)
また、ヒロックの密度に関しては、密度を測定する領域の面積とヒロックの個数との除算によって求めることができる。例えば、第1電極が形成された領域の面積(例えば、第1電極の底面積)と、当該領域内のヒロックの個数(当該領域と表面積が半分以上重なるヒロック構造部の数)との除算によって求めることができる。
【0096】
(ヒロックの断面形状の測定)
また、基板表面を起点として第1導電型クラッド層の厚さ方向に伸長したヒロックの断面形状は、基板表面と垂直な所定断面を切り出して、この断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により観察し、TEMの測長機能を使用することで測定できる。測定方法としては、先ず、TEMを用いて、レーザダイオードの基板の主面に対して垂直な断面を観察する。例えば、ヒロックを含むヒロック構造部の上面形状が平面視でs角形(sは4以上の偶数)だった場合、対角線に対して垂直な断面を示すTEM画像内のヒロックの形状を測定することで、基板に垂直方向のヒロックの形状を類推することが可能となる。ヒロック構造部の上面形状が平面視でt角形(tは5以上の奇数)の場合、すくなくとも2つの対角線に対して垂直な断面を示すTEM画像内のヒロックの形状を測定することで、基板に垂直方向のヒロックの形状を類推することが可能となる。またヒロック構造部の上面形状が平面視で3角形の場合、平面視において、1つの頂点から垂線を降ろした断面を示すTEM画像内の、形状を測定することで、基板に垂直方向のヒロックの形状を類推することが可能となる。
【0097】
(紫外線発光素子の適用分野)
本開示に係るレーザダイオードは、例えば、医療・ライフサイエンス分野、環境分野、産業・工業分野、生活・家電分野、農業分野、その他分野の装置に適用可能である。レーザダイオードは、薬品または化学物質の合成・分解装置、液体・気体・固体(容器、食品、医療機器等)殺菌装置、半導体等の洗浄装置、フィルム・ガラス・金属等の表面改質装置、半導体・FPD(Flat Panel Display)・PCB(Printed Wiring Board)・その他電子品製造用の露光装置、印刷・コーティング装置、接着・シール装置、フィルム・パターン・モックアップ等の転写・成形装置、紙幣・傷・血液・化学物質等の測定・検査装置に適用可能である。
【0098】
液体殺菌装置の例としては、冷蔵庫内の自動製氷装置・製氷皿および貯氷容器・製氷機用の給水タンク、冷凍庫、製氷機、加湿器、除湿器、ウォーターサーバの冷水タンク・温水タンク・流路配管、据置型浄水器、携帯型浄水器、給水器、給湯器、排水処理装置、ディスポーザ、便器の排水トラップ、洗濯機、透析用水殺菌モジュール、腹膜透析のコネクタ殺菌器、災害用貯水システム等が挙げられるが、この限りではない。
【0099】
気体殺菌装置の例としては、空気清浄器、エアコン、天井扇、床面用または寝具用の掃除機、布団乾燥機、靴乾燥機、洗濯機、衣類乾燥機、室内殺菌灯、保管庫の換気システム、靴箱、タンス等が挙げられるが、この限りではない。
固体殺菌装置(表面殺菌装置を含む)の例としては、真空パック器、ベルトコンベヤ、医科用・歯科用・床屋用・美容院用のハンドツール殺菌装置、歯ブラシ、歯ブラシ入れ、箸箱、化粧ポーチ、排水溝のふた、便器の局部洗浄器、便器フタ等が挙げられるが、この限りではない。
【0100】
3.紫外線発光素子の具体例
以下、
図1から
図8を参照して、本実施形態のレーザダイオードをより具体的に説明する。なお、以下の各実施形態の各層の詳細な構成は、上述した通りである。
【0101】
(3.1)第1の実施形態
図1および
図2は、第1の実施形態にかかるレーザダイオード1を説明するための模式図である。
図1は、レーザダイオード1の平面模式図であり、
図2はレーザダイオード1の断面模式図である。
図1において、<1-100><11-20><0001>はそれぞれ結晶方位を示している。
図2に示すように、レーザダイオード1は、基板10と、基板10上に配置される半導体積層部20と、第1電極31と、第2電極32とを備えている。半導体積層部20は、第1導電型クラッド層21と、発光層22と、第2導電型クラッド層23とを有している。半導体積層部20の一部は、メサ構造201となっている。メサ構造201の端面ES(
図1参照)は、光共振および射出のための共振器構造となっており、端面ESに垂直な方向(
図1中の矢印の方向)にレーザ光が出射する。
【0102】
また、レーザダイオード1の第1導電型クラッド層21において、第1電極31と対向する表面に、ヒロック(不図示)が形成されている。これにより、レーザダイオード1において、閾値電圧を低減することができる。
また、第1導電型クラッド層21上には、当該ヒロックの外周面に沿ってヒロック外周部(不図示)が形成されている。第1導電型クラッド層21の表面上に突出したヒロックおよびヒロック外周部、すなわちヒロック構造部は、第1電極に覆われており露出していないが、ヒロック構造部の外観形状は、第1電極上から観察することができる。ヒロックは、基板10の表面を起点として形成され、第1導電型クラッド層21の表面において突出している。また、ヒロック外周部は、メサ構造201の形成時において、第1導電型クラッド層21上の一部の半導体積層部20を除去するためのエッチングにより形成された突出形状である。ヒロック外周部は、第1導電型クラッド層21上から除去された半導体積層部20の第2導電型クラッド層23上に形成されていたヒロックの突出部分の履歴であって、の第2導電型クラッド層23上に形成されていたヒロックと最大径、高さ、および形状が同一である。
【0103】
メサ構造201内における側面SSから距離Lが5μm未満の領域が第1領域202(
図1および
図2中、一点鎖線で示す)である。レーザダイオード1は、第1領域202内にのみ基板10の結晶方位<1-100>方向に伸びる転位線を複数備えている。このため、レーザダイオード1は、第2導電型クラッド層23上において第1領域202を除く領域、すなわち平面視において第2導電型クラッド層23上のメサ構造201の側面SSから5μm離れた領域に、第2電極32を備えている。
また、レーザダイオード1において、第2導電型クラッド層23上において、第2電極32と対向する表面には、ヒロックは、形成されていない。これにより、レーザダイオード1において、注入した電流が発光層で効率的に結合できるため発振閾値電流を低減することができる。
【0104】
(3.2)第2の実施形態
図3は、第2の実施形態にかかるレーザダイオード2を説明するための模式図である。
図3は、レーザダイオード2の断面模式図である。
レーザダイオード2は、第1導電型導波路層24と、第2導電型導波路層25とを更に備える半導体積層部20Aを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード2は、発光層22への光閉じ込め効果が向上し、レーザダイオード2の発光強度が向上する。
また、レーザダイオード2においても、レーザダイオード1と同様に、第1導電型クラッド層21において、第1電極31と対向する表面に、ヒロック(不図示)が形成され、且つ第2導電型クラッド層23上において、第2電極32と対向する表面には、ヒロックは形成されていない。これにより、レーザダイオード2においても、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができる。
【0105】
(3.3)第3の実施形態
図4は、第3の実施形態にかかるレーザダイオード3を説明するための模式図である。
図4は、レーザダイオード3の断面模式図である。
レーザダイオード3は、第2導電型クラッド層23上に配置された第2導電型コンタクト層26を備える半導体積層部20Bを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード3は、発光層22へのキャリア注入効率が向上し、レーザダイオード3の発光効率が向上する。
また、レーザダイオード3においても、レーザダイオード1と同様に、第1導電型クラッド層21において、第1電極31と対向する表面に、ヒロック(不図示)が形成される。また、レーザダイオード3において、第2導電型コンタクト層26上における第2電極32と対向する表面には、ヒロックは形成されていない。これにより、レーザダイオード3においても、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができる。
なお、レーザダイオード3において、第1導電型クラッド層21上に形成されるヒロック外周部は、第1導電型クラッド層21上から除去された半導体積層部20Bの第2導電型コンタクト層26上に形成されていたヒロックの突出部分の履歴である。
【0106】
なお、第2導電型コンタクト層26は、例えば第2実施形態にかかるレーザダイオード2と組み合わされてもよい。すなわち、レーザダイオード2の第2導電型クラッド層23上に第2導電型コンタクト層26が配置されたレーザダイオードであっても良い(不図示)。
(3.4)第4の実施形態
図5は、第4の実施形態にかかるレーザダイオード4を説明するための模式図である。
図5は、レーザダイオード4の断面模式図である。
レーザダイオード4は、第2導電型縦伝導層23Aと第2導電型横伝導層23Bとで構成された第2導電型クラッド層23及び第2導電型コンタクト層26を備える半導体積層部20Cを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード4は、発光層22へのキャリア注入効率が向上し、レーザダイオード4の発光効率が向上する。
また、レーザダイオード4においても、レーザダイオード3と同様に、第1導電型クラッド層21において、第1電極31と対向する表面に、ヒロック(不図示)が形成され、且つ第2導電型コンタクト層26上において、第2電極32と対向する表面には、ヒロックは形成されていない。これにより、レーザダイオード4においても、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができる。
【0107】
(3.5)第5の実施形態
図6は、第5の実施形態にかかるレーザダイオード5を説明するための模式図である。
図6は、レーザダイオード5の断面模式図である。
レーザダイオード5は、第1導電型導波路層24及び第2導電型導波路層25と、第2導電型縦伝導層23Aと第2導電型横伝導層23Bとで構成された第2導電型クラッド層と、第2導電型縦伝導層23Aと第2導電型導波路層25との間に設けられた中間層27とを備える半導体積層部20Dを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード5は、中間層27におけるキャリアの伝導率を向上させつつ、第2導電型横伝導層23B及び第2導電型コンタクト層26を完全歪で形成させることによるキャリアの横伝導率を向上させることができる。
また、レーザダイオード5においても、レーザダイオード1同様に、第1導電型クラッド層21において、第1電極31と対向する表面に、ヒロック(不図示)が形成され、且つ第2導電型クラッド層23(具体的には、第2導電型横伝導層23B)上において、第2電極32と対向する表面には、ヒロックは形成されていない。これにより、レーザダイオード5においても、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができる。
【0108】
(3.6)第6の実施形態
図7および
図8は、第6の実施形態にかかるレーザダイオード6を説明するための模式図である。
図7は、レーザダイオード6の平面模式図であり、
図8は、レーザダイオード6の断面模式図である。
レーザダイオード6は、第1導電型導波路層24及び第2導電型導波路層25、第2導電型コンタクト層26を更に備える半導体積層部20Eを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。また、レーザダイオード6のメサ構造は二段構造になっており、第1導電型クラッド層21を含むメサ構造201と、第1導電型クラッド層21を含まないメサ構造203を有している。この時、第1導電型クラッド層21を含むメサ構造201には、基板10の結晶方位<1-100>方向に伸びる転位線が複数含まれている。メサ構造203には、基板10の結晶方位<1-100>方向に伸びる転位線を備える第1領域202が含まれない。したがって、発振閾値電流の低減を図ることができる。
また、レーザダイオード6においても、レーザダイオード3と同様に、第1導電型クラッド層21において、第1電極31と対向する表面に、ヒロック(不図示)が形成され、且つ第2導電型コンタクト層26上において、第2電極32と対向する表面には、ヒロックは形成されていない。これにより、レーザダイオード6においても、発振閾値電流および閾値電圧を低減することができる。
【0109】
4.効果
上述したレーザダイオードおよびレーザダイオードの製造方法は、以下の効果を有する。
(1)レーザダイオードの製造方法において、Alを含む窒化物半導体基板の表面の一部の領域を露出させ、該表面の残余の領域を覆うレジストマスクを形成し、エッチング法により窒化物半導体基板の表面の一部の領域をエッチングして、一部の領域に直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度の凸部を形成し、窒化物半導体基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ、基板上の凸部の上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層を形成し、第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体により発光層を形成し、発光層上に、第2導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出した前記ヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成する。さらに、第1導電型クラッド層、発光層および第2導電型クラッド層を含む半導体積層部のうちヒロックが形成された領域をエッチングし、第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成する。さらに、露出した第1導電型クラッド層の表面において、ヒロックが露出した領域に第1電極を形成し、第2導電型クラッド層上に第2電極を形成する。
これにより、レーザダイオードは、第2導電型クラッド層上の第2電極と対向する面にヒロックを形成しないことにより、発光層に効率的に電流を注入することができるため、発振閾値電流を低減させ、さらに、平行面内において他の領域よりも電気抵抗が低いヒロックを第1導電型クラッド層上の第1電極と対向する面に形成することで、閾値電圧を低減することが可能なレーザダイオードを作製することができる。
(2)レーザダイオードの製造方法において、Alを含む窒化物半導体基板の表面の一部の領域を露出させ、該表面の残余の領域を覆うレジストマスクを形成し、エッチング法により窒化物半導体基板の表面の前記一部の領域をエッチングして、一部の領域に直径が300nm以上1000nm以下であって102個/cm2以上105個/cm2以下の密度の凸部を形成し、窒化物半導体基板上に、第1導電型の窒化物半導体を含み、且つ、基板上の凸部の上方に形成されて表面に露出したヒロックを有する第1導電型クラッド層を形成し、第1導電型クラッド層上に、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体により発光層を形成し、発光層上に、第2導電型の窒化物半導体を含み、且つ、前記凸部の上方に形成されて表面に露出した前記ヒロックを有する第2導電型クラッド層を形成する。さらに、第1導電型クラッド層、発光層および第2導電型クラッド層を含む半導体積層部のうちヒロックが形成された領域をエッチングし、第1導電型クラッド層を露出させて共振器を有するメサ構造を形成する。さらに、露出した第1導電型クラッド層の表面において、ヒロックが露出した領域に第1電極を形成し、第2導電型クラッド層上に第2電極を形成する。
これにより、第2導電型クラッド層上の第2電極と対向する面にヒロックを形成しないことにより、発光層に効率的に電流を注入することができるため、発振閾値電流を低減させ、さらに、平行面内において他の領域よりも電気抵抗が低いヒロックを第1導電型クラッド層上の第1電極と対向する面に形成することで、閾値電圧を低減することが可能なレーザダイオードを作製することができる。
(3)レーザダイオードは、Alを含む窒化物半導体基板と、窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、を備え、半導体積層部は、記窒化物半導体基板上に配置され、第1導電型の窒化物半導体を含む第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層上に配置され、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、発光層上に配置され、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有し、半導体積層部のうち前記第1導電型クラッド層の一部、前記発光層および前記第2導電型クラッド層は、共振器を有するメサ構造を形成し、第1導電型クラッド層上において、前記メサ構造を形成しない領域に第1電極が配置され、前記第1導電型クラッド層の前記第1電極と対向する表面には、1個以上30個以下のヒロックが存在し、第2導電型クラッド層上には第2電極が配置されており、前記第2導電型クラッド層の前記第2電極と対向する表面にはヒロックが存在しない。
これにより、レーザダイオードは、第2導電型クラッド層上の第2電極と対向する面にヒロックを形成しないことにより、発光層に効率的に電流を注入することができるため、発振閾値電流を低減させ、さらに、平行面内において他の領域よりも電気抵抗が低いヒロックを第1導電型クラッド層上の第1電極と対向する面に形成することで、閾値電圧を低減することができる。
(4)レーザダイオードにおいて、第1導電型クラッド層上には、ヒロックの外周面に沿ってヒロック外周部が形成され、ヒロックとヒロック外周部とで構成されるヒロック構造部の直径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。
これにより、閾値電圧と相関があるヒロック構造部の直径を適切に調整して、閾値電圧をより低減することができる。
(5)前記ヒロック構造部は、平面視において多角形状を有することが好ましい。
これにより、閾値電圧と相関があるヒロック構造部の直径を適切に調整して、閾値電圧をより確実に低減することができる。
(6)レーザダイオードにおいて、ヒロック構造部の高さは、第1導電型クラッド層における第1電極と対向する表面を基準とした場合に10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
これにより、第1導電型クラッド層と第1電極との密着性を向上することができる。
(7)レーザダイオードにおいて、ヒロックに含まれるGa量は、前記第1導電型クラッド層における前記窒化物半導体基板の表面と平行な面内において、前記ヒロック以外の領域に含まれるGa量よりも多いことが好ましい。
これにより、閾値電圧を確実に低減することができる。
(8)レーザダイオードにおいて、ヒロックの電気抵抗は、窒化物半導体基板の表面と平行な面内において、ヒロック以外の領域の電気抵抗よりも低いことが好ましい。
これにより、閾値電圧をさらに確実に低減することができる。
(9)レーザダイオードにおいて、ヒロックは窒化物半導体基板の表面から上方に向かって径が拡大するn角錘形状(nは3以上の整数)であることが好ましい。
これにより、閾値電圧と相関があるヒロック構造部の直径を適切に調整して、閾値電圧をより確実に低減することができる。
(10)レーザダイオードにおいて、メサ構造は、平面視における共振器の端面の長さとメサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下であることが好ましい。
これにより、閾値電圧および発振閾値電流と相関があるメサ構造の側面間の距離を適切に調整して閾値電圧および発振閾値電流を低下させることができる。
(11)レーザダイオードにおいて、窒化物半導体基板がAlN単結晶基板であることが好ましい。
これにより、基板と基板の上側に形成される窒化物半導体層との格子定数差が小さくなり、窒化物半導体層を格子整合系で成長させることで貫通転位を少なくすることができ、安定性の高い窒化物半導体層を形成することができる。
(12)レーザダイオードは、第1導電型クラッド層と発光層との間に配置された第1導電型導波路層と、第2導電型クラッド層と発光層との間に配置された第2導電型導波路層と、を備えていることが好ましい。
これにより、発光層へ光を閉じ込める効果が向上し、発光効率が向上する。
(13)レーザダイオードは、第2導電型クラッド層上に配置され、GaNを含む窒化物半導体で形成された第2導電型コンタクト層を備えることが好ましい。このとき、第2導電型クラッド層は、AldGa1-dN(0.1≦d≦1)を含み、窒化物半導体基板から遠ざかるにつれてAl組成eが小さくなる組成傾斜を有し、膜厚が500nm未満である第2導電型縦伝導層と、AlfGa1-fN(0<f≦1)を含む第2導電型横伝導層と、を有することが好ましい。
これにより、キャリアをより効率よく発光層へ注入して発光効率を向上させることができる。
(14)レーザダイオードは、第2導電型縦伝導層と第2導電型導波路層との間に配置され、AlgGa1-gN(0<g≦1.0)で形成された中間層を備えることが好ましい。
これにより、第2導電型横伝導層および第2導電型コンタクト層を完全歪で形成させてキャリアの伝導率を向上させることができる。
(15)第2導電型縦伝導層の膜厚は、250nm以上450nm以下であることが好ましい。
これにより、発光層への光閉じ込め効果が向上するとともに、キャリア注入効果が向上し、レーザダイオードの発光効率が向上する。
(16)第2導電型縦伝導層のうちの第2導電型導波路層との界面を含む一部または全ての領域は、不純物がドープされていない領域であることが好ましい。
これにより、不純物の拡散を抑制してキャリアを効率的に発光層に注入することができ、発振効率を高めることができる。
(17)第1導電型クラッド層は、AlaGa1-aN(0.6<a≦0.8)で形成されており、第2導電型縦伝導層および第2導電型横伝導層は、基板に対して完全歪で形成されていることが好ましい。
第1導電型クラッド層をAlaGa1-aN(0.6<a≦0.8)で形成することにより、第2導電型縦伝導層および第2導電型横伝導層を基板に対して完全歪で形成してキャリアの伝導率を向上させることができる。
(18)第2導電型横伝導層の第2導電型縦伝導層と対向する面におけるAl組成fは、第2導電型縦伝導層のAl組成eの最小値よりも大きいことが好ましい。
これにより、キャリアを横方向に拡散することができ、キャリアの注入効率を高めることができる。
(19)レーザダイオードは、平面視において、第2導電型クラッド層上の、メサ構造の側面から5μm以上離れた領域に設けられた第2電極を備えていることが好ましい。
これにより、レーザダイオードは内部損失が生じず、発光効率を向上させることができる。
(20)第1導電型クラッド層において、第1電極と対向する表面には102個/cm2以上105個/cm2以下の密度でヒロックが存在していることが好ましい。
これにより、閾値電圧と相関がある第1導電型クラッド層状の第1電極と対向する表面におけるヒロックの個数を適切に調整して、閾値電圧をより確実に低減することができる。
【実施例0110】
以下、本開示の実施例及び比較例について説明する。
【0111】
[実施例1]
基板として厚さ550μmの(0001)面AlN単結晶基板を用い、この基板に対して、リソグラフィープロセスおよびスパッタプロセスにより基板上に凸部を形成した。
まず、基板上にヒロックの起点となる凸部を形成した。具体的には、レーザダイオードにおいてメサ構造が形成される領域に相当する基板上の領域を、SiO2によるマスクで保護した。次に0.8μm径のアルミナ(Al2O3)粒子を、マイクロエアブラスター装置(シスコム社製、「M6500」)を用いて1分間、基板上に噴霧した。その後、基板上のSiO2を、誘導結合プラズマ装置(ICP)を用いてCF4ガスによって除去した。これにより、基板上において、メサ構造が形成されない領域のみに、アルミナ粒子による凸部が形成された。このとき、光学顕微鏡(キーエンス社製、「LM1000」)を用いて基板上を観察したところ、メサ構造が形成されない領域には0.8μm径のアルミナ粒子による凸部が1.7×104個/cm2の密度で形成されていた。また、メサ構造が形成される領域には、マイクロパーティクルが存在せず、凸部が形成されていなかった。
【0112】
また、凸部を形成した上記基板に対して有機金属気相成長(MOCVD)装置を用いてアニール処理を行った。アニール処理は、1300℃の環境下において、NH3雰囲気中での5分間のアニールおよびH2雰囲気中での5分間のアニールを1セットとして、2セットの処理を行った。
【0113】
次に、基板上に、バッファ層としてホモエピタキシャル層であるAlN層を形成した。AlN層は、1200℃の環境下において500nmの厚さで形成した。このとき、III族元素原料ガスの供給レートと窒素原料ガスの供給レートとの比率(V/III比)は50とした。また、アニールを行ったチャンバーの真空度を50mbarとした。このときのAlN層の成長レートは0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、N原料としてアンモニア(NH3)を用いた。
【0114】
上述したように形成したAlN層上に、第1導電型クラッド層を形成した。第1導電型クラッド層は、Siをドーパント不純物として用いたn型AlGaN層(Al:70%、すなわちAl0.70Ga0.30N層)とした。第1導電型クラッド層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で350nmの厚さで形成した。このときの第1導電型クラッド層の成長レートは0.4μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。また、N原料としてアンモニア(NH3)を用いた。また、Si原料としてモノシラン(SiH4)を用いた。
【0115】
続いて、第1導電型クラッド層上に第1導電型導波路層であるn型導波路層を形成した。n型導波路層は、Siをドーパント不純物として用いたn型AlGaN層(Al:63%、すなわちAl0.63Ga0.37N層)とした。n型導波路層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で60nmの厚さで形成した。このときのn型導波路層の成長レートは0.35μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。また、N原料としてアンモニア(NH3)を用いた。
【0116】
続いて、n型導波路層上に発光層を形成した。発光層は、量子井戸層とバリア層とを3周期積層させた多重量子井戸構造を有するように成膜して形成した。ここで、量子井戸層は、3.0nmの厚さを有するAlGaN層(Al:52%、すなわちAl0.52Ga0.48N層)とした。また、6.0nmの厚さを有するバリア層は、AlGaN層(Al:63%、すなわちAl0.63Ga0.37N層)とした。
発光層は、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で形成した。このときの量子井戸層の成長レートは0.18μm/hrであった。また、バリア層の成長レートは0.15μm/hrであった。
【0117】
続いて、発光層上に第2導電型導波路層であるp型導波路層を形成した。p型導波路層は、ドーパントを含まないAlGaN層(Al:63%、すなわちAl0.63Ga0.37N層)とした。p型導波路層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で60nmの厚さで形成した。このときのp型導波路層の成長レートは0.35μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。
【0118】
続いて、p型導波路層上に第2導電型クラッド層を形成した。第2導電型クラッド層は、第2導電型縦伝導層と、第2導電型横伝導層とを備える積層構造であり、Al組成比が傾斜するグレーデッド層である。第2導電型縦伝導層は、基板から遠ざかる方向にAl組成が分布をもち、Al=1.0から0.7まで変化する、層厚320nmのAlGaN層とした。また、第2導電型横伝導層はAl=0.9、膜厚2nmのAlGaN層とした。第2導電型クラッド層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で形成した。このときの第2導電型クラッド層の成長レートは0.3~0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。
【0119】
続いて、第2導電型クラッド層上に第2導電型コンタクト層であるp型コンタクト層を形成した。ここで、pコンタクト層は、AlGaN層とGaN層とにより形成した。AlGaN層は、Mgをドーパント不純物として用い、基板から遠ざかる方向にAl組成が分布をもち、Al=0.7から0.4まで変化する、層厚30nmのp型窒化物半導体層とした。また、GaN層は、10nmの厚さを有するGaN(すなわちAl:0%)で形成した。
【0120】
p型コンタクト層は、950℃の温度で、真空度を150mbarに設定し、V/III比を3650とした条件で形成した。このときのp型コンタクト層の成長レートは0.2μm/hrであった。
【0121】
以上のようにして、AlN基板上に、半導体積層部を形成した。この半導体積層部に対してXRDによる逆格子マッピング測定を実施したところ、半導体積層部はp型コンタクト層まで緩和のないシュードモルフィック成長をしていることが分かった。
また、p型コンタクト層の表面には、基板上のマイクロパーティクルを起点として成長したヒロックが突出して形成されていた。
【0122】
上述したように形成された半導体積層部に対して、N2雰囲気中、700℃で10分以上アニーリングを行うことによって、p型コンタクト層を更に低抵抗化した。ICPを用いてCl2を含むガスによりドライエッチングを行うことによって、第1導電型クラッド層(n型クラッド層)を露出させた。このとき、半導体積層部においてヒロックが形成された領域が除去されてn型クラッド層が露出し、ヒロックが形成されていない領域においてp型コンタクト層を含むメサ構造が形成されるように、レジストマスクを配置した。n型クラッド層は、平面視で<1-100>方向に長い矩形の領域に形成した。
また、ICPによるエッチングにより、露出したn型クラッド層の表面におけるヒロックの外周部分には、p型コンタクト層上のヒロックを履歴したヒロック外周部が形成された。これにより、n型クラッド層上には、ヒロックとヒロック外周部とで構成されるヒロック構造部が形成された。
【0123】
メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部を、レーザ顕微鏡(キーエンス社製、「VK-X3000」)を用いて観察した。その結果、形成されたヒロック構造部は、いずれも平面視において六辺を有する形状であった。また、ヒロック構造部の最大径および高さを計測すると、n型クラッド層上のヒロック構造部は、最大径の中央値が10μmであり、高さの中央値が200nmであった。
【0124】
また、同じくメサ構造の形成後に、EDX測定によってn型クラッド層におけるヒロックのGa濃度(Ga含有量)と、ヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
【0125】
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、n型クラッド層に形成されたヒロックは、基板上に配置された凸部、すなわちマイクロパーティクルを起点として発生していた。また、ヒロックは、基板から遠ざかる方向に径が広がっている、つまり基板表面の凸部から上方に向かって径を拡大しながら伸長している様子が見られた。
【0126】
また、メサ構造におけるp型コンタクト層上に、<1-100>方向に長い矩形状にNiおよびAuを順に成膜して電極金属領域を複数形成して第2電極とした。このとき、第2電極の幅は5μmであり、長さは700μmであった。また、メサ構造のn型クラッド層が露出した領域において、<1-100>方向に長い矩形状にV、Al、Ni、TiおよびAuを順に成膜して電極金属領域を複数形成して第1電極とした。次に窒化物半導体レーザダイオードの表面に化学気相成長法(CVD)装置を用いてSiO2を含むパッシベーション層を形成した。
【0127】
さらに、電極金属領域内において、<11-20>方向に平行に複数回の劈開させることによって、基板をストライプ状に分割し、個片化されたレーザダイオードを形成した。このとき、第2電極の幅は5μmであり、長さは600μmであった。レーザダイオードにおいて、電極金属領域の面積(第1電極の底面積)は、平均で0.0003cm2であった。
【0128】
また実施例1のレーザダイオードに対して、第1電極領域におけるヒロック構造部の個数として第1電極上に現れたヒロック構造部の個数を測定したところ、平均として5個であった。つまり、n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、1.7×104個/cm2(=5個/0.0003cm2)であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は表れていなかった。
作製された実施例1のレーザダイオードに対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は9V、発振閾値電流は10kA/cm2であった。
【0129】
[実施例2]
厚さが550μmの(0001)面AlN単結晶基板を用い、この基板に対して、直径1μmの円形パターンを有するマスクを使用してレジストによるマスクを使用して、レジストマスクを形成した。このとき、レーザダイオードにおいてメサ構造が形成される領域に相当する基板上の領域をレジストで保護した。その後、誘導結合プラズマ装置(ICP)を用いてCl2ガスによって基板をエッチングした。これにより、基板上において、メサ構造が形成されない領域のみに、円形パターンに対応する凸部を形成した。このとき、実施例1と同様に光学顕微鏡を用いて基板上を観察したところ、メサ構造部が形成される領域には凸部が存在せず、それ以外の領域には直径1μmの凸部が2×104個/cm2存で形成されていた。また、メサ構造が形成される領域には、円形パターンによる凸部が形成されていなかった。
エッチングにより基板上に凸部を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例2のレーザダイオードを作製した。
【0130】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
【0131】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0132】
実施例2のーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、平均として6個であった。また、n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、2×104個/cm2(=6個/積0.0003cm2)であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は表れていなかった。
作製された実施例2のレーザダイオードに対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は9.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0133】
[実施例3]
AlN単結晶基板に対して、実施例1と同じマイクロエアブラスター装置を用いてマイクロパーティクルを30秒間噴霧し、AlN単結晶基板上にマイクロパーティクルによる凸部を3.3×103個/cm2の密度で形成した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例3のレーザダイオードを得た。
【0134】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
【0135】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0136】
実施例3によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、平均として1個であった。また、n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、3.3×103個/cm2(=1個/0.0003cm2)であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は表れていなかった。
作製された実施例3によるレーザダイオードに対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は11V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0137】
[実施例4]
AlN単結晶基板に対して、実施例1と同じマイクロエアブラスター装置を用いてマイクロパーティクルを2分間噴霧し、AlN単結晶基板上にマイクロパーティクルによる凸部を5.0×104個/cm2の密度で形成した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例4のレーザダイオードを得た。
【0138】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
【0139】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0140】
作製された実施例4によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、平均として15個であった。n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、5.0×104個/cm2(=15個/0.0003cm2)であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は表れていなかった。
実施例4によるレーザダイオードに対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は8V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0141】
[実施例5]
AlN単結晶基板に対して、実施例1と同じマイクロエアブラスター装置を用いてマイクロパーティクルを4分間噴霧し、AlN単結晶基板上にマイクロパーティクルによる凸部を1.0×105個/cm2の密度で形成した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例5のレーザダイオードを得た。
【0142】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
【0143】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0144】
実施例5によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、平均として30個であった。n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、1.0×105個/cm2(=30個/0.0003cm2)であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は表れていなかった。
作製された実施例5によるレーザダイオード構造に対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は8.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0145】
[実施例6]
n型クラッド層とp型クラッド層の成長V/III比を12000にした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例6のレーザダイオードを得た。
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、最大径の中央値が1μmであったその他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
【0146】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0147】
実施例6によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。また、メサ構造にヒロックが形成されていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は現れていなかった。
実施例6によるレーザダイオード構造に対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は10V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0148】
[実施例7]
n型クラッド層とp型クラッド層の成長V/III比を8000にした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例7のレーザダイオードを得た。
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、最大径の中央値が5μmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、高さ)は、実施例1と同様であった。
また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
【0149】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0150】
また、実施例7によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。また、メサ構造にヒロックが形成されていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は現れていなかった。
作製された実施例7によるレーザダイオード構造に対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は9.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0151】
[実施例8]
n型クラッド層とp型クラッド層の成長V/III比を2000にした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例8のレーザダイオードを得た。
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、最大径の中央値が15μmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、高さ)は、実施例1と同様であった。
また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
【0152】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0153】
また、実施例8によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。また、メサ構造にヒロックが形成されていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は現れていなかった。
作製された実施例8によるレーザダイオード構造に対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は8.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0154】
[実施例9]
n型クラッド層とp型クラッド層の成長V/III比を1000にした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例9のレーザダイオードを得た。
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、最大径の中央値が30μmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、高さ)は、実施例1と同様であった。
また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
【0155】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0156】
実施例9によるレーザダイオードにおいて、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。また、メサ構造にヒロックが形成されていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は現れていなかった。
実施例9によるレーザダイオード構造に対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は10V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0157】
[実施例10]
n型クラッド層の成長レートを0.15μm/hにした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例10のレーザダイオードを得た。
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、高さの中央値が20nmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、最大径)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0158】
作製された実施例10によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。また、メサ構造にヒロックが形成されていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は現れていなかった。
実施例10によるレーザダイオード構造に対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は10V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0159】
[実施例11]
n型クラッド層の成長レートを0.25μm/hにした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例11のレーザダイオードを得た。
【0160】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、高さの中央値が100nmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、最大径)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0161】
作製された実施例11によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。また、メサ構造にヒロックが形成されていないことから、第2電極上にはヒロック構造部は現れていなかった。
実施例11によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は9.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0162】
[実施例12]
n型クラッド層の成長レートを0.45μm/hにした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例12のレーザダイオードを得た。
【0163】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、高さの中央値が500nmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、最大径)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0164】
作製された実施例12によるレーザダイオード構造おいて実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、74であった。
実施例12によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は8.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0165】
[実施例13]
n型クラッド層の成長レートを0.55μm/hにした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例13のレーザダイオードを得た。
【0166】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した。その結果形成されたヒロック構造部は、高さの中央値が900nmであった。その他のレーザ顕微鏡による測定結果(平面視での形状、最大径)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0167】
作製された実施例13によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。
実施例13によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は10V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0168】
[実施例14]
第2電極の長さが200μmであり、幅が5μmである以外は、実施例1と同様にして、実施例14のレーザダイオードを得た。
【0169】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0170】
作製された実施例14によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。
実施例14によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は11V、発振電流閾値は15kA/cm2であった。
【0171】
[実施例15]
p型電極の長さが1500μmであり、幅が5μmである以外は、実施例1と同様にして、実施例15のレーザダイオードを得た。
【0172】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0173】
作製された実施例15によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。
実施例15によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は10.5V、発振電流閾値は8kA/cm2であった。
【0174】
[実施例16]
p型電極の長さが600μmであり、幅が2μmである以外は、実施例1と同様にして、実施例16のレーザダイオードを得た。
【0175】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
【0176】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0177】
作製された実施例16によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。
実施例16によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は7.2V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0178】
[実施例17]
p型電極の長さが600μmであり、幅が10μmである以外は実施例1と同様にして、実施例17のレーザダイオードを得た。
【0179】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0180】
作製された実施例17によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、実施例1と同様に平均として5個であり、n型クラッド層上の第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、1.7×104個/cm2であった。
実施例17によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は11V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0181】
[比較例1]
AlN単結晶基板への凸部の形成(加工)を一切行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1のレーザダイオードを得た。
メサ構造の形成後に、レーザ顕微鏡によって観察したところ、n型クラッド層上およびメサ構造上にはヒロックが形成されていなかった。
比較例1によるレーザダイオードに対し、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は17V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0182】
[比較例2]
AlN単結晶基板に対して、実施例1と同じマイクロエアブラスター装置を用いてマイクロパーティクルを5分間噴霧し、AlN単結晶基板上にマイクロパーティクルによる凸部を1.2×105個/cm2の密度で形成した。それ以外は実施例1と同様にして、比較例2のレーザダイオードを得た。
【0183】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造には基板上の凸部を起点とするヒロックが含まれていなかった。
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0184】
作製された比較例2によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、平均として35個であった。n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、1.2×105個/cm2(=35個/0.0003cm2)であった。
比較例2によるレーザダイオードに対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は13.5V、発振電流閾値は10kA/cm2であった。
【0185】
[比較例3]
AlN単結晶基板に対して、実施例1と同じマイクロエアブラスター装置を用いて、AlN単結晶基板上にマイクロパーティクルによる凸部を2.3×104個/cm2の密度で形成した。また、リソグラフィープロセスおよびスパッタプロセスによる基板上への凸部の形成時に、レーザダイオードにおけるメサ構造の形成領域に相当する基板上の領域をSiO2で保護しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして比較例3のレーザダイオードを作製した。
【0186】
実施例1と同様に、メサ構造の形成後に、n型クラッド層上に形成されたヒロック構造部をレーザ顕微鏡によって観察した結果、測定結果(平面視での形状、最大径、高さ)は、実施例1と同様であった。また、メサ構造のp型コンタクト層上においても、基板上の凸部を起点とするヒロックが形成されていた。
【0187】
また、EDX測定によってヒロックのGa含有量(Ga濃度)とヒロック以外の領域のGa濃度とを比較したところ、第1実施形態と同様に、基板表面と平行な面内において、ヒロックのGa濃度は、ヒロック以外の領域よりも5%以上高かった。
さらに、基板及び露出されたn型クラッド層の厚さ方向の断面に対してTEM測定(a面における観測)を実施したところ、ヒロックは基板上に配置された凸部を起点として発生しており、断面からは基板から遠ざかる方向に径が拡大していく様子が見られた。
【0188】
比較例3によるレーザダイオード構造において、第1電極上に現れたヒロック構造部の個数は、平均として7個であった。n型クラッド層上において第1電極と対向する表面におけるヒロックの密度は、基板上の凸部の密度と同様に、2.3×104個/cm2(=ヒロックの個数:7個/0.0003cm2)であった。また、第2電極上に現れたヒロック構造部の個数は2個であった。
比較例3によるレーザダイオードに対して、電流注入による電流-端面発光強度測定を実施したところ、閾値電圧は9V、発振電流閾値は25kA/cm2であった。
【0189】
以下の表1に、各実施例及び比較例の評価結果を示す。
【0190】
【0191】
表1に示すように、各実施例によるレーザダイオードは、第1導電型クラッド層(各実施例及び各比較例におけるn型クラッド層)上において、前記メサ構造を形成しない領域に第1電極が配置され、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面には、1個以上30個以下のヒロックが存在している。さらに、各実施例によるレーザダイオードは、第2導電型クラッド層(各実施例及び各比較例におけるp型クラッド層)上には第2電極が配置されており、第2導電型クラッド層の第2電極と対向する表面にはヒロックが存在しない構成を有している。
これにより、各実施例におけるレーザダイオードは、閾値電圧がいずれも11V以下であり、発振閾値がいずれも15KA/cm2以下であった。つまり、各実施例におけるレーザダイオードは、発振閾値電流および閾値電圧を相対的に低い値に抑制することができた。
【0192】
また、各実施例におけるレーザダイオードは、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面にヒロックを有しない比較例1によるレーザダイオードと比較して、閾値電圧が顕著に低減した。また、各実施例におけるレーザダイオードは、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面に30個を超えるヒロックを有する比較例2によるレーザダイオードと比較して、閾値電圧が顕著に低減下した。
さらに、各実施例におけるレーザダイオードは、第2導電型クラッド層の第2電極と対向する表面にヒロックを有する比較例3によるレーザダイオードと比較して、発振閾値電流が顕著に低減した。
【0193】
また、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面におけるヒロックの個数が15個以上である実施例4、5のレーザダイオードは、当該ヒロックの個数が1個である実施例3のレーザダイオードと比較して、閾値電圧がより低減した。
また、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面におけるヒロックの最大径が5μm以上15μm以下の範囲内である実施例7、8のレーザダイオードは、実施例6、9と比較して、閾値電圧がより低減した。
【0194】
以上から、レーザダイオードにおけるヒロックの形成位置と、第1導電型クラッド層の第1電極と対向する表面におけるヒロックの個数やヒロックの最大径を適切に設定する必要があることがわかった。
【0195】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。