(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149992
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】型締装置及びタイバー
(51)【国際特許分類】
B29C 45/66 20060101AFI20220929BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B29C45/66
B22D17/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052379
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂井 公則
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ02
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CL32
4F202CL44
4F202CL50
(57)【要約】
【課題】可動プラテンの追込み量を低減すること。
【解決手段】少なくとも一つのタイバー25は、その軸方向外周の2以上の異なる位置から投影される時、それらの投影位置に対応してタイバー25の軸方向に直交する2以上の異なる投影幅L1,L2を有するように形状づけられる。更には、このタイバー25は、少なくとも固定プラテン21とトグルサポート24の間の少なくとも一部において、2以上の異なる投影幅L1,L2の中で最小の投影幅L1を直径とする仮想円の面積よりも大きい断面積を有する。タイバー25の断面積の増加によりその剛性が高められる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテン、可動プラテン、トグル機構、及びトグルサポートを備え、前記トグル機構を介して前記トグルサポートと前記可動プラテンが連結され、前記トグル機構の作動に基づいて前記可動プラテンが前記固定プラテンに対して進退可能である型締装置であって、
前記固定プラテンと前記トグルサポートの間を延びて前記固定プラテンと前記トグルサポートをお互いに連結する複数のタイバーを更に備え、
前記複数のタイバーの少なくとも一つは、
(i)その軸方向に直交し、かつお互いに異なる方向に伝播する平行光により照明される時、前記タイバーの軸方向に直交する2以上の異なる投影幅を有するように形状付けられ、及び
(ii)少なくとも前記固定プラテンと前記トグルサポートの間の少なくとも一部において前記2以上の異なる投影幅の中で最小の投影幅を直径とする仮想円の面積よりも大きい断面積を有する、型締装置。
【請求項2】
前記複数のタイバーの少なくとも一つは、前記固定プラテンと前記トグルサポートの間の少なくとも一部において面取りされた又は面取りされていない四角形の断面を有することを特徴とする請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記複数のタイバーの少なくとも一つは、前記固定プラテンと前記トグルサポートの間の少なくとも一部において面取りされた又は面取りされていない正方形の断面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記断面積は、前記2以上の異なる投影幅の中で最大の投影幅を直径とする仮想円の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項5】
前記2以上の異なる投影幅の最大値は、前記2以上の異なる投影幅の最小値の3倍以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項6】
前記複数のタイバーの少なくとも一つは、前記固定プラテン又は前記トグルサポートに設けられた孔部に挿入される挿入端部を有し、前記最小の投影幅は、前記タイバーの軸方向に直交するある断面における前記挿入端部の直径に実質的に等しいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項7】
前記複数のタイバーの少なくとも一つは、前記固定プラテン又は前記トグルサポートに設けられた孔部に挿入される挿入端部を有し、前記2以上の異なる投影幅の中で最大の投影幅は、前記タイバーの軸方向に直交するある断面における前記挿入端部の直径の1.2倍以上であり、3倍以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項8】
前記挿入端部は、少なくとも部分的に螺旋状にネジ溝が形成された円柱状部分であることを特徴とする請求項6又は7に記載の型締装置。
【請求項9】
前記複数のタイバーの少なくとも一つ又は各々が、前記固定プラテンと前記トグルサポートの各孔部に挿入される挿入端部の間を延びるその中間部の実質的に全長において、前記最小の投影幅を直径とする仮想円の面積よりも大きい断面積を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項10】
前記複数のタイバーの各々が、前記最小の投影幅を直径とする仮想円の面積よりも大きい断面積を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項11】
リニアガイドを更に備え、前記可動プラテンが前記リニアガイドにより移動可能に支持され、かつ前記タイバーに対して機械的に結合されていないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項12】
型締装置のタイバーであって、
第1端部と、
第2端部と、
前記第1及び第2端部の間を延びる中間部を備え、
前記中間部は、
(i)当該タイバーの軸方向に直交し、かつお互いに異なる方向に伝播する平行光により照明される時、前記タイバーの軸方向に直交する2以上の異なる投影幅を有するように形状付けられ、及び
(ii)その全長の少なくとも一部において前記2以上の異なる投影幅の中で最小の投影幅を直径とする仮想円よりも大きい断面積を有する、タイバー。
【請求項13】
前記中間部は、面取りされた又は面取りされていない四角形の断面を有することを特徴とする請求項12に記載のタイバー。
【請求項14】
前記中間部は、面取りされた又は面取りされていない正方形の断面を有することを特徴とする請求項12又は13に記載のタイバー。
【請求項15】
前記断面積は、前記2以上の異なる投影幅の中で最大の投影幅を直径とする仮想円の面積よりも小さいことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載のタイバー。
【請求項16】
前記2以上の異なる投影幅の最大値は、前記2以上の異なる投影幅の最小値の3倍以下であることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載のタイバー。
【請求項17】
前記最小の投影幅は、前記タイバーの軸方向に直交するある断面における前記第1端部の直径に実質的に等しいことを特徴とする請求項12乃至16のいずれか一項に記載のタイバー。
【請求項18】
前記2以上の異なる投影幅の中で最大の投影幅は、前記タイバーの軸方向に直交するある断面における前記第1端部の直径のルート2倍以上であり、3倍以下であることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか一項に記載のタイバー。
【請求項19】
前記第1端部は、少なくとも部分的に螺旋状にネジ溝が形成された円柱状部分であることを特徴とする請求項17又は18に記載のタイバー。
【請求項20】
前記ネジ溝は、型厚調整のために設けられることを特徴とする請求項19に記載のタイバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、型締装置及びタイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数本のタイバーのバランス調整のため、タイバーの断面積を擬似的に増加する調整部品をタイバーに取り付けることが開示されている(段落0014、0016、
図4、及び
図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目標とする型締力を得るため、金型装置の型タッチ(即ち、固定金型と可動金型が接触した状態)の後、トグル機構のクロスヘッドを更に推進して可動プラテンを型締方向に動かすことが要求される。目標とする型締力の実現のために必要な可動プラテンの移動距離は、追込み量(又は、押し込む量)と呼ばれる(
図10参照)。追込み量が大きい場合、このために用いられる駆動系(例えば、型締モータ及び/又はボールねじ)のスペックが高まってしまうこと、或いは、型締の度に相対的に大きな電力が必要となって型締装置の消費電力の低減が図れないことが懸念される。
【0005】
本願発明者は、上述の問題点に鑑みて可動プラテンの追込み量を低減するという新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る型締装置は、固定プラテン、可動プラテン、トグル機構、及びトグルサポートを含み、前記トグル機構を介して前記トグルサポートと前記可動プラテンが連結され、前記トグル機構の作動に基づいて前記可動プラテンが前記固定プラテンに対して進退可能である型締装置であって、
前記固定プラテンと前記トグルサポートの間を延びて前記固定プラテンと前記トグルサポートをお互いに連結する複数のタイバーを更に含み、
前記複数のタイバーの少なくとも一つは、
(i)その軸方向に直交し、かつお互いに異なる方向に伝播する平行光により照明される時、前記タイバーの軸方向に直交する2以上の異なる投影幅を有するように形状付けられ、及び
(ii)少なくとも前記固定プラテンと前記トグルサポートの間の少なくとも一部において前記2以上の異なる投影幅の中で最小の投影幅を直径とする仮想円の面積よりも大きい断面積を有する。
【0007】
本開示の一態様に係る型締装置のタイバーは、
第1端部と、
第2端部と、
前記第1及び第2端部の間を延びる中間部を含み、
前記中間部は、
(i)当該タイバーの軸方向に直交し、かつお互いに異なる方向に伝播する平行光により照明される時、前記タイバーの軸方向に直交する2以上の異なる投影幅を有するように形状付けられ、及び
(ii)その全長の少なくとも一部において前記2以上の異なる投影幅の中で最小の投影幅を直径とする仮想円よりも大きい断面積を有する。
【0008】
本開示の一態様によれば、可動プラテンの追込み量の低減が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の一態様に係る型締装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【
図3】本開示の一態様に係るタイバーの概略的な側面図である。
【
図4】タイバーの第1挿入端部にネジ溝が設けられることを示す図である。
【
図5】タイバーの断面図であり、(a)がその第1挿入端部の断面図を示し、(b)がその第2挿入端部の断面図を示し、(c)がその中間部の断面図を示す。
図5(c)において、
図5(a)の円C1を点線で示し、
図5(b)の円C2を一点鎖線で示す。
【
図6】タイバーの中間部が第1投影幅を有することを示す図である。
【
図7】タイバーの中間部が第2投影幅を有することを示す図である。
【
図8】タイバーの中間部が長方形の断面を有することを示し、かつ平行に延びるタイバーの間に所定の間隙が設定されることを示す模式図である。
【
図9】タイバーの中間部の概略的な上面図であり、タイバーの軸方向において幅広部と幅狭部が交互に設けられる。
【
図10】可動プラテンの追込み量及びその改善を説明するために参照されるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1乃至
図10を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された型締装置にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な型締装置にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0011】
図1に示すように、射出成形機1は、共通又は異なるベース4上に実装された型締装置2及び射出装置3を有する。射出成形機1は、型締装置2と射出装置3の協調的な動作に基づいて成形品を連続的に製造する。型締装置2は、型閉、型締、及び型開のループを繰り返すように構成される。射出装置3は、計量工程、充填工程、及び保圧工程のループを繰り返すように構成される。型締装置2に対して金型装置5が取り付けられる。金型装置5の具体的な構成は、射出成形品の形状、大きさ、及び個数によって決定される。金型装置5は、2プレート式又は3プレート式であり得る。幾つかの形態では、金型装置5は、1以上の固定金型51及び1以上の可動金型52を有する。
【0012】
以下、型締装置2及び射出装置3の構成及び動作についてより詳しく述べる。型締装置2は、固定プラテン21、可動プラテン22、トグル機構23、トグルサポート24、複数のタイバー25、型締モータ26、及び型厚調整機構27を有する。トグル機構23を介してトグルサポート24と可動プラテン22が連結され、トグル機構23の作動に基づいて可動プラテン22が固定プラテン21に対して進退可能である。具体的には、型締モータ26の作動によりトグル機構23の状態が変化し、可動プラテン22の位置が変化する。固定プラテン21と可動プラテン22の間隔が大きい時、固定プラテン21と可動プラテン22の間の空間に金型装置5を導入することができる。この状態で、固定及び可動金型51,52が、各々、固定及び可動プラテン21,22に取り付けられる。この後、可動プラテン22が固定プラテン21に向けて動かされて金型装置5が型閉、続いて型締され、最後に型開される。なお、型閉は、固定金型51の対向面と可動金型52の対向面が接触して固定金型51の半キャビティーと可動金型52の半キャビティーが空間的に連通した状態である。型締は、射出装置3から材料の射出圧に耐えるべく、可動金型52が固定金型51により強く押し付けられた状態である。型開は、固定金型51の対向面と可動金型52の対向面が接触せず、両者の間に間隔が空けられた状態である。
【0013】
トグル機構23は、型締モータ26から駆動力を受けるクロスヘッド23a、トグルサポート24と可動プラテン22の間で枢動自在に結合した第1及び第2リンク23b,23c、クロスヘッド23aと第1リンク23bの間を結合する第3リンク23dを有する。型締モータ26で生成される回転力は、ベルト261を介してボールねじ262といった力変換装置によって直線的な推力に変換されてクロスヘッド23aに付与される。例えば、型締モータ26の出力軸の正回転に応じてクロスヘッド23aが固定プラテン21に向けて直進し、第1リンク23bと第2リンク23cのなす角が大きくなり、可動プラテン22が固定プラテン21に向けて直進する。型締モータ26の出力軸の逆回転に応じてクロスヘッド23aが固定プラテン21から離間する方向に動かされ、第1リンク23bと第2リンク23cのなす角が小さくなり、可動プラテン22が固定プラテン21から離れる方向に直進する。なお、型締装置2において可動プラテン22及びそこに取り付けられた可動金型52が固定プラテン21及びそこに取り付けられた固定金型51に向けて移動する方向を前側又は射出装置側と定義し、この反対方向を後側又は反射出成形装置側と定義することもできる。
【0014】
トグル機構23は、クロスヘッド23aに付与される推力を倍増して可動プラテン22に伝達するように作動する。その倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク23bと第2リンク23cとのなす角に応じて変化する。第1リンク23bと第2リンク23cのなす角が180°に近づくとトグル倍率も増加する。
【0015】
型厚調整機構27は、固定プラテン21に対するトグルサポート24の位置(両者の前後間隔、言わば、型厚)を調整するように構成される。型厚調整機構27は、型厚調整モータ27aを含む。型厚調整モータ27aで生成される回転力が、ベルト271を介してタイバー25の後端部のねじ軸に螺合したナットに伝達し、タイバー25沿いのトグルサポート24の位置が変更され、固定プラテン21に対するトグルサポート24の位置(即ち、両者の間隔)が変更される。型厚調整モータ27aの回転力は、ベルト及び歯車といった伝達要素を介して(又は直接的に)ナットに伝達される。
【0016】
型締装置2は、金型装置5から成形品を排出するためのエジェクタ装置28を含む。エジェクタ装置28は、例えば、可動プラテン22の後方に取り付けられる。エジェクタ装置28は、エジェクタロッドと、エジェクタロッドに対して動力を供給するエジェクタモータを含む。エジェクタモータで生成される回転力がボールねじにより直線力に変換され、エジェクタロッドに伝達する。エジェクタロッドを前進させると、これにより金型装置5のエジェクタプレートが押される。エジェクタピンにより可動金型52の成形品が押され、金型装置5から排出される。射出成形機1は、型開に同調してエジェクタ装置を作動させる。
【0017】
射出装置3は、型締装置2に取り付けられた金型装置5に対して溶融樹脂材料を供給する。射出装置は、インラインスクリュー式又はプリプラ式であり得る。本明細書では、射出装置がインラインスクリュー式であるものとして説明するが、これに限られるべきものではない。射出装置3は、シリンダー31、スクリュー32、ヒーター33、計量モータ34、射出モータ35、移動モータ36、ガイドレール37、第1可動サポート38、及び第2可動サポート39を有する。
【0018】
シリンダー31は、スクリュー32を収容する金属製の筒材であり、シリンダー胴部31aとノズル部31bを有する。シリンダー胴部31aは、スクリュー32を収容する。ノズル部31bは、シリンダー胴部31aの流路径に比べて小さい流路径を持つ直線流路を有し、またシリンダー胴部31aから供給される溶融プラスチック材料を吐出する吐出口を有する。シリンダー胴部31aは、ホッパー31f又は自動化されたプラスチック材料供給装置から供給されるプラスチック材料、例えば、ペレットを受け入れる材料供給口31cを有する。ペレットは、シリンダー胴部31aを介してヒーター33から伝達する熱に応じて溶融し、またスクリュー32の回転に応じて前側、即ち、ノズル部31bに向けて搬送される。なお、後述の説明から分かるように、充填時のスクリュー32の移動方向が前側であり、計量時のスクリュー32の移動方向が後側である。
【0019】
スクリュー32は、軸部と軸部の外周に螺旋状に設けられたフライトを有し、その回転に応じて固体及び溶融状態の樹脂材料をシリンダー31の前側に搬送する。スクリュー32は、計量モータ34からの回転力を受けて回転することができる。例えば、計量モータ34の出力軸とスクリュー32がベルト341を介して機械的に連結される。また、スクリュー32は、射出モータ35からの駆動力を受けて静止中のシリンダー31内において前側(ノズル部31bに接近する側)及び後側(ノズル部31bから離れる側)に動くことができる。例えば、射出モータ35の出力軸がボールねじ351のねじ軸にベルト353を介して連結される。ボールねじ351のナット352に対して第1可動サポート38が固定される。第1可動サポート38に対してスクリュー32が回転可能に取り付けられる。同様、第1可動サポート38に対して計量モータ34の本体部が固定される。射出モータ35の作動に応じて第1可動サポート38が移動し、スクリュー32及び計量モータ34が移動する。第1可動サポート38は、ベース4に固定されたガイドレール37上に移動可能に実装される。型締装置2に向かう方向を前方とし、型締装置2から離れる方向を後方と呼ぶことができる。
【0020】
シリンダー31は、移動モータ36からの駆動力を受けて型締装置2に向けて前進し、また型締装置2から離れるように後退する。例えば、移動モータ36の出力軸がボールねじ361のねじ軸に連結される。ボールねじ361のナット362に対して弾性部材(例えば、ばね)363を介して第2可動サポート39が結合される。第2可動サポート39に対してシリンダー31がその後端部で固定される。移動モータ36の作動に応じて第2可動サポート39及びシリンダー31が移動する。第2可動サポート39は、ベース4に固定されたガイドレール37上に移動可能に実装される。なお、各モータにはエンコーダといった計器が組み込まれ得る。エンコーダの出力信号に基づいてモータがフィードバック制御される。
【0021】
スクリュー32の先端(前端)には逆流防止リング(不図示)が取り付けられる。逆流防止リングは、スクリュー32がシリンダー31内においてノズル部31b側に動かされる時、貯留空間31eに貯留した溶融プラスチック材料が逆流することを抑制する。
【0022】
ヒーター33は、シリンダー31の外周に取り付けられ、例えば、フィードバック制御された通電により発熱する。ヒーター33は、シリンダー胴部31a及び/又はノズル部31bの外周に任意の態様で取り付けられる。
【0023】
射出装置3の動作の概要について述べれば、ヒーター33からシリンダー31に対して熱を与え、ホッパー31fを介してシリンダー胴部31a内に供給されるペレットが溶融される。計量モータ34からの回転力に応じてシリンダー胴部31a内でスクリュー32が回転し、スクリュー32の螺旋状の溝に沿ってプラスチック材料が前側に送られ、この過程でプラスチック材料が徐々に溶融される。スクリュー32の前側に溶融プラスチック材料が供給されるに応じてスクリュー32が後退し、溶融プラスチック材料が貯留空間31eに貯留される(「計量工程」と呼ばれる)。スクリュー32の回転数は、計量モータ34のエンコーダを用いて検出する。計量工程では、スクリュー32の急激な後退を制限すべく、射出モータ35を駆動してスクリュー32に対して背圧を加えてよい。スクリュー32に対する背圧は、例えば圧力検出器を用いて検出する。スクリュー32が計量完了位置まで後退し、スクリュー32の前方の貯留空間31eに所定量の溶融プラスチック材料が蓄積され、計量工程が完了する。
【0024】
計量工程に続いて、射出モータ35からの駆動力に応じてスクリュー32がノズル部31bに向けて充填開始位置から充填完了位置まで動き、貯留空間31eに貯留された溶融プラスチック材料がノズル部31bの吐出口を介して金型装置5内に供給される(「充填工程」と呼ばれる)。スクリュー32の位置や速度は、例えば射出モータ35のエンコーダを用いて検出する。スクリュー32の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュー32の設定速度は、スクリュー32の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0025】
充填工程においてスクリュー32の位置が設定位置に達した時、その設定位置にスクリュー32を一時停止させ、その後にV/P切換を行ってもよい。V/P切換の直前において、スクリュー32の停止の代わりに、スクリュー32の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュー32の位置を検出するスクリュー位置検出器、およびスクリュー32の速度を検出するスクリュー速度検出器は、射出モータ35のエンコーダに限定されず、他の種類の検出器を使用できる。
【0026】
充填工程に続いて、スクリュー32の前側移動に応じてスクリュー32の前方のプラスチック材料の保持圧が設定圧に維持され、残存するプラスチック材料が金型装置5に押し出される(「保圧工程」と呼ばれる)。金型装置5内での冷却収縮による不足分のプラスチック材料を補充できる。保持圧は、例えば圧力検出器を用いて検出する。保持圧の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間に応じて変更されてもよい。保圧工程では金型装置5内のキャビティーのプラスチック材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティーの入口が固化したプラスチック材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティーからのプラスチック材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティーのプラスチック材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に次の成形サイクルの計量工程が開始されても良い。
【0027】
保圧工程に続いて、上述の計量工程が行われる。
【0028】
射出成形機1は、型締装置2及び/又は射出装置3を制御するための制御システムが格納された制御盤7(
図1参照)を有する。制御盤7に格納される制御システムは、型締モータ26、エジェクタモータ、計量モータ34、及び射出モータ35をシーケンス制御する。制御システムは、型締モータ26の制御に基づいて、型閉、型締、及び型開を行う。制御システムは、計量モータ34及び射出モータ35の制御に基づいて、計量、充填、保圧を行う。制御システムは、エジェクタモータの制御に基づいて金型装置5の可動金型52から成形品を突き出すことができる。制御システムは、移動モータ36の制御に基づいてシリンダー31を適切な位置に位置付けることができる。制御システムは、上述の制御に加えて、ヒーター33及び金型装置5の温調も制御することができる。
【0029】
例えば、一回の成形サイクルにおいて、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程がこの順で行われる。ここで述べた順番は、各工程の開始時間の早い順である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。
【0030】
図2に型締装置2の簡略的な斜視図を示し、ここでは、4本のタイバー25の図示のためにトグル機構23の図示が省略されている。
図2に示すように、型締装置2は、可動プラテン22が実装される1つ又は複数のリニアガイド29を有する。リニアガイド29は、レール29aと、レール29a上を走行可能な1つ又は複数の走行体29bを有する。可動プラテン22は、リニアガイド29の走行体29bに対して固定され、その安定した直線移動が確保される。なお、リニアガイド29は、固定プラテン21とトグルサポート24の間の全長に亘って設けられるが、必ずしもこの限りではない。
【0031】
可動プラテン22は、リニアガイド29により支持されており、タイバー25に対しては何ら機械的に結合されておらず、いわば、フリー状態にある。例えば、可動プラテン22にタイバー25が挿通される孔が設けられ、この孔の直径がタイバー25の挿通部分の幅よりも大きい。結果として、可動プラテン22とタイバー25が非接触になる。勿論、このような形態に限らず、可動プラテン22がタイバー25とブッシュによって機械的に結合されても良い。
【0032】
タイバー25は、固定プラテン21とトグルサポート24の間を延びて固定プラテン21とトグルサポート24をお互いに連結するものであり、鋳造により製造され、又は鋳造された金属材の切削加工により製造される。タイバー25は、典型的には、金属又は合金等の単一材料から成る。
【0033】
図2に加えて
図3を参照して理解されるように、各タイバー25は、トグルサポート24に設けられた孔部に挿入される第1挿入端部(単に第1端部とも呼ぶ)61と、固定プラテン21に設けられた孔部に挿入される第2挿入端部(単に第2端部とも呼ぶ)62と、第1及び第2挿入端部61,62の間を延びる中間部63を有する。第1及び第2挿入端部61,62は、いずれも円柱状部分である。例えば、第1挿入端部61は、型厚調整のためのネジ溝が設けられた円柱状部分である(
図4参照)。第2挿入端部62は、タイバー25の軸方向において1つ又は2つの縮径部62pを有するが、必ずしもこの限りではない(
図3参照)。第1挿入端部61の形状は、トグルサポート24との連結態様に応じて変更可能である。同様、第2挿入端部62の形状は、可動プラテン22との連結態様に応じて変更可能である。第1挿入端部61と中間部63の境界は、両者の断面形状の違いにより決定されるが、この代替として固定プラテン21に挿入されるか否かに基づいて決定することもできる。第2挿入端部62と中間部63の境界は、両者の断面形状の違いにより決定されるが、この代替としてトグルサポート24に挿入されるか否かに基づいて決定することもできる。
【0034】
図3に示す平面PL1~PL3におけるタイバー25の断面形状を
図5(a)~(c)に示す。なお、各平面PL1~PL3は、お互いに平行であり、(型締方向に平行な)タイバーの軸方向に直交する。
図5(a)に示すように第1挿入端部61の断面形状は、直径R1の円である。なお、第1挿入端部61にネジ溝が設けられる場合、直径R1の円の軌跡上にはネジ山の頂点位置が含まれる。即ち、直径R1は、第1挿入端部61の最大径である。
図5(b)に示すように第2挿入端部62の断面形状は、直径R2の円である。なお、第2挿入端部62に縮径部62pが設けられる場合、縮径部62p以外の第2挿入端部62の部分にてその断面が取られる。即ち、直径R2は、第2挿入端部62の最大径である。
【0035】
図5(c)に示すように、中間部63の断面形状は、一辺の長さをL1とし、対角線の長さをL2とする正方形である。
が成立する。本実施形態においては、タイバー25(特には、中間部63)は、その軸方向に直交し、かつお互いに異なる方向に伝播する平行光により照明される時、その軸方向に直交する2以上の異なる投影幅を有するように形状付けられる(例えば、4角以上の多角形)。
【0036】
図6に示すように天地方向に平行に天側から地側に向かって平行光でタイバー25の中間部63に照射する時、タイバー25によって平行光が妨げられることによってタイバー25の形状に対応して投影像が形成される。具体的には、上述のタイバー25の断面形状の一辺の長さL1に等しい投影幅L1の投影像が形成される。なお、この投影幅L1は、タイバー25の軸方向に直交する方向の幅である。
【0037】
同様、
図7に示すように天地方向に対して45°をなす方向に平行光でタイバー25の中間部63に照射する時、タイバー25によって平行光が妨げられることによってタイバー25の形状に対応して投影像が形成される。具体的には、上述のタイバー25の断面形状の対角線の長さL2に等しい投影幅L2の投影像が形成される。なお、この投影幅L2は、タイバー25の軸方向に直交する方向の幅である。なお、天側から地側に向けて平行光が伝播するように設定されているが、天地方向とタイバー25の長手方向に直交する横方向(射出成形機1における操作側と反操作側に関する方向)に平行光が伝播するように設定しても良く、この場合にも後述と同様の特徴が理解可能である。
【0038】
タイバー25の中間部63の断面積(=一辺の長さL1の2倍)は、
図6,7に示した投影幅L1,L2の中で最小の投影幅L1を直径とする仮想円の面積よりも大きい。このような場合、タイバー25の中間部63の剛性が高まり(即ち、4/π倍)、可動プラテン22の追込み量の低減が促進される。追込み量の低減によって、小さい追込み量に応じた駆動系(例えば、型締モータ及び/又はボールねじ)を採用することができ、型締装置のコスト低減を図ることができ、また、この効果の追加又は代替として、型締装置の型締に必要な電力が低減され、型締装置の消費電力の低減を図ることができる。なお、追込み量の低減のため、型締方向における変形が相対的に大きいと考えられるタイバー25の剛性を高めることが効果的である。
【0039】
上記段落で述べた特徴は、
図5(c)の正方形K1に
図5(a)の円C1が内接することからも理解可能であるが、第1挿入端部61が円形の断面形状を有することは必須ではない。第1挿入端部61が
図5(c)と同一の断面形状を有する形態も想定される。
図5(c)の正方形K1の面積は、
図5(b)の円C2の面積よりも大きいが、必ずしもこの限りではない。
【0040】
タイバー25の中間部63の断面積(=2×L1)は、
図6,7に示した投影幅L1,L2の中で最大の投影幅L2を直径とする仮想円の面積以下又は未満としても良い。これによって、タイバー25の中間部63の断面積の増加を適切な範囲内とすることができる。場合によっては、タイバー25の中間部63の断面積の増加に伴ってタイバー25間の間隙(例えば、水平間隔D1(
図2参照))が短縮してしまうことが抑制される。なお、タイバー25間の水平間隔D1が短縮されると、タイバー25間の間隙を介して従前から使用してきた金型装置5を取り付けることが困難になるおそれがある。
【0041】
タイバー25の剛性の増加とタイバー25間の間隙(例えば、水平間隔D1)の確保を両立する観点から、幾つかの場合、上述の最小の投影幅L1は、第1挿入端部61の直径(例えば、最大径)R1に実質的に等しい。追加又は代替として、上述の最大の投影幅L2は、タイバー25の軸方向に直交するある断面における第1挿入端部61の直径(例えば、最大径)R1の1.2倍(又は2の正の平方根(ルート2)倍)以上であり、(必ずしももこの上限に限らないが)3倍以下であり、上述の剛性と間隙の両立が促進される。なお、実質的に等しいことは、5%の誤差範囲内にあることを意味する。即ち、一辺長L1が、直径R1と異なるとしても、直径R1×0.95~直径R1×1.05の範囲内にあれば直径R1に実質的に等しいと言える。タイバー25の中間部63の断面形状及び面取りの有無によっては、最大の投影幅L2が、第1挿入端部61の直径R1の1.2倍~2の正の平方根(ルート2)倍の範囲内になることも想定される。
【0042】
タイバー25の中間部63の断面形状は、伝統的又は慣行として円形であり、できるだけ細いことが好まれていた。この慣行は、タイバー25の間の間隙を介した金型装置5の取付、型厚調整用のねじ溝の形成、タイバーの形状出しといった様々な要因に起因すると考えられる。しかしながら、本願発明者の検討によれば、このような慣行は、必ず遵守しなければならないものでもない。例えば、可動プラテン22がリニアガイド29上で移動可能に支持され、タイバー25に対してフリーな(機械的に結合していない)状態にある場合、タイバー25の中間部63の断面形状を正方形又は長方形に変更してもその移動に何ら影響しない。また、第1挿入端部61について選択的にその断面形状を円形とし、そこに型厚調整用のねじ溝を形成すれば従来通りに型厚調整可能である。また、タイバー25の中間部63の断面積を適切な範囲内とすることにより従来から使用してきた金型装置5の使用も妨げられない。
【0043】
タイバー25の中間部63の断面形状は、必ずしも正方形である必要はなく、正方形以外の四角形(例えば、長方形、平行四辺形)であっても構わなく、更には五角形、六角形などの他の多角形であっても構わない。
図8に示す場合、タイバー25の中間部63の断面形状は、短辺長L3、長辺長L4、及び対角線長L5の長方形である。タイバー25の中間部63は、天側又は地側に短辺が配置される又は向くように配向されており、そうでない場合と比べてタイバー25の中間部63同士の間隔(例えば、水平間隔D2)が短くなることが抑制される。
【0044】
図6及び
図7を参照して行った考察と同様、
図8に示したタイバー25の中間部63の長方形の断面形状について考察することができる。すなわち、天地方向に平行に天側から地側に向かって平行光で
図8のタイバー25の中間部63に照射する時、タイバー25によって平行光が妨げられることによってタイバー25の形状に対応して投影像が形成される。具体的には、上述のタイバー25の断面形状の短辺の長さL3に等しい投影幅L3の投影像が形成される。同様、天地方向に対して90°をなす水平方向に平行光で
図8のタイバー25の中間部63に照射する時、タイバー25によって平行光が妨げられることによってタイバー25の形状に対応して投影像が形成される。具体的には、上述のタイバー25の断面形状の長辺の長さL4に等しい投影幅L4の投影像が形成される。タイバー25の中間部63に対する平行光の角度によっては投影幅L5の投影像が形成されることも同様に理解される。
【0045】
図8に示す場合においてもタイバー25の中間部63の断面積(=短辺の長さL3×長辺の長さL4)は、投影幅L3,L4,L5の中で最小の投影幅L3を直径とする仮想円の面積よりも大きい。同様、タイバー25の中間部63の断面積は、投影幅L3,L4,L5の中で最大の投影幅L5を直径とする仮想円の面積以下又は未満である。
【0046】
長方形の場合、短辺長L3が長辺長L4よりも極端に小さいことは望ましくない。このような観点から、2以上の異なる投影幅の最大値L4は、2以上の異なる投影幅の最小値L3の3倍又は2.5倍又は2倍又は1.5倍以下に設定される。長方形以外の形状についても同様に考えることができる。
【0047】
なお、
図8に示す長方形の短辺長L3は、
図5(c)に示した正方形の一辺長L1よりも大きい。同様、対角線長L5は、
図5(c)に示した正方形の対角線長L2よりも大きい。
図8の長方形の断面積は、
図5(c)の正方形の断面積よりも大きく、タイバー25の中間部63の剛性が更に高められる。
【0048】
繰り返すが、タイバー25の中間部63の断面形状として、四角形の他、五角形、六角形、八角形等も採用可能であり、当業者により様々に決定可能である。念のため述べれば、正方形、長方形、又は他の多角形の角部に面取りを施しても良いし、施さなくても良い。面取りとして平坦面又は湾曲面が形成され得る。
図3に示したタイバー25の中間部63は、面取りされた正方形状の断面を有する。
図5(c)では面取りの図示が省略されている。
【0049】
タイバー25において上述の仮想円(即ち、最小の投影幅L1を直径とする仮想円)の面積よりも大きい断面積を有する部分は、タイバー25の中間部63の全長に限らず、タイバー25の中間部63の一部でも良い。この特徴点の説明のために
図9を参照すると、タイバー25の中間部63には、天側から見た時、タイバー25の軸方向において幅L1の幅広部63mと幅L9の幅狭部63nが交互に設けられる。このようにタイバー25の中間部63について様々な変形例が考えられ、例えば、
図9に示した複数の幅広部63mのうち一つのみを残し、残りの全てを幅狭部63nに置換することもできる。このように、タイバー25は、その中間部63の少なくとも一部において上述の仮想円(即ち、最小の投影幅L1を直径とする仮想円)の面積よりも大きい断面積を有していれば良く、その全長においてその断面積を有する必要はない。
【0050】
勿論、上述の断面積の部分が中間部63においてより長く設けられることがタイバー25の剛性の向上のために好ましい。このような観点から、ある幾つかの場合、トグル機構23が最短に短縮した状態(例えば、型締装置の型開状態)において、タイバー25の中間部63は、少なくとも(トグル機構23のその状態に対応して位置付けられた)可動プラテン22とトグルサポート24との間の全長において、上述の仮想円(即ち、最小の投影幅L1を直径とする仮想円)の面積よりも大きい断面積を有する。別の幾つかの場合、トグル機構23が最長に伸長した状態(例えば、型締装置の型締状態)において、タイバー25の中間部63は、少なくとも(トグル機構23のその状態に対応して位置付けられた)可動プラテン22とトグルサポート24との間の全長において、上述の仮想円(即ち、最小の投影幅L1を直径とする仮想円)の面積よりも大きい断面積を有する。
【0051】
上述の説明から分かるようにタイバー25の断面積の増加によってタイバー25の剛性が高められ、端的には、可動プラテンの追込み時に生じ得るタイバー25の変形又は歪が低減される。結果として、可動プラテンの追込み量が低減可能となり、これに応じた駆動系(例えば、型締モータ及び/又はボールねじ)の採用が許容され、或いは、型締装置の消費電力の低減が促進される。追込み量の低減は、モータ負荷の低減を意味し、従って、より低い定格出力のモータの採用が許容される。また、より短いボールねじの採用が許容される。
【0052】
第1挿入端部61が中間部63と異なる断面形状を有することは必須ではない。同様、第2挿入端部62が中間部63と異なる断面形状を有することは必須ではない。第1挿入端部61、第2挿入端部62、及び中間部63の全長においてタイバー25が
図5(c)に示した正方形、
図8に示した長方形の断面、又は他の4角以上の多角形状を有することも可能である。
【0053】
図10では、タイバー25の中間部が直径R1の円形の断面形状を有する場合に必要な追込み量が実線から理解でき、タイバー25の中間部が
図5(c)に示す正方形の断面形状を有する場合に必要な追込み量が点線から理解できる。このようにタイバー25の断面形状の増加によって可動プラテン22の追込み量を半減することも見込まれる。なお、一例として述べると、型締力の目標値は、1000kNである。追込み量と同様、(
図10において一点鎖線で示される)クロスヘッド23aの推力も低減される。クロスヘッド23aの推力の最大値は、30kNから18kN付近まで低下する。
【0054】
図1に図示のトグル機構23は、共通のクロスヘッド23aに対して天側及び地側の合計2つのトグル機構(サブトグル機構と呼んでも良い)が設けられたものであるが、その一方を省略してシングルトグル機構とすることもできる。
【0055】
型締装置は、金型の開閉が天地方向に直交する水平方向である横型に限らず、金型の開閉が天地方向である竪型にも活用可能である。
【符号の説明】
【0056】
2 :型締装置
21 :固定プラテン
22 :可動プラテン
23 :トグル機構
24 :トグルサポート
25 :タイバー
29 :リニアガイド
61 :第1挿入端部
62 :第2挿入端部
63 :中間部