(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015005
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/10 20060101AFI20220114BHJP
F16D 67/02 20060101ALI20220114BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D67/02 K
F16D63/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117579
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 敦司
(72)【発明者】
【氏名】大矢 悠生
(72)【発明者】
【氏名】芝野 宏
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AB21
3J058AB28
3J058AB34
3J058BA68
3J058CC45
3J058CC46
3J058CD30
(57)【要約】
【課題】ブレーキ装置の更なる薄型化を図り得る構成を提供する。
【解決手段】第1カム24には、レバー部材21に締結されたタッピングネジ27が入り込む溝部24cが形成され、カバー22には、レバー部材21に締結されたタッピングネジ27が挿通する挿通孔22dが設けられ、この挿通孔22dは、レバー部材21の回動に伴って移動するタッピングネジ27に接触しないように長孔状に形成される。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーの操作に応じて入力部材から入力されるトルクを回動伝達部材を介して出力部材へ伝達して出力するとともに、前記入力部材に入力されるトルクがなくなると前記出力部材の回動を規制する車両シート用のブレーキ装置であって、
前記入力部材は、
前記操作レバーが締結部材を利用して締結されるレバー部材と、
前記レバー部材に同軸的に連結されて、外周面に一対のカム面が複数形成される入力側カムと、
前記入力側カムに対して同軸的に配置される前記回動伝達部材の内周面と前記カム面とによって形成されるくさび形空間に入り込むことで、前記回動伝達部材と前記入力側カムとの相対回動を規制するための複数の入力側ローラーと、
前記レバー部材と前記入力側カムとの間に介在し、前記一対のカム面にそれぞれ対応する前記入力側ローラー間に位置するように規制部が設けられる入力側カバーと、
前記複数の入力側ローラーを前記規制部に向けて付勢する付勢部材と、
を備え、
前記入力側カムには、前記レバー部材に締結された前記締結部材が入り込む溝部が形成され、
前記入力側カバーには、前記レバー部材に締結された前記締結部材が挿通する挿通孔が設けられ、前記挿通孔は、前記レバー部材の回動に伴って移動する前記締結部材に接触しないように長孔状に形成されることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記レバー部材は、平板状であって、底縁と前記底縁に連なるように対向する一方の側縁及び他方の側縁とからなる凹部が、外縁に対して内方に凹むように複数設けられ、
前記入力側カバーには、一方向への回動時に前記一方の側縁に当接し、他方向への回動時に前記他方の側縁に当接するガイド片が、前記凹部ごとに設けられることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シート用のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両シートに配設されて、車両シートの姿勢調整において入力部材から出力部材に伝達されるトルクを制御するブレーキ装置に関する技術として、例えば、下記特許文献1に開示される装置が知られている。この装置は、操作レバーの操作に応じてレバー部材等の入力部材から入力されるトルクを、回動伝達部材を介して、ピニオンギヤ等の出力部材へ伝達して出力し、入力されるトルクがなくなると出力部材の回動を規制するクラッチ装置として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1では、レバー部材を付勢する第1スプリングやリテーナ等を付勢する第2スプリングが配置される部位と、入力側カム及び入力側ローラーやリテーナが配置される部位とが軸方向に積み上げられる構造となっている。このような構造では、シートの小型軽量化等の要求に伴うブレーキ装置の更なる薄型化(軸方向の長さの短縮化)が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ブレーキ装置の更なる薄型化を図り得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
操作レバー(104)の操作に応じて入力部材(20)から入力されるトルクを回動伝達部材(40)を介して出力部材(30)へ伝達して出力するとともに、前記入力部材に入力されるトルクがなくなると前記出力部材の回動を規制する車両シート用のブレーキ装置(10)であって、
前記入力部材は、
前記操作レバーが締結部材(27)を利用して締結されるレバー部材(21)と、
前記レバー部材に同軸的に連結されて、外周面に一対のカム面(24a)が複数形成される入力側カム(24a)と、
前記入力側カムに対して同軸的に配置される前記回動伝達部材の内周面(41a)と前記カム面とによって形成されるくさび形空間に入り込むことで、前記回動伝達部材と前記入力側カムとの相対回動を規制するための複数の入力側ローラー(25)と、
前記レバー部材と前記入力側カムとの間に介在し、前記一対のカム面にそれぞれ対応する前記入力側ローラー間に位置するように規制部(22e)が設けられる入力側カバー(22)と、
前記複数の入力側ローラーを前記規制部に向けて付勢する付勢部材(26)と、
を備え、
前記入力側カムには、前記レバー部材に締結された前記締結部材が入り込む溝部(24c)が形成され、
前記入力側カバーには、前記レバー部材に締結された前記締結部材が挿通する挿通孔(22d)が設けられ、前記挿通孔は、前記レバー部材の回動に伴って移動する前記締結部材に接触しないように長孔状に形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、操作レバーの操作に応じて入力されるトルクを回動伝達部材を介して出力部材へ伝達する入力部材は、操作レバーが締結部材を利用して締結されるレバー部材と、レバー部材に同軸的に連結されて外周面に一対のカム面が複数形成される入力側カムと、入力側カムに対して同軸的に配置される回動伝達部材の内周面とカム面とによって形成されるくさび形空間に入り込むことで回動伝達部材と入力側カムとの相対回動を規制するための複数の入力側ローラーと、レバー部材と入力側カムとの間に介在し一対のカム面にそれぞれ対応する入力側ローラー間に位置するように規制部が設けられる入力側カバーと、複数の入力側ローラーを規制部に向けて付勢する付勢部材と、を備えるように構成される。そして、入力側カムには、レバー部材に締結された締結部材が入り込む溝部が形成され、入力側カバーには、レバー部材に締結された締結部材が挿通する挿通孔が設けられ、この挿通孔は、レバー部材の回動に伴って移動する締結部材に接触しないように長孔状に形成される。
【0008】
これにより、回動伝達部材の内周面によって囲われる空間内に、入力側カムと各入力側ローラーと付勢部材とが収容されることで、レバー部材やリテーナ等を付勢するスプリングが配置される部位と入力側カム及び入力側ローラーやリテーナが配置される部位とが軸方向に積み上げられる上記従来構造と比較して、軸方向の長さの短縮化を図ることができる。特に、操作レバーをレバー部材に締結する締結部材は、レバー部材とともに回動する入力側カムの溝部に入り込み、レバー部材に対して相対回動しない入力側カバーの挿通孔に挿通しても接触しないので、回動伝達部材の内周面によって囲われる空間内に入力側カム等が収容される構成であっても、締結部材が軸方向の長さの短縮化の阻害要因となり難くなる。したがって、ブレーキ装置の更なる薄型化を図ることができる。
【0009】
請求項2の発明では、レバー部材は、平板状であって、底縁とこの底縁に連なるように対向する一方の側縁及び他方の側縁とからなる凹部が、外縁に対して内方に凹むように複数設けられる。そして、入力側カバーには、一方向への回動時に一方の側縁に当接し、他方向への回動時に他方の側縁に当接するガイド片が、凹部ごとに設けられる。
【0010】
これにより、レバー部材の一部が操作レバー側に折り曲げられるようなこともないので、レバー部材が軸方向の長さの短縮化の阻害要因となり難くなり、ブレーキ装置の更なる薄型化を図ることができる。特に、レバー部材の回動範囲を凹部の配置等に応じて調整できるだけでなく、レバー部材を裏返して組み付けた際に回動範囲が変わるように凹部を形成する場合には、例えば、右ハンドルのシート用と左ハンドルのシート用とでレバー部材を共用でき、部品の標準化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るブレーキ装置が適用された車両用シート装置を示す側面図である。
【
図2】ブレーキ装置を入力側から見た斜視図である。
【
図3】ブレーキ装置を出力側から見た斜視図である。
【
図5】ブレーキ装置を入力側から見た側面図である。
【
図6】ブレーキ装置を出力側から見た側面図である。
【
図8】
図5に示すX1-X1断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図9】
図4に示すX2-X2断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図10】
図4に示すX3-X3断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図11】
図5からレバー部材及びブラケットを取り除いた状態を拡大して示す説明図である。
【
図12】ブレーキ装置の組み立て工程の一部を説明する説明図であり、
図12(A)は、ピニオンギヤ及びブラケット等のセット状態を示し、
図12(B)は、ピニオンギヤ及び第2カム等のセット状態を示す。
【
図13】ブレーキ装置の組み立て工程の一部を説明する説明図であり、
図13(A)は、回動伝達部材に対する第1カム等のセット状態を示し、
図13(B)は、
図13(A)の回動伝達部材等と
図12(B)のリング等のセット状態を示す。
【
図14】ブレーキ装置の組み立て工程の一部を説明する説明図であり、
図14(A)は、
図13(B)のセット状態に対してカバーを溶接接合した状態を示し、
図14(B)は、
図14(A)の第1カムに対してレバー部材を溶接接合した状態を示す。
【
図15】
図15(A)は、中立位置におけるレバー部材、第1カム及びタッピングネジとカバーとの位置関係を説明する説明図であり、
図15(B)は、
図15(A)の状態からレバー部材、第1カム及びタッピングネジが回動した状態を説明する説明図である。
【
図16】
図16(A)は、本実施形態の変形例に係るレバー部材の回動範囲を説明する説明図であり、
図16(B)は、
図16(A)のレバー部材を裏返して組み付けた際の回動範囲を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るブレーキ装置が適用された車両用シート装置の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、車両用シート装置100は、主に、車両フロアBに対して前後に摺動可能なシートレール101と、このシートレール101上にシートブラケット(図示略)等を介して取り付けられるシートクッション102と、このシートクッション102に対して傾動可能に支持されるシートバック103とを備えている。シートクッション102の一方の側部には本発明に係る車両用シート用のブレーキ装置(クラッチ装置)10が配設されており、このブレーキ装置10には、操作レバー104が連結されている。
【0013】
このブレーキ装置10は、シートブラケットに設けられる公知のハイト機構(出力側機構)に対して操作レバー104による入力トルクを入力部材及び出力部材等を介して伝達することで、シートクッション102の高さを任意に調整する役割を果たす。
【0014】
すなわち、ブレーキ装置10は、操作レバー104の操作に応じて入力部材から入力されるトルクを出力部材へ伝達して出力するとともに、入力部材に入力されるトルクがなくなると出力部材の回動が規制されて入力部材のみ中立位置に戻るように構成されている。このため、ブレーキ装置10は、操作レバー104が水平な中立位置Nでは、シートクッション102の高さを維持するように出力部材が回動不能に固定される。
【0015】
また、ブレーキ装置10は、シートクッション102の高さを上昇させるために操作レバー104が上方向Uへ揺動操作されると、この揺動操作に応じた入力トルクが入力部材及び出力部材を介して上記ハイト機構に伝達される。これにより、シートクッション102の高さが上昇する。そして、入力トルクがなくなると、出力部材はその回動角度を維持し、入力部材は操作レバー104とともに中立位置に戻るため、上昇したシートクッション102の高さが維持される。
【0016】
一方、ブレーキ装置10は、シートクッション102の高さを下降させるために操作レバー104が下方向Dへ揺動操作されると、この揺動操作に応じた入力トルクが入力部材及び出力部材を介して上記ハイト機構に伝達される。これにより、シートクッション102の高さが下降する。そして、入力トルクがなくなると、出力部材はその回動角度を維持し、入力部材は操作レバー104とともに中立位置に戻るため、下降したシートクッション102の高さが維持される。
【0017】
次に、ブレーキ装置10の構成について、図を用いて説明する。
図2~
図11に示すように、ブレーキ装置10は、レバー部材21、カバー22、ウェーブワッシャ23、第1カム24、6個の第1ローラー25及び3個の第1スプリング26を有する入力部材20と、リング31、第2カム32、10個の第2ローラー33、5個の第2スプリング34、ピニオンギヤ35、フリクションスプリング36を有する出力部材30と、回動伝達部材40及びブラケット50とを備え、入力部材20及び出力部材30は回動伝達部材40を介して同軸的に配置されている。
【0018】
まず、入力部材20を構成する各部品について説明する。
図8に示すように、レバー部材21は、締結部材として機能する3つのタッピングネジ27を利用して操作レバー104に締結されるもので、操作レバー104の揺動操作による入力トルクを第1カム24等に伝達する役割を果たす。なお、
図8では、便宜上、タッピングネジ27及び操作レバー104を二点鎖線にて図示している。
【0019】
このレバー部材21は、
図2、
図5及び
図7に示すように、平板状であって、円弧状の底縁21bと底縁21bに連なるように対向する一方の側縁21c及び他方の側縁21dとからなる凹部21aが、外縁に対して内方に凹むように3つ設けられて形成される。本実施形態における「平板状」とは、表裏面が平行な板状の素材を加工することで得られる形状であって、一部に凸凹が設けられる形状を含むものとする。各凹部21aは、同じ形状であって周方向にて等間隔に位置するように配置されている。また、レバー部材21の中央には、第1カム24が係合する係合孔21eが形成され、この係合孔21eを中心に、タッピングネジ27を固定するための貫通孔21fが3つ形成されている。なお、
図9及び
図11では、便宜上、タッピングネジ27を二点鎖線にて図示している。
【0020】
図7、
図8及び
図11に示すように、カバー22は、略有底円筒状に形成される入力側カバーであって、その底部となる側壁部22aの中央には、後述する第1カム24の係合突部24bが挿通する貫通孔22bが形成されている。この貫通孔22bは、第1カム24の回動時に係合突部24bが接触しないように形成されている。また、貫通孔22bの周囲には、3つのガイド片22cと、3つの挿通孔22dと、3つの規制部22eが設けられている。
【0021】
各ガイド片22cは、レバー部材21の回動範囲を制御するもので、周方向にて等間隔となる位置にて、側壁部22aの一部を入力側に切り起こすようにして形成されている。ガイド片22cは、上記回動範囲の一端までレバー部材21が回動した時に一方の側縁21cに当接し、上記回動範囲の他端までレバー部材21が回動した時に他方の側縁21dに当接するように形成されている。本実施形態では、
図5に示すように、各凹部21aは、上記中立位置では、底縁21bの中央部分にてガイド片22cに対向するように配置されている。これにより、中立位置から回動範囲の一端までのレバー部材21の回動角度と回動範囲の他端までのレバー部材21の回動角度とが同じ角度になる。
【0022】
各挿通孔22dは、レバー部材21の回動に伴って移動するタッピングネジ27に接触しないように長孔状であって、ガイド片22cの切り起こし部分に連なるように形成されている。
【0023】
各規制部22eは、周方向にて等間隔であって、後述する一対のカム面24aにそれぞれ対応する第1ローラー25間に位置するように、側壁部22aの一部を出力側に切り起こして形成されている。
【0024】
図7及び
図9に示すように、第1カム24は、その外周面に、一対のカム面24aが等間隔にて3か所設けられており、各カム面24aは、後述する回動伝達部材40の内周面41aとの間で6か所のくさび形空間を形成するように配置されている。第1カム24の中央には、カバー22の貫通孔22bを挿通した状態でレバー部材21の係合孔21eに係合する係合突部24bが入力側に突出するように設けられている。また、第1カム24の外周面には、溝部24cが等間隔にて3か所設けられており、各溝部24cは、レバー部材21に締結されたタッピングネジ27がそれぞれ入り込むように形成されている。
【0025】
各第1ローラー25は、略円筒状に形成される入力側ローラーであって、その径が、第1カム24のカム面24aと回動伝達部材40の内周面41aとにより形成される一対の対向するくさび形空間内にて正逆回動可能とするための遊びを有するように配置されている。そして、
図9に示すように、一対のカム面24aに対してそれぞれ対応する第1ローラー25間には、カバー22の規制部22eが位置している。
【0026】
図9に示すように、第1スプリング26は、コイルバネ状の付勢部材であって、一端側にて第1ローラー25を規制部22eに向けて付勢し、他端側にて異なる第1ローラー25を異なる規制部22eに向けて付勢するように配置されている。
【0027】
次に、出力部材30を構成する各部品について説明する。
図2~
図4に示すように、リング31は、その外周面にてブレーキ装置10の外郭の一部を構成する円環状の部材である。このリング31は、
図10に示すように、その内周面31aと当該内周面31aに対向する第2カム32のカム面32aとによってカム面32aごとにくさび形空間が形成されるように配置されている。
【0028】
図7及び
図10に示すように、第2カム32は、その外周面に、一対のカム面32aが等間隔にて5か所設けられており、各カム面32aは、リング31の内周面31aとの間で10か所のくさび形空間を形成するように配置されている。第2カム32の中央には、ピニオンギヤ35が同軸的に係合するための係合孔32bが形成されている。また、第2カム32の入力側の端面には、5つの円筒凸部32cが、周方向にて等間隔に位置するように配置されている。
【0029】
各第2ローラー33は、略円筒状に形成されており、その径が、第2カム32のカム面32aとリング31の内周面31aとにより形成される一対の対向するくさび形空間内にて正逆回動可能とするための遊びを有するように配置されている。そして、
図10に示すように、一対のカム面32aにそれぞれ対応する第2ローラー33間に、後述する回動伝達部材40の規制部42aが位置している。
【0030】
図10に示すように、第2スプリング34は、コイルバネ状の付勢部材であって、一端側にて第2ローラー33を規制部42aに向けて付勢し、他端側にて異なる第2ローラー33を異なる規制部42aに向けて付勢するように配置されている。
【0031】
図7及び
図8に示すように、ピニオンギヤ35の入力側には、第2カム32の係合孔32bに係合する係合突起35aが形成されている。
【0032】
図7及び
図8に示すように、フリクションスプリング36は、係合孔36aにて第2カム32の係合孔32bとともにピニオンギヤ35の係合突起35aに係合するように配置されている。このフリクションスプリング36は、ピニオンギヤ35が回動する際にリング31の内周面31aに摺接することで、ピニオンギヤ35に対して逆回動方向の付勢力を付与するように機能する。
【0033】
次に、入力部材20から入力されるトルクを出力部材30へ伝達するための回動伝達部材40について説明する。
図7及び
図8に示すように、回動伝達部材40は、円筒部41及び側壁部42を備え、略有底円筒状に形成されている。円筒部41は、その内周面41aにて、第1カム24の各カム面24aと対向することで、上記くさび形空間を形成するように配置されている。側壁部42には、5つの規制部42aと5つの凹部42bとが設けられている。各規制部42aは、周方向にて等間隔であって、第2カム32の一対のカム面24aにそれぞれ対応する第2ローラー33間に位置するように、側壁部42の一部を出力側に切り起こして形成されている。各凹部42bは、対応する第2カム32の円筒凸部32cがそれぞれ入り込むように、周方向の長さが円筒凸部32cの直径よりも長くなるように形成されている。
【0034】
また、ブラケット50は、リング31及び第2カム32等を出力側から覆うカバー部材であって、ピニオンギヤ35が貫通する貫通穴51が中央部に形成され、シートクッション102に連結するための連結穴52が一方の端部と他方の端部とに計3つ形成されている。
【0035】
次に、上述のように構成されるブレーキ装置10の組み立てについて、
図12~
図14を参照して説明する。
まず、
図12(A)に示すように、フリクションスプリング36を係合(圧入)したピニオンギヤ35と、リング31を溶接接合したブラケット50とをセットする。次に、
図12(B)に示すように、第2カム32をピニオンギヤ35に係合した後、各カム面32aを基準に、第2ローラー33及び第2スプリング34をそれぞれセットする。
【0036】
続いて、
図13(A)に示すように、サブ工程として、回動伝達部材40に対して第1カム24をセットした後、各カム面24aを基準に、第1ローラー25及び第1スプリング26をそれぞれセットする。そして、
図13(B)に示すように、回動伝達部材40の各規制部42aが第2ローラー33間にそれぞれ入り込むとともに各凹部42bに第2カム32の円筒凸部32cがそれぞれ入り込むようにして、
図13(A)の状態の回動伝達部材40等と
図12(B)の状態のリング31等とをセットするとともに、ウェーブワッシャ23を係合突部24bにセットする。
【0037】
次に、
図14(A)に示すように、各規制部22eが第1ローラー25間にそれぞれ入り込むようにセットしたカバー22とリング31とを溶接接合する。そして、
図14(B)に示すように、係合孔21eに係合突部24bを係合させたレバー部材21と第1カム24とを溶接接合することで、ブレーキ装置10の組み立てが完了する。
【0038】
続いて、上記のように構成されるブレーキ装置10における入力部材20及び出力部材30等の作動について、
図15を参照して説明する。なお、
図15では、便宜上、レバー部材21及びタッピングネジ27を二点鎖線にて図示し、ブラケット50の図示を省略する。
【0039】
操作レバー104が操作されていない状態では、異なる第1スプリング26によってそれぞれ付勢された2つの第1ローラー25が1つの規制部22eに対して異なる方向から押圧された状態で、レバー部材21及び第1カム24は、
図15(A)に示すように、上記中立位置に位置する。
【0040】
そして、操作レバー104が中立位置Nから上方向U又は下方向Dへ揺動操作されると、
図15(B)に示すように、レバー部材21及び第1カム24が上記揺動操作に応じた方向に回動する。その際、一対のカム面24aにおいて、回動方向側のカム面24aに対応する第1ローラー25がそのカム面24aによって形成されるすきま空間に入り込むことでロック状態となり、そのすきま空間を形成する回動伝達部材40も第1カム24とともに回動する。その一方で、他方のカム面24aに対応する第1ローラー25は、第1スプリング26によって規制部22eに押圧される状態が維持される。
【0041】
上述のようにレバー部材21及び第1カム24が回動する際、
図15(A)(B)からわかるように、レバー部材21と操作レバー104との締結に利用されるタッピングネジ27は、カバー22の挿通孔22dの長孔に沿って接触することなく、第1カム24の溝部24cとともに回動する。
【0042】
上述のように回動する回動伝達部材40の規制部42aによって回動方向に押圧された第2ローラー33がくさび空間から離脱することで、リング31に対する第2カム32の相対回動の規制が解除される。そして、回動伝達部材40の凹部42bに入り込んでいる第2カム32の円筒凸部32cが凹部42bに押圧されるようにして、第2カム32が回動伝達部材40とともに回動するとともに、この第2カム32に係合するピニオンギヤ35が回動する。これにより、入力部材20から入力された入力トルクが出力部材30のピニオンギヤ35等を介して上記ハイト機構に伝達されることとなる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るブレーキ装置10では、操作レバー104の操作に応じて入力されるトルクを回動伝達部材40を介して出力部材30へ伝達する入力部材20は、操作レバー104がタッピングネジ27を利用して締結されるレバー部材21と、レバー部材21に同軸的に連結されて外周面に一対のカム面24aが複数形成される第1カム24と、第1カム24に対して同軸的に配置される回動伝達部材40の内周面41aとカム面24aとによって形成されるくさび形空間に入り込むことで回動伝達部材40と第1カム24との相対回動を規制するための複数の第1ローラー25と、レバー部材21と第1カム24との間に介在し一対のカム面24aに対してそれぞれ対応する第1ローラー25間に位置するように規制部22eが設けられるカバー22と、第1ローラー25を規制部22eに向けて付勢する第1スプリング26と、を備えるように構成される。そして、第1カム24には、レバー部材21に締結されたタッピングネジ27が入り込む溝部24cが形成され、カバー22には、レバー部材21に締結されたタッピングネジ27が挿通する挿通孔22dが設けられ、この挿通孔22dは、レバー部材21の回動に伴って移動するタッピングネジ27に接触しないように長孔状に形成される。
【0044】
これにより、回動伝達部材40の内周面41aによって囲われる空間内に、第1カム24と各第1ローラー25と第1スプリング26とが収容されることで、レバー部材やリテーナ等を付勢するスプリングが配置される部位と入力側カム及び入力側ローラーやリテーナが配置される部位とが軸方向に積み上げられる上記従来構造と比較して、軸方向の長さの短縮化を図ることができる。特に、操作レバー104をレバー部材21に締結するタッピングネジ27は、レバー部材21とともに回動する第1カム24の溝部24cに入り込み、レバー部材21に対して相対回動しないカバー22の挿通孔22dに挿通しても接触しないので、タッピングネジ27が軸方向の長さの短縮化の阻害要因となり難くなる。したがって、ブレーキ装置10の更なる薄型化を図ることができる。
【0045】
特に、レバー部材21は、平板状であって、円弧状の底縁21bとこの底縁21bに連なるように対向する一方の側縁21c及び他方の側縁21dとからなる凹部21aが、外縁に対して内方に凹むように複数設けられる。そして、カバー22には、一方向への回動時に一方の側縁21cに当接し、他方向への回動時に他方の側縁21dに当接するガイド片22cが、凹部21aごとに設けられる。
【0046】
これにより、レバー部材21の一部が操作レバー側に折り曲げられるようなこともないので、レバー部材21が軸方向の長さの短縮化の阻害要因となり難くなり、ブレーキ装置10の更なる薄型化を図ることができる。
【0047】
特に、レバー部材21の回動範囲を凹部21aの配置等に応じて調整できるだけでなく、レバー部材21を裏返して組み付けた際に回動範囲が変わるように凹部21aを形成する場合には、例えば、右ハンドルのシート用と左ハンドルのシート用とでレバー部材21を共用でき、部品の標準化を図ることができる。すなわち、凹部21aが、操作レバー104の操作に応じたトルクが入力されていない中立位置の状態で、一方の側縁21cからガイド片22cまでの距離と他方の側縁21dからガイド片22cまでの距離とが異なるように配置されることで、上記効果を奏する。
【0048】
例えば、
図16(A)に例示するように中立位置から回動範囲の一端までの回動角度がθ1、回動範囲の他端までの回動角度がθ2となるレバー部材21を、
図16(B)に例示するように裏返して組み付けることで、中立位置から回動範囲の一端までの回動角度をθ2、回動範囲の他端までの回動角度をθ1とすることができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態及び変形例等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)操作レバー104は、タッピングネジ27を用いてレバー部材21等に締結されることに限らず、ボルト等の他の締結部材を用いてレバー部材21等に締結されてもよい。
【0050】
(2)レバー部材21に対してタッピングネジ27が入り込む溝部24cは、第1カム24の外周面に形成されることに限らず、第1カム24の入力側の端面に貫通孔又は貫通しない凹部として形成されてもよい。
【0051】
(3)レバー部材21の各貫通孔21f、第1カム24の各溝部24c及びカバー22の各挿通孔22dは、それぞれ周方向にて等間隔に3つ設けられることに限らず、例えば、それぞれ2つ設けられてもよいし、4つ以上設けられてもよい。
【0052】
(4)レバー部材21の各凹部21a及びカバー22の各ガイド片22cは、それぞれ3つ設けられることに限らず、例えば、それぞれ2つ設けられてもよいし、凹部21aとガイド片22cとの当接に応じて生じる力を分散するためにそれぞれ4つ以上設けられてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…ブレーキ装置
20…入力部材
21…レバー部材
21a…凹部
21b…底縁
21c…一方の側縁
21d…他方の側縁
22…カバー(入力側カバー)
22c…ガイド片
22d…挿通孔
22e…規制部
24…第1カム(入力側カム)
24a…カム面
24c…溝部
25…第1ローラー(入力側ローラー)
26…第1スプリング(付勢部材)
27…タッピングネジ(締結部材)
30…出力部材
40…回動伝達部材
41a…内周面
100…車両用シート装置
104…操作レバー