(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150083
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】車両用ステップ装置および車両用ステップ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20220929BHJP
B60R 3/02 20060101ALI20220929BHJP
F16B 5/04 20060101ALI20220929BHJP
F16B 19/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60R3/00
B60R3/02
F16B5/04 A
F16B19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052512
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】市川 元大
(72)【発明者】
【氏名】村松 厚志
【テーマコード(参考)】
3D022
3J001
3J036
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AD01
3D022AE07
3J001FA02
3J001GA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001JD04
3J001JD07
3J001KA21
3J001KB01
3J036AA04
3J036BA02
3J036EA01
(57)【要約】
【課題】ステップの安定移動の低下を抑制できる、車両用ステップ装置および車両用ステップ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】車両用ステップ装置は、ベース3と、アームと、アームの軸部と、アームによって支持されるステップと、軸部を支持する軸支持部材50と、を備える。ベース3は、軸部の上下方向における第1端部を支持する孔を有し、軸支持部材50は、軸部の上下方向における第2端部を支持する基準孔を有する。軸支持部材50は、基準孔を挟む両側に設けられる固定部53によってベース3に固定される。固定部53は、ベース3に、ボルトと、結合部材59とによって結合される。結合部材は、ベース3の第1貫通孔18aと、軸支持部材50の第2貫通孔58aとに挿通した状態で、上下方向に潰されている。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられるベースと、前記ベースに回転可能に設けられるアームと、前記アームの軸部と、前記アームによって支持されるステップと、前記軸部を支持する軸支持部材と、を備え、
前記ベースおよび前記軸支持部材は、板材から構成される部材であり、
前記ベースは、前記軸部の上下方向における第1端部を支持する孔を有し、前記軸支持部材は、前記軸部の上下方向における第2端部を支持する孔を有し、前記軸支持部材は、前記軸支持部材の前記孔を挟む両側に設けられる固定部によって前記ベースに固定され、
前記軸支持部材の前記固定部は、前記ベースに、締結部材と、結合部材とによって結合され、
前記ベースには、第1貫通孔が設けられ、前記軸支持部材の前記固定部には、第2貫通孔が設けられ、
前記結合部材は、前記ベースの前記第1貫通孔と、前記軸支持部材の前記第2貫通孔とに挿通した状態で、上下方向に潰されている
車両用ステップ装置。
【請求項2】
前記ベースには、第3貫通孔が設けられ、前記軸支持部材の前記固定部には、第4貫通孔が設けられ、
前記締結部材は、前記ベースの前記第3貫通孔と、前記軸支持部材の前記第4貫通孔とに挿通した状態で、前記ベースと前記軸支持部材とを締結し、
前記第1貫通孔と前記結合部材との間、および、前記第2貫通孔と前記結合部材との間の少なくとも一方には隙間がなく、
前記第3貫通孔と前記締結部材との間には、第3隙間があり、前記第4貫通孔と前記締結部材との間には、第4隙間がある
請求項1に記載の車両用ステップ装置。
【請求項3】
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の一方の孔径は、他方の孔径よりも小さく、
前記結合部材は、頭部と、座屈部とを有し、
前記結合部材の前記頭部は、前記ベースおよび前記軸支持部材のうちで相対的に小さい貫通孔を有する部材の近くに配置される
請求項1または2に記載の車両用ステップ装置。
【請求項4】
前記結合部材は、リベットである
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項5】
前記結合部材は、頭部と座屈部とを有するナットを備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項6】
前記軸支持部材は、前記固定部を含む2つの固定部を有し、
2つの前記固定部は、2つの前記固定部の間に前記軸部が配置されるように、設けられる
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項7】
車体に取り付けられるベースと、前記ベースに回転可能に設けられるアームと、前記アームの軸部と、前記アームによって支持されるステップと、前記軸部を支持する軸支持部材と、を備える車両用ステップ装置の製造方法であって、
前記軸支持部材の取り付け工程を含み、
前記軸支持部材の取り付け工程において、前記軸支持部材の締結部と前記ベースの締結部とを締結部材で締結した後、前記軸支持部材の結合部と前記ベースの結合部とを結合部材によって結合し、前記結合部材を潰す
車両用ステップ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステップ装置および車両用ステップ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ステップ装置が開示されている。車両用ステップ装置において、ステップは、車幅方向に移動する。ステップは、アームによって移動可能に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用ステップ装置のステップに加わる荷重は、アームにおいて軸部およびその周辺で受けられる。このため、軸部の周辺は強固に構成される。しかし、ステップに加わる荷重が過剰である場合、ステップの安定移動が損なわれる虞がある。この点で、アームの支持構造について改善の余地がある。また、これに関連して、車両用ステップ装置の製造方法に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する車両用ステップ装置は、車体に取り付けられるベースと、前記ベースに回転可能に設けられるアームと、前記アームの軸部と、前記アームによって支持されるステップと、前記軸部を支持する軸支持部材と、を備え、前記ベースおよび前記軸支持部材は、板材から構成される部材であり、前記ベースは、前記軸部の上下方向における第1端部を支持する孔を有し、前記軸支持部材は、前記軸部の上下方向における第2端部を支持する孔を有し、前記軸支持部材は、前記軸支持部材の前記孔を挟む両側に設けられる固定部によって前記ベースに固定され、前記軸支持部材の前記固定部は、前記ベースに、締結部材と、結合部材とによって結合され、前記ベースには、第1貫通孔が設けられ、前記軸支持部材の前記固定部には、第2貫通孔が設けられ、前記結合部材は、前記ベースの前記第1貫通孔と、前記軸支持部材の前記第2貫通孔とに挿通した状態で、上下方向に潰されている。
【0006】
ベースと軸支持部材とが締結部材のみによって締結される場合、締結部材と、締結部材が挿通する孔との間に隙間が存在するため、ベースに対して軸支持部材がずれる余地がある。この点、上記構成によれば、結合部材は、第1貫通孔と第2貫通孔とに挿通した状態で潰されているため、結合部材と第1貫通孔との間の隙間、および、結合部材と第2貫通孔との間の隙間が、小さくなり、ベースに対して軸支持部材がずれる余地が小さくなる。これによって、ベースに対する軸支持部材のずれを抑制できる。このようにして、ステップの安定移動の低下を抑制できる。
【0007】
(2)上記車両用ステップ装置において、前記ベースには、第3貫通孔が設けられ、前記軸支持部材の前記固定部には、第4貫通孔が設けられ、前記締結部材は、前記ベースの前記第3貫通孔と、前記軸支持部材の前記第4貫通孔とに挿通した状態で、前記ベースと前記軸支持部材とを締結し、前記第1貫通孔と前記結合部材との間、および、前記第2貫通孔と前記結合部材との間の少なくとも一方には隙間がなく、前記第3貫通孔と前記締結部材との間には、第3隙間があり、前記第4貫通孔と前記締結部材との間には、第4隙間がある。この構成によれば、ベースに対する軸支持部材のずれを効果的に抑制できる。
【0008】
(3)上記車両用ステップ装置において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の一方の孔径は、他方の孔径よりも小さく、前記結合部材は、頭部と、座屈部とを有し、前記結合部材の前記頭部は、前記ベースおよび前記軸支持部材のうちで相対的に小さい貫通孔を有する部材の近くに配置される。
【0009】
結合部材の座屈部は、結合部材の胴部のプレスによって構成される。胴部のプレスにおいて、頭部の近くよりも頭部から遠い部分の変形が大きい。上記構成では、結合部材の頭部は、ベースおよび軸支持部材のうちで相対的に小さい貫通孔を有する部材の近くに配置される。これによって、胴部において、変形が小さい部分が相対的に小さい貫通孔に配置され、変形が大きい部分が相対的に大きい貫通孔に配置される。このため、結合部材とベースとの間の隙間、および、結合部材と軸支持部材との間の隙間のうちの一方が、隙間の状態で残るといった状態になることが抑制され、両隙間は、ともに、座屈部によって埋められる。このようにして、ステップの安定移動の低下を抑制できる。
【0010】
(4)上記車両用ステップ装置において、前記結合部材は、リベットである。
この構成によれば、ハンドリベッターまたはプレス機によって、ベースに軸支持部材を結合できる。
【0011】
(5)上記車両用ステップ装置において、前記結合部材は、頭部と座屈部とを有するナットを備える。この構成によれば、締結部材の締め付けによって、ナットの座屈部を形成して、ベースと軸支持部材とを結合できる。
【0012】
(6)上記車両用ステップ装置において、前記軸支持部材は、前記固定部を含む2つの固定部を有し、2つの前記固定部は、2つの前記固定部の間に前記軸部が配置されるように、設けられる。この構成によれば、軸支持部材は、軸部を間の位置するように配置される2つの固定部によってベースに固定される。2つの固定部は、締結部材と結合部材とによってベースに固定される。これによって、ベースに対する軸支持部材のずれを効果的に抑制できる。
【0013】
(7)上記課題を解決する車両用ステップ装置の製造方法は、車体に取り付けられるベースと、前記ベースに回転可能に設けられるアームと、前記アームの軸部と、前記アームによって支持されるステップと、前記軸部を支持する軸支持部材と、を備える車両用ステップ装置の製造方法であって、前記軸支持部材の取り付け工程を含み、前記軸支持部材の取り付け工程において、前記軸支持部材の締結部と前記ベースの締結部とを締結部材で締結した後、前記軸支持部材の結合部と前記ベースの結合部とを結合部材によって結合し、前記結合部材を潰す。
【0014】
ベースと軸支持部材とが締結部材のみによって締結される場合、締結部材と、締結部材が挿通する孔との間に隙間が存在するため、ベースに対して軸支持部材がずれる余地がある。この点、上記車両用ステップ装置の製造方法によれば、結合部材は、第1貫通孔と第2貫通孔とに挿通した状態で潰されるため、結合部材と第1貫通孔との間の隙間、および、結合部材と第2貫通孔との間の隙間が、小さくなり、ベースに対して軸支持部材がずれる余地が小さくなる。これによって、ベースに対する軸支持部材のずれを抑制できる。このようにして、ステップの安定移動の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
車両用ステップ装置は、ステップの安定移動の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る車両用ステップ装置を備える車両の平面図。
【
図7】
図2のVII-VII線に沿う車両用ステップ装置の断面図。
【
図8】
図2のVIII-VIII線に沿う車両用ステップ装置の断面図。
【
図12】
図5のXII-XII線に沿う部分の断面図。
【
図14】
図5のXIV-XIV線に沿う部分の断面図。
【
図15】ベースおよび軸支持部材において、結合部材が挿入された部分の断面図。
【
図16】
図5のXVI-XVI線に沿う部分の断面図。
【
図17】結合部材の変形例について、結合前の結合部分の断面図。
【
図18】結合部材の変形例について、結合後の結合部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図18を参照して、車両用ステップ装置1について説明する。本実施形態において車両用ステップ装置1の前後方向DYは、車両用ステップ装置1を車両に取り付けた状態において、車両の前後方向に一致する。車両用ステップ装置1の上下方向DZは、車両用ステップ装置1を車両に取り付けた状態において、車両の上下方向に一致する。車幅方向DXは、車両の幅方向に一致する。
【0018】
図1に示されるように、車両用ステップ装置1は、車体2に取り付けられる。例えば、車両用ステップ装置1は、車体2の底板の下面に取り付けられる。車両用ステップ装置1は、車体2の底板において、ドアによって閉鎖される車両乗降口の付近に取り付けられる。車両用ステップ装置1のステップ5は、ステップ5の使用時、乗降用の補助ステップとして使用される目的で、車両乗降口の下端よりも下方に配置される。一例では、車両用ステップ装置1のステップ5は、モータ40の動力によって移動する。車両用ステップ装置1のステップ5は、乗降の際の所定操作指令によって、車体2の底板の下に収容された格納位置から展開位置まで移動する。展開位置は、車幅方向DXにおいて車体2に対して格納位置から外方に離れた位置である。ステップ5が展開位置まで移動すると、ステップ5は、平面視で、ステップ5の少なくとも一部が車体2から露出するように配置される。
【0019】
図2および
図3に示されるように、車両用ステップ装置1は、車体2に取り付けられるベース3と、ベース3に回転可能に設けられるアーム4と、アーム4によって支持されるステップ5と、を備える。
【0020】
ステップ5は、アーム4によって支持されてベース3に対して移動可能に設けられる。本実施形態では、車両用ステップ装置1は、複数のアーム4を含む。ステップ5は、複数のアーム4によって支持される。本実施形態では、車両用ステップ装置1は、第1アーム31、第2アーム32、および、第3アーム33を備える。さらに、車両用ステップ装置1は、アーム4を動作させる駆動部6を備える。
【0021】
一例では、ベース3は、ベース本体8と、ブラケット10とを含む。ベース3は、板材から構成される。例えば、ベース本体8は、金属板のプレスによって構成される。ブラケット10は、金属板のプレスによって構成される。ベース3は、ベース本体8と、ブラケット10との結合によって構成される。
【0022】
ベース3は、車両用ステップ装置1が車体2に取り付けられた取付状態において、車体2の前後方向DYに延びるように構成される。本実施形態では、ベース3は、ブラケット10として、3つのブラケット10を有する。3個のブラケット10を前から順に第1ブラケット11、第2ブラケット12、第3ブラケット13と呼ぶ。ベース3は、ブラケット10を介して車体2に固定される。
【0023】
図4に示されるように、ベース本体8には、第1アーム31と、第2アーム32とが取り付けられる。ベース本体8は、第1ブラケット11および第2ブラケット12を介して車体2に取り付けられる。第3ブラケット13は、連結部材14を介してベース本体8に連結される。第3ブラケット13には、第3アーム33が取り付けられる。第3ブラケット13は、車体2に取り付けられる。
【0024】
図5に示されるように、ベース本体8は、アーム4の基端部4aが取り付けられるアーム配置部8aと、モータ40が取り付けられモータ配置部8bとを備える。ベース本体8には、第1アーム31および第2アーム32それぞれに対応して2つのアーム配置部8aが設けられる。ベース本体8において、2つのアーム配置部8aの間に、モータ配置部8bが設けられる。第3ブラケット13には、第3アーム33に対応するアーム配置部8aが設けられる。
【0025】
図6を参照して、アーム配置部8aを説明する。
図6に示されるように、アーム配置部8aは、第1軸部35が固定される第1固定部15と、第1固定部15の前および後に設けられる第2固定部16とを有する。第2固定部16には、ブラケット10の接続部10aと、軸支持部材50の固定部53とが積層される(
図8参照)。
【0026】
ベース3は、軸支持部材50の取り付けに関連して、次の3つの部分を有する。
ベース3は、第2係合部17と、結合部18と、締結部19とを有する。第2係合部17は、軸支持部材50の第1係合部56と係合する部分である。結合部18は、軸支持部材50が結合部材59を介して結合される部分である。締結部19は、軸支持部材50が締結される部分である。
【0027】
一例では、第2係合部17、結合部18、および、締結部19は、アーム配置部8aにおける第2固定部16に設けられる。結合部18は、第1貫通孔18aを有する。締結部19は、第3貫通孔19aを有する。第2係合部17は、ベース3において第2固定部16以外の部分に設けられてもよい。この場合は、軸支持部材50の第1係合部56は、軸支持部材50において固定部53以外の部分に設けられる。
【0028】
図3および
図4を参照して、ステップ5について説明する。
ステップ5は、第1ステップ部材21と、第1ステップ部材21の下に配置される第2ステップ部材22(
図7参照)と、第1ステップ部材21を覆うステップカバー23とを備える。一例では、第1ステップ部材21は、前後方向DYに2つに分割される。第2ステップ部材22は、前後方向DYに2つに分割される。
【0029】
図4を参照して、アーム4について説明する。
各アーム4の基端部4aは、ベース3に回転可能に取り付けられる。各アーム4の基端部4aの回転軸線C1は、互いに平行である。各アーム4の先端部4bは、ステップ5に回転可能に取り付けられる。各アーム4の先端部4bの回転軸線C2は、互いに平行である。
【0030】
車両用ステップ装置1は、アーム4の回転に関する軸部を有する。車両用ステップ装置1は、アーム4の軸部として、第1軸部35と第2軸部37とを備える。第1軸部35は、ベース3に設けられる。アーム4の基端部4aは、第1軸部35を介してベース3に対して回転可能に支持される。第2軸部37は、ステップ5に設けられる。アーム4の先端部4bは、第2軸部37を介してステップ5を回転可能に支持する。
【0031】
図7に示されるように、アーム4の先端部4bは、第2軸部37を介してステップ5に取り付けられる。アーム4は、第2軸部37を介してステップ5に対して回転する。本実施形態では、第2軸部37は、ステップ5に固定される。第2軸部37は、アーム4の先端部4bに固定されてもよい。この場合、ステップ5には、第2軸部37を受ける軸受部材が設けられる。
【0032】
図8に示されるように、アーム4の基端部4aは、第1軸部35を介してベース3に取り付けられる。アーム4は、第1軸部35を介してベース3に対して回転する。本実施形態では、第1軸部35は、ベース3に固定される。第1軸部35は、アーム4の基端部4aに固定されてもよい。この場合、ベース3には、第1軸部35を受ける軸受部材が設けられる。
【0033】
図6を参照して、駆動部6について説明する。
図6に示されるように、駆動部6は、ベース本体8に設けられる。駆動部6は、モータ40と、減速部41と、動力伝達部42と、モータカバー43とを備える。駆動部6は、第1アーム31を回動させる。モータ40は、ベース本体8に取り付けられる。モータカバー43は、モータ40、減速部41、および動力伝達部42を覆う。減速部41は、モータ40の出力軸の回転速度を減速する。減速部41の出力ギアは、動力伝達部42のラック44に噛み合う。
【0034】
動力伝達部42は、ベース3に往復運動可能に支持されたラック44と、連結部品45とを備える。連結部品45は、ラック44の端部と、第1アーム31の基端部4aから突出する突出部46を連結する。突出部46は、第1アーム31の基端部4aから第1軸部35の軸心に対する径方向に突出する。突出部46は、第1アーム31の基端部4aに固定されている。連結部品45の一方の端部は、ラック44の端部に回転可能に取り付けられ、かつ、連結部品45の他方の端部は、第1アーム31の突出部46に回転可能に取り付けられる。
【0035】
ラック44は、モータ40の回転動力によって移動する。モータ40の回転動力は減速部41の出力ギアに伝えられる。減速部41の出力ギアの回転によってラック44が移動し、ラック44の移動によって、連結部品45を介してラック44に連結されている第1アーム31が回動する。第1アーム31が回動することによって、ステップ5が移動する。第2アーム32および第3アーム33は、ステップ5の移動に従うように回動する。要するに、モータ40の回転動力によって第1アーム31が回動し、第1アーム31の回動によってステップ5が移動する。
【0036】
図7を参照して、ステップ5に設けられるアーム4の第2軸部37の支持構造を説明する。
第2軸部37は、第1ステップ部材21と第2ステップ部材22とによって支持される。第2軸部37は、第1ステップ部材21に取り付けられる第1ピン37aと、第2ピン37bとを備える。第2ピン37bは、第1ピン37aに係合した状態で、第2ステップ部材22に接触する。
【0037】
アーム4の先端部4bは、第1ステップ部材21と第2ステップ部材22との間に配置されて、第2軸部37に取り付けられる。第2軸部37は、アーム4の先端部4bに設けられる貫通孔4dに挿通する。第2軸部37には、軸受38aが取り付けられる。第2アーム32の先端部4bの上面と第1ステップ部材21との間には、ワッシャ38bが設けられる。第2アーム32の先端部4bの下面と第2ステップ部材22との間には、ワッシャ38bが設けられる。
【0038】
図8を参照して、ベース3に設けられるアーム4の第1軸部35の支持構造およびその周辺の構造を説明する。車両用ステップ装置1は、第1軸部35を支持する軸支持部材50を備える。第1軸部35は、ベース3と、軸支持部材50とによって支持される。
【0039】
ベース3は、上下方向DZにおける第1軸部35の第1端部35aを支持する。一例では、ベース3は、第1軸部35の第1端部35aを支持する孔を有する。軸支持部材50は、上下方向DZにおける第1軸部35の第2端部35bを支持する。一例では、軸支持部材50は、第1軸部35の第2端部35bを支持する孔を有する。軸支持部材50において、第2端部35bを支持する孔は、軸支持部材50の寸法上の基準となる基準孔55として構成される。本実施形態では、第1軸部35は上下方向DZに沿うように配置される。第1端部35aは、第1軸部35の上端付近の部分である。第2端部35bは、第1軸部35の下端付近の部分である。
【0040】
第1軸部35の第1端部35aは、第1軸部35が軸心を中心に回転しないように、ベース本体8に固定される。第1軸部35の第2端部35bは、軸支持部材50に固定される。第1軸部35において第1端部35aと第2端部35bとの間の中間部には、上述の突出部46が設けられる。突出部46は、第1軸部35の軸心を中心として回転しないように第1軸部35に固定される。第1アーム31の基端部4aは、上下方向DZで突出部46に隣接するように第1軸部35の中間部に取り付けられる。第1アーム31の基端部4aには、第1軸部35が挿通する貫通孔4cが設けられている。第1軸部35には、軸受36aが取り付けられる。軸受36aは、第1アーム31の貫通孔4cと第1軸部35との間に配置される。第1アーム31の基端部4aの下面と軸支持部材50との間には、ワッシャ36bが設けられる。
【0041】
図9を参照して、軸支持部材50について説明する。
軸支持部材50は、板材から構成される。例えば、軸支持部材50は、金属板のプレスによって構成される。軸支持部材50は、ベース3に固定される。軸支持部材50は、本体部51と、2つの壁部52と、固定部53と、切欠部54とを備える。軸支持部材50は、さらに、ベース3に締結される締結部57と、ベース3に結合される結合部58とを備える。軸支持部材50は、さらに、基準孔55と、第1係合部56とを有する。
【0042】
軸支持部材50の本体部51は、ベース3に対向するように配置される。本体部51には、基準孔55が設けられる。基準孔55は、第1軸部35が挿通する孔である。基準孔55には、第1軸部35が軸心を中心に回転しないようにするための溝が設けられてもよい。
【0043】
壁部52は、本体部51の両端に設けられる。2つの壁部52は、互いに平行に構成される。軸支持部材50がベース3に対して所定位置に取り付けられたとき、2つの壁部52は、展開されたアーム4の長手方向DAに沿う方向に延びる。アーム4の長手方向DAは、アーム4に沿う線AL(
図5参照)が延びる方向と定義される。
【0044】
切欠部54は、壁部52に設けられる。切欠部54は、ステップ5が格納されたときにアーム4の一部が入るように構成される。ステップ5が格納位置に配置されるとき、アーム4の先端部4bは、アーム4の基端部4aよりも前方に位置する。このため、本実施形態では、2つの壁部52のうち、前側の壁部52に切欠部54が設けられる。
【0045】
軸支持部材50は、2つの固定部53を有する。軸支持部材50は、2つの固定部53によって、ベース3に固定される。2つの固定部53は、軸支持部材50の基準孔55を挟む両側に設けられる。具体的には、2つの固定部53は、2つの壁部52の間に第1軸部35が配置されるように、壁部52を介して本体部51に設けられる。一例では、固定部53は、2つの壁部52それぞれに沿うように設けられる。固定部53は、壁部52に交差し、かつ、本体部51に平行になるように構成される。切欠部54を有する壁部52に設けられる固定部53は、切欠部54に沿うように延長する。固定部53は、ベース3に固定される。
【0046】
固定部53には、複数の締結部57が設けられる。締結部57は、締結部材としてのボルト69によってベース3に締結される部分である。締結部57は、ボルト69が挿通する第4貫通孔57aを有する。複数の締結部57は、壁部52に沿うように並べられる。第4貫通孔57aの直径は、後述の長孔60の幅長よりも大きい。
【0047】
固定部53は、結合部材59とボルト69とによって、ベース3に結合される。固定部53には、1または複数の結合部58が設けられる。結合部58は、結合部材59によってベース3に結合される。結合部58は、結合部材59が入る第2貫通孔58aを有する。結合部58は、締結部57の間に設けられる。
【0048】
図10を参照して、軸支持部材50の第1係合部56について説明する。
第1係合部56は、ベース3と直接または間接的に係合する。具体的には、第1係合部56は、ベース3に対して軸支持部材50が所定の向きで配置されるように、ベース3の第2係合部17と係合する。一例では、第1係合部56は、軸支持部材50の固定部53に設けられる。
【0049】
本実施形態では、第1係合部56が長孔60に構成される。第2係合部17は、長孔60に挿通する突起61に構成される。長孔60に構成される第1係合部56に、突起61として構成される第2係合部17が入ることによって、第1係合部56と第2係合部17とが互いに係合する。
【0050】
長孔60は、基準孔55の中心点を中心とする円の径方向DRに延びる。長孔60の幅は、突起61の直径と等しい、または、突起61の直径よりも僅かに大きい。長孔60の長さは、突起61の直径よりも長い。軸支持部材50は、基準孔55に第1軸部35が挿通すること、および、第1係合部56としての長孔60と第2係合部17としての突起61とが互いに係合することによって、第1軸部35の軸心を中心とする回転方向にベース3に対して所定の位置に位置決めされる。
【0051】
図11を参照して、第1係合部56に係合する第2係合部17の一例を説明する。
第2係合部17は、ベース3から突出するナット63として構成される。第2係合部17がナット63の構造を有することによって、ベース3に対する軸支持部材50の位置決めと、ベース3に対する軸支持部材50の締結とを行うことができる。
【0052】
具体的には、第2係合部17は、ナット63を有する。ナット63は、ベース3に設けられる貫通孔17aに嵌る。ナット63は、外周面64aと内周面64bとを有する筒部64と、筒部64の端部に設けられるフランジ部65とを有する。筒部64の根元は、ベース3の貫通孔17aに嵌合する。筒部64は、ベース3の貫通孔17aに圧入される。筒部64の外周面64aは、長孔60に接触するように構成される。筒部64の内周面64bは、ボルト69が入る雌ねじに構成される。
【0053】
フランジ部65は、ベース3に接触する。フランジ部65がベース3に接触することによって、ナット63は軸方向において位置決めされる。ナット63の筒部64の先端部64cは、ベース3から突出する。筒部64の先端部64cは、第1係合部56としての長孔60に係合する。筒部64においてベース3から突出している部分の長さは、軸支持部材50の固定部53の厚さよりも小さい。
【0054】
図12に示されるように、第1係合部56と第2係合部17とは、ボルト69によって締結される。具体的には、ボルト69がナット63の筒部64にねじ入れられて、ボルト69の頭部69aが軸支持部材50の固定部53に接触する状態でボルト69が締め付けられることによって、軸支持部材50はベース3に固定される。
【0055】
図10および
図13を参照して、第1係合部56と第2係合部17との係合構造が設けられる場所について、説明する。
第1係合部56と第2係合部17との係合構造は、ベース3と軸支持部材50とが接触するところに設けられる。軸支持部材50において、第1係合部56が設けられる箇所について、以下の2つの例を挙げる。ベース3において、第2係合部17は、第1係合部56に対応する部分に設けられる。
【0056】
図10に示されるように、第1係合部56は、第1軸部35の軸心に沿う方向から見て複数の締結部57のうち軸心から最も遠い締結部57に設けられる。第1係合部56と第2係合部17とは、ボルト69によって締結される。好ましくは、第1係合部56は、複数の締結部57のうち、固定部53において切欠部54に沿う部分以外の部分に設けられる締結部57に設けられる。
【0057】
図13に示されるように、他の例では、第1係合部56は、第1軸部35の軸心に沿う方向から見て複数の締結部57のうち基準線BL(
図5参照)に最も近い締結部57に設けられる。基準線BLは、次のように定義される。基準線BLは、ステップ5が展開されたときのアーム4の配置においてアーム4に沿う線ALに直交する線である(
図5参照)。アーム4に沿う線ALは、アーム4の先端部4bの回転軸線C2と、アーム4の基端部4aの回転軸線C1とに直交する線として定義される。
【0058】
図14を参照して、ベース3の締結部19と軸支持部材50の締結部57との締結構造を説明する。
ベース3の締結部19と軸支持部材50の締結部57とは、ナット63とボルト69とによって締結される。ナット63は、第2係合部17のナット63に準じた構造を有する。ナット63の筒部64は、ベース3の第3貫通孔19aと、軸支持部材50の第4貫通孔57aとに挿通する。ボルト69は、ナット63の筒部64にねじ入れられて、ボルト69の頭部69aが軸支持部材50の固定部53に接触する状態でボルト69が締め付けられることによって、軸支持部材50がベース3に固定される。
【0059】
ベース3の締結部19と軸支持部材50の締結部57との締結構造は、次の点で、第1係合部56と第2係合部17との係合構造と異なる。
ベース3の第2係合部17と軸支持部材50の第1係合部56との係合構造では、軸支持部材50の長孔60とナット63との間に隙間(以下、「係合部分の隙間SX」)がある。ベース3の締結部19と軸支持部材50の締結部57との係合構造では、軸支持部材50の第4貫通孔57aとナット63との間に隙間(「第4隙間SD」)がある。締結部分の第4隙間SDは、係合部分の隙間SXよりも大きい。この構造によって、ベース3に軸支持部材50が位置決めされた状態で、軸支持部材50に歪を生じさせずに、ボルト69によって軸支持部材50をベース3に締結できる。
【0060】
図15および
図16を参照して、ベース3の結合部18と軸支持部材50の結合部58との結合構造を説明する。
ベース3の結合部18と軸支持部材50の結合部58とは、結合部材59によって結合される。結合部材59の一例はリベットである。結合部材59は、ボルト69とナット71とによって構成されてもよい(
図17および
図18参照)。
【0061】
結合部材59は、頭部59aと、座屈部59bとを有する。結合部材59は、ベース3の第1貫通孔18aと、軸支持部材50の第2貫通孔58aとに挿通する。結合部材59は、第1貫通孔18aおよび第2貫通孔58aに挿通した状態で、挿通方向に潰されている(
図16参照)。本実施形態では、挿通方向は、上下方向DZに沿う方向である。
【0062】
具体的には、結合部材59が潰されることによって、ベース3の結合部18と軸支持部材50の結合部58との結合構造は次のような構成を有する。第1貫通孔18aと結合部材59との間、および、第2貫通孔58aと結合部材59との間の少なくとも一方には、隙間がない。すなわち、第1貫通孔18aと結合部材59との間の第1隙間SA、および、第2貫通孔58aと結合部材59との間の第2隙間SBの少なくとも一方は、結合部材59の変形によって埋められている。これによって、ベース3に対して軸支持部材50がずれることが抑制される。一方、第3貫通孔19aとボルト69との間には、第3隙間SCがある。また、第4貫通孔57aとボルト69との間には、第4隙間SDがある。
【0063】
さらに、一例では、ベース3の第1貫通孔18aと軸支持部材50の第2貫通孔58aとは、結合部材59との関係において、次の構造を有する。第1貫通孔18aおよび第2貫通孔58aの一方の孔径は、他方の孔径よりも小さい。結合部材59の頭部59aは、ベース3および軸支持部材50のうちで相対的に小さい貫通孔を有する部材の近くに配置される。
【0064】
本実施形態では、第1貫通孔18aの孔径は、第2貫通孔58aの孔径よりも小さい。結合部材59の頭部59aは、第1貫通孔18aを有するベース3に接触するように配置される。
【0065】
結合部材59の座屈部59bは、頭部59aから延びる胴部59cの変形によって構成される。胴部59cのプレスにおいて、頭部59aから遠い部分の変形が大きい。このため、胴部59cの座屈後、結合部材59とベース3の第1貫通孔18aとの間の隙間(第1隙間SA)、および、結合部材59と軸支持部材50の第2貫通孔58aとの間の隙間(第2隙間SB)の一方が隙間のままで残されることは、抑制される。
【0066】
図17および
図18を参照して、結合部材59の他の例を説明する。他の例では、結合部材59は、ナット71を備える。
図17は、ボルト69の締め付けが行われる前の、ボルト69とナット71との関係を示す。
図18は、ボルト69の締め付けが行われた後の、ボルト69とナット71との関係を示す。
【0067】
ボルト69の締め付け後において、ナット71は、頭部71aと座屈部71bとを有する。ナット71において、座屈部71bは、頭部71aの反対側に設けられる。ボルト69は、ナット71の頭部71aと反対側の端部からねじ入れられる。ボルト69の頭部69aによって、ナット71の筒部72が潰される。ナット71の頭部71aは、ベース3および軸支持部材50のうちで相対的に小さい貫通孔を有する部材の近くに配置される。本実施形態では、第1貫通孔18aの孔径は、第2貫通孔58aの孔径よりも小さい。ナット71の頭部71aは、第1貫通孔18aを有するベース3に接触するように配置される。
【0068】
ナット71の座屈部71bは、頭部71aから延びる筒部72の変形によって構成される。ボルト69の締め付けによって、筒部72において頭部71aから遠い部分は、頭部71aに近い部分よりも大きく変形する。このため、筒部72の座屈後、ナット71とベース3の第1貫通孔18aとの間の隙間(第1隙間SA)、および、ナット71と軸支持部材50の第2貫通孔58aとの間の隙間(第2隙間SB)の一方が、隙間のままで残されることは、抑制される。
【0069】
車両用ステップ装置1の製造方法について説明する。
車両用ステップ装置1の製造方法は、軸支持部材50の取り付け工程を含む。軸支持部材50の取り付け工程では、次の手順で、軸支持部材50が取り付けられる。
【0070】
第1手順において、ベース本体8に第1軸部35が取り付けられる。
第2手順において、ベース本体8にブラケット10が仮組されて、ベース本体8とブラケット10とが組み合ったベース3が構成される。次いで、ベース3に、第2係合部17が設けられる。具体的には、ナット63の先端部64cが突出するように、ベース3にナット63が取り付けられることによって、第2係合部17が構成される。
【0071】
第3手順において、第1軸部35にアーム4および回転関連部品が取り付けられる。回転関連部品は、軸受36a、および、ワッシャ36bを含む。
第4手順において、軸支持部材50をベース3に取り付ける。第4手順では、次のように軸支持部材50を位置決めする。まず、軸支持部材50の基準孔55に第1軸部35を挿通する。その次に、軸支持部材50の第1係合部56とベース3の第2係合部17とが係合するように、軸支持部材50を回転させる。軸支持部材50の第1係合部56とベース3の第2係合部17とを係合させた状態で、第1係合部56と第2係合部17とをボルト69で締め付ける。
【0072】
第5手順において、軸支持部材50の締結部57とベース3の締結部19とをボルト69で締結する。
第6手順において、軸支持部材50の結合部58とベース3の結合部18とを結合部材59によって結合する。第6手順では、ハンドリベッターまたはプレス機を使って、結合部材59を潰す。
【0073】
本実施形態の第1作用を説明する。
軸支持部材50は、ボルト69と結合部材59とによって、ベース3に固定される。ボルト69は、軸支持部材50とベース3とをボルト69の軸方向に締結する。この締結によって、軸支持部材50は、ベース3から離れ難くなる。結合部材59は、軸支持部材50の第1貫通孔18aとベース3の第2貫通孔58aとに挿通して潰される。この結合によって、軸支持部材50は、ベース3に対してずれ難くなる。このようにして、軸支持部材50は、ベース3に対して位置ずれしないように強固に固定される。
【0074】
本実施形態の第2作用を説明する。
壁部52の延長方向が展開時のアーム4の長手方向DAと概ね同じ方向となるように、軸支持部材50がベース3に配置されることが好ましい。しかし、第1軸部35の軸心を中心とする回転方向に軸支持部材50が位置決めされない構造である場合、壁部52の延長方向が展開時のアーム4の長手方向DAと大きく異なるように、軸支持部材50が配置される虞がある。この場合、アーム4に加わる荷重が軸支持部材50によって適切に受けることが出来ない虞が生じる。
【0075】
本実施形態では、軸支持部材50は、第1軸部35が挿通する基準孔55を基準孔として、第1軸部35の軸心を中心として回転方向に位置決めされる。軸支持部材50の第1係合部56は、基準孔55を基準として設けられる。これによって、軸支持部材50は、第1軸部35の軸心を中心として回転方向に、高い精度で位置決めできる。これによって、アーム4に加わる荷重を軸支持部材50によって適切に受けることができる。
【0076】
本実施形態の車両用ステップ装置1は、次の第1効果を有する。
(1)軸支持部材50は、軸支持部材50の基準孔55を挟む両側に設けられる固定部53によってベース3に固定される。軸支持部材50の固定部53は、ベース3に、締結部材としてのボルト69と、結合部材59とによって結合される。結合部材59は、ベース3の第1貫通孔18aと、軸支持部材50の第2貫通孔58aとに挿通した状態で、上下方向DZに潰されている。
【0077】
ベース3と軸支持部材50とがボルト69のみによって締結される場合、ボルト69と、ボルト69が挿通する孔との間に隙間が存在するため、ベース3に対して軸支持部材50がずれる余地がある。この点、上記構成によれば、結合部材59は、第1貫通孔18aと第2貫通孔58aとに挿通した状態で潰されている。このため、結合部材59と第1貫通孔18aとの間の第1隙間SA、および、結合部材59と第2貫通孔58aとの間の第2隙間SBが、小さくなり、ベース3に対して軸支持部材50がずれる余地が小さくなる。これによって、ベース3に対する軸支持部材50のずれを抑制できる。このようにして、ステップ5の安定移動の低下を抑制できる。第1隙間SAの間隔および第2隙間SBの間隔が0mmになることもあり得る。
【0078】
(2)ベース3の第1貫通孔18aと結合部材59との間、および、軸支持部材50の第2貫通孔58aと結合部材59との間の少なくとも一方には、隙間がない。一方、ベース3の第3貫通孔19aとボルト69との間には、第3隙間SCがあり、軸支持部材50の第4貫通孔57aとボルト69との間には、第4隙間SDがある。この構成によれば、ベース3に対する軸支持部材50のずれを効果的に抑制できる。
【0079】
(3)結合部材59によって結合される部分において、第1貫通孔18aおよび第2貫通孔58aの一方の孔径は、他方の孔径よりも小さい。結合部材59の頭部59aは、相対的に小さい貫通孔を有する部材の近くに配置される。本実施形態では、第1貫通孔18aの孔径が第2貫通孔58aの孔径よりも小さい。結合部材59の頭部59aがベース3の第1貫通孔18aの近くに配置される。
【0080】
結合部材59の座屈部59bは、結合部材59の胴部59cのプレスによって構成される。胴部59cのプレスにおいて、頭部59aの近くよりも頭部59aから遠い部分の変形が大きい。上記構成では、結合部材59の頭部59aは、相対的に小さい貫通孔を有するベース3の近くに配置される。これによって、胴部59cにおいて、変形が小さい部分が相対的に小さい貫通孔に配置され、変形が大きい部分が相対的に大きい貫通孔に配置される。このため、結合部材59とベース3の第1貫通孔18aとの間の第1隙間SA、および、結合部材59と軸支持部材50との間の第2隙間SBのうちの一方が、隙間の状態で残るといった状態になることが抑制される。第1隙間SAおよび第2隙間SBは、ともに、座屈部59bによって埋められる。このようにして、ステップ5の安定移動の低下を抑制できる。
【0081】
(4)結合部材59の一例は、リベットである。
この構成によれば、ハンドリベッターまたはプレス機によって、ベース3に軸支持部材50を結合できる。
【0082】
(5)結合部材59は、ナット71であってもよい。ナット71は、頭部71aと座屈部71bとを有する。この構成によれば、ボルト69の締め付けによって、ナット71の座屈部71bを形成して、ベース3と軸支持部材50とを結合できる。
【0083】
(6)軸支持部材50は、2つの固定部53を有する。2つの固定部53は、2つの固定部53の間に第1軸部35が配置されるように、設けられる。この構成によれば、軸支持部材50は、第1軸部35を間の位置するように配置される2つの固定部53によってベース3に固定される。2つの固定部53は、ボルト69と結合部材59とによってベース3に固定される。これによって、ベース3に対する軸支持部材50のずれを効果的に抑制できる。
【0084】
(7)車両用ステップ装置1の製造方法は、軸支持部材50の取り付け工程を含む。軸支持部材50の締結部57とベース3の締結部19とをボルト69で締結した後、軸支持部材50の結合部58とベース3の結合部18とを結合部材59によって結合し、結合部材59を潰す。
【0085】
ベース3と軸支持部材50とがボルト69のみによって締結される場合、ボルト69と、ボルト69が挿通する孔との間に隙間が存在するため、ベース3に対して軸支持部材50がずれる余地がある。この点、上記車両用ステップ装置1の製造方法によれば、結合部材59は、第1貫通孔18aと第2貫通孔58aとに挿通した状態で潰される。このため、結合部材59と第1貫通孔18aとの間の第1隙間SA、および、結合部材59と第2貫通孔58aとの間の第2隙間SBが、小さくなり、ベース3に対して軸支持部材50がずれる余地が小さくなる。これによって、ベース3に対する軸支持部材50のずれを抑制できる。このようにして、ステップ5の安定移動の低下を抑制できる。
【0086】
本実施形態の車両用ステップ装置1は、次の第2効果を有する。
(8)車両用ステップ装置1において、軸支持部材50は、第1軸部35が挿通する基準孔55と、ベース3と直接または間接的に係合する第1係合部56とを有する。ベース3は、第1係合部56と係合する第2係合部17を有する。第1係合部56および第2係合部17の一方は、基準孔55の中心点を中心とする円の径方向DRに延びる長孔60に構成される。第1係合部56および第2係合部17の他方は、長孔60に係合する突起61に構成される。軸支持部材50は、長孔60と突起61との係合によって、基準孔55の中心点を中心とする回転方向にベース3に対して位置決めされる。
【0087】
アーム4を支持する軸支持部材50が所定の位置からずれて配置されると、アーム4に加わる荷重が軸支持部材50によって十分に受けられない虞がある。この場合、軸支持部材50または第1軸部35が変形し、ステップ5の展開に支障が生じる。この点、軸支持部材50は、所定位置からずれて配置されることが抑制される。このようにして、ステップ5が安定して移動する状態を長く維持できる。
【0088】
(9)突起61は、外周面64aと内周面64bとを有するナット63として構成される。外周面64aは、長孔60に接触するように構成される。内周面64bは、ボルト69が入る雌ねじに構成される。第1係合部56と第2係合部17とは、ボルト69によって締結される。
【0089】
この構成によれば、第1係合部56と第2係合部17との係合によって軸支持部材50を位置決めできるとともに、第1係合部56と第2係合部17とが係合する部分において締結できる。これによって、軸支持部材50の配置後の作業において、軸支持部材50の位置ずれを抑制できる。
【0090】
(10)軸支持部材50は、ベース3に締結される複数の締結部57を有する。第1係合部56は、第1軸部35の軸心に沿う方向から見て複数の締結部57のうち軸心から最も遠い締結部57に設けられる。第1係合部56と第2係合部17とはボルト69によって締結される。
【0091】
この構成によれば、第1係合部56が、第1軸部35の軸心に沿う方向から見て複数の締結部57のうち軸心の近くの締結部57に設けられる場合に比べて、軸支持部材50をより精確な位置に配置できる。
【0092】
(11)第1係合部56は、第1軸部35の軸心に沿う方向から見て複数の締結部57のうち基準線BLに最も近い締結部57に設けられる。第1係合部56と第2係合部17とはボルト69によって締結される。
【0093】
ステップ5が展開されたときのアーム4に加わる荷重は、基準線BLを回転中心とする方向に作用する。このとき、軸支持部材50には、軸支持部材50とベース3とが接触する面において基準線BLに直交する方向に、大きい力が働く。この場合、軸支持部材50は、基準線BLに直交する方向に移動する虞がある。この点、上記構成によれば、第1係合部56は、第1軸部35の軸心に沿う方向から見て複数の締結部57のうち基準線BLに最も近い締結部57に設けられる。第1係合部56は、長孔60である。長孔60は、基準孔55の中心点を中心とする円の径方向DRに延びる。これによって、長孔60とボルト69とが接触する点での接線は、力の方向と直角に近い方向に交差する。このため、長孔60とボルト69とが接触する点での接線が力の方向と斜めに交差する場合に比べて、ボルト69に力が伝わり易くなり、軸支持部材50の位置ずれが抑制される。
【0094】
(12)第1係合部56は、複数の締結部57のうち、固定部53において切欠部54に沿う部分以外の部分に設けられる締結部57に設けられる。第1係合部56と第2係合部17とはボルト69によって締結される。
【0095】
固定部53において切欠部54に沿う部分は、固定部53において切欠部54に沿う部分以外の部分に比べて、基準孔55からの距離に関して、ずれが生じ易い。この点で、上記構成によれば、第1係合部56は、複数の締結部57のうち、固定部53において切欠部54に沿う部分以外の部分に設けられるため、軸支持部材50において、基準孔55に対する第1係合部56の位置精度を高めることができる。
【0096】
(13)車両用ステップ装置1の製造方法は、軸支持部材50の取り付け工程を含む。
軸支持部材50の取り付け工程において、軸支持部材50の基準孔55に第1軸部35を挿通し、軸支持部材50の第1係合部56とベース3の第2係合部17とが係合する位置に、軸支持部材50を回転させて、第1係合部56と第2係合部17と係合する。
【0097】
アーム4を支持する軸支持部材50が所定の位置からずれて配置されると、アーム4に加わる荷重が軸支持部材50によって十分に受けられない虞がある。この場合、軸支持部材50または第1軸部35が変形し、ステップ5の展開に支障が生じる。この点、上記製造方法によれば、軸支持部材50が所定位置からずれて配置されることを抑制できる。
【0098】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に変更のない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0099】
・本実施形態では、軸支持部材50の第1係合部56は、ベース3と直接に係合する。具体的には、軸支持部材50の第1係合部56は、ベース3に設けられる第2係合部17と係合する。これに対して、軸支持部材50の第1係合部56は、ベース3と間接的に係合してもよい。例えば、第2係合部17は、ベース3に着脱可能な治具に設けられてもよい。このような治具は、ベース3に軸支持部材50が固定された後、ベース3から取り外されてもよい。このような治具は、生産工程において、ベース3を仮保持するものであってもよい。一例では、車両用ステップ装置1の製造方法の第2手順の前において、または、第2手順において、第2係合部17を有する治具を使う。第2係合部17は、治具がベース3に取り付けられたときに、軸支持部材50の第1係合部56に係合する突起61として構成される。治具の第2係合部17をベース3の係合孔に挿通する。ベース3の係合孔は、固定部53に設けられる。係合孔は、第2係合部17としての突起61が嵌合するように構成される。係合孔が設けられる場所は、上記実施形態における第2係合部17の配置位置と同じ場所である。治具の第2係合部17が係合孔に挿通することによって、実質的に、実施形態における第2係合部17と同じ突起61が構成される。一例では、第2手順において、治具の第2係合部17をベース3の係合孔に挿通した後、軸支持部材50の基準孔55に第1軸部35を挿通する。そして、軸支持部材50の第1係合部56と治具の第2係合部17とが係合するように軸支持部材50を回転させて、第1係合部56と第2係合部17と係合する。
【0100】
・本実施形態では、軸支持部材50の第1係合部56は長孔60に構成されているが、第1係合部56の構成はこれに限定されない。例えば、第1係合部56は、基準孔55の中心点を中心とする円の径方向DRに延びる溝として構成されてもよい。また、第1係合部56は、孔ではなく切欠でもよい。切欠は、基準孔55の中心点を中心とする円の径方向DRに、固定部53の端縁まで延びる。
【0101】
・本実施形態では、第1係合部56および第2係合部17は、締結構造を有するが、第1係合部56および第2係合部17は、位置決め構造のみを有するように構成されてもよい。
【0102】
・本実施形態では、軸支持部材50の第1係合部56が長孔60に構成されて、ベース3の第2係合部17が突起61に構成されている。軸支持部材50とベース3との係合構造は、これとは反対の構造であってもよい。具体的には、軸支持部材50の第1係合部56が突起に構成されて、ベース3の第2係合部17が長孔に構成される。
【0103】
・本実施形態では、ステップ5に設けられる第2軸部37において、第2軸部37の下端部は第2ステップ部材22によって支持されるが、第2軸部37は、本実施形態の軸支持部材50と同じ構造の部材によって支持されてもよい。軸支持部材50における位置決め、締結、および、結合に関する構造は、第2軸部37を支持する部材にも適用できる。
【0104】
・本実施形態では、結合部材59によって結合される部分において、ベース3の第1貫通孔18aの孔径が軸支持部材50の第2貫通孔58aの孔径よりも小さい。結合部材59の頭部59aがベース3の第1貫通孔18aの近くに配置される。ベース3と軸支持部材50とが結合する部分の構造は、これとは反対の構造であってもよい。具体的には、軸支持部材50の第2貫通孔58aの孔径がベース3の第1貫通孔18aの孔径よりも小さく構成される。この場合、結合部材59の頭部59aは、軸支持部材50の第2貫通孔58aの近くに配置される。この場合においても、結合部材59が潰されたときの効果は、本実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0105】
SC…第3隙間
SD…第4隙間
1…車両用ステップ装置
2…車体
3…ベース
4…アーム
5…ステップ
18…結合部
18a…第1貫通孔
19…締結部
19a…第3貫通孔
50…軸支持部材
53…固定部
57…締結部
57a…第4貫通孔
58…結合部
58a…第2貫通孔
59…結合部材
59a…頭部
59b…座屈部
69…ボルト
69a…頭部
71…ナット
71a…頭部
71b…座屈部