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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150090
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】目的地推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20220929BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0969
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052521
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 正憲
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB38
2F129BB40
2F129BB49
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD20
2F129DD21
2F129DD26
2F129DD27
2F129DD31
2F129DD36
2F129DD39
2F129DD46
2F129DD47
2F129DD48
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE59
2F129EE62
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE82
2F129EE94
2F129HH02
2F129HH12
5H181AA01
5H181BB15
5H181FF04
5H181FF07
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】利用者によって目的地が設定されていない場合、利用者が向かおうとする地点を目的地として推定できる可能性を高める技術の提供。
【解決手段】目的地が設定されていない場合に、車両の過去の移動履歴を用いて目的地を推定する目的地推定システムであって、前記車両において過去にイグニッションONされた地点および時刻と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせを前記移動履歴として蓄積する移動履歴蓄積部と、新たにイグニッションONされた地点が一致し且つ新たにイグニッションONされた時刻が類似する周期的な前記移動履歴が存在する場合に、周期的な前記移動履歴におけるイグニッションOFFされた地点を目的地として推定する目的地推定部と、を備える目的地推定システムを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地が設定されていない場合に、車両の過去の移動履歴を用いて目的地を推定する目的地推定システムであって、
前記車両において過去にイグニッションONされた地点および時刻と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせを前記移動履歴として蓄積する移動履歴蓄積部と、
新たにイグニッションONされた地点が一致し且つ新たにイグニッションONされた時刻が類似する周期的な前記移動履歴が存在する場合に、周期的な前記移動履歴におけるイグニッションOFFされた地点を目的地として推定する目的地推定部と、
を備える目的地推定システム。
【請求項2】
前記車両は、燃料タンクに蓄積された燃料を動力源とする内燃機関と、バッテリに蓄積された電力を動力源とするモータと、を駆動源として備えるハイブリッド車両であり、
新たにイグニッションONされた地点から前記目的地までの経路を示す経路情報を、前記経路情報に基づいて前記モータと前記内燃機関を制御する駆動制御装置に出力する経路情報出力部をさらに備える、
請求項1に記載の目的地推定システム。
【請求項3】
前記移動履歴には、イグニッションONされた曜日がさらに含まれ、
イグニッションONされた曜日、時間帯、地点と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせが一致する前記移動履歴が第1個数以上存在する場合に、当該移動履歴が周期的であると判断される、
請求項1または請求項2に記載の目的地推定システム。
【請求項4】
1週間のうち、イグニッションONされた時間帯、地点と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせが一致する前記移動履歴が第2個数以上存在する場合に、当該移動履歴が周期的であると判断される、
請求項1または請求項2に記載の目的地推定システム。
【請求項5】
複数の前記移動履歴において、イグニッションONされた時刻が午前であってイグニッションONされた時刻が第1時間帯に含まれる場合に、複数の前記移動履歴が周期的であると判断され、
複数の前記移動履歴において、イグニッションONされた時刻が午後であってイグニッションONされた時刻が第2時間帯に含まれる場合に、複数の前記移動履歴が周期的であると判断され、
前記第2時間帯の方が前記第1時間帯よりも大きい、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の目的地推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両において、目的地までの経路に基づいて計画的にモータや内燃機関を制御することで、燃費を向上させることが知られている。特許文献1には、目的地が設定されていない場合に、次のように目的地を推定することが記載されている。まず、出発地から通過したリンクIDを含み、且つ現在の曜日及び現在時間と同じ日時を有する履歴データRAを検索する。続いて、当該履歴データに含まれる目的地のうち最も走行回数が多い履歴データの目的地を推定目的地の候補とする。続いて推定目的地の候補のうち、走行回数が所定回数以上である目的地の信頼度(RAの個数に対する推定目的地の候補に行った回数の割合)を算出し、信頼度が所定値以上である場合に、当該目的地を採用することが記載されている(0040段落~0046段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4438812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用者によって目的地が設定されていない場合、利用者が向かおうとする地点を目的地として推定できることが望ましい。仮に、過去に同じ時間帯に同じリンクを通過した履歴における目的地のうち最も走行回数が多い目的地を今回の目的地として推定する場合、利用者が向かおうとしている地点とは異なる地点が目的地として推定される可能性がある。例えば、平日7時台に自宅を出発し職場に向かう移動履歴が多数蓄積されていたとしても、休日7時台に出発する場合の目的地は職場でない可能性がある。また、過去に同じ曜日、時間帯に同じリンクを通過した履歴における目的地のうち最も走行回数が多い目的地を今回の目的地として推定する場合、条件を満たす履歴が抽出できず目的地を推定できない可能性がある。例えば、曜日は異なっていても、過去に同じような時間帯に自宅を出発し繰り返し同一地点に向かった移動履歴がある場合、新たに当該時間帯に自宅を出発した場合に当該同一地点が目的地である可能性はあるが、曜日が相違するため条件を満たさず目的地として採用されないこととなり得る。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、利用者によって目的地が設定されていない場合、利用者が向かおうとする地点を目的地として推定できる可能性を高める技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、目的地推定システムは、目的地が設定されていない場合に、車両の過去の移動履歴を用いて目的地を推定する目的地推定システムであって、車両において過去にイグニッションONされた地点および時刻と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせを移動履歴として蓄積する移動履歴蓄積部と、新たにイグニッションONされた地点が一致し且つ新たにイグニッションONされた時刻が類似する周期的な移動履歴が存在する場合に、周期的な移動履歴におけるイグニッションOFFされた地点を目的地として推定する目的地推定部と、を備える。
【0006】
すなわち、目的地推定システムは、過去の移動履歴において周期的な移動を示す移動履歴が存在する場合であって、新たにイグニッションONされた地点が周期的な移動履歴におけるイグニッションON地点と一致し、且つ、新たにイグニッションONされた時刻が周期的な移動履歴におけるイグニッションONの時刻と類似する場合に、当該周期的な移動履歴におけるイグニッションOFFされた地点を目的地として推定する。周期的に発生した実績のある移動におけるイグニッションOFF地点を目的地として推定するため、利用者が向かおうとする地点を目的地として推定できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】目的地推定システムの構成を示すブロック図。
図2図2Aおよび図2Cは移動履歴の例を示す図、図2Bおよび図2Dは周期データの例を示す図。
図3図3Aは移動履歴蓄積処理のフローチャート、図3Bは周期データ作成処理のフローチャート。
図4図4Aは経路情報出力処理のフローチャート、図4Bは目的地推定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)目的地推定システムの構成:
(2)移動履歴蓄積処理:
(3)経路情報出力処理:
(4)他の実施形態:
【0009】
(1)目的地推定システムの構成:
図1は、本発明にかかる目的地推定システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態において目的地推定システム10はナビゲーションシステムによって実現され、車両100に搭載されている。車両100は、燃料タンク47に蓄積された燃料を動力源とする内燃機関44と、バッテリ46に蓄積された電力を動力源とするモータ45と、を駆動源として備えるハイブリッド車両である。
【0010】
目的地推定システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、制御部20は、記録媒体30やROMに記録されたプログラムを実行することができる。本実施形態において制御部20は、このプログラムとして目的地推定プログラム21(詳細は後述する)を実行することができる。
【0011】
車両100には、目的地推定システム10と協働し、または、車両制御を実行するために、次の各部(40~49)が備えられている。GNSS受信部40は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ41は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ42は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。車速センサ41およびジャイロセンサ42等は、車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両の出発地と走行軌跡とに基づいて現在位置が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された車両の現在位置がGNSS受信部40の出力信号に基づいて補正される。
【0012】
通信部43は、目的地推定システム10の外部に存在する交通情報配信システム等と無線通信を行うための回路を備えている。制御部20は、交通情報配信システムから配信された交通情報(渋滞区間を示すデータを含む)を取得することができる。ユーザI/F部49は、利用者の指示を入力し、また、利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、表示部として図示しないディスプレイを備えるとともに入力部として図示しないボタンやタッチパネル等を備えている。
【0013】
本実施形態の車両100はハイブリッド車両である。内燃機関44とモータ45とは図示しない動力伝達機構に連結されており、当該動力伝達機構によって回転駆動力を車両の推進力に変換することによって車両を駆動する。車両100は、内燃機関44とモータ45のいずれかまたは双方によって駆動することができる。また、車両を走行させる際の回転方向と逆方向にモータ45を回転させることが可能であり、この回転によって発生する回生電力はバッテリ46に充電される。
【0014】
内燃機関44とモータ45は、駆動制御ECU48(駆動制御装置)に制御される。駆動制御ECU48は、内燃機関44とモータ45とに対して制御信号を出力可能であり、内燃機関44とモータ45とに対して制御信号を出力して内燃機関44とモータ45とのいずれかまたは双方が回転駆動力を発生させるように制御する。従って、本実施形態においては、駆動制御ECU48が出力する制御信号によって内燃機関44の駆動や停止、モータ45による充電、バッテリ46の放電によるモータ45の駆動が選択される。また、駆動制御ECU48は、バッテリ46からSOC[%](SOC:State Of Charge)を取得して制御部20に通知することができる。制御部20は当該通知に基づいてバッテリ46の残電力量(モータ45のみを使用するEV走行にて消費可能な電力量)を取得することができる。
【0015】
本実施形態において、駆動制御ECU48は、制御部20が出力する経路情報に基づいてEV走行とHV走行とを切り替えることができる。EV走行は、内燃機関44を使用せずモータ45を使用して車両が駆動されるモードであり、HV走行は、内燃機関44とモータ45との少なくとも一方を使用して車両が駆動されるモードである。HV走行が行われる場合、駆動制御ECU48は、種々の条件(車速や加速度等)によって内燃機関44の駆動タイミングを決定し、決定されたタイミングで内燃機関44を動作させ、モータ45による駆動も補助的に利用して車両を駆動する。
【0016】
本実施形態においては、制御部20が駆動制御ECU48に対して出力する経路情報に基づいて、駆動制御ECU48は、EV走行またはHV走行の開始および終了タイミング(走行計画)を決定し、当該タイミングに従って車両100にEV走行またはHV走行を行わせる。これらのタイミングが異なれば、バッテリ46における消費電力量が変動するため、EV走行やHV走行の開始および終了タイミングの制御は、バッテリ46の充放電タイミングの制御である。経路情報には、例えば、走行予定経路の各区間の勾配データ、渋滞区間を示すデータが含まれる。
【0017】
利用者がナビゲーションシステムに目的地を設定した場合、制御部20は、現在地から目的地までの走行予定経路を探索し、走行予定経路を示す経路情報を駆動制御ECU48に出力することができる。記録媒体30には予め地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、道路の勾配を示す勾配データ、道路やその周辺に存在する地物を示すデータ、制限速度データ、道路種別データ、幅員データ、レーンデータ等のリンクに対応する区間の道路に関する様々なデータを含んでいる。本実施形態において地図情報30aは、目的地までの経路探索や経路案内、車両の現在位置や移動経路の特定、走行負荷を示す情報(例えば勾配データ)の取得等に利用される。
【0018】
駆動制御ECU48によって走行計画が作成されると、目的地推定システム10は、GNSS受信部40,車速センサ41,ジャイロセンサ42の出力信号とマップマッチング結果に基づいて車両100の現在位置、走行中のリンクを特定し、駆動制御ECU48に通知する。駆動制御ECU48は、走行計画に基づいてHV走行とEV走行とを切り換える地点(例えばノード)を特定する。当該地点を通過すると、駆動制御ECU48は、切り換え後の走行モードで車両100を駆動する。
【0019】
なお、駆動制御ECU48は、経路情報に基づいて例えば次のように走行計画を作成する。駆動制御ECU48は、経路情報の勾配データに基づいて下り坂区間を特定し、下り坂区間の前に残電力量を減少させるように走行計画を作成する。また、経路情報に渋滞区間を示すデータが含まれている場合、駆動制御ECU48は走行予定経路に渋滞区間が含まれていると判断し、当該渋滞区間に至るまでに残電力量を維持(あるいは増加)させるように走行計画を作成する。このように事前に作成した走行計画に従って走行予定経路を走行させることにより、燃費向上効果が期待できる。
ナビゲーションシステムでは、目的地が設定されている場合、目的地までの走行予定経路をユーザI/F部49の表示部に表示し、経路誘導を行う。
【0020】
ところで、利用者がナビゲーションシステムに目的地を設定しない場合、すなわち走行予定経路が不明な場合も、燃費向上できることが望ましい。そこで、本実施形態において制御部20は、目的地が設定されていない場合に目的地を推定するため、目的地推定プログラム21を実行することができる。目的地推定プログラム21は、移動履歴蓄積部21aと、目的地推定部21bと、経路情報出力部21cとを備えている。移動履歴蓄積部21aは、車両100において過去にイグニッションONされた地点および時刻と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせを移動履歴として蓄積する機能を制御部20に実現させる。本実施形態において制御部20は、車両100が走行する過程において、GNSS受信部40、車速センサ41、ジャイロセンサ42の出力信号に基づいて取得された車両の現在位置と、図示しない計時部によって取得された現在の日時(現在の日付、曜日、時刻等)とに基づいて車両100の移動履歴を示す移動履歴情報30bを生成し、記録媒体30に記録する。
【0021】
本実施形態においては、移動履歴情報30bにおける各移動履歴には、イグニッションONされた地点およびその日時(日付、曜日、時刻)と、イグニッションOFFされた地点およびその日時と、イグニッションONされた地点からイグニッションOFFされた地点に至るまでに通過した地点(例えばノード)およびその日時が含まれている。なお、制御部20は、GNSS受信部40,車速センサ41,ジャイロセンサ42の出力信号と公知のマップマッチングとに基づいて、車両の現在位置や車両が走行中の区間(リンク)を特定することができる。制御部20は、当該区間の始点のノードの通過時刻と終点のノードの通過時刻を図示しない計時部から取得し当該ノードと対応付けて記録することができる。
【0022】
さらに、本実施形態において制御部20は、蓄積された移動履歴から周期的に生じている移動履歴を抽出し、抽出した移動履歴から周期データを生成する。周期データは、抽出した移動履歴が有する周期性を示すデータである。例えば、図2Aは、抽出された移動履歴の一例である。図2Aに示す3個の移動履歴は、イグニッションONされた地点と曜日が同一であり、イグニッションONされた時刻が第1時間帯に含まれ、イグニッションOFFされた地点が同一であり、走行経路が同一であることを示す例である。第1時間帯は、本実施形態においては2時間である。図2Aのような移動履歴の抽出方法について具体的に説明する。制御部20は、イグニッションONが月曜日である移動履歴のうち、イグニッションON地点とイグニッションOFF地点の組み合わせが同一である移動履歴を候補として抽出する。そして制御部20は、候補として抽出した移動履歴におけるイグニッションON時刻の統計値(例えば中央値、最頻値等)を算出し、当該統計値の前後1時間であって合計2時間の時間帯を第1時間帯とする。図2Aの例において第1時間帯は午前7時から9時の2時間である。候補として抽出された移動履歴のうちこの第1時間帯にイグニッションON時刻が含まれる移動履歴をさらに抽出することで、図2Aに示す移動履歴が抽出可能である。このようにして抽出された移動履歴、すなわち、イグニッションONされた曜日、時間帯、地点と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせが一致するような移動履歴が、第1個数以上存在する場合に、図2Bに示すような第1の周期データを生成する。すなわち周期的と見なすための閾値が個数について設定されており、本実施形態において第1個数は3個である。図2Bに示す第1の周期データは、イグニッションON地点と、イグニッションONの時間帯(図2Aに示す移動履歴のイグニッションONの時刻を含む第1時間帯)と、イグニッションONの曜日と、イグニッションOFF地点と、イグニッションON地点からイグニッションOFF地点に至る走行経路とを含む。
【0023】
また例えば、図2Cは、1週間以内の月曜、水曜、金曜において、イグニッションONされた地点が同一で、イグニッションONされた時刻が第1時間帯に含まれ、イグニッションOFFされた地点が同一であり、走行経路が一致している移動履歴の例を示している。図2Cのような移動履歴の抽出方法について具体的に説明する。制御部20は、任意の日を基点とする一週間以内において、イグニッションON地点とイグニッションOFF地点の組み合わせが一致する移動履歴を候補として抽出する。そして制御部20は、候補として抽出した移動履歴におけるイグニッションON時刻の統計値を算出し、当該統計値の前後1時間の時間帯を第1時間帯とする。図2Cの例において第1時間帯は10:45から12:45の2時間である。候補として抽出された移動履歴のうちこの第1時間帯にイグニッションON時刻が含まれる移動履歴をさらに抽出することで図2Cに示す移動履歴が抽出可能である。このようにして抽出された移動履歴、すなわち、1週間のうち、イグニッションONされた時間帯、地点と、イグニッションOFFされた地点の組み合わせが一致する移動履歴が、第2個数以上存在する場合に、制御部20は、図2Dに示すような第2の周期データを生成する。第2個数は周期的と見なすための閾値であり、本実施形態においては3個である。図2Dに示す第2の周期データは、イグニッションON地点と、イグニッションONされた時間帯(図2Cの移動履歴の各イグニッションON時刻を含む第1時間帯)と、イグニッションOFF地点と、イグニッションON地点からイグニッションOFF地点に至る走行経路とを含む。なお図2Dに示す第2の周期データにおいて曜日の指定はない(Don't Care)。本実施形態において、制御部20は、このような周期データを生成する処理をイグニッションOFFのタイミングで実施する。
【0024】
目的地推定部21bは、新たにイグニッションONされた地点が一致し且つ新たにイグニッションONされた時刻が類似する周期的な移動履歴が存在する場合に、当該周期的な移動履歴におけるイグニッションOFFされた地点を目的地として推定する機能を制御部20に実現させる。本実施形態において、制御部20は、新たにイグニッションONされた地点および時刻が、第1の周期データまたは第2の周期データの少なくともいずれかと合致する場合に、今回のイグニッションON地点と時刻が合致する周期的な移動履歴が存在すると判断する。より具体的には、今回のイグニッションON地点が第1の周期データのイグニッションON地点と一致し、今回のイグニッションON時刻が第1の周期データのイグニッションONの第1時間帯に含まれる(時刻が類似する)場合に制御部20は、第1の周期データと合致すると判断する。また、今回のイグニッションON地点が第2の周期データのイグニッションON地点と一致し、今回のイグニッションON時刻が第2の周期データのイグニッションONの第1時間帯に含まれる(時刻が類似する)場合に制御部20は、第2の周期データと合致すると判断する。すなわち本実施形態においては、新たにイグニッションONされた時刻がいずれかの周期データのイグニッションON時間帯に含まれている場合に、新たにイグニッションONされた時刻が周期的な移動履歴におけるイグニッションON時刻と類似すると見なす。今回のイグニッションON地点と時刻が合致する周期的な移動履歴が存在すると判断した場合、制御部20は、一致した周期データが示すイグニッションOFF地点を目的地として推定する。
【0025】
例えば、月曜日の午前8:00に地点Aにて新たにイグニッションONされた場合、制御部20は、第1の周期データと合致すると判断し、第1の周期データにおけるイグニッションOFF地点である地点Bを目的地として推定する。すなわち、今回イグニッションONされた曜日、時刻、地点と同じ曜日の類似する時刻(同じ時間帯)に同じ地点で周期的にイグニッションONされていた場合、この周期的な移動履歴における目的地を新たな目的地として推定することができる。なお、新たにイグニッションONされた地点および時刻がいずれの周期データとも合致しない場合、制御部20は目的地を推定せず、走行予定経路を示す経路情報も駆動制御ECU48に出力しない。従って例えば、日曜日の午前8:00に地点Aにて新たにイグニッションONされた場合、いずれの周期データとも一致しないため、制御部20は目的地を推定しない。
また例えば、木曜日の午前11:40に地点Bにて新たにイグニッションONされた場合、制御部20は、過去に木曜日の同時間帯に地点BでイグニッションONされた移動履歴はないが、第2の周期データと合致すると判断し、第2の周期データにおけるイグニッションOFF地点である地点Cを目的地として推定する。すなわち、今回イグニッションONされた時刻と類似する時刻に、同じ地点で過去に周期的にイグニッションONされていた場合、曜日に依存せず、この周期的な移動履歴における目的地を新たな目的地として推定することができる。
【0026】
経路情報出力部21cは、新たにイグニッションONされた地点から目的地までの経路を示す経路情報を、駆動制御ECU48に出力する機能を制御部20に実現させる。すなわち制御部20は、目的地を推定した場合、現在地(今回新たにイグニッションONした地点)から目的地までの走行予定経路を、目的地推定のために採用した周期データから取得し、経路情報として生成する。制御部20は、経路情報として、例えば、通過するノード(またはリンク)を順に並べた情報を生成する。さらに、制御部20は、走行予定経路の各区間の勾配データを経路情報に含める。また、制御部20は、交通情報配信システムから取得した交通情報に基づいて、走行予定経路における渋滞区間の有無を判定し、走行予定経路上に渋滞区間が存在する場合は、渋滞区間の始点および終点を経路情報に含める。このようにして生成した経路情報を、制御部20は駆動制御ECU48に出力する。駆動制御ECU48は上述したように、経路情報に基づいて燃費向上のための走行計画を作成し、当該走行計画に従ったタイミングでモータ45と内燃機関44を制御する。従ってナビゲーションシステムに目的地が設定されていなかったとしても、ハイブリッド車両における燃費向上を実現できる可能性を高めることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態においては、過去の移動履歴において周期的な移動を示す移動履歴が存在する場合であって、新たにイグニッションONされた地点が周期的な移動履歴におけるイグニッションON地点と一致し、且つ、新たにイグニッションONされた時刻が周期的な移動履歴におけるイグニッションONの時刻と類似する場合に、当該周期的な移動履歴におけるイグニッションOFFされた地点を目的地として推定する。周期的に発生した実績のある移動におけるイグニッションOFF地点を目的地として推定するため、利用者が向かおうとする地点を目的地として推定できる可能性を高めることができる。
【0028】
(2)移動履歴蓄積処理:
次に、移動履歴蓄積部21aの機能により制御部20が実行する移動履歴蓄積処理を、図3Aを参照しながら説明する。移動履歴蓄積処理が車両100のイグニッションONを検知した場合に開始される。移動履歴蓄積処理が開始されると、制御部20は、イグニッションONされた地点と日時を取得する(ステップS100)、続いて、イグニッションOFFを検知するまでの移動の過程における移動履歴を取得する(ステップS105~S110)。すなわち制御部20は、既定のタイミング(例えばノード通過のタイミング)で現在位置を取得し日時と対応付けて記憶する。イグニッションOFFを検知すると、制御部20はイグニッションOFFされた地点と日時を取得する(ステップS115)。続いて制御部20は、移動履歴を保存する(ステップS120)。すなわち制御部20は、ステップS100,S105,S115で取得した各地点の位置と日時を1つの移動履歴情報30bとして記録媒体30に記録する。続いて制御部20は、周期データ作成処理を実行する(ステップS125、図3B)。
【0029】
周期データ作成処理(図3Bを参照)は、記録媒体30に蓄積された移動履歴情報30bを対象に周期性を示す条件を満たす移動履歴が存在するか否かを判定し、当該条件を満たす移動履歴から周期データを作成する処理である。本実施形態においては、ステップS200,S205の2つの条件で判定が行われる。ステップS200では、出発地(イグニッションONの地点)と目的地(イグニッションOFFの地点)の組み合わせが同じである移動履歴が1週間に第2個数(本実施形態においては3個)以上存在し、且つ、当該移動履歴における各出発時刻(イグニッションONの時刻)が第1時間帯に含まれる場合に、制御部20は、当該移動履歴が示す周期データを登録する。ステップS205では、同じ曜日に同じ出発地から目的地に移動した移動履歴が第1個数(本実施形態にいては3個)以上存在し、且つ、当該移動履歴における各出発時刻が第1時間帯に含まれる場合に、制御部20は、当該移動履歴が示す周期データを登録する。
【0030】
(3)経路情報出力処理:
次に、目的地推定部21bの機能により制御部20が実行する経路情報出力処理を、図4Aを参照しながら説明する。経路情報出力処理は、車両100のイグニッションONを検知した場合に開始される。経路情報出力処理が開始されると、制御部20は、イグニッションONされた地点と時刻を取得する(ステップS305)。
【0031】
続いて、制御部20は、目的地が設定されたか否かを判定する(ステップS310)。ステップS310において目的地が設定されていると判定されなかった場合、制御部20は目的地推定処理を実行する(ステップS315,図4B)。ステップS315を実行後、制御部20は、目的地が推定されたか否かを判定する(ステップS320)。ステップS320において、目的地が推定されたと判定された場合、制御部20は、経路情報出力部21cの機能により、目的地までの経路を示す経路情報を駆動制御ECU48に出力する(ステップS325)。
【0032】
ステップS310において目的地が設定されていると判定された場合、制御部20は、目的地までの経路を探索し(ステップS312)、ステップS325に進む。ステップS320において、目的地が推定されたと判定されなかった場合、制御部20はステップS325を実行せずに経路情報出力処理を終了する。
【0033】
図4Bは、経路情報出力処理のステップS315で実行される目的地推定処理を示すフローチャートである。目的地推定処理が開始されると、制御部20は、今回イグニッションONされた地点および日時が周期データと合致するか否かを判定する(ステップS400)。すなわち本実施形態においては、第1の周期データと第2の周期データの少なくともいずれか一方と合致するか否かが判定される。ステップS400において当該地点および日時と合致する周期データが存在すると判定された場合、制御部20は、合致すると判定された周期データにおけるイグニッションOFF地点を目的地として推定する(ステップS405)。ステップS400において合致する周期データが存在すると判定されなかった場合、制御部20は目的地を推定せずに目的地推定処理を終了する。
【0034】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、目的地推定システムは、車両等に搭載された装置であっても良いし、可搬型の端末によって実現される装置であっても良いし、複数の装置(例えば、クライアントとサーバ)によって実現される装置であっても良い。
【0035】
さらに、目的地推定システムを構成する移動履歴蓄積部21a、目的地推定部21b、経路情報出力部21cの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していても良い。例えば、移動履歴蓄積部21aや目的地推定部21bの機能がサーバで実現されてもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0036】
移動履歴蓄積部は、移動履歴情報から予め周期データを生成して、目的地推定部は、周期データに今回のイグニッションONした地点および時刻が合致する(イグニッションON地点が一致し、イグニッションON時刻が類似する)場合に当該周期データにおけるイグニッションOFF地点を目的地として推定してもよい。周期データは新規の移動履歴が追加される毎、あるいは、1日毎や1週間毎等のタイミングで更新されてよい。また、一定以上前の移動履歴は周期データ作成の対象から除外されてもよい。
【0037】
またあるいは、移動履歴蓄積部は、移動履歴情報から周期データを生成しなくてもよい。その場合、目的地推定部は、複数の移動履歴を直接参照して周期的な移動履歴を抽出し、今回のイグニッションON地点と当該周期的な移動履歴におけるイグニッションON地点が一致し、今回のイグニッションONの時刻と当該周期的な移動履歴におけるイグニッションON時刻が類似する(例えば、互いの時間差が既定時間以内である)か否かを判定してもよい。
例えば、今回イグニッションONした時刻の前後t時間(計2t時間)以内にイグニッションONし、且つ、出発地が今回と同じであり、且つ、同じ目的地に週N日以上行った履歴がM週間以上存在する場合に、当該目的地を今回の目的地として推定する構成を採用してもよい(例えばtは1時間、Nは2日、Nは3週間を想定してよい)。
また例えば、今回イグニッションONした時刻の前後t時間(計2t時間)以内にイグニッションONし、且つ、出発地が今回と同じであり、且つ、同じ目的地に週N日以上行った履歴がN週間以上存在し、且つ、過去に今回と同じ曜日に出発したことがある場合に、当該目的地を今回の目的地として推定する構成を採用してもよい。
【0038】
経路情報出力部が出力する経路情報には、駆動制御装置が燃費向上のためにモータと内燃機関とを制御するために用いる情報が含まれていれば良い。例えば、走行予定経路における天候、積雪、降雨、降雪等の情報が経路情報に含まれていても良い。
【0039】
複数の移動履歴において、イグニッションONされた時刻が午前であってイグニッションONされた時刻が第1時間帯に含まれる場合に、複数の移動履歴が周期的であると判断されてもよい。また、複数の移動履歴において、イグニッションONされた時刻が午後であってイグニッションONされた時刻が第2時間帯に含まれる場合に、複数の移動履歴が周期的であると判断されてもよい。以上の構成において、第2時間帯の方が第1時間帯よりも大きい構成であってもよい。すなわち、午前の移動履歴よりも午後の移動履歴の方を、周期性判断の許容誤差を大きくしてもよい。運転者の生活パターンにおいて活動が朝に始まり夜に終わる場合、午後に行われる移動は午前に行われる移動よりも、様々な要因によって時間差が生じやすい。例えば、出勤時は出発時刻のばらつきが少ないが、退勤時は残業の有無等によりばらつきが生じやすい。そのため、午後の移動における周期性判断の許容誤差を午前の移動よりも大きくしてもよい。例えば第1時間帯の長さを2時間、第2時間帯の長さを3時間等としてもよい。なお、第1時間帯や第2時間帯は、複数の移動履歴におけるイグニッションON時刻の統計値に基づいて設定される時間帯であってもよいし、例えば午前8時~10時や午後17時から20時などのように予め設定した時間帯であってもよい。
【0040】
目的地推定部は、上記実施形態の他にも周期的な移動履歴に基づいて様々な方法で目的地を推定可能である。例えば、同じイグニッションON地点とイグニッションOFF地点の組み合わせが定期的に(例えば3日おき等)発生したことを示す移動履歴が存在し、このような定期的な移動を示す移動履歴が既定個数(例えば4回)以上存在する場合に、この出発地と目的地の組み合わせを周期データとして登録してもよい。そして、当該周期データにおけるイグニッションON地点と新たにイグニッションONされた地点が一致する場合に、当該周期データにおけるイグニッションOFF地点を目的地として推定してもよい。なお、当該周期データにおいてイグニッションON地点からイグニッションOFF地点までの経路が一致しない場合は、当該周期データの作成の元となった複数の移動履歴のうち今回のイグニッションON時刻に最も近いイグニッションON時刻を有する移動履歴における走行経路を走行予定経路として採用してもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、出発地と目的地の組み合わせが一致するのみならず、出発地から目的地までの走行経路も一致する移動履歴を例に用いたが、出発地から目的地までの走行経路は必ずしも完全に一致していなくてもよい。その場合、例えば、最も多く走行された走行経路や、直近の既定回数にて走行された走行経路を、目的地までの走行予定経路として採用してもよい。あるいは、推定された目的地までの走行予定経路を経路探索によって取得してもよい。
【0042】
推定した目的地は、ハイブリッド車両の駆動制御装置に出力する経路情報を作成する以外にも様々に利用可能である。例えば、目的地のジャンルや目的地周辺にある施設に応じた広告をユーザI/F部に出力する構成を採用してもよい。広告以外にも例えば店舗のクーポンを出力するようにしてもよい。また、推定した目的地までの経路探索を行い、走行予定経路の案内や到着予想時刻を案内する構成を採用してもよい。あるいは、推定した目的地までの走行予定経路の交通情報(通行止め区間、渋滞区間、事故発生区間等)を案内する構成を採用してもよい。
【0043】
目的地を推定し、目的地までの走行予定経路を取得した後、車両が走行開始すると、車両が走行予定経路を走行しているか否かを定期的に判定してもよい。そして例えば、車両が走行予定経路から外れた予め決められた時間以上継続した場合、推定した目的地を無効としその旨を駆動制御装置に通知してもよい。その結果、駆動制御装置が走行計画に従った制御をキャンセルしてもよい。
【0044】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…目的地推定システム、20…制御部、21…目的地推定プログラム、21a…移動履歴蓄積部、21b…目的地推定部、21c…経路情報出力部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…移動履歴情報、40…GNSS受信部、41…車速センサ、42…ジャイロセンサ、43…通信部、44…内燃機関、45…モータ、46…バッテリ、47…燃料タンク、48…駆動制御ECU、49…ユーザI/F部、100…車両
図1
図2
図3
図4