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  • 特開-クロロプレンラテックス接着剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150092
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】クロロプレンラテックス接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 111/02 20060101AFI20220929BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C09J111/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052526
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】露原慎也
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA141
4J040HB22
4J040HB33
4J040HC01
4J040JA03
4J040KA30
4J040KA31
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】
塗布作業時等に被着面以外に付着した付着物を容易に除去できるクロロプレンラテックス接着剤を提供する。
【解決手段】
固形分が40~60%で、トルエン溶解透視度が4cm以上のクロロプレンラテックス(a1)60~80重量部と、トルエン溶解透視度が4cm未満のクロロプレンラテックス(a2)20~40重量部と、からなるクロロプレンラテックス混合物(a)100重量部と、安息香酸系可塑剤(b)20~40重量部と、pH調整剤2~10重量部を含むクロロプレンラテックス接着剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分が40~60%で、
下記で定義されるトルエン溶解透視度が4cm以上のクロロプレンラテックス(a1)60~80重量部、
及び、下記で定義されるトルエン溶解透視度が4cm未満のクロロプレンラテックス(a2)20~40重量部と、
を混合してなるクロロプレンラテックス混合物(a)計100重量部と、
安息香酸系可塑剤(b)20~40重量部と、
pH調整剤2~10重量部、
を含むクロロプレンラテックス接着剤。

トルエン溶解透視度:クロロプレンラテックス樹脂を常温で乾燥してなる樹脂皮膜1重量部をトルエン10重量部に溶解させてなる溶解液をJIS K 0102:2016に基づいて測定した透視度(cm)
【請求項2】
pH調整剤がグリシンである請求項1のクロロプレンラテックス接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クロロプレンラテックス接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質基材である被着材の両面又は片面にスプレーガン等を使用して塗布し、塗布面を貼り合わせて使用するクロロプレンラテックス接着剤、具体的には車両用内装品、座椅子、ソファー等の家具等、寝具、枕等に使用されるフォーム材を接着させる、あるいはウレタンフォーム同士を接着させる一液型のクロロプレンラテックス接着剤が知られている(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-219859
【特許文献2】特開2017-222804
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロロプレンラテックス接着剤のスプレーガンでの塗布作業においては、スプレーガンから放出された接着剤が被着面以外に飛び散り、作業者の手や腕などに付着することが多々ある。
【0005】
付着した接着剤(以下付着物という)は乾燥前には比較的容易に除去できるが、乾燥してしまうと付着表面に固着した状態(いわゆるこびりついた状態)となり、この状態での付着物の除去は容易ではない。
【0006】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、塗布作業時等に被着面以外に付着した付着物を容易に除去できるクロロプレンラテックス接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のための請求項1の発明は、
固形分が40~60%で、
下記で定義されるトルエン溶解透視度が4cm以上のクロロプレンラテックス(a1)60~80重量部、
及び、下記で定義されるトルエン溶解透視度が4cm未満のクロロプレンラテックス(a2)20~40重量部、
を混合してなるクロロプレンラテックス混合物(a)計100重量部と、
安息香酸系可塑剤(b)20~40重量部と、
pH調整剤2~10重量部を含むクロロプレンラテックス接着剤である。

トルエン溶解透視度:クロロプレンラテックス樹脂を常温で乾燥してなる樹脂皮膜1重量部をトルエン10重量部に溶解させてなる溶解液をJIS K 0102:2016に基づいて測定した透視度(cmで表す)
【0008】
なお、以下、トルエン溶解透視度が4cm以上のクロロプレンラテックス(a1)を「高透視度ラテックス(a1)」、トルエン溶解透視度が4cm未満のクロロプレンラテックス(a2)を「低透視度ラテックス(a2)」と略称する。
【0009】
請求項2の発明は、pH調整剤がグリシンである請求項1のクロロプレンラテックス接着剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクロロプレンラテックス接着剤は、高透視度ラテックス(a1)及び低透視ラテックス(a2)を混合してなるクロロプレンラテックス混合物(a)を含むことにより、スプレーガン等を使用した塗布作業時において、被着面以外に付着した付着物を容易に除去できるとともに、被着体においては十分な接着強度を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】接着性評価に用いる基材の正面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のクロロプレンラテックス接着剤を構成するクロロプレンラテックス混合物(a)は、高透視度ラテックス(a1)及び低透視度ラテックス(a2)を混合してなるクロロプレンラテックス混合物(a)である。高透視度ラテックス(a1)及び低透視度ラテックス(a2)は、ともに固形分が40~60%のクロロプレンラテックスであれば特に限定されず、市販品を用いることができる。
【0013】
具体的には、固形分が40~60%の任意のクロロプレンラテックスを複数用意し、これらを乾燥させた乾燥物を得る。次いで、これら乾燥物のそれぞれ1重量部をトルエン10重量部にそれぞれ溶解させる(以下これをラテックス・トルエン溶解液という)。
【0014】
次いで、このラテックス・トルエン溶解液をJIS K 0102:2016「工場排水試験方法」に定める透視度計に満たし、上部から底部を透視し、標識板の二重十字が初めて明らかに識別できるまで、下口から溶解液を流出させる。標識板の二重十字が初めて明らかに識別できたときの水面の目盛り(cm)を読み取り、これを、クロロプレンラテックスのトルエン透視度とする。
【0015】
そして、このようにしてトルエン透視度を測定したクロロプレンラテックスのうち、トルエン透視度が4cm以上のものを高透視度ラテックス(a1)、4cm未満のものを低透視度ラッテクス(a2)とする。
【0016】
次いで、高透視度ラテックス(a1)60~80重量部と、低透視ラテックス(a2)20~40重量部とを合計で100重量部となるよう混合させ、クロロプレンラテックス混合物(a)100重量部とする。混合割合については、例えば、高透視度ラテックス(a1)を60重量部とする場合は低透視度ラテックス(a2)を40重量部、高透視度ラテックス(a1)を80重量部とする場合は低透視度ラテックス(a2)を20重量部混合させて、クロロプレンラテックス混合物(a)100重量部とする。
【0017】
安息香酸系可塑剤(b)としては市販品を用いることができ、例えば、ADEKA社製、商品名:アデカサイザーPN-6122等を使用することができる。
【0018】
本発明のクロロプレンラテックス接着剤は、初期接着力を高めるために、pH調整剤(c)を配合させてpHを7.0~10.0の範囲とすることが好ましい。pH調整剤(c)は、グリシン、アラニン、フェニルアラニン及びグルタミン酸等を用いることができ、これらの中でもグリシンが好適である。
【0019】
そして、クロロプレンラテックス混合物(a)100重量部に、安息香酸系可塑剤(b)20~40重量部、pH調整剤(c)2~10重量部、を配合させて本発明のクロロプレンラテックス接着剤を得る。
【実施例0020】
クロロプレンラテックスとして、東ソー社製、商品名:スカイプレンラテックスSL-390(固形分50~54%)、デンカ社製、商品名:デンカクロロプレンラテックスFB-80(固形分54~56%)、コベストロ社製、商品名:DISPERCOLL C84(固形分54.5~55.5%)をそれぞれ用意し、これらのトルエン溶解透視度を下記要領にて測定した。
【0021】
これらクロロプレンラテックスを常温で乾燥させて各乾燥物を作成し、各乾燥物1重量部に対し、トルエン10重量部の割合でトルエンに溶解させ、各ラテックス・トルエン溶解液を得た。
【0022】
各ラテックス・トルエン溶解液を、アズワン社製透視度計、商品名:ST-30に満たし、各トルエン透視度を測定した。結果は以下の通りであった。

SL-390:4.0cm
FB-80 :0.5cm
C84 :1.5cm
【0023】
上記測定結果より、SL-390は高透視度ラテックス(a1)、FB-80及びC84は低透視ラテックス(a2)となる。
【0024】
次いで、これら高透視度ラテックス(a1)及び低透視度ラテックス(a2)を表1及び表2に記載のとおりの重量割合で配合し、実施例1~10及び比較例1~9のクロロプレンラテックス混合物(a)各100重量部を調製した。
【0025】
次いで、安息香酸系可塑剤(b)として、ADEKA社製、商品名:アデカサイザーPN-6122、pH調整剤としてグリシンを用意し、表1及び表2に記載の重量割合で混合し、実施例及び比較例の各クロロプレンラテックス接着剤(以下単に接着剤という)を得た。
【0026】
これら実施例及び比較例の各接着剤の除去性及び接着性を下記にて評価した。
【0027】
<除去性>
実施例及び比較例の各接着剤を親指と人差し指で触れて、この状態で親指及び人差し指同士を擦り合わせる。擦り合わせた後、接着剤同士が集まり、指に残らなければ合格(○)、指に残り続けるか、細かい粒状となり樹脂同士が集まらない場合を不合格(×)とする。
【0028】
<接着性>
本発明の接着剤の接着性を評価するための基材1として、イノアックコーポレーション社製ウレタンフォーム、商品名:カラーフォームEMO(8×18×t2.5cm)を用意する。図1は基材1を正面から見た図である。次いで、基材1を長尺方向の中央、すなわち、図1の一点鎖線で示す折り曲げ線2に沿って折り曲げ、この折り曲げ方向の上下端に12mmのマスキングテープを貼る。20℃の環境のもと、基材に実施例及び比較例の各組成物をスプレーで70g/m塗布し、塗布後1分経過後に折り曲げる。フォーム同士が収まったままの状態であれば合格(○)、フォーム同士が収まらない場合を不合格(×)とする。
【0029】
実施例及び比較例の各接着剤の評価結果は、それぞれ表1及び表2に記載のとおりとなった。
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1記載の評価結果によれば、実施例1~10の各接着剤の除去性及び接着性は、いずれも合格であった。
【0032】
一方、表2記載の評価結果によれば、比較例1~9の各接着剤の除去性及び接着性は、少なくともいずれかが不合格であった。
【0033】
具体的には、クロロプレンラテックス混合物(a)が高透視度ラッテクス(a1)のみからなる比較例1は、接着性が不合格であった。
【0034】
クロロプレンラテックス混合物(a)が低透視度ラッテクス(a2)のみからなる比較例2及び3は、除去性が不合格であった。
【0035】
高透視度ラテックス(a1)の配合量が80重量部を超える比較例4は、接着性が不合格であった。
【0036】
高透視度ラテックス(a1)の配合量が60重量部未満の比較例5は、除去性及び接着性のいずれも不合格であった。
【0037】
安息香酸系可塑剤(b)の配合量が20重量部未満である比較例6は、除去性が不合格であった。また、同じく40重量部を超える比較例7は、接着性が不合格であった。
【0038】
pH調整剤(c)の配合量が2重量部未満の比較例8は、接着性が不合格であった。これは、pH調整剤(c)の配合量が少ないことにより、十分な接着性が発現されなかったものと推定される。
【0039】
pH調整剤(c)の配合量が10重量部を超える比較例9は、除去性及び接着性のいずれも不合格であった。
【0040】
すなわち、本発明のクロロプレンラテックス接着剤は、固形分が40~60%で、高透視度クロロプレンラテックス(a1)60~80重量部、及び、低透視度クロロプレンラテックス(a2)20~40重量部と、を混合してなるクロロプレンラテックス混合物(a)計100重量部と、安息香酸系可塑剤(b)20~40重量部と、pH調整剤2~10重量部、を含むことにより、本発明の解決しようとする課題である塗布作業時等に被着面以外に付着した付着物を容易に除去でき、かつ、必要な接着性を有するクロロプレンラテックス接着剤であることが検証された。
【符号の説明】
【0041】
1 基材
2 折り曲げ線
図1