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特開2022-150103アミノ基含有フルオレン化合物、その製造方法及びそれを用いた樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150103
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】アミノ基含有フルオレン化合物、その製造方法及びそれを用いた樹脂
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/54 20060101AFI20220929BHJP
   C07C 209/68 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20220929BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C07C211/54 CSP
C07C209/68
C08G69/26
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052549
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】石川 沙恵
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【テーマコード(参考)】
4H006
4J001
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4J001DA01
4J001DB04
4J001EB04
4J001EB06
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB15
4J001EB16
4J001EB35
4J001EB36
4J001EB37
4J001EB46
4J001EC74
4J001FB03
4J001FC03
4J001HA03
4J001JA03
4J001JA04
4J001JA05
4J001JA17
4J001JA18
4J001JA20
4J001JB41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い屈折率及び高い耐熱性を示す新規なアミノ基含有フルオレン化合物及びその製造方法、並びに樹脂を提供する。
【解決手段】アミノ基含有フルオレン化合物は、下記式(I)で表される。

(式中、Z1a及びZ1bはアレーン環を示し、Ar1a及びAr1bはアレーン環を示し、R1a及びR1bは置換基を示し、k1及びk2は0以上の整数を示し、m1及びm2は0~4の整数を示し、R2a及びR2bは置換基を示し、n1及びn2は0~4の整数を示し、m1+n1及びm2+n2はそれぞれ4以下であり、m1及びm2のうち少なくとも一方は1以上である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、Z1a及びZ1bは独立してアレーン環を示し、Ar1a及びAr1bは独立してアレーン環を示し、R1a及びR1bは独立して置換基を示し、k1及びk2は独立して0以上の整数を示し、m1及びm2は独立して0~4の整数を示し、R2a及びR2bは独立して置換基を示し、n1及びn2は独立して0~4の整数を示し、m1+n1及びm2+n2はそれぞれ4以下であり、m1及びm2のうち少なくとも一方は1以上である)
で表されるアミノ基含有フルオレン化合物。
【請求項2】
前記式(I)において、Ar1a及びAr1bが単環式アレーン環又は縮合多環式アレーン環であり、m1及びm2が1~2の整数である請求項1記載のアミノ基含有フルオレン化合物。
【請求項3】
前記式(I)において、Z1a及びZ1bがベンゼン環又はナフタレン環であり、Ar1a及びAr1bがナフタレン環であり、m1及びm2が1である請求項1又は2記載のアミノ基含有フルオレン化合物。
【請求項4】
下記(a)又は(b)の工程を含む請求項1~3のいずれかに記載のアミノ基含有フルオレン化合物を製造する方法。
(a)下記式(II)で表わされるジアミン又はその塩と、下記式(IIIa)及び(IIIb)で表わされる化合物とをカップリング反応させる工程
【化2】
(式中、X1a及びX1bはそれぞれ独立してカップリング反応により炭素-炭素結合(又は直接結合)を形成可能な反応性基を示し;X2aは前記反応性基X1aと、X2bは前記反応性基X1bとともに、それぞれカップリング反応により炭素-炭素結合を形成可能な反応性基を示し;Z1a、Z1b、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ請求項1記載の式(I)と同じ)。
(b)下記式(IV)で表わされる化合物と、下記式(IIIa)及び(IIIb)で表わされる化合物とをカップリング反応させる工程、
【化3】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bは、前記式(II)、(IIIa)及び(IIIb)と同じであり、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ請求項1記載の式(I)と同じ)
及び前記工程で得られた下記式(V)で表わされる化合物と、下記式(VIa)及び(VIb)又はこれらの塩で表わされる化合物とを反応させる工程。
【化4】
(式中、Z1a、Z1b、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ請求項1記載の式(I)と同じ)
【請求項5】
少なくとも請求項1記載のアミノ基含有フルオレン化合物と、ジカルボン酸又はテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる樹脂。
【請求項6】
請求項5記載の樹脂を含む成形体。
【請求項7】
光学部材である請求項6記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率及び耐熱性に優れ、種々の樹脂の重合成分として有用なアミノ基含有フルオレン化合物及びその製造方法、並びに前記化合物を重合成分とする樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基を有する化合物を重合成分とする樹脂として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。ポリアミド樹脂は、強靭で、優れた潤滑性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性を示すエンジニアリングプラスチックであり、繊維、自動車部品、電気・電子部品などに用いられている。また、ポリイミド樹脂は、耐熱性、機械的特性(引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さなど)、耐摩耗性、電気絶縁性などに優れ、自動車や航空機の部品、コンピュータ関連機器、コーティング剤、接着剤などの用途として使用されている。これらの樹脂の重合成分として、屈折率などの光学特性及び耐熱性に優れる成分を用いると、ポリアミド樹脂やポリイミド樹脂本来の優れた耐熱性とともに、光学特性にも優れた樹脂が生成することも見込まれる。その結果、光学分野などにも適した樹脂となり、その用途の幅がより一層広がることが期待される。
【0003】
特許文献1には、ポリイミド樹脂のモノマーとして使用可能なカルド構造を有するジアミンが開示されており、その一例として、下記式で表わされるように、フルオレン骨格の2,7-位にそれぞれ2-ナフチル基を有し、9,9-位にそれぞれo-トルイジンを有する化合物(以下、単に、2,7-ジ(2-ナフチル)ビス(o-トルイジン)フルオレン、DNBTFと称する)が記載されている。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/058396号(第11頁、C12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、先述の通り、カルド構造を有するジアミンとしてDNBTFが記載されており、得られたポリイミド樹脂は、低複屈折を示している。
【0007】
しかし、光学部材の小型化、薄膜化、高性能化などが求められる中、特許文献1に開示のジアミンを用いて得られたポリイミド樹脂であっても、屈折率や耐熱性が不十分であり、用途や使用する環境によっては、使用が制限される場合がある。
【0008】
そのため、屈折率や耐熱性に優れる汎用性の高い樹脂又はその重合成分が求められている。
【0009】
従って、本発明の目的は、高い屈折率及び高い耐熱性を示す新規なアミノ基含有フルオレン化合物及びその製造方法、並びにこの化合物を重合成分とする樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フルオレン骨格の1~4位、5~8位、および9位にアレーン環が結合し、かつ、9位に置換する2つのアレーン環がそれぞれアミノ基を含有する構造のジアミン化合物は、優れた屈折率及び耐熱性を示し、かつ、かかるジアミン化合物を重合成分として用いることで、優れた屈折率及び耐熱性を示す樹脂を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のアミノ基含有フルオレン化合物は、下記式(I)で表される。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Z1a及びZ1bは独立してアレーン環を示し、Ar1a及びAr1bは独立してアレーン環を示し、R1a及びR1bは独立して置換基を示し、k1及びk2は独立して0以上の整数を示し、m1及びm2は独立して0~4の整数を示し、R2a及びR2bは独立して置換基を示し、n1及びn2は独立して0~4の整数を示し、m1+n1及びm2+n2はそれぞれ4以下であり、m1及びm2のうち少なくとも一方は1以上である)。
【0014】
前記式(I)において、Ar1a及びAr1bは単環式アレーン環又は縮合多環式アレーン環であり、m1及びm2は1~2の整数あってもよい。また、前記式(I)において、Z1a及びZ1bはベンゼン環又はナフタレン環であり、Ar1a及びAr1bはナフタレン環であり、m1及びm2は1であってもよい。
【0015】
本発明は、下記(a)又は(b)の工程を含む前記アミノ基含有フルオレン化合物を製造する方法を包含する。
【0016】
(a)下記式(II)で表わされるジアミン又はその塩と、下記式(IIIa)及び(IIIb)で表わされる化合物とをカップリング反応させる工程
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、X1a及びX1bはそれぞれ独立してカップリング反応により炭素-炭素結合(又は直接結合)を形成可能な反応性基を示し;X2aは前記反応性基X1aと、X2bは前記反応性基X1bとともに、それぞれカップリング反応により炭素-炭素結合を形成可能な反応性基を示し;Z1a、Z1b、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ前記式(I)と同じ)。
【0019】
(b)下記式(IV)で表わされる化合物と、下記式(IIIa)及び(IIIb)で表わされる化合物とをカップリング反応させる工程、
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bは、前記式(II)、(IIIa)及び(IIIb)と同じであり、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ前記式(I)と同じ)
及び前記工程で得られた下記式(V)で表わされる化合物と、下記式(VIa)及び(VIb)又はこれらの塩で表わされる化合物とを反応させる工程
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、Z1a、Z1b、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ前記式(I)と同じ)。
【0024】
本発明は、少なくとも前記アミノ基含有フルオレン化合物と、ジカルボン酸又はテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる樹脂も包含する。
【0025】
また、本発明は、前記樹脂を含む成形体も包含する。前記成形体は、光学部材であってもよい。
【0026】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【0027】
また、「ジアミン単位」は、ジアミン成分由来の構成単位、すなわち、対応するジアミンの2つのアミノ基から、水素原子を除いた単位(又は第二級アミノ基(イミノ基)/第三級アミノ基)を意味し、「ジアミン成分」(ジアミン成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジアミン単位」と同義に用いる場合がある。
【発明の効果】
【0028】
本発明のアミノ基含有フルオレン化合物は、高い屈折率及び高い耐熱性を有しているため、重合成分として用いると、高い屈折率及び高い耐熱性を維持した樹脂を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[アミノ基含有フルオレン化合物]
本発明のアミノ基含有フルオレン化合物は、下記式(I)で表される。
【0030】
【化6】
【0031】
(式中、Z1a及びZ1bは独立してアレーン環を示し、Ar1a及びAr1bは独立してアレーン環を示し、R1a及びR1bは独立して置換基を示し、k1及びk2は独立して0以上の整数を示し、m1及びm2は独立して0~4の整数を示し、R2a及びR2bは独立して置換基を示し、n1及びn2は独立して0~4の整数を示し、m1+n1及びm2+n2はそれぞれ4以下であり、m1及びm2のうち少なくとも一方は1以上である)
【0032】
前記式(I)において、Z1a及びZ1bで表わされるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0033】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。縮合四環式アレーン環としては、例えば、ピレン環、ナフタセン環などの縮合四環式C16-18アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
【0034】
環集合アレーン環としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
【0035】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
【0036】
好ましい環Z1a及びZ1bとしては、C6-14アレーン環が挙げられ、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特にベンゼン環である。
【0037】
環Z1a及びZ1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
【0038】
環Z1a及びZ1bに対するアミノ基の結合位置は、環Z1a及びZ1bの種類に応じて適宜選択できる。例えば、環Z1a及びZ1bがベンゼン環である場合、アミノ基は環Z1a及びZ1b(ベンゼン環)の2位、3位、4位のいずれであってもよいが、環Z1a及びZ1b(ベンゼン環)の3位、4位(特に、4位)であるのが好ましい。例えば、環Z1a及びZ1bがナフタレン環である場合も、アミノ基は環Z1a及びZ1b(ナフタレン環)のどの位置に結合してもよい。環Z1a及びZ1b(ナフタレン環)は、後述の通り、フルオレン骨格に対してナフタレンの2位で結合する場合が多く、アミノ基は環Z1a及びZ1b(ナフタレン環)の1位、3位、4位、5位、6位、7位、8位のいずれであってもよいが、環Z1a及びZ1b(ナフタレン環)の5位、6位、7位、8位(特に、6位)であるのが好ましい。
【0039】
Ar1a及びAr1bで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、前記式(I)の環Z1a及びZ1bとして例示されたアレーン環が挙げられる。好ましい環Ar1a及びAr1bとしては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)が挙げられ、より好ましくは、縮合多環式C10-14アレーン環、特に、ナフタレン環である。
【0040】
環Ar1a及びAr1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。また、m1又はm2が2以上である場合、2以上の環Ar1a又はAr1bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0041】
また、環Ar1a及びAr1bは、それぞれフルオレン骨格の1~4位、5~8位のいずれの位置に置換していてもよいが、通常、2位、3位及び/又は7位であることが多い。m1及びm2が1である場合、好ましい置換位置(又は結合位置)としては、1,8-位、2,7-位、3,6-位、4,5-位などの前記式(I)において紙面上で左右対称な位置であり、特に、2,7-位が好ましい。
【0042】
なお、フルオレン骨格に対する環Ar1a、Ar1bの結合位置は、環Ar1a、Ar1bがナフタレン環である場合、ナフタレン環の1位又は2位のいずれであってもよい。
【0043】
1a及びR1bで表される置換基(非反応性置換基又は非重合性置換基)としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基(又は基[-R])、基[-OR](式中、Rは前記炭化水素基を示す)、基[-SR](式中、Rは前記炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基、モノ又はジ置換アミノ基などが挙げられる。
【0044】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0045】
前記Rで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0046】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。
【0047】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
【0048】
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(又はトリル基)、ジメチルフェニル基(又はキシリル基)などのモノ乃至トリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
【0049】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
【0050】
前記基[-OR]としては、例えば、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられ、具体的には、前記炭化水素基Rの例示に対応する基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基が挙げられる。
【0051】
前記基[-SR]としては、例えば、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基などが挙げられ、具体的には、前記炭化水素基Rの例示に対応する基が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基が挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基(フェニルチオ基)などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基が挙げられる。
【0052】
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
【0053】
モノ又はジ置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
【0054】
これらの基R1a及びR1bのうち、代表的には、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。k1又はk2が1以上である場合、好ましい基R1a及びR1bとしては、アルキル基、アルコキシ基であり、具体的には、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられ、なかでも、アルキル基、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基が好ましい。なお、基R1a又はR1bがアリール基であるとき、基R1a又はR1bは、それぞれ環Ar1a又はAr1bとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。
【0055】
置換数k1及びk2は、環Ar1a及びAr1bの種類に応じて選択してもよく、例えば、0~7程度の整数から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~6の整数、0~5の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1であり、特に0である。
【0056】
基R1a及びR1bの置換数k1及びk2は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。なお、置換数k1又はk2が2以上である場合、同一の環Ar1a又はAr1bに置換する2以上の基R1a又はR1bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0057】
また、異なる環Ar1a及びAr1bに置換する基R1a及びR1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。基R1a及びR1bの置換位置は特に制限されず、環Ar1a及びAr1bの種類に応じて選択してもよい。
【0058】
基[-Ar1a-(R1ak1]及び基[-Ar1b-(R1bk2](以下、これらをAr含有基ともいう)の置換数m1及びm2は、それぞれ、例えば1~3程度の整数であり、好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。m1及びm2は互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。m1及びm2のうち、少なくとも一方は1以上の整数であり、好ましくは双方が1以上の整数であり、さらに好ましくは双方が1である。
【0059】
なお、m1又はm2が2以上である場合、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上のAr含有基の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、異なるベンゼン環に置換するAr含有基の種類、すなわち、基[-Ar1a-(R1ak1]と基[-Ar1b-(R1bk2]とは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。
【0060】
2a及びR2bで表される置換基(非反応性置換基又は非重合性置換基)は、前記Ar含有基以外の置換基であればよく、代表的には、アルキル基などの炭化水素基(ただし、アリール基は除く);フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;シアノ基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。置換数n1又はn2が1以上である場合、好ましいR2a及びR2bとしては、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。
【0061】
2a及びR2bの置換数n1及びn2としては、それぞれ、例えば0~3程度の整数であり、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1であり、特に0である。n1及びn2は互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。なお、n1又はn2が2以上である場合、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する複数のR2a又はR2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、異なるベンゼン環に置換するR2a及びR2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。また、R2a及びR2bの置換位置は特に制限されず、Ar含有基の置換位置以外の位置に置換していればよい。
【0062】
m1+n1及びm2+n2は、それぞれ、例えば0~4の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。m1+n1及びm2+n2は互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
【0063】
前記式(I)で表されるアミノ基含有化合物(又はジアミン)として代表的には、m1及びm2が1であるジアミン、すなわち、9,9-ビス(アミノアアリール)-ジアリールフルオレン類が挙げられ、より具体的には、9,9-ビス(アミノアリール)-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(アミノアリール)-ジナフチルフルオレンなどが挙げられる。
【0064】
9,9-ビス(アミノアリール)-ジフェニルフルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(3-アミノフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-アミノナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレンなどの9,9-ビス(アミノC6-10アリール)-ジフェニルフルオレンなどが挙げられる。
【0065】
9,9-ビス(アミノアリール)-ジナフチルフルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-1,8-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-3,6-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-4,5-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(3-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノナフチル)-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(アミノC6-10アリール)-ジナフチルフルオレンなどが挙げられる。
【0066】
これらの前記式(I)で表されるジアミンのうち、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレンなどの9,9-ビス(アミノC6-10アリール)-2,7-ジフェニルフルオレン;9,9-ビス(アミノC6-10アリール)-2,7-ジナフチルフルオレンが好ましく、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(アミノC6-10アリール)-2,7-ジナフチルフルオレンがさらに好ましく、なかでも、高屈折率と高耐熱性とを両立する樹脂を調製できる観点から、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(アミノC6-10アリール)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンが特に好ましい。
【0067】
前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物は、非晶質(又はアモルファス)であってもよいが、結晶であることが多い。
【0068】
前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物は、高い屈折率及び高い耐熱性を有している。
【0069】
前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば1.7~2程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.7~1.95、1.71~1.9、1.72~1.86、1.73~1.84、1.74~1.8、1.75~1.78である。
【0070】
前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物の融点は、例えば100~350℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、130~300℃、150~295℃、170~290℃、190~285℃、200~280℃、205~275℃、210~270℃である。
【0071】
前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物の400℃での重量減少率は、0~50%程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、2~50%、3~45%、4~40%、5~35%、7~30%、10~25%である。
【0072】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物の屈折率、融点及び400℃での重量減少率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0073】
[アミノ基含有フルオレン化合物の製造方法]
本発明のアミノ基含有フルオレン化合物の製造方法は、特に制限されず、慣用の方法、例えば、フルオレン骨格を有する化合物と、前記式(I)において、環Ar1a及びAr1bに対応するアレーン環骨格を有する化合物とをカップリング反応させて、前記フルオレン骨格の2~8位から選択される少なくとも1つの置換位置に、前記アレーン環骨格を有する化合物に対応するアリール基を導入する工程を少なくとも含む方法などで製造してもよい。より具体的には、下記反応式に従って、下記式(II)で表されるジアミン又はその塩と、下記式(IIIa)及び(IIIb)で表される化合物とをカップリング反応(又はクロスカップリング反応)させることで製造してもよい(以下、第1の製造方法ともいう)。
【0074】
【化7】
【0075】
(式中、X1a及びX1bはそれぞれ独立してカップリング反応により炭素-炭素結合(又は直接結合)を形成可能な反応性基を示し;X2aは前記反応性基X1aと、X2bは前記反応性基X1bとともに、それぞれカップリング反応により炭素-炭素結合を形成可能な反応性基を示し;Z1a、Z1b、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ前記式(I)と好ましい態様を含めて同じである)。
【0076】
カップリング反応としては、特に制限されず、慣用のカップリング反応、例えば、鈴木-宮浦カップリング反応、右田-小杉-スティレ(Stille)カップリング反応、根岸カップリング反応、檜山カップリング反応などのパラジウム触媒(又はパラジウム(0)触媒)によるカップリング反応、熊田-玉尾-コリュー(Corriu)カップリング反応などのニッケル触媒(又はニッケル(0)触媒)によるカップリング反応などが挙げられる。これらのカップリング反応のうち、鈴木-宮浦カップリング反応がよく利用される。
【0077】
反応性基X1a及びX1b並びにX2a及びX2bは、前記カップリング反応の種類に応じて適宜選択できる。鈴木-宮浦カップリング反応により合成する場合、一方の反応性基、例えば、基X1a及びX1bとしては、ハロゲン原子又はフッ化アルカンスルホニルオキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子などが挙げられる。フッ化アルカンスルホニルオキシ基としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(又は基[-OTf])などのフッ化C1-4アルカンスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0078】
これらの一方の反応性基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの一方の反応性基のうち、ハロゲン原子が好ましく、ヨウ素原子、臭素原子がさらに好ましく、通常、臭素原子がよく利用される。
【0079】
鈴木-宮浦カップリング反応において、前記一方の反応性基とカップリング可能な他方の反応性基、例えば、基X2a及びX2bとしては、例えば、ボロン酸基(ジヒドロキシボリル基又は基[-B(OH)])、ボロン酸エステル基などが挙げられる。ボロン酸エステル基としては、例えば、ジメトキシボリル基、ジイソプロポキシボリル基、ジブトキシボリル基などのジアルコキシボリル基;ピナコラートボリル基(又は基[-Bpin])、1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基、5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基などの環状ボロン酸エステル基などが挙げられる。
【0080】
これらの他方の反応性基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。他方の反応性基のうち、通常、基[-B(OH)]などがよく利用される。
【0081】
なお、基X1a及びX1bと、基X2a及びX2bとは、それぞれ互いにカップリング反応可能な一対の反応性基であればいずれの反応性基であってもよく、基X1a及びX1bがボロン酸基などの前記他方の反応性基であり、基X2a及びX2bがハロゲン原子などの前記一方の反応性基であってもよいが、通常、基X1a及びX1bがハロゲン原子などの前記一方の反応性基であり、基Xがボロン酸基などの前記他方の反応性基であることが多い。
【0082】
前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物としては、前記式(I)で表されるジアミンの好ましい態様に対応する化合物、例えば、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジブロモフルオレン(又は2,7-ジブロモビスアニリンフルオレン)、9,9-ビス(4-ナフチル)-2,7-ジブロモフルオレンなどの9,9-ビス(アミノC6-10アルコキシアリール)-ジハロフルオレンなどが挙げられる。また、塩としては、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩などの無機酸塩;カルボン酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
【0083】
前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物は、例えば、Macromolecules, 2005年, Vol.38, p.745-751に記載の方法に準じて調製してもよく、具体的には、2,7-ジブロモフルオレノンなどの9位にケトン基が導入された9-フルオレノン類と、アニリン塩酸塩などのアリールアミンの無機酸塩とを反応させる方法などにより調製してもよい。
【0084】
前記式(IIIa)及び(IIIb)で表される化合物としては、前記式(I)で表されるジアミンの好ましい態様に対応する化合物、例えば、フェニルボロン酸、1-ナフチルボロン酸、2-ナフチルボロン酸などが挙げられ、2-ナフチルボロン酸が好ましい。前記式(IIIa)及び(IIIb)で表される化合物は、通常、同一の化合物であることが多い。前記式(IIIa)及び(IIIb)で表される化合物は、市販品などを利用できる。
【0085】
前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物と、前記式(IIIa)及び(IIIb)で表される化合物の合計量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/2~1/10程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/2.2~1/8、1/2.5~1/5、1/2.7~1/3.3であってもよいが、より好ましい範囲としては、以下段階的に、1/2~1/3、1/2~1/2.5、1/2.05~1/2.3である。
【0086】
鈴木-宮浦カップリング反応により合成する場合、通常、パラジウム触媒の存在下で反応させる。パラジウム触媒としては、慣用のカップリング触媒、例えば、パラジウム(0)触媒、パラジウム(II)触媒などが挙げられる。
【0087】
パラジウム(0)触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[又はPd(PPh]、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)[又はPd(P(t-Bu)]などのパラジウム(0)-ホスフィン錯体などが挙げられる。
【0088】
パラジウム(II)触媒としては、例えば、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド[又はPdCl(dppe)]、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)ジクロリド[又はPdCl(dppp)]、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド[又はPdCl(dppf)]、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[又はPdCl(PPh]、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[又はPdCl(P(o-tolyl)]などのパラジウム(II)-ホスフィン錯体などが挙げられる。なお、パラジウム(II)触媒を用いる場合、例えば、ホスフィン、アミン、有機金属試薬などの反応系内の還元性化合物により、0価の錯体に還元されて反応が開始する。
【0089】
なお、前記パラジウム触媒は、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体[又はPd(dba)・CHCl]などの触媒前駆体と、ホスフィン類、カルベン類などの配位子とを添加して反応系内で調製してもよい。
【0090】
これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの触媒のうち、通常、Pd(PPhなどのパラジウム(0)-ホスフィン錯体がよく利用される。触媒の割合は、前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物1モルに対して、金属換算で、例えば、0.01~0.1モル程度であってもよく、好ましくは0.03~0.07モルであってもよいが、通常、0.0001~0.001モル程度の少量であるのが好ましく、さらに好ましくは0.0003~0.0007モル、特に好ましくは0.0004~0.0006モルである。
【0091】
鈴木-宮浦カップリング反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、金属炭酸塩又は炭酸水素塩、金属水酸化物、金属フッ化物、金属リン酸塩、金属有機酸塩、金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0092】
金属炭酸塩又は炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、炭酸タリウム(I)などが挙げられる。
【0093】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、水酸化タリウム(I)などが挙げられる。
【0094】
金属フッ化物としては、例えば、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属フッ化物などが挙げられる。
【0095】
金属リン酸塩としては、例えば、リン酸三カリウムなどのアルカリ金属リン酸塩などが挙げられる。
【0096】
金属有機酸塩としては、例えば、酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩などが挙げられる。
【0097】
金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0098】
これらの塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。通常、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩などがよく利用される。塩基の割合は、前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物1モルに対して、例えば、0.1~50モル程度であってもよく、好ましくは1~25モル、さらに好ましくは1.5~6モル、特に2~3モルである。
【0099】
カップリング反応は、相間移動触媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。これらの相間移動触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの相間移動触媒のうち、通常、TBABなどがよく利用される。
【0100】
カップリング反応は、反応に不活性な溶媒の非存在下又は存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;環状エーテル、鎖状エーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類など炭化水素類などが挙げられる。
【0101】
環状エーテルとしては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、グリコールエーテル類などが挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、例えば、メチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメトキシエタンなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0102】
脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ドデカンなどが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0103】
これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、水及びジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類の混合溶媒、水及び芳香族炭化水素類の混合溶媒などがよく利用され、水とトルエンとの混合溶媒が好ましい。
【0104】
カップリング反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、50~200℃、好ましくは60~100℃であり、さらに好ましくは75~95℃、特に80~90℃である。反応時間は特に制限されず、例えば、1~10時間程度であってもよい。
【0105】
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、再結晶、再沈殿、クロマトグラフィー、吸着これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0106】
また、前記式(I)で表されるアミノ基含有化合物は、下記反応式で示す第2の製造方法により前記式(I)で表される化合物を製造してもよい。
【0107】
【化8】
【0108】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bは、前記式(II)、(IIIa)及び(IIIb)と好ましい態様を含めて同じであり、Z1a、Z1b、Ar1a、Ar1b、R1a、R1b、k1、k2、m1、m2、R2a、R2b、n1、n2、m1+n1及びm2+n2は、それぞれ前記式(I)と好ましい態様を含めて同じである)。
【0109】
第2の製造方法では、前記第1の製造方法において、前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物に代えて、前記式(IV)で表される9-フルオレノン類を用いて、前記式(IIIa)及び(IIIb)で表される化合物とをカップリング反応させ、得られた式(V)で表される化合物を、前述のMacromolecules, 2005年, Vol.38, p.745-751に記載の方法における9位にケトン基が導入された9-フルオレノン類として用いて、前記式(VIa)及び(VIb)で表される化合物又はこれらの塩と反応させて、前記式(I)で表される化合物を製造する。すなわち、第2の製造方法では、フルオレン骨格の9位に置換するZ1a又はZ1b含有基と、前記Ar含有基との導入順序が第1の製造方法と異なる。
【0110】
なお、前記式(VIa)及び(VIb)で表される化合物は、アリールアミン化合物に限定されず、前記式(II)で表されるアミノ基含有化合物の塩として例示された塩の形態(例えば、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩など)であってもよい。
【0111】
前記式(IV)で表される9-フルオレノン類としては、カップリング可能な反応性基を有する9-フルオレノン類、例えば、2,7-ジブロモフルオレンなどのジハロフルオレンなどが挙げられる。前記式(IV)で表される化合物は、市販品を利用してもよい。
【0112】
[ジアミン単位(A)を有する樹脂]
本発明の樹脂は、少なくとも前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物を含むジアミン成分(A)を重合成分として用いて形成すればよい。前記樹脂は、少なくとも前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物と、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物などのアミノ基と反応可能な置換基を有する他の重合成分(共重合成分)とを反応させて形成してもよい。代表的なジアミン単位(A)を有する樹脂としては、少なくともジカルボン酸及び/又はテトラカルボン酸二無水物を重合成分とするポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。
【0113】
本発明の樹脂は、少なくとも前記式(I)で表されるアミノ基含有フルオレン化合物に対応するジアミン単位(A)を含むため、屈折率及び耐熱性を大きく向上できる。
【0114】
[樹脂の製造方法]
樹脂の製造方法は、前記式(I)で表わされるアミノ基含有フルオレン化合物を含むジアミン成分(A)を重合成分として用いること以外は特に制限されず、樹脂の種類又は他の重合成分(共重合成分)などに応じて、慣用の方法が利用できる。前記樹脂は、例えば、前記式(I)で表わされるアミノ基含有フルオレン化合物(ジアミン成分(A))とカルボン酸成分(B)(遊離のカルボン酸に限らず、そのアルキルエステル、酸ハライド、無水物などの誘導体も含む)と反応させて製造してもよい。
【0115】
具体的には、例えば、ポリアミド樹脂などのポリアミド系樹脂である場合、ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B1)とを反応させて製造すればよく、ポリイミド樹脂などのポリイミド系樹脂である場合、ジアミン成分(A)と、テトラカルボン酸二無水物(B2)とを反応させて製造すればよく、慣用の方法、具体的には、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製できる。
【0116】
前記カルボン酸成分(B)としては、通常、2以上(例えば、2~5程度)のカルボキシル基を有する多価カルボン酸成分が使用され、ジカルボン酸成分であることが多い。
【0117】
ジカルボン酸成分(B1)には、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分が含まれる。
【0118】
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アルカンジカルボン酸、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2-12アルカン-ジカルボン酸など;不飽和脂肪族ジカルボン酸、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0119】
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸など;シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、ノルボルネンジカルボン酸などのビ又はトリシクロアルケンジカルボン酸;及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0120】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸、多環式芳香族ジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0121】
単環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸;アルキルベンゼンジカルボン酸、具体的には、4-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
【0122】
多環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸、具体的には、2,3-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、2,7-フルオレンジカルボン酸、9,9-ビス(カルボキシアルキル)フルオレン、具体的には、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-4アルキル)フルオレンなど多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸など;ビアリールジカルボン酸、具体的には、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ジカルボキシ-1,1’-ビナフチルなどのビC6-10アリール-ジカルボン酸など;ビス(カルボキシアルコキシ)ビC6-10アリール、具体的には、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルなどのビス(カルボキシC1-4アルコキシ)ビC6-10アリールなど;ビス[(カルボキシアルコキシ)-C6-10アリール]アルカン、具体的には、ビス[2-(カルボキシメトキシ)-1-ナフチル]メタンなどのビス[(カルボキシC1-4アルコキシ)-C6-10アリール)C1-6アルカンなど;ジアリールアルカンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸など;ジアリールケトンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸など;ジアリールエーテルジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)エーテル-ジカルボン酸など;ジアリールスルホンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルホン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0123】
ポリイミド系樹脂を形成するテトラカルボン酸二無水物(B2)には、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環族テトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0124】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、アレーンテトラカルボン酸、具体的には、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸などのC6-20アレーン-テトラカルボン酸;ジアリールテトラカルボン酸、具体的には、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸などのビフェニルテトラカルボン酸類などのジC6-10アリールテトラカルボン酸など;ビス(ジカルボキシアリール)アルカン、具体的には、3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンなどのビス(ジカルボキシC6-10アリール)C1-10アルカンなど;ビス(ジカルボキシアリール)エーテル、具体的には、4,4’-オキシジフタル酸などのビス(ジカルボキシC6-10アリール)エーテルなど;ビス(ジカルボキシアリール)ケトン、具体的には、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸などのビス(ジカルボキシC6-10アリール)ケトンなど;ビス(ジカルボキシアリール)スルホン、具体的には、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などのビス(ジカルボキシC6-10アリール)スルホンなど;などの芳香族テトラカルボン酸の二無水物が挙げられる。脂環族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、前記芳香族テトラカルボン酸の二無水物の水添物などが挙げられる。
【0125】
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが好ましい。
【0126】
ジアミン成分(A)とカルボン酸成分(B)との使用割合(又は仕込み割合)は、通常、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9であるが、必ずしもこの範囲である必要はない。
【0127】
(溶媒)
ジアミン成分(A)とカルボン酸成分(B)との反応は溶媒存在下で行ってもよい。溶媒としては、ジアミン成分とカルボン酸成分との反応を阻害しない限り、特に限定されず、炭化水素類、具体的には、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ハロゲン系溶媒、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素;エーテル類、具体的には、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類;ケトン類、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど;セロソルブ類、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど;カルビトール類、具体的には、カルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなど);グリコールエーテルエステル類、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(メチルセロソルブアセテート)、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのモノ又はジC2-4アルキレングリコールエーテルエステルなど;アミド類、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;芳香族3級アミン類、具体的にはピコリン、ピリジンなど;含硫黄系溶媒、具体的にはジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。
【0128】
これらの溶媒のうち、ケトン類、セロソルブ類、カルビトール類、グリコールエーテルエステル類、アミド類などが汎用され、分散性又は溶解性に優れ、かつ比較的高い沸点を有する点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエーテルエステル類、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが好ましい。
【0129】
溶媒の使用量は、例えば、ジアミン成分(A)100質量部に対して、例えば、10~1000質量部、好ましくは50~500質量部、さらに好ましくは100~300質量部程度である。
【0130】
(触媒)
触媒は、必ずしも必要ではないが、酸触媒、塩基性触媒のいずれを用いてもよい。酸触媒としては、無機酸、有機酸のいずれであってもよく、無機酸としては、硫酸、塩化水素、塩酸、リン酸などが挙げられ、有機酸としては、スルホン酸、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。塩基性触媒としては、トリエチルアミンなどの第3級アミン類、ピリジン、モルホリンなどの複素環式第3級アミンなどの有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルコキシドなどの無機塩基などが挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。
【0131】
触媒の使用量は、ジアミン成分(A)100重量部に対して、例えば、0.001~10重量部、好ましくは0.01~5重量部、さらに好ましくは0.05~1重量部(特に0.1~0.5重量部)程度である。
【0132】
ジアミン成分(A)とカルボン酸成分(B)との反応温度は、重合方法に応じて適宜選択されるが、例えば、10~350℃、好ましくは50~250℃、さらに好ましくは80~200℃程度であってもよい。例えば、ポリアミド酸を経由してポリイミドを合成する場合、例えば10~50℃、好ましくは15~25℃でポリアミド酸を調製してもよく、150~350℃、好ましくは250~300℃程度でポリイミド化してもよい。また、ジアミン成分(A)とカルボン酸成分(B)との反応時間は、例えば、0.5~30時間、好ましくは1~20時間、さらに好ましくは3~10時間程度であってもよい。
【0133】
なお、反応終了後、生成した樹脂は、蒸留、濃縮、抽出、濾過などの慣用の分離手段や、これらの手段を組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【0134】
[成形体]
本発明の成形体は、少なくとも前記樹脂を含み、高屈折率及び高い耐熱性を有しているため、光学フィルム(又は光学シート)、光学レンズなどの光学部材として利用できる。また、本発明の成形体は、様々な用途、例えば、塗料、インキ、電子機器や液晶部材などの保護膜などのコーティング剤又はコーティング膜;接着剤、粘着剤;樹脂充填剤;帯電防止剤、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、フォトクロミック材料、ホログラム記録材料、帯電トレイ、導電シート、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、カラーフィルタ、有機EL素子、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池などの電気・電子材料又は電気・電子部品(電気・電子機器);自動車用材料又は部品、航空・宇宙関連材料又は部品などの機械材料又は機械部品などとしても利用できる。
【0135】
このような成形体は、慣用の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤又は補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0136】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0137】
また、成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状(又はファイバー状)、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹又は凸レンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
【0138】
特に、本発明の樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、光学部材を形成するのに有用である。
【実施例0139】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価項目及び原料の詳細について示す。
【0140】
[評価方法]
(HPLC)
HPLC(高性能又は高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LC-2010A HT」、カラムとして東ソー(株)製「ODS-80TM」を用いて、試料を、アセトニトリルに溶解し測定し、HPLC純度[面積%]を算出した。
【0141】
(400℃での重量減少率)
示差熱重量分析装置(日立ハイテクサイエンス(株)製、「TG/DTA6200」)を用いて、下記の条件で、50℃及び400℃での重量を測定した。
【0142】
測定温度範囲:30~520℃
昇温温度:10℃/分
ガス雰囲気:窒素雰囲気下。
【0143】
400℃での重量減少率は、50℃及び400℃での重量の測定値から下記式を用いて算出した。
【0144】
400℃での重量減少率(%)=[(50℃での重量-400℃での重量)/50℃での重量]×100
【0145】
(融点)
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC6200」)を用い、窒素雰囲気下、測定温度30~300℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した。得られたDSCチャート(DSC曲線)から、融解による吸熱ピークのピークトップの温度を融点として求めた。
【0146】
(屈折率nD)
実施例で得られた9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン及び比較例1~5の化合物の屈折率は、屈折率計((株)アタゴ製、DR-M2(循環式恒温水槽60-C3)を用いて、温度25℃、波長589nm(D線)で測定した。なお、屈折率の算出は、試料をシクロヘキサノンに溶解して、濃度3質量%、5質量%の溶液を調製し、得られた溶液の屈折率を測定することで作成した検量線(近似直線)において、濃度を100質量%に外挿して求めた。
【0147】
[樹脂原料]
DNBAF:9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、後述する実施例に従って合成したもの
DNBTF:9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、国際公開第2009/058396号に従って合成したもの
BAF:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
BPF:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)。
【0148】
(実施例)
(2,7-ジブロモ-9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンの合成)
反応容器に2,7-ジブロモフルオレノン(東京化成工業(株)製)500g(1.5mol)、アニリン1212g(13.0mol)を仕込み、窒素雰囲気下にて攪拌し、塩化アニリニウム238g(1.8mol)加え、140℃で反応させた。60℃まで冷却後、メタノール1.8Lを加え晶析させ、結晶をろ過しイオン交換水及びメタノールで洗浄し、2,7-ジブロモ-9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンを得た(薄橙色結晶、収率45%、HPLC純度97.5%)。
【0149】
(DNBAFの合成)
反応容器に、2,7-ジブロモ-9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン106g(2.1mol)、2-ナフチルボロン酸93.6g(5.4mol)、ジメトキシエタン1L、及び2M炭酸ナトリウム水溶液320mLを仕込み、窒素気流下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[又はPd(PPh]2.4g(2.1mmol)を添加し、65℃にて8時間加熱還流して反応させた。反応液にイオン交換水600mLを加え、室温まで冷却し、終夜攪拌にて晶析させ、ろ過し粗結晶を得た。粗結晶をTHF900mLに溶解後、活性炭により精製し、セライトろ過により活性炭を除去した。酢酸エチル380gを追加し再結晶を行い、ろ過後、減圧乾燥させることにより、下記式で表される9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン(DNBAF)85.0g(薄橙色結晶、収率70.3%、HPLC純度96.9%)を得た。H-NMRの結果を以下に示す。
【0150】
【化9】
【0151】
H-NMR(CDCl、300MHz): δ(ppm)3.6(s,4H)、6.6(d,2H)、7.1(d,2H)、7.4-7.5(m,4H)、7.6-7.7(m,6H)、7.8-7.9(m,9H)、8.0(d,2H)
【0152】
屈折率nDは1.76であり、400℃での重量減少率は、15%であった。
【0153】
(比較例1~5)
DNBTF(比較例1)、BAF(比較例2)、BPF(比較例3)、BCF(比較例4)、BPEF(比較例5)の屈折率及び400℃での重量減少率をそれぞれ測定した。
【0154】
実施例及び比較例1~5の結果を表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
表1の結果から明らかなように、フルオレン骨格の9位に結合したアレーン環がアミノ基のみを有する実施例のDNBAFは、フルオレン骨格の9位に結合したアレーン環がアミノ基とメチル基とを有する比較例1のDNBTFに比べて、屈折率が高く、また、400℃での重量減少率が低く抑えられ、高い耐熱性を示した。なお、フルオレン骨格の9位に結合したアレーン環にメチル基が置換していない比較例3とメチル基が置換している比較例4とを比べると、メチル基の有無にかかわらず、屈折率は変わらなかった。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のアミノ基含有フルオレン化合物は、高い屈折率及び耐熱性を示すため、樹脂原料や、屈折率向上剤、耐熱性向上剤などの添加剤(又は樹脂添加剤)などとして有効に利用できる。
【0158】
また、本発明の樹脂は、高い屈折率などの優れた光学的特性や、高い耐熱性を示すため、様々な用途、例えば、コーティング剤又はコーティング膜、具体的には、塗料、インキ、電子機器や液晶部材などの保護膜など;接着剤、粘着剤;樹脂充填剤;電気・電子材料又は電気・電子部品(電気・電子機器)、具体的には、帯電防止剤、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、フォトクロミック材料、ホログラム記録材料、帯電トレイ、導電シート、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、カラーフィルタ、有機EL素子、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、センサ、EMIシールドフィルムなど;機械材料又は機械部品(機器)、具体的には、自動車用材料又は部品、航空・宇宙関連材料又は部品、摺動部材などに利用してもよい。
【0159】
本発明の樹脂は、優れた光学的特性と高い耐熱性とをバランスよく充足しているため、光学部材として特に有効に利用できる。