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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150104
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】植物育成用圧力容器
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220929BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20220929BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G7/02
A01G7/00 601A
A01G9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052550
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】515278802
【氏名又は名称】三好造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 智文
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA01
2B022DA15
2B022DA17
2B022DA19
2B022DA20
2B029MA01
2B029PA03
2B029PA10
2B029SA01
(57)【要約】
【課題】圧力容器内の気体の温度等を調整する場合であっても、容器内の植物の生育に悪影響を及ぼすことを防ぐことのできる植物育成用圧力容器を提供する。
【解決手段】植物育成用圧力容器は1、栽培室15と、栽培室15と壁11により仕切られ、栽培室15に循環供給する調整気体を生成するための空調室17と、空調室17から栽培室15へ床下を通して調整気体を徐々に供給するための床下循環往路20と、を有する容器本体10を備え、床下循環往路20は、上流側が空調室17と接続された第一床下流路21と、第一床下流路21と流路隔壁26により仕切られ、第一床下流路21の隣に並んで設置された第二床下流路22と、を備え、流路隔壁26には、上流側から下流側にかけて複数の通気穴26aが形成され、第二床下流路22の天井には、栽培室と連通する小孔19cが多数形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の環境下で植物を育成するための植物育成用圧力容器において、
前記植物を育成する空間である栽培室と、前記栽培室と壁により仕切られ、前記栽培室に循環供給する調整気体を生成するための空調室と、前記空調室から前記栽培室へ床下を通して前記調整気体を徐々に供給するための床下循環往路と、を有する容器本体を備え、
前記床下循環往路は、
上流側が前記空調室と接続された第一床下流路と、
前記第一床下流路と流路隔壁により仕切られ、前記第一床下流路の隣に並んで設置された第二床下流路と、を備え、
前記流路隔壁には、上流側から下流側にかけて複数の通気穴が形成され、
前記第二床下流路の天井には、前記栽培室と連通する小孔が多数形成され、
前記調整気体は、前記空調室から前記第一床下流路、前記第二床下流路を順次通って前記栽培室へと供給されることを特徴とする植物育成用圧力容器。
【請求項2】
前記床下循環往路は、前記流路隔壁に形成された前記通気穴の開口の大きさを調整する開口調整部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の植物育成用圧力容器。
【請求項3】
前記第二床下流路は、上流側から下流側にかけて流路隔壁が順次設置され、複数の部屋に分割されていることを特徴とする請求項2記載の植物育成用圧力容器。
【請求項4】
前記空調室に圧縮空気を供給する圧縮空気供給路と、前記空調室に酸素を供給する酸素供給路と、前記空調室に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給路と、前記空調室に窒素を供給する窒素供給路とを有し、前記空調室内の気体を所定の圧力及び所定の成分比の気体に調整する気体成分・圧力調節装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の植物育成用圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の圧力下で植物を育成するための圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の圧力下で植物を育成するために、圧力容器内で植物を育成することが行われており、例えば、下記特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-65763号公報
【特許文献2】特開2013-162747号公報
【特許文献3】国際公開第2013/035816号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、圧力容器内で植物を育成する場合に、容器内の室温を所定の温度に調整する場合があるが、一般に、植物は環境の変化に敏感であり、温度調整のためのエアコンディショナー等から吹き出された空気が直接植物に当たり続けると、生育に悪影響を及ぼし、最悪枯れてしまう場合もある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、圧力容器内の気体の温度等を調整する場合であっても、容器内の植物の生育に悪影響を及ぼすことを防ぐことのできる植物育成用圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る植物育成用圧力容器は、所定の環境下で植物を育成するための植物育成用圧力容器において、前記植物を育成する空間である栽培室と、前記栽培室と壁により仕切られ、前記栽培室に循環供給する調整気体を生成するための空調室と、前記空調室から前記栽培室へ床下を通して前記調整気体を徐々に供給するための床下循環往路と、を有する容器本体を備え、前記床下循環往路は、上流側が前記空調室と接続された第一床下流路と、前記第一床下流路と流路隔壁により仕切られ、前記第一床下流路の隣に並んで設置された第二床下流路と、を備え、前記流路隔壁には、上流側から下流側にかけて複数の通気穴が形成され、前記第二床下流路の天井には、前記栽培室と連通する小孔が多数形成され、前記調整気体は、前記空調室から前記第一床下流路、前記第二床下流路を順次通って前記栽培室へと供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る植物育成用圧力容器によれば、圧力容器内の気体の温度等を調整する場合であっても、床下に設置した床下気体循環往路により空調室から栽培室へと調整気体を循環させることで、容器内の植物の生育に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る植物育成用圧力容器の正面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る植物育成用圧力容器の平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る植物育成用圧力容器の側面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る植物育成用圧力容器の容器内を示す垂直断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る容器本体の一部拡大垂直断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る容器本体の一部拡大水平断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る容器本体の垂直断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る容器本体の垂直断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係るダンパーの構成を示す図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る気体成分・圧力調節装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。植物育成用圧力容器1は、容器本体10と、採光窓30と、出入口扉50と、照明装置60と、空気調節システム70とを備えている。容器本体10は、鋼鉄製の横置きの円筒形容器であり、左右両端は外側に凸の半球形状である。
【0010】
なお、図1図3においては、採光窓30の一部及び照明装置60を省略して描いている。図5は、容器本体10の空調室17側から出入口扉50側へと向かう奥行き方向に平行な垂直断面図であり、空調室17付近を拡大して示している。図6は、奥行き方向に平行な水平断面図であり、空調室17付近を拡大して示している。
【0011】
図7及び図8は、奥行き方向に垂直な垂直断面図であり、図7は、空調室17内において出入口扉50と反対側を見た断面図であり、図8は、栽培室15内から空調室17を見た断面図である。図9は、ダンパー29の構成を示す図であり、図9(a)は、奥行き方向に垂直な方向に見た図、図9(b)は、奥行き方向に平行な方向に見た図である。
【0012】
容器本体10は、内部が垂直の仕切壁11によって仕切られており、植物が栽培される栽培室15と、栽培室15に循環供給する気体を調節する空調室17とを備えており、固定脚10aに支持されて地面に設置される。仕切壁11には、栽培室15から空調室17に出入りするための扉である空調室出入扉12が設置されている。
【0013】
また、容器本体10は、床板19を備え、栽培室15及び空調室17の床下には、床下気体循環往路20を備えている。空調室17で調節された調整気体は、床下気体循環往路20を通って、栽培室15全体へ徐々にゆっくりと均一に供給する。
【0014】
仕切壁11の上部は開放されており、栽培室15と空調室17とがつながっている。したがって、床下気体循環往路20から栽培室15内へと送られた調整気体は、仕切壁11の上方を通って空調室17へと戻る。空調室17内に戻った気体は、再度調節された後に、後述するエアコンディショナー71によって再び床下気体循環往路20へと送られ、圧力容器10内を循環する。
【0015】
床下気体循環往路20は、垂直壁である床下隔壁24によって仕切られた、第一床下流路21と、第二床下流路22とを備えている。第一床下流路21と第二床下流路22は、空調室17側から出入口扉50側へと向かう奥行き方向に平行に延在して設置されている。図6図8の断面図に示すように、第一床下流路21が中央側に位置し、第二床下流路22が第一床下流路21の左右両側に分かれて位置している。
【0016】
第一床下流路21は、中央に位置して左右を隔てる中央隔壁25によって左側第一床下流路21aと右側第一床下流路21bとの2つの部屋に分割されている。左側及び右側第一床下流路21a,21bは、栽培室15の床下において、空調室17側の上流側から出入口扉50側の下流側まで奥行き方向全体がつながっており、それぞれ細長い1つの部屋となっている。
【0017】
第二床下流路22は、第一床下流路21と第二床下流路22との間に位置して奥行き方向に延在する流路隔壁26によって、第一床下流路21と仕切られている。左側第一床下流路21aの外側に左側第二床下流路22a、右側第一床下流路21bの外側に右側第二床下流路22bが設置されている。
【0018】
第二床下流路22は、奥行き方向において、所定の間隔毎に奥行き隔壁27が設置されており、奥行き方向においてさらに小さな部屋に分割されている。奥行き隔壁27によって仕切られた部屋同士はつながっておらず、分割された部屋の間で気体が移動することはできない。
【0019】
流路隔壁26には、第一床下流路21と第二床下流路とを連通する通気穴26aが、奥行き方向において所定の間隔で形成されており、第一床下流路21と第二床下流路22との間で気体が移動可能である。第二床下流路22の分割された1つの部屋あたり、2つの通気穴26aが形成されている。
【0020】
各通気穴26aには、ダンパー29が設置されており、通気穴26aの開口の大きさを手動により調整自在である。ダンパー29は、ダンパー回転ハンドル29aと、ダンパー回転軸29bと、円板形状のダンパー本体29cとを備えており、手動でダンパー回転軸29b周りにダンパー本体29cを回動させることで、ダンパー29の開度を調整し、通気穴26aの開口の大きさを調整することができる。
【0021】
このような構成の床下気体循環往路20において、後述する空気調節システム70の口調ダクト開口75aから送風される調節済みの調整気体は、まず、空調室17側の端部から第一床下流路21内の上流部に入り、内部を出入口扉50側の下流側に向けて流れる。
【0022】
このとき、第一床下流路21の外側に位置する流路隔壁26に通気穴26aが形成されているため、下流側に向けて流れる調整気体のうちの一部は、各通気穴26aを通って水平方向に移動し、外側の第二床下流路22内へと入る。
【0023】
このように、第一床下流路21内を上流側から下流側へ向けて奥行き方向に流れる調整気体は、下流側に進むにつれて、順次通気穴26aを通過し、徐々に第二床下流路22内へと進む。
【0024】
ここで、上述したように、通気穴26aにはそれぞれダンパー29が設置されており、各通気穴26aにおける第一床下流路21から第二床下流路22へ流入量を調整することができる。
【0025】
本実施形態では、奥行き方向に所定の間隔で設置された通気穴26aに対して、気体循環の上流側の通気穴26aの開口を小さくし、下流側にいくにつれて、通気穴26aの開口が徐々に大きくなるように、各ダンパー29の開度を調節している。
【0026】
空気調節システム70から調整気体が最初に供給される第一床下流路21では、上流側の入口において気体の流れる速度である流速が大きく、下流側にいくに従って流速は小さくなる。したがって、通気穴26aの開口の大きさが上流側から下流側まで全て同じであると、上流側では多くの量の調整気体が通気穴26aを通過するのに対して、下流側では流速が小さい分、通気穴26aを通過する調整気体の量が少なくなってしまう。
【0027】
これでは、奥行き方向に複数の部屋に分割されている第二床下流路22から栽培室15内に流れ込む調整気体の量も上流側が多く、下流側が少なくなってしまい、結果として、栽培室15内の全体に調整気体を均一に供給することができない。
【0028】
これに対して、本実施形態のように、第一床下流路21と第二床下流路22との間の通気穴26aを上流側から下流側にいくに従って開口が大きくなるように調節することで、循環する調整気体の流速が小さくなる下流側においても、上流側と同量の調整気体を第二床下流路22内に供給することができる。
【0029】
栽培室15の床板19は、第一床下流路21の上面を含め、基本的に縞鋼板19aであり、栽培室15等の床上と床下気体循環往路20等の床下は遮断されている。しかし、第二床下流路22の上には、複数の小孔19cが形成されたパンチングメタル板19bが設置されており、この小孔19cにより、第二床下流路22内と栽培室15内とは、気体が移動可能につながっている。
【0030】
よって、通気穴26aから第二床下流路22に入った調整気体は、パンチングメタル板19bの小孔19cを通って上昇し、栽培室15内へと下方から流入する。第二床下流路22は、奥行き隔壁27によって、奥行き方向に複数の部屋に分割されており、第二床下流路22の各部屋に入った調整気体は、奥行き方向には移動することなく、各部屋において、小孔19cを通って、栽培室15内へと上方向に流れる。
【0031】
このように、第二床下流路22を奥行き方向において奥行き隔壁27によって分割することで、上流側から下流側にかけて開口の大きさが大きくなるように調整された通気穴26aを均等に通過した調整空気が第二床下流路22内で奥行き方向に移動して混ざることなく、そのまま栽培室15内全体に調整気体を均一に供給することができる。
【0032】
上述したように、仕切壁11の上部は開放されており、第二床下流路22から栽培室15内に調整気体が流入すると、栽培室15内の気体が順次仕切壁11の上方を通って空調室17内へと流れ込む。空調室17に流れた気体は、空調室17内で調整され、調整済みの調整気体が再びエアコンディショナー71の空調ダクト開口75aから床下気体循環往路20へと送り出される。
【0033】
このような容器本体10内の気体の循環は、エアコンディショナー71が備える送風ファンにより空調ダクト75から送り出される調整気体の風圧によって実現される。風圧が弱く、気体が適切に循環しない場合には、別途、送風ファンを設置するようにしても良い。例えば、仕切壁11の上方に、栽培室15側から空調室17へと向けて気体を送る送風ファンを設置することができる。
【0034】
採光窓30は、円形の窓であり、栽培室15内に容器外から光を取り入れるために、容器本体10の上部の所定の位置に複数設置されている。本実施形態では、容器本体10の長手方向に平行に3列、合計16個の採光窓30が規則的に配列されて設置されている。
【0035】
採光窓30は、容器本体10に固定される保持台31と、保持台31に固定保持される紫外線・赤外線カットガラス35及び耐圧ガラス37とを備えている。保持台31は、略円筒形状であり、容器本体10に溶接固定される土台32を備えており、図1図3においては、土台32のみが描かれている。
【0036】
保持台31は、室内側から外側(下方から上方)に向けて、耐圧ガラス37、紫外線・赤外線カットガラス35を順次保持しており、外側端部である上端部に照明装置60が設置される。
【0037】
出入口扉50は、作業者が栽培室15内に出入りするために設置されており、容器本体10の端部の半球部に設置されている。出入口扉50は、筒型補強枠51と、筒型補強枠51の開口を開閉する開閉扉である内開き扉53と、扉引き締め部材90とを備えている。
【0038】
筒型補強枠51は、容器本体10の半球部に出入口を確保するために、容器本体10の出入口用開口に固定設置される枠であり、枠内を人が通ることのできる長円形状(陸上競技のトラック形状)の筒型の枠である。
【0039】
内開き扉53は、板状の長円形状であり、筒型補強枠51の内側(室内側)の端部開口を閉じるように、筒型補強枠51に対して室内側に開く内開き構造で内側開口を開閉自在に構成されている。内開き扉53は、筒型補強枠51の内側端部に内開き扉53を押し付けながら閉じるための密閉レバー54を備えている。
【0040】
本実施形態では、植物の栽培時に容器本体10内が大気圧よりも高圧状態となるため、内開き扉53を採用することで、閉じた状態では室内圧力により内開き扉53が筒型補強枠51の内側端部に押し付けられる。このとき、筒型補強枠51の内側端部が内開き扉53のパッキンに押し付けられるので、容器本体10内を確実に密封することができる。
【0041】
照明装置60は、メタルハライドランプ61と、ソケット62と、強化ガラス63とを備えており、各採光窓30の傍に1つずつ設置されている。
【0042】
空気調節システム70は、空調室17内の気体の調節を行うシステムであり、調節された気体が上述した床下気体循環往路20を通って、栽培室15へと供給される。空気調節システム70は、気体の温度を調節するエアコンディショナー71と、空調室17内の気体の圧力及び成分比を調節する気体成分・圧力調節装置80と、を備えている。
【0043】
エアコンディショナー71は、空調室17内の気体を取り込む吸込口73と、調節した気体を床下気体循環往路20へと送風するための空調ダクト75とを備えている。空調ダクト75の先端は床板19に接続されており、先端の空調ダクト開口75aから調整気体が床下気体循環往路20へと排出される。
【0044】
気体成分・圧力調節装置80は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給路81と、圧縮酸素を供給する酸素供給路82と、圧縮二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給路83と、圧縮窒素を供給する窒素供給路84と、排気路85とを備えている。
【0045】
圧縮空気供給路81、酸素供給路82、二酸化炭素供給路83及び窒素供給路84は、空調室17の側壁に接続されており、これらの気体を所望の成分比で空調室17内に供給可能である。
【0046】
排気路85は、栽培室15の天井付近に接続されており、上記供給路81~84から空調室17内への気体の供給に応じて、適宜、栽培室15内の気体を排気する。供給路81~84の気体の供給量及び排気路85の排気量を調整することで、圧力容器10内の気圧を調整することができる。
【0047】
圧縮空気供給路81は、容器本体10側から順に設置された、仕切弁81a、ホース81k、仕切弁81a、流量計81c、電磁弁81b、圧力調整弁81d、ドライヤー81f、コンプレッサー81gを備えており、所定の圧力の空気を空調室17内に供給する。
【0048】
酸素供給路82は、容器本体10側から順に設置された、仕切弁82a、ホース82k、仕切弁82a、流量計82c、電磁弁82b、圧力調整弁82d、酸素ボンベ82eを備えており、所定の圧力の酸素を空調室17内に供給する。
【0049】
二酸化炭素供給路83は、容器本体10側から順に設置された、仕切弁83a、ホース83k、仕切弁83a、流量計83c、電磁弁83b、圧力調整弁83d、二酸化炭素ボンベ83eを備えており、所定の圧力の二酸化炭素を空調室17内に供給する。
【0050】
窒素供給路84は、容器本体10側から順に設置された、仕切弁84a、ホース84k、仕切弁84a、流量計84c、電磁弁84b、圧力調整弁84d、窒素ボンベ84eを備えており、所定の圧力の窒素を空調室17内に供給する。
【0051】
排気路85は、容器本体10側から順に設置された、仕切弁85a、ホース85k、電磁弁85b、流量計85c、サンプリング用バッファー85h、逆止弁85jを備えており、栽培室15内から所定の量の気体を排出する。
【0052】
サンプリング用バッファー85hには、濃度センサー85iが設置されており、栽培室15内の気体の濃度を計測することができる。濃度センサー85iとしては、二酸化炭素、酸素、窒素の各濃度センサーを備えている。
【0053】
以上、植物育成用圧力容器1の構成について説明したが、続いて、植物育成用圧力容器1の使用態様について説明する。植物の育成にあたっては、作業者が出入口扉50を通って、所定の植物を容器本体10内の栽培室15内に運び込んで設置する。
【0054】
育成植物の設置作業後、作業者が容器本体10の外に出て、出入口扉50を閉めて容器本体10内を密封した後、照明装置60及び空気調節システム70の駆動制御を行うことで、所定の気圧、所定の温度、所定の成分濃度の気体雰囲気、所定の照度及び照射時間の環境下で植物の育成を行うことができる。
【0055】
例えば、気圧が2気圧、温度が20℃、成分比が酸素濃度約25%、二酸化炭素濃度約1,000ppm、窒素濃度約74.9%の環境下で植物の生育を行う場合には、エアコンディショナー71の温度設定を栽培室15内が20℃となるような所定の温度に設定すると共に、栽培室15内の気圧が2気圧、気体の成分比が上記比率になるように気体成分・圧力調節装置80を設定する。
【0056】
そうすると、気体成分・圧力調節装置80の駆動により、圧縮空気供給路81、酸素供給路82、二酸化炭素供給路83及び窒素供給路84から所定の量の圧縮空気、圧縮酸素、圧縮二酸化炭素及び圧縮窒素が空調室17内に供給されると共に、排気路85から所定の量の栽培室15の気体が容器本体10外に排出される。
【0057】
平行して、エアコンディショナー71が、空調室17内の気体を取り入れて、所定の温度の調整気体に調節してから、空調ダクト75を通して、調節済みの調整気体を床下気体循環往路20に供給する。所定の時間経過すると、栽培室15は、気圧が2気圧、室温が20℃、気体の成分比が所定の比率の環境に調節される。
【0058】
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態によれば、床下気体循環往路20を介して、栽培室15と空調室17との間で気体を循環させることで、栽培室15内を所定の気圧、所定の温度、所定の成分濃度の気体雰囲気にすることができ、所望の環境下で植物の育成を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、床下気体循環往路20を栽培室15の床下に設置すると共に、上流側が空調室17と接続された第一床下流路21と、通気穴26aが形成された流路隔壁26を介して第一床下流路21の隣に隣接設置された第二床下流路22とを設置し、第二床下流路22の天井に栽培室15と連通する多数の小孔19cを形成している。
【0060】
このため、空調室17において調節された調整気体は、第一床下流路21から通気穴26aを通って水平方向に移動し、その後、第二床下流路22から小孔19cを通って上方向に移動して栽培室15内に入る。
【0061】
このように、床下気体循環往路20において、調整気体が水平方向に移動してから垂直方向に移動して栽培室15内に入ることで、調整気体の流れる速度が大幅に抑えられ、ゆっくりと栽培室15内に入ることになる。
【0062】
すなわち、エアコンディショナー71から送風された調整気体が栽培室15内の植物に直接当たることもなく、徐々に栽培室15内の気体が調整気体に均一に置き換えられ、栽培室15内に供給される調整気体の風圧により栽培室15内の植物の生育に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態では、奥行き方向に所定の間隔で設置された通気穴26aに対して、気体循環の上流側の通気穴26aの開口を小さくし、下流側にいくにつれて、通気穴26aの開口が徐々に大きくなるように、各ダンパー29の開度を調節しているため、上流側から下流側にかけて全ての通気穴26aを通過する調整気体の流量を均等にすることができ、栽培室15内全体に均一に調整気体を循環させることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、植物育成用圧力容器を構成する部材の形状やサイズ、素材等は適宜変更可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、空調室を1つだけ設置しているが、栽培室が大きい場合などには、空調室を複数設置するようにしても良い。また、上記実施形態では、調整気体の調節にあたって、圧縮空気、酸素、二酸化炭素及び窒素を供給するようにしているが、適宜他の気体等を供給するようにしても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、流路隔壁の通気穴の開口の大きさを調整する開口調整部材として、ダンパーを使用しているが、開口の大きさを調整できる部材であれば、シャッター等、他の部材を用いても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 植物育成用圧力容器
10 容器本体
10a 固定脚
11 仕切壁
12 空調室出入扉
15 栽培室
17 空調室
19 床板
19a 縞鋼板
19b パンチングメタル板
19c 小孔
20 床下気体循環往路
21 第一床下流路
22 第二床下流路
24 床下隔壁
25 中央隔壁
26 流路隔壁
26a 通気穴
27 奥行き隔壁
29 ダンパー
29a ダンパー回転ハンドル
29b ダンパー回転軸
29c ダンパー本体
30 採光窓
31 保持台
32 土台
35 紫外線・赤外線カットガラス
37 耐圧ガラス
50 出入口扉
51 筒型補強枠
53 内開き扉
54 密閉レバー
90 扉引き締め部材
60 照明装置
61 メタルハライドランプ
62 ソケット
63 強化ガラス
70 空気調節システム
71 エアコンディショナー
73 吸込口
75 空調ダクト
75a 空調ダクト開口
80 気体成分・圧力調節装置
81 圧縮空気供給路
81a 仕切弁
81b 電磁弁
81c 流量計
81d 圧力調整弁
81f ドライヤー
81g コンプレッサー
81k ホース
82 酸素供給路
82a 仕切弁
82b 電磁弁
82c 流量計
82d 圧力調整弁
82e 酸素ボンベ
82k ホース
83 二酸化炭素供給路
83a 仕切弁
83b 電磁弁
83c 流量計
83d 圧力調整弁
83e 二酸化炭素ボンベ
83k ホース
84 窒素供給路
84a 仕切弁
84b 電磁弁
84c 流量計
84d 圧力調整弁
84e 窒素ボンベ
84k ホース
85 排気路
85a 仕切弁
85b 電磁弁
85c 流量計
85h サンプリング用バッファー
85i 濃度センサー
85j 逆止弁
85k ホース
図1
図2
図3
図4
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図10