(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150112
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20220929BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A01C11/02 322C
A01B69/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052562
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】秦 啓二
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB06
2B043EA04
2B043EA13
2B043EA14
2B043EA35
2B043EB04
2B043EB14
2B043EB23
2B043EC16
2B043ED04
2B043ED13
2B062AA05
2B062AA08
2B062AB01
2B062BA18
2B062BA43
2B062CA14
2B062CA15
2B062CA25
(57)【要約】
【課題】旋回走行時に畦に接触する前に前記植付作業機を上昇作動させ、植付作業再開位置に到達する前に前記植付作業機を下降作動させる制御をより簡易且つ低コストに構成した移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体と、ステアリングハンドルと、植付作業機と、前記植付作業機を前記走行機体に対して昇降作動させるアクチュエータと、旋回操作を検出する旋回検出手段と、前記植付作業機の昇降作動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ステアリングハンドルを所定量以上操向操作する旋回操作が検出された場合には、前記植付作業機を植付作業が実行可能な作業高さから非作業位置まで上昇作動させるように構成され、前記ステアリングハンドルを旋回操作位置から中立位置に戻す復帰操作が検出された場合には、該復帰操作の初期で前記植付作業機の作業高さに向けた下降作動を開始するように構成された。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪によって支持される走行機体と、
前記走行機体を操向操作するステアリングハンドルと、
前記走行機体の後方に昇降可能に連結された植付作業機と、
前記植付作業機を前記走行機体に対して昇降作動させるアクチュエータと、
前記走行機体の旋回操作を検出する旋回検出手段と、
前記植付作業機の昇降作動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ステアリングハンドルを所定量以上操向操作する旋回操作が検出された場合には、前記植付作業機を植付作業が実行可能な作業高さから非作業位置まで上昇作動させるように構成され、前記ステアリングハンドルを旋回操作位置から中立位置に戻す復帰操作が検出された場合には、該復帰操作の初期で前記植付作業機の作業高さに向けた下降作動を開始するように構成された
移植機。
【請求項2】
左右一対の後輪毎に設けられ且つ前記後輪への動力伝動を断続するサイドクラッチと、
前記ステアリングハンドルによる旋回操作時に、旋回内側の後輪への動力伝動を切断するようにサイドクラッチを操作する連係機構とを備え、
前記連係機構は、前記ステアリングハンドルによる前記走行機体の左旋回操作時と右旋回操作時とで同一方向に作動する作動部材を有し、
前記旋回検出手段は、前記作動部材の操作位置を検出する検出センサとした
請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記制御部は、前記ステアリングハンドルの復帰操作の操作速度が遅いほど、前記植付作業機の作業高さへの下降作動を開始するタイミングを遅くするように構成された
請求項1又は2に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機の昇降作動を制御する制御部を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
前後輪によって支持される走行機体と、前記走行機体を操向操作するステアリングハンドルと、前記走行機体の後方に昇降可能に連結された植付作業機と、前記植付作業機を前記走行機体に対して昇降作動させるアクチュエータと、前記走行機体の旋回操作を検出する旋回検出手段と、前記植付作業機の昇降作動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記走行機体の旋回操作が検出された場合には、前記植付作業機を作業高さから非作業高さまで上昇作動させ、前記走行機体が所定距離旋回走行したことが検出された場合には、前記植付作業機を非作業高さから作業高さに向けて下降作動させるオート植付制御が実行可能に構成された特許文献1に記載の移植機が従来公知である。
【0003】
上記文献の移植機によれば、圃場での植付作業時に、圃場端側で旋回走行開始した場合に前記植付作業機を作業高さから非作業高さまで上昇作動させ、旋回走行が終了して植付作業を再開するまでに前記植付作業機を非作業高さから作業高さまで下降作動させる昇降作動を自動的に行うことができるため、作業走行時のオペレータの操作負担を軽減することができるものであるが、前記走行機体の旋回操作の他、前記走行機体の旋回走行時の操向距離や走行速度等を検出するためのセンサを別途に設ける必要があるとともに、前記植付作業機の昇降制御を行うための制御内容も複雑になるため、コストが掛かる場合があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、旋回走行時に畦に接触する前に前記植付作業機を上昇作動させ、植付作業再開位置に到達する前に前記植付作業機を下降作動させる制御をより簡易且つ低コストに構成した移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、前後輪によって支持される走行機体と、前記走行機体を操向操作するステアリングハンドルと、前記走行機体の後方に昇降可能に連結された植付作業機と、前記植付作業機を前記走行機体に対して昇降作動させるアクチュエータと、前記走行機体の旋回操作を検出する旋回検出手段と、前記植付作業機の昇降作動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ステアリングハンドルを所定量以上操向操作する旋回操作が検出された場合には、前記植付作業機を植付作業が実行可能な作業高さから非作業位置まで上昇作動させるように構成され、前記ステアリングハンドルを旋回操作位置から中立位置に戻す復帰操作が検出された場合には、該復帰操作の初期で前記植付作業機の作業高さに向けた下降作動を開始するように構成されたことを特徴としている。
【0007】
第2に、左右一対の後輪毎に設けられ且つ前記後輪への動力伝動を断続するサイドクラッチと、前記ステアリングハンドルによる旋回操作時に、旋回内側の後輪への動力伝動を切断するようにサイドクラッチを操作する連係機構とを備え、前記連係機構は、前記ステアリングハンドルによる前記走行機体の左旋回操作時と右旋回操作時とで同一方向に作動する作動部材を有し、前記旋回検出手段は、前記作動部材の操作位置を検出する検出センサとしたことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記制御部は、前記ステアリングハンドルの復帰操作の操作速度が遅いほど、前記植付作業機の作業高さへの下降作動を開始するタイミングを遅くするように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
前記制御部によれば、植付作業時において、旋回走行時に畦に接触する前に前記植付作業機を上昇作動させ、植付作業再開位置に到達する前に前記植付作業機を下降作動させるオート植付制御が実行可能になる他、該オート植付制御を複雑なセンサ類を別途設けることなく、前記走行機体の旋回操作と、前記ステアリングハンドルを旋回操作位置から中立位置に戻す復帰操作とを検出する前記旋回検出手段によって実現可能に構成されたため、コストをより低く抑えることもできる。
【0010】
また、左右一対の後輪毎に設けられ且つ前記後輪への動力伝動を断続するサイドクラッチと、前記ステアリングハンドルによる旋回操作時に、旋回内側の後輪への動力伝動を切断するようにサイドクラッチを操作する連係機構とを備え、前記連係機構は、前記ステアリングハンドルによる前記走行機体の左旋回操作時と右旋回操作時とで同一方向に作動する作動部材を有し、前記旋回検出手段は、前記作動部材の操作位置を検出する検出センサとしたものによれば、前記走行機体の旋回操作をより簡易な構成で検出することができるため、コストをより低く抑えることができる他、前記旋回検出手段として、前記ステアリングハンドルのステアリング軸やピットマンアーム等に操向操作を検出する操向センサを設置するスペースのない小型の移植機であっても容易に設置することができる。
【0011】
なお、前記制御部は、前記ステアリングハンドルの復帰操作の操作速度が遅いほど、前記植付作業機の作業高さへの下降作動を開始するタイミングを遅くするように構成されたものによれば、旋回走行時に畦に接触する前に前記植付作業機を上昇作動させ、植付作業再開位置に到達する前に前記植付作業機を下降作動させる制御をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【
図2】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体平面図である。
【
図6】圃場での植付作業時の作業経路を示したモデル図である。
【
図8】オート植付制御の処理を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図及び全体平面図である。本乗用田植機は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持された走行機体3と、該走行機体3の後方に昇降リンクを介して連結されて油圧式の昇降シリンダ5によって昇降自在に設けられた植付作業機6とを備えている。
【0014】
該走行機体3を支持する機体フレーム7は、前方側にボンネット8で囲繞されたエンジン(図示しない)が搭載されており、該エンジンの後方側には、作業者が乗込んで操向操作等を行う操縦部9が設けられている。
【0015】
前記操縦部9は、作業者が着座する座席11と、後述する操舵機構を介して前記前輪1を操向操作するステアリングハンドル12と、該ステアリングハンドル12の左右一方側(図示する例では左側)に設けられた主変速レバー13と、該ステアリングハンドル12の手前側に配置されて各種操作具が設けられた操作パネル16と、前記座席11の左右一方側(図示する例では右側)に設けられた作業機レバー17とを有し、前記座席11の下方側にはフロアステップ18が形成されている。
【0016】
該操作パネル16には、後述するオート植付モードに切換えるオート植付スイッチ15と、オート植付モードの実行中の作業状態等を表示するモード表示ランプ(表示ランプ)55とが設けられている。オート植付モードに切換えれると、詳しくは後述する前記制御部50によってオート植付制御が実行される。詳しくは後述する。
【0017】
前記操舵機構には、所定以上のステアリング(操向)操作である旋回操作がされた場合に旋回内側のリアアクスルケース21内のサイドクラッチを切断操作することにより小回り旋回を可能にする操向連動機構10と、該操向連動機構10によるサイドクラッチの切断操作をキャンセルする連動解除機構20と、前記ステアリングハンドル12による旋回操作を検出するための旋回操作検出手段40とを有している。前記操向連動機構10と、連動解除機構20と、旋回操作検出手段40とについては後述する。
【0018】
上記作業機レバー17は、前後方向に揺動操作されることによって、昇降装置(図示しない)を介して前記昇降シリンダ5の昇降作動を操作する油圧バルブを操作することにより、前記植付作業機6の昇降作動を操作することができるように構成されている。
【0019】
具体的には、前記作業機レバー17が所定の下降位置に操作された場合には、前記植付作業機6がその自重によって下端側まで下降作動する下降状態に切換えられ、前記作業機レバー17が所定の上昇位置まで後方揺動操作された場合には、前記植付作業機6が上昇作動する上昇状態に切換えられ、前記作業機レバー17が所定の固定位置に操作された場合には、前記植付作業機6の昇降作動を停止して任意の高さ位置で固定する固定状態に切換えられ、前記作業機レバー17が所定の植付位置に操作された場合には、前記エンジン側から伝動された動力を前記植付作業機6側に伝動して作業高さまで下降作動された前記植付作業機6による植付作業を実行する植付状態に切換えられる。
【0020】
上記昇降装置は、前記昇降シリンダ5の伸縮作動を操作する油圧バルブを操作する操作部材(図示しない)と、該操作部材を操作する作業機操作カムモータ22と、該作業機操作カムモータ22の操作位置を検出する作業機操作カムポテンショ23とが設けられており、前記制御部50により前記作業機操作カムモータ22の駆動を制御することによって、前記植付作業機6の昇降作動を制御することができるように構成されている。
【0021】
前記植付作業機6は、圃場に植付けられている苗が載置される苗載台26と、該苗載台26に載置された苗の圃場側への植付作業を行う植付部27と、左右に振出操作されて圃場面に次工程の印を形成する左右一対の前記マーカ28とを備え、前記昇降リンク4及び昇降シリンダ5によって昇降作動可能に連結されるとともに、PTO軸29を介して伝動される動力は前記植付クラッチ31によって断続操作される。
【0022】
上述のように構成された移植機によれば、前記植付作業機6を下端側となる作業高さまで下降作動させた状態で前記植付作業機6を駆動させる植付状態に切換えることにより、圃場面に前記苗載台26に載置された苗を圃場面に植え付けながら走行する植付作業(作業走行)を行うことができる。
【0023】
ちなみに、前記制御部50は、植付作業(作業走行)中に前記走行機体3の旋回操作が検出された場合には、前記植付作業機を最上昇位置(非作業高さ)への上昇作動を自動的に開始し、植付作業の再開までに前記植付作業機6を作業高さまで下降作動させるオート植付制御が実行可能に構成されている。該オート植付制御の詳細については後述する。
【0024】
次に、
図3乃至5に基づき、前記操舵機構を構成する前記操向連動機構と、連動解除機構と、旋回操作検出手段について説明する。
図3及び
図4は、操舵機構を示した要部平面図及び要部側面図であり、
図5は、操向連動機構を示した斜視図である。
【0025】
前記操向連動機構10は、前記ステアリングハンドル12と一体的に自身の軸回りに回転可能なステアリングシャフト(図示しない)と、該ステアリングシャフトの下部側に設置されたパワーステアリング装置32と、前記ステアリングシャフトを介して左右揺動操作されるように支持されたピットマンアーム33と、該ピットマンアーム33の下方に配置された回動プレート34と、該回動プレート34の回動に応じて逆方向に押引きされるとともに前後方向に延設された左右一対の第1ロッド36、36と、各第1ロッド36、36の後端側に連結された左右方向の第1アーム37、37と、該第1アーム37、37を回動可能に支持する上下方向の回動支軸39、39と、前記第1アーム37、37の左右外側端部側に連結された前後方向の第2ロッド38、38とを備えている。
【0026】
上記回動プレート34は、前記ステアリングシャフトの下端に取付けられて前記ピットマンアーム33と一体的に回動されるとともに、一対の第1ロッド36、36の前端側が連結される長孔状の融通孔34a、34aが形成されている。
【0027】
上記第1アーム37、37は、前記第1ロッド36後端の左右外側に配置された上下方向の前記回動支軸39の下端側で軸支されており、該回動支軸39の上端側は機体フレーム7側に取付固定されている。
【0028】
上記第2ロッド38、38は、その後端側にリアアクスルケース21内のサイドクラッチを操作する操作部材45が連結されており、該第2ロッド38が前後方向に操作されることによって、該サイドクラッチの断続操作をすることができるように構成されている。
【0029】
該構成によれば、前記操向連動機構10は、オペレータによって前記ステアリングハンドル12による旋回操作が行われると、前記ステアリングシャフトを軸回転→前記回動プレート34を左右回動→旋回内側の前記第1ロッド36を後方作動→前記第1アーム37が前記回動支軸39を軸に平面視時計回りに回動作動→前記第2ロッド38を前方に引張操作することにより、前記操作部材45を介して旋回内側のサイドクラッチのみを切断操作することができる。このとき、旋回外側のサイドクラッチは接続状態を維持することができる。
【0030】
すなわち、オペレータによって前記ステアリングハンドル12による旋回操作がされると、旋回内側の後輪への動力伝動が自動的に切断するとともに、旋回外側の後輪への動力伝動は継続された状態となるため、小回り旋回走行が可能になる。
【0031】
前記連動解除機構20は、一対の前記第1ロッド36、36の上方に設けられた左右方向の揺動軸41と、該揺動軸41に外装される筒状部材42と、該筒状部材42から前方下側に向かって延設されて前記揺動軸41を軸に前後揺動可能に軸支された左右一対の揺動アーム43,43と、この一対の揺動アーム43,43間を連結する連結杆44と、該連結杆44から後方に向かって延設されて各第1アーム37,37の左右内側と連結される前後方向の第3ロッド46,46と、前記筒状部材42から後方に向かって延設されるペダルアーム47と、該ペダルアーム47の後端側から前記フロアステップ18上面に向けて延設された解除ペダル48と、該解除ペダル48を非操作側に付勢する弾性部材49とを備えている。
【0032】
該構成によれば、前記連動解除機構20は、オペレータによって前記解除ペダル48の踏込操作を行うと、前記揺動アーム43が前記揺動軸41を軸に前方(上方)に揺動操作→一対の前記第3ロッド46,46を前方に引張操作→前記第1アーム37が前記回動支軸39を軸に平面視で反時計回りに回動作動→前記第2ロッド38を後方に押返すことにより、前記操作部材を介したサイドクラッチの切断操作を解除(キャンセル)することができる。
【0033】
前記旋回操作検出手段40は、前記ステアリングハンドル12による旋回操作に応じて揺動作動する旋回検出アーム51と、前記揺動軸41の後方側に取付固定されて前記旋回検出アーム51の揺動量を検出する旋回検出ポテンショ(旋回操作検出センサ)52とから構成されており、前記旋回検出ポテンショ52は前記旋回検出アーム51側に付勢された状態で回動作動する検出アーム52aを有している。
【0034】
上記旋回検出アーム51は、前記揺動軸41に外装された前記筒状部材42から後方に向かって延設されたことにより、前記ステアリングハンドル12が左右のどちらに旋回操作された場合であっても、該揺動軸41を軸に上方揺動作動される。言い換えると、該旋回検出アーム51は、左右の何れに旋回操作された場合であっても、同一方向に揺動作動するように構成されている。
【0035】
該構成によれば、前記旋回操作検出手段40は、旋回操作時に前記旋回検出アーム51(検出アーム52a)が揺動作動する範囲がよりコンパクトになることで、前記旋回検出ポテンショ52によって検出する必要のある揺動範囲も狭くなるため、装置全体を簡素且つ安価で、スペース効率良く構成することができる。
【0036】
また、前記旋回操作検出手段40によれば、前記ピットマンアーム33の左右揺動を検出するセンサ類を設けることによって旋回操作を検出する場合と比較して、よりコンパクトに構成することができるとともに、圃場面に対してより上方側に設置することができる。このため、小型の移植機で前記走行機体3の下面側に十分なスペースがなく、旋回操作検出手段40を設置することが困難なものであっても、容易に前記旋回操作検出手段40を設けることができるため、汎用性も向上する。
【0037】
次に、
図6に基づき、上述の移植機を用いて圃場での植付作業を行う際の作業方法(経路)について説明する。
図6は、圃場での植付作業時の作業経路を示したモデル図である。
【0038】
図6に示されるように、上述の移植機は、圃場の一端側から他端側に向けて直進しながら作業走行を行い(
図6の(1)参照)、その後、圃場の他端側で前記植付作業機6を一旦非作業高さまで上昇作動させた状態で旋回走行をし(
図6の(2)参照)、その後、隣接する条列で前記植付作業機6を作業高さに戻して(下降させて)作業走行を再開する(
図6の(3)参照)。この作業走行と旋回走行を繰返し行うことによって、圃場面の内側全体で苗の植付作業を行うことができる。また、最後に圃場の外周面側で植付作業を行うことで、圃場面の全体に苗の植付作業を行うことができる。
【0039】
このとき、前記制御部50は、前記植付作業機6を作業高さまで下降作動させた状態で前記植付部27を駆動させながら走行する作業走行を行っている場合に、オペレータによって前記ステアリングハンドル12が所定以上操向(ステアリング)操作されたこと(前記走行機体の旋回操作がされたこと)が検出された場合には、前記植付作業機6を非作業高さまで自動的に上昇作動させるとともに、前記走行機体3の旋回走行が終了して植付作業を再開する作業再開位置に到達するまでに、前記植付作業機6を再び作業高さまで自動的に下降作動させるオート植付制御が実行可能に構成されている。以下、オート植付制御について説明する。
【0040】
次に、
図7及び
図8に基づいて、前記制御部によるオート植付制御について説明する。
図7は、制御部のブロック図である。前記制御部50の入力側には、オート植付モードの実行を操作する前記オート植付スイッチ15と、前記作業機操作カムポテンショ23と、前記植付作業機6の昇降位置を検出するリフト角ポテンショ56と、前記旋回検出ポテンショ(旋回操作検出センサ)52とが接続されており、前記制御部50の出力側には、前記作業機操作カムモータ22と、前記植付クラッチ31と、前記モード表示ランプ55とが接続されている(
図7参照)。
【0041】
上記旋回検出ポテンショ52は、前記走行機体3を旋回走行させるために、前記ステアリングハンドル12を、左右一方側に所定量以上操向操作(以下、旋回操作)したこと(中立位置から旋回操作位置に操作したこと)を検出することができるとともに、前記ステアリングハンドル12を旋回操作位置から中立位置に向けて所定量以上戻した復帰位置まで戻す操作(以下、復帰操作)を検出することができるように構成されている。
【0042】
また、上記旋回検出ポテンショ52は、前記復帰操作を検出した際に、前記ステアリングハンドル12を旋回操作位置から復帰位置まで戻した際の操作速度も検出可能に構成されている。
【0043】
前記制御部50は、オート植付モードの実行時に、植付作業(作業走行)中に前記ステアリングハンドル12を直進走行するための中立位置から所定量以上操向操作したこと(旋回操作)が検出された場合には、前記植付作業機6を上昇状態に切換えることにより(下端側である)作業高さから(最上昇位置である)非作業高さに向けた上昇作動を開始し、前記ステアリングハンドルを旋回操作位置から中立位置に向けて戻し始める復帰操作が検出された場合には、前記植付作業機の下降作動を開始するオート植付制御が実行可能に構成されている。
【0044】
ちなみに、本実施例では、前記制御部50は、前記ステアリングハンドル12を直進走行する中立位置から180°以上操向操作されたことが検出された場合には、前記旋回操作がされたものと判断し、前記ステアリングハンドル12を旋回操作位置から30°中立位置側へと戻す操作が検出された場合には、前記復帰操作がされたものと判断しているが、前記旋回操作と前記復帰操作の操作条件はこれらに限られない。
【0045】
該構成によれば、
図6に示されるように圃場内側で植付作業(作業走行)をして圃場端側で旋回走行を行う際に、旋回開始時に前記植付作業機6を非作業高さに向けて上昇作動を開始することと、旋回終了後に前記植付作業機6を作業高さまで下降するように旋回途中で前記植付作業機6の下降作動を開始する動作を制御できる。
【0046】
すなわち、圃場端側での旋回走行時(
図6の(2)参照)に前記植付作業機6が畦等に接触することを効率的に防止できるとともに、植付作業再開位置まで旋回走行した時(
図6の(3)参照)にスムーズに植付作業を再開することができる。また、オペレータは、圃場端側での旋回走行時に前記作業機レバー17等を用いて前記植付作業機6の昇降作動を直接操作する必要がなくなり、操作負担が大幅に軽減される。
【0047】
また、前記制御部50は、前記復帰操作を検出した際に、前記ステアリングハンドル12を旋回操作位置から復帰位置まで戻す操作の操作速度に応じて、前記植付作業機6の下降作動を開始するタイミングを調整するように構成されている。具体的には、前記制御部50は、復帰操作の操作速度が所定の基準速度より早い場合には、前記植付作業機6の下降開始のタイミング(又は下降速度)を早め、復帰操作の操作速度が所定の基準速度より遅い場合には、前記植付作業機6の下降開始のタイミング(又は下降速度)を遅くするように構成した。
【0048】
該構成によれば、圃場端側での旋回走行に掛かる時間に応じて、前記植付作業機6が下降作動を開始するタイミングを調整することができるため、圃場端側での旋回走行時に前記植付作業機6の下降作動の開始が早すぎて前記植付作業機6が畦側に接触したり、前記植付作業機6の下降作動の開始が遅すぎて前記走行機体3の旋回走行が完了して植付再開位置に到達したときに前記植付作業機6が作業位置まで下降されず植付作業をスムーズに再開できないといった事態を簡易な構成で効率的に防止することができる。
【0049】
また、前記制御部50は、前記オート植付スイッチ15によってオート植付モード(オート植付制御)が実行されると、単一の前記モード表示ランプ55によって前記植付作業機6の作業状態を表示できるように構成されている。具体的に説明すると、前記オート植付スイッチ15のON操作によってオート植付モードが開始されると、前記モード表示ランプ55が点灯し、前記オート植付制御による前記植付作業機の昇降作動が開始されると、前記モード表示ランプ55が点滅し、前記植付作業機の作業高さへの下降作動が終了すると、前記モード表示ランプ55が消灯し、前記オート植付モードも終了する。
【0050】
なお、前記オート植付モードは、前記オート植付スイッチ15を再度押操作しない限りは終了しない構成であっても良い。この場合には、前記モード表示ランプ55は、前記植付作業機の作業高さへの下降作動が終了した段階で、点滅から点灯に戻る。
【0051】
該構成によれば、上述のオート植付モードの作業状況を単一の表示ランプによって表現できるため、前記操作パネル16側に専用の表示部を設ける必要がなく、コストをより低く抑えることができる。
【0052】
図8は、オート植付制御の処理を示したフロー図である。前記制御部によるオート植付制御の処理フローが開始されると、ステップS1から処理が開始される。ステップS1では、前記オート植付スイッチ15によってオート植付モードへ切換えられているか否かを確認し、オート植付モードがON状態であることが検出された場合には、ステップS2に進む。なお、ステップS1において、オート植付モードのOFF状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0053】
ステップS2では、前記作業機操作カムポテンショ23と前記リフト角ポテンショ56とにより、前記植付作業機6が植付状態又は作業位置まで下降された下降状態であるか否かを確認し、前記植付作業機6が作業位置まで下降されていることが検出された場合には、ステップS3に進む。なお、ステップS2において、前記植付作業機6が下端である作業高さより高い位置に操作されていることが検出された場合には、その後、リターンする。
【0054】
ステップS3では、前記旋回検出ポテンショ52により、前記旋回操作がされたか否かが確認され、前記旋回操作が検出された場合には、ステップS4に進む。ステップS4では、前記作業機操作カムモータ22を介して、前記植付作業機6を上昇状態に切換え、ステップS5に進む。なお、ステップS3において、旋回操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0055】
ちなみに、ステップS3では、前記植付作業機6の上昇作動の他、前記旋回操作が検出された際に前記植付クラッチ31が接続状態であった場合には、前記植付クラッチ31の切断操作も自動的に実行するように構成しても良い。該構成によれば、圃場端側での旋回走行時には前記植付部27の駆動を確実に停止させることができるため安全性も向上する。
【0056】
ステップS5では、前記旋回検出ポテンショ52により、前記復帰操作がされたか否かが確認され、前記復帰操作が検出された場合には、ステップS6に進む。なお、ステップS5において、復帰操作が検出されなかった場合には、ステップS4に戻る。ちなみに、前記植付作業機6が最上昇位置である非作業高さに到達している場合には、非作業高さで保持される。
【0057】
ステップS6では、前記旋回検出ポテンショ52により前記復帰操作時の操作速度を検出し、検出された復帰操作の操作速度に応じて前記植付作業機6の下降作動を開始するタイミング(又は下降速度)を算出し、算出されたタイミングに応じて前記植付作業機6の下降作動を開始し、その後、リターンする。
【符号の説明】
【0058】
1 前輪
2 後輪
3 走行機体
5 昇降シリンダ(油圧シリンダ、アクチュエータ)
6 植付作業機
10 操向連動機構(連係機構)
12 ステアリングハンドル
40 旋回操作検出手段(旋回検出手段)
50 制御部
51 旋回検出アーム(作動部材)
52 旋回検出ポテンショ(検出センサ、旋回検出手段)