(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150113
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及び塩化ビニル系プラスチゾル組成物
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20220929BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20220929BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220929BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20220929BHJP
C08K 5/23 20060101ALI20220929BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20220929BHJP
C08J 9/40 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E04F15/16 A
A47G27/02 101A
B05D7/24 301L
B05D7/24 302K
C08L27/06
C08K5/23
C08K5/12
C08J9/40 CEV
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052565
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】597012286
【氏名又は名称】新第一塩ビ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】織田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】紙中 学
【テーマコード(参考)】
2E220
3B120
4D075
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
2E220AA23
2E220AC01
2E220BB03
2E220GA02X
2E220GB34X
3B120AB04
3B120AD15Z
3B120AD19Z
3B120BA02
3B120BA38
3B120DB01
3B120EB30
4D075BB30Z
4D075DC02
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4D075EC41
4F074AA35
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4F074DA02
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4J002BD041
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4J002EH147
4J002EQ016
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4J002FD027
4J002FD326
4J002GC00
4J002GF00
4J002GL00
4J002GT00
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】微細で均一な発泡を可能として、軽量で均一な性状の発泡樹脂層を得ることを可能とする発泡性樹脂粉体、及びこれを用いた塩化ビニル系プラスチゾル組成物を提供すること。
【解決手段】サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内に、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分を含有する発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及びこれを用いた塩化ビニル系プラスチゾル組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内に、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分を含有することを特徴とする発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
【請求項2】
前記サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内の熱分解性発泡成分の含有量が、220℃で加熱した際に5~50ml/gの熱分解ガスを発生させる量であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
【請求項3】
前記サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内の熱分解性発泡成分の含有量が、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔容積に対して10体積%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
【請求項4】
前記サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔容積が、0.09~0.45ml/gであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
【請求項5】
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体と、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分の分散液とを、50℃以上かつ前記熱分解性発泡成分の分解温度未満の加熱温度下で混合して、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を製造することを特徴とする発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法。
【請求項6】
前記分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分の分散液の分散媒が、可塑剤であることを特徴とする請求項5に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法。
【請求項7】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及び可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系プラスチゾル組成物。
【請求項8】
請求項7記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物を塗布した後、加熱発泡することを特徴とする塩化ビニル系発泡層の製造方法。
【請求項9】
塩化ビニル系発泡層が、タイルカーペットを構成する層であることを特徴とする請求項8記載の塩化ビニル系発泡層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及びかかる発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を含有する塩化ビニル系プラスチゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスビルの床面には、一辺が50cm程度のタイルカーペットを用いることが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
このタイルカーペットは、通常、カーペットのパイルが埋め込まれている上部パイル層と、強度保持のためのバッキング層を有している。このバッキング層に用いるバッキング材としては、低温加工条件でも強度を持たせることが可能であることから、ゲル化に優れたペースト加工用塩化ビニル系樹脂が使用されることが多い。また、このバッキング層には、強度保持の点から、通常、炭酸カルシウム等の無機フィラーが配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、タイルカーペットのバッキング層には、通常、無機フィラーが配合されるため、タイルカーペット製品が重いという問題があった。したがって、発泡剤を用いて発泡樹脂層とし、比重を軽くして樹脂層の軽量化を図ることが行われていた。しかしながら、発泡剤を用いた場合、不均一な発泡セル(空隙)が樹脂層に生じ、外観や機能面で必ずしも満足のいくものが得られなかった。
【0005】
本発明の課題は、微細で均一な発泡を可能として、軽量で均一な性状の発泡樹脂層を得ることを可能とする発泡性樹脂粉体、及びこれを含有する塩化ビニル系プラスチゾル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂の細孔内に熱分解性発泡成分を含有させ、この発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を樹脂層形成材料(プラスチゾル組成物)の一部として用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、加熱成形時における熱分解性発泡成分の発泡によって樹脂層の軽量化を図ることができ、さらに、この細孔内の熱分解性発泡成分のガス化による非常に微細で均一な発泡により、樹脂層内に均一な発泡セルを形成して、均一な性状の発泡樹脂層を得ることができることを見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内に、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分を含有することを特徴とする発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
[2]前記サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内の熱分解性発泡成分の含有量が、220℃で加熱した際に5~50ml/gの熱分解ガスを発生させる量であることを特徴とする[1]に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
[3]前記サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内の熱分解性発泡成分の含有量が、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔容積に対して10体積%以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
[4]前記サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔容積が、0.09~0.45ml/gであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか一項に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体。
【0008】
[5]サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体と、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分の分散液とを、50℃以上かつ前記熱分解性発泡成分の分解温度未満の加熱温度下で混合して、[1]~[4]のいずれか一項に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を製造することを特徴とする発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法。
[6]前記分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分の分散液の分散媒が、可塑剤であることを特徴とする[5]に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法。
[7]ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体、[1]~[4]のいずれか一項に記載の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及び可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系プラスチゾル組成物。
【0009】
[8][7]記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物を塗布した後、加熱発泡することを特徴とする塩化ビニル系発泡層の製造方法。
[9]塩化ビニル系発泡層が、タイルカーペットを構成する層であることを特徴とする[8]記載の塩化ビニル系発泡層の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を含む塩化ビニル系プラスチゾル組成物を用いることにより、軽量で均一な性状の発泡樹脂層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で製造した発泡層の断面写真である。
【
図2】実施例2で製造した発泡層の断面写真である。
【
図3】実施例12で製造した発泡層の断面写真である。
【
図4】比較例1で製造した発泡層の断面写真である。
【
図5】比較例2で製造した発泡層の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体]
本発明の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体は、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内に、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分を含有することを特徴とする。
【0013】
(サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体)
本発明におけるサスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂とは、主に懸濁重合により得られる、多孔質な不定形状粒子からなる塩化ビニル系樹脂で、別名では汎用塩化ビニル系樹脂とも呼ばれるものである。こうしたサスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルのホモポリマーの他、塩化ビニルを主体とするコポリマーが含まれる。塩化ビニルを主体とするとは、例えば、塩化ビニルが全体の50質量%以上であることをいい、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0014】
塩化ビニルと共重合し得る単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチル等の不飽和モノカルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;これらのエステルおよびこれらの無水物;N-置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニリデン等のビニリデン化合物等を挙げることができる。
【0015】
本発明のサスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独で、又は塩化ビニルとこれと共重合可能な不飽和単量体とからなる単量体混合物を従来公知の方法で重合することにより得ることができる。例えば、懸濁重合により得ることができる。温度、分散剤の種類や量、撹拌速度等の各種反応条件を適宜設定して、所望の粒径、細孔容積(ポロシティ)、重合度の樹脂を得ることができる。
【0016】
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂は、一般的には、平均粒子径(D50)が50~200μm程度の粒子である。平均粒子径(D50)は、70~180μmであることが好ましく、100~150μmであることがより好ましい。
この平均粒子径(D50)は、JIS Z8815(乾式ふるい分け試験法)により、JIS Z8801のふるいを用いた50%通過径として示す。
【0017】
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂は、多孔質であることから、比重が小さい。このサスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂の細孔容積としては、0.09~0.45ml/gであることが好ましく、0.15~0.40ml/gであることがより好ましく、0.20~0.40ml/gであることがさらに好ましい。この範囲の細孔容積のサスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂を、後述する塩化ビニル系プラスチゾル組成物(樹脂層形成材料)の一部として用いることにより、軽量かつ均質な、よりバランスのとれた発泡樹脂層を得ることができる。
なお、細孔容積は、水銀圧入法(ポロシメーター)により求めることができる。
【0018】
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂の平均重合度としては、600~1700であることが好ましく、700~1500であることがより好ましく、800~1300であることがさらに好ましい。この範囲の平均重合度のサスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂を、後述する塩化ビニル系プラスチゾル組成物の一部として用いることにより、取り扱い性のよい所望の粘度を保持したゾル組成物とすることができ、また、形成した樹脂層において十分な強度を得ることができる。
この平均重合度は、塩化ビニル樹脂試験法(2003年4月 塩ビ工業・環境協会発行)の測定方法に従い、JIS K7367-2に準拠して、測定した還元粘度(K値)を、近似式:K値=20.42*Ln(重合度)-74.93で換算する。
【0019】
(熱分解性発泡成分)
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内には、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分が含有されている。この熱分解性発泡成分が、樹脂層の加熱成形時にガス化し、微細な発泡を生じさせ、樹脂層の軽量化を可能とする。また、微細な細孔内に担持された熱分解性発泡成分がガス化することにより、非常に微細で均一な発泡が生じるため、樹脂層内に均一な発泡セルを形成して、均一な性状の発泡樹脂層を得ることができる。
【0020】
本発明で用いる熱分解性発泡成分は、100~220℃で分解して発泡する成分であれば特に制限されるものではなく、有機系発泡成分であっても、無機系発泡成分であってもよい。有機系発泡成分としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等を挙げることができる。無機系発泡成分としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、ホウ水素化ナトリウム等を挙げることができる。これらの発泡成分は、有機系成分同士、無機系成分同士、有機系成分及び無機系成分等、適宜組み合わせて用いることができる。
【0021】
熱分解性発泡成分の分解温度としては、樹脂層の加熱成形温度で分解する温度であればよく、上述の通り、本発明においては100~220℃であるが、120~210℃であることが好ましい。また、キッカー成分を熱分解性発泡成分と併用することで、熱分解性発泡成分の熱分解温度を低下させ、低温での発泡性を実現できることから、キッカー成分を併用することが好ましい。キッカー成分としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛等の金属酸化物、熱安定剤に含まれるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属脂肪酸、尿素化合物等を挙げることができる。
適宜キッカー成分と組み合わせて、熱分解性発泡成分の分解温度を120~180℃に調整することが好ましく、140~160℃に調整することがより好ましい。
【0022】
サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内の熱分解性発泡成分の含有量(樹脂1g当たり)としては、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を220℃に加熱した際に、5~50ml/gの熱分解ガスを発生させる量であることが好ましく、10~50ml/gの熱分解ガスを発生させる量であることがより好ましく、20~50ml/gの熱分解ガスを発生させる量であることがさらに好ましい。この範囲のガスを発生できる含有量であることにより、軽量かつ均質な、よりバランスのとれた発泡樹脂層を得ることができる。
この熱分解ガスの発生量は、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を220℃で十分に加熱して、発生したガス量をガスビュレット等の測定機器を用いて測定する。
【0023】
また、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔容積に対する熱分解性発泡成分の含有量としては、10体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることがより好ましく、20体積%以上であることがさらに好ましく、30体積%以上であることが特に好ましい。含有量の上限は特に制限されるものではなく、100体積%未満であることが好ましく、95体積%以下であることがより好ましい。この範囲の含有量であることにより、上記同様、軽量かつ均質な、よりバランスのとれた発泡樹脂層を得ることができる。
細孔容積に対する熱分解性発泡成分の含有量は、投入した熱分解性発泡成分量、細孔外に存在する熱分解性発泡成分量、樹脂粉体の細孔容積、熱分解性発泡成分の密度を用いて算出する。具体的には、実施例に示す通りである。
【0024】
また、熱分解性発泡成分は、その一部が樹脂粉体(粒子)表面等の細孔外に存在していてもよいが、微細な発泡を可能とする観点からは、その多くが細孔内に存在することが好ましい。例えば、細孔外に存在する熱分解性発泡成分が、細孔内に存在する熱分解性発泡成分の50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法)
上記発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体は、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体と、分解温度が100~220℃の熱分解性発泡成分の分散液とを、50℃以上かつ熱分解性発泡成分の分解温度未満の加熱温度下で混合することにより製造することができる。
【0026】
分散媒としては、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を、樹脂層形成のための塩化ビニル系プラスチゾル組成物に配合して使用することを考慮すると、塩化ビニル系プラスチゾル組成物に用いられる可塑剤を用いることが好ましい。塩化ビニル系プラスチゾル組成物及び可塑剤の詳細は後述する。なお、可塑剤以外の有機溶媒を用いてもよく、有機溶媒としては、例えば、トルエン、シクロヘキサン、2-メチルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘプタン、ノルマルオクタン、2,2,4-トリメチルペンタン、エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブチルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ペンタノール、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン等を挙げることができる。
【0027】
本製造方法においては、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内へ熱分解性発泡成分が侵入して担持されやすくするために、高濃度の熱分解性発泡成分分散液を用いて加熱混合することが好ましい。
【0028】
熱分解性発泡成分分散液中の熱分解性発泡成分(及びキッカー成分)の濃度としては、例えば、40~70質量%であることが好ましく、50~60質量%であることがより好ましい。
【0029】
また、混合時の加熱温度としては、上記のように、50℃以上かつ熱分解性発泡成分の分解温度未満の温度であれば特に制限されるものではないが、熱分解性発泡成分をよりスムーズに細孔内に侵入させる観点から、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
【0030】
また、熱分解性発泡成分(及びキッカー成分)は、例えば、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の平均細孔径より小さいような、粒径の小さいものを用いることが好ましい。すなわち、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔内に侵入しやすいように、粒径の小さい市販のものを用いるか、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体との加熱混合前に粉砕して用いることが好ましい。
【0031】
上記のような適切な条件下で発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を製造することにより、投入した熱分解性成分のうちの好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上を細孔内に担持させることができる。
【0032】
また、上記のように製造された発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体に対して、分散媒(可塑剤)等を用いて洗浄し、粉体外表面に付着した熱分解性発泡成分を取り除くことが好ましい。これにより、熱分解性発泡成分が樹脂粉体の細孔内のみに存在することとなり、樹脂層の加熱成形時に、より微細で均一な発泡が可能となる。
【0033】
一方、樹脂層形成のための塩化ビニル系プラスチゾル組成物に配合して使用する場合、製造効率の点からは、洗浄しないまま用いてもよい。洗浄せずに用いても、上記のように適切な条件下で発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を製造することにより、熱分解性発泡成分の大部分は細孔内に担持されており、実用に耐える均質な発泡層を形成することができる。
【0034】
[塩化ビニル系プラスチゾル組成物]
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体、上記説明した発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及び可塑剤を含有することを特徴とする。
【0035】
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、軽量で均一な性状の樹脂層を形成することができる。すなわち、細孔に熱分解性発泡成分を含有させた本発明の発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂を、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂と併用することで、加熱成形時におけるに熱分解性発泡成分のガス化によって発泡が可能となり、比重を低下させて軽量化を図ることができる。また、この細孔内に存在する熱分解性発泡成分のガス化は、微細で均一な発泡を生じさせることから、均一な発泡セルを有する均質な樹脂層を形成することができる。
【0036】
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物においては、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を10~50質量%含むことが好ましく、20~40質量%含むことがより好ましく、25~35質量%含むことがさらに好ましい。発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体をこの範囲で含有することにより、粘度の上昇を抑えて取り扱い性のよいゾルとすることができる。また、樹脂層を形成した際、樹脂層の十分な軽量化が図れると共に、十分な強度を得ることができる。
【0037】
(ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体)
本発明におけるペースト加工用多孔質塩化ビニル系樹脂とは、主に、乳化重合(播種乳化重合を含む)や微細懸濁重合(播種微細懸濁重合を含む)により得られる、非多孔質な球状微粒子からなる塩化ビニル系樹脂である。本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物に用いるペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体としては、上記説明した発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体と同様、塩化ビニルのホモポリマーの他、塩化ビニルを主体とするコポリマーであってもよい。
【0038】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体は、塩化ビニル単独で、又は塩化ビニルとこれと共重合可能な不飽和単量体とからなる単量体混合物を従来公知の方法で重合することにより得ることができる。例えば、乳化重合(播種乳化重合を含む)や微細懸濁重合(播種微細懸濁重合を含む)により得ることができる。
【0039】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体は、一般的には、一次粒子の平均粒子径(D50)が0.1~10μmの微粒子である。平均粒子径(D50)は、0.1~5.0μmであることが好ましく、0.5~3.0μmであることがより好ましい。
この平均粒子径(D50)は、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製LA-960)により求めることができる。
【0040】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体の平均重合度は、600~1700であることが好ましく、900~1500であることがより好ましい。この平均重合度は、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の場合と同様に算出したものである。
【0041】
(可塑剤)
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物においては、従来塩化ビニル系プラスチゾルの可塑剤として公知のものを使用することができる。
【0042】
本発明においては、例えば、ジブチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレート、ジイソノニルフタレートなどのイソフタル酸誘導体;ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体;ジ-n-ブチルアジペート、ジ-(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ-n-ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルヘキシル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;ジ-n-ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリ-n-ヘキシルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体;テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体;トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;あるいは部分水添ターフェニル、接着性可塑剤;さらにはジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などを用いることができる。
【0043】
可塑剤は、これらの中でもフタル酸エステル系のものが好適である。なお、これらの可塑剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。可塑剤の配合量は、用途等に応じて適宜選択すればよいが、塩化ビニル系樹脂100質量部当たり、30~150質量部であることが好ましく、50~120質量部であることがより好ましい。
【0044】
(その他の成分)
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物においては、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及び可塑剤に加えて、その他の各種成分を配合してもよい。その他の成分としては、例えば、熱安定剤、充填剤、発泡剤、発泡促進剤、粘度調節剤、接着性付与剤、着色剤、希釈剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、補強剤を挙げることができる。
【0045】
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、比較的低粘度のゾルであり、成形方法によって最適な粘度は異なるが、取り扱いや接着性の観点から、2000~13000mPa・sであることが好ましく、3000~12000mPa・sであることがより好ましい。この粘度は、実施例で示した測定方法により測定されたものをいう。
【0046】
[塩化ビニル系プラスチゾル組成物の製造方法]
本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、上記ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粉体、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体、及び可塑剤と、必要に応じて他の成分とを混合することにより製造することができる。なお、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤の混合順序は問わない。すなわち、3成分を同時に混合してもよいし、2成分を混合した後、残りの成分を混合してもよい。
【0047】
[塩化ビニル系発泡層の製造方法]
本発明の塩化ビニル系発泡層の製造方法は、上記本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物を基体等に塗布した後、加熱発泡することを特徴とする。本発明の製造方法においては、加熱発泡時に、微細な発泡が生じるので、製造される発泡層は、軽量で均質な層となる。加熱温度としては、本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物が溶融すると共に熱分解性発泡成分が分解する温度であれば特に制限されるものではないが、例えば、120~250℃であり、150~200℃であることが好ましい。
【0048】
具体的に、この塩化ビニル系発泡層としては、タイルカーペットのバッキング層や接着層等のタイルカーペットを構成する層を好適に例示することができる。その他、壁材、床材、レザーを構成する層を例示することができる。
【実施例0049】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
<発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の製造>
分散媒としてのジ-(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP、(株)ジェイ・プラス製)80gと、キッカー成分としてのBa-Zn系安定剤(勝田化工(株)製BZ-100CJ)20gと、熱分解性発泡成分としての発泡剤(ADCA、永和化成工業(株)製ビニホールAC#3-K2)80gとを乳鉢に仕込み、擂潰機で30分間、発泡剤をすり潰しながら混合し、発泡剤分散液を調製した。
【0051】
その後、2Lヘンシェルミキサー((株)三井三池製作所製)にサスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体(ZEST 1700ZI(新第一塩ビ(株))、内部細孔容積0.37cm3/g)400gを加えた後、回転数1000rpmにて撹拌しながら、上記調製した発泡剤分散液を全量加え、ジャケットを加温して90℃まで昇温させた後、室温まで冷却した。
【0052】
上記製造した発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔の外部(外表面等)に存在する発泡剤を取り除くために、発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂100gにDOP100gを加え、500メッシュ(開口径25μm)の金網でろ過を行った。さらに、1000rpmで2分間遠心分離器にかけることにより、内部細孔に発泡剤を担持した発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体を得た。
【0053】
<塩化ビニル系プラスチゾル組成物の製造>
1Lのプラスチックカップに、ペースト加工用塩化ビニル樹脂(ZEST PQ135(新第一塩ビ(株)))70g、上記製造した発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体45g(うち、ZEST 1700ZIを30g含む)と、DOP 142g(発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体中のDOPと合わせた総量が150g)、Ba-Zn系安定剤(勝田化工(株)製BZ-100CJ)2g、炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)製、寒水#70)300gを加え、メカニカル制御撹拌機を用いて600rpmで10分間攪拌し、塩化ビニル系プラスチゾル組成物を製造した。
【0054】
<塩化ビニル系発泡層の製造>
ステンレス鋼板(厚み0.8mm)上に、上記塩化ビニル系プラスチゾル組成物をドクターブレードで1mm厚にコーティングし、直ちに200℃のギヤオーブンで5分間加熱し、発泡層(発泡成形シート)を得た。
【0055】
[実施例2]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際に使用する発泡剤の量を140gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0056】
[実施例3]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際のジャケット加温条件を、60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0057】
[実施例4]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際のジャケット加温条件を、30℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0058】
[実施例5]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際に使用する可塑剤を、ジイソノニルフタレート(DINP)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0059】
[実施例6]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際に使用する可塑剤を、ジ-(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0060】
[実施例7]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ担持する発泡剤を、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0061】
[実施例8]
実施例1において、発泡剤を担持するサスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体(ZEST 1700ZI)を、ZEST 1000Z(新第一塩ビ(株)、内部細孔容積0.27cm3/g)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0062】
[実施例9]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際に使用する分散媒を、トルエン(有機溶媒)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0063】
[実施例10]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持する際に使用する発泡剤の量を10gに変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0064】
[実施例11]
実施例1において、発泡剤を担持するサスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体(ZEST 1700ZI)を、ZEST 700L(新第一塩ビ(株)、内部細孔容積0.09cm3/g)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0065】
[実施例12]
実施例2において、発泡剤を担持したサスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔の外部に存在する発泡剤を取り除く処理を行わない以外は、実施例2と同様の方法で実施した。
【0066】
[比較例1]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持させず、塩化ビニル系プラスチゾル製造の際に、ペースト用塩化ビニル樹脂粉体100g、DOP150g、ADCA5.4g、Ba-Zn系安定剤3.5g、炭酸カルシウム300g加え、メカニカル制御撹拌機を用いて600rpmで10分間攪拌し、塩化ビニル系プラスチゾル組成物を製造する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0067】
[比較例2]
実施例1において、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の内部細孔へ発泡剤を担持させず、塩化ビニル系プラスチゾル製造の際に、ペースト用塩化ビニル樹脂70g、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂30g、DOP150g、ADCA5.4g、Ba-Zn系安定剤3.5g、炭酸カルシウム300g加え、メカニカル制御撹拌機を用いて600rpmで10分間攪拌し、塩化ビニル系プラスチゾル組成物を製造する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0068】
上記実施例1~12及び比較例1~2に係る発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体、塩化ビニル系プラスチゾル組成物、及び塩化ビニル系発泡層(発泡成形シート)について、以下の測定及び評価を行った。
【0069】
(発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の細孔容積)
水銀圧入式細孔分布測定装置(ポロシメーター)で測定した。
【0070】
(発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体の熱分解ガス発生量)
内部細孔に発泡剤を担持した発泡性サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体を三ツ口フラスコに10g入れ、その後、流動パラフィンを30g加えた後、オイルバスで220℃に加熱した。220℃で20分間加熱し、ガスビュレットを用いて発生するガス量を求めた。
【0071】
(サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体の細孔容積に対する発泡剤の含有量(体積分率φ))
体積分率φは、以下の式より求めた。
【0072】
体積分率φ(%)=(mb-ma)/ρ/v
【0073】
式中、「ma」は、遠心分離処理で回収した細孔外の熱分解性発泡成分の質量(g)であり、「mb」は、発泡剤担持サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体100gに含まれる熱分解性発泡成分理論値(g)(樹脂粉体100g当たりの投入量)であり、「v」は、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル樹脂粉体1gあたりの細孔容積(cm3/g)であり、「ρ」は、熱分解性発泡成分の密度(g/cm3)(ADCA、OBSHともρ=1.50)である。
【0074】
(塩化ビニル系プラスチゾル組成物の粘度)
プラスチゾル組成物を気温23℃、湿度50%RHの雰囲気下で1時間静置後、プラスチゾル組成物をよく掻き混ぜ、ブルックフィールド粘度計(英弘精機(株)製LVDV-3T)ローターNo.4、60rpmの粘度を測定した。
【0075】
(発泡層の発泡倍率)
発泡成形シートの中心を4cm角の金型で打ち抜き、薄くスライスして発泡成形シートの断面をCCDカメラで拡大観察し、厚さ方向の2点間距離の平均値を厚さLとした。コーティング層(発泡前)の厚さは、内温140℃のオーブンで5分間加熱して得られる成形シートの上記測定方法で得られる厚さL0とみなし、発泡倍率をL/L0として求めた。
【0076】
(発泡層の比重)
発泡成形シートから4cm角(16cm2)の金型で打ち抜き、精密天秤で質量を測定した。また、発泡倍率の測定の際に求めた厚さに表面積を掛けて体積を求め、質量を体積で除して比重を求めた。
【0077】
(発泡層の引張強度)
引張強度は、発泡成形シートからダンベル型引張試験片を作製し、オートグラフ((株)島津製作所製AGS-H)で引張強度を測定した。引張強度の試験サンプルは、2号型試験片を使用し、試験速度200mmで実施し、n=5の平均値を求めた。
【0078】
(発泡層の断面評価)
発泡層(発泡成形シート)の断面をCCDカメラ50倍で拡大観察を行い、発泡層の緻密性について以下の基準で評価した。
【0079】
◎:極めて緻密で均一な発泡セルを有する。
〇:ある程度緻密で均一な発泡セルを有する。
△:やや粗い、もしくは不均一な発泡セルを有する。
×:粗い発泡セルを有する。
【0080】
以上の結果を表1~3に示す。また、
図1~
図5に、実施例1、2及び12、並びに比較例1及び2の発泡層の断面写真を示す。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表1~2及び
図1~3に示すように、実施例1~12に係る塩化ビニル系プラスチゾル組成物を用いることにより、発泡倍率が高く、比重の小さい発泡層が製造されると共に、製造された発泡層には緻密で均一な発泡セルが形成され、発泡層は均一な性状であった。また、引張強度も十分に高いものであった。さらに、プラスチゾル組成物の粘度も低く、取り扱いやすいものであった。
【0085】
なお、実施例2の樹脂粉体で発生する熱分解ガス量は43.1ml/gであり、実施例12の樹脂粉体で発生する熱分解ガス量は54.3ml/gであった。この結果より、実施例12で、樹脂粉体の内部細孔の外部(外表面)に存在する熱分解性発泡成分量は、内部細孔に担持された熱分解性発泡成分量の26.0%であることがわかる。樹脂粉体表面に熱分解性発泡成分が存在する実施例12は、実施例2と比較して発泡セルの性状が劣るものの、十分に実用に耐えるものであった。
【0086】
一方、表3及び
図4~5に示すように、比較例1のように、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体を用いずに、プラスチゾル組成物中に熱分解性発泡成分を添加した場合や、比較例2のように、サスペンジョン系多孔質塩化ビニル系樹脂粉体に発泡成分を含有させず、プラスチゾル組成物中に熱分解性発泡成分を添加した場合には、製造された発泡層には、粗く不均一な発泡セルが形成された。