(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150126
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】モーター装置及びそれを搭載した製品
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20220929BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K9/06 G
H02K9/06 E
H02K9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052586
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梶山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】笹山 大寛
(72)【発明者】
【氏名】椎谷 大介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 憲司
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB02
5H609PP05
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR03
5H609RR19
5H609RR38
5H609RR39
5H609RR63
5H609SS03
(57)【要約】
【課題】
装置の大型化やコスト増を抑止しつつ、冷却効率が向上可能なモーター装置を提供することである。
【解決手段】
ステータ7とロータ8を備え、モーター軸9を有するモーターと、モーター軸9上に取り付けられたシロッコファン4と、モーターに対してシロッコファン4が配置された側とは反対側に設けた吸入口15を有する導風カバー11と、モーターと導風カバー11間に設けた整流放熱フィン12と、モーターを収容するモーターハウジング6と、を有し、シロッコファン4の回転により吸入口15から吸い込まれた吸込風5aは、整流放熱フィン12及び、モーターとモーターハウジング6間に設けた複数の吸気孔13を通ってシロッコファン4へ流れ込み、吐出口14から外へ排気される、構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータとロータを備え、モーター軸を有するモーターと、
前記モーター軸上に取り付けられたシロッコファンと、
前記モーターに対して前記シロッコファンが配置された側とは反対側に設けた吸入口を有する導風カバーと、
前記モーターと導風カバー間に設けた整流放熱フィンと、
前記モーターを収容するモーターハウジングと、を有し、
前記シロッコファンの回転により前記吸入口から吸い込まれた吸込風は、前記整流放熱フィン及び、前記モーターと前記モーターハウジング間に設けた複数の吸気孔又は空隙、を通って前記シロッコファンへ流れ込み、吐出口から外へ排気される、ことを特徴とするモーター装置。
【請求項2】
請求項1記載のモーター装置であって、
前記吸気孔は、吸引と冷却を兼ねた、モーター装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモーター装置であって、
前記吸込風は、前記複数の吸気孔により、蛇行して流れる、モーター装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモーター装置であって、
前記モーター軸は、出力軸を両方持つ、モーター装置。
【請求項5】
風を外に排出する排出口を有する外郭と、
前記外郭内に設けられた請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモーター装置と、
前記外郭内に設けられた制御基板と、
前記外郭内に設けられた電源回路と、を有し、
前記吐出口から吐出された吸込風が前記外郭の排出口に排出される風路上に、前記制御基板及び前記電源回路が配置された、製品。
【請求項6】
請求項5記載の製品であって、
前記風路は、前記モーター装置と前記制御基板と前記電源回路とが接続された導風ダクトである、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度上昇を抑えるモーター装置及びそれを搭載した製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に外扇ファンモーターの冷却効率を上げる為、モーターハウジング表面に放熱フィンを設け放熱面積を増やす事で冷却効率を上げる(例えば特許文献1)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構造の場合、放熱フィンやファンを大型化する事で、さらに冷却効率を上げることは可能となるが、材料も増え製品自体も大型化しやすい。
【0005】
又、モーターを使用する製品ではモーターを駆動する制御基板や電源回路等の熱対策も問題となることが多い。制御基板や電源回路等の温度が高くなる場合発熱部品に放熱フィンを取り付け、足りない場合別途ファンを装着する等、製品の大型化やコスト増や等が課題となっている。
【0006】
本発明の目的は、装置の大型化やコスト増を抑止しつつ、冷却効率が向上可能なモーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、ステータとロータを備え、モーター軸を有するモーターと、モーター軸上に取り付けられたシロッコファンと、モーターに対してシロッコファンが配置された側とは反対側に設けた吸入口を有する導風カバーと、モーターと導風カバー間に設けた整流放熱フィンと、モーターを収容するモーターハウジングと、を有し、シロッコファンの回転により吸入口から吸い込まれた吸込風は、整流放熱フィン及び、モーターとモーターハウジング間に設けた複数の吸気孔又は隙間、を通ってシロッコファンへ流れ込み、吐出口から外へ排気される、構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の大型化やコスト増を抑止しつつ、冷却効率が向上可能なモーター装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るモーター装置の断面を示す図である。
【
図2】従来の外扇ファンモーターの断面を示す図である。
【
図3】本発明に係るモーター装置の出力軸側の断面を示す図である。
【
図4】本発明に係るモーター装置の吸気孔側からの図である。
【
図5】本発明に係るモーター装置に導風カバーを取り付けた図である。
【
図8】従来のモーター装置を製品に組み込んだ場合の製品断面を示す図である。
【
図9】本発明に係るモーター装置を製品に組み込んだ場合の製品断面を示す図である。
【
図10】本発明に係るモーター装置の両軸仕様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のモーター(モーター装置)と従来のモーターを以下実施例の図面に沿って比較説明する。
【0011】
まず比較のため、一般的な外扇ファンモーターを示した
図2から説明する。
図2の場合、外側に取り付けた外扇ファン1とファンカバー2により構成され、モーターを回転すると軸に固定されている外扇ファン1が回転し吸込風5aがファンカバー2の後部の風取り入れ口より吸引しファンカバー2前部より冷却風5bが吐き出される。この冷却風5bをモーターハウジング6に当てモーターの発熱を冷却する。この外扇ファン1より吐き出される冷却風5bはモーター外郭の放熱フィンに接触せず流れてしまう無効冷却風5cの割合も多い。
【0012】
次に本発明のモーター装置の冷却方法を
図1を用いて説明する。
モーター装置は、ステータコア7とローターコア8からなり、モーター軸9を備えたモーターと、モーター軸9上に取り付けられたシロッコファン3と、スクロールケース4と、モーターに対してシロッコファン4が配置された側とは反対側に設けた吸入口15を有する導風カバー11と、モーターと導風カバー11間に設けた整流放熱フィン12と、モーターを収容するモーターハウジング6と、が配置され、モーターが回転するとモーター軸9に固定してあるシロッコファン3が回転する、これにより冷却風5bは吸入口15から吸込風5aとして吸引される。続いて冷却風5bが整流放熱フィン12とモーターハウジング6に設けた複数の吸気孔13を通りシロッコファン3に流れ込む、この時、モーターの発熱を整流放熱フィン12や吸気孔13、その他内部通路から奪熱し、冷却する。
【0013】
つまり、シロッコファン4の回転により吸入口15から吸い込まれた吸込風5aは、冷却風5bとして、整流放熱フィン12及び、モーターとモーターハウジング6間に設けた複数の吸気孔13、又は隙間、を通ってシロッコファン6へ流れ込み、吐出口14から外へ排気される。これにより、放熱フィンに接触せず流れてしまう無効冷却風5cを少なくし、装置の大型化やコスト増を抑止しつつ、冷却効率が向上可能とすることができる。
【0014】
従来のモーター装置である
図2と比較した場合、本発明のモーター装置は、
図1に記載の通り、冷却風5bがモーター発熱部を通過する距離や時間が長く、全ての冷却風5bがモーター内を通過する為、従来の
図2のように放熱フィンに接触せず流れてしまう無効冷却風5cを最小限に抑える事が出来る。つまり、装置の大型化やコスト増を抑止しつつ、冷却効率が向上可能なモーター装置を提供することが出来る。更に、内部の高温部を冷却風5bが通る為、冷却風5bと発熱体との温度差が大きくなり熱移動量も大きくなる。又、モーター内部から冷却する為、モーター外郭の温度を低く抑えられ、外部部品への悪影響や火傷等人体への影響を抑えることが出来る。その後、シロッコファン3により吐出口14から排出される。
【0015】
なお、本発明モーター構造は、誘導電動機、DCモーター等その他モーター大小を問わず、すべての形式で実施可能である。
【0016】
次に、本発明のモーター装置による部品や構造の詳細を
図1、3-7を用いて説明する。
【0017】
まず、外部に設置してある導風カバー11であるが、これは後述する製品組み込みを想定した為、設置した図としている。
図1の例では吸込風5aを図面の上方向から吸い込む形としている為、導風カバー11により吸込風5aを一旦中心に集め導風カバー吐出口16(
図7)を通す事により吸気孔13に対する風路長を合わせ、モーター冷却にムラが出ないようにしている。導風カバー吐出口16より吐出された吸込風5aは、更に整流と放熱を兼ねた整流放熱フィン12により誘導され吸気孔13へと導かれる。導風カバー11の形状は使用するモーターや製品の仕様により吸入口15の方向や形状、導風カバー吐出口16の形状や大きさ、又、整流放熱フィン12の数や形状等は随時決定するものであり、
図1、5、6に示す導風カバー11や
図4に示す整流放熱フィン12は一例である。又、吸入方向を真後ろから直接吸引する場合は必ずしも導風カバー11が必要であることはない。
【0018】
次に、吸気孔13はシロッコファン3に冷却風5bを取り入れる役目と、モーターの冷却を兼ねた機能を持つ。
図1では吸気孔13がモーターハウジング6内に設けた形となっているが、場合によっては吸気孔13ではなくモーターハウジング6とステータコア7間等に隙間を設ける等、冷却風5bがモーター内部発熱部近を安全を損なうことなく通る事が出来れば良い。又、吸気孔13の数や形はモーターや製品の仕様に合わせ決定する物である。又、冷却風5bとの接触時間を長くする為、内部通路を蛇行させたり、やらせん状にする等が考えられる。又、冷却風5bとの接触面積を増やすよう吸気孔13内部をフィン形状にする等、更に冷却効率を上げる事も可能である。
【0019】
次に、
図1、3に記載のモーター内のシロッコファン3やスクロールケース4の大きさ等はモーター冷却の必要風量に合わせに合わせ決定するものである。シロッコファン3やスクロールケース4の取り付け位置についても、
図1ではモーター出力軸側に設置されているが、反出力軸側に設置し、風の流れを逆にする事も可能である。スクロールケース4はモーター内部に部品として組み込む事も出来るが、フランジブラケット10やモーターハウジング6をスクロール形状にする事も可能である。
【0020】
また、
図10に示すように、モーター軸9の出力軸が2方向にある場合、側面の自由な位置に吸入口15を作る事が出来、容易に冷却風5bを吸入できる。その冷却風5bは内部を通る為、モーター外部に近接した位置に負荷26や部品が配置されていても冷却の風路に影響は無い。又、冷却風5bの吐出しも吸込みと同様に側面の自由な位置に設置出来る為、製品仕様に合わせ上下左右どこにでも排出出来る為、問題なく使用できる。冷却基本構造は上記で説明した片軸出力タイプと同等の仕様である。
【0021】
次に本発明のモーター19(モータ装置)をインバータ制御式の一般的な電気製品に組み込んだ例として
図9に示す。
図8に示す従来のモーター18と比較して以下説明する。
【0022】
図8に示すように、従来製品は、製品外郭20に囲われ、内部にはモーター18、モーター18を駆動する制御基板21、電源回路22、負荷26が配置されている。モーター18が起動するとモーター18の後部に取り付けられた外扇ファン1(
図1)により吸込風5aが取り込まれ冷却風5bをモーターハウジング6の表面に当てモーター18から発する熱を冷却する。この時モーター18から奪った熱は放熱27の様に製品外郭20内部に蓄積される。モーター18を駆動する制御基板21や電源回路22も発熱部品である為、その発熱は放熱27となり更に蓄積され製品内温度が上昇する。
【0023】
通常、制御基板21や電源回路22は安全の為、絶縁されたケース等に収められているが、これが発熱する電子部品の放熱を妨げてしまう。この為、ケースには放熱する為の開口部24を設けている。この開口部24は外部からの水や埃等の侵入、内部からの発煙発火等を広めてしまう可能性がある。開口部24を設けても放熱が足りない場合、大型のヒートシンク23やファン装置25を設置し冷却する。放熱27を外に排出するには製品外郭20に開口部24を設け熱が内部に溜まらないようにする。この場合、製品外郭20の開口部24から水、埃等が侵入し制御基板21や電源回路22に悪影響を及ぼし発煙、発火等の要因が高まってしまう。更にモーター18や負荷26の発する騒音が製品外郭20の外に漏れ、製品の騒音が高くなる事も考えられる。
【0024】
一方、
図9に示す本発明のモーター19を使用した例を前述した従来のモーター18と同じ部品構成で説明する。なお、
図9(a)と
図9(b)とは製品外郭20が異なる形状になっているだけで、基本構成は同じである。
【0025】
モーター19が回転すると、モーター軸9に固定されたシロッコファン3が回転しモーター反負荷側に取り付けてある導風カバー11の吸入口15を通じ、製品外郭20の外から吸入風5aが吸引される。この吸入風5aは導風カバー吐出口16によりモーター19の中心に集められ清流放熱フィン12により放熱と清流を行いながら冷却風5bとして吸気孔13に吸引される。吸気孔13内では冷却風5bがモーター19の熱を奪い、シロッコファン3に吸引され、その後、吐出口14より排出される。吐出口14より排出された再冷却風5dは導風ダクト28a、28bを通じ、制御基板21、電源回路22を冷却し、導風ダクト28cにより、放熱27を製品外郭20の外に排出口から排出する。
【0026】
つまり、吐出口14から吐出された吸込風5aが、冷却風5bとして、製品外郭20の排出口に排出される風路(導風ダクト28a、28b、28c)上に、制御基板21及び電源回路22を配置することで、制御基板21、電源回路22も冷却し、外に放熱させることができる。
【0027】
なお、
図9では冷却風の取り込み方を製品外郭20の外より取り入れる構造だが、使用用途により導風カバー11の形状を製品に合わせ吸入口15を目的の方向から吸引する事を可能とする物である。導風カバー11では導風通路に水や埃等が侵入しないよう使用場合によってはフィルター等を装備する事も考えられる。
【0028】
制御基板21や電源回路22等から発煙、発火が起こった場合、導風ダクト28a、28b、28cを通じ、燃え広がらないよう素材を考慮し、用途に合わせダクト途中に放火金網のような構造をとることで発火が外部に広がらない構造とする。
【0029】
製品外郭20外に廃熱を排出する場合、導風ダクト28cより排出口から吐出し、音が発生する場合は状況に応じ方向を影響のない方向に変える事も容易であり、導風ダクト28cをサイレンサー構造とすることも考えられる。
【0030】
なお、密封ケースの制御基板21や電源回路22では、部品ケース内の構造も発熱部品に冷却風がよく当たるようにダクト出入り口の位置や内部部品の配置、ケース内に導風フィンや通路を設け冷却効率を上げる事とする。
【符号の説明】
【0031】
3 シロッコファン
4 スクロールケース
5a 吸込風
5b 冷却風
5d 再冷却風
6 モーターハウジング
7 ステータコア
8 ローターコア
9 モーター軸
10 フランジブラケット
11 導風カバー
12 整流放熱フィン
13 吸気孔
14 吐出口
15 吸入口
19 モーター
20 製品外郭
21 制御基板
22 電源回路
26 負荷