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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150151
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01C15/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052622
(22)【出願日】2021-03-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】江野 泰造
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測設点との間に障害物がある場合でも、測設点の測定が可能な測量システムを提供する。
【解決手段】遠隔操縦可能であり、飛行体9と2つの測定器11,12が設けられた飛行装置7と、第1のターゲット3,4が設けられ、測設点5に設置されるポール6と、既知の位置に設置された第2のターゲット2と、飛行装置7の飛行を遠隔操作し、飛行装置7と無線通信可能な遠隔操縦機8とを有する測量システム1であって、遠隔操縦機8は、飛行装置7を所定の測定位置迄飛行させ、一方の測定器で第1のターゲット3,4を測定させ、他方の測定器で第2のターゲット2を測定させ、第1のターゲット3,4と第2のターゲット2の測定結果に基づき、第2のターゲット2の設置位置を基準とした第1のターゲット3,4の3次元座標を演算する様構成された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操縦可能であり、飛行体と2つの測定器が設けられた飛行装置と、第1のターゲットが設けられ、測設点に設置されるポールと、既知の位置に設置された第2のターゲットと、前記飛行装置の飛行を遠隔操作し、該飛行装置と無線通信可能な遠隔操縦機とを有する測量システムであって、前記遠隔操縦機は、前記飛行装置を所定の測定位置迄飛行させ、一方の測定器で前記第1のターゲットを測定させ、他方の測定器で前記第2のターゲットを測定させ、前記第1のターゲットと前記第2のターゲットの測定結果に基づき、前記第2のターゲットの設置位置を基準とした前記第1のターゲットの3次元座標を演算する様構成された測量システム。
【請求項2】
前記第1のターゲットは、前記ポールの下端からの距離が既知である第1の反射部と、該第1の反射部からの距離が既知である第2の反射部とを有し、前記飛行装置は前記飛行体の飛行を制御する飛行制御装置を更に有し、前記一方の測定器は、第1測距光を射出し、第1反射測距光を受光して各反射部迄の距離を測定する第1測距部と、前記第1測距光が所定の範囲で走査される様該第1測距光を偏向する第1測距光偏向部とを有し、該飛行制御装置は、前記第1の反射部と前記第2の反射部の測定結果に基づき前記ポールの傾きを演算し、前記第1の反射部の測定結果と前記ポールの傾きと該ポールの下端から前記第1の反射部迄の距離に基づき、前記ポールが設置された測設点の3次元座標を演算する様構成された請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記飛行装置は、前記一方の測定器と前記他方の測定器との位置関係が既知である飛行体カメラを更に有し、前記飛行制御装置は、前記飛行体カメラが取得した飛行体画像中から予め設定された追尾対象を抽出し、該追尾対象と前記飛行体画像の基準位置との位置偏差に基づき、前記追尾対象を追尾する様構成された請求項2に記載の測量システム。
【請求項4】
追尾対象が位置情報発信器を有し、前記飛行制御装置は、前記位置情報発信器から受信した前記追尾対象の位置情報に基づき、該追尾対象が前記第1測距光偏向部の偏向範囲内に位置する様前記追尾対象を追尾する様構成された請求項2に記載の測量システム。
【請求項5】
前記飛行制御装置は、前記飛行体画像中から前記第1の反射部と前記第2の反射部をそれぞれ抽出し、前記第1の反射部を含む第1測定エリアと前記第2の反射部を含む第2測定エリアを設定し、前記第1測距光による前記第1測定エリアの局所スキャンにより前記第1の反射部を測定し、前記第2測定エリアの局所スキャンにより前記第2の反射部を測定する様構成された請求項3に記載の測量システム。
【請求項6】
前記飛行制御装置は、前記第1測距光偏向部の偏向範囲内で前記第1測距光を走査し、前記第1の反射部と前記第2の反射部を検出し、前記第1の反射部を含む局所スキャンと前記第2の反射部を含む局所スキャンとを交互に実行させ、1回前に測定した前記第1の反射部の位置を中心とする局所スキャンを実行して前記第1の反射部の現在位置を測定し、1回前に測定した前記第2の反射部の位置を中心とする局所スキャンを実行して前記第2の反射部の現在位置を測定し、前記第1の反射部に対する局所スキャンと前記第2の反射部に対する局所スキャンとを交互に繰返して前記ポールを追尾する様構成された請求項2に記載の測量システム。
【請求項7】
前記他方の測定器は、前記第1測距光とは異なる波長の第2測距光を射出し、第2反射測距光を受光して前記第2のターゲット迄の距離を測定する第2測距部と、前記第2測距光が所定の範囲で走査される様該第2測距光を偏向する第2測距光偏向部とを有し、前記飛行制御装置は、前記第2測距光偏向部の偏向範囲内で前記第2測距光を走査し、前記第2のターゲットを測定する様構成された請求項3~請求項6のうちのいずれか1項に記載の測量システム。
【請求項8】
前記飛行制御装置は、前記第2のターゲットを含む測定エリアを設定し、前記第2測距光による前記測定エリアの局所スキャンにより前記第2のターゲットを測定し、測定した該第2のターゲットの中心を新たなスキャン中心とする局所スキャンを繰返し実行し、前記第2のターゲットを追尾する様構成された請求項7に記載の測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の測設点を測定する為の測量システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
所望の測設点の測量を行なう際には、一般的に再帰反射性を有するプリズム等を用いて測量が行われる。
【0003】
1人作業によりプリズム測量を行う場合、プリズムが設けられたポールを作業者が保持した状態で、既知の点に設置されたトータルステーション等の測量装置によりプリズムを追尾させる。その後、作業者がポールを測設点迄移動させ、測設点にポールを設置して測設点の測定を行っていた。
【0004】
然し乍ら、測量装置と測設点との間に壁等の障害物がある場合、障害物により追尾が遮られ、測設点の測定を行うことができない。この場合、測設点との間に障害物が存在しない位置迄測量装置を移動させた後、プリズムの追尾を再開させる必要があった。従って、追尾が途切れる毎に、作業者が測量装置の設置位置迄戻り、測量装置を移動させた後、後方交会等により測量装置の位置を特定する必要がある為、作業に時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-44913号公報
【特許文献2】特開2016-151423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、測設点との間に障害物がある場合でも、測設点の測定が可能な測量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、遠隔操縦可能であり、飛行体と2つの測定器が設けられた飛行装置と、第1のターゲットが設けられ、測設点に設置されるポールと、既知の位置に設置された第2のターゲットと、前記飛行装置の飛行を遠隔操作し、該飛行装置と無線通信可能な遠隔操縦機とを有する測量システムであって、前記遠隔操縦機は、前記飛行装置を所定の測定位置迄飛行させ、一方の測定器で前記第1のターゲットを測定させ、他方の測定器で前記第2のターゲットを測定させ、前記第1のターゲットと前記第2のターゲットの測定結果に基づき、前記第2のターゲットの設置位置を基準とした前記第1のターゲットの3次元座標を演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0008】
又本発明は、前記第1のターゲットは、前記ポールの下端からの距離が既知である第1の反射部と、該第1の反射部からの距離が既知である第2の反射部とを有し、前記飛行装置は前記飛行体の飛行を制御する飛行制御装置を更に有し、前記一方の測定器は、第1測距光を射出し、第1反射測距光を受光して各反射部迄の距離を測定する第1測距部と、前記第1測距光が所定の範囲で走査される様該第1測距光を偏向する第1測距光偏向部とを有し、該飛行制御装置は、前記第1の反射部と前記第2の反射部の測定結果に基づき前記ポールの傾きを演算し、前記第1の反射部の測定結果と前記ポールの傾きと該ポールの下端から前記第1の反射部迄の距離に基づき、前記ポールが設置された測設点の3次元座標を演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記飛行装置は、前記一方の測定器と前記他方の測定器との位置関係が既知である飛行体カメラを更に有し、前記飛行制御装置は、前記飛行体カメラが取得した飛行体画像中から予め設定された追尾対象を抽出し、該追尾対象と前記飛行体画像の基準位置との位置偏差に基づき、前記追尾対象を追尾する様構成された測量システムに係るものである。
【0010】
又本発明は、追尾対象が位置情報発信器を有し、前記飛行制御装置は、前記位置情報発信器から受信した前記追尾対象の位置情報に基づき、該追尾対象が前記第1測距光偏向部の偏向範囲内に位置する様前記追尾対象を追尾する様構成された測量システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記飛行制御装置は、前記飛行体画像中から前記第1の反射部と前記第2の反射部をそれぞれ抽出し、前記第1の反射部を含む第1測定エリアと前記第2の反射部を含む第2測定エリアを設定し、前記第1測距光による前記第1測定エリアの局所スキャンにより前記第1の反射部を測定し、前記第2測定エリアの局所スキャンにより前記第2の反射部を測定する様構成された測量システムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記飛行制御装置は、前記第1測距光偏向部の偏向範囲内で前記第1測距光を走査し、前記第1の反射部と前記第2の反射部を検出し、前記第1の反射部を含む局所スキャンと前記第2の反射部を含む局所スキャンとを交互に実行させ、1回前に測定した前記第1の反射部の位置を中心とする局所スキャンを実行して前記第1の反射部の現在位置を測定し、1回前に測定した前記第2の反射部の位置を中心とする局所スキャンを実行して前記第2の反射部の現在位置を測定し、前記第1の反射部に対する局所スキャンと前記第2の反射部に対する局所スキャンとを交互に繰返して前記ポールを追尾する様構成された測量システムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記他方の測定器は、前記第1測距光とは異なる波長の第2測距光を射出し、第2反射測距光を受光して前記第2のターゲット迄の距離を測定する第2測距部と、前記第2測距光が所定の範囲で走査される様該第2測距光を偏向する第2測距光偏向部とを有し、前記飛行制御装置は、前記第2測距光偏向部の偏向範囲内で前記第2測距光を走査し、前記第2のターゲットを測定する様構成された測量システムに係るものである。
【0014】
更に又本発明は、前記飛行制御装置は、前記第2のターゲットを含む測定エリアを設定し、前記第2測距光による前記測定エリアの局所スキャンにより前記第2のターゲットを測定し、測定した該第2のターゲットの中心を新たなスキャン中心とする局所スキャンを繰返し実行し、前記第2のターゲットを追尾する様構成された測量システムに係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遠隔操縦可能であり、飛行体と2つの測定器が設けられた飛行装置と、第1のターゲットが設けられ、測設点に設置されるポールと、既知の位置に設置された第2のターゲットと、前記飛行装置の飛行を遠隔操作し、該飛行装置と無線通信可能な遠隔操縦機とを有する測量システムであって、前記遠隔操縦機は、前記飛行装置を所定の測定位置迄飛行させ、一方の測定器で前記第1のターゲットを測定させ、他方の測定器で前記第2のターゲットを測定させ、前記第1のターゲットと前記第2のターゲットの測定結果に基づき、前記第2のターゲットの設置位置を基準とした前記第1のターゲットの3次元座標を演算する様構成されたので、前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間に障害物が存在し、前記第1のターゲットに対する前記第2のターゲットの視通が遮られる場合であっても、前記測設点の3次元座標を演算することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る測量システムを説明する説明図である。
図2】飛行装置を示す平面図である。
図3】前記飛行装置の制御系を示すブロック図である。
図4】第1レーザスキャナの構成を示すブロック図である。
図5】測量システムに於ける遠隔操縦機の制御系を示すブロック図である。
図6】測定の際に設定される測定エリアを説明する説明図である。
図7】本発明の実施例に係るポールの追尾を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0018】
先ず、図1に於いて、本実施例に係る測量システムについて説明する。
【0019】
測量システム1は、主に既知の位置に設けられた第2のターゲットとしての全周プリズム2、第1のターゲットとしての反射部、例えば第1の反射部3及び第2の反射部4が設けられ、所望の測設点5に設置されるポール6、飛行装置(UAV)7、遠隔操縦機8、から構成される。
【0020】
前記全周プリズム2は再帰反射性を有し、例えば三脚10上に設けられ、前記全周プリズム2の設置点に対する高さが既知となっている。即ち、前記全周プリズム2の3次元座標は既知となっている。尚、図1中では、前記全周プリズム2が3箇所に設けられているが、1箇所であってもよい。
【0021】
前記ポール6は、円柱形状の棒状部材であり、下端は尖端となっている。前記ポール6の下端を所望の前記測設点5に合致させることで、前記ポール6が前記測設点5に設置される。前記ポール6に、概略位置が分かる様に、位置情報発信器としてのBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを装着してもよい。これによって、測定時間を短縮することができる。
【0022】
図1に示される様に、前記第1の反射部3は前記ポール6の下部に設けられ、前記第2の反射部4は前記ポール6の上端部に設けられている。又、前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4は、それぞれ外周面の全面に亘って再帰反射性を有する反射シートが貼付けられた球状の反射部材となっている。前記第1の反射部3と前記第2の反射部4は、それぞれ既知の径を有し、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の中心は、それぞれ前記ポール6の軸心上に位置している。即ち、前記第1の反射部3の中心と前記第2の反射部4の中心とを結ぶ直線は、前記ポール6の軸心と合致する。更に、前記ポール6の下端から前記第1の反射部3の中心迄の距離、該第1の反射部3の中心から前記第2の反射部4の中心迄の距離は、それぞれ既知となっている。尚、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4は、同径であってもよいし、異なる径となっていてもよい。
【0023】
前記飛行装置7は、主に飛行体9と、該飛行体9の下面に設けられた第1測定器としての第1レーザスキャナ11と、前記飛行体9の下面に設けられた第2測定器としての第2レーザスキャナ12と、前記飛行体9の周面に設けられた飛行体カメラ13と、前記遠隔操縦機8との間で通信を行う飛行体通信部14(後述)とを具備している。
【0024】
尚、前記飛行体9には基準点と基準方向が設定されている。前記基準点は、例えば前記飛行体9の機械中心である。又、前記基準方向は、任意の方向に設定可能であり、例えば前記飛行体カメラ13の撮像光軸と同一鉛直平面内に位置する。
【0025】
前記第1レーザスキャナ11は、パルス発光又はバースト発光されたレーザ光線を第1測距光15として射出し、走査ミラー(後述)を介して所定の測定対象物、例えば前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4に照射する。又、前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4に照射で反射された第1測距光15(第1反射測距光)が前記第1レーザスキャナ11で受光され、往復時間及び光速に基づき前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4に照射迄の距離が測定される。又、前記走査ミラーの傾斜により、第1測距光15を任意の方向に照射することができる。
【0026】
前記第2レーザスキャナ12は、パルス発光又はバースト発光されたレーザ光線を第2測距光16として射出し、走査ミラー(後述)を介して所定の測定対象物、例えば前記全周プリズム2に照射する。又、該全周プリズム2で反射された第2測距光16(第2反射測距光)が前記第2レーザスキャナ12で受光され、往復時間及び光速に基づき前記全周プリズム2迄の距離が測定される。又、前記走査ミラーの傾斜により、第2測距光16を任意の方向に照射することができる。
【0027】
尚、前記第1測距光15と前記第2測距光16は、異なる波長のレーザ光線となっている。例えば、前記第1測距光15は870nmのレーザ光線であり、前記第2測距光16は905nmの測距光となっている。又、前記第1測距光15の光軸と前記第2測距光16の光軸との位置関係は既知となっている。更に、前記第1測距光15の光軸と、前記飛行体カメラ13の撮像光軸との位置関係は既知となっており、前記第1測距光15の光軸の位置は前記飛行体カメラ13で取得される画像中で特定できる。従って、前記第1測距光15の光軸と前記飛行体カメラ13の撮像光軸の、前記第2測距光16の光軸に対する方位角は既知となっている。
【0028】
前記飛行体カメラ13は、所定の画角、例えば±35°の画角を有するカメラであり、前記飛行体9の基準方向と既知の関係となっている。例えば、前記飛行体カメラ13の撮像光軸は、前記飛行体9の鉛直軸心と直交する平面に対して所定角度下方に傾斜している。或は、前記飛行体カメラ13は、上下方向に駆動可能か、或は撮像光軸を上下方向に偏向可能となっている。
【0029】
前記遠隔操縦機8は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末、或は該携帯端末に入力装置が接続又は一体化された装置となっている。前記遠隔操縦機8は、演算機能を有する演算装置、データやプログラムを格納する記憶部、更に端末通信部(後述)を有している。前記遠隔操縦機8は、前記端末通信部と前記飛行体通信部14との間で前記飛行装置7との無線通信が可能となっている。更に、前記遠隔操縦機8は、前記飛行装置7の飛行、前記第1レーザスキャナ11及び前記第2レーザスキャナ12の測距作動を遠隔操作可能であり、前記飛行体カメラ13による撮像も遠隔操作可能となっている。
【0030】
次に、図2図4に於いて、前記飛行装置7について説明する。
【0031】
前記飛行体9は、放射状に延出する複数で且つ偶数のプロペラフレーム17(図示では17a~17d)を有し、該プロペラフレーム17の中心は前記飛行装置7の重心(基準点)となっている。各プロペラフレーム17の先端にそれぞれプロペラユニットが設けられる。該プロペラユニットは、前記プロペラフレーム17の先端に設けられたプロペラモータ18(図示では18a~18d)と、該プロペラモータ18の出力軸に取付けられたプロペラ19(図示では19a~19d)とにより構成される。更に、前記飛行体9には、飛行制御装置21が内蔵されている。
【0032】
該飛行制御装置21は、主に演算制御部22、記憶部23、飛行制御部24、プロペラモータドライバ部25、スキャナ制御部26、撮像制御部27、画像処理部28、姿勢検出器29、前記飛行体通信部14とを具備している。
【0033】
尚、本実施例では、前記スキャナ制御部26が前記飛行制御装置21に含まれているが、別構成としてもよい。例えば、前記第1レーザスキャナ11内と前記第2レーザスキャナ12内にそれぞれスキャナ制御部を設け、前記飛行体通信部14を介して前記飛行体9と前記第1レーザスキャナ11、前記第2レーザスキャナ12との間で制御信号の授受を行ってもよい。
【0034】
前記記憶部23には、プログラム格納部とデータ格納部とが形成される。前記プログラム格納部には、前記飛行体カメラ13の撮影を制御する為の撮影プログラム、該飛行体カメラ13が取得した飛行体画像31から作業者や前記第1の反射部3、前記第2の反射部4を抽出し、各位置を検出する為の画像処理プログラム、作業者や各反射部3,4を追尾する為の追尾プログラム、前記プロペラモータ18を制御する為の飛行制御プログラム、前記第1レーザスキャナ11及び前記第2レーザスキャナ12の測距作動を制御する為の測距プログラム、走査ミラー(後述)の傾斜角に基づき各測距光15,16の偏角を演算する為の測角プログラム、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4に対して順次局所スキャンを実行し、各反射部3,4の測定(測距及び測角)を行いそれぞれの3次元座標をリアルタイムで演算する為のスキャンプログラム、点群データの各点毎にタイムスタンプを付与する為のタイムスタンプ付与プログラム、各反射部3,4の測定結果から演算した前記ポール6の傾きと、該ポール6の下端からの前記第1の反射部3迄の既知の距離に基づき、前記測設点5の3次元座標を演算する測定プログラム、取得したデータを前記遠隔操縦機8に送信し、又該遠隔操縦機8からの飛行指令や測定指令を受信する為の通信プログラム等のプログラムが格納されている。
【0035】
又、前記記憶部23のデータ格納領域には、前記飛行体カメラ13で取得した前記飛行体画像31、各反射部3,4の測定結果(測距結果、測角結果)、前記測設点5の3次元座標の演算結果等が測定時間と関連づけられて時系列毎に格納される。
【0036】
前記飛行制御部24は、飛行に関する制御信号に基づき、前記プロペラモータドライバ部25を介して前記プロペラモータ18を所要の状態に駆動し、制御する。
【0037】
前記スキャナ制御部26は、前記第1レーザスキャナ11及び前記第2レーザスキャナ12の駆動を制御する。即ち、前記スキャナ制御部26は、前記第1測距光15の発光間隔、走査ミラーの往復速度等を制御し、該走査ミラーを介して前記第1測距光15及び前記第2測距光16を往復走査する。即ち、前記スキャナ制御部26は、前記第1レーザスキャナ11から照射される前記第1測距光15の点群間隔、点群密度を制御し、前記第2レーザスキャナ12から照射される前記第2測距光16の点群間隔、点群密度を制御する。又、反射測距光は、前記走査ミラーの傾斜角と関連づけられて前記演算制御部22に入力され、測距が実行される。
【0038】
尚、前記第1レーザスキャナ11と前記第2レーザスキャナ12は、前記第1測距光15と前記第2測距光16の波長を除き、同等の構成となっている。従って、以下では、前記第1レーザスキャナ11について説明する。
【0039】
図4に示される様に、前記第1レーザスキャナ11は、主に第1測距部32、第1測距演算部33、第1測距光偏向部としての第1走査ミラー34、第1ミラー駆動制御部35、第1傾斜角検出器36を有している。同様に、説明は省略するが、前記第2レーザスキャナ12も、主に第2測距部37、第2測距演算部38、第2測距光偏向部としての第2走査ミラー39、第2ミラー駆動制御部41、第2傾斜角検出器42を有している。
【0040】
前記第1測距部32は、前記第1走査ミラー34を介してターゲットに前記第1測距光15を射出し、更に前記第1走査ミラー34を介して前記ターゲットからの反射測距光を受光し、測距を行うものである。即ち、前記第1測距部32は、光波距離計として機能する。前記第1測距光15は、パルス光又はパルス状の光であり、測距はパルス光毎に行われる。
【0041】
前記第1測距演算部33は、前記スキャナ制御部26からの制御信号に基づき、前記第1測距部32によるターゲットに対する測距動作を制御する。即ち、前記第1測距演算部33は、パルス光の往復時間、例えば前記第1測距部32から射出される前記第1測距光15の発光タイミングと、前記第1測距部32に受光される反射測距光の受光タイミングとの時間差と光速に基づき、前記第1測距光15の1パルス毎の測距を実行する(Time Of Flight)。
【0042】
前記第1走査ミラー34は、例えば直交する2軸(X軸及びY軸)方向に傾動自在なMEMSミラーである。MEMSミラーは、コイルに電流を流した際のローレンツ力により駆動されるミラーであり、駆動電流の正負及び大きさに基づき、所望の方向に所望の角度で2次元に往復傾動可能となっている。前記第1走査ミラー34の傾斜可能な範囲は、例えば2軸方向に±30°となっている。該第1走査ミラー34により、前記第1測距光15の光軸を例えば±30°の範囲で偏向することができ、高応答性で前記第1測距光15による局所スキャンが可能となる。
【0043】
前記第1ミラー駆動制御部35は、前記第1走査ミラー34で反射される前記第1測距光15が所定のスキャン中心で所定の範囲を2次元に面スキャン(ラスタスキャン)する様、前記第1走査ミラー34を所定角度範囲で所定方向に往復傾動させる。又、前記第1ミラー駆動制御部35は、全スキャン範囲内の複数箇所で、部分的にスキャン(局所スキャン)する場合、スキャン中心を順次変更しながら局所スキャンし、複数箇所で同時に局所スキャンされたのと同様の制御を行う。
【0044】
前記第1傾斜角検出器36は、前記第1走査ミラー34の2軸の各傾斜角及び合成傾斜角を検出する。検出結果は前記スキャナ制御部26に入力される。
【0045】
前記撮像制御部27は、前記演算制御部22から発せられる制御信号に基づき、前記飛行体カメラ13の撮影を制御する。該飛行体カメラ13としてはデジタルカメラが設けられ、静止画像が撮影できると共に、動画像、又は連続する画像を構成するフレーム画像を前記飛行体画像31として取得可能となっている。又、撮像素子として、画素の集合体であるCCD、CMOSセンサ等が設けられ、各画素は撮像素子内での位置が特定できる様になっている。例えば、前記飛行体カメラ13の光軸が撮像素子を通過する点を原点とする直交座標によって、各画素の位置が特定される。各画素は、受光信号と共に画素座標を前記撮像制御部27に出力する。
【0046】
前記画像処理部28は、前記飛行体カメラ13が取得した前記飛行体画像31に対して、所定の画像処理を行う。例えば、図1に示される様に、前記飛行体画像31中から予め設定された追尾対象である作業者43を抽出し、該作業者43の抽出部と前記飛行体画像31の基準位置との位置偏差を演算する。尚、前記抽出部は、例えばベルト等の予め設定した該作業者43の体の一部であり、前記飛行体画像31の基準位置は例えば画像中心である。又、前記飛行体画像31中から前記第1の反射部3と前記第2の反射部4を検出し、検出した前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の画像中の位置に基づき、前記第1レーザスキャナ11による局所スキャンのスキャン中心を設定する。
【0047】
前記姿勢検出器29は、前記飛行体9の水平、又は鉛直に対する傾斜角を検出し、検出結果は前記演算制御部22に入力される。又、前記姿勢検出器29として、チルトセンサ等の傾斜検出器が用いられ、更に、特許文献2に開示された姿勢検出器を使用することができる。
【0048】
前記演算制御部22は、前記記憶部23に格納された各種プログラムに基づき、前記飛行制御部24、前記プロペラモータドライバ部25、前記スキャナ制御部26、前記撮像制御部27、前記画像処理部28を統括制御し、測定対象物を前記第1測距光15で走査(測定する)為の各種制御を実行する。即ち、前記第1測距部32による測距結果と前記第1傾斜角検出器36による測角結果に基づき、前記飛行体9の基準点を基準とした3次元座標を演算できると共に、前記姿勢検出器29の検出結果に基づき、演算した3次元座標を水平を基準とした3次元座標に補正することができる。又、前記演算制御部22は、前記遠隔操縦機8から受信した飛行信号に基づき飛行に関する制御信号を演算し、前記飛行制御部24に出力する。又、前記演算制御部22は、測定を実行する際、前記第1測距光15と前記第2測距光16のパルス光毎にタイムスタンプを付与する。即ち、前記第1測距光15と前記第2測距光16を照射して得られた点群の各点の測定結果毎にタイムスタンプが付与される。
【0049】
前記飛行体通信部14は、前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4を測定した結果(前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4の射距離、前記第1走査ミラー34の傾斜角、測定時の前記飛行体9の姿勢)を前記遠隔操縦機8に送信する。尚、該遠隔操縦機8への測定結果の送信は、測定指示を受信する毎に送信してもよいし、連続して取得した測定結果をリアルタイムで送信してもよい。
【0050】
前記飛行装置7は、前記姿勢検出器29の検出結果と、前記第1レーザスキャナ11で得られた前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の測距結果、前記第1傾斜角検出器36の検出結果に基づき、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の3次元座標を測定する。又、前記飛行装置7は、前記姿勢検出器29の検出結果と、前記第2レーザスキャナ12で得られた前記全周プリズム2の測距結果、傾斜角検出器の検出結果に基づき、前記全周プリズム2の3次元座標を測定する。更に、前記飛行装置7は、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の測定結果と前記ポール6の下端から前記第1の反射部3迄の距離に基づき、前記ポール6の下端(下端と合致した測設点)の3次元座標を演算できると共に、前記全周プリズム2の3次元座標に基づき、前記ポール6の下端の3次元座標を前記全周プリズム2の設置点を基準とした3次元座標へと変換することができる。尚、前記飛行装置7による各種演算は、前記遠隔操縦機8により実行されてもよい。
【0051】
図5は、前記遠隔操縦機8の概略構成、及び前記飛行装置7と前記遠隔操縦機8の関連を示す図である。
【0052】
該遠隔操縦機8は、演算機能を有する端末演算処理部44、端末記憶部45、端末通信部46、操作部47、表示部48を有している。
【0053】
前記端末演算処理部44は、クロック信号発生部を有し、前記飛行装置7から受信した画像データ、測定データ等をクロック信号に関連づける。又、前記端末演算処理部44は、受信した各種データを前記クロック信号に基づき時系列のデータとして処理し、前記端末記憶部45に保存する。
【0054】
該端末記憶部45には、前記飛行装置7と通信を行う為の通信プログラム、測定時に付与されたタイムスタンプに基づき、前記全周プリズム2の測定結果と前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4の測定結果とを関連づける為のプログラム、前記全周プリズム2の設置位置の3次元座標に基づき、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の3次元座標を演算する為のプログラム、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の測定結果、前記ポール6の下端から前記第1の反射部3迄の距離、前記ポール6の傾斜角に基づき、該ポール6が設置された前記測設点5の3次元座標を演算する為の測定プログラム、走査画面や測定結果、前記飛行体カメラ13で取得された前記飛行体画像31等を前記表示部48に表示する為の表示プログラム、タッチパネル等を介して指示を入力する為の操作プログラム等のプログラムが格納されている。
【0055】
前記端末通信部46は、前記飛行装置7との間で通信を行う。又、前記操作部47は、前記表示部48と一体に設けられたコントローラのボタン等を介して各種指示を入力し、前記飛行体9の操作を行う。
【0056】
前記表示部48は、前記飛行体カメラ13で取得された前記飛行体画像31、前記第1レーザスキャナ11や前記第2レーザスキャナ12等で取得された前記第1の反射部3、前記第2の反射部4や前記全周プリズムの測定結果を示す測定結果画面等が表示される。
【0057】
尚、前記表示部48の全てをタッチパネルとしてもよい。該表示部48の全てがタッチパネルである場合には、前記操作部47を省略してもよい。この場合、前記表示部48には前記飛行体9を操作する為の操作パネルが設けられる。
【0058】
次に、図1図6に於いて、前記測量システム1を用いた測定及び追尾について説明する。図1中では、前記全周プリズム2と前記ポール6との間に障害物としての壁49が存在し、前記全周プリズム2から前記ポール6に対する視通が前記壁49により遮られた状態となっている。即ち、前記全周プリズム2の設置位置からでは、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4とが直接測定できない様になっている。
【0059】
先ず、前記飛行装置7を所定の待機位置に静止させた状態で、方位計等により前記飛行装置7の基準方向の方位角を設定する。次に、追尾対象とは異なる作業者(図示せず)は、目視により、或は前記飛行体画像31に基づき、前記飛行装置7を飛行させる。該飛行装置7は、前記遠隔操縦機8を介して、前記全周プリズム2と前記ポール6の両方に対する視通が遮られない位置、即ち測定位置迄飛行される。尚、図1中に於いては、測定位置は前記壁49の上方となっている。
【0060】
前記飛行装置7を測定位置迄移動させると、該測定位置で前記飛行装置7をホバリングさせつつ、前記飛行体画像31中に前記作業者43が捉えられる迄、前記飛行装置7を旋回させる。尚、前記作業者43が前記飛行体カメラ13の画角の範囲内に入ると、前記画像処理部28は画像処理により前記飛行体画像31中に前記作業者43を検出する。
【0061】
前記飛行体画像31中に前記作業者43を捉えた後、前記飛行制御装置21は前記第2レーザスキャナ12を駆動させ、前記全周プリズム2を検出する。即ち、前記第2レーザスキャナ12の前記第2走査ミラー39を往復傾動させ、全スキャン範囲内を前記第2測距光16で走査し、前記全周プリズム2を検出する。
【0062】
尚、前記飛行装置7は、方位計を有していないが、前記第2測距光16の光軸に対する前記飛行体カメラ13の撮像光軸の相対方位角は既知となっている。従って、前記全周プリズム2に対する前記作業者43の相対方位角は、既知の位置関係に基づき演算できる。
【0063】
前記飛行体カメラ13が前記作業者43を捉え、前記第2レーザスキャナ12が前記全周プリズム2を検出すると、前記遠隔操縦機8を介して前記作業者43及び前記全周プリズム2の追尾を開始させる。この時、該作業者43は前記ポール6を保持しており、該ポール6を保持した状態で、所定の前記測設点5迄前記ポール6を搬送する。この時、前記作業者43や前記ポール6にBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを装着し、概略位置が分かる様にしてもよい。これによって、測定時間を短縮することができる。
【0064】
追尾が開始されると、前記演算制御部22は、前記飛行体画像31中から抽出した抽出部、例えば前記作業者43の体の一部と、前記飛行体画像31の基準位置、例えば画像中心との位置偏差を演算し、前記抽出部が前記飛行体画像31の基準位置に位置する様、前記飛行体9を旋回させる。或は、前記飛行体カメラ13の向きを変更可能な駆動機構、該飛行体カメラ13の撮像光軸を偏向可能な偏向機構を別途設け、前記飛行体カメラ13で前記作業者43を追尾させてもよい。
【0065】
尚、本実施例では、前記飛行体画像31の画像中心を基準位置とし、前記作業者43のベルトを抽出部としている。一方で、該抽出部を前記作業者43のヘルメットとした場合、前記基準位置は画像中心よりも上方に設定される。
【0066】
又、追尾が開始されると、前記演算制御部22は、前記全周プリズム2の検出位置に基づき、図6に示される様な、前記全周プリズム2の光学中心をスキャン中心とした所定範囲の局所スキャン範囲(測定エリア51)を設定する。尚、該測定エリア51は、前記第2走査ミラー39の全スキャン範囲よりも小さく、1周期あたりのスキャン時間も短くなっている。
【0067】
前記演算制御部22は、前記測定エリア51内を所定のスキャン密度で局所スキャンし、前記第2測距光16の軌跡52に沿って、各点毎にタイムスタンプが付与された点群データを取得する。又、前記演算制御部22は、前記軌跡52に沿った点群データに基づき、前記全周プリズム2を検出し、該全周プリズム2の光学中心を演算する。更に、前記演算制御部22は、演算した前記全周プリズム2の光学中心をスキャン中心として、再度局所スキャンを実行する。これらの処理を繰返すことで、前記第2レーザスキャナ12により前記全周プリズム2がリアルタイムで測定されつつ追尾される。又、前記全周プリズム2の測定結果は前記遠隔操縦機8へと送信される。
【0068】
前記ポール6を前記測設点5迄搬送し、前記ポール6の下端と前記測設点5とが合致する様前記ポール6を設置すると、前記作業者43は、前記遠隔操縦機8を介して前記測設点5の測定を開始させる。
【0069】
測定開始が指示されると、前記演算制御部22は、前記飛行体画像31中から前記第1の反射部3を抽出し、抽出した該第1の反射部3の中心を局所スキャンのスキャン中心とした第1測定エリア53を設定する。又、前記演算制御部22は、前記飛行体画像31中から前記第2の反射部4を抽出し、抽出した該第2の反射部4の中心を局所スキャンのスキャン中心とする第2測定エリア54を設定する。
【0070】
前記第1測定エリア53と前記第2測定エリア54の設定後、前記演算制御部22は、前記第1測定エリア53と前記第2測定エリア54に対し、局所スキャンを順次実行する。局所スキャンにより、各点毎にタイムスタンプが付与された点群データが取得される。
【0071】
本実施例では、前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4、全面に再帰反射性を有する反射シートが貼付けられた球体となっている。前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4の中心が前記第1測距光15の光軸上に存在しない場合には、反射測距光が前記第1測距部32に向って反射されず、測定不能となる。即ち、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の中心が前記第1測距光15の光軸上に存在する場合のみ、測定結果が演算できる。
【0072】
従って、前記第1測定エリア53内を局所スキャンした際に、測定結果が得られた点の測定結果を前記第1の反射部3の測定結果とすることができ、前記第2測定エリア54内を局所スキャンした際に、測定結果が得られた点の測定結果を第2の反射部4の測定結果とすることができる。尚、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の測定結果とは、各反射部3,4の中心の3次元座標であるので、各反射部3,4の中心の3次元座標は前記飛行装置7による測定結果及び各反射部3,4の既知の径に基づき演算することができる。
【0073】
前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の中心の3次元座標が演算されると、前記演算制御部22は、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の中心を結ぶ直線の傾きを前記ポール6の傾きとして演算する。又、前記演算制御部22は、前記第1の反射部3の中心の3次元座標と、演算した前記ポール6の傾きと、該ポール6の下端から前記第1の反射部3の中心迄の距離とに基づき、前記測設点5の3次元座標を演算し、該3次元座標がタイムスタンプと共に前記遠隔操縦機8に送信される。
【0074】
前記端末演算処理部44は、前記飛行体9の基準点を基準とした前記測設点5の3次元座標と、該3次元座標測定時の前記全周プリズム2の測定結果と、該全周プリズム2に対する前記測設点5の相対方位角に基づき、前記全周プリズム2の設置位置を基準とする前記測設点5の3次元座標を演算することができる。ここで、3次元座標測定時の前記全周プリズム2の測定結果とは、前記測設点5の3次元座標測定時に付与されたタイムスタンプと合致又は略合致するタイムスタンプを有する前記全周プリズム2の測定結果を示す。
【0075】
他にも測定すべき測設点が存在する場合には、前記作業者43の追尾を続行しつつ、前記ポール6を次の測設点迄搬送し、前記ポール6を測設点に設置して再度測設点の測定を行う。この時、前記ポール6と前記飛行装置7との間で視通が取れなくなった場合には、前記ポール6及び前記全周プリズム2の両方に対して視通が取れる位置へと前記飛行装置7を移動させ、処理を続行する。又、他に測定すべき測設点が存在しない場合には、前記遠隔操縦機8を介して前記飛行装置7を所定の待機位置に着地させ、測定処理を終了する。
【0076】
上述の様に、本実施例では、2つの測定器を有する前記飛行装置7を所定の測定位置迄飛行させ、一方の測定器により既知点に設置された前記全周プリズム2を追尾しつつ測定すると共に、他方の測定器により前記測設点5の3次元座標を測定し、前記全周プリズム2の設置位置を基準とした前記測設点5の3次元座標を演算する様構成されている。
【0077】
従って、前記全周プリズム2と前記ポール6との間に前記壁49等の障害物が存在し、前記ポール6に対する前記全周プリズム2の視通が遮られる場合であっても、該全周プリズム2の設置位置を基準とした前記測設点5の3次元座標を求めることができる。
【0078】
又、前記飛行装置7を介して前記測設点5を測定する構成となっているので、前記飛行装置7と前記全周プリズム2との間で視通が取れていればよい。従って、前記全周プリズム2を前記ポール6と視通が取れる位置迄移動させ、再度全周プリズム2の3次元座標を測定する必要がないので、作業時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【0079】
又、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4とが球体であり、前記第1の反射部3を含む前記第1測定エリア53を局所スキャンし、前記第2の反射部4を含む前記第2測定エリア54を局所スキャンすることで、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4とを測定している。
【0080】
従って、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の向きに拘らず、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の中心の3次元座標を演算することができる。
【0081】
又、前記第1の反射部3の測定結果と前記第2の反射部4の測定結果とに基づき、前記ポール6の傾きが演算可能であるので、前記ポール6を前記測設点5に垂直に設置する必要がなく、作業性を向上させることができる。
【0082】
尚、前記飛行装置7による前記作業者43の追尾を続けると、前記全周プリズム2の位置が前記第2走査ミラー39の偏向範囲外となり、前記全周プリズム2を前記第2レーザスキャナ12で追尾、測定が実行できなくなる場合がある。
【0083】
この場合、図1に示される様に、設置位置の3次元座標が既知である前記全周プリズム2を複数設け、いずれかの全周プリズム2の位置を基準として前記測設点5の3次元座標を演算すればよい。この時、各全周プリズム2の設置位置は、同一の座標系上に位置する。
【0084】
又、本実施例では、前記飛行体画像31に対する画像処理により、前記作業者43を追尾しているが、前記第1レーザスキャナ11により前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4を追尾してもよい。図7を参照して前記第1レーザスキャナ11による前記ポール6の追尾について説明する。
【0085】
前記遠隔操縦機8を介して、前記第1レーザスキャナ11による前記ポール6の追尾が指示されると、前記第1走査ミラー34の偏向範囲に前記第1の反射部3と前記第2の反射部4が含まれた状態で、前記第1走査ミラー34の全偏向範囲を前記第1測距光15で走査し、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4とをそれぞれ検出する。次に、前記第1の反射部3を中心とした前記第1測定エリア53と、前記第2の反射部4を中心とした前記第2測定エリア54をそれぞれ設定する。
【0086】
各測定エリア53,54が設定されると、前記演算制御部22は、前記第1測距部32(図7中では発光素子55と受光素子56)と前記第1走査ミラー34の協動により、前記第1測定エリア53を前記第1測距光15で局所スキャンさせ、前記第1の反射部3を測定する。
【0087】
次に、前記演算制御部22は、前記第2測定エリア54を前記第1測距光15で局所スキャンさせ、前記第2の反射部4を測定する。ここで測定された前記第1の反射部3の3次元座標と前記第2の反射部4の3次元座標を第1初期位置57、第2初期位置58として設定し、各初期位置57,58は前記記憶部23に格納される。
【0088】
各初期位置57,58の設定後、追尾が開始される。前記演算制御部22は、前記第1初期位置57を中心とした局所スキャン(第1局所スキャン)と、前記第2初期位置58を中心とした局所スキャン(第2局所スキャン)とを交互に実行し、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4とを略同時に、且つ略リアルタイムで測定する。
【0089】
尚、前記第1走査ミラー34はMEMSミラーであり、高速で往復傾動可能であるので、スキャン速度は前記ポール6の移動速度よりも充分に高速である。従って、スキャン中心を前記第1の反射部3から前記第2の反射部4へと移動させ、第2局所スキャンを実行した後であっても、再び前記第1初期位置57を中心とした第1局所スキャンで前記第1の反射部3を捉えることができる。
【0090】
第1局所スキャンの実行により、前記第1初期位置57から所定の方向に所定距離移動した第1位置59の3次元座標が測定され、測定結果が前記記憶部23に保存される。又、前記演算制御部22は、前記第1位置59と1回前の測定位置である第1初期位置57とに基づき、前記第1の反射部3の移動方向と移動速度を演算し、演算結果を前記記憶部23に保存する。
【0091】
前記第1位置59の測定後、前記演算制御部22は、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4との位置関係に基づき、局所スキャンのスキャン中心の位置を前記第2初期位置58に変更する。この時、前記第1の反射部3の測定位置、移動方向、移動速度に基づき、前記第2の反射部4の位置が予測され、予測結果もスキャン中心の変更に反映される。
【0092】
第2局所スキャンの実行により、前記第2初期位置58から所定の方向に所定距離移動した前記第2位置61の3次元座標が測定され、測定結果が前記記憶部23に保存される。又、前記演算制御部22は、前記第2位置61と1回前の測定位置である前記第2初期位置58とに基づき、前記第2の反射部4の移動方向と移動速度を演算し、演算結果を前記記憶部23に保存する。
【0093】
又、前記演算制御部22は、前記第1位置59と前記第2位置61の測定結果に基づき、前記ポール6の軸心6aの傾きを演算する。即ち、前記演算制御部22は、前記ポール6の姿勢を演算する。
【0094】
前記第2位置61の測定後、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の測定が交互に実行されることで、移動する前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の位置がリアルタイムで測定され、前記第1の反射部3と前記第2の反射部4の測定結果に基づき、前記飛行装置7による前記ポール6の追尾がリアルタイムで実行される。更に、該ポール6の追尾と並行して、該ポール6の姿勢もリアルタイムで演算することができる。
【0095】
前記ポール6が前記測設点5に設置されると、前記演算制御部22が、前記第1の反射部3の測定結果と、前記ポール6の傾きと、該ポール6の下端から前記第1の反射部3迄の距離とに基づき、前記飛行体9の基準点を基準とする前記測設点5の3次元座標を演算する。又、演算結果を受信した前記遠隔操縦機8が、演算結果を前記全周プリズム2の設置位置を基準とした3次元座標に変換し、前記測設点5の測定を終了する。
【0096】
前記第1レーザスキャナ11で前記ポール6を追尾する場合、追尾の為に画像を用いる必要がないので、前記飛行体カメラ13を省略することができ、前記飛行装置7の装置構成の簡略化及び重量の軽減を図ることができる。
【0097】
又、前記ポール6や前記作業者43等の追尾対象に位置情報発信器としてのBLEビーコンを設け、該BLEビーコンから発せられた概略の位置情報を有する信号に基づき前記追尾対象を追尾してもよい。
【0098】
この場合、前記飛行制御装置21は、前記飛行体通信部14を介して前記BLEビーコンから位置情報を受信できる様になっており、前記飛行制御装置21は前記BLEビーコンからの位置情報に基づき、前記追尾対象が前記第1走査ミラー34の偏向範囲内に位置する様、前記飛行装置7を旋回させ、前記測定対象を追尾する。
【0099】
又、複数のBLEビーコンを複数の追尾対象に設けてもよい。この場合、測定時のみ追尾対象から位置情報信号を発し、前記飛行装置7を追尾対象へと振向かせ、測定が行われる。この時、複数のBLEビーコンから発せられる信号を識別可能とすれば、測定結果を各追尾対象毎に時系列で保存することができる。
【0100】
又、本実施例では、前記第1測距光15と前記第2測距光16を走査する為の測距光偏向部として、2軸のMEMSミラーと用いているが、該MEMSミラーに限られるものではない。例えば、モータにより回転する回転鏡やガルバノミラー、オプティカルフェースドアレイ、液晶ビームステアリング、レズレープリズム等、種々の偏向手段により測距光を走査する構成であってもよい。
【0101】
更に、本実施例では、前記第1の反射部3及び前記第2の反射部4として、反射シートを全面に貼設した球体を用いているが、全周プリズムを用いてもよいのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0102】
1 測量システム
2 全周プリズム
3 第1の反射部
4 第2の反射部
5 測設点
6 ポール
7 飛行装置
8 遠隔操縦機
9 飛行体
11 第1レーザスキャナ
12 第2レーザスキャナ
13 飛行体カメラ
15 第1測距光
16 第2測距光
21 飛行制御装置
32 第1測距部
34 第1走査ミラー
37 第2測距部
39 第2走査ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7