IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人九州大学の特許一覧 ▶ 株式会社豆腐の盛田屋の特許一覧

特開2022-150176サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品
<>
  • 特開-サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品 図1
  • 特開-サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品 図2
  • 特開-サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品 図3
  • 特開-サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品 図4
  • 特開-サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150176
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】サーチュイン活性化剤、食品、および化粧品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20220929BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220929BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A23L33/105 ZNA
A61K8/9789
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052663
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】500240461
【氏名又は名称】株式会社豆腐の盛田屋
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】片倉 喜範
(72)【発明者】
【氏名】鵜池 泰隆
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB04
4B018MD58
4B018ME10
4B018MF01
4C083AA111
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】有機溶媒を使用することなく製造することが可能なサーチュイン活性化剤、並びに、このサーチュイン活性化剤を含む食品および化粧品を提供する。
【解決手段】サーチュイン活性化剤は、大豆の水抽出物を有効成分として含む。サーチュイン活性化剤に含まれる大豆の水抽出物は、豆乳であってもよい。本発明のサーチュイン活性化剤は、食品および化粧品などの成分として有効利用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆の水抽出物を有効成分として含む、サーチュイン活性化剤。
【請求項2】
前記大豆の水抽出物は、豆乳である、請求項1に記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項3】
SIRT1遺伝子およびSIRT3遺伝子の少なくとも何れかの活性増強作用を有する、請求項1または2に記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のサーチュイン活性化剤を含む、食品。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載のサーチュイン活性化剤を含む、化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーチュイン活性化剤、並びにこれを含む食品および化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
サーチュインは酵素の一種で、老化を抑制する機能を持つとされるタンパク質であり、「ヒストン脱アセチル化酵素」の下位分類の一つとして知られている。ヒトでは、7種類のサーチュイン(SIRT1からSIRT7)が知られている。サーチュイン遺伝子が活性化すると、細胞の若返りや代謝の増進をはじめとする、老化を抑制するさまざま効果がはたらくとされる。このため、サーチュイン遺伝子を活性化させることで寿命を延ばすことが可能になると期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、レスベラトロールより入手しやすいサーチュイン活性化剤として、黒ウコン、または黒ウコン抽出物を有効成分とする、サーチュイン活性化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-48152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、黒ウコンの粉砕物の80%(v/v)エタノールの抽出物にサーチュイン活性化作用があることが確認されている。すなわち、特許文献1に記載の発明では、サーチュイン活性化作用のある抽出物を効率的に得るためにはエタノールを使用する必要がある。
【0006】
しかし、エタノールなどの有機溶媒を用いて有効成分を工業的に抽出するには、抽出用の有機溶媒を大量に使用することになるため、原材料費がかさみコストアップにつながるという課題がある。また、有機溶媒を用いて得た抽出物を食品および化粧品などに使用する場合には、有機溶媒の人体への影響を考慮して、有機溶媒を除去することが求められる。また、抽出物中に少量の有機溶媒が含まれていた場合、その抽出物を用いて食品を製造すると食品の風味低下を招く可能性がある。
【0007】
そこで、本発明では、有機溶媒を使用することなく製造することが可能なサーチュイン活性化剤、並びに、このサーチュイン活性化剤を含む食品および化粧品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記の問題点に鑑み、抽出溶媒として有機溶媒を用いることなく、大豆由来の材料からサーチュイン活性化作用を有する抽出物を得ることについて鋭意検討を行った。そして、大豆を水(熱水)で抽出した豆乳に含まれる成分がサーチュイン活性化作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の一局面にかかるサーチュイン活性化剤は、大豆の水抽出物を有効成分として含んでいる。本発明の一局面にかかるサーチュイン活性化剤において、前記大豆の水抽出物は、豆乳であってもよい。また、本発明の一局面にかかるサーチュイン活性化剤は、SIRT1遺伝子およびSIRT3遺伝子の少なくとも何れかの活性増強作用を有するものであってもよい。
【0010】
また、本発明のもう一つの局面は、上記の本発明の一局面にかかるサーチュイン活性化剤を含む食品に関する。
【0011】
さらに、本発明のもう一つの局面は、上記の本発明の一局面にかかるサーチュイン活性化剤を含む化粧品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機溶媒を使用することなく製造することが可能なサーチュイン活性化剤を得ることができる。本発明のサーチュイン活性化剤は、老化抑制作用を有しているため、食品および化粧品などの成分として有効利用することができる。また、本発明のサーチュイン活性化剤を含む食品は、有機溶媒を使用することなく製造することができるため、有機溶媒に起因した風味の低下を抑えることができる。また、本発明のサーチュイン活性化剤を含む化粧品は、老化抑制作用を有する化粧品として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態にかかるサーチュイン活性化剤に含まれる豆乳の粉末化物の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2】実施例2におけるSIRT1の活性化確認試験の結果を示すグラフである。
図3】実施例2におけるSIRT3の活性化確認試験の結果を示すグラフである。
図4】実施例3におけるSIRT1の活性化確認試験の結果を示すグラフである。
図5】実施例3におけるSIRT3の活性化確認試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてより具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
(サーチュイン活性化剤)
本発明にかかるサーチュイン活性化剤は、大豆の水抽出物を有効成分として含む。
【0016】
サーチュイン活性化剤とは、老化抑制機能を有するタンパク質として知られているサーチュインを活性化させる機能を有する組成物をいう。サーチュイン活性化剤は、例えば、SIRT1からSIRT7などのヒトのサーチュイン遺伝子の転写または発現を増強する作用を有する。具体的には、サーチュイン活性化剤は、SIRT1遺伝子(以下、単にSIRT1ともいう)およびSIRT3遺伝子(以下、単にSIRT3ともいう)の少なくとも何れかの活性増強作用を有する。
【0017】
SIRT1は、ミトコンドリアを活性化する遺伝子であるPgc1-αを活性化することが知られている。また、SIRT3は、ヒトの皮膚などの老化を進行させる活性酸素(ROS)を低減する酵素を活性化することが知られている。したがって、SIRT1およびSIRT3の少なくとも何れかの活性を増強させることで、ヒトの皮膚および体内組織などの老化を抑制することができると考えられる。本明細書において、SIRT1またはSIRT3の活性増強作用を有するとは、SIRT1またはSIRT3の転写または発現を増強する作用を有することを意味する。
【0018】
SIRT1またはSIRT3の活性増強作用の有無および程度は、後述するように、SIRT1遺伝子のプロモーター領域(配列番号1で表される領域)またはSIRT3遺伝子のプロモーター領域(配列番号4で表される領域)を用いた系を構築して評価することができる。
【0019】
本発明にかかるサーチュイン活性化剤には、大豆の水抽出物が含まれている。本発明にかかるサーチュイン活性化剤において、大豆の水抽出物は有効成分として機能する。
【0020】
後述する製造方法で説明するように、豆乳は、「大豆の水抽出物」の一例である。豆乳は、水浸漬させた大豆を粉砕した後、圧搾することによって得られる。このように、豆乳は、大豆の内部に水を浸透させて、大豆の内部に浸透した水とその水に溶解した大豆の成分を含むものであるため、「大豆の水抽出物」に該当する。また、例えば、「栄養・生化学辞典」(朝倉書店、2009年7月25日、ISBN978-4-254-43112-4)では、豆乳について、「ダイズに吸水させ磨砕して熱水抽出したもの」と説明されている。
【0021】
また、本実施例に示すように、豆乳は、SIRT1およびSIRT3の活性増強作用を有することが確認された。したがって、大豆の水抽出物は、豆乳であることがより好ましい。
【0022】
本発明のサーチュイン活性化剤には、目的の効果を発揮しうる限り、有効成分以外の他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、または化粧品として許容される種々の添加剤であり得る。この例には、賦形剤、酸化防止剤、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、結合剤、緊張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。
【0023】
他の成分は、有効成分以外の機能性成分であってもよい。他の機能性成分に例としては、アミノ酸類(例えば、分岐鎖アミノ酸類、オルニチン)、不飽和脂肪酸類(例えば、EPA、DHA)、ビタミン類、微量金属類、グルコサミン、コンドロイチン類等が挙げられる。
【0024】
本発明のサーチュイン活性化剤が有効成分と有効成分以外の他の成分とからなる場合、有効成分(すなわち、大豆の水抽出物)の含有量は、当業者であれば、製造し易さ、用い易さ等の点から適宜設計でき、例えば、0.1~99.9%とすることができ、また1~95%とすることができ、また10~90%とすることができる。
【0025】
本発明のサーチュイン活性化剤が液体である場合、液体中の有効成分(すなわち、大豆の水抽出物)の濃度は、1μg/ml以上1000μg/ml以下の範囲内とすることができ、好ましくは、5μg/ml以上300μg/ml以下の範囲内とすることができ、より好ましくは、50μg/ml以上150μg/ml以下の範囲内とすることができる。
【0026】
〔サーチュイン活性化剤の製造方法〕
以下に、本発明にかかるサーチュイン活性化剤の製造方法について説明する。ここでは、本発明にかかるサーチュイン活性化剤に含まれる大豆の水抽出物(より具体的には、豆乳の粉末化物)を製造する方法を中心に説明する。図1には、豆乳の粉末化物の製造方法を工程順に示す。
【0027】
図1に示すように、豆乳の粉末化物の製造方法には、水洗工程(S10)から粉末化工程(S70)までの各工程が含まれる。水洗工程(S10)を行うにあたって、先ず、原料となる大豆を準備する。なお、使用する大豆の原産地や生育状況は特に限定されない。
【0028】
水洗工程(S10)では、準備した原料大豆を水で洗浄する。続いて、水洗した大豆を水に浸漬させる(S20)。ここでの浸漬時間は、一般的な豆乳を製造する際の浸漬時間(例えば、12時間以上25時間以内)を適用することができる。浸漬時間は、使用する水の温度によって適宜変更される。例えば、水温が18℃~20℃の範囲内である場合には、浸漬時間を15時間とすることが好ましい。
【0029】
その後、水に浸漬させた大豆を、粉砕工程(S30)で粉砕する。粉砕工程における加工条件は、一般的な豆乳を製造する際の加工条件を適用することができる。
【0030】
続いて、粉砕した大豆を、加熱工程(S40)において加熱処理する。加熱工程における温度および加熱時間などの加熱条件は、一般的な豆乳を製造する際の加熱条件を適用することができる。加熱工程は、例えば、100℃以上120℃以下の温度で、例えば、1分以上10分以下の間、大豆を蒸煮することによって行われる。
【0031】
加熱処理後の大豆は、圧搾工程(S50)において圧搾され、液体(すなわち、大豆の水抽出物)が得られる。圧搾工程における加工条件は、一般的な豆乳を製造する際の加工条件を適用することができる。
【0032】
得られた液体は、冷却工程(S60)において冷却される。これにより、豆乳が得られる。冷却工程における冷却温度は、例えば、2℃以上10℃以下の範囲内とすることができる。得られた豆乳は、このような温度範囲内に置かれることで、5日程度保存することができる。
【0033】
以上の工程によって得られる豆乳は、本発明にかかるサーチュイン活性化剤に含まれる大豆の水抽出物の一例である。すなわち、この豆乳を材料として使用し、従来公知の製剤の製造方法を用いてサーチュイン活性化剤を製造してもよい。
【0034】
また、得られた豆乳は、以下の方法によって粉末化してもよい。豆乳を粉末化することで、有効成分を安定化した状態で維持することができる。豆乳を粉末化する方法としては、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、加圧減圧乾燥法などを用いることができる。以下では、噴霧乾燥法(スプレードライ)によって、豆乳の粉末化物を製造する方法を説明する。
【0035】
得られた豆乳は、粉末化工程(S70)で粉末化される。粉末化工程(S70)では、先ず、スプレードライに適した状態となるように豆乳を調製する(S71)。一例では、豆乳の配合割合が70重量%以上95重量%以下であり、大豆粉末の配合割合が5重量%以上30重量%以下となるように、豆乳に大豆粉末を添加する。大豆粉末は、大豆を粉砕機で粉状にしたものである。この大豆粉末は、賦形剤として使用するものあり、スプレードライ時に液体状態の豆乳の粉末化を補助するという機能を有する。なお、大豆粉末の代わりに、デキストリンを賦形剤として使用してもよい。また、豆乳のみで粉末化が可能な場合には、大豆粉末およびデキストリンなどの賦形剤を添加しなくてもよい。
【0036】
その後、豆乳と大豆粉末との混合物に水を添加し、50℃以上70℃以下の温度範囲内に加熱しつつ、Brix固形分を10%以上15%以下の範囲内に調製する。そして、得られた調製液を殺菌処理する。殺菌処理は、調製液をタンク内で、例えば、75℃以上100℃以下の温度範囲内に所定時間保持することによって行うことができる。
【0037】
殺菌処理後の調製液は、例えば、55℃以上65℃以下の範囲内に冷却された後、ろ過される。
【0038】
そして、得られたろ液を、スプレードライによって粉末化する(S72)。スプレードライは、一般的なスプレードライヤーを用いて行うことができる。
【0039】
スプレードライによって得られる豆乳粉末は、その後、篩別されてもよい。これにより、粒径のそろった豆乳粉末を得ることができる。
【0040】
以上の工程によって、豆乳の粉末化物が得られる。その後、得られた豆乳の粉末化物および他の添加剤などを材料として使用し、従来公知の製剤の製造方法を用いてサーチュイン活性化剤を製造することができる。
【0041】
本発明のサーチュイン活性化剤の製造方法では、豆乳の粉末化物を製造する際に水が使用される一方、エタノールなどの有機溶媒は使用されない。したがって、製造工程において、有機溶媒を除去する工程を省略することができる。そのため、製造工程を簡略化することができるとともに、製造にかかる費用を削減することができる。
【0042】
〔サーチュイン活性化剤の用途〕
本発明にかかるサーチュイン活性化剤は、老化抑制機能を有するタンパク質であるサーチュインを活性化させる機能を有する。そのため、本発明にかかるサーチュイン活性化剤は、食品、化粧品、医薬品、化成品などの有効成分として利用することができる。
【0043】
本発明のサーチュイン活性化剤は、後述の実施例3に示されるように、経口摂取した場合にもサーチュイン活性化作用を発揮する。また、本発明のサーチュイン活性化剤は食経験のある大豆の水抽出物(すなわち、豆乳)を用いることができるため、安全に経口摂取することができる。また、豆乳は、古くから、豆腐、湯葉など食品の材料、および飲料などとして人々に親しまれている。そこで、本発明のサーチュイン活性化剤は、食品の有効成分として利用することが好ましい。本発明のサーチュイン活性化剤を含む食品も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
本発明の食品には、サーチュイン活性化剤の他に、食品(例えば、機能性食品)に含有させることが可能な周知の添加物を含有してもよい。このような添加物としては、水、糖類、糖アルコール類、澱粉及び加工澱粉、食物繊維、牛乳、加工乳、果汁、野菜汁、果実・野菜及びその加工品、タンパク質、ペプチド、アミノ酸類、動物及び植物生薬エキス、天然由来高分子(コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチンなど)、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、保存料、着色料、香料などが挙げられる。また、食品の具体例として、豆乳、豆腐、おから、湯葉などの大豆製品が挙げられる。しかし、食品の形態は特に限定されない。
【0045】
本発明の食品が液体である場合、液体中の有効成分(すなわち、大豆の水抽出物)の濃度は、1μg/ml以上1000μg/ml以下の範囲内とすることができ、好ましくは、5μg/ml以上300μg/ml以下の範囲内とすることができる。
【0046】
また、本発明のサーチュイン活性化剤は、後述の実施例2に示されるように、ヒトの細胞に添加した場合に、細胞内のサーチュイン遺伝子の発現を活性化させることができる。そのため、本発明のサーチュイン活性化剤をヒトの肌などに塗布した場合に、肌の細胞においてサーチュイン活性化作用を発揮することが期待できる。そこで、本発明のサーチュイン活性化剤は、化粧品の有効成分として利用することが好ましい。本発明のサーチュイン活性化剤を含む化粧品も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
本発明の化粧品の形態は特に限定されるものではなく、例えば、ローション、乳液、クリーム、湿布、パック、石鹸などの形態で使用することができる。本発明の化粧品には、サーチュイン活性化剤の他に、化粧品に含有させることが可能な周知の添加物を含有してもよい。このような添加物としては、例えば、油脂、湿潤剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、植物エキス、香料、水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。これらの添加物を、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。
【0048】
本発明の化粧品が液体である場合、液体中の有効成分(すなわち、大豆の水抽出物)の濃度は、1μg/ml以上1000μg/ml以下の範囲内とすることができ、好ましくは、5μg/ml以上300μg/ml以下の範囲内とすることができ、より好ましくは、50μg/ml以上150μg/ml以下の範囲内とすることができる。
【0049】
なお、本発明のサーチュイン活性化剤の用途は、食品および化粧品への利用に限定されない。本発明のサーチュイン活性化剤に含有される大豆の水抽出物は、食品および化粧品以外にも、医薬品、化成品などの有効成分として利用することができる。
【0050】
本発明のサーチュイン活性化剤を医薬品へ利用する場合には、サーチュイン活性化剤の他に、医薬品に含有させることが可能な周知の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶剤、油脂、増粘剤、界面活性剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、粘稠剤などが挙げられる。
【0051】
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定はされない。
【0052】
〔実施例1〕
(豆乳粉末の調製)
実施例1では、本発明にかかるサーチュイン活性化剤に含まれる大豆の水抽出物の一例である豆乳粉末を、上述の製造方法にしたがって図1に示す手順で調製した。
【0053】
具体的には、水洗工程(S10)において水洗した大豆を浸漬工程(S20)では、約15時間水に浸漬させた。その後、水を吸収した大豆を、粉砕工程(S30)で粉砕した。加熱工程(S40)では、114℃で4分間、大豆を蒸煮した。加熱工程(S40)後の圧搾工程(S50)で得られた液体(大豆の水抽出物)を、冷却工程(S60)で冷却し、豆乳を得た。
【0054】
得られた豆乳は、その後の粉末化工程(S70)で粉末化された。粉末化工程(S70)では、先ず、スプレードライに適した状態となるように豆乳を調製した(S71)。具体的には、豆乳88.89重量%および大豆粉末11.11重量%の配合割合で、豆乳に大豆粉末を添加した。大豆粉末は、大豆を粉砕機で粉状にしたものである。なお、大豆粉末は、水に不溶であるため、実施例2および実施例3において豆乳粉末のサンプルを細胞に添加した場合に、大豆粉末の成分はサーチュイン活性化には寄与しないと考えられる。
【0055】
その後、豆乳と大豆粉末との混合物に水を添加し、60℃に加熱した後、Brix12%に調製した。その後、調製液を80℃まで加熱し、殺菌処理した。調製液が80℃に到達したら加熱を停止し、自然冷却で60℃まで冷却した。
【0056】
その後、18メッシュのストレーナーを用いて調製液をろ過した。そして、得られたろ液を、スプレードライによって粉末化した(S72)。スプレードライは、スプレードライヤーを用いて行った。装置の入り口温度は、135~145℃とし、出口温度は、70~90℃とした。その後、目開きサイズが14メッシュの篩を用いて、得られた豆乳粉末を篩別した。
【0057】
以上の方法で調製された豆乳粉末を、以下に説明するサーチュイン活性化作用の確認試験に使用した。
【0058】
〔実施例2〕
(大豆の水抽出物のサーチュイン活性化作用の確認試験:直接添加実験)
実施例2では、実施例1で得られた豆乳粉末がサーチュイン活性化作用を有することを確認した。具体的には、豆乳粉末を含む液体サンプルを、サーチュイン遺伝子(SIRT1またはSIRT3)を組み込んだHaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞)に添加し、サーチュイン遺伝子の発現が活性化されることを確認した。
【0059】
(1)hSIRT1p-EGFPおよびhSIRT3p-EGFPベクターの作製
はじめにTIG-1細胞より抽出したヒトゲノムDNAを鋳型として、hSIRT1(human SIRT1)プロモーター領域(-1593~-1)及びhSIRT3(human SIRT3)プロモーター領域(-651~-1)をPCRにより取得した。hSIRT1プロモーター領域を、配列表の配列番号1として示す。hSIRT3プロモーター領域を、配列表の配列番号4として示す。
【0060】
プライマーとして、報告されているhSIRT1およびhSIRT3のゲノム配列情報をもとにして、各プライマーの末端にAseIとNheIの認識配列を付加したものを合成した。各プライマーの配列を以下に示す。
【0061】
hSIRT1 forwardプライマー
AATTATTAATACTTCAGGTGATCTGTCCGC(配列番号2)
hSIRT1 reverseプライマー
AATTGCTAGCCTTCCAACTGCCTCTCTGGC(配列番号3)
hSIRT3 forwardプライマー
ATTAATGCTCACTCACTTCCGGCGCCGA(配列番号5)
hSIRT3 reverseプライマー
GCTAGCGTTCCGCGCAGTCCAAGGAG(配列番号6)
【0062】
PCRの反応条件は、94℃、2分間の後、98℃、10秒間:68℃、1分間を40サイクル行った。また、DNAポリメラーゼにはKOD FX(東洋紡製)を使用し、プライマーの合成はシグマ社に委託した。
【0063】
次に、PCRにより得られたhSIRT1およびhSIRT3プロモーター断片をpGEM-T Easy Vector(Promega製)へTAクローニングした。このTAクローニングしたベクターを用いてシークエンシングを行い、配列の確認を行った。シークエンシング後、pGEM-T Easy Vectorにインサートとして組み込まれているhSIRT1およびhSIRT3プロモーター断片をAseIとNheIの制限酵素処理により切り出すとともに、同じAseIとNheIの制限酵素処理によりCMVプロモーターを除去したpEGFP-C3 Vector(Takara製)を準備した。最後にこれらをライゲーションさせ、ヒトゲノムからクローニングしたヒトSIRT1遺伝子およびSIRT3遺伝子のプロモーター領域を、pEGFP-C3 Vector中のCMVプロモーターと置換したレポーターベクター(hSIRT1p-EGFPベクターおよびhSIRT3p-EGFPベクター)が完成した。
【0064】
得られたhSIRT1プロモーター配列は、配列番号1に示す通りである。また、得られたhSIRT3プロモーター配列は、配列番号4に示す通りである。
【0065】
(2)トランスフェクションと安定発現株の作製
トランスフェクションには、HilyMax(同仁化学製)を使用し、それに準ずるプロトコルで行った。トランスフェクション前日は、HaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞)を、6×10で5ml dishに播種し、10%FBSを含むDMEM培地(ニッスイ製)で37℃、5%CO条件下で培養した。
【0066】
トランスフェクション当日は、まず1.5ml tubeにおいてDMEM培地300μl、hSIRT1p-EGFPベクターまたはhSIRT3p-EGFPベクター15μg、HilyMax70μlを混合し、室温で20分間インキュベートした。これを前日に播種し培養しておいたHaCaT細胞に全量添加し、48時間培養した。
【0067】
hSIRT1p-EGFPベクターおよびhSIRT3p-EGFPベクターには、Karn/Neorの薬剤耐性遺伝子が含まれているため、トランスフェクションから48時間の培養後、培養した細胞を、薬剤G418を用いて薬剤選択にかけた。G418は終濃度が800μg/mlになるように培地に添加し、継代および3日毎の培地交換を繰り返しながら、その都度G418を同濃度で添加し、コントロールのHaCaT細胞が完全に死滅後も2週間以上薬剤選択にかけた。
【0068】
ベクター遺伝子が導入され安定発現株が樹立できているかの確認は、フローサイトメトリーを用いてGFPの蛍光を測定することで行った。5ml dishでサブコンになっているHaCaT(hSIRT1p-EGFP)およびHaCaT(hSIRT3p-EGFP)細胞を、10%FBS/DMEM2ml中に懸濁し、この細胞懸濁液をフローサイトメーターに供し測定を行った。測定した全細胞集団に対して、細胞内の大きさを示す前方拡散FS(Forward Scatter)の値が大きく、かつ細胞内の複雑さを示す側方拡散SS(Side Scatter)の値が小さい細胞集団を生細胞とみなし、この細胞の部分集団についてGFP蛍光強度をヒストグラム化し、コントロールのHaCaT細胞と比較して遺伝子導入細胞においてGFP蛍光のピークが高強度側にずれていることを確認した。
【0069】
(3)HaCaT細胞へのサンプル添加およびGFP蛍光強度の測定
上記(2)で得られたHaCaT(hSIRT1p-EGFP)およびHaCaT(hSIRT3p-EGFP)細胞を、6.0×10cell/wellになるように96well plateに播種し、24時間後に各サンプルを添加した。各サンプルを添加後、各HaCaT細胞を37℃で48時間培養した。
【0070】
添加した各サンプルは、以下の通りである。
(A)豆乳粉末10μg/ml(添加最終濃度)
(B)豆乳粉末100μg/ml(添加最終濃度)
(C)水
(D)DMSO
(E)酵母10μg/ml(添加最終濃度)
(F)酵母100μg/ml(添加最終濃度)
(G)レスベラトロール10μM(添加最終濃度)
(H)ケンペロール(Kaempferol)10μM(添加最終濃度)
【0071】
上記の各サンプルのうち、(G)および(H)については、水に対して難溶性であるためDMSOで規定濃度に希釈した。それ以外の各サンプルについては、水で規定濃度に希釈した。
【0072】
上記の各サンプルのうち、(A)および(B)は、本発明における大豆の水抽出物に相当する。上記の各サンプルのうち、(C)および(D)は、各試験におけるコントロールに相当する。上記の各サンプルのうち、(E)および(F)は、比較例に相当する。上記の各サンプルのうち、(G)は、SIRT1の活性化確認試験におけるポジティブコントロールに相当する。上記の各サンプルのうち、(H)は、SIRT3の活性化確認試験におけるポジティブコントロールに相当する。
【0073】
(E)および(F)の酵母は、株式会社豆腐の盛田屋で採取した酵母菌を使用して、香栄興業株式会社において製造した酵母エキスを使用した。この酵母エキスは、シャクナゲ由来酵母(Saccharomyces mikatae)の乾燥粉体から、水及び濃グリセリンの混液を用いて抽出して得られたものである。
【0074】
培養後の各HaCaT細胞について、インセルアナライザー(IN Cell Analyzer 2200)を用いて、細胞内のGFP蛍光強度を測定した。HaCaT(hSIRT1p-EGFP)細胞での結果を、図2に示す。HaCaT(hSIRT3p-EGFP)細胞での結果を、図3に示す。なお、各サンプルについて、同じ試験を2回行った。図2および図3では、1回目の試験および2回目の試験の結果をそれぞれ示す。
【0075】
各図に示すグラフにおける「*」「**」「***」の符号は、有意差ありを意味する。具体的には、「*」印は危険率5%未満で有意差あり、「**」印は危険率1%未満で有意差あり、「***」印は危険率0.1%未満で有意差ありを意味する。なお、有意差の検定において、DMSOで希釈した(G)および(H)については、(D)のDMSOを比較対象とし、水で希釈した(A)(B)(E)および(F)については、(C)の水を比較対象とした。
【0076】
図2に示すように、(B)の豆乳粉末は、(C)のコントロールと比較して、SIRT1の発現を有意に活性化させる作用を有していることが確認された。また、(A)の豆乳粉末についても、(C)のコントロールと比較して、SIRT1の発現を活性化させる作用をある程度有していることが確認された。
【0077】
また、(B)の豆乳粉末は、比較例である(E)および(F)の酵母と比較しても、SIRT1の発現に関して高い活性作用が示されることが確認された。
【0078】
なお、(G)のレスベラトロールでは、(A)および(B)の豆乳粉末と比較して、SIRT1の発現に関して高い活性作用が示された。しかし、(G)のレスベラトロールには、水難溶性であることに加え、安定性が極めて悪いという製剤処方上の問題がある。これに対して、(A)および(B)の豆乳粉末は、水を使用して大豆から抽出されたものであるため、製剤、食品、および化粧品などへの加工が容易であるという利点がある。
【0079】
また、図3に示すように、(B)の豆乳粉末は、(C)のコントロールと比較して、SIRT3の発現を有意に活性化させる作用を有していることが確認された。
【0080】
また、(B)の豆乳粉末は、比較例である(F)の酵母と比較しても、SIRT3の発現に関して高い活性作用が示されることが確認された。
【0081】
なお、(H)のケンペロールでは、(A)および(B)の豆乳粉末と比較して、SIRT3の発現に関して高い活性作用が示された。しかし、(H)のケンペロールには、水難溶性であることに加え、安定性が極めて悪いという製剤処方上の問題がある。これに対して、(A)および(B)の豆乳粉末は、水を使用して大豆から抽出されたものであるため、製剤、食品、および化粧品などへの加工が容易であるという利点がある。
【0082】
以上より、実施例1で得られた豆乳粉末は、HaCaT細胞に直接添加した場合に、細胞内のサーチュイン遺伝子の発現を活性化させることができることが確認された。そのため、この豆乳粉末を含む組成物をヒトの肌などに直接添加した場合に、肌細胞においてサーチュイン活性化作用を発揮することが期待できる。
【0083】
〔実施例3〕
(大豆の水抽出物のサーチュイン活性化作用の確認試験:間接添加実験)
実施例3では、実施例1で得られた豆乳粉末がサーチュイン活性化作用を有することを確認した。具体的には、豆乳粉末を含む液体サンプルをCaCo-2細胞(ヒト結腸癌由来細胞)に添加し、CaCo-2細胞がサンプルを吸収後に放出する分泌物を得た後、当該分泌物を、サーチュイン遺伝子(SIRT1またはSIRT3)を組み込んだHaCaT細胞に添加し、サーチュイン遺伝子の発現が活性化されることを確認した。
【0084】
(1)hSIRT1p-EGFPおよびhSIRT3p-EGFPベクターの作製
hSIRT1p-EGFPおよびhSIRT3p-EGFPベクターは、上述の直接添加実験の(1)と同様の方法で作製した。
【0085】
(2)トランスフェクションと安定発現株の作製
上述の直接添加実験の(2)と同様の方法で、SIRT1プロモーターの下流にGFPを組み込んだHaCaT細胞(HaCaT(hSIRT1p-EGFP))、およびSIRT3プロモーターの下流にGFPを組み込んだHaCaT細胞(HaCaT(hSIRT3p-EGFP))を作製した。
【0086】
(3)CaCo-2細胞へのサンプル添加
CaCo-2細胞(ヒト結腸癌由来細胞)(ATCCより供与)に、滅菌水で調製した各サンプルを添加した。各サンプルを添加後、各CaCo-2細胞を37℃で24時間培養した。そして、培養後の細胞の上清サンプルを取得した。この上清サンプルには、CaCo-2細胞からの分泌物が含まれている。
【0087】
添加した各サンプルは、以下の通りである。
(A)豆乳粉末10μg/ml(添加最終濃度)
(B)豆乳粉末100μg/ml(添加最終濃度)
(C)水
(D)DMSO
(E)レスベラトロール10μM(添加最終濃度)
(F)ケンペロール(Kaempferol)10μM(添加最終濃度)
【0088】
上記の各サンプルのうち、(E)および(F)については、DMSOで規定濃度に希釈した。それ以外の各サンプルについては、水で規定濃度に希釈した。
【0089】
上記の各サンプルのうち、(A)および(B)は、本発明における大豆の水抽出物に相当する。上記の各サンプルのうち、(C)および(D)は、各試験におけるコントロールに相当する。上記の各サンプルのうち、(E)は、SIRT1の活性化確認試験におけるポジティブコントロールに相当する。上記の各サンプルのうち、(F)は、SIRT3の活性化確認試験におけるポジティブコントロールに相当する。
【0090】
(4)HaCaT細胞への各上清サンプルの添加およびGFP蛍光強度の測定
上記(3)で得られたHaCaT(hSIRT1p-EGFP)およびHaCaT(hSIRT3p-EGFP)細胞を、6.0×10cell/wellになるように96well plateに播種し、24時間後に各上清サンプルを添加した。各上清サンプルを添加後、各HaCaT細胞を37℃で48時間培養した。
【0091】
培養後の各HaCaT細胞について、インセルアナライザー(IN Cell Analyzer 2200)を用いて、細胞数および細胞内のGFP蛍光強度を測定した。HaCaT(hSIRT1p-EGFP)細胞での結果を、図4に示す。HaCaT(hSIRT3p-EGFP)細胞での結果を、図5に示す。なお、各サンプルについて、同じ試験を2回行った。図4および図5では、1回目の試験および2回目の試験の結果をそれぞれ示す。
【0092】
各図に示すグラフにおける「*」「**」「***」の符号は、有意差ありを意味する。具体的には、「*」印は危険率5%未満で有意差あり、「**」印は危険率1%未満で有意差あり、「***」印は危険率0.1%未満で有意差ありを意味する。なお、有意差の検定において、DMSOで希釈した(E)および(F)については、(D)のDMSOを比較対象とし、水で希釈した(A)および(B)については、(C)の水を比較対象とした。
【0093】
図4に示すように、(A)および(B)の豆乳粉末は、(C)のコントロールと比較して、SIRT1の発現を有意に活性化させる作用を有していることが確認された。
【0094】
また、(A)および(B)の豆乳粉末は、SIRT1の発現に関して(E)のレスベラトロールと比較して遜色ない程度に高い活性作用が示されることが確認された。なお、(E)のレスベラトロールには、水難溶性であることに加え、安定性が極めて悪いという製剤処方上の問題がある。これに対して、(A)および(B)の豆乳粉末は、水を使用して大豆から抽出されたものであるため、製剤、食品、および化粧品などへの加工が容易であるという利点がある。
【0095】
また、図5に示すように、(A)および(B)の豆乳粉末は、(C)のコントロールと比較して、SIRT3の発現を有意に活性化させる作用を有していることが確認された。
【0096】
また、(A)および(B)の豆乳粉末は、SIRT3の発現に関して(F)のケンペロールと比較して遜色ない程度に高い活性作用が示されることが確認された。なお、(F)のケンペロールには、水難溶性であることに加え、安定性が極めて悪いという製剤処方上の問題がある。これに対して、(A)および(B)の豆乳粉末は、水を使用して大豆から抽出されたものであるため、製剤、食品、および化粧品などへの加工が容易であるという利点がある。
【0097】
以上より、実施例1で得られた豆乳粉末をCaCo-2細胞に添加して得られる分泌物をHaCaTに添加した場合に、HaCaT細胞内のサーチュイン遺伝子の発現を活性化させることができることが確認された。CaCo-2細胞の分泌物は、豆乳粉末を含む液体サンプルを経口摂取した場合に、腸管から血中に取り込まれる成分の同等物と考えることができる。そのため、この豆乳粉末を含む組成物を経口摂取した場合に、体内においてサーチュイン活性化作用を発揮することが期待できる。
【0098】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した各実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022150176000001.app