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特開2022-150177アクチュエータおよびそれを備えるポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150177
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびそれを備えるポンプ
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F03G7/06 B
F03G7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052664
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 信宏
(72)【発明者】
【氏名】本間 俊輝
(57)【要約】
【課題】故障し難いアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、形状記憶合金線SMA1~SMA7と、形状記憶合金線SMA1~SMA7に、順次通電を行う駆動ユニットと、駆動軸MLとを備える。駆動ユニットによる通電によって、形状記憶合金線SMA1~SMA7が順次変形され、駆動軸MLが回転する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の形状記憶合金線と、
前記複数の形状記憶合金線に、順次通電を行う駆動ユニットと、
回転板と、
を備え、
前記駆動ユニットによる通電によって、前記複数の形状記憶合金線を順次変形させ、前記回転板を回転させる、アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータは、前記複数の形状記憶合金線のそれぞれの一方の端部が、互いに異なる位置に結合された第1円盤と、前記複数の形状記憶合金線のそれぞれの他方の端部が結合された第2円盤と、前記第1円盤と前記回転板とを結合するシャフトとを備え、
前記複数の形状記憶合金線が、順次変形することにより、前記第2円盤の主面に対する前記第1円盤の主面の傾きを変化させ、前記回転板を回転させる、アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータは、前記複数の形状記憶合金線のそれぞれの一方の端部が、中心点から離れた所定の位置に結合された円盤を備え、
前記複数の形状記憶合金線は、前記所定の位置から放射状に延在し、
前記複数の形状記憶合金線を、順次変形させることにより、前記円盤を回転させ、前記回転板を回転させる、アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載のアクチュエータにおいて、
前記複数の形状記憶合金線のそれぞれは、前記円盤の主面に対して平行に延在する、アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記回転板の回転位置を検出するセンサを備える、アクチュエータ。
【請求項6】
アクチュエータを備えるポンプであって、
前記アクチュエータは、
複数の形状記憶合金線と、
前記複数の形状記憶合金線に、順次通電を行う駆動ユニットと、
回転板と、
を備え、
前記駆動ユニットによる通電によって、前記複数の形状記憶合金線が順次変形し、前記回転板を回転させる、ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータおよびそれを備えるポンプに関し、例えば、薬剤を搬送するポンプおよびそれに用いられるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を搬送するポンプとして、例えばインシュリンポンプ等がある。インシュリンポンプは、例えば糖尿病の患者が携帯し、薬剤を適時注入することが可能となるように、小型であることが望ましい。そのため、インシュリンポンプが備えるアクチュエータも小型化することが望まれている。
【0003】
アクチュエータの小型化を図るために、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)線を用いたアクチュエータおよびそれを備えるポンプが、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-206331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、1つの形状記憶合金線を用いて、ポンプを駆動する技術が記載されている。しかしながら、形状記憶合金線が例えば断線した場合、ポンプを使用することができなくなると言う課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載されている一実施の形態に係るアクチュエータを、簡単に述べると、次の通りである。
【0007】
すなわち、アクチュエータは、複数の形状記憶合金線と、複数の形状記憶合金線に、順次通電を行う駆動ユニットと、回転板とを備える。ここで、駆動ユニットによる通電によって、複数の形状記憶合金線が順次変形され、回転板が回転する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、故障し難いアクチュエータおよびそれを備えたポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)~(C)は、実施の形態1に係るアクチュエータを説明するための図である。
図2】実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの構成を示す側面図である。
図3】実施の形態1に係る形状記憶合金線の配置を示す図である。
図4】実施の形態1に係る駆動ユニットの構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態1に係る駆動ユニットの構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの動作を示すフローチャート図である。
図7】実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの動作を示すフローチャート図である。
図8】実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの動作を示すフローチャート図である。
図9】実施の形態2に係るインシュリンポンプの構成を示す側面図である。
図10】実施の形態2に係るアクチュエータの構成を示す部分的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0012】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
(実施の形態1)
<アクチュエータの基本的な構成および動作>
実施の形態1を説明する前に、実施の形態に係るアクチュエータの基本的な構成および動作を、図面を用いて説明する。
【0014】
図1(A)~(C)は、実施の形態1に係るアクチュエータを説明するための図である。図1(A)~(C)において、1はアクチュエータを示している。アクチュエータ1は、2つの円盤RU、RDと、変化していないときに互いに同じ長さの7つの形状記憶合金線SMA1~SMA7と、シャフトSFTとを備えている。形状記憶合金線SMA1~SMA7のそれぞれの一方の端部は、上側の円盤(上側円盤または第1円盤)RUの主面RU_Fの互いに異なる位置に結合され、それぞれの他方の端部は、下側の円盤(下側円盤または第2円盤)RDの主面RD_Fの互いに異なる位置に結合されている。すなわち、それぞれの主面RU_F、RD_Fが対向するように配置された円盤RUとRDとの間が、複数の形状記憶合金線SMA1~SMA7によって結合されている。見方を変えると、上下の円盤RU、RDが、形状記憶合金線SMA1~SMA7によって吊り下げられている。
【0015】
シャフトSFTは、上側円盤RUの主面RU_Fの中心点CTに固定されている。特に制限されないが、シャフトSFTは、上側円盤RUの主面RU_Fに対して、垂直(90度)となるように固定されている。シャフトSFTの一方の端部は、上側円盤RUから突出し、他方の端部は、下側円盤RDの方向に延在し、下側円盤RDの主面RD_Fを貫通している。
【0016】
形状記憶合金線SMA1~SMA7のそれぞれは、図示しない駆動ユニットによって通電することにより発生する熱によって、その線方向の長さが縮小するように(短くなるように)変形する。形状記憶合金線SMA1~SMA7が、通電によって縮小しても、下側円盤RDは変化しないように、固定されている。これに対して、上側円盤RUは、形状記憶合金線SMA1~SMA7が、通電によって縮小することにより、変化することが可能なように設置されている。すなわち、形状記憶合金線SMA1~SMA7が縮小しても、下側円盤RDの主面RD_Fの位置は、変化しないが、上側円盤RUの主面RU_Fは、下側円盤RDの主面RD_Fに対して、傾くように変化する。
【0017】
図1(A)は、形状記憶合金線SMA1~SMA7のいずれにも、通電していない状態を示している。通電していないため、この状態では、形状記憶合金線SMA1~SMA7の長さは等しく、上側円盤RUの主面RU_Fと下側円盤RDの主面RD_Fは、平行となっている。この状態の後、駆動ユニットによって、形状記憶合金線SMA1~SMA7に対して、順次通電が行われる。
【0018】
図1(B)は、破線で示した形状記憶合金線SMA1、SMA2に対して通電を行い、残りの形状記憶合金線には通電を行っていない状態が示されている。通電により、形状記憶合金線SMA1、SMA2が縮小するため、上側円盤RUの主面RU_Fにおいて、形状記憶合金線SMA1、SMA2が結合された主面RU_Fの部分が、下側円盤RDの主面RD_Fに近接するように変化する。図1(B)で説明すると、下側円盤RD_Fの主面RD_Fに対して、上側円盤RUの主面RU_Fが、左側に傾くようになる。その結果、上側円盤RUに固定されたシャフトSFTは、図1(B)に示すように、中心位置から右側に移動することになる。
【0019】
図1(C)では、破線の形状記憶合金線SMA6、SMA7に対して通電を行い、残りの形状記憶合金線には通電を行っていない状態が示されている。通電により、形状記憶合金線SMA6、SMA7が縮小するため、上側円盤RUの主面RU_Fにおいて、形状記憶合金線SMA6、SMA7が結合された主面RU_Fの部分が、下側円盤RDの主面RD_Fに近接するように変化する。図1(C)で説明すると、下側円盤RD_Fの主面RD_Fに対して、上側円盤RUの主面RU_Fが、右側に傾くようになる。その結果、上側円盤RUに固定されたシャフトSFTは、図1(B)に示した右側の位置から、図1(C)に示すように、左側に移動することになる。
【0020】
シャフトSFTは、ポンプに結合される。図1では、図1(B)および(C)に示されているように、シャフトSFTは、スクリューポンプSCPに結合されている。スクリューポンプSCPは、駆動軸MLと従動軸SLとを備え、駆動軸MLが回転することにより、駆動軸MLと従動軸との間の空間をカートリッジFCTに充填されている液体が送出されるように搬送される。
【0021】
駆動軸MLは、上面から見たとき、円形をしている。駆動軸MLの主面RT_Fにおいて、その中心点CTから離れた位置RT_CにシャフトSFTが結合されている。これにより、シャフトSFTが、図1(B)の状態へ変化し、さらに図1(C)の状態へ変化すると、駆動軸MLは、図1(B)および(C)において、符号RTで示す方向に回転することになる。言い換えるならば、上側円盤RUの傾き部分が、順次移動することにより、駆動軸MLが回転することになる。すなわち、形状記憶合金線SMA1~SMA7に順次通電を行うことにより、スクリューポンプSCPから、液体を搬送することが可能である。
【0022】
複数の形状記憶合金線を用いているため、一部、例えば1つの形状記憶合金線が断線しても、ポンプを駆動することが可能である。また、ポンプを精密に制御することが可能となり、ポンプからの搬送量を微調整することが可能である。
【0023】
図1では、2つの形状記憶合金線(例えばSMA1とSMA2)毎で、順次通電する例を示したが、これに限定されない。すなわち、1つの形状記憶合金線毎であって、隣接して配置されたものに対して順次通電しても良いし、3つ以上の形状記憶合金線毎であって、隣接して配置されたものに対して順次通電するようにしてもよい。
【0024】
<アクチュエータおよびポンプの具体例>
次に、実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの具体的な一例を、図面を用いて説明する。
【0025】
図2は、実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの構成を示す側面図である。ここでは、ポンプとして、薬剤を搬送するインシュリンポンプを例として説明する。
【0026】
図2において、10はインシュリンポンプを示している。インシュリンポンプ10は、薬剤を搬送(注入)するための注射器11と、アクチュエータ1と、変換器と、後で図4および図5を用いて説明する駆動ユニットとを備えている。
【0027】
注射器11は、薬剤が充填されるシリンダー6と、シリンダー6内を移動するピストン5とを備えている。
【0028】
変換器は、回転を、紙面において左右方向の移動に変換する変換器である。この変換器は、ねじが形成された回転軸3と、回転軸3のねじと噛み合い、回転軸3が回転することにより、図2において、矢印2で示す左右の方向に移動する移動板4とを備えている。移動板4に注射器11のピストン5が結合されており、移動板4が、矢印2の右方向に移動することにより、シリンダー6に充填された薬剤を、注射器11から搬送するようにピストン5を駆動する。
【0029】
アクチュエータ1は、図1に示したように、第1円盤RUと、第2円盤RDと、第1円盤RUと第2円盤RDとの間に、並列的に接続された複数の形状記憶合金線と、シャフトSFTとを備えている。図1では、シャフトSFTにスクリューポンプSCPの駆動軸MLが結合されていたが、図2では、駆動軸MLの代わりに、回転板MRが結合されている。回転板MRは、駆動軸MLと同様に、その主面(第1主面)MR_F1において、中心点CTから離れた位置MR_CにシャフトSFTが結合されている。変換器の回転軸3は、第2円盤RDを貫通して、回転板MRの主面(第2主面)に結合している。
【0030】
図1で説明したように、形状記憶合金線に順次通電を行うことにより、駆動軸ML(図1)に相当する回転板MRが、例えばRTで示す方向に回転する。これにより、回転板MRに結合された回転軸3も矢印RT_Sで示す方向に回転する。回転軸3の回転により、移動板4が、ピストン5をシリンダー6内で移動させる。
【0031】
また、特に制限されないが、アクチュエータ1は、2つのセンサPI1、PI2を備えている。センサPI1は、回転板MRのホームポジションを検知するのに用いられ、センサPI2は、シリンダー6におけるピストン5のホームポジションを検知するのに用いられる。
【0032】
図2には、6つの形状記憶合金線SMA1~SMA6が示されているが、具体的には、8つの形状記憶合金線SMA1~SMA8によって、第1円盤RUと第2円盤RDとの間が結合されている。図3は、実施の形態1に係る形状記憶合金線の配置を示す図である。図3に示すように、形状記憶合金線SMA1~SMA8は、第1円盤RUの主面RU_Fにおいて、互いに離れた位置に結合されている。すなわち、形状記憶合金線SMA1~SMA8は、主面RU_Fにおいて、等間隔で、分散して結合されている。なお、図3において、CTは、第1円盤RUの中心点を示している。
【0033】
<駆動ユニットの構成>
図4および図5は、実施の形態1に係る駆動ユニットの構成を示すブロック図である。図4および図5において、20は、駆動ユニットを示している。実施の形態1に係る駆動ユニット20は、形状記憶合金線SMA1~SMA8に対応する駆動・検知ユニット20_1とセンサPI1、PI2に対応する検知ユニット20_2とを備えている。駆動・検知ユニット20_1は、形状記憶合金線SMA1~SMA8に対する通電を制御するとともに、形状記憶合金線SMA1~SMA8の断線を検知するものであり、一例が図4に示されている。一方、検知ユニット20_2は、図2に示したセンサPI1、PI2によって、ホームポジションを検知するものであり、一例が図5に示されている。
【0034】
先ず、図4を用いて、駆動・検知ユニット20_1の構成を説明する。図4において、21は、プログラムに従って処理を実行するマイクロプロセッサ(以下、プロセッサ)を示し、24_1~24_8は、スイッチであるNチャンネル型電界効果トランジスタ(以下、FET)を示し、25は、アンプを示し、26は、抵抗を示している。
【0035】
プロセッサ21は、複数の回路ブロックを備えているが、図4には、以下の説明で必要な回路ブロックのみが描かれている。すなわち、実施の形態1に係るプロセッサ21は、アナログ/デジタル変換器(以下、ADC)22と、形状記憶合金線SMA1~SMA8に対応した出力ポートと、センサPI1、PI2に対応した入力ポート23_PIとを備えている。図4では、図面が複雑になるのを避けるために、形状記憶合金線SMA1~SMA8に対応した出力ポートは、一点鎖線で示したプロセッサ21の外側に、符号23_P1~23_P8として示されている。また、センサPI1、PI2に対応した入力ポートは、後で説明する図5に、符号23_PIとして示されている。入力ポート23_PIについては、図5の説明において述べるので、ここでは説明しない。
【0036】
プロセッサ21は、プログラムに従って、ADC22、出力ポート23_P1~23_P8および入力ポート23_PIを制御する。この制御については、後で図6図8を用いて説明する。なお、プロセッサ21は、出力ポート23_P1~23_P8および入力ポート23_PIの代わりに、プログラムによって入力ポートおよび出力ポートとして設定することが可能な入出力ポートを備えていてもよい。また、プロセッサ21の代わりに、ハードウェアで、ADC22、出力ポート23_P1~23_P8および入力ポート23_PIを制御する制御回路を構成するようにしてもよい。言い換えると、プロセッサ21は、ADC22、出力ポート23_P1~23_P8および入力ポート23_PIを制御する制御回路の一例である。
【0037】
FET24_1~24_8の一方の端子(ドレイン端子)は、共通の抵抗26を介して、電源電圧Vdに接続され、FET24_1~24_8の他方の端子(ソース端子)は、対応する形状記憶合金線SMA1~SMA8を介して、接地電圧Vsに接続されている。また、FET24_1~24_8の制御端子(ゲート端子)は、プロセッサ21の対応する出力ポート23_P1~23_P8に接続されている。抵抗26は、シャント抵抗として機能し、抵抗26を流れる電流により発生する電圧が、アンプ25によって増幅され、プロセッサ21のADC22に供給される。
【0038】
以上の構成により、プロセッサ21が、例えば出力ポート23_P1に対してハイレベルのパルス信号の出力を指示することにより、対応するFET24_1がオン状態となり、抵抗26、FET24_1を介して、形状記憶合金線SMA1に電源電圧Vdが給電されることになる。この電源電圧Vdの通電により、形状記憶合金線SMA1は発熱し、形状記憶合金線SMA1の長さが縮小することになる。これに対して、プロセッサ21が、出力ポート23_P1に対してロウレベルの出力を指示することにより、対応するFET24_1はオフ状態となる。FET24_1がオフ状態となることにより、形状記憶合金線SMA1に対して給電は行われず、形状記憶合金線SMA1は、外力に従って、引き伸ばされることが可能となる。
【0039】
FET24_1がオン状態となり、通電が行われているとき、電源電圧Vdと接地電圧Vsとの間を通電電流が流れることになる。このとき、形状記憶合金線SMA1が、例えば断線していると、通電電流はほとんど流れない。通電電流が流れるか否かによって、抵抗26に発生する電圧の値が変わることになる。アンプ25によって、この電圧が増幅され、増幅された電圧は、ADC22によって、は、デジタル信号に変換される。プロセッサ21は、このデジタル信号によって表される電圧の値が、所定の電圧を超えているか否かを判定することにより、形状記憶合金線SMA1に断線が発生しているか否かを判定することが可能となる。
【0040】
ここでは、形状記憶合金線SMA1を例にして説明したが、形状記憶合金線SMA2~SMA8についても、同様である。
【0041】
次に、検知ユニット20_2を、図5を用いて説明する。検知ブロック20_2は、センサPI1、PI2(図2)のそれぞれに対応した2つの回路ブロックを備えている。センサPI1、PI2に対応した回路ブロックは、互いに同様な構成であるため、図5には、センサPI1に対応した回路ブロックのみが示されている。ここでは、センサPI1として、光を用いて検知を行う場合を例にして説明するが、勿論、これに限定されるものではない。
【0042】
センサPI1は、光を発光する発光ユニット2_Lと、光を検出する光検出ユニット2_Dとを備えている。発光ユニット2_Lと抵抗27とによって構成された直列回路が、電源電圧Vdと接地電圧Vsとの間に接続されている。また、同様に、光検出ユニット23_Lと抵抗28によって構成された直列回路が、電源電圧Vdと接地電圧Vsとの間に接続されている。光検出ユニット2_Dと抵抗28との間の接続ノードに、入力ポート23_PIが接続されている。
【0043】
発光ユニット2_Lは、電源電圧Vdが給電されることにより、発光する。光検出ユニット2_Dは、発光ユニット2_Lによって発光された光が照射されると、その抵抗値が低くなる。これにより、入力ポート23_PIは、光検出ユニット2_Dに光が照射されたか否かが応じた検知信号を出力する。プロセッサ21は、検知信号を基にして、光検出ユニット2_Dに光が照射されたか否かを検知する。
【0044】
実施の形態1においては、発光ユニット2_Lと光検出ユニット2_Dとの間に、回転板MR(図2)が配置されている。回転板MRの主面であって、所定の位置に、発光ユニット2_Lからの光を透過するスリットが設けられている。実施の形態1においては、所定の位置として、形状記憶合金線SMA1に通電が行われたときに、発光ユニット2_Lからの光が、光検出ユニット2_Dに照射される位置が採用されている。この所定の位置が、回転板MRのホームポジションとなる。これにより、回転板MRが、ホームポジションに存在しているか否かが、センサPI1とセンサPI1に対応する回路ブロック(図5の構成)によって検知される。
【0045】
センサPI2についても、シリンダー6内において、所定の位置(ホームポジション)にピストンが存在するか否かが、センサPI2とセンサPI2に対応する回路ブロックによって検知される。
【0046】
<アクチュエータおよびポンプの動作>
次に、図面を用いて、アクチュエータおよびポンプの動作を説明する。図6図8は、実施の形態1に係るアクチュエータおよびポンプの動作を示すフローチャート図である。なお、図6図8に示されている各ステップは、駆動ユニット20におけるプロセッサ21により実行される。そのため、以下の説明では、駆動ユニット20の構成を示している図4および図5も、適時参照する。
【0047】
ポンプとしては、図2に示したインシュリンポンプ10を例として説明する。アクチュエータ1の回転板MR(図2)が、回転することにより、ピストン5がシリンダー6内を、矢印2で示すように、左右に移動する。回転板MRは、図1で説明したように、形状記憶合金線SMA1~SMA8に、順次通電を行い、第1円盤RUの傾き部分を、順次移動させることにより、回転する。
【0048】
ここでは、説明の便宜上、図3に示した第1円盤RUに接続された形状記憶合金線SMA1からSMA8に向けて、順次通電した場合、図2に示したシリンダー6においてピストン5が、図2の紙面の右側、すなわち薬剤を搬送する方向に、回転板MRが回転するものとする。反対に、形状記憶合金線SMA8からSMA1に向けて、順次通電した場合、回転板MRの回転は反転し、紙面の左側にピストン5を移動させるものとする。以下の説明では、形状記憶合金線SMA1からSMA8に向けて、順次通電することにより、回転板MRが回転する方向を正転とし、形状記憶合金線SMA8からSMA1に向けて、順次通電することにより、回転板MRが回転する方向を逆転とする。
【0049】
薬剤を搬送する場合、搬送量は重要である。そのため、先ず、シリンダー6において、ピストン5が、所定の位置であるホームポジションに存在しているか否かの確認と調整と、回転板MRが所定の位置であるホームポジションに存在しているか否かの確認と調整とが実施される。
【0050】
<<ホームポジションの確認と調整>>
図6は、シリンダー6および回転板MRのホームポジションの確認と調整を行うためのフォローチャート図である。
【0051】
ステップS0において、駆動ユニット20は、ホームポジションの確認を開始する。次のステップS1では、ピストン5がシリンダー6のホームポジションに存在しているか否かの検知が行われる。すなわち、センサPI2に対応する回路ブロック(図5と同様な構成の回路ブロック)によって、センサPI2により、ピストン5がシリンダー6のホームポジションに存在しているか否かの確認が行われる。ピストン5が、ホームポジションに存在している場合(ON)、次にステップS2が実行され、ホームポジションに存在していない場合(OFF)には、次にステップS8が実行される。
【0052】
ステップS2では、駆動ユニット20に設定されている設定情報が読み出される。例えば、形状記憶合金線SMA1~SMA8に通電している時間(通電時間)と、回転板MRの回転方向とが、駆動ユニット20に設定されているものとする。特に制限されないが、ホームポジションの確認と調整に関しては、停止状態から起動する場合には、ゆっくりと行われるように、通電時間は200msに設定されているものとする。また、回転方向は、逆転が設定されているものとする。
【0053】
ステップS2で、通電時間設定が200msで、回転方向設定が、逆転として読み出されると、次にステップS3が実行される。ステップS3では、プロセッサ21は、出力ポート23_P8から23_P1に向けて、順次ハイレベルのパルス信号を出力させる。これにより、FET24_8からFET24_1に向けて順次オン状態となり、形状記憶合金SMA8からSMA1に向けて順次通電が行われ、回転板MRが、逆方向に回転する。
【0054】
ステップS3では、最後に、形状記憶合金線SMA1に通電が行われるため、回転板MRは、形状記憶合金線SMA1に通電が行われたときの位置、すなわち、回転板MRのホームポジションに存在するものと考えられる。これを確認するために、ステップS4が次に実行される。ステップS4では、回転板MRのホームポジションの検知が行われる。この回転板MRのホームポジションの確認は、図5に示したセンサPI1に対応する回路ブロックによって実行される。
【0055】
ステップS4において、回転板MRのホームポジションが検知できなかった場合(OFF)、すなわち、図5を例にして述べると、光検出ユニット2_Dによって発光ユニット2_Lからの光を検知することができなかったことを、入力ポート23_PIによってプロセッサ21が把握した場合、ステップS5において、プロセッサ21は、エラーの発生を示すエラー信号をオン状態(ON)に設定する。
【0056】
一方、ステップS4において、回転板MRのホームポジションが検知できた場合(ON)には、ステップS1で、ピストン5がシリンダー6のホームポジションに存在することが確認されており、ステップS4で、回転板MRがホームポジションに存在することが確認されたため、次にステップS6が実行される。ステップS6では、形状記憶合金線SMA1の通電を停止(通電OFF)する。その後、ステップS7で、プロセッサ21は、ホームポジションの確認と調整を完了とする。
【0057】
ステップS1で、シリンダー6のホームポジションが検知できなかった場合(OFF)、ステップS8において、設定の読み出しが行われる。ステップS8で読み出される通電時間および回転方向は、特に制限されないが、ステップS2と同じである。ステップ8で読み出された通電時間(200ms)と回転方向(逆転)に従って、ステップS9において、形状記憶合金線に通電が行われる。ここでは、回転方向が、逆転であるため、ステップS3と同様に、形状記憶合金線SMA8からSMA1に向かう方向に順次通電が行われ、回転板MRが、回転する。
【0058】
ステップS9に続くステップS10では、ステップS4と同様に、回転板MRのホームポジションが検知されたか否かの判定が行われる。ステップS10において、回転板MRのホームポジションが検知されなかった場合(OFF)には、ステップS11が次に実行される。ステップS11では、プロセッサ21は、ステップS5と同様に、エラー信号をオン状態(ON)にする。
【0059】
これに対して、ステップS10において、回転板MRのホームポジションが検知された場合(ON)には、次にステップS12が実行される。ステップS12では、プロセッサ21は、ステップS1と同様に、シリンダー6におけるホームポジションの検知が行われる。ステップS12において、シリンダー6におけるホームポジションが検知された場合(ON)には、次にステップS6が実行され、シリンダー6のホームポジションが検知できなかった場合(OFF)には、次にステップS13が実行される。ステップS13では、通電時間として100msが読み出され、次にステップS9が実行される。ステップS9では、短い通電時間(100ms)で、形状記憶合金線SMA8からSMA1に向けて順次通電が行われる。以降、回転板MRのホームポジションが検知できる場合には、シリンダー6のホームポジションが検知されるまで、ステップS9、S10、S12、S13が繰り返される。すなわち、ステップS9において、形状記憶合金線SMA8~SMA1に順次通電が行われることにより、回転板MRが回転し、これにより、ピストン5が移動することになり、シリンダー6におけるホームポジションが検知されるように、ピストン5の移動が調整されることになる。
【0060】
以上の動作で、ピストン5は、シリンダー6のホームポジションに到達し、回転板MRは、予め定めたホームポジションに到達することになる。
【0061】
ステップS7の後、薬剤を搬送する動作が行われる。
【0062】
<<薬剤の搬送動作>>
次に、図7を用いて薬剤を搬送する動作を説明する。ここでは、薬剤の搬送量を、回転板MRの回転数で表し、予め駆動ユニット20に設定されているものとする。また、駆動ユニット20には、停止状態から回転板MRを起動するときの通電時間が200msで、回転板MRが回転を始めたら、その後の通常回転駆動時の通電時間として100msが設定されているものとする。さらに、薬剤の搬送であるため、回転板MRの回転方向は、正転に設定されているものとする。このように設定することで、回転板MRは、ゆっくりと正転で回転を始め、その後回転速度が速くなる。
【0063】
先ず、ステップS20において、駆動ユニット20によるポンプの回転駆動を開始させる。ステップS21では、駆動ユニット20に予め設定された搬送量に相当する回転数が読み込まれる。次のステップS22では、回転板MRの回転方向が正転であることが読み込まれる。さらにステップS23では、通電時間として設定された200msを読み込む。
【0064】
次のステップS24では、通電時間200msで、形状記憶合金線SMA1からSMA8に向けて通電を行う。すなわち、駆動ユニット20内のプロセッサ21は、出力ポート23_P1から23_P8に向けてハイレベルのパルス信号を順次出力する。これにより、FET24_1~24_8は、FET24_1から24_8に向けて、順次オン状態となり、形状記憶合金線SMA1からSMA8に向けて駆動され、図1で述べたように、回転板MRが回転する。この場合、形状記憶合金線SMA1からSMA8の順に駆動されるため、回転板MRの回転方向は、正転となる。
【0065】
次に、ステップS25において、プロセッサ21は、出力ポート23_P1に向けてハイレベルのパルス信号を出力する。これにより、形状記憶合金線SMA1に対して再度通電が行われ、形状記憶合金線SMA1が縮小し、回転板MRは、形状記憶合金線SMA1の縮小により定まる所定の位置で停止することになる。すなわち、回転板MRは、そのホームポジションが、センサPI1によって検知できる位置で停止することになる。
【0066】
ステップS26では、センサPI1を用いて、回転板MRのホームポジションが検知されるか否かの判定が行われる。ここで、回転板MRのホームポジションが検知できない場合(OFF)は、ステップS27において、プロセッサ21は、エラー信号をオン状態(ON)に設定する。
【0067】
これに対して、ステップS26において、回転板MRのホームポジションが検知された場合(ON)、ステップS28において、プロセッサ21は、変数である回転数を1に設定し、ステップS29を実行する。変数である回転数は、特に制限されないが、プロセッサ21の内部レジスタを用いて、プロセッサ21が、内部レジスタに対して読み出し、書き込み等を行うことにより、設定される。
【0068】
ステップS29では、プロセッサ21は、ステップS21で読み込んだ回転数と変数である回転数との比較を行い、回転数を判定する。読み込んだ回転数が、変数の回転数を超えている場合(YES)、次にステップS30が実行され、超えていない場合(NO)、次に後で説明するステップS37が実行される。
【0069】
ステップS30では、回転板MRが既に回転を開始しているときの通電時間として設定されている通常回転駆動時の通電時間(100ms)が読み込まれる。
【0070】
プロセッサ21は、ステップS31において、ステップS30で読み込んだ通常回転駆動時の通電時間で、形状記憶合金線SMA1からSMA8の順で、順次通電するように、FET24_1からFET24_8を制御する。これにより、ステップS31において、回転板MRは、正転で1回転する。その後、センサPI1で回転板MRのホームポジションを検知することができるように、プロセッサ21は、ステップS32において、形状記憶合金線SMA1に通電を行い、ステップS33において、ステップS26と同様に、回転板MRのホームポジションが検知できたか否かの判定を行う。ここでも、ホームポジションが検知できない場合(OFF)、プロセッサ21は、ステップS34において、エラー信号をオン状態(ON)にする。これに対して、ステップS33において、ホームポジションを検知することができた場合(ON)、プロセッサ21は、ステップS35において、変数である回転数に1回を加え、変数である回転数として、内部レジスタに書き込む。
【0071】
ステップS35の後のステップS36において、プロセッサ21は、ステップS29と同様に、回転板MRの回転数を判定する。すなわち、ステップS21で読み込んだ回転数と変数である回転数とを比較する。比較の結果、ステップS21で読み込んだ回転数が、変数の回転数を超えている場合(YES)、ステップS31に戻る。これにより、回転板のホームポジションが検知されている場合には、ステップS21で読み込んだ回転数に到達するまで、ステップS31~S33、S35、S36が繰り返され、回転板MRの回転数に応じた搬送量の薬剤が搬送されることになる。
【0072】
ステップS36において、ステップS21で読み込んだ回転数が、変数である回転数を超えていないと判定された場合、次にステップS37が実施される。ステップS37は、回転板MRを停止させる制御である。ここでは、回転板MRの回転方向が、逆転に設定される。次に、ステップS38では、ステップS37で、逆転が設定されたことにより、プロセッサ21は、正転のときとは、異なる順番で形状記憶合金線に通電を行う。すなわち、ステップS38では、形状記憶合金線SMA8からSMA1の方向に、順次通電を行う。その後、ステップS39において、プロセッサ21は、形状記憶合金線SMA1~SMA8に対する通電を停止(OFF)する。ステップS37~S39が実行されることにより、特に制限されないが回転板MRは、1回転だけ逆転して、停止することになる。勿論、逆転させずに、回転板MRを、ステップS37で停止させるようにしてもよい。その後、ステップS40において、薬剤の搬送の動作が完了する。なお、ステップS38において、最後に通電されるのは、形状記憶合金線SMA1であるため、回転板MRは、ホームポジションに移動して、停止することになる。
【0073】
<<断線検知の動作>>
次に、図8を用いて、形状記憶合金線の断線を検知する動作を説明する。
【0074】
ステップS50において、形状記憶合金線の通電・断線の検知を開始する。ステップS51で、検知対象の形状記憶合金線の番号が読み込まれる。例えば、使用者が、検知対象の形状記憶合金線の番号を、予め駆動ユニット20に登録しておき、ステップS51において、登録された番号を読み出す。勿論、駆動ユニット20に全ての形状記憶合金線の番号を、予め登録しておき、プロセッサ21が、登録されている番号を、ステップS51で順番に読み出すようにしてもよい。以下では、ステップS51において、形状記憶合金線の番号1が読み出され、形状記憶合金線SMA1が検知対象となった場合を例にして説明する。
【0075】
ステップS52で、通電設定時間が読み込まれる。例えば、プロセッサ21は、図示しないメモリに記憶されている通電設定時間の情報を読み出す。ここで、通電設定時間は、形状記憶合金線に通電し続ける時間である。そして、後述するステップS58で通電設定時間に基づいて待機処理が行われる。
【0076】
プロセッサ21は、ステップS51で読み出した番号1の形状記憶合金線SMA1に対応する出力ポートを、ステップS53においてオン状態にする。すなわち、プロセッサ21は、出力ポート23_P1をオン状態にし、ハイレベルのパルス信号を出力ポート23_P1から出力させる。これにより、ステップS54において、検知対象の形状記憶合金線SMA1に接続されたFET24_1がオン状態(FET ON)となる。
【0077】
FET24_1がオン状態となることにより、形状記憶合金線SMA1に断線が発生していなければ、抵抗(シャント抵抗)26、FET24_1および形状記憶合金線SMA1を介して、電源電圧Vdと接地電圧Vsとの間を通電電流が流れ、抵抗26において、電圧が発生する。ステップS55では、抵抗26に発生する電圧がアンプ25によって増幅され、プロセッサ21内のADC22に供給され、ADC22は、供給された電圧を、対応したデジタル信号に変換して、出力する。プロセッサ21は、このデジタル信号を読み込む。
【0078】
プロセッサ21は、読み込んだデジタル信号を基にして、ステップS56において、断線の検知を行う。すなわち、プロセッサ21は、読み込んだデジタル信号によって表される抵抗26における電圧が0Vであるか否かを判定する。もし、抵抗26における電圧が0Vの場合(YES)、次にステップS57が実行され、抵抗26における電圧が0Vでない場合(NO)、次にステップS58が実行される。
【0079】
ステップS57では、プロセッサ21は、エラーを示すエラー信号をオン状態(ON)にする。一方、ステップS58では、通電設定時間に基づく待機処理が実行される。たとえば、通電設定時間が2秒である場合、形状記憶合金線に対して2秒間の通電が行われることになる。ステップS59では、ステップS53においてオン状態にした出力ポート23_P1をオフ状態にする。これにより、出力ポート23_P1からはロウレベルの信号が、対応するFET24_1に供給され、ステップS60において、FET24_1はオフ状態となる。
【0080】
ステップS61において、対象の形状記憶合金線SMA1の導通が確認され、対象の形状記憶合金線の通電・断線の検知が完了する。
【0081】
残りの形状記憶合金線SMA2~SMA8についても、形状記憶合金線SMA1と同様に、通電・断線の検知を行う場合には、ステップS51以降の動作を繰り返すことになる。
【0082】
これにより、形状記憶合金線に断線が発生しているか否かを検知することが可能となる。
【0083】
図2では示していないが、実施の形態1に係るインシュリンポンプ10は、エラーを表示する表示装置を備えている。図6のステップS5、S11、図7のステップS27、S34および図8のステップS56において、エラー信号がオン状態(ON)とされた場合、エラーを表示する表示装置によって、エラーの発生を表示させる。これにより、使用者に対してエラーの発生を通知することが可能となる。
【0084】
実施の形態1に係るインシュリンポンプ10では、8つの形状記憶合金線SMA1~SMA8を用いて、ピストンを駆動している。そのため、一部の形状記憶合金線に断線が発生しても、薬剤を搬送することが可能である。すなわち、複数の形状記憶合金線SMAを用いることで、インシュリンポンプ10(アクチュエータ1)が故障する可能性を低くしている。しかしながら、搬送量を精度良く制御するためには、使用者に対して断線の発生を通知して、メンテナンスを実施できるようにすることが望ましい。また、エラーを表示する際には、断線によるエラーと断線以外に起因するエラーとを区別することが可能となるように、図8のステップS56で通知されたエラーと、他のステップS5、S11、S27およびS34で通知されたエラーとを分けることが望ましい。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1では、形状記憶合金線SMA1~SMA8が、第1円盤RUの主面RU_Fに対して、垂直方向に延在するように設置されたアクチュエータを説明した。実施の形態2においては、複数の形状記憶合金線が、第1円盤RUの主面RU_Fと平行になるように延在するように設置されたアクチュエータを説明する。
【0086】
また、実施の形態1においては、形状記憶合金線SMA1~SMA8が、順次縮小することにより、第1円盤RUの傾きを移動させ、回転板MRを回転させるようにしていた。これに対して、実施の形態2では、形状記憶合金線SMA1~SMA8が、順次縮小することにより、第1円盤RUを回転させ、回転板MRを回転させることになる。実施の形態2では、第1円盤RUも回転させることが可能であるため、第1円盤RUを回転板MRと見なすことも可能である。
【0087】
図9は、実施の形態2に係るインシュリンポンプの構成を示す側面図である。また、図10は、実施の形態2に係るアクチュエータの構成を示す部分的な平面図である。
【0088】
図9は、図2と類似しているので、相違点を主に説明する。主な相違点は、図9に示したアクチュエータ1の構成が、図2に示した構成とは異なっている点と、ねじが形成された回転軸3とアクチュエータ1の回転板MRとの結合が、図2と異なっている点と、回転軸3の回転方向が反対(逆転)方向RT_SIとなっている点である。なお、実施の形態2では、回転軸3が反対方向RT_SIに回転することにより、ピストン5が押し込まれ、薬剤が搬送されるものとする。
【0089】
また、駆動ユニット20の構成は、実施の形態1と類似している。すなわち、実施の形態2に係る駆動ユニット20は、図4および図5に示した構成と類似している。主な相違点は、実施の形態2では、形状記憶合金線として、7つの形状記憶合金線SMA1~SMA7が用いられているため、実施の形態2に係る駆動ユニット20は、図4の出力ポート23_P8と、FET24_8とを備えていない。
【0090】
実施の形態2に係るアクチュエータ1においては、図9および図10に示すように、第1円盤RUの主面RU_Fにおいて、第1円盤RUの中心点CTから離れた所定の位置の部分(共通結合部)MCTに、7つの形状記憶合金線SMA1~SMA7の一方の端部が結合されている。また、形状記憶合金線SMA1~SMA7のそれぞれの端部は、共通結合部MCTから、放射線状に離れた位置の部分(個別結合部)CT_1~CT_7に結合されている。すなわち、形状記憶合金線SMA1~SMA7の他方の端部は、互いに離れた位置に配置されている。駆動ユニット20は、実施の形態1で述べたように、形状記憶合金線SMA1~SMA7に対して、順次通電を行う。例えば、形状記憶合金線SMA1からSMA7に向かう方向で、順次通電を行う。
【0091】
例えば、形状記憶合金線SMA2に通電を行い、その後、形状記憶合金線SMA2の隣に配置された形状記憶合金線SMA3に通電を行う。このようにすることで、形状記憶合金線SMA2が縮小し、次に形状記憶合金線SMA3が縮小することになる。その結果、共通結合部MCTは、矢印RTの方向に沿って移動する。このように、形状記憶合金線SMA1~SMA7に対して、順次通電を行うことにより、第1円盤RUは、中心点CTを中心として矢印RTの方向に回転することになる。
【0092】
図10は、紙面上から紙面奥側に向かって、図9に示した第1円盤RU、回転板MRおよび回転軸3を見たときの平面を示している。図10において、第1円盤RUが、中心点CTを中心にして、矢印RTの方向に回転する。回転板MRは、第1円盤RUと接触しており、第1円盤RUが回転することにより、中心点CTを中心として、方向RT_Iで示す方向に回転する。回転板MRは、回転軸3と接触しており、回転板MRが、回転方向RT_Iの方向に回転すると、回転軸3は、方向RT_SIの方向に回転する。その結果、実施の形態2においても、形状記憶合金線SMA1~SMA7に順次通電を行うことにより、ピストン5をシリンダー6内で移動させ、薬剤を搬送することが可能となる。
【0093】
図10には、第1円盤RUの主面RU_Fと平行に配置された形状記憶合金線として、SMA1とSMA5のみが示されているが、他の形状記憶合金線も同様に配置されている。また、図9では、7つの形状記憶合金線SMA1~SMA7を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、共通結合部MCTにおいて、互いに120度離れて延在するように配置された3つの形状記憶合金線を用いるようにしてもよい。このようにすることで形状記憶合金線の数を減らし、駆動ユニット20の構成を簡単にすることが可能である。しかしながら、形状記憶合金線の数を増やすことで、搬出量を精度良く制御することが可能である。
【0094】
このように、実施の形態2でも、複数の形状記憶合金線SMAを用いることで、インシュリンポンプ10(アクチュエータ1)が故障する可能性を低くしている。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、実施の形態1では、8つの形状記憶合金線を用いる例を示したが、複数の形状記憶合金線を用いればよい。
【符号の説明】
【0096】
1 アクチュエータ
10 インシュリンポンプ
20 駆動ユニット
CT 中心点
ML 駆動軸
MR 回転板
RD、RU 円盤
SCP スクリューポンプ
SFT シャフト
SL 従動軸
SMA1~SMA8 形状記憶合金線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10