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  • 特開-推定装置および内燃機関制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150185
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】推定装置および内燃機関制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20220929BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02D19/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052673
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 素久
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA08
3G092AB08
3G092BA04
3G092DE04
3G092FA22
3G092HA01Z
3G092HB01Z
3G384AA14
3G384DA33
3G384FA01
3G384FA14
3G384FA37
(57)【要約】
【課題】小型化しつつ燃料の性質の変化を適切に推定する推定装置および内燃機関制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関に延びる吸気通路に配置され、内燃機関に供給される燃料を吸気通路に吐出する燃料吐出部と、吸気通路において燃料吐出部の下流側に配置され、吸気通路の空気と燃料とが混合された混合気の空燃比を検出する空燃比検出部と、空燃比検出部で検出される空燃比に基づいて、燃料の性質の変化を推定する推定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に延びる吸気通路に配置され、前記内燃機関に供給される燃料を前記吸気通路に吐出する燃料吐出部と、
前記吸気通路において前記燃料吐出部の下流側に配置され、前記吸気通路の空気と前記燃料とが混合された混合気の空燃比を検出する空燃比検出部と、
前記空燃比検出部で検出される空燃比に基づいて、前記燃料の性質の変化を推定する推定部とを備える推定装置。
【請求項2】
前記吸気通路において吸気スロットルを避けるように形成されたバイパス通路に設けられ、前記混合気を形成するためのミキシングルームをさらに有し、
前記燃料吐出部は、前記ミキシングルームに燃料を吐出するように配置され、
前記空燃比検出部は、前記ミキシングルームの下流側に延びる前記バイパス通路に配置されて、前記バイパス通路を流通する前記混合気の空燃比を検出する請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記バイパス通路から前記ミキシングルームに所定の流量で空気を流入させるように形成された流入部をさらに有し、
前記推定部は、前記所定の流量に応じて予め設定された設定吐出量で燃料を吐出するように前記燃料吐出部を制御する請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記バイパス通路から前記ミキシングルームに流入する空気の圧力を検出する上流側圧力検出部をさらに有し、
前記推定部は、前記上流側圧力検出部で検出される圧力に基づいて前記所定の流量を補正し、前記所定の流量の補正量に応じて前記設定吐出量を調整する請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記燃料吐出部は、前記吸気スロットルが閉状態の場合に燃料を吐出する請求項2~4のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記燃料吐出部は、前記バイパス通路から前記ミキシングルームに空気を流入する流入口が開く方向に対して交差する方向から燃料を吐出する請求項2~5のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の推定装置と、
前記推定装置の推定部で推定された前記燃料の性質の変化に基づいて内燃機関を制御する内燃機関制御部とを備える内燃機関制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置および内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関に供給される燃料の性質の変化を推定する推定装置が提案されている。例えば、液化天然ガスを燃料とする内燃機関では、液化天然ガス中の軽い成分が時間の経過に伴って放出されて、燃料が重質化する、いわゆるウェザリング現象を引き起こすおそれがある。このため、燃料の性質の変化を適切に推定することが求められている。
【0003】
そこで、燃料の性質の変化を適切に推定する技術として、例えば、特許文献1には、運転中に燃料の性状を把握できる内燃機関が開示されている。この内燃機関は、天然ガスの2つのガス成分を検出して、ガス成分の全体構成を推定するため、燃料の性質の変化を適切に推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-183801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の内燃機関は、ガス成分検出センサでガス成分を検出するものである。一般的に、成分を検出するセンサは、大型に構成されているため、装置が大型化するおそれがある。また、2つのガス成分検出センサを配置するなど、その検出精度を向上するためにはセンサの数を増やす必要があり、装置がさらに大型化するおそれがある。
【0006】
本開示は、小型化しつつ燃料の性質の変化を適切に推定する推定装置および内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る推定装置は、内燃機関に延びる吸気通路に配置され、内燃機関に供給される燃料を吸気通路に吐出する燃料吐出部と、吸気通路において燃料吐出部の下流側に配置され、吸気通路の空気と燃料とが混合された混合気の空燃比を検出する空燃比検出部と、空燃比検出部で検出される空燃比に基づいて、燃料の性質の変化を推定する推定部とを備えるものである。
【0008】
本開示に係る内燃機関制御装置は、上記の推定装置と、推定装置の推定部で推定された燃料の性質の変化に基づいて内燃機関を制御する内燃機関制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、小型化しつつ燃料の性質の変化を適切に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る推定装置を備えた車両の構成を示す図である。
図2】実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に、本開示の実施の形態に係る推定装置を備えた車両の構成を示す。車両は、内燃機関1と、燃料タンク2と、吸気通路3と、内燃機関制御装置4とを有する。なお、車両としては、例えば、トラックおよびバンなどが挙げられる。
【0013】
内燃機関1は、車両を駆動するためのもので、図示しない供給路を介して燃料タンク2に接続され、燃料タンク2に収容されたガス燃料が順次供給される。燃料タンク2から供給されるガス燃料は、吸気通路3から供給される空気と所定の比率で混合されて内燃機関1の気筒内に導入され、点火プラグの点火により燃焼される。この熱エネルギーにより、車両が駆動されることになる。
【0014】
ガス燃料としては、例えば、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:LNG)および圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas:CNG)などが挙げられる。
【0015】
燃料タンク2は、内燃機関1に供給される燃料を収容するもので、例えばガス燃料を液体状態で収容するように低温容器から構成することができる。ガス燃料は、燃料タンク2から放出された後、図示しない供給路内で気化されて、所定の圧力で内燃機関1に供給される。また、燃料タンク2は、調圧弁2aを介して内燃機関制御装置4の燃料吐出部10にも接続されており、燃料吐出部10に燃料を供給する。
【0016】
吸気通路3は、外部から内燃機関1に延びるように形成され、外部から取り入れた空気を内燃機関1に供給する。吸気通路3は、バイパス通路3aを有し、このバイパス通路3aが、吸気通路3に配置された吸気スロットル5を避けて迂回するように形成されている。
【0017】
内燃機関制御装置4は、推定装置6と、内燃機関制御部7とを有する。また、推定装置6は、ミキシングルーム8と、流入部9と、燃料吐出部10と、上流側圧力検出部11と、ルーム内圧力検出部12と、空燃比検出部13と、下流側圧力検出部14と、推定部15とを有する。
【0018】
ここで、上流側圧力検出部11、ルーム内圧力検出部12、空燃比検出部13および下流側圧力検出部14が推定部15に接続され、この推定部15が燃料吐出部10および内燃機関制御部7にそれぞれ接続されている。また、内燃機関制御部7は、内燃機関1および吸気スロットル5にそれぞれ接続されている。
【0019】
ミキシングルーム8は、吸気通路3を流通する空気と燃料吐出部10から吐出される燃料とを混合して混合気を形成するためのもので、バイパス通路3aに設けられている。ミキシングルーム8は、バイパス通路3aから流入する空気が燃料と十分に混合した後で下流側のバイパス通路3aに流出するように、バイパス通路3aに対して大きく拡張するように形成されている。
【0020】
流入部9は、吸気スロットル5が閉状態とされたときに、バイパス通路3aからミキシングルーム8内へ所定の流量で空気が流入するように形成されたもので、例えばオリフィスなどから構成されている。流入部9には、所定の質量流量で空気が流入するように所定の径を有する流入口9aが形成されている。このとき、流入口9aは、吸気通路3を吸気スロットル5で閉じた状態において、空気を音速領域で噴射するように微小な径で形成されている。
【0021】
燃料吐出部10は、燃料を吐出するもので、ミキシングルーム8に配置されている。また、燃料吐出部10は、燃料タンク2に調圧弁2aを介して接続されており、内燃機関1に供給される燃料をミキシングルーム8内に一定のパルス幅で吐出する。ここで、燃料吐出部10は、燃料を噴射するために、例えば吐出部分にオリフィスが配置されており、その吐出口10aが極小に形成されている。このとき、燃料吐出部10は、燃料を音速領域で噴射するように形成されている。
【0022】
また、燃料吐出部10は、流入部9の流入口9aが開く方向に対して交差する方向、具体的にはほぼ90度で交差する方向から燃料を吐出するように配置されている。すなわち、吐出口10aは、流入口9aに対して90度ずれた方向に開くように形成されている。
【0023】
上流側圧力検出部11は、バイパス通路3aにおいてミキシングルーム8の上流側に配置され、バイパス通路3aからミキシングルーム8に流入する空気の圧力を検出する。上流側圧力検出部11は、例えば、圧力センサから構成することができる。
【0024】
ルーム内圧力検出部12は、ミキシングルーム8内に配置され、ミキシングルーム8内の混合気の圧力を検出する。ルーム内圧力検出部12は、例えば、圧力センサから構成することができる。
【0025】
空燃比検出部13は、ミキシングルーム8の下流側に延びるバイパス通路3aに配置されて、バイパス通路3aを流通する混合気の空燃比を検出する。空燃比検出部13は、例えば、空燃比センサから構成することができる。
【0026】
下流側圧力検出部14は、吸気通路3において吸気スロットル5および空燃比検出部13の下流側に配置され、その下流部分における吸気の圧力を検出する。下流側圧力検出部14は、例えば、圧力センサから構成することができる。
【0027】
推定部15は、下流側圧力検出部14で検出される圧力に基づいて吸気スロットル5が閉状態か否かを判定し、吸気スロットル5が閉状態の場合に燃料を吐出するように燃料吐出部10を制御する。ここで、推定部15には、流入部9からミキシングルーム8内に流入する所定の流量の空気に応じて予め設定された設定吐出量で燃料を吐出するように燃料吐出部10を制御する。このとき、設定吐出量は、所定の流量の空気と設定吐出量の基準燃料とを混合した基準混合気が所定の空燃比となるように設定されている。また、推定部15は、上流側圧力検出部11で検出される圧力に基づいて所定の流量を補正し、その補正量に応じて設定吐出量を調整する。
なお、基準燃料としては、例えば、100%メタンの燃料、および、燃料タンク2に入れた直後の燃料などが挙げられる。また、所定の空燃比は、例えば、ストイキ空燃比(空気過剰率=1)などに設定することができる。
【0028】
また、推定部15は、空燃比検出部13で検出される混合気の空燃比に基づいて、燃料の性質の変化を推定する。すなわち、推定部15は、基準燃料を混合した混合気の空燃比に対して、空燃比検出部13で検出される空燃比の変化を算出し、その空燃比の変化に基づいて燃料の性質の変化を推定することができる。ここで、燃料の性質の変化としては、例えば、メタン価および重質化の度合などに起因するものが挙げられる。
また、推定部15は、ルーム内圧力検出部12で検出される圧力に基づいて、空燃比および燃料の吐出量などを補正することができる。
【0029】
なお、内燃機関制御部7および推定部15の機能は、コンピュータプログラムにより実現させることもできる。例えば、コンピュータの読取装置が、内燃機関制御部7および推定部15の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。そして、CPU(Central Processing Unit)が、記憶装置に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、内燃機関制御部7および推定部15の機能を実現することができる。
【0030】
次に、本実施の形態の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、図1に示すように、内燃機関制御部7が内燃機関1を制御して車両が駆動される。このとき、推定部15が、ステップS1で、下流側圧力検出部14で検出される圧力に基づいて吸気スロットル5が閉状態か否かを判定する。推定部15は、吸気スロットル5が閉状態と判定されるまでステップS1の処理を繰り返す。
【0032】
ここで、内燃機関制御部7が、例えば内燃機関1をアイドリングさせるために、吸気通路3を閉じるように吸気スロットル5を制御する。吸気スロットル5が閉状態とされると、吸気通路3の空気がバイパス通路3aを介して流通し、ミキシングルーム8内に空気が順次供給されることになる。また、吸気スロットル5に対して下流側の圧力が上流側の圧力より低下し、その圧力が下流側圧力検出部14で検出される。
【0033】
下流側圧力検出部14で検出された圧力は、推定部15に出力され、推定部15が、下流側圧力検出部14で検出された圧力の低下に基づいて、吸気スロットル5が閉状態にされたと判定する。なお、推定部15は、吸気スロットル5を制御する内燃機関制御部7の制御信号に基づいて、吸気スロットル5が閉状態か否かを判定してもよい。
【0034】
このようにして、推定部15は、吸気スロットル5が閉状態にされたと判定すると、ステップS2に進んで、流入部9からミキシングルーム8内に流入する空気に向かって、予め設定された設定吐出量で燃料を吐出するように燃料吐出部10を制御する。なお、設定吐出量は、ミキシングルーム8内に所定の質量流量で流入する空気と、設定吐出量で吐出した基準燃料とを混合した場合に、その基準混合気が所定の空燃比、例えばストイキ空燃比となるように設定されている。
【0035】
ここで、流入部9は、吸気スロットル5が閉状態とされることで、バイパス通路3aからミキシングルーム8に所定の質量流量で空気が流入するように形成されている。このため、燃料と空気の混合比が変動するのを抑制することができ、混合気を高精度に形成することができる。また、空気の流入量を制御する必要がなく、ミキシングルーム8に所定の流量の空気を容易に流入させることができる。
【0036】
また、内燃機関1がアイドリング中に流入部9からミキシングルーム8内に空気を流入させるため、流入部9から所定の流量の空気を安定して流入させることができ、混合気をより高精度に形成することができる。
【0037】
また、燃料吐出部10が、吸気スロットル5が閉状態の場合に燃料を吐出して混合気を形成するため、少ない空気の流量で混合気を形成することができ、内燃機関1の空燃比に与える影響を抑制することができる。
【0038】
また、推定部15が、流入部9からミキシングルーム8内に流入する空気の流量に応じて予め設定された設定吐出量で燃料を吐出するように燃料吐出部10を制御する。このため、燃料の吐出量を容易に制御して混合気を形成することができる。
【0039】
また、推定部15は、上流側圧力検出部11で検出される圧力に基づいて、流入部9から流入する空気の流量(所定の流量)を補正する。例えば、上流側圧力検出部11で検出される圧力が、予め設定された基準圧力に対して低下した場合には、その低下量に応じて流入部9から流入する空気の流量も低下するため、その低下量に応じて所定の流量を補正する。そして、推定部15は、所定の流量の補正量に応じて、燃料吐出部10から吐出される燃料の設定吐出量を調整する。これにより、燃料と空気の混合比が変動することを抑制し、混合気を高精度に形成することができる。ここで、基準圧力は、ミキシングルーム8の上流側の圧力に基づいて設定されるものであり、例えば大気圧に設定することができる。
【0040】
なお、ミキシングルーム8の上流側に温度センサを上流側圧力検出部11に隣接して配置することが好ましい。これにより、上流側圧力検出部11で検出される圧力に加えて、温度センサで検出される温度に基づいて、流入部9から流入する空気の流量を高精度に補正することができる。
また、推定部15は、吸気通路3を流通する空気の流量、または、吸気スロットル5に対して吸気通路3の上流側と下流側との圧力差などに基づいて、流入部9から流入する空気の流量を補正することもできる。
【0041】
また、推定部15は、上流側圧力検出部11で検出される圧力と、ルーム内圧力検出部12で検出される圧力とに基づいて、燃料吐出部10からの燃料の吐出量の変動を算出することができる。これにより、例えば、燃料吐出部10からの燃料の吐出量を調節することで、混合気をより高精度に形成することができる。
なお、ミキシングルーム8内に温度センサを配置することが好ましい。これにより、ルーム内圧力検出部12で検出される圧力に加えて、温度センサで検出される温度に基づいて、燃料吐出部10からの燃料の吐出量の変動を高精度に算出することができる。
【0042】
このようにして、燃料吐出部10から吐出された燃料が、流入部9から流入する空気とミキシングルーム8で混合されて混合気が形成される。
このとき、ミキシングルーム8は、バイパス通路3aに対して大きく拡張するように形成されている。一般的に、メタンなどのガス燃料は、比較的軽く且つ安定した成分であるため、空気と混合し難い性質を有する。そこで、ミキシングルーム8を大きく拡張するように形成することで、燃料と空気を確実に混合させることができる。
【0043】
また、燃料吐出部10は、流入部9の流入口9aが開く方向に対して交差する方向から燃料を吐出するように配置されているため、燃料と空気を速やかに混合することができる。このとき、燃料吐出部10は、流入口9aが開く方向に対してほぼ90度で交差する方向から燃料を吐出するため、燃料と空気をより速やかに混合することができる。
【0044】
また、流入口9aが、空気を音速領域で噴射するように微小な径で形成されているため、燃料と空気を速やかに混合することができる。また、燃料吐出部10が、燃料を音速領域で噴射するように形成されているため、燃料と空気を速やかに混合することができる。
【0045】
このようにして、ミキシングルーム8で形成された混合気は、下流側のバイパス通路3aに流入して、そのままバイパス通路3aを内燃機関1に向かって流通する。そして、バイパス通路3aを流通する混合気の空燃比が、空燃比検出部13で検出される。
このとき、空燃比検出部13は、バイパス通路3aに配置されているため、ミキシングルーム8で十分に混合された混合気の空燃比を検出することができ、その空燃比を高精度に検出することができる。特に、空燃比は、空気と燃料の混合比が数値に直接的に影響するため、十分に混合された混合気の空燃比を検出することで、空燃比の変動を確実に抑制することができる。
【0046】
なお、推定装置6は、吸気スロットル5が閉状態のときに混合気を形成するため、内燃機関1の空燃比に影響を与えない程度の空気の流入量および燃料の吐出量で混合気を形成することができる。このとき、空燃比検出部13が、混合気の空燃比を直接検出しているため、その空燃比が高いか否かを速やかに判断することができ、内燃機関1の空燃比に与える影響を確実に抑制することができる。
【0047】
続いて、推定部15が、ステップS3で、空燃比検出部13で検出された混合気の空燃比に基づいて、燃料の性質の変化を推定する。例えば、燃料タンク2に収容された燃料の性質が基準燃料から変化した場合に、その変化に応じて燃料の質量も変化する。このとき、推定部15が、基準燃料で基準混合気を形成した場合に所定の空燃比、例えばストイキ空燃比となるように空気と燃料の混合比を制御している。このため、燃料の性質が基準燃料から変化すると、その変化が空燃比の値に反映されることになる。具体的には、燃料のメタン価が低下すると重質化するため、混合気の空燃比が低下してリッチ空燃比、すなわちストイキ空燃比より低い空燃比を示すことになる。
【0048】
このように、推定部15は、空燃比検出部13で検出される混合気の空燃比に基づいて、燃料の性質の変化を推定する。このため、推定装置6を小型化しつつ燃料の性質の変化を適切に推定することができる。
また、推定部15は、混合気の空燃比に基づいて推定するため、複雑な演算を必要とせず、燃料の性質の変化を容易に推定することができる。
【0049】
また、推定部15は、燃料のメタン価を具体的に推定することもできる。例えば、推定部15は、複数の燃料成分について混合気をそれぞれ形成し、その複数の混合気の空燃比の分布を示すテーブルを補完式と共に予め設定することができる。例えば、メタン、エタン、プロパンおよびブタンなどの燃料成分で混合気を形成し、これらの混合気の空燃比に基づいてテーブルを設定することができる。そして、推定部15は、空燃比検出部13で検出された空燃比に基づいて、補完式に従ってテーブルを参照し、例えば燃料を構成する成分の割合を算出して燃料のメタン価を推定することができる。
このように、推定部15は、複数の燃料成分からそれぞれ形成された複数の混合気の空燃比の分布を示すテーブルに基づいて燃料のメタン価を推定するため、燃料の性質の変化を詳細に推定することができる。
【0050】
推定部15は、推定された燃料の性質の変化を内燃機関制御部7に出力する。そして、内燃機関制御部7が、ステップS4で、推定部15で推定された燃料の性質の変化に基づいて内燃機関1を制御する。
【0051】
例えば、内燃機関制御部7は、推定部15で推定された燃料の空燃比の変化に基づいて、内燃機関1を制御、すなわち空燃比を直接用いて内燃機関1を制御することができる。例えば、内燃機関制御部7は、混合気の空燃比が基準混合気に対して低下している場合には、その空燃比の低下量に応じて点火タイミングを基準燃料より遅らせるように制御する。これにより、内燃機関1のノッキングを抑制することができる。
【0052】
また、内燃機関制御部7は、推定部15で推定された燃料のメタン価に基づいて、内燃機関1を制御することもできる。例えば、内燃機関制御部7は、燃料のメタン価が基準燃料より低い場合には、メタン価の低下量に応じて点火タイミングを基準燃料より遅らせるように制御する。これにより、内燃機関1のノッキングを高精度に抑制することができる。
【0053】
本実施の形態によれば、推定部15は、空燃比検出部13で検出される混合気の空燃比に基づいて、燃料の性質の変化を推定する。このため、推定装置6を小型化しつつ燃料の性質の変化を適切に推定することができる。
【0054】
なお、上記の実施の形態では、燃料吐出部10は、ミキシングルーム8に配置されたが、吸気通路3に配置されていればよく、これに限られるものではない。
また、上記の実施の形態では、空燃比検出部13は、バイパス通路3aに配置されたが、吸気通路3において燃料吐出部10の下流側に配置され、吸気通路3の空気と燃料とが混合された混合気の空燃比を検出できればよく、これに限られるものではない。
【0055】
また、上記の実施の形態では、推定部15は、ガス燃料の性質の変化を推定したが、燃料の性質の変化を推定できればよく、これに限られるものではない。
【0056】
また、上記の実施の形態では、推定装置6は、車両に配置されたが、吸気通路3において混合気の空燃比を検出できればよく、これに限られるものではない。例えば、推定装置6は、船舶、産業機械または定置式内燃機関を設置した工場などに配置することができる。
【0057】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示に係る推定装置は、内燃機関に供給される燃料の性質の変化を推定する装置に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 内燃機関
2 燃料タンク
2a 調圧弁
3 吸気通路
3a バイパス通路
4 内燃機関制御装置
5 吸気スロットル
6 推定装置
7 内燃機関制御部
8 ミキシングルーム
9 流入部
9a 流入口
10 燃料吐出部
10a 吐出口
11 上流側圧力検出部
12 ルーム内圧力検出部
13 空燃比検出部
14 下流側圧力検出部
15 推定部
図1
図2