(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150219
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/533 20060101AFI20220929BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20220929BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/532 200
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052713
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA04
3B200BA08
3B200BB09
3B200BB17
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】体液拡散性に優れ、吸収性能、吸収速度及び逆戻り防止性を高水準で兼ね備え、着用感、フィット性にも優れた薄型吸収体を備える吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、これらの間に配置された吸収体20とを備え、吸収体20は、吸収性繊維を含有しないものであって、吸収性シート25を有し、吸収性シート25は、ポリウレタン連続多孔質体シート21の複層間に封入された高吸収性ポリマー12を有し、ポリウレタン連続多孔質体シート21の複層間が、高吸収性ポリマー12を封入するブロック状の空間61を形成するように接合されており、吸収性シート25は、長手方向に沿って帯状の圧搾溝23を有する吸収性物品50。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維を含有しないものであって、吸収性シートを有し、
前記吸収性シートは、ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間に封入された高吸収性ポリマーを有し、
前記ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間が、前記高吸収性ポリマーを封入するブロック状の空間を形成するように接合されており、
前記吸収性シートは、長手方向に沿って帯状の圧搾溝を有することを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性シートは、複数の前記圧搾溝を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記圧搾溝の幅が、2mm以上30mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記圧搾溝の長さが、前記吸収性シート全体の長さの20%以上90%以下である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記圧搾溝の深さが、吸収性シート全体の厚さの10%以上80%以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
複数の前記圧搾溝があるときの前記圧搾溝間に存在する前記高吸収性ポリマー、及び、前記圧搾溝の周囲20mm以内に存在する前記高吸収性ポリマーが、前記ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間に固定されている、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ポリウレタン連続多孔質体シートは、坪量が30g/m2以上300g/m2以下であり、且つ見かけ密度が100kg/m3以上200kg/m3以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記ポリウレタン連続多孔質体シートは骨格表面が親水性である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性シートにおける前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m2以上300g/m2以下である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体とを備え、トップシートを透過してきた尿等の体液を吸収体で吸収及び保持し、バックシートで体液が着用者の衣服等に接触しないように構成されている。吸収性物品には、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品や、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等、用途に応じて様々な形態が存在し、乳幼児、成人及び高齢者を問わず広く汎用されている。
【0003】
吸収性物品の最近の課題の一つに、吸収性物品を着けていることが目立たない、また着用時に違和感がなく、着けている感がない薄型の吸収性物品の提供がある。薄型の吸収性物品を設計する場合、通常、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が検討され、薄型の吸収体を用いた吸収性物品が多く提案されている。
【0004】
特許文献1には、トップシートと吸収体との間に配設されたセカンドシート、及び肌側面(トップシート表面)において吸収体の輪郭に沿って設けられた平面視環形状の防漏溝(圧搾溝)を有し、吸収体の密度が0.12g/cm
3より高く、セカンドシートの毛管力が1.5×10
3N以上である吸収性物品が開示され(請求項1、段落0008、
図1)、吸収体の具体例としては二枚の吸収紙又は不織布の間に高吸収性ポリマーの粒子を挟持固定し、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含有しない吸収性シートが開示されている(段落0041)。特許文献1によれば、吸収体の密度とセカンドシートの毛細管力とを最適化することにより、吸収体の薄さと優れた吸収力とを高いレベルで両立して、着用時に安心と、快適な着用感を与えることができる(段落0004)、と記載されている。
【0005】
特許文献2には、上部吸収層(肌側に配置された不織布)と、上部吸収層の非肌側に対向配置された下部吸収層(非肌側に位置する親水性多孔体と、親水性多孔体の肌側表面に固着された高吸収性ポリマー)とを有し、吸収性繊維を含有しない吸収性シートを吸収体として用い、下部吸収層は実質的に縦長であり、下部吸収層の幅方向中央部は、下部吸収層の他の部位に比して、高吸収性ポリマーの分布量が少ない吸収性物品が開示されている(
図2、要約書)。親水性多孔体としては、セルロール系スポンジ、ウレタン系フォーム等が例示されている(段落0014)。特許文献2によれば、下層吸収層に親水性多孔質体を用い、吸収性ポリマーの分布を最適化することにより、液拡散性、液保持性を高く保持しつつ、厚みが薄く、吸収速度を速くすることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-067897号公報
【特許文献2】特開2009-131349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2では、吸収体として吸収性シートを用いることで、吸収性物品の薄型化を図っているものの、吸収性物品を、特許文献1や特許文献2に記載のようにして薄型化、軽量化する場合、ある程度の吸収性能を犠牲にしなければならない。特に、吸収体面積の狭い軽失禁製品や尿取りパッドにおいては十分な吸収性能が保たれず、吸収性物品の現在の課題の一つである複数回の体液吸収への対応は困難である。
【0008】
また、吸収性物品において、吸収の速さ(以下「吸収速度」ともいう)と逆戻り量の少なさは、吸収性能の指標としてどちらも重要であるが、吸収体として従来の吸収性シートを用いた薄型の吸収性物品においては両者を高い次元で満たすことは難しい。
【0009】
より具体的には、特許文献1の吸収性物品では、吸収性シートの内部で高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤し、互いに結着して大きな塊になり、体液の拡散性や吸収速度を低下させるゲルブロッキングが発生しやすくなる。また、特許文献1に記載の防漏溝は、吸収性物品の肌側面表層に設けられるものであり、吸収性シート内での体液拡散性を向上させるものではない。特許文献2の吸収性物品では、下部吸収層の幅方向中央部の高吸収性ポリマーの分布量を、下部吸収層の他の部位よりも少なくすることで、体液拡散性をある程度確保しているものの、上層吸収層である不織布と、下層吸収層の一部を構成する親水性多孔体とは液透過性に大きな差を生じ易いことから、体液の横漏れや逆戻り量の増加といった問題が発生し易くなる。
【0010】
本発明の目的は、体液拡散性に優れ、吸収性能、吸収速度及び逆戻り防止性を高水準で兼ね備え、着用感、フィット性にも優れた薄型吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、吸収性シートの肌側及び非肌側に配置されるシート材としてそれぞれポリウレタン連続多孔質体シートを用い、ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間に、高吸収性ポリマーを封入したブロック状の空間が形成されるように、該複層間を部分的に接合して吸収性シートを形成し、吸収性シートの肌側面に平面視帯状の圧搾溝を設けることで、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、次の吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に係る。
【0012】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維を含有しないものであって、吸収性シートを有し、
前記吸収性シートは、ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間に封入された高吸収性ポリマーを有し、
前記ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間が、前記高吸収性ポリマーを封入するブロック状の空間を形成するように接合されており、
前記吸収性シートは、長手方向に沿って帯状の圧搾溝を有することを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記吸収性シートは、複数の前記圧搾溝を有する、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記圧搾溝の幅が、2mm以上30mm以下である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記圧搾溝の長さが、前記吸収性シート全体の長さの20%以上90%以下である、上記(1)乃至上記(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記圧搾溝の深さが、吸収性シート全体の厚さの10%以上80%以下である、上記(1)乃至上記(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)複数の前記圧搾溝があるときの前記圧搾溝間に存在する前記高吸収性ポリマー、及び、前記圧搾溝の周囲20mm以内に存在する前記高吸収性ポリマーが、前記ポリウレタン連続多孔質体シートの複層間に固定されている、上記(2)乃至上記(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記ポリウレタン連続多孔質体シートは、坪量が30g/m2以上300g/m2以下であり、且つ見かけ密度が100kg/m3以上200kg/m3以下である、上記(1)乃至上記(6)のいずれかの吸収性物品。
(8)前記ポリウレタン連続多孔質体シートは骨格表面が親水性である、上記(1)乃至上記(7)のいずれかの吸収性物品。
(9)前記吸収性シートにおける前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m2以上300g/m2以下である、上記(1)乃至上記(8)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体液拡散性に優れ、吸収性能、吸収速度及び逆戻り防止性を高水準で兼ね備え、着用感、フィット性にも優れた薄型吸収体を備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すX
1-X
1切断線による幅方向の模式断面図である。
【
図3】
図1に示すY
1-Y
1切断線による長手方向の模式断面図である。
【
図4】圧搾溝形成前の吸収性シートの構成を示す模式断面図である。
【
図5】
図1に示す吸収性物品中での体液の流れを示す模式断面図である。
【
図6】別の本実施形態に係る吸収性物品の構成を示す幅方向の模式断面図である。
【
図7】比較例1に係る吸収性物品の構成を示す幅方向の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚さ方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る吸収性物品50について説明する。
図1乃至
図3は、吸収性物品50を示す。
図4は、吸収性シート前駆体26を示す。
図5は、吸収体20中の体液の代表的な流れ65を示す。
図6及び
図7は、それぞれ実施例7及び比較例1に係る吸収性物品50A、50Bを示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0017】
本実施形態の吸収性物品50は、乳幼児用、成人用及び高齢者用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁製品、軽失禁ライナー、尿取りパッド、生理用ナプキン等のパッド製品、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。これらの中でも、薄型であることと、複数回の吸収でも吸収量や吸収速度が低下しないことを利用して、特に軽失禁製品、尿取りパッド等のパッド製品として好適に使用できる。また、アウターとしての各種紙おむつ製品と、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法(最大寸法)、及び幅方向の寸法(最大寸法)はいずれも特に限定されないが、それぞれ、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整すると、種々の形態の吸収性物品が容易に得られる。
【0018】
図1及び
図2に示す吸収性物品50は、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10の肌側面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。
【0019】
吸収体20はフラッフパルプ等の吸収性繊維を含まない吸収性シート25を含み、
図2に示すように、肌側から非肌側に向けて、ポリウレタン連続多孔体シート21の複層と、該複層間に高吸収性ポリマー12を封入したSAP層とを有し、ポリウレタン連続多孔体シート21の複層間(SAP層)には、SAP層を面方向にブロック状空間61に分割し、かつポリウレタン連続多孔体シート21の複層間を部分的に接合する平面視帯状の接合部60が縦横に設けられ、吸収性シート25の肌側面には、肌側から非肌側に向けて凹む圧搾溝23が設けられている。
【0020】
本実施形態によれば、ポリウレタン連続多孔質体シート21の複層間を接合部60により部分的に接合し、該複層間をブロック状の空間61に分割し、ブロック状の空間61の中に高吸収性ポリマー12を封入し、肌側面に平面視帯状の圧搾溝23を設けて吸収性シート25を構成している。この構成によれば、次の第1、第2、第3の効果が得られる。
第1に、吸収性シート25の肌側素材及び非肌側素材にポリウレタン連続多孔質体シート21を用いて肌側素材と非肌側素材との液透過性の差異をなくし、圧搾溝23が吸収性シート25全体の体液拡散性を顕著に向上させることで、体液の横漏れ、逆戻り等の発生が顕著に抑制される。
第2に、ポリウレタン連続多孔質体シート21の複層間を、高吸収性ポリマー12を封入する複数のブロック状空間61に分割し、更に圧搾溝23を設けることで、体液を吸収した高吸収性ポリマー12が膨潤及び結着し、体液の拡散を抑制する一つの大きな塊になるゲルブロッキングの発生が防止されるので、吸収性物品50の使用初期から使用終期まで優れた体液拡散性を維持し、特に繰り返し吸収の際に吸収速度や吸収量が低下することがない。
第3に、ポリウレタン連続多孔質体シート21は細孔を多く含み、適度な弾力を有する構造により、体液吸収前には高吸水性ポリマー12の硬さを感じ難く、体液吸収直後にはブロック状空間に分割されることで高吸収性ポリマー12のゼリー状に膨潤した圧迫感が分散され、体液吸収後には高吸収性ポリマー12が膨潤及び固化したゴツゴツ感を緩和する上に、ブロック状空間61内に高吸水ポリマー12が配置されていることで、ポリマーのズレ、移動が抑えられて、体液の吸収後も厚さや触感を長手方向、幅方向でより均一に保つことができるため、着用感、フィット性が向上する。
したがって、本実施形態によれば、体液吸収後の膨潤が抑制されることで、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、逆戻り量が少なく、体液の拡散に優れ、吸収性及び着用感の良好な薄型の吸収体20及び吸収体20を備える吸収性物品50が提供される。
【0021】
本実施形態の吸収性物品50は、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を基本構成単位とするものであり、必要に応じて、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間への液透過性のトランスファシート(不図示)や液透過性のセカンドシートの配設等の、公知の様々な改変を施すことができる。以下、吸収性物品50の構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0022】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合シート、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも不織布が好ましく、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等がより好ましい。
【0023】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、18g/m2以上400g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0024】
<吸収体>
吸収体20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の吸収体20は、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含有しない吸収性シート25と、吸収性シート25を包む親水性シート24とを含んでいる。吸収性シート25については後に詳述する。親水性シート24は、例えば、その幅方向中央部付近に吸収性シート25の非肌側面を載置し、必要に応じてこれら接着した後、親水性シート24の幅方向両側をC折りにより吸収性シート25の肌側で重ね合わせ、必要に応じて重ね合わせた部分を接着することで、吸収性シート25全体を包む。親水性シート24は、前述のように吸収性シート25の全体を包むだけでなく、吸収性シート25の非肌側面、幅方向両側面、及び肌側面の幅方向両端部付近を覆い、トップシート10と吸収性シート25との間で、親水性シート24の幅方向両端が離隔しつつ対向して、長手方向に延びるスリット状空間が形成されるように吸収性シート25を包んでもよい。
【0026】
(親水性シート)
親水性シート24としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。親水性シート24の厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。以下、吸収性シートを構成する各部材について説明する。
【0027】
(ポリウレタン連続多孔体シート)
ポリウレタン連続多孔体シート21は、吸収性シート25の肌側素材及び非肌側素材の両方に用いられ、ポリウレタン連続気泡発泡体(以下「軟質ポリウレタンフォーム」ともいう)を主成分として含み、良好な液透過性を有し、柔軟性に富む。ポリウレタン連続多孔体シート21は、良好な液透過性を有するものの、親水性不織布等に比べると、液透過性に劣る。この特性を利用して、
図5に示すように、吸収性シート25内に侵入してきた体液は、非肌側のポリウレタン連続多孔体シート21に衝突して、矢印65に示すように、面方向(長手方向及び幅方向)に流れ、吸収性シート25全体に行き渡り易くなる。なお、トップシート10を透過してきた体液は、吸収性シート25内部に透過する際に、瞬間的には肌側のポリウレタン連続多孔体シート21の抵抗を受けるものの、吸収性シート25の肌側面には後述する圧搾溝23が形成されているので、体液は吸収性シート25全体に速やかに吸収され、横漏れや液戻りの発生が防止される。ここで、「主成分として含む」とは、軟質ポリウレタンフォームを全体の50質量%以上含有することを意味する。ポリウレタン連続多孔体シート21には、例えば、軟質ポリウレタンフォームを主成分として含有する単層シート、軟質ポリウレタンフォームからなる単層シート等を使用できる。
【0028】
ポリウレタン連続多孔体シート21は、例えば、トップシート10を透過してきた体液を吸収体20(吸収性シート25)全体に万遍なく拡散させる。ポリウレタン連続多孔体シート21は柔軟性をも有し、体液吸収前は高吸収性ポリマー12の粒子のざらつき感を緩和し、体液吸収後は高吸収性ポリマー12が膨潤して生じるゼリー状の圧迫感、体液を吸収して膨潤及び硬化した後のゴツゴツ感を緩和するので、吸収性物品50の着用感が大きく向上する。
【0029】
軟質ポリウレタンフォームは、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート等の原料化合物、発泡剤、整泡剤、触媒等の添加剤等を混合し、得られた混合物を加熱して発泡させることにより得ることができる。また、原料化合物を加熱下に反応させつつ、気体系の発泡剤を注入してもよい。原料化合物の種類、添加剤の種類と添加量、発泡時の加熱温度、発泡時間、発泡時の加圧力といった反応条件を適宜選択することにより、軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率、見かけ密度、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、平均摩擦係数(MIU)、摩擦係数変動(MMD)等の各特性を調整できる。例えば、軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率は、体液拡散性、柔軟性等の観点から、10倍以上60倍以下の範囲である。また、軟質ポリウレタンフォームは、抽出法、W/Oエマルション法等に従って製造することもできる。
【0030】
ポリウレタン連続多孔体シート21の坪量及び見かけ密度は、体液拡散性や柔軟性、液戻りや体液漏れの防止性、通気性や蒸れ等の観点から、それぞれ、坪量が例えば30g/m2以上300g/m2以下の範囲、又は50g/m2以上250g/m2以下の範囲から選択され、見かけ密度は、吸収体20全体としての機械的強度、体液吸収後の吸収体20のずり落ち防止、柔軟性等の観点から、100kg/m3以上200kg/m3以下の範囲、又は120g/m2以上180g/m2以下の範囲から選択される。
【0031】
ポリウレタン連続多孔体シート21の厚みは、例えば、1.0mm以上4.0mm以下の範囲、又は1.5mm以上3.2mm以下の範囲である。厚みは、例えば「ハイトゲージ」((株)ミツトヨ製)を用いて、無荷重条件下で測定する。
【0032】
ポリウレタン連続多孔体シート21に含まれる軟質ポリウレタンフォームの骨格表面は親水性でも疎水性でもよいが、体液の濡れ易さ等の観点から、好ましい実施形態では骨格表面は親水性である。なお、親水性を有する骨格としては、ポリオールとポリアルキレンオキシドポリオールとを含有するものが挙げられる。また、疎水性骨格に界面活性剤やエチレンオキシド等に由来する親水性基を導入して親水化したものでもよい。骨格表面が親水性であるか否かは、まず、ポリウレタン連続多孔体シート21から幅10mm以上、長さ10mm以上の寸法で切り出した試料を撓みがないように平面上に静置し、次に、試料にイオン交換水の水滴(0.05mL)を10滴たらし、試料に吸収されるまでの時間を測定し、この時間が5秒以内である場合、又は8滴以上の水滴が吸収された場合を親水性であると判断する。
【0033】
<ブロック状空間>
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、ポリウレタン連続多孔体シート21の複層間において、肌側及び非肌側のポリウレタン連続多孔体シート21を部分的に接合し、該複層間の面方向に、高吸収性ポリマー12を封入するための複数のブロック状空間61を形成する接合部60が設けられている。本実施形態の接合部60は、平面視帯状であり、吸収性物品50の外縁近傍を該外縁に沿って長手方向及び幅方向にほぼ線状に延びる枠状領域と、枠状領域の内部を長手方向にほぼ等間隔にかつ幅方向にほぼ線状に延びて、枠状領域の内部を複数のほぼ同寸のブロック状空間61に分割する複数の区画領域と、を含む。枠状領域は、本実施形態に限定されず、吸収性物品50の外縁に沿って長手方向及び幅方向にほぼ線状に延びるように設けてもよい。また、区画領域の本数は1本でも任意の複数本でもよい。接合部60の幅方向寸法、長手方向及び幅方向の各本数や配置等は、ブロック状空間61への高吸収性ポリマー12の封入量、接合部60の形成方法等に応じて肌側及び非肌側のポリウレタン連続多孔体シート21の剥がれがないように適宜選択される。接合部60は、例えば、ホットメルト接着剤を含んで構成され、又はヒートシール、超音波シール等による溶着領域でもよい。
【0034】
複数のブロック状(又は矩形状)空間61は、本実施形態では、長手方向に並列され、その四囲を接合部60で囲まれた閉空間であり、高吸収性ポリマー12が封入されている。ブロック状空間61への高吸収性ポリマー12の各封入量は同じでもよく異なっていてもよいが、高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、30g/m2以上300g/m2以下の範囲である。これにより、体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマー12が広範囲にわたって結着し、体液の拡散を妨げるゲルブロッキングの発生が防止されるので、体液を繰り返し吸収しても、吸収速度、吸収量等の吸収性能の低下が顕著に少なくなる。ポリウレタン連続多孔体シート21の複層間に設けられたブロック状空間61の平面視形状は、本実施形態では略矩形であるが、これに限定されず、三角形(特に正三角形)、六角形(特に正六角形)、円形、同心円形等の種々の形状とすることができる。
【0035】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマー12は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
高吸収性ポリマー12は、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマー12を用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0037】
高吸収性ポリマー12をブロック状空間61内に封入するには、例えば、ホットメルト接着剤が用いられる。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマー12の吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m2以下の範囲である。
【0038】
<圧搾溝>
本実施形態の圧搾溝23は、
図2、
図3に示すように、吸収性シート25の肌側面を長手方向に沿ってほぼ線状に延び、肌側のポリウレタン連続多孔体シート21が非肌側に凹んで、その非肌側面が。非肌側のポリウレタン連続多孔体シート21の肌側面と接するか又は接合するように設けられている。すなわち、圧搾溝23は、吸収性シート25の肌側面に設けられた溝である。圧搾溝23には、長手方向に延びる接合部60に沿って形成される第1形態、長手方向に延びる接合部60とそれに沿うブロック状空間61との境界付近に形成される第2形態、長手方向に連なる複数のブロック状空間61を長手方向に貫通するように形成される第3形態等があるが、吸収性シート25の体液受液量を増加させ、横漏れや逆戻りを防止する観点からは、第3形態が好ましい。圧搾溝23は、例えば、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して、吸収性シート25の肌側面に形成することができる。
【0039】
ここで、圧搾溝23の数は、1本でも複数本でもよく、圧搾溝23の底面の形状は本実施形態では略平面であるが、これに限定されず、斜面、断面視円形、凹凸を有する形状、これらの2以上の形状が組み合わされた形状等でもよい。圧搾溝23は、本実施形態ではほぼ線状であるが、これに限定されず、直線と曲線とを組み合わせた線形状、曲線状等でもよい。
【0040】
このような形態で圧搾溝23を設けることで、吸収性シート25全体の体液拡散性が顕著に向上し、ゲルブロッキングの発生が抑制されて、複数回の繰り返し吸収をしても、吸収速度や吸収量の低下が防止される。また、多量の体液が一度に排出されても、横漏れ、逆戻り等の発生が防止される。
【0041】
圧搾溝23の幅は、例えば、2mm以上30mm以下の範囲、又は3mm以上25mm以下の範囲である。圧搾溝23の長さは、例えば、吸収性シート25全体の長さの20%以上90%以下の範囲、又は30%以上80%以下の範囲である。圧搾溝23の形成位置には、例えば、吸収性シート25の長手方向の一端から長手方向途中部までの範囲、吸収性シート25の長手方向の一の途中部から他の途中部までの範囲等がある。圧搾溝23の深さは、例えば、吸収性シート25全体の厚さの10%以上80%以下の範囲、又は20%以上70%以下の範囲である。ここで、圧搾溝23の深さとは、吸収性シート25の肌側面における圧搾溝23の開口面から底面に下した垂線の長さである。任意の5点で垂線の長さを測定し、得られた測定値を平均して深さとする。吸収性シート25の全体厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下に測定される。なお、複数の圧搾溝23が存在するとき、複数の圧搾溝23の幅、長さ及び/又は深さは同じでもよく異なっていてもよい。
【0042】
好ましい実施形態では、吸収性シート25が複数の圧搾溝23を有するとき、複数の圧搾溝23は幅方向に隣り合い、一の圧搾溝23と他の圧搾溝23との間には、ポリウレタン連続多孔体シート21の複層間(又はブロック状空間61内)に封入された高吸収性ポリマー12が存在する。このような高吸収性ポリマー12は、本実施形態では、該複層間(又はブロック状空間61内)に固定されている。また、吸収性シート25が有する圧搾溝23の本数に関係なく、圧搾溝23の周囲、特に幅方向の周囲には高吸収性ポリマー12が存在する。そして、圧搾溝23の周囲20mm以内に存在する高吸収性ポリマー12は、本実施形態では、前述の複層間(又はブロック状空間61内)に固定されている。高吸収性ポリマー12を固定化した範囲を、SAP固定領域ともいう。この実施形態によれば、吸収性物品50の使用初期から終期までの間、体液流路となって吸収性シート25の体液拡散性を高水準に保持する圧搾溝23の周囲で高吸収性ポリマー12の移動が抑制されることから、圧搾溝23の周囲でのゲルブロッキングの発生が顕著に抑制され、圧搾溝23から吸収性シート25全体への体液流路が確保され、吸収速度や吸収量の低下が確実に防止される。また、吸収性物品50の着用者が使用初期から終期までの間に、姿勢のバランスを崩して吸収性物品50の水平状態を維持できず、吸収性物品50の前後左右の上下方向のいずれかに傾斜した場合でも、圧搾溝23の周辺に高吸収性ポリマー12が固定化されているため、体液吸収後に圧搾溝23の両側に固定化された膨潤した高吸収性ポリマー12の壁が長手方向に沿って形成維持されることで、吸収速度や吸収量の低下が確実に防止される。
【0043】
<吸収性シート及び吸収体の製造方法>
本実施形態の吸収性シート25は、例えば、非肌側に配置されるポリウレタン連続多孔体シート21の肌側面において、接合部60の形成予定領域を残して、所定のパターンで高吸収性ポリマー12を散布する工程と、必要に応じて、ホットメルト接着剤を供給して複数の圧搾溝23間に存在する高吸収性ポリマー12、及び圧搾溝23の形成予定領域から周囲20mm以内に存在する高吸収性ポリマー12を固着する工程と、非肌側のポリウレタン連続多孔体シート21の高吸収性ポリマー12を散布又は固着した肌側面に肌側に配置されるポリウレタン連続多孔体シート21の非肌側面を重ね合わせ、
図4に示す吸収性シート前駆体26を得る工程と、吸収性シート前駆体26を加圧及び/又は加熱しつつ接合部60を形成する工程と、接合部60を有する積層体に圧搾溝23を形成する工程と、を含む製造方法により作製できる。なお、接合部60は、例えば、ホットメルト接着剤を用いて、又はヒートシール、超音波シール等の溶着方法で形成できる。得られた吸収性シート25を親水性シート24で前述のように包むことにより、吸収体20が得られる。ここで使用するホットメルト接着剤及びその塗布方法は、高吸収性ポリマー12を固着担持させるホットメルト接着剤と同じである。
【0044】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた通気性又は非通気性の基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0045】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施できる。
【0046】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0047】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0048】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの目付は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0049】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造でき、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0050】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0051】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0052】
(実施例1~7及び比較例1)
(吸収性物品の作製)
肌側に配置される肌側素材及び非肌側に配置される非肌側素材としてポリウレタン連続気泡発泡体シート(骨格表面が親水性、坪量80g/m
2、厚さ2.0mm、見かけ密度140kg/m
3)を用い、表1に示す構成及び
図2(実施例1~6、圧搾溝を2個有する)、
図6(実施例7、圧搾溝を1個有する)、及び
図7(比較例1、圧搾溝を有さない)に示す構造を有する吸収性シートを作製した。得られた各吸収性シートを、スパンボンド不織布(親水性シート、坪量12g/m
2)でC折りして包んだ、寸法420mm×150mmの各吸収体を使用した。
【0053】
また、液透過性のトップシートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m2)を、液不透過性のバックシートとして通気性ポリエチレンシート(坪量35g/m2)を、立体ギャザーとしてスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布をこの順で積層した複合不織布(坪量15g/m2)を用いた。トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体肌側面とを接合し、実施例1~7及び比較例1の、長手方向寸法480mm、幅方向寸法200mmの吸収性物品を作製した。
【0054】
実施例1~7及び比較例1の吸収性物品について、次の評価を実施した。結果を表1に示す。
(総吸収量)
生理食塩水中に5分間浸漬した後、金網上で30秒間水切りし、吸収前後の重量差を計測する。
(繰り返し吸収速度)
底面140mm×100mm、外径40mm、内径35mm、重量1400gの治具を用いて、荷重下120mlの生理食塩水を10分間隔で3回注水し、3回目の注水分120mlを吸収する時間を測定する。
(液戻り)
吸収速度3回測定終了後、10分後に35gf/cm2荷重条件で、径55mmのろ紙に1分間で逆戻り吸収した水分重量(g)を測定する。
(拡散長さ)
吸収速度3回測定終了後の生理食塩水を吸収した部分の最大長さを測定する。
【0055】
【0056】
表1から、本実施形態の吸収性シートを親水性シートでC折りした吸収体を用いることにより、体液拡散性が良好で、体液吸収量及び繰り返し吸収速度が高い水準に維持され、液戻り防止性にも優れた薄型の吸収性物品が得られることが分かる。なお、実施例1~7の吸収性物品は、体液吸収前は高吸収性ポリマーのざらざら感を感じることがなく、体液吸収後は直後の圧迫感が少なく、高吸収性ポリマーが膨潤及び固化したゴツゴツ感が大きく緩和され、非常に良好な着用感、フィット性を有していた。