(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150234
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】冷凍食品用の組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220929BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20220929BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20220929BHJP
A23G 9/48 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A23D9/00 512
A23G1/00
A23G9/32
A23G9/48
A23D9/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052739
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 央往
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB03
4B014GE02
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GG16
4B014GK03
4B014GK07
4B014GL06
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP12
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4B014GY03
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4B026DL03
4B026DL05
4B026DL08
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX02
(57)【要約】
【課題】ツヤが良好で、白っぽさがなく、かつざらざら感がないブラック系の表面を冷凍商品に形成することができる、冷凍食品用のブラック系組成物を提供する。
【解決手段】アルコール類を含み、凍結点が-11.1℃未満であり、脂肪率が9.35質量%以下である、冷凍食品用のブラック系組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール類を含み、
凍結点が-11.1℃未満であり、
脂肪率が9.35質量%以下である、冷凍食品用のブラック系組成物。
【請求項2】
黒色材料を含む、請求項1に記載のブラック系組成物。
【請求項3】
前記アルコール類の含有率が2.5質量%を超える、請求項1または2に記載のブラック系組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のブラック系組成物が表面の少なくとも一部に露出している冷凍食品。
【請求項5】
冷菓である、請求項4に記載の冷凍食品。
【請求項6】
カップ容器入りの冷菓である、請求項5に記載の冷凍食品。
【請求項7】
冷凍食品用のブラック系組成物の製造方法であって、
ブラック系組成物の各原料を混合し溶解させて原料混合液を調製する工程を含み、
前記原料としてブラック系組成物の凍結点が-11.1℃未満になる量のアルコール類、およびブラック系組成物の脂肪率が9.35質量%以下になる量の脂肪分を含む、冷凍食品用のブラック系組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法によって冷凍食品用のブラック系組成物を製造する工程、および製造したブラック系組成物を所定の形状を有する冷凍食品の形態に加工する工程を含む、冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品用の組成物に関するものであり、冷凍食品にも関する。冷凍食品は、例えば冷菓である。また、本発明は、かかる組成物を製造する方法および冷凍食品を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
冷菓は年間を通じて食される代表的な嗜好食品となっている。新しい味、食感、形態等に対する消費者の関心も高く、新商品の開発が盛んに行われている。冷菓において、外観の向上は重要な課題の一つである。
【0003】
特開2016-129494号公報(特許文献1)には、冷菓にコーティングしたときに艶が良好である冷菓コーティング用チョコレートが開示されている。このようなチョコレートはブラック系の色味を有しており一種のブラック系組成物といえる。
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来技術では、コーティングの表面のツヤが十分ではなく、色合いに黒っぽさが不足していて白っぽさが生じることがあり、食感に多少のザラザラ感が感じられる傾向にあることから、さらにツヤ、色合い、食感にすぐれ、コーティング用として好適な組成物が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ツヤが良好で、白っぽさがなく、かつざらざら感がないブラック系の表面を冷凍商品に形成することができる、冷凍食品用のブラック系組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に例示する[1]~[6]に関する。
[1] アルコール類を含み、
凍結点が-11.1℃未満であり、
脂肪率が9.35質量%以下である、冷凍食品用のブラック系組成物。
[2] 黒色材料を含む、[1]に記載のブラック系組成物。
[3] 前記アルコール類の含有率が2.5質量%を超える、[1]または[2]に記載のブラック系組成物。
[4] [1]~[3]のいずれか1項に記載のブラック系組成物が表面の少なくとも一部に露出している冷凍食品。
[5] 冷菓である、[4]に記載の冷凍食品。
[6] カップ容器入りの冷菓である、[5]に記載の冷凍食品。
[7] 冷凍食品用のブラック系組成物の製造方法であって、
ブラック系組成物の各原料を混合し溶解させて原料混合液を調製する工程を含み、
前記原料としてブラック系組成物の凍結点が-11.1℃未満になる量のアルコール類、およびブラック系組成物の脂肪率が9.35質量%以下になる量の脂肪分を含む、冷凍食品用のブラック系組成物の製造方法。
[8] [7]に記載の製造方法によって冷凍食品用のブラック系組成物を製造する工程、および製造したブラック系組成物を所定の形状を有する冷凍食品の形態に加工する工程を含む、冷凍食品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ツヤが良好で、白っぽさがなく、かつざらざら感がない、ブラック系の表面を冷凍食品に形成することができる冷凍食品用のブラック系組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の冷菓の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図3に示す光源ユニットの上方斜視図である。
【
図6】(a)明領域、(b)暗領域のヒストグラムの一例を示す図である。
【
図7】(a)サンプル1、(b)サンプル2、(c)サンプル3、(d)サンプル4の撮影画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
なお、本明細書において「~」で表される数値範囲は、特に断りのない限り、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0010】
[ブラック系組成物]
本発明に係る冷凍食品用のブラック系組成物は、アルコール類を含み、凍結点が-11.1℃未満であり、脂肪率が9.35質量%以下である。ブラック系組成物は、黒色材料を含むことが好ましい。ブラック系組成物は、優れた外観を提供できることから、冷凍食品の表面の少なくとも一部に露出している態様が好適であり、食品をコーティングする用途が好適である。
【0011】
ブラック系の色味は、観察者によりブラック系であると視認される色味であれば限定されるものではなく、L*a*b*色空間における色差測定にて測定されるL*値の値が、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下である。
なお、本発明において、L*a*b*色空間における色差(CIE Lab表色系)のL*値は以下のとおりに測定される。すなわち、測定対象となる組成物をガラスセルに入れ、ガラスセル中の組成物に対して、分光白色度計・色差計PF7000(日本電色工業株式会社、FMVA1603GP)を用いて測色を行う。
【0012】
ブラック系組成物を用いてコーティングされる場合の冷凍食品としては、冷菓、フローズンデザート、冷凍生地、および冷凍パン等が挙げられる。ブラック系組成物は、冷凍食品の表面の少なくとも一部に露出することを肉眼で視認できる状態であれば好ましく、例えば、冷凍食品の少なくとも一つの表面を被覆していれば、冷凍食品の外観、味、保存性を向上させることができる。
【0013】
冷凍食品は、好ましくは-15℃以下、より好ましくは-18℃以下で冷凍保存され、例えば-30℃以上で冷凍保存される。しかし、0℃以下、-1℃以下、-2℃以下、-3℃以下、-4℃以下、-5℃以下、-6℃以下、-7℃以下、-8℃以下、-9℃以下、-10℃以下、-11℃以下、-12℃以下、-13℃以下、-14℃以下で保存されるものであってもよい。本発明者らは、従来のブラック系組成物によりコーティングされている冷菓の表面は、上記温度範囲での冷凍保存により、ツヤが不足している、白っぽさがある、ざらざら感がある、等の外観上の問題が生じることを知見した。本発明のブラック系組成物によると、冷凍食品に、ツヤが良好で、白っぽさがなく、ざらざら感がないブラック系の表面を形成することができる、かかる外観は1年以上、2年以上、さらには3年以上の冷凍保存を経ても維持することができる。
冷凍食品としては、例えば冷凍した状態で食する冷凍チョコレートのように、本発明のブラック系組成物をそのまま食する態様であってもよい。また、冷凍ケーキのような菓子類に本発明のブラック系組成物をトッピングする態様なども例示できる。ブラック系組成物は、冷凍した状態から可及的に解凍せずに可及的に凍結した状態で喫食する態様であれば、ブラック系組成物の効果をより享受することができるため好ましい。かかる態様としては、含有する水分が凍結した状態で喫食する食品が好ましく、この場合、全体が凍結しているもののほかに一部が凍結しているものであってもよい。
【0014】
図1は、本発明に係る冷菓の一形態を示す図で概略断面図である。
図2は、
図1に示す冷菓の上面図である。
図1に示すように、冷菓100は、底部と側壁を有する使い捨ての容器101内にある。冷菓100は、容器101内に入れられて、容器の形状に適合している。冷菓100は、冷菓本体102と、冷菓本体102の上面に形成されたコーティング層103と、を有する。冷菓100の上部表面は、容器101と接触していない。冷菓100は、不図示の蓋体により容器101の上部が覆われた状態で冷凍保存され、喫食時に蓋体が除かれて冷菓100の上部表面が冷菓100の外観として喫食者に最初に視認される。本発明のブラック系組成物によると、冷菓100の上面に、ツヤが良好で、白っぽさがなく、ざらざら感がないブラック系組成物からなるコーティング層103を形成することができる。コーティング層103の厚さは、例えば、1mm以上であり、好ましくは3mm以上であり、さらに好ましくは5mm以上である。コーティング層103の厚さは、例えば、20mm以下であり、好ましくは10mm以下である。容器101は、紙、プラスティック等の材料からなる。
図1の冷菓100を製造する手順の一例は次のとおりである。まず、冷菓本体102について、常法どおり、冷菓本体102の原料を湯に溶解した後予備乳化して原料ミックスを調製する。調製した原料ミックスを均質化、加熱殺菌し、所望のオーバーランになるように空気を混入させながら、撹拌、凍結等フリージング工程を経た上で、容器101に充填すれば
図1の冷菓本体102とすることができる。次いで、別途調製したブラック系組成物を容器101中の容器本体102の上に充填してコーティング層103とする。そして、不図示の蓋体を被冠して最終的に冷菓100とする。その後、冷菓100を冷凍庫等に保管して凍結する。なお凍結する手順としては、冷菓本体102を容器101に充填した後に凍結し、その後、ブラック系組成物を容器101中の容器本体102の上に充填する手順であってもよい。
【0015】
冷菓は、コーティング層を有する多層冷菓が好ましく、
図1に示す形態に限定されない。多層冷菓は、容器や型に、順次、原料を充填する方法により製造することができる。ブラック系組成物は、冷菓本体の凍結点の温度で流動性を有するものが好ましい。このようなブラック系組成物を用いることにより、凍結状態にありブラック系組成物と混合しない状態にある冷菓本体の表面に、ブラック系組成物によりコーティング層を形成することができる。コーティング層の形成方法は特に限定されることはなく、ディッピング法、スプレー法、エンロービング法等を挙げることができる。
また、冷菓としては、冷菓の表面にブラック系組成物が露出しており、消費者がブラック系組成物を肉眼で視認できる状態であれば、本発明の効果を享受することができる。例えば、ブラック系組成物を内部に内包し外部をアイスクリームで被覆した冷菓であれば、内部のブラック系組成物の一部が外部のアイスクリームの外側に露出していれば、その一部を消費者が肉眼で視認することができる。その場合、消費者が視認した本発明のブラック系組成物の範囲は、ツヤが良好で、白っぽさがなく、かつざらざら感がないものであるから、商品としての価値を高めることができる。
【0016】
容器は、形状を保つことができるものであれば材質は限定されることはなく、紙、プラスティックなどの不可食物であってもよく、モナカ、コーン、チョコレート、焼き菓子等の可食物であってもよい。コーティング層の形成は、ブラック系組成物を容器や型に充填する方法に限定されることはなく、型から取り出した冷菓本体に対して、コーティングを施してもよい。
【0017】
(凍結点)
ブラック系組成物は、凍結点が-11.1℃未満である。凍結点は-12.0℃以下が好ましく、-13.0℃以下がより好ましく、-13.9℃以下がさらに好ましく、-14.0℃以下がさらに好ましく、-14.9℃未満がさらに好ましく、-16.2℃以下がとくに好ましい。
詳細に言えば、-11.2℃以下、-11.4℃以下、-11.6℃以下、-11.8℃以下、-12.2℃以下、-12.4℃以下、-12.6℃以下、-12.8℃以下、-13.2℃以下、-13.4℃以下、-13.6℃以下、-13.8℃以下、-14.2℃以下、-14.4℃以下、-14.6℃以下、-14.8℃以下、-15.0℃以下、-15.2℃以下、-15.4℃以下、-15.6℃以下、-15.8℃以下、-16.0℃以下、であってもよい。
【0018】
ブラック系組成物がかかる数値範囲の凍結点を有することにより、ツヤがある表面を得やすくなり、例えば1ヶ月以上の冷凍保存を経てもツヤを維持することができる。ブラック系組成物は、凍結点に下限はとくにないが-33℃以上であることが好ましく、-32.1℃以上であることがより好ましい。ブラック系組成物の凍結点は、アルコール類、甘味料、他の添加成分の含有量等を調整することにより調節することができる。
【0019】
ブラック系組成物の凍結点の測定方法を説明する。まず、液状のブラック系組成物を雰囲気温度-35℃で冷却しながら、ブラック系組成物の温度を経時的に測定する。ここで、液体が固体になる反応には発熱反応が生じることから、前記の温度下で液体を冷却していくと、ある温度において一旦温度が下降しないポイント(凍結点)に達する。凍結点は、冷却中に組成物の温度が下降しないポイント(凍結点)における温度とする。
【0020】
(脂肪率)
ブラック系組成物は、脂肪率が9.35質量%以下である。ブラック系用組成物がかかる数値範囲の脂肪率を有することにより、白っぽさがなく、ざらざら感がない外観の表面を得やすくなり、例えば1ヶ月以上の冷凍保存を経ても白っぽさがなく、ざらざら感がない外観を維持することができる。脂肪率が9.35質量%を超えると、結晶化した脂肪が表面に微細な凹凸を形成し入射光を白けさせることにより、白っぽい外観となることがある。ブラック系組成物は、脂肪率が9.35質量%未満であることが好ましく、9.0質量%以下であることがより好ましく、7.35質量%以下がさらに好ましく、5.35質量%未満がさらに好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましく、3.35質量%以下がとくに好ましい。ブラック系組成物の脂肪率は、例えば0.1質量%以上とすることができる。
詳細にいえば、9.3質量%以下、9.2質量%以下、8.8質量%以下、8.6質量%以下、8.4質量%以下、8.2質量%以下、8.0質量%以下、7.8質量%以下、7.6質量%以下、7.4質量%以下、であってもよい。また、5.3質量%以下、5.2質量%以下、4.8質量%以下、4.6質量%以下、4.4質量%以下、4.2質量%以下、4.0質量%以下、3.8質量%以下、3.6質量%以下、3.4質量%以下、であってもよい。
ブラック系組成物の脂肪率は、脂肪分を有する全ての原料の脂肪量の合計値に基づき算出される値であり、脂肪分を有する原料として、油脂、ココアパウダーを含むチョコレート類、乳製品、ナッツ類、豆乳、卵、乳化剤等が該当する。
【0021】
脂肪量は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和二十六年十二月二十七日 厚生省令第五十二号。以下同じ。なお以下「乳等省令」と記載することがある。)に記載の、アイスクリーム類の乳脂肪分の定量法に準拠する方法で測定してもよい。
具体的には、試料4gを小型ビーカーに採り、水3mLを加えてよく混ぜ合わせ、レーリッヒ管に移す。前記ビーカーは、水3mLでよく洗い、その洗液を前記レーリッヒ管に加え、振り混ぜる。次に、アンモニア水(アンモニアの25~30%水溶液、無色透明なもの)2mLを加え、静かに混合する。次に、前記レーリッヒ管を60℃の水浴中につけ、時々振り混ぜながら20分間加温する。さらに2mLエタノール(95~96%水溶液)10mLを加えてよく混ぜ合わせる。
次いで、前記レーリッヒ管にエーテル25mLを加え静かに回転し、均一の色調となったときエーテルガスを抜き、管を水平にして30秒間激しく振り混ぜる。次に石油エーテル(沸点60℃以下)25mLを加え、同様に30秒間振り混ぜて栓を緩め、上澄液が透明になるまで直立して2時間以上静置する。上澄液を、予め恒量を求めたビーカーに入れる。
前記レーリッヒ管に、上記と同様の手順で、エーテル25mL及び石油エーテル25mLを加えて混ぜ、上澄液を前記ビーカーに入れる。側管の先端を、エーテルと石油エーテルの等量混合液で洗浄して前記ビーカーに加える。
前記ビーカーを、約75℃に加熱して溶剤を揮発させ、雰囲気温度100~105℃の乾燥器中で1時間乾燥した後、秤量する。ビーカーの恒量からの増加分を脂肪分とする。
【0022】
(アルコール類)
ブラック系組成物はアルコール類を含む。ブラック系組成物は、アルコール類を含むことにより、所望の凍結点に調整することが容易となる。アルコール類としては、食品に用いられるものであれば特に制限されず、アルコールまたはポリオールを用いることができる。アルコール類の含有量は、ブラック系組成物の凍結点が所望の値となるように調整されることが好ましく、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%を超え、特に好ましくは3.0質量%以上であり、さらに好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは6.25質量%を超え、さらに好ましくは7.5質量%以上または7.5質量%を超える数値である。
詳細には、2.6質量%以上、2.8質量%以上、3.2質量%以上、3.4質量%以上、3.6質量%以上、3.8質量%以上、4.0質量%以上、4.2質量%以上、4.4質量%以上、4.6質量%以上、4.8質量%以上、であってもよい。また、6.3質量%以上、6.4質量%以上、6.6質量%以上、6.8質量%以上、7.0質量%以上、7.2質量%以上、7.4質量%以上、であってもよい。
また、アルコール類の上限はとくにないが、風味の点からみて、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、とくに好ましくは15質量%以下、が望ましい。
【0023】
ブラック系組成物は、アルコール類として、エタノールを含むことができる。エタノールは、風味に大きく影響を与えることなく凍結点を調整することができる。エタノールの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上である。また、エタノールの含有量は、お酒に弱い人の存在を考慮すると、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0024】
ブラック系組成物は、ポリオールとして、グリセリンやプロピレングリコールを含むことができる。ブラック系組成物は、アルコール類としてグリセリンを含有する場合、グリセリンの含有量は、好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上である。また、グリセリンの含有量は、好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下、とくに好ましくは15質量%以下である。
【0025】
(黒色材料)
ブラック系組成物は好ましくは黒色材料を含む。黒色材料としては、食品に用いることができ当該食品の黒色を強めることができるものであれば特に限定されず、ココアパウダー、ブラックココアパウダー、コーヒー、木炭パウダー、竹炭パウダー、イカ墨パウダー、カラメル系色素、ココア色素、クロシン、チョコレート等が例示される。黒色材料の含有量は、ブラック系組成物について、L*a*b*色空間における色差測定にて測定されるL*値の値が、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下に調整される量であることが望ましい。
ブラック系組成物が、ブラックココアパウダーを含む場合は、その含有量は2.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上がさらに好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。
詳細にいえば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.4質量%以上、0.6質量%以上、0.8質量%以上、1.0質量%以上、1.2質量%以上、1.4質量%以上、1.6質量%以上、1.8質量%以上、2.0質量%以上、2.2質量%以上、2.4質量%以上、2.6質量%以上、2.8質量%以上であってもよい。また、3.2質量%以上、3.4質量%以上、3.6質量%以上、3.8質量%以上、4.0質量%以上、4.2質量%以上、4.4質量%以上、4.6質量%以上、4.8質量%以上、5.0質量%以上、5.0質量%を超え、5.2質量%以上、5.4質量%以上、5.6質量%以上、5.8質量%以上、6.0質量%以上、6.2質量%以上、6.4質量%以上、6.6質量%以上、6.8質量%以上、7.0質量%以上、7.2質量%以上、7.4質量%以上、7.5質量%以上、7.5質量%を超え、8.0質量%以上、8.5質量%以上、9.0質量%以上、9.5質量%以上、であってもよい。
【0026】
(油脂)
ブラック系組成物は油脂を含有していてもよい。ブラック系組成物に用いられる油脂としては、動物性油脂、植物性油脂、これらの加工油脂などが挙げられ、これらの中から1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
動物性油脂としては、例えば、乳脂(牛乳脂など)、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。植物性油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、シア脂、サル脂、カカオ脂等が挙げられる。植物性油脂及び/又は動物性油脂を水素添加等の加工を行った加工油脂としては、例えば、マーガリン、ショートニング等が挙げられる。
【0028】
(乳原料)
ブラック系組成物は乳原料を含有していてもよい。ブラック系組成物に用いられる乳原料としては、例えば、生乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、発酵乳、発酵乳パウダー、ブロックミルク等が挙げられる。
【0029】
乳原料としてより好ましくは、生乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、バター、ホエイパウダー等であり、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いても
よい。
【0030】
(甘味料)
ブラック系組成物は甘味料を含有していてもよい。ブラック系組成物に用いられる甘味料は、コーティング層に甘味を付与する原料を意味し、糖類及び糖類以外の甘味を付与する原料をも含む概念である。その具体例としては、例えば、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒砂糖など)、砂糖混合異性化糖、異性化糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、転化糖、還元麦芽水あめ、粉あめ、蜂蜜、パラチノース、トレハロース、D-キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチロール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等が挙げられる。ブラック系組成物においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(安定剤)
ブラック系組成物は安定剤を含有していてもよい。ブラック系組成物に用いられる安定剤は、例えば、ペクチン、繊維素グルコール酸ナトリウム(カルボキシメチルセルロース)、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、微結晶セルロース、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、マクロホモプシルガム、ゼラチン、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、大豆多糖類等が挙げられる。ブラック系組成物においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(乳化剤)
ブラック系組成物は乳化剤を含有していてもよい。ブラック系組成物に用いられる乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル(シャガーエステル)類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、レシチン、クエン酸又は乳酸等の有機酸モノグリセリド類、有機酸ジグリセリド類等が挙げられる。ブラック系組成物においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(他の成分)
ブラック系組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の材料を1種又は2種以上自由に選択して含有していてもよい。他の材料としては、例えば、水、酸味料、植物タンパク質、卵加工品、着香料、着色料、果汁や果肉(イチゴ、ブドウ、メロン、柑橘類など)、ジャム類、プレザーブ類、野菜類(ニンジン、スイカなど)、茶類(抹茶、紅茶、緑茶、烏龍茶など)、チョコレート類、キャラメル類、各種食材等が挙げられる。
【0034】
(その他)
ブラック系組成物の粘度は、コーティング層の形成しやすさの観点から、5℃において、100~10,000cpであることが好ましく、500~2,000cpであることがより好ましい。本明細書で規定する粘度は、B型粘度計を用いて常法により測定することができる。例えば、VISCOMETER RB-80L(東機産業株式会社製)にて、ローター回転数60rpmで測定することができる。ブラック系組成物の固形分濃度は、好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下である。ブラック系組成物の固形分濃度は、好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは45質量%以上であり、とくに好ましくは49質量%以上である。
【0035】
(製造方法)
ブラック系組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、ブラック系組成物の各原料を混合、溶解させて原料混合液を調製し、調製した原料混合液について、必要に応じてろ過、均質化、殺菌等を行ったうえで、コーティング層を形成するのに適した温度となるように冷却する方法を採用することができる。
ブラック系組成物の原料としては、ブラック系組成物の凍結点が-11.1℃未満になる量のアルコール類、およびブラック系組成物の脂肪率が9.35質量%以下になる量の脂肪分を含むことが望ましい。
また、得られたブラック系組成物は、さらに冷凍食品の製造に供することができる。例えば、ブラック系組成物を製造した後に、得られたブラック系組成物を所定の形状を有する冷凍食品の形態に加工する。ここに「所定の形状を有する冷凍食品の形態に加工する」とは、例えば、冷凍チョコレートのように本発明のブラック系組成物をそのまま食するような態様であれば、そのような冷凍チョコレートの形状に加工することが「所定の形状を有する冷凍食品の形態に加工する」ことに相当する。また、ブラック系組成物を冷菓本体と組み合わせるような冷凍食品であれば、ブラック系組成物が表面の少なくとも一部に露出する形状を有する冷凍食品の形態に加工すること(例えば、
図1の場合はブラック系組成物を冷菓本体102の上に充填する行為)が、「冷凍食品の形態に加工する」ことに相当する。
また、冷凍食品を製造する際には、冷凍食品を例えば冷凍庫に保管する等して凍結する工程を含んでもよい。このような凍結工程は、「所定の形状を有する冷凍食品の形態に加工する」工程の前であっても後であってもよい。
【0036】
[冷菓本体]
本発明に係る冷菓において、冷菓本体は、乳等省令で規定されるアイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、シャーベット、「食品の添加物等の規格基準」で規定される氷菓(アイスキャンデー、かき氷、みぞれなど)、フローズンヨーグルト等である。
【0037】
アイスクリーム類とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0%以上を含むもの(はっ酵乳を除く)をいう。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
【0038】
乳固形分3.0%未満のものは、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。
【0039】
フローズンヨーグルトは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により、種類別「発酵乳」に分類され、「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう」と定められている。成分規格は、「無脂乳固形分8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数1000万/ml以上」と規定されている。
【0040】
冷菓本体は、冷菓組成物を用いて製造することができる。本発明に係る冷菓において、冷菓本体は、予め製造された冷菓本体や、市販の冷菓本体を用いることも可能である。
【0041】
冷菓組成物は、通常冷菓を調製する際に一般的に用いられる成分(乳原料、糖類、植物汁、増粘剤、pH調整剤、卵、油脂、安定剤、乳化剤、色素などの着色料、甘味料、香料、酸味料、風味原料など)等を適宜配合して調製されたものである。冷菓組成物は、さらに、果汁や果肉(イチゴ、ブドウ、メロン、柑橘類など)、ジャム類、プレザーブ類、野菜類(ニンジン、スイカなど)、コーヒー類、茶類(抹茶、紅茶、緑茶、烏龍茶など)、チョコレート類、キャラメル類等が配合されていてもよい。冷菓本体は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。冷菓組成物において、乳原料、油脂、安定剤、乳化剤、甘味料として、上述のブラック系組成物で例示した成分を用いることができる。
【0042】
冷菓本体の調製方法は特に限定されないが、例えば、冷菓本体をアイスクリーム類とする場合には、水、生乳、牛乳、特別牛乳等及び冷菓本体の原料を混合し、加熱殺菌して原料ミックスを調製し、所望のオーバーランになるように空気を混入させながら、撹拌、凍結等の工程を経ることにより、冷菓本体(アイスクリーム類)を調製することができる。冷菓本体のオーバーランは0%であってもよい。オーバーランの上限値についても特に制限はされないが、好ましくは200%以下であり、より好ましくは180%以下であり、さらに好ましくは150%以下である。冷菓本体の凍結点は、口どけを良好にする観点から、好ましくは-2.0℃以下であり、より好ましくは-3.0以下である。冷菓組成物の凍結点は、冷凍保存性を向上させる観点から、好ましくは-12℃以上であり、より好ましくは-9℃以上である。冷菓本体の凍結点の測定方法は、上述のブラック系組成物の凍結点の測定方法にしたがうものとする。
【0043】
また、例えば、冷菓本体をかき氷やみぞれとする場合は、水、生乳、牛乳、特別牛乳等、および冷菓本体の原料を混合し、加熱殺菌して原料ミックスを調製後、製氷、貯氷、粉砕の工程を経た破砕氷を混合することにより、冷菓本体(かき氷、みぞれ)を調製することができる。
【0044】
冷菓組成物の粘度は、5℃において、50~7,000cpであることが好ましく、100~3,000cpであることがより好ましく、200~1,000cpであることがさらに好ましい。
【0045】
冷菓組成物において、油脂含有量は、物性、嗜好等を考慮し、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。冷菓組成物において、乳脂肪含有量は、良好な風味、口当たりを得ることができる観点から、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、0質量%でも良い。冷菓組成物の全固形分は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、また、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。冷菓組成物の無脂乳固形分は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、0質量%でも良い。冷菓組成物の乳固形分は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、0質量%でも良い。冷菓組成物の乳固形分は、上述した乳脂肪の含有量と無脂乳固形分との合計を乳固形分とする。
【0046】
冷菓組成物の糖度は、保存性の観点から、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下、さらに好ましくは30°以下であり、また、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上、さらに好ましくは15°以上である。本明細書において、糖度はBrix値を意味し、糖度計(Brix計)で測定することができる。
【0047】
[光沢度の測定方法]
本発明に係るブラック系組成物によると、ツヤがあり、白っぽさがなく、ざらざら感がないブラック系のコーティング層を冷凍食品に付与することができる。本発明者らは、このような外観を有するか否かを、光沢度として測定する下記の方法を見出した。本発明者らは、ツヤがあり、白っぽさがなく、ざらざら感がないブラック系の光沢として、黒いピアノの表面にみられるような光沢を理想的な光沢とした。
【0048】
(測定装置)
図3は、本明細書における光沢度を測定する測定装置の概略図である。
図3に示す装置は、被測定物1を載置する載置台10を備え、被測定物1に光を照射する光源ユニット2と、被測定物1からの反射光を撮像する撮像ユニット3と、を備える。
【0049】
図4は、光源ユニット2の上方斜視図である。光源ユニット2は、光源21と、光源21を収容する遮光性の箱体22と、からなる。箱体22は、開口部22aを有し、光源21の光は開口部22aのみから外部に放出される。光源21は、その最前面が開口部22aの平面上に位置するように配置されている。光源21は、白色LED(明るさが16KLux)である。開口部22aは、縦20mm×横40mmの矩形である。
【0050】
撮像ユニット3は、カメラ31(カシオ社製のEXILIM ZR400)で構成されている。カメラ31は、撮像センサ31aを備える。
【0051】
測定装置による光沢度の測定時の、載置台10と、光源ユニット2と、撮像ユニット3と、の位置関係を説明する。
図3に示すように、光源21の最前面に対する垂直方向と載置台10上に載置される被測定物1の表面とのなす角度は45°であり、箱体22の開口部22aの中心の高さは被測定物1の表面から80mmである。また、
図3に示すように、撮像ユニット3のカメラについては、撮像センサ31aの中心の高さが被測定物1の表面から320mmとなるように配置され、撮像センサ31aの表面に対する垂直方向と載置台10上に載置される被測定物1の表面とのなす角度が45°であり、光源ユニット2の開口部22aの中心から出射され被測定物1の表面に45°の角度をなすように入射した光の反射光が、撮像センサ31aの中心に入射するように配置される。
【0052】
(測定方法)
測定装置による光沢度の測定時のカメラの撮影条件は、ISO200、絞り値F5.7、シャッタースピード1/10秒、焦点距離150mmであり、被測定物1付近の環境光の明るさは200Luxとして、被測定物1の表面を撮像する。
【0053】
(光沢度の算出方法)
図5は、撮像画像の一例を示す。撮像画像5は、開口部22aに対応する明部50を有する。撮像画像5を、画像処理ソフト(ImageJ)で取り込み、明部50の中心を中心とする明部50とほぼ相似形である矩形の縦5mm×横10mmの明領域Aの画像を切り出し、明領域Aから縦方向に15mmの間隔を設けて、明領域Aと同じ大きさ、形の暗領域Bの画像を切り出す。画像処理ソフト(ImageJ)のHistgram解析で、明領域Aと暗領域Bの画像をそれぞれ55×110画素に分割し、画素の明るさについて、0(黒)~255(白)でのヒストグラムを算出する。
【0054】
図6は、ヒストグラムの一例を示す図である。
図6(a)は明領域Aのヒストグラムの一例を示す図であり、
図6(b)は暗領域Bのヒストグラムの一例を示す図である。明領域Aのヒストグラムは、白(255)に近い画素が多く、暗領域Bのヒストグラムは、灰色の画素が多い。
【0055】
明領域Aと暗領域Bのヒストグラムから、各領域について、下記の式(1)を用いて明るさXを算出する。
【0056】
明るさX=[Σ{n-(255/2)}×P(n)]/[Σ{P(n)×(255/2)}] (1)
【0057】
式(1)において、nはヒストグラムの値(0~255のいずれかの整数)であり、P(n)はヒストグラムの値がnの画素の数である。式(1)に基づいて算出される明るさXは、-1~+1の範囲内の数値である。
【0058】
明領域Aの明るさをXA、暗領域Bの明るさをXBとし、下記の式(2)を用いて、被測定対象の光沢度Rを算出する。
【0059】
光沢度R=(XA-XB)÷2 (2)
【0060】
光沢度Rの数値は+1~0の間の数値となる。本発明者らは、光沢度Rが+1に近い値である程、理想的な光沢に近いことを下記のように検証した。
【0061】
(検証)
上記の測定方法に基づいて、光沢度を算出する4つのサンプルを準備した。サンプル1をスマートホンの電源オフ時の画面として、これを理想的な光沢に近い光沢を有する基準サンプルとした。サンプル2として平滑で艶やかな表面を持ち、平板な白い陶器の皿、サンプル3として表面に凹凸がある平板な黒い陶器の皿、サンプル4として黒いフエルト布を準備した。サンプル1~4について、上記測定方法にしたがって被測定対象物の表面を撮像した。そして、得られた画像を用いて、上記の光沢度の算出方法にしたがって、明領域Aの明るさX
Aと、暗領域Bの明るさX
Bと、光沢度Rを算出した。
図7(a)はサンプル1(スマーフォンの電源オフ時の画面)、
図7(b)はサンプル2(白い陶器の皿)、
図7(c)はサンプル3(黒い皿)、
図7(d)はサンプル4(黒いフエルト布)の撮像画像を示し、各画像においてヒストグラムの算出時に切り出した明領域Aと暗領域Bとを示す。表1に、各サンプルについて得られた明領域Aの明るさX
A、暗領域Bの明るさをX
B、及び光沢度Rを示す。
【0062】
【0063】
表1に示す値からわかるように、理想的な光沢に近い光沢を有するサンプル1は、他のサンプル2~4と比較して、明領域Aの明るさXAの値が大きく、暗領域Bの明るさをXBの値が小さく、光沢度Rが1に近い大きい値となっている。また、観察者の視認によるサンプルの黒色度は、サンプル1>サンプル4≧サンプル3>サンプル2であり、暗領域Bの明るさXBがかかる黒色度を反映していることがわかった。すなわち、暗領域Bの明るさXBの値が-1に近い値であるほど、サンプルの黒色度が高いとみなすことができる。サンプル表面の凸凹の存在は、明領域Aの明るさXAを低下させ、暗領域Bの明るさXBを増加させる傾向があり、両者の差である光沢度Rの値を低下させることが分かった。
また、被測定物1自体の色も明領域Aの明るさXAと暗領域Bの明るさXBに影響を与え、特に被測定物1の色差L*A*B*色空間におけるL*値が高く白い物体の場合、暗領域Bの明るさXBが上昇する傾向があり、差である光沢度Rの値を低下させることが分かった。以上の結果、光沢度Rは、表面の凸凹が少なく可及的になめらかな物体であってかつ可及的に黒い物体であるほど大きい数値となることが判明した。
以上を総合すれば、ブラック系組成物に関して、ツヤ(光沢)が良好で、白っぽさがなく、かつざらざら感がない理想的な表面に近づいてゆく尺度として、本発明の光沢度の数値が利用できるものと判断した。
【0064】
本発明にかかるブラック系組成物により形成されるコーティング層は、本測定方法における光沢度Rが、0.5を超え、好適には0.6以上、好ましくは0.7を超える値であることが好ましく、0.8を超える値であることがより好ましい。本発明者らは、ツヤが良好で、白っぽさがなく、かつざらざら感がないブラック系のコーティング層となっているかの指標の一つとして、本測定における光沢度Rが0.7を超えるかを基準にできることを見出した。
ただし、光沢度Rを細かい数値で表すならば、0.438を超えると一定の効果が得られ、0.660以上または0.660を超えるとより効果的であり、0.707以上がより効果的であり、0.743を超えるとより効果的であり、0.814以上がとくに効果的である。
詳細には、0.440以上、0.460以上、0.480以上、0.500以上、0.520以上、0.540以上、0.560以上、0.580以上、0.600以上、0.620以上、0.640以上、0.670以上、0.680以上、0.690以上、0.700以上、であってもよい。また、0.750以上、0.760以上、0.770以上、0.780以上、0.790以上、0.800以上、0.810以上であってもよい。
【実施例0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
[試料の調製]
試料1~14において、表2に示す組成のブラック系組成物および比較組成物を、以下の材料を用いて調製した。
ブドウ糖(甘味料):含水結晶ぶどう糖(昭和産業株式会社製)
粉あめ(甘味料):K-SPD-M(昭和産業株式会社製)
脱脂粉乳:脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)
植物油脂:メラノメロー200MR(不二製油株式会社製)
ブラックココアパウダー:500-DP-11(Olam International製)
モノグリセリド(乳化剤):サンソフトNo.118M(太陽化学株式会社製)
グリセリン(アルコール類):食品添加物グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)
無水エタノール(アルコール類):(局法)無水エタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0067】
(試料1~8、13、14の調製)
試料1~8、13、14として、表2に示す組成(組成はすべて質量%)のブラック系組成物および比較組成物を調製した。具体的には、原料を計量した後、常温水およびアルコール類を混合した溶液を200mLビーカーに貯液した状態で残りの原料である粉体原料を投入し、スパチュラで攪拌して溶解した。その後、ビーカーを恒温槽(90~100℃)に入れ、80℃で3分間加熱・殺菌を行った。沸点の低いアルコール類が沸騰しないように温度はコントロールした。蒸発分の水を加水して補正した。加熱殺菌後のビーカーを冷却槽(5℃以下)に入れ、速やかに5℃以下まで冷却して試料1~8、13、14のブラック系組成物および比較組成物を調製した。なお、試料13が比較組成物である。
【0068】
(試料9~12の調製)
試料9~12として、表2に示す組成のブラック系組成物を調製した。試料9~12は、植物油脂を含むことから下記の手順によって調製した。具体的には、原料を計量した後、常温水およびアルコール類を混合した溶液を3Lステンレス容器に貯液した状態で残りの原料である粉体原料を投入し、ステンレス製フライ返しを使用して攪拌し、溶解した。その後、ステンレス容器を恒温槽(90~100℃)に入れ、80℃で3分間加熱・殺菌を行った。沸点の低いアルコール類が沸騰しないように温度はコントロールした。蒸発分の水を加水して補正した。75℃の溶液を均質機(三丸機械社製200L/H型。以下同じ。)にかけ、15MPaの均質圧(一段目10MPa、二段目5MPa)で均質化した。均質後、速やかに5℃以下まで冷却して、試料9~12のブラック系組成物を調製した。
【0069】
[脂肪率の算出]
各試料の組成物について、原料の脂肪率から脂肪率(質量%)を算出した。表2に算出結果を示す。
【0070】
[凍結点の測定]
各試料の組成物について、上述の方法により凍結点を測定した。表2に測定結果を示す。
【0071】
[光沢度の測定]
(コーティング層の準備及び撮像)
プラスチックシャーレ(円形、直径φ87mm、深さ12mm、透明、蓋付き)に試料1~14の組成物の溶液を深さ5mm分注ぎ込んだ。シャーレに入れた溶液を冷凍庫内に載置して、-35℃で一晩冷却し、その後-20℃に調温してコーティング層を調製した。冷凍庫からシャーレを取り出し、
図3に示す測定装置の載置台10に被測定物1として載置し、被測定物1(コーティング層)の表面を撮像した。撮像条件は、上述の通りとした。冷凍庫からシャーレを取り出した後に撮像までに要する時間は10秒以下とし、この間、コーティング層の表面状態は変化していないことを確認した。
【0072】
(評価)
撮像により得られた画像を用いて、上述の光沢度の算出方法に基づいて、明領域Aの明るさXA、暗領域Bの明るさXB、光沢度Rを算出した。表2に測定結果を示す。測定結果に基づいて下記の基準で評価を行った。
◎:光沢度R>0.8
○:0.7<光沢度R≦0.8
△:0.5<光沢度R≦0.7
×:0<光沢度R≦0.5
【0073】
【0074】
試料1~6、9~12、14のブラック系組成物から得られたコーティング層は、ツヤがあり、白っぽさがなく、ざらざら感がない外観を有していた。試料7、8は、ツヤが十分ではなかった。これは、凍結点が-11.1℃以上であることが理由であると考察することができる。試料12は、白っぽい外観を有していたが製品の美観としては許容範囲内と判断された。試料12の場合は、脂肪率が9.35質量%以上であり、結晶化した脂肪が表面に微細な凹凸を形成し入射光を白けさせていることが白っぽい外観の理由であると考察することができる。試料13の比較組成物は、黒色材料を含まないことから、測定結果はブラック系のコーティング層のものではなかった。
【0075】
試料1~6、9~12、14のコーティング層は、冷凍食品の表面に直接形成されているものではないものの、冷凍食品の表面に形成された場合であってもツヤがあり、白っぽさがなく、ざらざら感のない外観を形成することができるものとみなすことができる。
1 被測定物、2 光源ユニット、3 撮像ユニット、21 光源、22 箱体、22a 開口部、31 カメラ、31a 撮像センサ、100 冷菓、101 容器、102 冷菓本体、103 コーティング層。