(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150247
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】水位状況推定プログラム、水位状況推定システムおよび水位状況推定方法
(51)【国際特許分類】
G01F 23/00 20220101AFI20220929BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20220929BHJP
G06T 5/30 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01F23/00 A
G01F23/292 Z
G06T5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052765
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 晃平
(72)【発明者】
【氏名】剱地 利昭
【テーマコード(参考)】
2F014
5B057
【Fターム(参考)】
2F014AC00
2F014FA04
2F014GA01
5B057AA20
5B057BA02
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB02
5B057CB06
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC01
5B057CE02
5B057CE12
5B057CF01
5B057CF02
(57)【要約】
【課題】リアルタイムで広範囲の水位状況を把握可能な水位状況推定システムおよび推定方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る水位状況推定方法は、推定条件を取得するステップ、画像データを記録するステップ、画像データに基づき水位データを記録するステップ、推定条件及び水位データに基づき拡張カルマンフィルタFEMにより水位状況推定データを作成するステップ、水位状況推定データを表示するステップ、を有する。また、本発明の他の一観点に係る水位状況推定システムは、上記方法を実行するための検出部と、画像データ記録部と、水位データ記録部と、拡張カルマンフィルタFEMにより水位状況推定データを取得する水位状況推定データ取得部と、推定条件取得部と表示部とを備えるものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
画像データを記録するステップ、
前記画像データに基づき水位データを記録するステップ、
推定条件及び前記水位データに基づき拡張カルマンフィルタ有限要素法により水位状況推定データを作成するステップ、を実行させるための水位状況推定プログラム。
【請求項2】
前記水位データを記録するステップは、前記画像データに対し、2値化処理及びノイズ処理の少なくともいずれかを行う請求項1記載の水位状況推定プログラム。
【請求項3】
前記水位状況推定データは、水際線移動を考慮した拡張カルマンフィルタ有限要素法により作成される請求項1記載の水位状況推定プログラム。
【請求項4】
前記水位状況推定データは、水域推定データと、水深推定データを含む請求項1記載の水位状況推定プログラム。
【請求項5】
前記画像データを記録するステップは、平穏時画像データと推定時画像データを記録し、
前記水位データを記録するステップは、前記推定時画像データに基づき前記水位データを記録する請求項2記載の水位状況推定プログラム。
【請求項6】
前記水位状況推定データを表示するステップを備える請求項1記載の水位状況推定プログラム。
【請求項7】
異なる観測地点に設置される複数の検出部と、
前記検出部からの出力に基づき画像データを記録する画像データ記録部と、
前記画像データを基に水位データを記録する水位データ記録部と、
推定条件及び前記水位データに基づき拡張カルマンフィルタ有限要素法により水位状況推定データを取得する水位状況推定データ取得部と、を備える水位状況推定システム。
【請求項8】
画像データを記録するステップ、
前記画像データに基づき水位データを記録するステップ、
推定条件及び前記水位データに基づき拡張カルマンフィルタ有限要素法により水位状況推定データを作成するステップ、を実行させるための水位状況推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水位状況推定プログラム、水位状況推定システムおよび水位状況推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の津波等の水位状態を精度よくリアルタイムに予測できる状態予測装置として、例えば特許文献1には、レーダの覆域を含む領域に2次元に設定された複数の点における津波の流量および水位から構成された状態ベクトルについて、津波の伝播を表す2次元の浅水方程式を用いて次時刻における状態ベクトルを予測する予測部と、カルマンフィルタを用い、カルマンゲインと、予測部によって予測された状態ベクトルと、覆域内の複数のレンジ方向と複数のビーム方向に跨がる複数のセルにおける海面の流速観測値から構成される観測ベクトルを用いて、予測部によって予測された状態ベクトルを覆域内で一括して平滑化する平滑部と、状態ベクトルの予測に用いられる初期値を、予測部に設定する設定部とを備える装置が開示されている。
【0003】
しかしながら、津波発生時の水位状態の予測に限らず、特定の範囲における各地点の水位状態、すなわち水位状況を常に知っておくことは、防災、減災の観点からも重要であり、各地点の水位状態を実際に観測しなくても、広域の水位状況を推定する技術として、本発明の発明者らは、例えば非特許文献1に記載の水際線の移動を考慮したカルマンフィルタ有限要素法(FEM)に基づく浅水域の流況推定解析技術を使う河川や湾内の潮流予測技術を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第32回計算力学講演会講演論文集(2019)32巻013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
広域の水位状況を把握する上では、各地点の実際の観測値を利用することが望ましいが、システム規模の観点から、できる限り少ない観測値を利用するだけでリアルタイムに実際の全観測値と限りなく一致する流況推定解析技術が望まれている。
【0007】
上記解析技術開発に関し、本発明者らが検討していたところ、実際の湾に設置された水位計により取得されたデータに対して、従来の観測技術を使って得られる水位データ利用し流況推定解析を行ったところ、たとえ高い数値粘性の効果を含む数値解析法を用いたとしても、実測の水位とは異なるという課題を発見した。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、リアルタイムで広範囲の水位状況をより精度高く把握可能な水位状況推定プログラム、水位状況推定システムおよび水位状況推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行っていたところ、観測水位を用いた水際線移動を考慮した拡張カルマンフィルタFEMを用いた推定解析を行うことで、リアルタイムで広範囲の水位状況が把握できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記課題を解決する本発明の一観点に係る水位状況推定プログラムは、コンピュータに、画像データを記録するステップと、該画像データに基づき水位データを記録するステップと、推定条件及び水位データに基づき拡張カルマンフィルタ有限要素法により水位状況推定データを作成するステップを実行するものである。
【0011】
また、本観点において、水位データを記録するステップは、画像データに対し、2値化処理及びノイズ処理の少なくともいずれかを行うことが好ましい。
【0012】
また、本観点において、水位状況推定データは、水際線移動を考慮した拡張カルマンフィルタ有限要素法により作成されることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、水位状況推定データは、水域推定データと、水深推定データを含むことが好ましい。
【0014】
また、本観点において、画像データを記録するステップは、平穏時画像データと推定時画像データを記録し、水位データを記録するステップは、推定時画像データに基づき水位データを記録することが好ましい。
【0015】
また、本観点において、水位状況推定データを表示するステップを備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の一観点に係る水位状況推定システムは、異なる観測地点に設置される複数の検出部と、検出部からの出力に基づき画像データを記録する画像データ記録部と、画像データを基に水位データを記録する水位データ記録部と、推定条件及び水位データに基づき拡張カルマンフィルタ有限要素法により水位状況推定データを取得する水位状況推定データ取得部を備えるものである。
【0017】
また、本発明の他の一観点に係る水位状況推定方法は、画像データを記録するステップと、画像データに基づき水位データを記録するステップと、推定条件及び水位データに基づき拡張カルマンフィルタ有限要素法により水位状況推定データを作成するステップを実行するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によって、リアルタイムで広範囲の水位状況をより精度高く把握可能な水位状況推定プログラム、水位状況推定システムおよび水位状況推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】水位状況推定システムの機能ブロックに関する概要図である。
【
図2】水位状況推定システムのハードウェアを含んだ接続例である。
【
図3】水位状況推定システムの他の一例に関するハードウェアを含んだ接続例である。
【
図4】水位状況推定手順を示すフローチャートである。
【
図5】水位データ記録手順を示すフローチャートである。
【
図6】水位状況推定データ取得手順を示すフローチャートである。
【
図7】水位データを取得するための画像データの一例である。
【
図9】水位状況推定データ(推定値)と観測値とを比較した一例である。
【
図10】水位状況推定データと観測値とを比較した一例である。
【
図11】実施例において流速および水位変動量の分布を示した一例である。
【
図12】画像解析から得た水位データを用いた水位状況の推定解析の条件の一例である。
【
図13】実施例において測定水位と推定水位の比較を示す一例である。
【
図14】実施例において測定水位と推定水位の比較を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例において言及する具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0021】
(水位状況推定システム)
図1に、本実施形態に係る水位状況推定システム(以下「本システム」という。)Sの機能ブロックに関する概略について示す。本図で示すように、本システムSは、検出部1と、検出部1からの出力に基づき画像データを記録する画像データ記録部2と、画像データを基に水位データを記録する水位データ記録部3と、拡張カルマンフィルタ有限要素法(FEM)により水位状況推定データを取得する水位状況推定データ取得部4と、拡張カルマンフィルタFEMの演算初期値となるメッシュデータおよび観測地点データ等の解析条件と流速および水位変動量等の推定変数を取得する推定条件取得部5と、水位状況推定データを表示する表示部6を備えるものである。さらに本システムSは、拡張カルマンフィルタFEMを実行する水位状況推定プログラムや上述各種データを記録する記録媒体7と、拡張カルマンフィルタFEMを実行する等の各種演算を行う揮発性記録媒体8を備えるものである。
【0022】
本システムSによる効果は後で詳述するが、本システムは洪水や台風、津波等によって住宅街等の陸地において発生する浸水状況下の水位を観測地点以外の広域に対し推定することで浸水被害状況をオンタイムで把握すること、また、台風等で河川や湾内の水位が上昇した場合の水位を観測地点以外の広域に対し推定することでその河川周辺や湾岸地域における被害状況をオンタイムで把握することを可能とするものである。特に、検出部の出力によって得られる画像データに基づいて水位データを取得することができるものであるため、観測地点における水位状況に関する様々な情報を得やすく、これら情報を利用することで精度高く水位状況を推定することができるシステムとなっている。
【0023】
図2に本システムSのハードウェアを含めた接続例について示す。本システムSでは、限定されるわけではないが、大まかに二つの構成要素群に分けることができる。一つは実際に観測地点に設置される機械装置としての検出部であり、もう一つは検出部の出力に基づき各種データを処理する情報処理装置内に仮想的に設けられる画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4である。本システムSには、更に追加の構成要素群として、浸水状況推定データを様々な地点においてリアルタイムに被害状況を把握するための機械装置としての表示部6を備えても良い。
【0024】
図3は本実施形態に係る本システムSの一変形に係る本システムS’のハードウェアを含めた接続例である。本システムS’は、ネットワークNを通じて各要素が接続されている点が特徴的であり、特に情報処理装置と検出部とが異なる位置あるいは異なる地点であっても処理が可能となっている。
【0025】
検出部1は、情報処理装置を配置した地点とは異なる観測地点に複数設置されており、ネットワークNを通じて情報処理装置などの各要素に接続されている。
【0026】
情報処理装置内に仮想的に設けられる画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4は、1台の情報処理装置内に配置しても良いし、ネットワークNを介して複数の情報処理装置を接続しておき、それらのいずれかの内部に分散して配置しても良い。
【0027】
表示部6は、いわゆるスマートフォン等の携帯情報端末等のように情報処理装置内に設けることも可能であり、情報処理装置に直接又はネットワークNを介して間接的に複数設けたりすることができる。
【0028】
(検出部1)
本システムSにおける検出部1は、上記の通り、情報処理装置と検出部1とを同じ観測地点においても動作可能であるが、情報処理装置を配置した地点とは異なる観測地点に複数設置されることが好ましい。そして、この複数の観測地点それぞれにおいて少なくとも一つの検出部が設けられることで、その周囲の状況に応じた出力を行うことができる。検出部1の具体的な例は、いわゆるビデオカメラであって、そのカメラにより周囲の状況を電気信号、好ましくは画像データとして出力することができるものであることが好ましい。
【0029】
また、この検出部1は、電気通信回線すなわちいわゆるネットワークNに接続され、直接又は他の装置を介して間接的に、この画像データを外部機器に出力できるようにしておくことが好ましい。このようにすることで、複数の検出部の同期を取ることが容易になる等、広範囲の情報を正確に取得することが可能となるといった利点がある。検出部1はビデオカメラ以外にも、いわゆるカメラ付きスマートフォン、カメラ付きタブレット端末、高速度カメラなど、上述の通り観測地点の状況を画像データとして取得し、直接又は間接的に外部機器に出力できるものであればどのようなものでも良い。
【0030】
複数の異なる観測地点に設置される検出部1は、その数が多いほど広範囲の水位状況を精度高く推定可能となるが、好ましくは破堤や越波が想定される河岸や湾岸の線上、すなわち洪水の起点と想定されるところに沿って複数個設置されると後述する水位状況推定データが実際に観測されるデータに限りなく一致し推定精度が高まる。
【0031】
本システムにおいて検出部1にビデオカメラを用いた場合、高速処理可能なカメラであることが好ましい。例えば、1秒間に200枚の画像を撮影できるカメラを使うと拡張カルマンフィルタFEMにおける時間増分量Δtを小さく設定することができ、水位や流速の推定精度向上の点で有利である。
【0032】
また、本システムにおいて、検出部1には、別途画像データを処理するための情報処理装置を付してもよい。検出部1により取得された画像データを記録し、更には、水位データを記録しておくことで、集中管理する情報処理装置の処理負担の軽減を図ることができる。
【0033】
本システムにおいて、画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4は、情報処理装置いわゆるコンピュータ内に仮想的に設けられるものである。より具体的には、コンピュータのハードディスク等の記録媒体7に演算プログラム、推定プログラム、各種データが記録され、必要に応じてメモリ等の揮発性記録媒体8に読み込まれ、実行されることで仮想的な部として成立する。
【0034】
本システムにおいて、画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4は、同じコンピュータの内部に設けられる構成としてもよいが、これらを電気通信回線、すなわちいわゆるネットワークNや、その他データの授受が可能となる状態で接続し別個に分散させて配置する構成としてもよい。そのため、
図3の例では、一例として検出部1の近傍に画像データ記録部2を内部に設けたコンピュータを直接接続して設けた構成、画像データ記録部2と水位データ記録部3を内部に設けたコンピュータを直接接続して設けた構成、更には、ネットワークNを介して検出部(観測地点)から離れた地点(遠隔地)に他のコンピュータを配置して、その内部に画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4を設けた構成、をそれぞれ示し、必要に応じて各部が実行される例を示している。
【0035】
なお本システムにおけるコンピュータは、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば一般的なコンピュータの構成要素である中央演算装置(CPU)、ハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体、メモリ等の揮発性の記録媒体、これらを接続するバス、キーボードやマウス等の入力装置、モニタ等の表示装置等を含むことが好ましいがこれに限定されない。
【0036】
上記コンピュータは、いわゆるノートパソコンやデスクトップパソコンであってもよいが、高速計算を行うのであれば、いわゆるワークステーションやスーパーコンピュータでもよく、また携帯性を鑑み、近年普及が進んでいる携帯情報端末、具体的にはいわゆるスマートフォンやタブレット端末であってもよい。一般的な携帯情報端末は、一つの端末カバーの中に上記CPUや表示装置等の部品を収納して一体化させたものとなっており、しかも表示装置上にセンサを配置しいわゆるタッチパネルとしておくことで、非常に取り扱いやすいものとなっており好ましい。また携帯情報端末の場合、当該携帯情報端末において本方法を実行するプログラムをいわゆるアプリとして記録、表示させておき、このアプリを起動することで容易に本方法を実行することができる。更には、後述する表示部6も兼ねることができる。
【0037】
(水位状況推定プログラム)
上記の通り、画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4は、コンピュータのハードディスク等の記録媒体7にプログラムが格納され、メモリ等の揮発性記録媒体8に読み込まれ、実行されることで仮想的な部として成立する。すなわち、本システムでは、コンピュータ内に水位状況推定プログラム(以下「本プログラム」という。)が格納され、これが実行されることによりコンピュータ内に画像データ記録部2、水位データ記録部3、水位状況推定データ取得部4が仮想的に設けられ、各処理を行うことができるようになる。
【0038】
本プログラムに着目して、
図4を用いてより具体的に説明する。本プログラムは、コンピュータに、(S1)メッシュデータ、観測地点データ等の解析条件と流速および水位変動量等の少なくともいずれかの推定変数を含む推定条件の入力により拡張カルマンフィルタFEMの計算条件を取得するステップ、(S2)画像データを記録するステップ、(S3)画像データに基づき水位データを記録するステップ、(S4)推定条件と水位データに基づき拡張カルマンフィルタFEMにより水位状況推定データを作成するステップ、(S5)水位状況推定データを表示するステップ、を実行させるものである。なお、本プログラムの実行にあたり、上記のステップ(S1)は推定条件取得部5が行い、ステップ(S2)は画像データ記録部2が行い、ステップ(S3)は水位データ記録部記録部3が行い、ステップ(S4)は、水位状況推定データ取得部4が行うことになる。
【0039】
(水位状況推定方法)
ところで、本プログラムは、上記の記載から明らかなように、情報処理装置すなわちコンピュータにおいて実行されることにより、(S1)メッシュデータや観測地点データ等の解析条件と、流速や水位変動量等の推定変数を含む推定条件を取得するステップ、(S2)画像データを記録するステップ、(S3)画像データに基づき水位データを記録するステップ、(S4)推定条件及び水位データに基づき拡張カルマンフィルタFEMにより水位状況推定データを作成するステップ、(S5)水位状況推定データを表示するステップ、を有する水位状況推定方法(以下「本方法」ともいう。)を実現することができるのは言うまでもない。
【0040】
次に、各記録部及び取得部の処理について、本方法のステップに対応させて具体的に説明していくこととする。
【0041】
(S1:推定条件取得)
まず、本方法では(S1)メッシュデータや観測地点データ等の解析条件と、流速や水位変動量等の推定変数を含む推定条件の入力により拡張カルマンフィルタFEMの計算条件を取得するステップを有し、これを実行することで推定条件取得部5が仮想的に設けられる。これらデータは記録媒体7に記録する。
【0042】
推定条件の一つである解析条件に、メッシュデータ(総節点数、総要素数、x-y平面における各節点の座標値)、観測地点データ(観測地点の座標点および観測水位のデータ)の他、時間増分量Δt、タイムステップ数、重力加速度、基準水深(z方向のデータ)、数値計算を発散させないように設定するパラメータ(例えばランピングパラメータ)、推定変数の初期値、推定誤差共分散行列の初期値、システム誤差共分散行列、観測誤差共分散行列、解析対象領域の境界において与える流速や水位に関する境界条件等を例示することができ、これらの少なくともいずれか1つ、好ましくは複数を用いることが重要である。
【0043】
また、推定変数も、上記拡張カルマンフィルタFEMにおいて必要な推定条件の一つであって、例えば流速および水位変動量に関する情報を含むものである。なお、推定変数は観測変数と呼ぶ場合もある。
【0044】
推定条件の入力には、例えば、キーボード、マウス、スキャナ等の入力デバイスを用いてコンピュータに記録することができる。また、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等から情報を読み出しても良い。また、推定条件はUSBメモリ等の外付け記憶媒体から取得してもよく、これらのデバイスは、USB(Universal Serial Bus)やBluetooth(登録商標)等、情報処理装置へ推定条件を入力可能とするインタフェースを介して直接取得してもよく、ネットワークや通信回線を介して取得してもよい。
【0045】
拡張カルマンフィルタFEMの初期値となる解析条件のうちメッシュデータは、具体的には水位状況の推定を行う地図上の一定領域(観測対象領域)に対し、地図上のx,yの位置を表す情報、またあるx,yの地点における基準面からの深さの情報zを含む。メッシュは、観測対象領域を有限要素メッシュにより分割設定することができる。メッシュの分割設定においては、検出部1が設置される観測地点と、観測対象とする河川や湾を含む領域に対して設定することが好ましい。なお、河川や湾を含む領域を単に水域という場合もある。
【0046】
拡張カルマンフィルタFEMの初期値となる解析条件のうち観測地点データは、検出部1が設置される観測地点に係る情報であり、具体的には実測の水位、実測のx,y方向の流速等の情報である。実測の水位、実測のx,y方向の流速はどちらか一方のデータでも拡張カルマンフィルタFEMの計算は可能であるが、従前の検討では、「両方(x,y方向の実測流速および実測水位)の観測値」を用いた場合は「実測水位のみの観測値」の使用時に比べ、高い精度に計算できるという知見を得ている。拡張カルマンフィルタFEMにおける流れ場の推定解析では、観測値の影響は下流側に伝わることが確認できているため、観測地点データは、観測対象領域において水域の上流側における水位情報を含むことが好ましい。
【0047】
(S2:画像データ記録)
また、本方法では(S2)画像データを記録するステップを有する。本ステップを実行することで画像データ記録部2が仮想的に設けられる。
【0048】
本ステップでは、平穏時における画像データである平穏時画像データと、平穏時以外における画像データである推定時画像データを記録するものであることが好ましい。「平穏時画像データ」は、浸水や氾濫が起こる前の状態の情報を含むデータであり、浸水や氾濫の被害が発生していない時点の平穏な状況の水位の推定に使うことができる。また、「推定時画像データ」は、複数の検出部の少なくとも1つの観測地点における平穏時以外の情報を含むデータ、具体的には、浸水や氾濫が起きた直後からの観測地点における情報を含むデータであり、浸水や氾濫が起きた時点からの水位の推定に使うことで、被害状況をオンタイムに把握することができるようになる。
【0049】
(S3:水位データ記録)
また、本方法では、(S3)画像データに基づき水位データを記録するステップを有し、これを実行することで水位データ記録部3が仮想的に設けられる。
【0050】
また、水位データを記録するステップは、画像データ記録ステップ(S2)で記録した画像データに対し、2値化処理(S31)及びノイズ処理(S32)の少なくともいずれかを行うことが好ましい。なお、水位データを記録するステップ(S3)において、(S31)2値化処理と(S32)ノイズ処理の両方を行う場合には、(S31)2値化処理を行った後に(S32)ノイズ処理を行うことが好ましい。
【0051】
また、後述する水位状況推定データを作成するために用いる水位データを記録するための画像データは、推定時画像データを用いることで、リアルタイムに水位状況を把握することができる。またこの場合において、複数の検出部における画像データには、それぞれ、同期がとれた時刻情報を付与しておくことが望ましい。これにより、複数の検出部の少なくとも1つの観測地点において浸水や氾濫が起きたことが検出された時刻を水位状況推定基準時刻とすることが容易にできる。時刻情報を付与する方法としては、例えば同期されて点滅する光、もしくは正確な電波時計など、同期された信号をカメラ画角内の水面ではない部分に位置を固定して撮影する方法を例示することができる。これにより時刻情報を画像の一部として記録することができる。撮影画像内の信号位置が変わらなければ、各カメラにおいて同じ処理にて時刻を求めることができる。
【0052】
(S31:2値化処理)
ここで、2値化処理(S31)について説明する。2値化処理(S31)による水面位置の同定は、時間の連続する2つの画像データに対し差分を取る。具体的には、画角が固定された検出部により得られる水面が含まれた画像において、時間経過によって変化する各画素情報の差を取ることで、水面位置の抽出および背景を削除することができる。そして、抽出した2つの画像データの差分情報に対し明度閾値を定め、2値化を行う。なお、2値化のために、予め水面が含まれる画像又は差分情報をグレースケール化すると、明度閾値を定めるための変数が少なくなり好ましい。また、明度閾値は、例えばグレースケール化した差分情報を使う場合、背景の僅かな明度差に起因する画像ノイズと、水面変化に起因する僅かな明度差を区別するように定めることが好ましい。明度閾値を定める手段は、人為的に行っても良いし、機械学習により情報処理装置内で自動的に行っても良く、どのような手段を用いてもよい。そして、閾値以下を黒=0、それより大きい場合を白=1とすることで2値化が可能となる。なお、2値化は上述のようにグレースケール化後の明度を使うと計算機負荷低減の点で有利であるが、色情報を個別に利用してもよく、2値化に利用するパラメータは限定されない。
【0053】
(S32:ノイズ処理)
また、ノイズ処理(S32)は、2値化処理を行った後の画像データを使う場合、画像データのある1画素に注目し、その注目した画素に隣接する8画素中に1画素でも白い画素があれば注目画素を白にするプロセス(膨張プロセス)と、注目画素の隣接画素に1画素でも黒い画素があれば注目画素を黒にするプロセス(収縮プロセス)を繰り返すことが好ましい。また、このノイズ処理において、複数回収縮プロセスを行ってから同じ回数分だけ膨張プロセスを行う処理(クロージング処理)を行うことが好ましい。例えば収縮プロセスを2回行った後膨張プロセスを2回行う(収縮→収縮→膨張→膨張)処理が該当する。一方、複数回膨張プロセスを行ってから同じ回数分だけ収縮プロセスを行う処理(オープニング処理)を行うことも好ましい(例えば、膨張→膨張→収縮→収縮)。2値化処理を行った画像データに対し、オープニング処理を実施した後、クロージング処理を実施すると、白点のノイズを取り除くことができるといった利点がある。なお、ノイズ処理は色情報を使った場合にも同様に膨張プロセスと収縮プロセスを繰り返す処理によりノイズを取り除くことができる。
【0054】
(S33:水位取得)
ノイズ処理を終えた画像と、2値化前で水位が確認できる物体、例えば水位の目盛りが刻まれた水位板が写っている画像を比較することで、観測地点における水位データを得ることができる。水位が確認できる物体が写っている画像としては、平穏時画像データを用いても、推定時画像データを用いてもよいが、2値化やノイズ処理の影響を受けずに精度良い水位データを得るためには平穏時画像データを用いることが好ましい。このステップが(S33)水位取得ステップである。
【0055】
(S4:水位状況推定データ取得)
また、本プログラムでは、(S4)メッシュデータ、観測地点データ等の解析条件と流速および水位変動量等の推定変数を含む推定条件、及び水位データに基づき拡張カルマンフィルタFEMにより水位状況推定データを取得するステップを有し、これを実行する水位状況推定データ取得部4が仮想的に設けられる。
【0056】
特に、本方法では、水際線移動を考慮した拡張カルマンフィルタFEMを用いて水位状況を推定することで、広範囲の水域において精度高く水位状況推定データを取得できるといった利点がある。ここで「水際線移動」とは、あらかじめ、観測対象領域において全体領域のメッシュを作成し、その領域を水のあるwet area(湿潤領域)と水の無いdry area(乾いた領域)に分け、水際境界の節点を含む要素において微小水深を与えることであり、これにより水際線の移動を考慮した浅水流の解析が可能となる。
【0057】
また、本方法において「水位状況推定データ」は、水域推定データと、水深推定データを含むことが好ましい。水域推定データは平面的な拡がりを示すデータであり、より具体的には「平面座標x,yの情報」を含むデータであることが好ましい。一方、水深推定データは、あるx,yの点における水深を示すデータであり、そのx、yの点における「深さz方向の情報」を含むデータである。
【0058】
なお、水域推定データと水深推定データは、水位状況推定データを作成または取得するステップ(S4)において、(S41)カルマンゲイン行列計算のステップを経て、(S42)水域推定と(S43)水深推定を行い、水域推定データおよび水深推定データとして得ることができる。
【0059】
(S41、S42:カルマンゲイン行列計算、水域推定)
ところで、拡張カルマンフィルタFEMの中のカルマンゲイン行列計算(S41)は、推定誤差共分散行列のトレースノルムを最小にするように行われることが好ましい。推定誤差共分散行列のトレースノルムを最小にするための計算および計算順序は、限定されるわけではないが、例えば、日本機械学会論文集2016年82巻835号p.15に開示される具体的な手順を使って行うことができる。
【0060】
水域推定(S42)は、システム方程式を計算した後、下記式(4)に示すカルマンゲイン行列と下記式(2)に示す観測値を用いて補正することで出力できる。具体的に説明すると、水域推定を記述するシステム方程式は下記式(1)、観測値を記述する観測方程式は下記式(2)のように表すことができる。下記式(1)は、浅水長波方程式(移流項(非線形項)を含む運動方程式および連続式)を有限要素法に基づき空間方向に離散化し、また有限差分法により時間方向に離散化した式により表される。
【0061】
【0062】
【0063】
ここで、{φ}は流速や水位を表す状態ベクトル、nは時間ステップ、[A]は状態遷移行列(基準水深hおよび重力加速度gも行列[A]に含まれる。)、[Γ]は駆動行列、{q}はシステムノイズベクトルである。また、{z}は観測値ベクトル、[H]は観測行列、{r}は観測ノイズベクトルである。
【0064】
また、同化前の推定誤差共分散行列は下記式(3)、同化後の推定誤差共分散行列は下記式(4)、カルマンゲイン行列は下記式(5)、推定値の計算は下記式(6)、最適推定値の計算は下記式(7)でそれぞれ表される。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
ここで[P(-)]は同化前の誤差共分散行列、[F]は線形近似後の状態遷移行列、[Q]はシステム誤差共分散行列、[K1]はカルマンゲイン行列、[R]は観測誤差共分散行列、[P(+)]は同化後の誤差共分散行列(予測誤差共分散行列)、[P(-)]は同化前の誤差共分散行列(推定誤差共分散行列)、Tは転置記号、{φ^(-)}は推定値ベクトル、{φ^(+)}は最適推定値ベクトルを示す。ここに^(ハット)は推定値を示す。水際線の処理は、式(6)の前で実施し、水際線を表す節点を含む要素(メッシュ)において、隣接節点に微小水深を与える。式(6)の右辺において、微小水深により修正されたnステップにおける推定値ベクトルを用いて式(6)の左辺(n+1ステップにおける推定値ベクトル)を算出することで、水際線の移動を考慮した水位状況の計算が可能となる。
【0071】
そして、水際線移動を考慮した拡張カルマンフィルタFEMによる水位状況の推定解析の手順は、例えば次の1から9を実行することができる。
【0072】
(水位状況の解析手順)
1.解析メッシュ、水位状況の水位推定解析の時間刻みΔt、水位測定の時間間隔ΔT、基準水深、初期条件(流速、水位変動量)等の計算条件を入力する。水位状況の水位推定解析においてΔtとΔTは同値になっていることが好ましいが、ΔtとΔTが異なる場合は、時間刻みΔtごとに水位の測定値が与えられるように調整する。
2.水位の測定値{zn+1}を入力する。
3.ある時間ステップn+1における推定誤差共分散行列[P(-)
n+1]の計算をする。(式(3))
4.ある時間ステップn+1におけるカルマンゲイン行列[K1
n+1]の計算をする。(式(4))
5.ある時間ステップn+1における予測誤差共分散行列[P(+)
n+1]の計算をする。(式(5))
6.水際線の節点を含む要素(メッシュ)において、隣接節点に微小水深を与える。
7.ある時間ステップn+1における流速、水位変動量の推定値{φ^(-)
n+1}の計算をする。(式(6))
8.ある時間ステップn+1における水位の測定値{zn+1}を用いて、流速、水位変動量の最適推定値{φ^(+)
n+1}の計算をする。(式(7))
9.時間ステップを更新し(現時刻に時間刻みΔtを加え)、上記ステップ2に戻る。
【0073】
水際線の移動を考慮しないカルマンフィルタFEMの具体的な計算順序は、例えば、日本機械学会論文集2016年82巻835号p.15に開示される具体的な手順を使って行うことができる。
【0074】
(S43:水深推定)
一方、水深推定(S43)は、水域推定と同様の処理で実施でき、上記式(1)を計算した後、上記式(4)に示すカルマンゲイン行列と上記式(2)に示す観測値を用いて補正することで出力できる。
【0075】
(S5:水位状況推定データ表示)
また本方法では、(S5)水位状況推定データを表示するステップを有する。なおこれは、コンピュータが必然的に備えるモニタ、ディスプレイや、スマートフォンのディスプレイなどの表示部に水位状況推定データを表示させることをいう。
【0076】
表示部6は、水位状況推定データ取得部4を有する情報処理装置から水位状況推定データを出力可能とするインタフェースを介して直接接続してもよく、ネットワークや通信回線を介して接続してもよい。
【実施例0077】
ここで、上記実施形態に係る水位状況推定方法について、実際のデータを用いて処理を行いその効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0078】
(評価実験1:水位データ記録部)
水路(長さ10m、幅0.4m)の一端にゲートを設置し、水塊を保持した。ゲートから0.25m、1m、2mの地点に水位を計測可能な検出部を設置した。検出部は水路に設置された水位板と高速度カメラ(1秒間に200枚の画像)により構成した。
【0079】
水塊を水路に放水するためにゲートを瞬間的に開放した。開放したときの時刻をゼロ秒とし、全ての検出部を同時に計測し始めた。計測開始後は、画像データ記録部を有するコンピュータに画像データを記録した。記録した画像データから時間の連続する2枚の画像(
図7に例示)を読み出し、2枚の画像とも水位板付近の同じ範囲の画像を切り出した。次いで、切り出した画像をそれぞれグレースケール化した、グレースケール化した2枚の画像とも、同じ明度閾値により2値化し、ノイズ処理後、水位板に刻まれた水位とノイズ処理により明確化された水面位置を比較し水位を取得した。
【0080】
図8は各地点における水位の時間変化を記録した結果である。瞬間的に開放され水面に大量の水しぶきを伴う状況であっても、ゲートから遠ざかるに従って、水位のピークが低くなることと、ピーク到達時間が遅くなっていることが確認できた。
【0081】
(評価実験2-1:水位状況推定データ取得部)
水域における観測変数の設定、観測地点の数および位置を変え、カルマンフィルタ有限要素法による浅水域における流れ場の推定精度について検証を行った。
【0082】
検証は検潮場より提供される水位情報を利用し、東京湾の水位状況推定を行った後、水位状況推定に利用しなかった検潮場より提供される水位情報と比較した。利用した水位データは、東京(2313)、千葉(3305)、横浜新港(3308)の3箇所(カッコ内数値はいずれも験潮場登録番号)。水位状況推定後に比較した水位データは、横須賀(3301)の験潮場のものを利用した。本検討では、メッシュデータは1種類のものを用いて、また観測地点データも1通りのものを採用した。
【0083】
水深推定データの取得には、海図のデータを用いた。また、計算パラメータは表1の通りとした。
【0084】
【0085】
図9が流況推定解析すなわち水位状況推定を行った結果である。東京(2313)、千葉(3305)、横浜新港(3308)の3箇所の水位データを利用して推定した横須賀(3301)における水位状況推定データ(推定値)は、横須賀(3301)で観測された水位データ(観測値)によく一致することが確認できた。
【0086】
なお、上述3箇所の水位データを利用せず、従来の観測技術を使って得られた水位データを利用し高い数値粘性の効果を含む数値解析法により流況推定解析を行った結果が
図10であり、推定した横須賀の水位データは一致しない結果となった。
【0087】
水位状況推定を行った結果、東京湾内の流速および水位変動量の分布も推定できた。(
図11)
【0088】
この実施例より、2次元平面のx、y方向流速および水位変動量を観測変数とした方が、水位変動量のみを観測変数にした場合に比べ精度の高い流れ場の推定結果が得られることがわかる。また、観測点の配置は、流れの上流側に配置することが、下流側に配置することに比べて、重要であることがわかる。
【0089】
(評価実験2-2:水位状況推定データ取得部)
画像解析から得た水位データを用いて、水際線の移動境界を考慮し、ダムブレイク問題に対して水位状況の推定解析を行った。(
図12)
【0090】
【0091】
結果を
図13および
図14に示す。
図13は(x=1.1m,y=0.2m)の結果であり、
図14は(x=1.8m,y=0.2m)の結果である。この結果より、画像解析から得た水位データに近い水位の推定結果が得られることを確認できた。
【0092】
以上、本実施例により、本方法の有用性を確認することができた。
本発明は水位状況推定プログラム、水位状況推定システムおよび水位状況推定方法として産業上の利用可能性がある。高精度かつリアルタイムで氾濫域を推定することができ、本発明により開発した水位状況推定システムを整備しておくことにより、例えば、ゲリラ豪雨等における河川の氾濫や浸水災害において避難を適切に誘導できる。