(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150304
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220929BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 B
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052854
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】氏家 広大
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA12
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】マスクの包装工程における耳掛け部の変形を防止できる。
【解決手段】マスクが、マスク本体と、一対のシート状の耳掛け部とを備え、前記耳掛け部の少なくとも一方が、前記マスク本体の外面の横方向端部領域に接合された基部と、前記基部から横方向中央に向かって延びる主部とを有し、前記主部が、前記マスク本体の前記外面に脱離可能に止着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と、一対のシート状の耳掛け部とを備え、
前記耳掛け部がそれぞれ、前記マスク本体の外面の横方向端部領域に接合された基部と、前記基部から横方向中央に向かって延びる主部とを有し、
前記一対の耳掛け部の前記主部の少なくとも一方が、前記マスク本体の前記外面に脱離可能に止着されている、マスク。
【請求項2】
前記一対の耳掛け部が単一のシートを形成しており、
前記耳掛け部同士の境界線が脆弱化されていることで前記耳掛け部同士が分離可能に結合されている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記止着のための止着部が、前記境界線に重なるように形成されている、請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記耳掛け部同士が分離している、請求項1に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体が、当該マスク本体の縦方向の長さの3分の1の長さをそれぞれ有する上端部領域、中央領域、及び下端部領域を有し、
前記主部が、前記中央領域に接合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
前記マスク本体が、当該マスク本体の縦方向の長さの3分の1の長さをそれぞれ有する上端部領域、中央領域、及び下端部領域を有し、
前記主部が、少なくとも前記上端部領域及び前記下端部領域に接合されている、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項7】
前記一対の耳掛け部の前記主部がそれぞれ前記外面に脱離可能に止着されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔に装着するマスクとして、装着者の顔を少なくとも部分的に覆うマスク本体と、マスク本体にそれぞれ結合された一対の耳掛け部、すなわちマスク本体をその装着位置に保持するために装着者の各耳に掛けることのできる一対の部材とを備えたものがよく知られている。
【0003】
上記のマスクの耳掛け部は紐状であることが多いが、マスクの装着中に耳に掛かる負担を軽減して快適な装着感を得るため、シート状の耳掛け部も検討されている。例えば、特許文献1には、一対の耳掛け部が、両方の耳掛け部が接続部で互いに接続された状態で同一平面上に延在するシート状の耳掛けシートから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなシート状の耳掛け部は、紐状の耳掛け部に比べて大きな面積を有することから、例えばマスクの包装工程において装置の部材と接触する接触する機会がより多く、装置の部材からの力を受けて変形しやすい(マスク本体に対してズレやすい)。このような変形しやすい傾向は、包装工程において不都合を招き得る。例えば、包装パッケージが樹脂フィルムからなる場合、そのシール工程で、装置のシール加工部引き込まれやすく、いわゆる噛み込みが生じることがある。また、変形により耳掛け部の縁部のヨレやめくれが生じやすくなり、そのようなヨレやめくれがあることで、自動計数装置によってマスクを正しく計数できなかったり、所定の包装袋内に収容できなかったりすることがある。
【0006】
上記に鑑みた本発明の一態様は、マスクの包装工程等における耳掛け部の変形を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、マスク本体と、一対のシート状の耳掛け部とを備え、前記耳掛け部がそれぞれ、前記マスク本体の外面の横方向端部領域に接合された基部と、前記基部から横方向中央に向かって延びる主部とを有し、前記一対の耳掛け部の前記主部の少なくとも一方が、前記マスク本体の前記外面に脱離可能に止着されている。
【0008】
本態様によるマスクの耳掛け部は、マスク本体の横方向端部領域に接合されていて、ある程度はマスク本体に対して固定されている。しかしながら、耳掛け部のうちマスク本体に接合されていない部分、特にマスク本体に接合している基部から横方向中央に延びる主部は、何らかの力が掛かった場合に変形しやすく(マスク本体10に対してズレやすく)なっている。そのため、例えばマスクの包装工程で、マスクを包装パッケージに収容してパッケージをシールする際、耳掛け部が装置のシール加工部に引き込まれ、いわゆる噛み込みが生じる場合がある。また、耳掛け部が変形しやすいことで、耳掛け部にヨレやめくれが生じることもある。そのようなヨレやめくれがあると、自動計数装置によって正しく計数ができない可能性、或いは複数のマスクを積層させて包装する場合に、積層されたマスク全体の厚みが変わってしまい包装パッケージ内に収められない可能性がある。また、ヨレやめくれは、使用時の耳掛け部に対する快適な装着感を低下させ得る。
【0009】
これに対し、上記第一の態様によれば、耳掛け部が、マスク本体の外面に止着されているので、耳掛け部のマスク本体に対するズレを防止できる。このため、マスクの搬送時や包装時に耳掛け部が変形しにくく、装置の部材に接触してもそのような部材の影響を受けにくい。よって、シール加工工程における耳掛け部の噛み込みや、耳掛け部のヨレやめくれを防止することができる。
【0010】
また、上記の止着は脱離可能に形成されており、その解除は、使用者の通常の力によって可能である。そのため、マスクの装着のための準備段階で、耳掛け部を横方向外方に展開させる通常の動作によって止着部による止着を解除でき、特別な操作を行う必要はない。
【0011】
本発明の第二の態様では、前記一対の耳掛け部が単一のシートを形成しており、前記耳掛け部同士の境界線が脆弱化されていることで前記耳掛け部同士が分離可能に結合されている。
【0012】
上記第二の態様によれば、耳掛け部同士が結合されて単一のシートとなっているので、部材点数が減り、製造時の煩雑さが低減する。
【0013】
本発明の第三の態様では、前記止着のための止着部が、前記境界線に重なるように形成されている。
【0014】
上記第三の態様によれば、止着部が耳掛け部同士の境界線に重なっていることで、マスクの装着のための準備段階で耳掛け部同士を分離する際、この分離と同時に耳掛け部のマスク本体への止着を解除できる。そのため、止着部による止着を解除する手間が減り、マスクの装着準備の作業が容易になる。
【0015】
本発明の第四の態様では、前記耳掛け部同士が分離している。
【0016】
上記第四の態様により耳掛け部同士が分離している場合、一対の耳掛け部によって単一シートを形成する必要がないので、耳掛け部の形状、大きさの選択の幅が広がる。
【0017】
本発明の第五の態様では、前記マスク本体が、当該マスク本体の縦方向の長さの3分の1の長さをそれぞれ有する上端部領域、中央領域、及び下端部領域を有し、前記主部が、前記中央領域に接合されている。
【0018】
上記第五の態様によれば、耳掛け部が、縦方向の中央領域においてマスク本体に止着されていることで、耳掛け部全体の動きを抑制できるので、マスク本体に対する面方向のズレをより確実に防止できる。
【0019】
本発明の第六の態様では、前記マスク本体が、当該マスク本体の縦方向の長さの3分の1の長さをそれぞれ有する上端部領域、中央領域、及び下端部領域を有し、前記主部が、少なくとも前記上端部領域及び前記下端部領域に接合されている。
【0020】
上記第六の態様によれば、耳掛け部が、縦方向の上端部領域及び下端部領域においてマスク本体に止着されていることで、耳掛け部の上側及び下側での折れやめくれを良好に抑制できる。
【0021】
本発明の第七の態様では、前記一対の耳掛け部の前記主部がそれぞれ前記外面に脱離可能に止着されている。
【0022】
上記第七の態様によれば、一対の耳掛け部のそれぞれを、より確実にマスク本体に固定できる。また、上記第四の態様のように耳掛け部同士が分離した構成であっても、各耳掛け部の変形を抑制でき、マスクの包装工程における不都合を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、マスクの包装工程等における耳掛け部の変形を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一形態によるマスクを外面側から見た平面図である。
【
図2】
図1に示すマスクの内面側(顔側)から見た平面図である。
【
図4】
図1に示すマスクの一対の耳掛け部がそれぞれ側方へ開かれた後の平面図である。
【
図8】
図1に示すマスクのさらに別の変形例を示す。
【
図10】
図1に示すマスクのさらに別の変形例を示す。
【
図11】
図1に示すマスクのさらに別の変形例を示す。
【
図13】本発明の別の一形態によるマスクを外面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0026】
(マスクの基本構成)
本形態におけるマスクは、装着者の顔、より具体的には装着者の少なくとも鼻及び口を覆うことのできるマスクであってよい。本形態によるマスクは、異物が顔に到達することを防止したり、装着者から発生する飛沫が飛散することを防止したりする機能を有し得るものであって、衛生マスク又はサージカルマスクとも呼ばれる。本形態は、使い捨てのマスクとして好適に使用されるが、洗濯等によって繰り返し使用可能なマスクとして使用されてもよい。
【0027】
図1に、マスク1の平面図を示す。
図1は、マスク1を外面側、すなわち装着時に顔に対向せず外部に露出させる側から見た図である。また、
図2に、マスクを内面側(顔側)から見た平面図を示す。
図3には、
図1のI-I線断面図を示す。
【0028】
図1に示すように、本形態によるマスク1は、装着時に装着者の顔の正面に配置され、装着者の主として鼻及び口を覆うことができるマスク本体10と、マスク本体10に結合された一対の耳掛け部20、20とを備えている。マスク本体10は、装着時に装着者の顔の上下方向に対応する縦方向(第1方向)D1と、縦方向(第1方向)D1に直交する方向であり、装着時に装着者の顔の左右方向に対応する方向である横方向(第2方向)D2とを有する。
図1の形態では、マスク本体10は、横方向D2に長辺を有する長方形の平面視形状を有するが、マスク本体10の平面視形状は図示のものに限られない。
【0029】
図1及び
図2に示すように、マスク本体10は、縦方向D1に並んで配置された複数の襞(プリーツ)によって形成されるプリーツ構造15を有している。プリーツ構造15の襞は、マスク本体10を構成するシートを、横方向D2に沿った折り線にて複数回折ることによって形成され得る。そして、複数の襞は、マスク本体10の側部(横方向D2端部)で固定されている。そのため、マスク1の使用時には、プリーツ構造15の横方向D2中央の部分を縦方向D1に広げることができ、これにより、マスク本体10の横方向D2中央が、マスク1の外面側に突出するように湾曲して、顔の立体形状に適合するような形状に変形し得る。プリーツ構造15の具体的な構成は特に限定されず、マスク本体に形成される公知の構成であってよい。
【0030】
図1~
図3に示すように、一対の耳掛け部20、20は、マスク本体10の外面に配置されている。耳掛け部20はそれぞれ、平面視で環状(若しくは閉じた帯状)になっているか、又は耳掛け部20とマスク本体10とで環状を形成していてよい。装着時には、耳掛け部20の環の内側、又は耳掛け部20とマスク本体10とによって形成される環の内側、すなわち開口29に装着者の耳が入るようにして、耳掛け部20を耳に掛けることができる。一対の耳掛け部20、20の構成は、図面で見て左右対称に構成されていることが好ましい。また、マスク1全体も左右対称に構成されていることが好ましい。
【0031】
本形態における一対の耳掛け部20、20は、それぞれシート状に形成されている。本明細書において、「シート状」又は「シート」とは、長さ及び幅が厚さに比べて大きく、1つの部材として取り扱いできる形状を指す。一対の耳掛け部20、20がそれぞれシート状であることで、紐状又は糸状の耳掛け部とは異なり、マスク装着時に耳掛け部20を耳に掛けた時に、耳掛け部20が耳たぶの裏面に面で接触できる。そのため、耳及び耳の周辺部分に掛かる負担を軽減して、違和感や痛みを低減でき、快適な装着感を得ることができる。
【0032】
図1~
図3に示す形態では、一対の耳掛け部20、20は、横方向D2中央で分離可能に結合されていて、単一のシートを形成している。この分離可能な結合部28の結合形式は特に限定されないが、使用者の通常の力で分離可能な結合であることが好ましい。結合部28は、例えば不連続な切込み(カット部)を入れてミシン目として形成されていてよい(
図1)。また、結合部28は、シートの厚みを小さくすること又はその他の手段によって、一対の耳掛け部20、20同士の境界を脆弱化したり、応力が掛かりやすくしたりすることによっても形成できる。
【0033】
なお、一対の耳掛け部20、20は、単一のシートを形成せずに、横方向D2中央で重なり合うように構成され、その重なり合った部分で互いに脱離可能に止着されていてもよい。
【0034】
マスク本体10は、複数の層が積層されてなる多層構造を有していてよい。例えば、異物(塵、花粉、細菌、ウィルス等)を捕集する機能が高められた中間層を、外側層及び内側層で挟んだ3層を少なくとも含む構造であってよい。マスク本体10を構成する各層は、不織布、織物、編物等の繊維含有層を含むことが好ましく、不織布を含むことがより好ましい。不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。また、中間層には、細い繊維を含み得るメルトブローン不織布が用いられることが好ましい。また、繊維含有層を構成する繊維は樹脂繊維であると好ましく、樹脂繊維の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。外側層及び内側層の目付は、15~50g/m2であってよい。異物捕集性の高い中間層の目付は、10~100g/m2であると好ましく、15~50g/m2であるとより好ましい。
【0035】
一対の耳掛け部20、20は、マスク本体10の外面の両側部(横方向D2の両端部)にそれぞれ結合されている。耳掛け部20、20は、全体として伸縮性を有していることが好ましい。本明細書において、「伸縮性を有する」とは、引っ張ること(引張力を加えること)によって引っ張られた方向の長さを大きくすることができ、引っ張ることをやめること(引張力を解除すること)によって、長さが元に戻るか又はほぼ元に戻る性質を有することを指す。
【0036】
図1~
図3に示す例では、一対の耳掛け部20、20はそれぞれ、耳掛け部本体21と、当該耳掛け部本体21の横方向D2に配置された延長材22とを有していてよい。延長材(又は補助材)22、22は、マスク1の縦方向D1に沿って延在するシート状の部材であってよい。耳掛け部20を耳掛け部本体21と延長材22との組合わせにより形成することで、耳掛け部20の形状、大きさ、伸縮性等をフレキシブルに変更でき、様々な要求に対応できる。
【0037】
耳掛け部本体21、21は、少なくとも横方向D2に伸縮性を有する材料からなっていてよい。耳掛け部本体21、21は、例えば、伸縮性フィルムを伸長させた状態で両面に表面材を配置して間欠的に接着したものを用いることができる。或いは上記の伸縮性フィルムに代えて、離間させて配置した伸長状態の複数の糸ゴムを用いてもよい。また、耳掛け部本体21、21は、伸縮性の不織布、伸縮性ホットメルト等を利用して構成されていてもよい。
【0038】
延長材22は、耳掛け部本体21の横方向D2外側の端部に重ねられ、内側接合部60で接合されている。また、延長材22は、マスク本体10の横方向D2の端部領域に外側接合部50で接合されている。別の言い方をすると、耳掛け部本体21は、延長材22を介してマスク本体10に接合されている。
【0039】
外側接合部50、50、及び内側接合部60、60はともに、ヒートシール、超音波シール、接着剤、縫込み等の接合手段によって接合されていてよい。本形態では、延長材22とマスク本体10との外側接合部50のため、及び延長材22と耳掛け部本体21との内側接合部60のためにそれぞれ最適な結合形式を選択できる。延長材22は伸縮性を有していてもよいが、耳掛け部本体21の伸縮性よりも小さいことが好ましい。
【0040】
また、耳掛け部20は、マスク本体10の横方向D2の端部領域に接合された基部20bと、基部20bから横方向D2の中央に延びる主部20mとからなっていてよい。基部20bは、少なくとも部分的にマスク本体10に接合されている部分であり、
図1~
図3の例では、延長材22及び耳掛け部本体21の一部からなる、縦方向D1にわたって延在する部分である。一方、主部20mは、マスク1の横方向D2外方に開いたC字形状を有する部分である。主部20mは、マスク1の使用時には、横方向D2外方に開かれる。
【0041】
(マスクの使用方法)
以下に、
図1~
図3に示す本形態のマスク1の使用方法について説明する。本形態によるマスク1の使用を開始する際には、使用者は、マスク1の装着前に、一対の耳掛け部20、20同士の分離可能な結合部28を解除して、耳掛け部20、20を互いに分離させる。より具体的には、使用者は、一対の耳掛け部20、20をそれぞれの手で摘まんで若しくは把持して、互いに反対方向に引張ることで、結合部28の結合を解除する。その後、耳掛け部20、20の主部20m、20m(場合によっては主部20mと基部20bとからなる部分)を横方向D2外方へ(側方へ)展開する。この際、使用者は、一対の耳掛け部20、20の分離及び展開の動作を持ち換えることなく、横方向D2外方へそれぞれ開くことができる。
【0042】
図4に、
図1のマスク1の一対の耳掛け部20、20を側方に展開した後の図を示す。また、
図5に、
図4のII-II線断面図を示す。
図4及び
図5に示すように、一対の耳掛け部20、20を開くと、耳掛け部20、20とマスク本体10との接合部50、50の横方向D2内側の端縁を軸として、耳掛け部20、20が裏返され、耳掛け部20、20のそれまでマスク本体10に対向していた面が露出する。図示の形態では、耳掛け部20の主部20mと、主部20mに接合して一体化されている基部20bの一部とが、裏返されている。
【0043】
一対の耳掛け部20、20は、マスク本体10の外面側に配置されていても、内面側に配置されていてもよいが、
図1~5に示すようにマスク1の外面側に配置されていることが好ましい。一対の耳掛け部20、20がマスク本体10の外面側に配置されていると、一対の耳掛け部20、20同士の分離を解除して横方向D2外方へ開く際に、マスク本体10の内面に触れる可能性を低減できるか又はその可能性をなくすことができ、衛生的観点から好ましい。
【0044】
本形態によるマスク1は、実際には次のように使用できる。例えば、マスク本体10の外面を上にしてマスク1が置かれている状態で、使用者が一対の耳掛け部20、20をそれぞれ手で把持して横方向D2外方へ開いた後、一対の耳掛け部20、20を把持したままマスク1を他人(装着者)の顔へと移動させることができる。マスク本体10をその他人の顔の所望の位置へ配置した後、持ち方を変えることなく、一対の耳掛け部20、20をそれぞれ、他人の耳に掛けることができる。よって、本形態によるマスク1は、例えば子供、病人等の、マスクを自らで装着することが困難である人にマスクを装着させる場合に、好適に使用することができる。
【0045】
さらに、
図1に示すように、一対の耳掛け部20、20には、一対の耳掛け部20、20を互いに分離して横方向D2外方に開く際に使用者が摘まむことができる摘み部21t、21tが形成されていてよい。摘み部21t、21tは、耳掛け部20、20の主部20m、20mにそれぞれ形成されている。また、摘み部21t、21tは、耳掛け部本体21、21が平面視で、マスク本体10の端縁、好ましくは下端から突出する部分であってよい。摘み部21t、21tがマスク本体10の端縁から突出していることで、マスク本体10自体に、すなわちマスク本体10の外面及び内面のどちらにも触れずに又はほとんど触れずに、使用者が両手で摘み部21t、21tを摘まむこともできる。そして、使用者は、マスク本体10に触れずに又はほとんど触れずに一対の耳掛け部20、20を分離・展開させることができる。よって、使用者が手指の衛生に十分な配慮ができない状況であっても、良好な衛生状態のマスク1を自らに又は他人に装着できる。また、耳掛け部20、20が摘み部21t、21tを有することで、使用者は、耳掛け部20、20を装着者の耳に掛ける時又は掛けた後に、摘み部21t、21tを持って耳掛け部の張り具合や位置を容易に調整することもできる。なお、摘み部21tがマスク本体10の端縁から突出している場合、突出した部分の縦方向D1の最大の長さは、5~20mmであると好ましく、8~15mmであるとさらに好ましい。
【0046】
さらに、一対の耳掛け部20、20がマスク本体10の内面(顔側の面)でなく、外面の両側部にそれぞれ結合されていることにより、マスク1の装着時、すなわち耳掛け部20、20を側方に開いて耳に掛けている状態では(
図4及び
図5)、マスク本体10の両側部は、耳掛け部20によって外面側から顔に向かって押さえられる。これにより、マスク本体10の両側部においてマスク本体10と顔との隙間を小さくすることができ、マスクの機能、例えば異物を遮断する機能、装着者が発した飛沫を飛散させない機能等を向上できる。また、本体の両側部の内面側(顔側)に耳掛け部20が配置されていないことで、装着中に、マスク本体10の両側部において耳掛け部20が装着者の顔に直接接触しないため、違和感も低減される。
【0047】
なお、マスク本体10には、マスク本体10の外面及び内面の区別を可能にするマーク18を、エンボス加工、印刷、縫込み等によって形成してもよい。マーク18は、使用者が目視で認識できるものであれば、その形態は限定されない。マーク18は、
図1等に示すように、文字であってもよいし、数字、記号、図形、ロゴ等であってもよい。
【0048】
(止着部)
上述のように、耳掛け部20、20はそれぞれ、マスク本体10の横方向D2の端部領域に部分的に又は全体で接合されている基部20b、20bと、基部20b、20bから横方向D2中央に向かって延びる主部20m、20mとからなっている。そして、主部20m、20mは、耳掛け部20、20の使用時に幅方向D2外方に展開される(裏返される)部分の主たる部分である(
図4等)。耳掛け部20、20は、その基部20b、20bがマスク本体10に接合されていることで、マスク本体10に対してある程度は固定されていると言える。しかしながら、マスク本体10に接合されていない部分、特に主部20m、20mはマスク本体10に対して動くことが可能であるため、マスク1の包装工程で搬送装置、包装装置等の装置の部材から力を受けた場合に容易に変形する。ここで、耳掛け部20、20の変形とは、耳掛け部20、20が(特に横方向D2中央の部分)が、マスク本体10に対して面方向にズレることを主として指す。このような変形の度合はそれほど大きいものではないが、耳掛け部20、20が変形しやすいことによって、マスクの包装工程で不都合を招く可能性がある。例えば、包装パッケージが樹脂フィルムからなる場合にはフィルムのシール工程が必要となるが、そのシール工程においてシール加工部材に耳掛け部20、20が接触した際に引き込まれやすくなり、いわゆる噛込みが発生してしまうことがある。また、変形(ズレ)が発生しやすければ、耳掛け部20、20の縁部のヨレやめくれも発生しやすい。よって、例えば、製造されたマスクを複数積層させた場合、得られた積層体全体の厚みが厚くなって所望の包装パッケージに収容できない可能性、マスクを自動計数装置で計数する際に装置が正しく計数できない可能性がある。さらには、耳掛け部20、20の縁部のヨレやめくれがあると、マスクの装着時に耳掛け部20、20がもたらす装着感を損ねる場合もある。
【0049】
これに対し、本形態によれば、耳掛け部20、20、より具体的には耳掛け部20、20の主部20m、20mが、マスク本体10の外面に脱離可能に止着されている。止着を形成する止着部8(
図1)は、熱融着、超音波融着、接着剤、易破断糸を用いた縫込み等によって形成することができる。このうち、耳掛け部20、20及びマスク本体10を重ねた後に止着加工ができ、止着部8の位置決めがより容易であることから、熱融着又は超音波融着を用いることが好ましい。
【0050】
このような止着部8によって、使用開始前の状態で耳掛け部20、20がマスク本体10の外面に止着されているので、マスク1の包装工程において耳掛け部20、20が装置の部材と接触した場合、例えば耳掛け部20、20が多少引っ張られたとしても、耳掛け部20、20がマスク本体10に対して大きくズレることがない。そのため、マスク1全体の形態(形状)の安定性が維持され、包装工程で生じる不都合(噛み込み、ヨレ若しくはまくれの発生)を防止できる。
【0051】
止着部8は、
図1に示すように1箇所に形成されていてもよいし、後述のように複数の箇所に散在させて形成されていてもよい。また、1箇所に形成された止着部8が、連続した所定面積を占めるよう形成されていてもよいし、互いにわずかに離間した複数の止着小部分の集合体からなっていてもよい。1箇所の止着部8の上面視の形状は、
図1に示すような円形、その他の形状であってもよいし、線状(後述)であってもよい。また、マスク1に設けられた止着部8の面積の合計は、1~50mm
2であってよい。上記範囲の合計面積を有する止着部8によって、耳掛け部20、20がマスク本体10に止着されていることによって、耳掛け部20、20のマスク本体10に対するズレが確実に防止されるとともに、止着部8の面積が過度に大きくなって、マスク1の使用時に耳掛け部20、20をマスク本体10から離しにくくなり、横方向D2外方に展開する動作が困難になることを防止できる。
【0052】
マスク1は、縦方向D1で見て、上端部領域E1と、下端部領域E2と、その間に配置されている中央領域Cとを有していてよい。これらの上端部領域E1、中央領域C、及び下端部領域E2はそれぞれ、マスク1の縦方向D1長さの3分の1の長さを有している。
図1の例では、止着部8は、中央領域Cに形成されている。耳掛け部20、20が中央領域Cでマスク本体10に止着されていることで、耳掛け部20、20全体の面方向の動きをより効果的に抑制できる。
【0053】
また、止着部8は、横方向D2の中央に形成されていると好ましい。すなわち、
図1に示すように、止着部8は、耳掛け部20、20同士の境界線上に形成されている、若しくは耳掛け部20、20同士の分離可能な結合部28上に形成されていることが好ましい。この配置によっても、耳掛け部20、20全体の面方向の動きをより効果的に抑制できる。さらに、止着部8は、マスクの平面視外形の図心(本例では、縦方向D1の中心を通る直線と横方向D2の中心を通る直線との交点)が含まれるように形成されていると、耳掛け部20、20の動きを抑制する効果が高く、好ましい。
【0054】
図1に示すように、止着部8が、分離可能な結合部28上に形成されている場合には、マスク1の装着準備の段階で耳掛け部20、20同士を分離する際に、この分離動作と同時に止着部8の止着を解消することができる。そのため、止着部8による止着解除と、耳掛け部20、20の分離とを別々の動作で行う必要はなく、マスク1の装着準備の作業がより容易になる。
【0055】
(止着部の変形例)
図6~
図9に、止着部8の変形例を示す。
図6に示すマスク1Aにおいては、止着部8が、一対の耳掛け部20、20の一方のみに形成されている。このように、止着部8は、一対の耳掛け部20、20の少なくとも一方をマスク本体10の外面に止着するように形成されていればよい。
図6に示すように、止着部8が結合部28を含まないように形成されている例であると、結合部28に影響を与えることなく止着部8の形式を自由に選択できるという観点からは好ましい。
【0056】
図7に示すマスク1Bでは、複数の止着部8a、8b(合わせて止着部8とも呼ぶ)が形成されている。本例では、止着部8a、8bによって、一対の耳掛け部20、20がマスク本体10にそれぞれ止着されている。そのため、耳掛け部20、20のそれぞれの変形が抑えられ、上述したような包装工程における不都合をより確実に防ぐことができる。本例のように一対の耳掛け部20、20のそれぞれがマスク本体10に接合されている場合、各耳掛け部20を止着している止着部の構成(止着部の大きさ、形状、形成位置、止着形式等)は、横方向D2の中央を通る縦方向D1に延びる中心線を対称軸とした線対称とすることができるが、必ずしも線対称になっていなくともよい。
【0057】
また、
図8に示すように、止着部は、中央領域C以外の場所に形成されていてもよい。
図8に示すマスク1Cでは、止着部8a、8b(
図7と同様)に加え、上端部領域E1にも止着部8c、8dが、また下端部領域E2にも止着部8e、8fが形成されている。このように、上端部領域E1及び/又は下端部領域E2に止着部が形成されていると、耳掛け部20、20の縁部でのヨレやまくれを効果的に防止できる。このように、止着部は、縦方向D1の異なる箇所に散在させて形成することができる。
【0058】
なお、本形態によるマスクは、
図8における止着部8a、8bが省かれた形態とすることもできる。すなわち、止着部が上端部領域E1及び/又は下端部領域E2に形成されていて、中央領域Cに形成されていない形態とすることもできる。その場合、上述と同様に、耳掛け部20、20の縁部のヨレやまくれを防止できるという効果が得られる。
図9には、マスク1Cの変形例として、上端部領域E1に止着部8c、8dが、下端部領域E2に止着部8e、8fが形成されているが、中央領域Cには形成されていない例を示す。本例の場合は、耳掛け部20、20同士が結合部28で結合されていると好ましい。
【0059】
さらに、
図10に、線状に形成された止着部を有するマスク1Dを示す。
図10の例では、上端部領域E1の止着部8c、8d、中央領域Cの止着部8a、8b、及び下端部領域E2の止着部8e、8fはいずれも、不連続の線状(点線状)に形成されている。このような点線状の止着部は、耳掛け部20をマスク本体10により確実に接合できるとともに、熱融着等による止着部であっても、マスク本体10及び耳掛け部20の表面が変性する部分を小さくできるという観点で、好ましい。なお、止着部が線状に形成されている場合、線は、図示のような点線状であってもよいし実線状であってもよい。線の形状は、
図10の止着部8a~8eのような直線又は直線の組合せであってもよいし、止着部8fのような曲線であってもよい。また、止着部は縦方向D1に平行に形成されていてもよいし、止着部8a、8c、8eのように横方向D2に平行に形成されていてもよいし、止着部8b、8dのように斜めに形成されていてもよい。さらに、線の太さに応じて複数の線が並列して形成された線状の止着部が設けられていてもよい。なお、上端領域E1及び下端部領域E2に形成される止着部は、耳掛け部20の外縁の輪郭に沿った線状に形成されていてもよい。
【0060】
図11に示すマスク1Eは、耳掛け部20、20同士が分離している。このような分離した耳掛け部20、20の場合、耳掛け部20、20を一枚のシートとする必要がないので、耳掛け部20、20の設計がより自由になる。このような分離した耳掛け部20、20は、例えばマスク本体10の幅方向D2長さを大きくしたいが、耳掛け部20、20の幅方向D2長さを小さくしたい場合に好適に用いられる。そして、このような分離した耳掛け部20、20の場合であっても、止着部8a、8bが、耳掛け部20、20のそれぞれに形成されていれば、耳掛け部20、20のそれぞれがマスク本体10の外面に確実に止着されるので、両耳掛け部20、20のズレが防止され、これにより包装工程における不都合を防止できる。
【0061】
図6~
図9及び
図11に示した例では、1つの止着部が円形に形成されている。しかしながら、図示の円形の止着部に代えて、楕円形、三角形、正方形、長方形、菱形等の多角形、ハート形、星形、三日月形、滴形、或いはこれらの組合せによって別のデザインを構成する形状を有する止着部を設けてもよい。
図12に、止着部の形状の別の例を示す。
図12に示す例は、
図8に示すマスク1Cの止着部の変形例であり、止着部8a、8bをハート形に、止着部8c、8dを星形に、止着部8e、8fを三日月形に形成したものである。このように、止着部の形状を変更することで、マスクのデザイン性も高まる。
【0062】
図13に、別の形態によるマスク101を示す。
図13に示すマスク101では、耳掛け部20、20が、延長材(補助材)22、22を用いずに、耳掛け部本体21、21から構成されている。本形態では、耳掛け部本体21、21がマスク本体10に、接合部150にて直接接合されている。接合部150は、上述の外側接合部50及び内側接合部60と同様の形式で形成することができる。本形態においても、
図1で示したものと同様の止着部8を用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B、1C、1D、1E、101 マスク
8、8a、8b、8c、8d、8e、8f 止着部
10 マスク本体
15 プリーツ
18 マーク
20 耳掛け部
20b 基部
20m 主部
21 耳掛け部本体
21t 摘み部
22 延長材(補助材)
28 分離可能な結合部
29 開口
50 外側接合部
60 内側接合部
C 中央領域
D1 縦方向(上下方向)
D2 横方向(左右方向)
E1 上端部領域
E2 下端部領域