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  • 特開-異常判定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150344
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/18 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F01N3/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052910
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 一実
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AA28
3G091BA31
3G091DB11
3G091EA33
(57)【要約】
【課題】NOxセンサが異常であるか否かを適切に判定できる。
【解決手段】異常判定装置1は、エンジン2の排気通路3内に設置されたNOxセンサ4の検出値を取得する検出値取得部122と、エンジン2の排気ガスが排気通路3内を流れていないときに検出された検出値が、排気ガスが排気通路3内を流れているときにNOxセンサ4が検出する値として想定される想定検出範囲よりも広い許容範囲に含まれる場合、想定検出範囲を設定する基準値を検出値に変更する基準値変更部124と、変更された基準値に応じて想定検出範囲を設定する範囲設定部125と、想定検出範囲の変更後、排気ガスが排気通路3内を流れているときに検出された検出値が、変更された想定検出範囲外である場合、NOxセンサ4が異常であると判定する異常判定部123と、を有する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路内に設置されたNOxセンサの検出値を取得する検出値取得部と、
前記エンジンの排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに検出された前記検出値が、前記排気ガスが前記排気通路内を流れているときに前記NOxセンサが検出する値として想定される想定検出範囲よりも広い許容範囲に含まれる場合、前記想定検出範囲を設定する基準値を前記検出値に変更する基準値変更部と、
変更された前記基準値に応じて前記想定検出範囲を設定する範囲設定部と、
前記想定検出範囲の変更後、前記排気ガスが前記排気通路内を流れているときに検出された前記検出値が、変更された前記想定検出範囲外である場合、前記NOxセンサが異常であると判定する異常判定部と、
を有する異常判定装置。
【請求項2】
前記範囲設定部は、
前記基準値が前記想定検出範囲の中心となるように前記想定検出範囲を設定しており、
前記基準値を変更した値だけ前記想定検出範囲を移動させる、
請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記基準値変更部は、前記排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに前記NOxセンサが検出する値として想定される前記許容範囲であって、前記NOxセンサが前記検出値として出力可能な値の出力可能範囲の中心を範囲の中心とする前記許容範囲に、前記排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに検出された前記検出値が含まれる場合、前記基準値を前記検出値に変更する、
請求項1又は2に記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに検出された前記検出値が前記許容範囲外である場合、前記NOxセンサが異常であると判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの異常を判定する異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気通路内に設置されたNOxセンサが異常であるか否かを判定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、エンジンのシリンダへの燃料の供給が停止されたときのNOxセンサの検出値が閾値よりも高い場合、NOxセンサが異常であると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-2928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、融雪剤、凍結防止剤又は洗浄剤等に含まれているナトリウム(Na)等の異物が、排気口から排気通路内に侵入してNOxセンサに付着することがある。NOxセンサに異物が付着した場合、燃料の供給が停止されたときのNOxセンサの検出値が閾値よりも高くなり、NOxセンサが異常であると判定してしまっていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、NOxセンサが異常であるか否かを適切に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、エンジンの排気通路内に設置されたNOxセンサの検出値を取得する検出値取得部と、前記エンジンの排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに検出された前記検出値が、前記排気ガスが前記排気通路内を流れているときに前記NOxセンサが検出する値として想定される想定検出範囲よりも広い許容範囲に含まれる場合、前記想定検出範囲を設定する基準値を前記検出値に変更する基準値変更部と、変更された前記基準値に応じて前記想定検出範囲を設定する範囲設定部と、前記想定検出範囲の変更後、前記排気ガスが前記排気通路内を流れているときに検出された前記検出値が、変更された前記想定検出範囲外である場合、前記NOxセンサが異常であると判定する異常判定部と、を有する異常判定装置を提供する。
【0007】
前記範囲設定部は、前記基準値が前記想定検出範囲の中心となるように前記想定検出範囲を設定しており、前記基準値を変更した値だけ前記想定検出範囲を移動させてもよい。
【0008】
前記基準値変更部は、前記排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに前記NOxセンサが検出する値として想定される前記許容範囲であって、前記NOxセンサが前記検出値として出力可能な値の出力可能範囲の中心を範囲の中心とする前記許容範囲に、前記排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに検出された前記検出値が含まれる場合、前記基準値を前記検出値に変更してもよい。
【0009】
前記異常判定部は、前記排気ガスが前記排気通路内を流れていないときに検出された前記検出値が前記許容範囲外である場合、前記NOxセンサが異常であると判定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、NOxセンサが異常であるか否かを適切に判定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る異常判定システムの構成を示す模式図である。
図2】変更前の想定検出範囲を示す図である。
図3】変更後の想定検出範囲を示す図である。
図4】異常判定装置が実行する想定検出範囲を変更する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[異常判定システムSの構成]
実施の形態に係る異常判定システムSは、エンジン2の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(以下「NOx」と言う)を検出するNOxセンサ4に異常が有るか否かを判定する。異常判定システムSは、トラック等の車両に搭載されている。なお、異常判定システムSは、車両に限らず、船舶、産業機械その他の移動体や定置式エンジンに搭載されてもよい。
【0013】
図1は、実施の形態に係る異常判定システムSの構成を示す模式図である。異常判定システムSは、異常判定装置1と、エンジン2と、排気通路3と、NOxセンサ4と、センサ異常警告ランプ5とを有する。
【0014】
エンジン2は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。本実施の形態に係るエンジン2は、4気筒のディーゼルエンジンであるが、これに限定されず、4気筒以外のエンジンであってもよい。
【0015】
排気通路3は、エンジン2と接続された排気管である。排気通路3は、エンジン2の排気ガスを車両の外部へ排出させる。
【0016】
NOxセンサ4は、エンジン2の排気通路3内に設置されている。NOxセンサ4は、排気ガス中のNOxを検出する。NOxセンサ4は、ジルコニア等を材料として焼結されたセンサ素子と、センサ素子を加熱するヒータ(図示せず)とを有する。センサ素子は、温度上昇に伴い活性化するとNOxを検出する。ヒータは、通電されることにより、NOxセンサ4のセンサ素子を活性化温度(例えば700度から800度程度)まで加熱する。
【0017】
NOxセンサ4のセンサ素子は、活性化温度に達して活性化状態になると、排気通路3内のNOxの量に応じた検出値を出力する。具体的には、センサ素子は、排気ガス中の酸素を除去した後、NOをNOに変換する。そして、センサ素子は、NOをNO還元触媒で分解したときに発生する酸素の量に比例した電圧を検出して検出値として出力する。
【0018】
センサ異常警告ランプ5は、NOxセンサ4に異常が生じたことを報知するランプである。センサ異常警告ランプ5は、異常判定装置1の制御によりNOxセンサ4が正常である場合に消灯し、NOxセンサ4が異常である場合に点灯する。
【0019】
異常判定装置1は、NOxセンサ4の検出値に基づいてNOxセンサ4が異常か否かを判定する。以下、異常判定装置1の構成を具体的に説明する。異常判定装置1は、記憶部11と制御部12とを含む。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0020】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、排出判定部121、検出値取得部122、異常判定部123、基準値変更部124及び範囲設定部125としての機能を実現する。
【0021】
排出判定部121は、排気通路3に排気ガスが流れているか否かを判定する。例えば、排出判定部121は、エンジン2のシリンダに燃料が噴射されている場合に排気通路3に排気ガスが流れていると判定する。
【0022】
排出判定部121は、エンジン2のシリンダに燃料が噴射されていない場合に排気通路3に排気ガスが流れていないと判定する。具体的には、排出判定部121は、エンジン2のシリンダに最後に燃料が噴射されてから所定時間経過後に排気通路3に排気ガスが流れていないと判定する。所定時間は、排気通路3から排気ガスが排出されるまでにかかる時間である。所定時間の具体的な値は実験などにより適宜定めればよく、例えば10分である。
【0023】
検出値取得部122は、NOxセンサ4の検出値を取得する。検出値取得部122は、NOxセンサ4がNOxを検出する毎にNOxセンサ4から検出値を取得する。例えば、検出値取得部122は、排気ガスが排気通路3内を流れているときにNOxセンサ4が検出した検出値である有ガス時検出値を取得する。具体的には、検出値取得部122は、排気通路3に排気ガスが流れていると判定されたときに取得した検出値を有ガス時検出値として取得する。
【0024】
異常判定部123は、有ガス時検出値が想定検出範囲内か否かに基づいてNOxセンサ4が異常か否かを判定する。想定検出範囲は、排気ガスが排気通路3内を流れているときにNOxセンサ4が検出する値として想定される想定検出範囲である。想定検出範囲の詳細は後述する。異常判定部123は、有ガス時検出値が想定検出範囲内である場合、NOxセンサ4が正常であると判定する。異常判定部123は、有ガス時検出値が想定検出範囲外である場合、NOxセンサ4が異常であると判定する。
【0025】
ところで、排気通路3の排気口から排気通路3内に異物が侵入してNOxセンサ4に付着することがある。異物は、例えば融雪剤、凍結防止剤又は洗浄剤等に含まれているナトリウムであるが、これに限らない。NOxセンサ4に異物が付着した場合の有ガス時検出値は、排気ガスに含まれているNOxの量に応じた値よりも高くなることがある。
【0026】
そこで、異常判定装置1は、排気ガスが排気通路3内を流れていないときに検出された検出値に応じて想定検出範囲を変更する。以下、想定検出範囲を変更する処理を図2及び図3を用いて説明する。図2は、変更前の想定検出範囲B1を示す図である。
【0027】
図2の出力可能範囲Eは、NOxセンサ4が検出値として出力可能な値の範囲である。出力可能な値の範囲は、NOxセンサ4の仕様やNOxセンサ4が接続されている回路により定まる。出力可能範囲Eの具体的な値は、0.5Vから4.5Vの範囲である。
【0028】
変更前の想定検出範囲B1は、基準値A1(2.5V)を中心として所定範囲になるように設定されている。想定検出範囲B1は、基準値A1を中心として2.4Vから2.6Vの範囲である。
【0029】
想定検出範囲を変更する場合、まず、検出値取得部122は、エンジン2の排気ガスが排気通路3内を流れていないときに検出された検出値である無ガス時検出値を取得する。具体的には、検出値取得部122は、排気通路3に排気ガスが流れていないと判定されたときに取得した検出値を無ガス時検出値として取得する。以下、無ガス時検出値として2.7Vが検出されたものとする。
【0030】
基準値変更部124は、無ガス時検出値に基づいて想定検出範囲を設定する基準値A1を変更する。基準値変更部124は、無ガス時検出値が許容範囲Cに含まれる場合、基準値A1を無ガス時検出値に変更する。
【0031】
許容範囲Cは、排気ガスが排気通路3内を流れていないときにNOxセンサ4が検出する値として想定される範囲である。許容範囲Cは、想定検出範囲B1よりも広い。許容範囲Cの中心Dは、出力可能範囲Eの中心(2.5V)と同じ値である。許容範囲Cは、2.2Vから2.8Vまでの範囲である。
【0032】
基準値変更部124は、無ガス時検出値として2.7Vが検出されたので、無ガス時検出値(2.7V)が許容範囲Cに含まれると判定し、基準値A1(2.5V)を基準値A2(2.7V)に変更する。図3は、変更後の想定検出範囲B2を示す図である。図3の基準値A2は、変更後の基準値である。
【0033】
範囲設定部125は、基準値A1から変更された基準値A2に応じて想定検出範囲B2を設定する。例えば、範囲設定部125は、基準値A1を基準値A2に変更した値だけ想定検出範囲B1を移動させた想定検出範囲B2を設定する。具体的には、範囲設定部125は、変更前の想定検出範囲B1の上限値及び下限値を、変更前の基準値A1と変更後の基準値A2との差(0.2V)だけ移動させた新たな想定検出範囲B2を設定する。想定検出範囲B2は、2.6Vから2.8Vまでの範囲である。このようにすることで、範囲設定部125は、NOxセンサ4に異物が付着した際に、想定検出範囲を適切に設定できる。
【0034】
NOxセンサ4に付着した異物は、排気ガスにより吹き飛ばされてNOxセンサ4から除去されることがある。NOxセンサ4に付着した異物がNOxセンサ4から除去された際にはNOxセンサ4が検出する無ガス時検出値が、異物が付着しているときの値よりも小さくなる。この場合でも、基準値変更部124は、上記の処理と同様に基準値A1を変更する。具体的には、基準値変更部124は、無ガス時検出値が減少しても、許容範囲Cに含まれる場合、基準値A1を無ガス時検出値に変更する。そして、範囲設定部125は、無ガス時検出値に変更された基準値A2に応じて想定検出範囲B2を設定する。
【0035】
異常判定部123は、想定検出範囲B1が想定検出範囲B2に変更された後の有ガス時検出値が、想定検出範囲B2内である場合、NOxセンサ4が正常であると判定する。一方、異常判定部123は、想定検出範囲B1が想定検出範囲B2に変更された後の有ガス時検出値が、想定検出範囲B2外である場合、NOxセンサ4が異常であると判定する。
【0036】
このように、異常判定部123は、NOxセンサ4に異物が付着しても、異物の付着に応じて変更された想定検出範囲に有ガス時検出値が含まれるか否かに基づいてNOxセンサ4が異常であるか否かを判定できる。その結果、異常判定部123は、異物の付着により有ガス時検出値が変化しても、NOxセンサ4が異常であるか否かを適切に判定できる。例えば、想定検出範囲B1が想定検出範囲B2に変更された後に取得された有ガス時検出値が、NOxに応じた値より高い2.7Vであるとする。この場合、変更前の想定検出範囲B1を用いるとNOxセンサ4が異常であると誤って判定されが、変更後の想定検出範囲B2を用いるとNOxセンサ4が正常であると判定される。
【0037】
異常判定部123は、NOxセンサ4が異常であると判定した場合、センサ異常警告ランプ5を点灯させる。このようにすることで、異常判定システムSが搭載された車両を運転する運転者は、NOxセンサ4に異常があることを把握できる。
【0038】
なお、NOxセンサ4に異物が多量に付着すると無ガス時検出値が許容範囲C外になることがある。基準値変更部124は、無ガス時検出値が許容範囲C外である場合、基準値A1を無ガス時検出値に変更しない。また、異常判定部123は、無ガス時検出値が許容範囲C外である場合、NOxセンサ4が異常であると判定する。このようにすることで、異常判定部123は、NOxセンサ4に異物が多量に付着した場合にはNOxセンサ4が異常であると判定できる。
【0039】
[想定検出範囲を変更する処理]
図4は、異常判定装置1が実行する想定検出範囲を変更する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、排気ガスが排気通路3を流れていないと判定された際に実行される。
【0040】
まず、検出値取得部122は、無ガス時検出値を取得する(ステップS1)。具体的には、検出値取得部122は、エンジン2の排気ガスが排気通路3内を流れていないときに検出された検出値を無ガス時検出値として取得する。
【0041】
次に、基準値変更部124は、無ガス時検出値が許容範囲Cに含まれるか否かを判定する(ステップS2)。基準値変更部124は、無ガス時検出値が許容範囲Cに含まれる場合(ステップS2でYes)、想定検出範囲B1を設定する基準値A1を無ガス時検出値に変更する(ステップS3)。具体的には、基準値変更部124は、基準値A1(図2を参照)を、基準値A2(図3を参照)に変更する。
【0042】
そして、範囲設定部125は、変更前の基準値A1を中心とする想定検出範囲B1を、変更後の基準値A2を中心とする想定検出範囲B2に変更する(ステップS4)。具体的には、範囲設定部125は、基準値A1を基準値A2に変更した値だけ想定検出範囲B1(図2を参照)を移動させて、想定検出範囲B2(図3を参照)を設定する。
【0043】
異常判定部123は、無ガス時検出値が許容範囲C外である場合(ステップS2でNo)、NOxセンサ4が異常であると判定する(ステップS5)。そして、異常判定部123は、センサ異常警告ランプ5を点灯させる。
【0044】
[異常判定装置1の効果]
以上説明したとおり、異常判定装置1は、無ガス時検出値が、許容範囲Cに含まれる場合、想定検出範囲B1を設定する基準値A1を無ガス時検出値に変更する。そして、異常判定装置1は、変更された基準値A2に応じて想定検出範囲B2を設定し、想定検出範囲B2に変更後の有ガス時検出値が、想定検出範囲B2外である場合、NOxセンサ4が異常であると判定する。
【0045】
このようにすることで、異常判定装置1は、NOxセンサ4に異物が付着したことにより、排気ガスに含まれているNOxの量に応じた値よりも有ガス時検出値が高くなっても、変更後の想定検出範囲B2に基づいてNOxセンサ4の異常の有無を判定するので、誤判定を抑制できる。そのため、異常判定装置1は、NOxセンサが異常であるか否かを適切に判定できる。
【0046】
(変形例)
上記の実施の形態の異常判定システムSは、1つのNOxセンサ4を有したが、これに限らず、異常判定システムSは、複数のNOxセンサ4を備えていてもよい。例えば、異常判定システムSを搭載した車両が排気通路3内に尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムを備える場合、尿素SCRの触媒の上流側及び下流側の各々にNOxセンサ4を有する。そして、異常判定装置1は、上流側のNOxセンサ4及び下流側のNOxセンサ4の各々について、上記の処理を行う。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0048】
S 異常判定システム
1 異常判定装置
11 記憶部
12 制御部
121 排出判定部
122 検出値取得部
123 異常判定部
124 基準値変更部
125 範囲設定部
2 エンジン
3 排気通路
4 NOxセンサ
5 センサ異常警告ランプ
図1
図2
図3
図4