(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015035
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】塩化物ガス供給方法とその装置及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220114BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220114BHJP
C23C 16/08 20060101ALI20220114BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220114BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20220114BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/08
C23C16/455
B01J4/02 A
B01J7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117630
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】390014409
【氏名又は名称】株式会社リンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘文
【テーマコード(参考)】
4G068
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4G068AA02
4G068AB01
4G068AC01
4G068AC05
4G068AC07
4G068AD40
4G068AE01
4G068AF31
4G068DA04
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4G068DD03
4G068DD11
4K030AA03
4K030BA02
4K030BA10
4K030BA22
4K030CA04
4K030EA01
4K030EA03
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4K030LA15
5F045AA03
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5F045EE04
5F058BA20
5F058BC03
5F058BF01
5F058BF24
5F058BG02
(57)【要約】
【課題】従来の質量流量制御器を用いて塩化物ガスの質量流量制御が可能であり、且つ塩化物ガスの取り扱い範囲を反応室の直前に限定することによりシステムの簡素化が可能な塩化物ガス供給方法を提供する。
【解決手段】塩素ガス又は塩化水素ガスで構成され、質量流量制御された反応ガスを加熱された石英ガラス製の反応管に導入し、前記反応管内に充填された絶縁膜形成用の固体原料と前記反応ガスとを反応させて塩化物ガスを発生させ、発生した前記塩化物ガスを絶縁膜形成用の反応室に向けて供給することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の絶縁膜形成における塩化物ガス供給方法において、
塩素ガス又は塩化水素ガスで構成され、質量流量制御された反応ガスを加熱された石英ガラス製の反応管に導入し、
前記反応管内に充填された絶縁膜形成用の固体原料と前記反応ガスとを反応させて塩化物ガスを発生させ、
発生した前記塩化物ガスを絶縁膜形成用の反応室に向けて供給することを特徴とする塩化物ガス供給方法。
【請求項2】
前記反応ガスは、前記反応室における絶縁膜形成に必要な量の塩化物ガスが反応管に於いて発生するように質量流量制御されることを特徴とする請求項1に記載の塩化物ガス供給方法。
【請求項3】
前記固体原料は、アルミニウム、ジルコニウム又はハフニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化物ガス供給方法。
【請求項4】
半導体装置の絶縁膜形成における塩化物ガス供給用の塩化物ガス発生装置であって、
絶縁膜形成用の固体原料が充填され、塩素ガス又は塩化水素ガスで構成され、且つ質量流量制御された反応ガスが通流し、前記固体原料と前記反応ガスとが反応して塩化物ガスを発生させ、発生した前記塩化物ガスを絶縁膜形成用の反応室に向けて供給する石英ガラス製の反応管と前記反応管を加熱する反応管加熱部とを含むことを特徴とする塩化物ガス発生装置。
【請求項5】
前記反応管加熱部は前記反応管の外面を囲繞するように配置され、前記反応管加熱部と前記反応管との間の隙間にグラファイト粉末が充填された伝熱用充填層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の塩化物ガス発生装置。
【請求項6】
前記反応ガスは、前記反応室における絶縁膜形成に必要な量の塩化物ガスが反応管に於いて発生するように質量流量制御されることを特徴とする請求項4又は5に記載の塩化物ガス発生装置。
【請求項7】
前記反応管の入口と前記固体原料との間に入口側フィルタが設置され、前記反応管の出口と前記固体原料との間に出口側フィルタが設置されていることを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の塩化物ガス発生装置。
【請求項8】
塩素ガス又は塩化水素ガスで構成された質量流量制御の対象となる制御対象ガスのガス供給源と、
前記ガス供給源に接続され、絶縁膜形成用の反応室における塩化物ガスの必要量を発生させる量になるように前記制御対象ガスを質量流量制御する質量流量制御器と、
絶縁膜形成用の固体原料が充填され、且つ前記質量流量制御器に接続されていて質量流量制御された前記反応ガスが通流し、前記反応ガスを前記固体原料に反応させて塩化物ガスを発生させ、前記反応室に前記塩化物ガスを供給する石英ガラス製の反応管、及び前記反応管を加熱する反応管加熱部とで構成された塩化物ガス発生装置と、
反応管の出口と反応室の入口とを繋ぐ塩化物ガス供給配管、及び前記塩化物ガス供給配管の周囲に設けられ、塩化物ガス供給配管を流れる前記塩化物ガスの蒸気圧を維持するために加熱又は保温する配管温度維持部とを含むことを特徴とする半導体装置の絶縁膜形成における塩化物ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造における、例えば、アトミック・レイヤー・ディポシション(ALD)装置にアルミニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどのゲート絶縁膜を主体とした絶縁膜形成元素の塩化物ガスを供給する塩化物ガス供給方法とその装置及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、真空を利用した成膜技術の1つである単原子層成長装置(ALD装置)が成膜装置の主流となりつつある。この装置で、例えば、CMOSデバイスのHigh-k(ハイ-ケー)メタルゲート絶縁膜(高誘電率ゲート絶縁膜)を作成する場合、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどの元素の化合物(常温で固体)を高温に加熱して気化させ、ALD装置の反応室に導入してシリコンウエハ上で成膜する方法が主流になりつつある。
【0003】
上記化合物から化合物ガスを取り出す方法の1つとして、有機化合物を用いる方法(固体原料化合物の溶液加熱法)がある。この方法は、上記元素(アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム)の有機化合物(固体)を溶媒に溶解して液体に変え、これを次の液体質量流量制御器で質量流量制御し、それを気化器で気化させて供給するという方法である。
【0004】
この方法の問題点は、以下の通りである。
1)溶けた有機化合物と溶媒の沸点が異なるために、気化器内部で溶媒が優先的に蒸発し、残された固体成分が気化器内部で液体の導入口を閉塞させてしまう。
2)これらの有機化合物は加熱により変性するものが多く、二量体、三量体などの多量体生成物が生成され、薄膜生成に悪影響を与える。
3)溶媒として使用する有機物は一般的に炭素を含んでおり、熱分解によりこの炭素が薄膜中に残留して半導体薄膜生成に悪影響を与える。
【0005】
それ故、炭素を含まない原料の使用が検討されてきた。その中で、塩化物が取り上げられ、成膜原料としてその一部が使用されている。現在対象となっている塩化物は、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、四塩化ジルコニウム(ZrCl
4)、四塩化ハフニウム(HfCl
4)などである。これら塩化物を利用する方法として固体塩化物高温加熱法がある。
この方法は、常温で固体であるこれら固体塩化物原料Mcの顆粒状物を原料容器100に入れ、高温度に加熱して昇華させ、昇華した塩化物ガスG150を質量流量制御器(マスフローコントローラ)200で質量流量制御を行い、質量流量制御された塩化物ガスG300を反応室700に供給するというプロセス(固体塩化物高温加熱法)である(
図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】SEMICONDUCTOR INTERNATIONAL 日本版,2008年6月,P.19-P.24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示す固体塩化物高温加熱法では、恒温槽110に収納された原料容器100、質量流量計210及び制御バルブ220からなるマスフローコントローラ200が用いられている。これら機器類は配管類で接続され、成膜装置の反応室700に繋がっている。そして上記のように原料容器100に収納された固体塩化物原料Mcは、原料容器100で加熱されて昇華し、塩化物ガスG150が発生する。この塩化物ガスG150はマスフローコントローラ200で質量流量制御されて反応室700に送り込まれる。
【0008】
処がこのプロセスにも、以下のような問題点がある。
1)これら固体塩化物原料Mcはきわめて反応性が高く、大気中では酸素や水分などと反応し、且つ有毒であるため、真空中或いは不活性ガスの雰囲気の中で原料容器100に充填する必要がある。その取り扱いが困難な分、設備や労力を要しコストが高くなる。
2)これら固体塩化物原料Mcは常温で固体であり、融点や沸点は高く、気化させるためには装置として恒温槽110を用い、これら固体塩化物原料Mcが収容された原料容器100を高温に加熱し且つこの高温を保つ必要がある。これと同時に原料容器100から反応室700に至る機器類を繋ぐ配管系は、気化した塩化物ガスG150・G300の蒸気圧を一定以上に保つため、高温度に加熱・保温しなければならず、原料容器100から反応室700に至る全配管経路でヒータや保温材を設置する必要がある。同時に配管系の途中に設置される質量流量制御器200も高温度に加熱・保温しなければならない。換言すれば、このプロセスでは、原料容器100から反応室700に至る全経路にヒータや保温材を設置しなければならない。
3)しかもこれらの固体塩化物原料Mcや発生した塩化物ガスG150・G300は金属に対してきわめて腐食性が高い。そのため質量流量制御器200を含め、原料容器100から反応室700に至る全経路の少なくとも接ガス部分には塩化物ガスG150・G300に腐食されない素材を使わなければならない。このような素材は限定され且つ高価であり、加工も非常に困難である。質量流量制御器200は塩化物ガスG150・G300に腐食されず且つ耐熱性の素材を使った特殊仕様の装置となる。
なお、これらの機器を構成する接ガス部分がこれらの機器に従来使われていた金属材料の場合、高温下では塩化物ガスG150・G300がこの金属材料と反応して金属腐食を生じる。これによって生じた金属の塩素化合物が半導体成膜装置の反応室700に流入し、半導体成膜にとって致命的な汚染(メタルコンタミネーション)を引き起こす。
【0009】
本発明はこのような問題点の解決にためになされたものであり、その第1の目的とする処は、従来の質量流量制御器を用いて塩化物ガスの質量流量制御が可能であり、且つ塩化物ガスの取り扱い範囲を反応室の直前に限定することによりシステムの簡素化が可能な塩化物ガス発生方法を提供することにあり、第2の目的とする処は、該方法を可能にする塩化物ガス発生装置を提供することにあり、第3の目的とする処は、該塩化物ガス発生装置を用い、上記方法の実施を可能にするシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明方法は、半導体装置の絶縁膜形成における塩化物ガス供給方法において、
塩素ガス又は塩化水素ガスで構成され、質量流量制御された反応ガスG2を加熱された石英ガラス製の反応管41に導入し、
前記反応管41内に充填された絶縁膜形成用の固体原料Mと前記反応ガスG2とを反応させて塩化物ガスG3を発生させ、
発生した前記塩化物ガスG3を絶縁膜形成用の反応室70に向けて供給することを特徴とする塩化物ガス供給方法である。
【0011】
本発明方法において、前記反応ガスG2は、前記反応室70における絶縁膜形成に必要な量の塩化物ガスG3が反応管41に於いて発生するように質量流量制御されることを特徴とする。
【0012】
本発明方法に使用される絶縁膜形成用の固体原料Mは、アルミニウム、ジルコニウム又はハフニウムであることを特徴とする。
【0013】
本発明方法に使用される塩化物ガス発生装置40は、半導体装置の絶縁膜形成における塩化物ガス供給過程で使用される装置で、
絶縁膜形成用の固体原料Mが充填され、塩素ガス又は塩化水素ガスで構成され、且つ質量流量制御された反応ガスG2が通流し、前記固体原料Mと前記反応ガスG2とが反応して塩化物ガスG3を発生させ、発生した前記塩化物ガスG3を絶縁膜形成用の反応室70に向けて供給する石英ガラス製の反応管41と前記反応管41を加熱する反応管加熱部50とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の塩化物ガス発生装置40において、反応管加熱部50は反応管41の外面を囲繞するように配置され、反応管加熱部50と反応管41との間の隙間にグラファイト粉末が充填された伝熱用充填層49が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の塩化物ガス発生装置40において、前記反応ガスG2は、前記反応室70における絶縁膜形成に必要な量の塩化物ガスG3が反応管41に於いて発生するように質量流量制御されることを特徴とする。
【0016】
半導体装置の絶縁膜形成における本発明の塩化物ガス供給システムAは、
塩素ガス又は塩化水素ガスで構成された質量流量制御の対象となる制御対象ガスG1のガス供給源1と、
前記ガス供給源1に接続され、絶縁膜形成用の反応室70における塩化物ガスG3の必要量を発生させる量になるように前記制御対象ガスG1を質量流量制御する質量流量制御器10と、
絶縁膜形成用の固体原料Mが充填され、且つ前記質量流量制御器10に接続されていて質量流量制御された前記反応ガスG2が通流し、前記反応ガスG2を前記固体原料Mに反応させて塩化物ガスG3を発生させ、前記反応室70に前記塩化物ガスG3を供給する石英ガラス製の反応管41、及び前記反応管41を加熱する反応管加熱部50とで構成された塩化物ガス発生装置40と、
反応管41の出口41bと反応室70の入口70aとを繋ぐ塩化物ガス供給配管61、及び前記塩化物ガス供給配管61の周囲に設けられ、塩化物ガス供給配管61を流れる前記塩化物ガスG3の蒸気圧を維持するために加熱又は保温する配管温度維持部67とを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る塩化物ガス発生装置40の前記反応管41の入口41aと前記固体原料Mとの間に入口側フィルタ45aが設置され、前記反応管41の出口41bと前記固体原料Mとの間に出口側フィルタ47bが設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、半導体装置の絶縁膜形成における塩化物ガス供給において、質量流量制御された反応ガスG2を石英ガラス製の反応管41に導入するので、固体原料Mと反応して発生した塩化物ガスG3の発生量は質量流量制御された反応ガスG2に対応する。換言すれば、反応管41に導入する反応ガスG2の質量流量を絶縁膜形成用の反応室70における塩化物ガスG3の必要量だけ発生させる量に制御しておけば、腐食性の高い塩化物ガスG3を質量流量制御する必要がなくなり、腐食性の高い塩化物ガスG3に対応しなければならない部分は、反応管41から反応室70までの部分だけの短い部分で済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るシステム全体の概略フロー図である。
【
図2】本発明で使用される質量流量制御器の概略断面図である。
【
図3】本発明で使用される塩化物ガス発生装置の第1実施形態の平面図である。
【
図5】本発明で使用される塩化物ガス発生装置の第2実施形態の平面図である。
【
図7】本発明で使用される塩化物ガス発生装置の第3実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に従って説明する。本発明に係る塩化物ガス供給システムAは、機器類としてガス供給源1、質量流量制御器10、塩化物ガス発生装置40を含み、配管系としてはガス供給源1と質量流量制御器10とを結ぶ第1配管路5、質量流量制御器10と塩化物ガス発生装置40とを結ぶ第2配管路30、塩化物ガス発生装置40と反応室70とを結ぶ第3配管路60とを含む。
【0021】
ガス供給源1は、水分を含まない高純度の塩素ガスや塩化水素ガスが充填された、例えば、クロム・モリブデン鋼製のガスボンベである。そして上記塩素ガスや塩化水素ガスが質量流量制御器10による制御対象ガスG1である。制御対象ガスG1はガス供給源1から後述する塩化物ガス発生装置40の入口41aまで高純度の塩素ガスや塩化水素ガスの状態で送られる。従って、ガス供給源1から後述する塩化物ガス発生装置40の入口41a迄の制御対象ガスG1の少なくとも通過経路(接ガス部分)は制御対象ガスG1に冒されない材質(例えば、ステンレス鋼)が選定される。
【0022】
質量流量制御器10は、制御対象ガスG1(上記塩素ガスや塩化水素ガス)の体積流量でなく、その質量流量を計測部15で計測し、制御バルブ部25の開度を制御して内部を通流する制御対象ガスG1が一定の質量流量となって流出するようにコントロールして供給する装置である。
【0023】
質量流量制御器10の一例を
図2に従って説明する。質量流量制御器10は、ボディ11、計測部15、バイパス素子20、制御バルブ部25とで構成されている。質量流量制御器10の少なくとも接ガス部材は制御対象ガスG1に冒されない素材(ステンレス鋼)が用いられる。
ボディ11にはその一端に開口する円筒穴12が穿設されており、円筒穴12の穴奥中央には制御バルブ部25の弁室26に連通する1次側バルブ流路24と、弁室26からボディ11の他端に連通する2次側バルブ流路27とが穿設されている。
【0024】
計測部15は、センサ管16とセンサハウジング17及び演算部18とで構成されており、ボディ11の上面に前記センサハウジング17が載設固定されている。
このセンサハウジング17に2つの管路(1次側管路17aと2次側管路17b)が穿設されており、後述するバイパス素子20を跨ぐように設けられている。センサ管16の開口端は1次側管路17aと2次側管路17bにそれぞれ連結され、その周囲には2本のヒータHu・Hdが左右(換言すれば、上流側と下流側)に離れて巻設されている。このヒータHu・Hdは演算部18に接続されている。
演算部18は後述するように、センサ管16を流れる制御対象ガスG1の質量流量を流量信号として検出し、この検出した流量信号を内部の電子回路にて電圧信号に変換し、これを制御バルブ部25の駆動部29に与える。質量流量制御の対象となる制御対象ガスG1である。
【0025】
バイパス素子20は例えば毛細管を多数束ねたもので、円筒穴12内に嵌め込まれて使用される。1次側管路17aは、円筒穴12におけるバイパス素子20の入口側空間12aに繋がっており、2次側管路17bは出口側空間12bに繋がっている。バイパス孔の数は流量に合わせて適宜選択される。
【0026】
制御バルブ部25は、バルブハウジング28、駆動部29、弁室26及び制御弁26bで構成されている。バルブハウジング28は弁室26を構成する凹穴に合わせてボディ11の上面に設置されている。制御弁26bはダイアフラム状の薄い膜状のもので、凹穴内にて凹穴の全面を覆うように配置されている。制御弁26bの下側の空間が弁室26である。
【0027】
弁室26の底部中央にはL形に形成された2次側バルブ流路27の垂直孔が開口しており、その開口周囲に制御弁26bが接離してその弁開度を調節する弁座26cが形成されている。この弁座26cの周囲は弁室26における1次側室26aとなっており、質量流量制御される制御対象ガスG1が通流する1次側バルブ流路24が開口している。
【0028】
駆動部29は、演算部18からの出力で制御弁26bに向かって伸縮し、制御弁26bの弁座26cに対する弁開度を制御し、演算部18からの出力に合わせて制御対象ガスG1を質量流量制御するようになっている。図の駆動部29は、ノルマル・オープンとなっているが、弁構造を変えることでノルマル・クローズにて弁開度を制御することもできる。
【0029】
塩化物ガス発生装置40は、石英ガラス製の反応管41とその周囲を取り囲むように設けられた円筒状の反応管加熱部50及び其の付属物並びに充填物である固体原料Mとで構成されている。
【0030】
反応管41の第1実施形態は、
図3及び
図4で示されたように、直管形石英ガラス製の管本体42、その付属物として一方の開口部に取り付けられた入口部材45、他方の開口部に取り付けられた出口部材47、入口部材45の内側に設けられた入口側フィルタ45a、出口部材47の内側に設けられた出口側フィルタ47bとで構成されている。入口部材45及び出口部材47は、例えば石英ガラス或いはポリテトラフルオロエチレンで形成される。
そして管本体42内に入口側フィルタ45aと出口側フィルタ47bとの間に顆粒状の固体原料Mが充填されている。
ゲート絶縁膜を主体とした絶縁膜形成用の固体原料Mとしては、高純度アルミニウム、高純度ジルコニウム又は高純度ハフニウムが使われる。
【0031】
反応管加熱部50は図示していないが、例えば、円筒状のアルミニウム製のケーシング51、このケーシング51内に長手方向に埋設された複数の本の棒状のヒータ53、図示していない熱電対と温度調節装置及びケーシング51の上下に設けられ、その中央に入口部材45、出口部材47がそれぞれ貫通している蓋部材58a・58b、及びこの蓋部材58a・58bを締結する締結部材57とで構成されている。
反応管加熱部50のケーシング51は加熱・冷却で熱膨張・収縮を繰り返す。一方、石英ガラス製の管本体42の熱膨張率はほぼゼロで且つ脆性破壊するので、石英ガラス製の管本体42と反応管加熱部50のケーシング51との間に隙間を設けておく必要がある。この隙間には空気が入り込んでいるので熱伝導が悪い。本発明の塩化物ガス発生装置40では、この隙間にグラファイト粉末が充填されている。この部分を伝熱用充填層49とする。
グラファイト粉体の熱伝導率は、アルミニウムと比較して約1/3程度であり、ステンレス鋼よりも、約3倍の熱伝導率を有する。
【0032】
配管系は、ガス供給源1と質量流量制御器10とを結ぶ第1配管路5、質量流量制御器10と塩化物ガス発生装置40とを結ぶ第2配管路30、塩化物ガス発生装置40と反応室70とを結ぶ第3配管路60とを含む。
【0033】
第1配管路5は、ガス供給源1から出る高純度塩素ガスや高純度塩化水素ガスなどの常温の制御対象ガスG1であるから、高純度塩素ガスや高純度塩化水素ガスに耐え得る素材、例えばステンレスパイプで構成される。この部分は制御対象ガスG1が質量流量制御器10に送られるだけであるから加熱する必要はなく、室温に保たれる。
【0034】
第2配管路30は、質量流量制御器10と加熱を必要とする塩化物ガス発生装置40とを結ぶ管路であるから、予熱のために加熱することが好ましい。勿論、加熱しなくてもよい。
加熱する場合、構造的には例えば配管の周囲にニクロム線を巻設し、その周囲を断熱材で覆うような構造である。更にこの場合、第2配管路30は好ましい温度に調節されている。また、第2配管路30で使用される配管は、質量流量制御された反応ガスG2が流れるだけなので、第1配管路5の配管と同じ素材(ステンレスパイプ)が使用される。
【0035】
これに対して第3配管路60は、塩化物ガス発生装置40から出た腐食性の高い塩化物ガスG3がガス状を保ってそのまま通過する必要があることから、塩化物ガス供給配管61は石英ガラス製が使われ、その周囲にはニクロム線が巻設され、更にその周囲を断熱材で覆うような構造となる。温度調節は反応管加熱部50の温度調節装置又は独自の熱電対及び温度調節装置による。これらニクロム線、断熱材熱電対及び温度調節装置が配管温度維持部67を構成する。
【0036】
次に、本発明の作用について説明する。概略的にはガス供給源1から出た制御対象ガスG1は、質量流量制御器10で質量流量制御され、塩化物ガス発生装置40に送り込まれる。
質量流量制御器10では、塩化物ガス発生装置40において、ゲート絶縁膜を主体とした絶縁膜形成用の反応室70における塩化物ガスG3の必要量が発生させる量になるように制御対象ガスG1が質量流量制御される。
塩化物ガス発生装置40では、高純度で顆粒状の固体原料Mと、質量流量制御された反応ガスG2とが反応して、質量流量制御された反応ガスG2に対応する塩化物ガスG3が発生し、反応室70に送り込まれる。反応は以下の通りである。
ここでは水分を含まない高純度の塩化水素ガスを加熱された固体原料M(顆粒)に接触させ、質量流量制御された反応ガスG2に対応する塩化物ガスG3を生成させる。
反応式
1)アルミニウムの場合:6HCl+2Al=2AlCl3+3H2
2)ジルコニウムの場合:4HCl+Zr=ZrCl4+2H2
3)ハフニウムの場合: 4HCl+Hf= HfCl4+2H2
なお、この場合、反応生成物として、水素(H2)が発生するが、通常は、反応室70は、真空ポンプで排気されるので問題はない。しかし、その影響が懸念される場合は、塩素ガスを使用する方法を採用すればよい。
【0037】
上記のように質量流量制御器10では、塩化物ガス発生装置40において、絶縁膜形成用の反応室70における塩化物ガスG3の必要量が発生させる量になるように制御対象ガスG1が質量流量制御されることになり、本発明では塩化物ガスG3の質量流量制御は不要となる。以下、更に詳しく説明する。
質量流量制御器10では、ガス供給源1から送られてきた高純度制御対象ガスG1は、ボディ11の円筒穴12に入り、その一部が分流してセンサ管16に流れ、大部分(センサ管16のn倍)がバイパス素子20に流れる。
【0038】
センサ管16を流れる制御対象ガスG1は上流側ヒータHuの熱を奪って下流側に流れ、下流側ヒータHdの加熱量を抑制する。上流側ヒータHuでは奪われた熱量を補給して平衡温度に達するよう制御回路が上流側ヒータHuを制御する。これにより両ヒータHu・Hdへの供給電力のバランスが崩れ、この差を検出演算する事によりセンサ管16に流れる流体の質量流量が検出される。
【0039】
一方、バイパス素子20を流れる制御対象ガスG1の流量はセンサ管16の流量に比例しているから、全体のガス流量はセンサ管16の流量に所定の係数を乗ずる事により知る事が出来る。そして、この出力は制御バルブ部25へフィードバックされ、駆動部29によって制御弁26bが駆動されて弁室26を流れる流体の質量流量が正確に制御される。
【0040】
バイパス素子20を出た制御対象ガスG1はセンサ管16を通った制御対象ガスG1と合流して1次側バルブ流路24に入る。この時、演算部18からの信号電圧に比例して駆動部29が作動し、制御弁26bと弁座26cとの間隙を厳密に調整して1次側室26aから2次側バルブ流路27に流れる制御対象ガスG1の質量流量を厳しく制御する。正確に制御された反応ガスG2は2次側バルブ流路27を通って外部に流出し、次工程の塩化物ガス発生装置40に送られる。
【0041】
質量流量制御器10を出た反応ガスG2は、上記のように第2配管路30を介して塩化物ガス発生装置40に送られるが、塩化物ガス発生装置40では塩化物ガスG3の生成のため高温に加熱される。それ故、第2配管路30においても予熱されることが好ましい。
【0042】
必要量に質量流量制御され且つ予熱された(或いは常温のままの)反応ガスG2は、入口部材45を通って塩化物ガス発生装置40の高温に加熱された石英ガラス製の反応管41に導入される。導入された反応ガスG2は入口側フィルタ45aを通って、固体原料Mの充填層に入る。反応管41の加熱温度は、上記反応による収率が100%若しくはそれに近くなる領域が選定される。これにより発生した塩化物ガスG3は質量流量制御した場合と等価となり、塩化物ガスG3の質量流量制御が不要となる。なお、固体原料Mは通気性の良好な顆粒を使用する。その粒子サイズは、通気性や反応率から適切なものが選ばれる。その加熱温度は、塩素ガス(塩化水素ガス)である反応ガスG2と各金属の反応特性から、反応率が100%若しくはそれに近い値が得られる温度が選ばれる。発生した塩化物ガスG3は、出口側フィルタ47bを通って第3配管路60に流れる。生じた塩化物ガスG3は質量流量制御された反応ガスG2に対応するため塩化物ガスG3の質量流量制御は不要となる。上記出口側フィルタ47bは塩化物ガスG3の流出に伴って飛沫が反応室70側に流れないように捕集する役割を果たす。なお、塩化物ガスG3を反応室70に短時間に送気したい場合、キャリアーガス(図示せず)を要所から導入しても良い。
【0043】
塩化物ガス発生装置40では、上記のように高温に加熱されるが、反応管41と反応管加熱部50との間に熱伝導性によいグラファイト粉末の伝熱用充填層49が設けられているため、反応管加熱部50の熱は伝熱用充填層49を通って反応管41に伝熱され内部の固体原料Mを所定温度までスムーズに昇温させる。
この時、昇温時では熱膨張・収縮しない反応管41に対して熱膨張する反応管加熱部50の内径は大きくなって隙間が拡大するが、グラファイト粉末は粒子同士の滑り性が高いため、グラファイト粉末が下方に向けて移動し、拡大した隙間を埋める。
逆に、非通電状態となって反応管加熱部50の温度が下がるとその内径が小さくなって隙間を縮小する。隙間に充填され、伝熱用充填層49を構成しているグラファイト粉末は隙間の縮小と共に互いに滑って持ち上げられ、隙間の縮小に自動的に対応し、熱膨張・収縮しない反応管41に過大な圧縮圧力をかけない。その結果、昇温時には良好な熱伝導により反応管加熱部50からの熱が反応管41に伝わり、しかも反応管加熱部50の熱膨張・収縮によって石英ガラス製の反応管41が破損するようなことがない。
【0044】
塩化物ガス発生装置40を出た、質量流量制御と等価な状態で発生した塩化物ガスG3は、第3配管路60を通って反応室70に供給される。第3配管路60では、流れている塩化物ガスG3が冷えて塩化物ガス供給配管61の内面に付着しないようにその蒸気圧が保たれるように加熱されている。
【0045】
以上本システムAを纏めると、
1)ガスボンベのようなガス供給源1から反応管41の入口41aまでは常温(一部予熱)でよいので、塩素ガスや塩化水素ガスのような制御対象ガスG1による、装置を構成する金属(質量流量制御器10、第1・第2配管路5・30の配管)の腐食は実質的にはない。
2)反応管41は、全体或いはその管本体42が石英ガラス製であり、高温度下で、流入した質量流量制御された反応ガスG2との反応生成物である塩素化合物(AlCl3,Zrcl4,HfCl4)やこれらから昇華により発生した塩化物ガスG3との反応は無視できる。従って、本システムAでは、塩素化合物(AlCl3,Zrcl4,HfCl4)や塩化物ガスG3の接触部分が限定されているので、これらによる腐食や、腐食に伴う絶縁膜でのメタルコンタミネーションの恐れはない。
3)反応管41内で、質量流量制御された反応ガスG2と原料金属との反応率が100%ないし100%近くが得られるよう、固体原料Mの顆粒のサイズや充填量、及び投入された反応ガスG2の質量流量、並びに反応管41の断面積、長さ、そして、加熱温度などを最適値に設定されている。
【0046】
塩化物ガス発生装置40の第2実施態様(
図5、
図6)
塩化物ガス発生装置40の反応管41は長い程好ましい。ここでは、反応管41はU字管が使用されている。反応管加熱部50のケーシング51には上面開口の収納穴が設けられ、この収納穴にケーシング51の内面部分を構成する金属製の鞘管51aが嵌め込まれている。そしてこの鞘管51a内に反応管41が収納されている。鞘管51aにはU字状の反応管41を取り囲むようにグラファイト粉末が充填され、伝熱用充填層49を形成している。蓋部材58には反応管41の挿通孔が設けられ、グラファイト粉末が漏れないように収納穴を閉塞するように取り付けられている。
【0047】
塩化物ガス発生装置40の第3実施態様(
図7)
ここでは反応管41にはスパイラス管が使用され、反応管41を取り囲むようにグラファイト粉末が充填され、伝熱用充填層49を形成している。
【符号の説明】
【0048】
A:塩化物ガス供給システム、G1:制御対象ガス、G2:質量流量制御された反応ガス、G3:塩化物ガス、G150:塩化物ガス、G300:質量流量制御された塩化物ガス、Hu:上流側ヒータ、Hd:下流ヒータ、M:固体原料、Mc:固体塩化物原料、1:ガス供給源、5:第1配管路、10:質量流量制御器、11:ボディ、12:円筒穴、12a:入口側空間、12b:出口側空間、15:計測部、16:センサ管、17:センサハウジング、17a:1次側管路、17b:2次側管路、18:演算部、20:バイパス素子、24:1次側バルブ流路、25:制御バルブ部、26:弁室、26a:1次側室、26b:制御弁、26c:弁座、27:2次側バルブ流路、28:バルブハウジング、29:駆動部、30:第2配管路、40:塩化物ガス発生装置、41:反応管、41a:入口、41b:出口、42:管本体、45:入口部材、45a:入口側フィルタ、47:出口部材、47b:出口側フィルタ、49:伝熱用充填層、50:反応管加熱部、51:ケーシング、51a:鞘管、53:ヒータ、57:締結部材、58・58a・58b:蓋部材、60:第3配管路、61:塩化物ガス供給配管、67:配管温度維持部、70:反応室、70a:入口、100:原料容器、110:恒温槽、200:質量流量制御器(マスフローコントローラ)、210:質量流量計、220:制御バルブ、反応室:700