(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150356
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】固形化燃料及び被焼却物の焼却方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/48 20060101AFI20220929BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20220929BHJP
F23G 5/033 20060101ALI20220929BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20220929BHJP
F23G 7/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C10L5/48
F23G5/02 Z
F23G5/033 C
F23G5/30 D
F23G7/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052927
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】北出 伊吹
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 誠二
【テーマコード(参考)】
3K065
3K161
4H015
【Fターム(参考)】
3K065AA11
3K065AB01
3K065AC13
3K065AC20
3K065BA07
3K065CA03
3K161BA01
3K161CA01
3K161DA52
3K161EA44
3K161HA60
3K161HB03
3K161HB12
3K161JA02
3K161JA13
3K161JA40
4H015AA01
4H015AA12
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA13
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】助燃材としての廃プラスチックが炉内の流動層に速やかに到達するとともに、廃プラスチックの熱分解を緩やかにして不完全燃焼を抑制することが可能で、かつ、容易に得られる固形化燃料、及びこの固形化燃料を用いた被焼却物の焼却方法を提供することを課題とする。
【解決手段】被焼却物を焼却する流動層式焼却炉に用いる固形化燃料は、廃プラスチックを含む可燃物が固化されており、ハードグローブ粉砕性指数が18以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼却物を焼却する流動層式焼却炉に用いる固形化燃料であって、
廃プラスチックを含む可燃物が固化されており、
ハードグローブ粉砕性指数が18以下である固形化燃料。
【請求項2】
請求項1に記載の固形化燃料を用いて流動層式焼却炉で被焼却物を焼却処理する被焼却物の焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化燃料及び被焼却物の焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚泥等の被焼却物を効率よく、確実かつ短時間に完全燃焼させる焼却炉として流動層式焼却炉が多用されている。この流動層式焼却炉で焼却処理されている脱水汚泥は、含水率が高いため自燃しない場合が多く、炉内における流動層の砂層温度を汚泥の燃焼に適した温度に維持するために、灯油や都市ガス、A重油といった化石燃料を助燃材として使用し、砂層内にこれらの助燃材を直接吹き込み燃焼させている。
【0003】
一方で、近年、廃プラスチックの処理が課題となっており、それを有効利用できる場が求められているのは、周知の事実である。そこで、特許文献1では、流動層式汚泥焼却炉で、廃プラスチックと汚泥とを混在した状態で焼却させることを提案している。この特許文献1によれば、汚泥の焼却に際して、高発熱量の廃プラスチックを助燃材として有効利用しかつ処分することができるとともに、これまで流動層式汚泥焼却炉の助燃材として使用されていた化石燃料の削減に寄与するので、被焼却物としての汚泥の焼却の際のコストの削減になるという長所もある。
【0004】
一方、廃プラスチックを含む助燃材としては、特許文献2に、廃プラスチック及び古紙等の繊維質材料を固化した固形化燃料が開示されている。特許文献2では、流動層式燃焼炉で、固形化燃料が流動層上部で浮遊したり流動層の下方へ沈降したりすることのないように、固形化燃料の比重を略1g/cm3としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-182834号
【特許文献2】特開2001-012713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された廃プラスチックのような固形の助燃材の場合、化石燃料のように流動層の砂層内へ直接吹き込むことが物理的に困難であるため、流動層式汚泥焼却炉の上部(少なくとも、流動層形成域よりも上方)から流動層内へ供給する必要がある。
【0007】
しかしながら、廃プラスチックは、それ自体の比重が小さいので、流動層内へ向け降下する間に、流動層表面(層上面)付近で速やかに燃焼してしまうため、流動層に対して上方の空間であるフリーボード部の温度は上がるものの流動層全体の砂層への着熱が良好とはいえなかった。それ故に、流動層温度の低下を招き、汚泥の燃焼に支障が出るという課題があった。さらに、廃プラスチックを高温の炉に投入すると、熱分解が短時間で激しく起きて、燃焼に対する酸素の供給が追いつかなくなるため、不完全燃焼を起こすという課題もあった。
【0008】
特許文献2では、固形化燃料を略1g/cm3の比重に設定しているので、固形化燃料が流動層の上面で浮遊したり、逆に流動層の下方へ沈降してしまうということはない。
【0009】
しかしながら、特許文献2では、固形化燃料を略1g/cm3の一定した比重とするのに、固形化工程前に、予め一定サイズのプラスチックブロックと、プラスチックブロックの重量に対して所定比の重量となるような繊維質ブロックとを用意し、プラスチックブロックと繊維質ブロックとを同数だけ取り出し、これらを解砕した後に混合し、再び圧縮して一定比重の固形化燃料(いわゆるRPF)を成形している。したがって、固形化燃料を得るのに、前工程が多く、きわめて手間がかかる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされてもので、助燃材としての廃プラスチックが炉内の流動層に速やかに到達するとともに、廃プラスチックの熱分解を緩やかにして不完全燃焼を抑制することが可能で、かつ、容易に得られる固形化燃料を提供し、また、この固形化燃料を用いた被焼却物の焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、前述の課題は、次の固形化燃料、被焼却物の焼却方法により解決される。
【0012】
<固形化燃料>
被焼却物を焼却する流動層式焼却炉に用いる固形化燃料であって、廃プラスチックを含む可燃物が固化されており、ハードグローブ粉砕性指数が18以下である固形化燃料。
【0013】
<被焼却物の焼却方法>
前述した固形化燃料を用いて流動層式焼却炉で被焼却物を焼却処理する被焼却物の焼却方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、助燃材としての廃プラスチックが炉内の流動層に速やかに到達するとともに、廃プラスチックの熱分解を緩やかにして不完全燃焼を抑制することが可能で、かつ、容易に得られる固形化燃料を提供し、また、この固形化燃料を用いた被焼却物の焼却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る汚泥焼却炉及び排ガス処理設備を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における汚泥焼却炉(以下、「焼却炉」)1及び排ガス処理設備の構成を示す。本実施形態では、焼却炉1は砂層により流動層を形成する流動層式である。
【0018】
図1において、焼却炉1の下流側には、焼却炉1から排気される排ガスについて熱回収する熱交換器2、排ガスを除塵する除塵装置3、除塵後の排ガスを洗煙する洗煙塔4が順次配設されている。
図1に示されているように、熱交換器2は焼却炉1の後述の排気部1Aに煙道Aで接続されており、除塵装置3は熱交換器2に煙道Bで接続されており、洗煙塔4は除塵装置3に煙道Cで接続されている。また、洗煙塔4からは煙道Dが延びており、洗煙塔4は下流側に位置する煙突(図示せず)に接続されている。
【0019】
焼却炉1の炉本体1-0の側壁には、被焼却物としての汚泥を外部から受けて炉本体1-0内へ供給する汚泥供給部1Bと、助燃材を外部から受けて炉本体1-0内へ供給する助燃材供給部1Cが設けられている。助燃材供給部1Cは、化石燃料助燃材を供給する化石燃料供給部1C-1と、廃プラスチック助燃材を供給する廃プラスチック供給部1C-2とを有している。
図1に見られるように、汚泥供給部1Bは、炉本体1-0の上部に設けられている。化石燃料供給部1C-1は、炉本体1-0の上下方向での中間部において、炉本体1-0内の砂層(流動層)の表面(上面)より若干下方に位置している。廃プラスチック供給部1C-2は、炉本体1-0の上下方向での中間部において、炉本体1-0
内の砂層の表面より若干上方に位置している。助燃材供給部1Cには、助燃材の供給量を調整する弁等の調整器1Jが設けられている。調整器1Jは、化石燃料供給部1C-1に接続された化石燃料供給調整器1J-1と、廃プラスチック供給部1C-2に接続された廃プラスチック供給量調整器1J-2とを有している。
【0020】
焼却炉1の炉本体1-0内には、炉本体1-0の底壁1Dの直上位置に板状の透気部材1Eが設けられていて、透気部材1E上に収められた砂によって砂層が形成されている。砂層を形成する砂は、例えば、珪砂である。この透気部材1Eの下方に位置する下方空間1Fへ外部から燃焼用の空気が空気送入部1Gを経て送入されており、送入された空気は透気部材1Eの透気孔を透気して砂層へ流入している。透気部材1E上の砂層は、透気部材1Eを透気した空気により流動して流動層1Hを形成する。
【0021】
本実施形態において、廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材は、廃プラスチックを含む可燃物が固化物とされた固形化燃料(以下「RPF」)であり、燃料として市場で広く流通している。ここで、RPFは、廃プラスチックのみを含んでいてもよいし、RPFの組織内の固化・結着性を高めるために廃プラスチックとともに繊維質材料が含まれていてもよい。RPFに含まれる廃プラスチックの原材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等の多種のプラスチックの混合物である。RPFに繊維質材料が含まれる場合、この繊維質材料は、例えば、紙、布、木材、穀類の殻等である。
【0022】
RPFは、一般的に、表面が荒く比表面積が大きいもの(前者)と、表面が平滑性をもっていて比表面積が小さいもの(後者)とが存在している。したがって、このRPFを、前者と後者とを区別することなく流動層式汚泥焼却炉の流動層の表面へ投入すると、炉への投入後、後者は緩やかに燃焼しながら流動層の下部へ達するが、前者は流動層の表面付近ですぐに燃焼してしまい、急峻に一酸化炭素を発生する。したがって、市場に広く流通しているRPFを、前者と後者とを区別せずに廃プラスチック助燃材として用いると、安定した燃焼状態を確保しにくい。
【0023】
かかる状況において、本発明では、広く容易に入手できるRPFのうち、上述の後者、すなわち、比表面積の小さいもののみを選定して使用することで、RPFを流動層の下部にまで到達させ、流動層全体が均一的に高温で安定した燃焼状態を確保することとした。
【0024】
RPFの比表面積を測定することは容易なことではない。しかし、比表面積の小さいものは、硬度が高いということが実験結果として判明した。これは、RPFの圧縮度合が高いと、空隙が少なくなる結果、全体として硬度が高まるからであると考えられる。また、硬度が高いRPFの表面は空隙が少なく平滑性が高いと言える。そこで、比表面積と硬度との間に相関関係があることに着目して、硬度を測定して高硬度のものを選定すれば、表面の平滑性が高く比表面積が小さいものを選定できるということになる。
【0025】
固形燃料の硬度測定としては、例えば、石炭及びコークスの粉砕性を判定するためのハードグローブ粉砕性指数(HGI)が知られており、JIS M 8801にその測定基準が定められている。その測定基準では、HGIが低いものが粉砕しにくく、すなわち硬度が高い。例えば、石炭は、その銘柄によってHGIが表示されている。
【0026】
したがって、本発明では、流動層式焼却炉に好適な所定のHGI以下のRPFを選定し、そのRPFを廃プラスチック助燃材として用いる。すなわち、RPFについてHGIが予め表示されていれば、そのHGIに基づいて選定し、表示されていなければ、サンプルについてHGIを測定すればよい。したがって、本発明では、流動層式焼却炉に好適なRPFを得るのに、単に、必要に応じてRPFのサンプルについてHGIの測定を行えばよいのである。つまり、RPFに追加加工を施す必要がなく、好適なRPFを容易に得られる。
【0027】
本実施形態では、HGIが18以下のRPFを助燃材として用いる。
【0028】
次に、このようなRPFを廃プラスチック助燃材として用いた焼却炉1による汚泥焼却要領を説明する。
【0029】
焼却炉1の炉本体1-0内には、透気部材1E上に流動層1Hを形成するための砂が収められている。空気送入部1Gを経て外部から下方空間1Fへ送入される燃焼用の空気が透気部材1Eを透気して上昇することにより透気部材1E上で砂が流動して流動層1Hが形成される。
【0030】
化石燃料供給部1C-1からは化石燃料助燃材が、また、廃プラスチック供給部1C-2からは廃プラスチック助燃材である固形化燃料としてのRPFが、それぞれ炉本体1-0内へ供給されて燃焼しているので、流動層1Hは所定の高温状態となっている。本実施形態では、化石燃料助燃材は、廃プラスチック助燃材、すなわち、RPFの補助として使用され、可能な限りRPFが主として用いられる。
【0031】
この流動層1Hへ向け、汚泥供給部1Bから汚泥が落下供給される。汚泥は高温の流動層1H内を砂とともに流動している間に燃焼する。汚泥の燃焼により生じる排ガスは、排気部1Aから煙道Aを通り、熱交換器2で熱回収された後、煙道Bを通り、除塵装置3で除塵され、さらに、煙道Cを通り、洗煙塔4で洗煙されてから、煙道Dを通り、無害化さ
れた状態で煙突から大気へ放出される。
【0032】
一般に、廃プラスチック自体は比重が小さく、助燃材として供給されても、流動層の上層部で速やかに燃焼してしまい、流動層内部(下部)へ到達しないため、流動層全体が高温化しない傾向にある。しかし、本実施形態では、固形化燃料としてのRPFのHGIは、上述したように、所定の設定値(本実施形態では18)以下となっている。したがって、RPFは、比表面積が小さいので、燃焼が緩やかとなり、確実に流動層1Hの内部へ降下する。
【0033】
さらに、本実施形態で使用されるRPFは、比表面積が大きすぎるRPFのように流動層1Hの上層で短時間に燃焼してしまうことがなく、流動層1Hの内部へ速やかに降下して燃焼するので、流動層全体を十分かつ効率的に高温化させることができる。かくして、RPFは、適切な燃焼時間(燃え尽きるまでの時間)で燃焼する。したがって、RPFは、燃焼時間が過剰に長くなることで流動層1Hの温度を調整しにくくなることもなく、また、燃焼時間が短くなることで不完全燃焼を生じることもない。
【符号の説明】
【0034】
1 (流動層式)焼却炉