(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150372
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ホイールナット締付具
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20220929BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20220929BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B25B23/14 640D
B25B21/00 H
B23P19/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052950
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】597095120
【氏名又は名称】株式会社岡常歯車製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】高部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】野田 一行
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイヤホイールに対して、複数個のホイールナットを同時に締付けるホイールナット締付具において、大小相違するホイールピッチに対応可能なホイールナット締付具を提供する。
【解決手段】タイヤホイールに付設された複数個のホイールナットに対応させる複数個のソケット1を、平盤状ケーシング3の前面から突出状として配設し、上記平盤状ケーシングの外周縁3Cに沿って移動可能に手動操作レバー2を突設し、さらに回転駆動工具5に連動連結自在な入力軸6を、上記平盤状ケーシングの後面の中心から突出状に有し、上記手動操作レバーを上記外周縁に沿って移動させると、ソケット配設ピッチ円の直径を、増減させて、複数個の上記ホイールナットのホイールピッチ円に一致させる全ソケットラジアル位置同時調整手段を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤホイールに付設された複数個のホイールナットに対応させる複数個のソケット(1)を、平盤状ケーシング(3)の前面(3F)から突出状として、配設し、
上記平盤状ケーシング(3)の外周縁(3C)に沿って移動可能に手動操作レバー(2)を突設し、
さらに、回転駆動工具(5)に連動連結自在な入力軸(6)を、上記平盤状ケーシング(3)の後面(3B)の中心から突出状に有し、
上記手動操作レバー(2)を上記外周縁(3C)に沿って移動させると、ソケット配設ピッチ円(P1 )の直径(D1 )を、増減させて、複数個の上記ホイールナットのホイールピッチ円に一致させる全ソケットラジアル位置同時調整手段(Y)を、
具備することを特徴とするホイールナット締付具。
【請求項2】
上記平盤状ケーシング(3)は、
前面壁部(12)と第1外周壁部(13)とを有する円形浅皿状の第1外板(11)と、
後面壁部(16)と第2外周壁部(17)とを有する円形浅皿状の第2外板(15)と、
上記第1外板(11)と第2外板(15)によって形成される円形盤状空間(K)に収納されると共に、上記手動操作レバー(2)が固設された中板(20)とを、備え、
上記第1外周壁部(13)と第2外周壁部(17)とを、相互に嵌合した状態で、上記手動操作レバー(2)が、ラジアル方向に挿通される周方向窓部(8)が、形成されている
請求項1記載のホイールナット締付具。
【請求項3】
上記全ソケットラジアル位置同時調整手段(Y)は、
上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、上記第1外板(11)と第2外板(15)には、相互に重なり合う同一形状の主傾斜ガイド溝(21)が貫設され、
さらに、上記中板(20)には、上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、上記第1外板(11)と第2外板(15)の上記主傾斜ガイド溝(21)に対してX字状に交叉する主弧状ガイド溝(22)が、貫設され、
上記第1外板(11)と第2外板(15)の上記主傾斜ガイド溝(21)と、上記中板(20)の上記主弧状ガイド溝(22)との、主交叉点(Om )の各々に、上記ソケット(1)の軸部(10)の軸心点(O10)の各々を、一致させつつ全ての該ソケット(1)のラジアル方向位置を同時に調整するように構成した請求項2記載のホイールナット締付具。
【請求項4】
上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数の上記ソケット(1)の軸部(10)の各々に、ソケット用鎖車(23)を固設し、かつ、全ての上記ソケット用鎖車(23)を連動回転可能に懸架したエンドレス状第1チェーン(31)を備え、
上記入力軸(6)に固設した駆動用の中心鎖車(25)と、上記エンドレス状第1チェーン(31)と連動回転する駆動力伝達用鎖車(26)とを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2チェーン(32)を、備え、
周方向に所定等ピッチをもって配設された複数の上記ソケット用鎖車(23)と、隣りあうソケット用鎖車(23)の間において、上記第1チェーン(31)に張力を付与するテンション用鎖車(24)を、配設した請求項3記載のホイールナット締付具。
【請求項5】
複数の上記テンション用鎖車(24)のラジアル方向位置を、上記手動操作レバー(2)の移動によって同時に調整するテンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段(Z)を、具備し、
上記テンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段(Z)は、
上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、上記第1外板(11)と第2外板(15)に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝(41)が貫設され、
さらに、上記中板(20)には、上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、上記第1外板(11)と第2外板(15)の上記副傾斜ガイド溝(41)に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝(42)が、貫設され、
上記第1外板(11)と第2外板(15)の上記副傾斜ガイド溝(41)と、上記中板(20)の上記副弧状ガイド溝(42)との、副交叉点(Os )の各々に、上記テンション用鎖車(24)の軸心点(O24)の各々を、一致させつつ全ての該テンション用鎖車(24)のラジアル方向位置を同時に調整するよう構成した請求項4記載のホイールナット締付具。
【請求項6】
上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数の上記ソケット(1)の軸部(10)の各々に、ソケット用プーリ(30)を固設し、かつ、全ての上記ソケット用プーリ(30)を連動回転可能に懸架したエンドレス状第1ベルト(34)を備え、
上記入力軸(6)に固設した駆動用の中心プーリ(35)と、上記エンドレス状第1ベルト(34)と連動回転する駆動力伝達用プーリ(36)とを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2ベルト(56)を、備え、
周方向に所定等ピッチをもって配設された複数の上記ソケット用プーリ(30)と、隣りあうソケット用プーリ(30)の間において、上記第1ベルト(34)に張力を付与するテンション用プーリ(57)を、配設した請求項3記載のホイールナット締付具。
【請求項7】
複数の上記テンション用プーリ(57)のラジアル方向位置を、上記手動操作レバー(2)の移動によって同時に調整するテンション用プーリラジアル位置同時調整手段(Z´)を、具備し、
上記テンション用プーリラジアル位置同時調整手段(Z´)は、
上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、上記第1外板(11)と第2外板(15)に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝(41)が貫設され、
さらに、上記中板(20)には、上記入力軸(6)の軸心(L6 )の一方向(X6 )から見て、上記第1外板(11)と第2外板(15)の上記副傾斜ガイド溝(41)に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝(42)が、貫設され、
上記第1外板(11)と第2外板(15)の上記副傾斜ガイド溝(41)と、上記中板(20)の上記副弧状ガイド溝(42)との、副交叉点(Os )の各々に、上記テンション用プーリ(57)の軸心点の各々を、一致させつつ全ての該テンション用プーリ(57)のラジアル方向位置を同時に調整するよう構成した請求項6記載のホイールナット締付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤホイールに対して、複数個のホイールナットを締付けるホイールナット締付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールナット締付具として、複数個のホイールナットを同時に締付ける工具として、
図16に示すように、複数個のソケット51をケーシング52の前面52Aから突出状として配設し、そのケーシング52の内部に複数のギア54を設け、かつ、ケーシング52の後面52Bに、電動回転工具53を一体状に取付けた構造のものが知られている(特許文献1)。
従来のこのようなホイールナット締付具は、同一のホイールピッチのタイヤに対しては、好適なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホイールナット締付具(
図16及び特許文献1参照)では、ホイールピッチが相違する種々の自動車を修理する必要のある自動車修理工場等に於ては、多種類のホイールナット締付具を一揃え準備せねばならないという問題があった。
【0005】
また、電動回転工具53の寿命が長いのに対し、ギア54及びソケット51等から成る付属部位の耐久性が短いために、全体一体構造の
図16に示すホイールナット締付具を、比較的短い使用期間で廃棄せねばならないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、タイヤホイールに付設された複数個のホイールナットに対応させる複数個のソケットを、平盤状ケーシングの前面から突出状として、配設し;上記平盤状ケーシングの外周縁に沿って移動可能に手動操作レバーを突設し;さらに、回転駆動工具に連動連結自在な入力軸を、上記平盤状ケーシングの後面の中心から突出状に有し;上記手動操作レバーを上記外周縁に沿って移動させると、ソケット配設ピッチ円の直径を、増減させて、複数個の上記ホイールナットのホイールピッチ円に一致させる全ソケットラジアル位置同時調整手段を;具備する構成である。
【0007】
また、上記平盤状ケーシングは;前面壁部と第1外周壁部とを有する円形浅皿状の第1外板と;後面壁部と第2外周壁部とを有する円形浅皿状の第2外板と;上記第1外板と第2外板によって形成される円形盤状空間に収納されると共に、上記手動操作レバーが固設された中板とを、備え;上記第1外周壁部と第2外周壁部とを、相互に嵌合した状態で、上記手動操作レバーが、ラジアル方向に挿通される周方向窓部が、形成されている。
【0008】
また、上記全ソケットラジアル位置同時調整手段は;上記入力軸の軸心の一方向から見て、上記第1外板と第2外板には、相互に重なり合う同一形状の主傾斜ガイド溝が貫設され;さらに、上記中板には、上記入力軸の軸心の一方向から見て、上記第1外板と第2外板の上記主傾斜ガイド溝に対してX字状に交叉する主弧状ガイド溝が、貫設され;上記第1外板と第2外板の上記主傾斜ガイド溝と、上記中板の上記主弧状ガイド溝との、主交叉点の各々に、上記ソケットの軸部の軸心点の各々を、一致させつつ全ての該ソケットのラジアル方向位置を同時に調整するように構成した。
【0009】
また、上記入力軸の軸心の一方向から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数の上記ソケットの軸部の各々に、ソケット用鎖車を固設し、かつ、全ての上記ソケット用鎖車を連動回転可能に懸架したエンドレス状第1チェーンを備え;上記入力軸に固設した駆動用の中心鎖車と、上記エンドレス状第1チェーンと連動回転する駆動力伝達用鎖車とを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2チェーンを、備え;周方向に所定等ピッチをもって配設された複数の上記ソケット用鎖車と、隣りあうソケット用鎖車の間において、上記第1チェーンに張力を付与するテンション用鎖車を、配設した。
【0010】
また、複数の上記テンション用鎖車のラジアル方向位置を、上記手動操作レバーの移動によって同時に調整するテンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段を、具備し;上記テンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段は;上記入力軸の軸心の一方向から見て、上記第1外板と第2外板に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝が貫設され;さらに、上記中板には、上記入力軸の軸心の一方向から見て、上記第1外板と第2外板の上記副傾斜ガイド溝に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝が、貫設され;上記第1外板と第2外板の上記副傾斜ガイド溝と、上記中板の上記副弧状ガイド溝との、副交叉点の各々に、上記テンション用鎖車の軸心点の各々を、一致させつつ全ての該テンション用鎖車のラジアル方向位置を同時に調整するよう構成した。
【0011】
また、上記入力軸の軸心の一方向から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数の上記ソケットの軸部の各々に、ソケット用プーリを固設し、かつ、全ての上記ソケット用プーリを連動回転可能に懸架したエンドレス状第1ベルトを備え;上記入力軸に固設した駆動用の中心プーリと、上記エンドレス状第1ベルトと連動回転する駆動力伝達用プーリとを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2ベルトを、備え;周方向に所定等ピッチをもって配設された複数の上記ソケット用プーリと、隣りあうソケット用プーリの間において、上記第1ベルトに張力を付与するテンション用プーリを、配設した。
【0012】
また、複数の上記テンション用プーリのラジアル方向位置を、上記手動操作レバーの移動によって同時に調整するテンション用プーリラジアル位置同時調整手段を、具備し;上記テンション用プーリラジアル位置同時調整手段は;上記入力軸の軸心の一方向から見て、上記第1外板と第2外板に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝が貫設され;さらに、上記中板には、上記入力軸の軸心の一方向から見て、上記第1外板と第2外板の上記副傾斜ガイド溝に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝が、貫設され;上記第1外板と第2外板の上記副傾斜ガイド溝と、上記中板の上記副弧状ガイド溝との、副交叉点の各々に、上記テンション用プーリの軸心点の各々を、一致させつつ全ての該テンション用プーリのラジアル方向位置を同時に調整するよう構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るホイールナット締付具によれば、大小相違するホイールピッチに対応可能となり、自動車修理工場等の作業現場に、1個のホイールナット締付具を備えておくだけで、種々の車両(のタイヤ)に対応自在である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】中板の一例を示す図であって、(A)は正面図、(B)は(A)のa-a断面図である。
【
図10】ホイールピッチが150mmの場合に対応した状態を示す要部説明図である。
【
図11】ホイールピッチが137mmの場合に対応した状態を示す要部説明図である。
【
図12】ホイールピッチが124mmの場合に対応した状態を示す要部説明図である。
【
図13】ホイールピッチが111mmの場合に対応した状態を示す要部説明図である。
【
図14】ホイールピッチが98mmの場合に対応した状態を示す要部説明図である。
【
図15】本発明の他の実施形態を示し、第1外板を取り去った状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1に示す本発明の実施の一形態に於て、3は円形の平盤状ケーシングであって、その前面3Fから突出状として、複数個のソケット1が配設されている。
このソケット1の個数は、自動車のタイヤホイールナットの個数と同じとする。つまり、各タイヤホイールナットに各ソケット1が対応する。図例では5個の場合を例示している。
【0016】
また、
図1~
図3に示すように、(円形)平盤状ケーシング3の外周縁3Cに沿って移動可能として、手動操作レバー2が、突設されている。そして、電動(又は空圧若しくは油圧作動)の回転駆動工具5の出力回転筒部5Aに連動連結自在な入力軸6が、平盤状ケーシング3の後面3Bから突設されている。
具体的には、円形状の後面3Bの中心から、六角棒状の入力軸6が、後方へ突出状であり、これに回転駆動工具5の出力回転筒部5Aが(接続分離自在として)連結接続できる。
【0017】
そして、上記手動操作レバー2をケーシング3の外周縁3Cに沿って移動させると、ソケット配設ピッチ円P1 の直径D1 を、増減させて、複数個のホイールナットのホイールピッチ円に一致させる全ソケットラジアル位置同時調整手段Yを、具備している。
【0018】
ここで、平盤状ケーシング3について、具体的にその構造・形状等を説明する。
図1~
図12に於て、この平盤状ケーシング3は、前面壁部12と第1外周壁部13とを有する円形浅皿状の第1外板11を、有する。さらに、後面壁部16と第2外周壁部17とを有する円形浅皿状の第2外板15を有する。
【0019】
そして、上記第1外板11と第2外板15によって形成される円形盤状空間Kに収納される円形状中板20とを、備える。
上記第1外周壁部13と第2外周壁部17とを、相互に嵌合した状態で、(
図2に示すように、)手動操作レバー2が、ラジアル方向に挿通される周方向窓部8が、形成されている。
【0020】
図8に示すように、第1外板11の第1外周壁部13には切欠状凹部13Aが形成され、さらに、
図6に示すように、第2外板15には、底辺に沿って(四角状)凹凸歯部15Aを有する切欠状凹部15Cが形成される。
従って、
図2に示したように、第1外板11と第2外板15とを、相互に嵌合して合体した状態では、周方向窓部8の一辺には、凹凸歯部15Aが形成され、この凹凸歯部15Aに手動操作レバー2の基部の小突出子2Aが、係合可能である。
【0021】
次に、全ソケットラジアル位置同時調整手段Yについて説明する。
図5と
図7、及び、
図2に示すように、入力軸6の軸心L
6 の一方向(後方)X
6 から見て、第1外板11と第2外板15には、相互に重なり合う同一形状の主傾斜ガイド溝21が貫設されている。
【0022】
図5と
図7を対比すれば明らかなように、主傾斜ガイド溝21,21は同一寸法(同一形状)である。そして、円の中心点O
1 ,O
2 からの半径線に対して大きな傾斜角度をもって短寸に形成されている。
【0023】
また、中板20には、上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、第1外板11と第2外板15の上記主傾斜ガイド溝21に対してX字状に交叉する主弧状ガイド溝22が貫設されている。
ここで、「X字状」とは、図示の実施例では直線と弧状線とが交叉した場合を示しているが、所望により、直線と直線との交叉としたり、弧状線と弧状線との交叉とすることも自由である(図示省略)。
【0024】
そして、第1外板11と第2外板15の主傾斜ガイド溝21と、中板20の主弧状ガイド溝22との、交叉点を主交叉点Om と呼べば、この主交叉点Om に、ソケット1の軸部10の軸心点O
10を一致させる。
即ち、全ソケットラジアル位置同時調整手段Yは、主交叉点Om の各々と、ソケット1の軸部10の軸心点O
10の各々を、一致させつつ、
図10~
図14に示す如く、全てのソケット1のラジアル方向位置を同時に調整するように構成している。
【0025】
そして、
図9に示したように、入力軸6の軸心L
6 の一方向X
6 から見て、周方向に所定ピッチをもって配設された複数のソケット1の軸部10の各々に、ソケット用鎖車23を固設すると共に、エンドレス状第1チェーン31を、全てのソケット用鎖車23が連動回転可能となるように、鎖車23に懸架する。
しかも、周方向に所定ピッチをもって配設された各ソケット用鎖車23と、それに隣りあうソケット用鎖車23との間には、第1チェーン31に張力を付与するために、テンション用鎖車24を、配設する。
【0026】
図9では、ソケット用鎖車23とテンション用鎖車24は、各々、5個ずつ交互に配設した場合を例示する。
そして、
図9に於て、入力軸6には駆動用の中心鎖車25が固設される。エンドレス状第1チェーン31と連動回転するように設けられたテンション用鎖車24の内の1個には、同軸で一体回転する駆動力伝達用鎖車26を固設する。
【0027】
そして、駆動力伝達用のエンドレス状第2チェーン32を、上記駆動力伝達用鎖車26が中心鎖車25と連動するように懸架する。なお、33は、駆動力伝達用のエンドレス状第2チェーン32に張力を付与するためのテンショナーを示す。このテンショナー33は、鎖車とスプリング等から成る。
【0028】
なお、
図9の実施例では、1個のテンション用鎖車24と同軸の鎖車26に第2チェーン32を懸架しているが、これ以外に、1個のソケット用鎖車23に第2チェーン32を懸架すると共に、そのソケット用鎖車23と同軸に鎖車26を固設するよう、設計変更するも自由である。
【0029】
次に、複数の上記テンション用鎖車24に関しても、そのラジアル方向位置を、手動操作レバー2の移動(揺動)に伴って、同時に調整するためのテンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段Zを、具備している。
【0030】
このテンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段Zについて、以下説明する。
図5と
図7、及び、
図2に示すように、入力軸6の軸心L
6 の一方向(後方)X
6 から見て、第1外板11と第2外板15には、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝41が貫設されている。つまり、
図5と
図7を対比すれば明らかなように、副傾斜ガイド溝41,41は同一形状である。そして、円の中心点O
1 ,O
2 からの半径線に対して小さな傾斜角度をもって長寸に形成されている。
【0031】
また、中板20には、入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、第1外板11と第2外板15の上記副傾斜ガイド溝41に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝42が、貫設されている。
ここで、「X字状」とは、図示の実施例では直線と弧状線とが交叉した場合を示しているが、所望により、直線と直線との交叉としたり、弧状線と弧状線との交叉とすることも自由である(図示省略)。
【0032】
そして、
図10~
図14に示すように、第1外板11と第2外板15の副傾斜ガイド溝41と、中板20の副弧状ガイド溝42とが、交叉する点を、副交叉点Os と呼べば、この副交叉点Os に、テンション用鎖車24の軸部24Aの軸心点O
24を一致させる。
【0033】
このようにして、全てのテンション用鎖車24のラジアル方向位置を(
図10~
図14に示す如く)手動操作レバー2の移動に伴って、同時に調整するように、テンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段Zが構成されている。
【0034】
さらに説明すれば、
図9を、
図10,
図11,
図12,
図13,
図14の各々と重ね合わせて判断すれば、明らかとなるように、全ソケットラジアル位置同時調整手段Yとテンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段Zとは、同時に作動(いわゆる連動)して、巧妙に、エンドレス状第1チェーン31が緩んだり、(あるいは逆に)過大な張力を受けたりすることを防止でき、このようにして、全てのソケット1を均等かつ十分な回転トルクをもって回動させて、全てのホイールナットの締付けを、同時に、かつ、確実に、行うことが可能である。
【0035】
次に、
図15に示す本発明の別の実施形態では、
図2~
図14の実施形態における鎖車23,24,25,26を「プーリ」に変更すると共に、チェーン31,32を「ベルト」に変更している。なお、ベルトとして歯付きベルトが好ましい。そのときは、プーリは凹凸歯付きプーリとする。
【0036】
即ち、
図9と対比しつつ
図15について、具体的に説明すると、入力軸6の軸心L
6 の一方向X
6 から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数のソケット1の軸部10の各々に、ソケット用プーリ30を固設し、かつ、全てのソケット用プーリ30を連動回転可能に懸架したエンドレス状第1ベルト34を備え、入力軸6に固設した駆動用の中心プーリ35と、エンドレス状第1ベルト34と連動回転する駆動力伝達用プーリ36とを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2ベルト56を、備え、周方向に所定等ピッチをもって配設された複数のソケット用プーリ30と、隣りあうソケット用プーリ30の間において、第1ベルト34に張力を付与するテンション用プーリ57を、配設した構成である。
【0037】
また、
図15に示したように、エンドレス状第1ベルト34、エンドレス状第2ベルト56、及び、プーリ30,57,35を、備えた実施形態の場合においても、既説の全ソケットラジアル位置同時調整手段Yを具備すると共に、テンション用プーリラジアル位置同時調整手段Z´を、備えている。即ち、
図10~
図14に示した主傾斜ガイド溝21、主弧状ガイド溝22等の構成は、そのまま適用される。
【0038】
即ち、(
図15及び
図1~
図14に示すように、)複数の上記テンション用プーリ57のラジアル方向位置を、上記手動操作レバー2の移動によって同時に調整するテンション用プーリラジアル位置同時調整手段Z´を、具備している。
【0039】
このテンション用プーリラジアル位置同時調整手段Z´について説明すると、入力軸6の軸心L
6 の一方向X
6 から見て、上記第1外板11と第2外板15に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝41が貫設され(
図5,
図7参照)、さらに、(
図3,
図4に示すように)上記中板20には、入力軸6の軸心L
6 の一方向X
6 から見て、第1外板11と第2外板15の副傾斜ガイド溝41に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝42が、貫設される。
【0040】
そして、第1外板11と第2外板15の副傾斜ガイド溝41と、中板20の副弧状ガイド溝42との、副交叉点Os の各々に、テンション用プーリ57の軸心点の各々を、一致させつつ全てのテンション用プーリ57のラジアル方向位置を同時に調整するように、テンション用プーリラジアル位置同時調整手段Z´は、構成されている。
【0041】
なお、本発明に於て、ホイールナットの「締付け」とは、「仮締付け」をも包含している。つまり、本発明によって、「仮締付け」を行った後に、スパナやトルクレンチ等にて、規定トルクをもって最終的締付けを行う工程を付加しても良い。
【0042】
本発明は、以上詳述したように、タイヤホイールに付設された複数個のホイールナットに対応させる複数個のソケット1を、平盤状ケーシング3の前面3Fから突出状として、配設し;上記平盤状ケーシング3の外周縁3Cに沿って移動可能に手動操作レバー2を突設し;さらに、回転駆動工具5に連動連結自在な入力軸6を、上記平盤状ケーシング3の後面3Bの中心から突出状に有し;上記手動操作レバー2を上記外周縁3Cに沿って移動させると、ソケット配設ピッチ円P
1 の直径D
1 を、増減させて、複数個の上記ホイールナットのホイールピッチ円に一致させる全ソケットラジアル位置同時調整手段Yを;具備する構成であるので、ホイールピッチD
1 が相違する多種多様な自動車についてタイヤ交換等の作業が必要な現場に於て、本発明に係るホイールナット締付具は、手動操作レバー2を操作すれば、(
図10~
図14に例示した如く、)容易かつ迅速に、ホイールピッチD
1 を、大・中・小と、変更自在であり、自動車毎に異なったホイールピッチD
1 を有する(複数個の)全てのホイールナットに各ソケット1を同時に嵌合できると共に、直ちに回転駆動工具5のスイッチを押圧しつつ全ての上記ホイールナットを同時に締付けることができ、あるいは、逆に、全てのホイールナットを同時に緩めることができる。このように、作業能率が著しく改善される。
さらに、本発明によれば、ホイールピッチD
1 が相違するホイールに対して、1個のホイールナット締付具をもって対応できるため、ホイールピッチD
1 が相違したタイヤについて、交換等の作業が必要な作業現場に於て、工具保管場所が狭くてもよくなると共に、締付具を複数個、買い揃える必要もなく、経済的利点も大きい。
【0043】
また、本発明は、上記平盤状ケーシング3は;前面壁部12と第1外周壁部13とを有する円形浅皿状の第1外板11と;後面壁部16と第2外周壁部17とを有する円形浅皿状の第2外板15と;上記第1外板11と第2外板15によって形成される円形盤状空間Kに収納されると共に、上記手動操作レバー2が固設された中板20とを、備え;上記第1外周壁部13と第2外周壁部17とを、相互に嵌合した状態で、上記手動操作レバー2が、ラジアル方向に挿通される周方向窓部8が、形成されている構成であるので、ケーシング3の厚みが薄く、軽量かつシンプルに形成できる。作業者にとって取扱い易く、作業能率向上が図り得る。
【0044】
また、本発明は、上記全ソケットラジアル位置同時調整手段Yは;上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、上記第1外板11と第2外板15には、相互に重なり合う同一形状の主傾斜ガイド溝21が貫設され;さらに、上記中板20には、上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、上記第1外板11と第2外板15の上記主傾斜ガイド溝21に対してX字状に交叉する主弧状ガイド溝22が、貫設され;上記第1外板11と第2外板15の上記主傾斜ガイド溝21と、上記中板20の上記主弧状ガイド溝22との、主交叉点Om の各々に、上記ソケット1の軸部10の軸心点O10の各々を、一致させつつ全ての該ソケット1のラジアル方向位置を同時に調整するように構成したので、全ソケットラジアル位置同時調整手段Yは、厚み寸法が小さい薄型のケーシング3に対して、高精度にホイールピッチD1 を調整自在として、比較的シンプルかつ円滑に作動自在として、形成できた。特に、全体が軽量であり、かつ、部品点数も増加せず、厚さ寸法も小さく、作業者の手によって、ホイールピッチD1 を円滑に、かつ、正確に、操作可能である。
【0045】
また、上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数の上記ソケット1の軸部10の各々に、ソケット用鎖車23を固設し、かつ、全ての上記ソケット用鎖車23を連動回転可能に懸架したエンドレス状第1チェーン31を備え;上記入力軸6に固設した駆動用の中心鎖車25と、上記エンドレス状第1チェーン31と連動回転する駆動力伝達用鎖車26とを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2チェーン32を、備え;周方向に所定等ピッチをもって配設された複数の上記ソケット用鎖車23と、隣りあうソケット用鎖車23の間において、上記第1チェーン31に張力を付与するテンション用鎖車24を、配設した構成であるので、ホイールピッチD1 を大小調整する際に、全てのソケット用鎖車23が連動して、入力軸6に対して接近・分離方向に、ラジアル移動を起こす必要があるにかかわらず、常に安定して、第1チェーン31には適度の張力が作用し、ソケット用鎖車23及びソケット1に、回転力を伝えることが可能である。
しかも、エンドレス状第2チェーン32及び駆動力伝達用鎖車26を介して、外周に沿って配設された第1チェーン31に、駆動力が伝達され、全てのソケット用鎖車23等に確実に回転力が伝えられる。
【0046】
また、複数の上記テンション用鎖車24のラジアル方向位置を、上記手動操作レバー2の移動によって同時に調整するテンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段Zを、具備し;上記テンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段Zは;上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、上記第1外板11と第2外板15に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝41が貫設され;さらに、上記中板20には、上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、上記第1外板11と第2外板15の上記副傾斜ガイド溝41に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝42が、貫設され;上記第1外板11と第2外板15の上記副傾斜ガイド溝41と、上記中板20の上記副弧状ガイド溝42との、副交叉点Os の各々に、上記テンション用鎖車24の軸心点O24の各々を、一致させつつ全ての該テンション用鎖車24のラジアル方向位置を同時に調整するよう構成したので、全てのソケット用鎖車23が入力軸6に対して接近・分離方向に、連動移動する際に、第1チェーン31の周方向のいずれの箇所にも均等にテンション用鎖車24によって、適度の張力が付与される。その結果、全てのソケット用鎖車23及びソケット1に、均等かつ適度な回転トルクを付与できる。
【0047】
また、上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、周方向に所定ピッチをもって配設されている複数の上記ソケット1の軸部10の各々に、ソケット用プーリ30を固設し、かつ、全ての上記ソケット用プーリ30を連動回転可能に懸架したエンドレス状第1ベルト34を備え;上記入力軸6に固設した駆動用の中心プーリ35と、上記エンドレス状第1ベルト34と連動回転する駆動力伝達用プーリ36とを、連動するように懸架した駆動力伝達用のエンドレス状第2ベルト56を、備え;周方向に所定等ピッチをもって配設された複数の上記ソケット用プーリ30と、隣りあうソケット用プーリ30の間において、上記第1ベルト34に張力を付与するテンション用プーリ57を、配設した構成であるので、ホイールピッチD1 を大小調整する際に、全てのソケット用プーリ30が連動して、入力軸6に対して接近・分離方向に、ラジアル移動を起こす必要があるにかかわらず、常に安定して、第1ベルト34には適度の張力が作用し、ソケット用プーリ30及びソケット1に、回転力を伝えることが可能である。
しかも、エンドレス状第2ベルト56及び駆動力伝達用プーリ36を介して、外周に沿って配設された第1ベルト34に、駆動力が伝達され、全てのソケット用プーリ30等に確実に回転力が伝えられる。
【0048】
また、複数の上記テンション用プーリ57のラジアル方向位置を、上記手動操作レバー2の移動によって同時に調整するテンション用プーリラジアル位置同時調整手段Z´を、具備し;上記テンション用プーリラジアル位置同時調整手段Z´は;上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、上記第1外板11と第2外板15に、相互に重なり合う同一形状の副傾斜ガイド溝41が貫設され;さらに、上記中板20には、上記入力軸6の軸心L6 の一方向X6 から見て、上記第1外板11と第2外板15の上記副傾斜ガイド溝41に対してX字状に交叉する副弧状ガイド溝42が、貫設され;上記第1外板11と第2外板15の上記副傾斜ガイド溝41と、上記中板20の上記副弧状ガイド溝42との、副交叉点Os の各々に、上記テンション用プーリ57の軸心点の各々を、一致させつつ全ての該テンション用プーリ57のラジアル方向位置を同時に調整するよう構成したので、全てのソケット用プーリ30が入力軸6に対して接近・分離方向に、連動移動する際に、第1ベルト34の周方向のいずれの箇所にも均等にテンション用プーリ57によって、適度の張力が付与される。その結果、全てのソケット用プーリ30及びソケット1に、均等かつ適度な回転トルクを付与できる。
【符号の説明】
【0049】
1 ソケット
2 手動操作レバー
3 平盤状ケーシング
3B 後面
3C 外周面
3F 前面
5 回転駆動工具
6 入力軸
8 周方向窓部
10 軸部
11 第1外板
12 前面壁部
13 第1外周壁部
15 第2外板
16 後面壁部
17 第2外周壁部
20 中板
21 主傾斜ガイド溝
22 主弧状ガイド溝
23 ソケット用鎖車
24 テンション用鎖車
25 中心鎖車
26 駆動力伝達用鎖車
30 ソケット用プーリ
31 エンドレス状第1チェーン
32 エンドレス状第2チェーン
34 エンドレス状第1ベルト
35 中心プーリ
36 駆動力伝達用プーリ
41 副傾斜ガイド溝
42 副弧状ガイド溝
56 エンドレス状第2ベルト
57 テンション用プーリ
D1 直径
K 円形盤状空間
L6 軸心
O10 軸心点
O24 軸心点
Om 主交叉点
Os 副交叉点
P1 ソケット配設ピッチ円
X6 一方向
Y 全ソケットラジアル位置同時調整手段
Z テンション用鎖車ラジアル位置同時調整手段
Z´ テンション用プーリラジアル位置同時調整手段