(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150386
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】雷保護範囲生成装置、雷保護範囲生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E04H9/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052966
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521129233
【氏名又は名称】SUDARE TECHNOLOGIES株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515107236
【氏名又は名称】株式会社積木製作
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敬行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】星仲 智幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大作
(72)【発明者】
【氏名】丹野 貴一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒井 洵哉
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA11
2E139AB01
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】雷保護範囲の全体的な形状を生成する。
【解決手段】第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成部と、第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成部と、第1生成部により生成された第1等距離面と、第2生成部により生成された第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出部と、導出部により導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する保護面生成部と、保護面生成部により生成された保護面と第1対象部とが接する点と、保護面生成部により生成された保護面と第2対象部とが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成部と、曲線生成部により生成された曲線を用いて、雷保護範囲の形状を生成する雷保護範囲形状生成部と、を備えた。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成部と、
第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成部と、
前記第1生成部により生成された前記第1等距離面と、前記第2生成部により生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出部と、
前記導出部により導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する保護面生成部と、
前記保護面生成部により生成された前記保護面と前記第1対象部とが接する点と、前記保護面生成部により生成された前記保護面と前記第2対象部とが接する点とを前記保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成部と、
前記曲線生成部により生成された曲線に基づき、雷保護範囲の形状を生成する雷保護範囲形状生成部と、
を備えた雷保護範囲生成装置。
【請求項2】
前記第1対象部が1点で示される受雷部の場合には、前記第1等距離面は、前記第1対象部を中心とする球面であり、前記第2対象部が1点で示される受雷部の場合には、前記第2等距離面は、前記第2対象部を中心とする球面である請求項1に記載の雷保護範囲生成装置。
【請求項3】
前記第1対象部が線分で示される受雷部の場合には、前記第1等距離面は、前記第1対象部を軸とする円柱面であり、前記第2対象部が線分で示される受雷部の場合には、前記第2等距離面は、前記第2対象部を軸とする円柱面である請求項1または請求項2に記載の雷保護範囲生成装置。
【請求項4】
前記第1対象部が大地を示す平面の場合には、前記第1等距離面は、前記第1対象部と平行な平面であり、前記第2対象部が大地を示す平面の場合には、前記第2等距離面は、前記第2対象部と平行な平面である請求項1または請求項2に記載の雷保護範囲生成装置。
【請求項5】
第3対象部から等距離となる第3等距離面を生成する第3生成部を備え、
前記導出部は、前記第1生成部により生成された前記第1等距離面および前記第2生成部により生成された前記第2等距離面を合成した合成等距離面と、前記第2生成部により生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の雷保護範囲生成装置。
【請求項6】
第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成ステップと、
第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成ステップと、
前記第1生成ステップにより生成された前記第1等距離面と、前記第2生成ステップにより生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出ステップと、
前記導出ステップにより導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する第3生成ステップと、
前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第1対象部とが接する点と、前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第2対象部とが接する点とを前記保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成ステップと、
前記曲線生成ステップにより生成された曲線に基づき、雷保護範囲の形状を生成する範囲生成ステップと、
を備えた雷保護範囲生成方法。
【請求項7】
コンピュータに、
第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成ステップと、
第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成ステップと、
前記第1生成ステップにより生成された前記第1等距離面と、前記第2生成ステップにより生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出ステップと、
前記導出ステップにより導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する第3生成ステップと、
前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第1対象部とが接する点と、前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第2対象部とが接する点とを前記保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成ステップと、
前記曲線生成ステップにより生成された曲線を用いて、雷保護範囲の形状を生成する範囲生成ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷保護範囲生成装置、雷保護範囲生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷から建造物等を保護するために用いられる方法として、回転球体法(JIS A 4201:2003)、保護角法、およびメッシュ法などがある。このうちの回転球体法は、二つ以上の受雷部に同時に接するように、または一つ以上の受雷部と大地とに同時に接するように球体を回転させたときに、球体表面の包絡面から被保護物側を保護範囲とする方法である。この回転球体法に関する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、回転球体法は球体を回転させたときに、球体表面の包絡面ら被保護物側を保護範囲とするため、建造物の形状や避雷針の位置などにより、雷保護範囲の形状は複雑な形状となることが多い。
【0005】
そのため、例えば建造物の一部の断面に対して雷保護範囲の形状を確認することがあるが、一部のみでは雷保護範囲の全体的な形状の確認は困難であり、それに伴い雷保護範囲の検証も困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、雷保護範囲の全体的な形状を生成可能な雷保護範囲生成装置、雷保護範囲生成方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成部と、第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成部と、前記第1生成部により生成された前記第1等距離面と、前記第2生成部により生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出部と、前記導出部により導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する保護面生成部と、前記保護面生成部により生成された前記保護面と前記第1対象部とが接する点と、前記保護面生成部により生成された前記保護面と前記第2対象部とが接する点とを前記保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成部と、前記曲線生成部により生成された曲線を用いて、雷保護範囲の形状を生成する雷保護範囲形状生成部と、を備えた雷保護範囲生成装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の雷保護範囲生成装置において、前記第1対象部が1点で示される受雷部の場合には、前記第1等距離面は、前記第1対象部を中心とする球面であり、前記第2対象部が1点で示される受雷部の場合には、前記第2等距離面は、前記第2対象部を中心とする球面である。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の雷保護範囲生成装置において、前記第1対象部が線分で示される受雷部の場合には、前記第1等距離面は、前記第1対象部を軸とする円柱面であり、前記第2対象部が線分で示される受雷部の場合には、前記第2等距離面は、前記第2対象部を軸とする円柱面である。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の雷保護範囲生成装置において、前記第1対象部が大地を示す平面の場合には、前記第1等距離面は、前記第1対象部と平行な平面であり、前記第2対象部が大地を示す平面の場合には、前記第2等距離面は、前記第2対象部と平行な平面である。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の雷保護範囲生成装置において、第3対象部から等距離となる第3等距離面を生成する第3生成部を備え、前記導出部は、前記第1生成部により生成された前記第1等距離面および前記第2生成部により生成された前記第2等距離面を合成した合成等距離面と、前記第2生成部により生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する。
【0012】
また、本発明の一態様は、第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成ステップと、第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成ステップと、前記第1生成ステップにより生成された前記第1等距離面と、前記第2生成ステップにより生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出ステップと、前記導出ステップにより導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する第3生成ステップと、前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第1対象部とが接する点と、前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第2対象部とが接する点とを前記保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成ステップと、前記曲線生成ステップにより生成された曲線を用いて、雷保護範囲の形状を生成する範囲生成ステップと、を備えた雷保護範囲生成方法である。
【0013】
また、本発明の一態様は、コンピュータに、第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する第1生成ステップと、第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する第2生成ステップと、前記第1生成ステップにより生成された前記第1等距離面と、前記第2生成ステップにより生成された前記第2等距離面とが交差する交差部分を導出する導出ステップと、前記導出ステップにより導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する第3生成ステップと、前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第1対象部とが接する点と、前記第3生成ステップにより生成された前記保護面と前記第2対象部とが接する点とを前記保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する曲線生成ステップと、前記曲線生成ステップにより生成された曲線を用いて、雷保護範囲の形状を生成する範囲生成ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、雷保護範囲の全体的な形状を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】雷保護範囲生成装置の一例を示す概略ブロック図である。
【
図7】保護範囲Aの形状生成処理内容を示す図である。
【
図8】保護範囲Bの形状生成処理内容を示す図である。
【
図9】保護範囲Cの形状生成処理内容を示す図である。
【
図10】保護範囲Dの形状生成処理内容を示す図である。
【
図11】保護範囲Eの形状生成処理内容を示す図である。
【
図12】保護範囲Fの形状生成処理内容を示す図である。
【
図13】雷保護範囲の形状生成処理内容を示す図である。
【
図17】雷保護範囲の形状を2次元で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態による雷保護範囲生成装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による雷保護範囲生成装置100の一例を示す概略ブロック図である。
雷保護範囲生成装置100は、入力部110、第1対象取得部121、第2対象取得部122、第3対象取得部123、第1生成部131、第2生成部132、第3生成部133、交差部分導出部140、保護面生成部150、曲線生成部160、および雷保護範囲形状生成部170で構成される。
【0017】
入力部110は、建造物のCADデータや、回転球体法で用いられる雷撃範囲(球面)の半径r、大地の地盤面の高さなどが入力される。入力されるCADデータには、受雷部(避雷針、避雷導体)の位置を示す情報が含まれる。
【0018】
第1対象取得部121、第2対象取得部122、および第3対象取得部123は、回転球体法において対象となる受雷部または大地(本実施形態では地盤面)を示す情報を取得する。第1対象取得部121、第2対象取得部122、および第3対象取得部123は、いずれも受電部を対象として取得するか、少なくとも1つが地盤面を対象として取得し、他は受電部を対象として取得する。第1対象取得部121が取得した対象を第1対象部と表現し、第2対象取得部122が取得した対象を第2対象部と表現し、第3対象取得部123が取得した対象を第3対象部と表現することがある。また、第1対象部、第2対象部および第3対象部を特に区別しない場合には、単に対象部と表現する。なお、回転球体法において対象となるものが2つの場合には、第3対象取得部123、第3生成部133は動作しない。
【0019】
第1生成部131は、第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する。第2生成部132は、第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する。第3生成部133は、第3対象部から等距離となる第3等距離面を生成する。第1生成部131と第2生成部132と第3生成部133を特に区別しない場合には、等距離面生成部130と表現することがある。交差部分導出部140は、第1生成部131により生成された第1等距離面と、第2生成部132により生成された第2等距離面とが交差する交差部分を導出する。
【0020】
保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分から等距離となる保護面を生成する。曲線生成部160は、保護面と対象部とが接する点と、保護面と他の対象部とが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する。保護面上で最短で結ぶ曲線は円弧となる。範囲生成部170は、曲線生成部160により生成された曲線を用いて、雷保護範囲の形状を生成する。
【0021】
次に、上述した等距離面生成部130による等距離面の生成について説明する。
図2は、等距離面を示す図である。
図2おけるrは、雷撃範囲の半径rである。上述したように、対象部は受雷部(避雷針、避雷導体)および地盤面である。
【0022】
このうちの避雷針は、避雷針の先端が対象部となる。このように、対象部が1点で示される受雷部の場合には、
図2(A)に示されるように、等距離面は、対象部を中心とする球面である。
【0023】
避雷導体のように、対象部が線分で示される受雷部の場合には、
図2(B)に等距離面は、対象部を軸とする円柱面となる。また、線分の2つの端部は対象部が1点で示される受雷部のため、等距離面は、対象部を中心とする半球面である。したがって、対象部が線分で示される受雷部の場合、等距離面は線分を包むカプセルのような形状となる。なお、避雷導体は曲線でもよく、この場合も等距離面は曲線に下した垂線の足の長さがrとなる点の集合となる。以下の説明において、対象部が線分で示される場合の等距離面を、カプセルと表現することがある。
【0024】
地盤面のように、対象部が大地を示す平面の場合には、
図2(C)に示されるように、等距離面は、対象部と平行な平面となる。
【0025】
図2で説明した等距離面は、回転球体法において対象部に対して半径rの球体を回転させたときに、この球体の中心がもれることなく存在する面である。すなわち、球体の中心は、等距離面上に必ず存在する。
【0026】
次に、具体例を用いて、雷保護範囲の形状を生成する処理について説明する。
図3は、避雷針と避雷導体を例に具体的に示した等距離面を示す図である。
図3(A)、
図3(B)ともに、屋上に避雷針が2つ設けられた建造物を示している。建造物において、破線で示される屋上の枠は避雷導体を示す。
【0027】
図3(A)において、避雷針が2つであるので、それぞれの先端を中心とした2つの球面が生成される。
図3(B)において、屋上の枠は、6辺で構成されることから、それぞれの辺ごとにカプセルが生成される。
【0028】
図3に示されるように、対象部が複数存在する場合、建造物から見て複数の等距離面が重なることがある。この場合、建造物から見て外側にある等距離面のみを、交差部分導出部140の処理対象の等距離面(以下、「合成等距離面」という)とする。
【0029】
図4は、等距離面が交差する交差部分を示す図である。
図4の説明では、2つの避雷針に対して生成された合成等距離面を避雷針等距離面と表現し、避雷導体(屋上の枠)に対して生成された等距離面を避雷導体等距離面と表現する。
図4(A)は、避雷針等距離面と、避雷導体等距離面とを重ね合わせた図である。この場合、
図4(B)に示される破線が交差部分となる。
【0030】
図5(A)は、交差部分から等距離となる保護面を示す図である。保護面は、半径rの球面を、その中心が交差部分となるように球面を移動させて得られる面である。
図5(B)は、雷保護範囲の形状を示す図である。雷保護範囲の形状は、保護面と第1対象部とが接する点と、保護面と第2対象部とが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線である。例えば、
図5(B)に示されるように、保護面が2つの避雷針に接するそれぞれの点を保護面上で最短で結ぶ曲線C1が示されている。また、保護面が1つの避雷針と、1つの避雷導体に接するそれぞれの点を保護面上で最短で結ぶ曲線C2が示されている。これらの曲線(円弧)がなす形状が雷保護範囲の形状となる。
【0031】
なお、実際の処理では、交差部分上の全ての点を中心とした球面を生成することはできないので、交差部分上に等間隔で設けられた点を中心とした球面を組み合わせて保護面が生成される。これに伴い、実際の処理では円弧も保護面の数だけ生成される。これにより、円弧群により雷保護範囲の形状が生成される。この円弧群に対して、隣り合う円弧を平面で補間するCADの機能によって、雷保護範囲の形状は面として生成される。
【0032】
上述したように、対象部は、避雷針の先端のような1点で示されるものと、避雷導体のような線分で示されるものと、地盤面のような平面で示されるものがある。これらの対象物の組み合わせに基づき保護範囲が生成される。
【0033】
図6は、組合せを示す図である。組合せごとに保護範囲A~Fに対応させている。この保護範囲A~Fが生成され、雷保護範囲形状生成部170に出力される。雷保護範囲形状生成部170は、それらを合成して雷保護範囲の全体的な形状を生成する。
【0034】
保護範囲A~Fは、建造物が有する避雷針の本数に応じて生成される。避雷針の本数が0本の場合、保護範囲A、Bが生成され、雷保護範囲形状生成部170は、それらを合成して雷保護範囲の全体的な形状を生成する。避雷針の本数が1本の場合、保護範囲A、B、C、Fが生成され、雷保護範囲形状生成部170は、それらを合成して雷保護範囲の全体的な形状を生成する。避雷針の本数が2本の場合、保護範囲A、B、C、D、Fが生成され、雷保護範囲形状生成部170は、それらを合成して雷保護範囲の全体的な形状を生成する。避雷針の本数が3本以上の場合、保護範囲A、B、C、D、E、Fが生成され、雷保護範囲形状生成部170は、それらを合成して雷保護範囲の全体的な形状を生成する。
【0035】
避雷針の本数がN本(Nは3以上)の場合において、保護範囲Dは、N本の避雷針から2本の避雷針を選択する全ての組み合わせで生成される。また、保護範囲Eは、保護範囲Dは、N本の避雷針から3本の避雷針を選択する全ての組み合わせで生成される。
【0036】
図6に示されるように、保護範囲Aは、避雷導体と地盤面から生成される保護範囲である。保護範囲Bは、避雷導体同士から生成される保護範囲である。保護範囲Cは、避雷針と避雷導体から生成される保護範囲である。保護範囲Dは、2本の避雷針と避雷導体から生成される保護範囲である。保護範囲Eは、3本の避雷針から生成される保護範囲である。保護範囲Fは、避雷針と地盤面から生成される保護範囲である。雷保護範囲生成装置100は、全ての対象部に対してもれなく形状生成処理を行うことで雷保護範囲の形状を生成する。
【0037】
以下、保護範囲A~Fの形状を生成する形状生成処理について順に説明する。なお、形状生成処理において、CADデータは雷保護範囲生成装置100に予め入力されているものとする。また、以下で説明する形状生成処理において用いられるIS(α、β)について、α、βは等距離面であり、IS(α、β)はαとβの交差部分を示す。ARC(M、N)について、M、Nは対象部であり、ARC(M、N)は、保護面とMの接点と、保護面とNの接点とを保護面上で最短で結ぶ曲線を示す。
【0038】
図7は、保護範囲Aの形状生成処理内容を示す図である。入力部110は、雷撃範囲半径rを入力する。また、入力部110は、地盤面の高さを入力する。
【0039】
第1対象取得部121は、CADデータから避雷導体の線分Pを第1対象部として取得する。第1生成部131は、線分Pの等距離面としてカプセルXを生成する。第2対象取得部122は、入力された地盤面の高さから地盤面Qを第2対象部として取得する。第2生成部132は、地盤面Qの等距離面として平面Yを生成する。
【0040】
交差部分導出部140は、第1生成部131により生成されたカプセルXと、第2生成部132により生成された平面Yとが交差する交差部分IS(カプセルX、平面Y)を導出する。保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分IS(カプセルX、平面Y)から等距離となる保護面を生成する。
【0041】
曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と線分Pとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と地盤面Qとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(線分P、地盤面Q)を生成し、隣り合う曲線を補間した保護範囲Aを雷保護範囲形状生成部170に出力する。補間方法は、例えば直線で面を生成する方法が挙げられる。
【0042】
図8は、保護範囲Bの形状生成処理内容を示す図である。入力部110は、雷撃範囲半径rを入力する。第1対象取得部121は、CADデータから避雷導体の線分Pを第1対象部として取得する。第1生成部131は、線分Pの等距離面としてカプセルXを生成する。第2対象取得部122は、CADデータから避雷導体の線分Qを第2対象部として取得する。第2生成部132は、線分Qの等距離面としてカプセルYを生成する。
【0043】
交差部分導出部140は、第1生成部131により生成されたカプセルXと、第2生成部132により生成されたカプセルYとが交差する交差部分IS(カプセルX、カプセルY)を導出する。保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分IS(カプセルX、カプセルY)から等距離となる保護面を生成する。
【0044】
曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と線分Pとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と線分Qとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(線分P、線分Q)を生成し、隣り合う曲線を補間した保護範囲Bを雷保護範囲形状生成部170に出力する。補間方法は、例えば直線で面を生成する方法が挙げられる。
【0045】
図9は、保護範囲Cの形状生成処理内容を示す図である。入力部110は、雷撃範囲半径rを入力する。第1対象取得部121は、CADデータから避雷針の先端の受雷点Pを第1対象部として取得する。第1生成部131は、受雷点Pの等距離面として球面Xを生成する。第2対象取得部122は、CADデータから、第1対象部の避雷針に最も近い避雷導体の線分Qを第2対象部として取得する。第2生成部132は、線分Qの等距離面としてカプセルYを生成する。
【0046】
交差部分導出部140は、第1生成部131により生成された球面Xと、第2生成部132により生成されたカプセルYとが交差する交差部分IS(球面X、カプセルY)を導出する。保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分IS(球面X、カプセルY)から等距離となる保護面を生成する。
【0047】
曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Pとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と線分Qとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(受雷点P、線分Q)を生成し、隣り合う曲線を補間した保護範囲Cを雷保護範囲形状生成部170に出力する。補間方法は、例えば直線で面を生成する方法が挙げられる。
【0048】
図10は、保護範囲Dの形状生成処理内容を示す図である。入力部110は、雷撃範囲半径rを入力する。第1対象取得部121は、CADデータから避雷針の先端の受雷点Pを第1対象部として取得する。第1生成部131は、受雷点Pの等距離面として球面Xを生成する。第2対象取得部122は、CADデータから避雷針の先端の受雷点Qを第2対象部として取得する。第2生成部132は、受雷Qの等距離面として球面Yを生成する。第3対象取得部123は、CADデータから、第1対象部の避雷針と第2対象部の避雷針とに最も近い避雷導体の線分Rを第3対象部として取得する。第3生成部133は、線分Rの等距離面としてカプセルZを生成する。
【0049】
交差部分導出部140は、第1生成部131により生成された球面Xと、第2生成部132により生成された球面Yとの合成等距離面と、第3生成部133により生成されたカプセルZが交差する交差部分IS(球球面Xと球面Yの合成等距離面、カプセルZ)を導出する。保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分IS(球球面Xと球面Yの合成等距離面、カプセルZ)から等距離となる保護面を生成する。
【0050】
曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Pとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Qとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(受雷点P、受雷点Q)を生成し、隣り合う曲線を補間した保護範囲Aを雷保護範囲形状生成部170に出力する。補間方法は、例えば直線で面を生成する方法が挙げられる。
【0051】
図11は、保護範囲Eの形状生成処理内容を示す図である。入力部110は、雷撃範囲半径rを入力する。第1対象取得部121は、CADデータから避雷針の先端の受雷点Pを第1対象部として取得する。第1生成部131は、受雷点Pの等距離面として球面Xを生成する。第2対象取得部122は、CADデータから避雷針の先端の受雷点Qを第2対象部として取得する。第2生成部132は、受雷Qの等距離面として球面Yを生成する。第3対象取得部123は、CADデータから避雷針の先端の受雷点Rを第3対象部として取得する。第3生成部133は、受雷点Rの等距離面として球面Zを生成する。
【0052】
交差部分導出部140は、第1生成部131により生成された球面Xと、第2生成部132により生成された球面Yと、第3生成部133により生成された球面Zが交差する交差部分IS(IS(球面X、球面Y)、球面Z)を導出する。保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分IS(IS(球面X、球面Y)、球面Z)から等距離となる保護面を生成する。
【0053】
曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Pとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Qとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(受雷点P、受雷点Q)を生成する。曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Pとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Rとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(受雷点P、受雷点R)を生成する。曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Qとが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点Rとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(受雷点Q、受雷点R)を生成する。
【0054】
ARC(受雷点P、受雷点Q)の隣り合う曲線を補間し、ARC(受雷点P、受雷点R)の隣り合う曲線を補間し、ARC(受雷点Q、受雷点R)の隣り合う曲線を補間した保護範囲Eを雷保護範囲形状生成部170に出力する。なお、同一球面上に受雷点P、Q、Rが存在する場合には、保護範囲は球面となり、同一球面上に受雷点P、Q、Rが存在しない場合(避雷針同士が離れすぎている場合)は、保護範囲は生成されない。
【0055】
図12は、保護範囲Fの形状生成処理内容を示す図である。入力部110は、雷撃範囲半径rを入力する。また、入力部110は、地盤面の高さを入力する。保護範囲Eの形状生成処理内容では、全ての避雷針を対象に等距離面が生成される。ここでは、避雷針がk本あるものとし、第1対象取得部121がk回ループして球面を生成するものとする。
【0056】
第1対象取得部121は、CADデータから全ての避雷針の先端の受雷点P(1)~P(k)を対象部として取得する。第1生成部131は、受雷点P(1)~P(k)の等距離面として球面X(1)~X(k)を生成する。第2対象取得部122は、入力された地盤面の高さから地盤面Qを第2対象部として取得する。第2生成部132は、地盤面Qの等距離面として平面Yを生成する。
【0057】
交差部分導出部140は、第1生成部131により生成された球面X(1)~X(k)の合成等距離面と、第2生成部132により生成された平面Yとが交差する交差部分IS(球面X(1)~X(k)の合成等距離面、平面Y)を導出する。保護面生成部150は、交差部分導出部140により導出された交差部分IS(球面X(1)~X(k)の合成等距離面、平面Y)から等距離となる保護面を生成する。
【0058】
曲線生成部160は、保護面生成部150により生成された保護面と受雷点P(1)~P(k)とが接する点と、保護面生成部150により生成された保護面と地盤面Qとが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線ARC(受雷点P(1)、地盤面Q)、…、ARC(受雷点P(k)、地盤面Q)を生成する。
【0059】
ARC(受雷点P(1)、地盤面Q)、…、ARC(受雷点P(k)、地盤面Q)のそれぞれにおいて、隣り合う曲線を補間した保護範囲Fを雷保護範囲形状生成部170に出力する。補間方法は、例えば直線で面を生成する方法が挙げられる。
【0060】
図13は、雷保護範囲の形状生成処理内容を示す図である。雷保護範囲形状生成部170は、生成された保護範囲A~Fの形状が入力される。雷保護範囲形状生成部170は、保護範囲A~Fを合成することで雷保護範囲の全体的な形状を生成する。なお、対象物同士の関係によっては、建造物から見て複数の保護範囲が重なることがある。この場合、建造物から見て最も外側にある雷保護範囲のみを採用する。
【0061】
上述した形状生成処理を実際のCADデータに適用した例について説明する。
図14は、建造物の斜視図である。
図15は、建造物における避雷針と避雷導体の位置を示す図である。破線は、避雷導体を示す。
図15に示される建造物での対象部は1つの避雷針と破線で示される避雷導体である。雷保護範囲生成装置100は、上述した保護範囲A~Fの形状を生成し、保護範囲A~Fを合成することで雷保護範囲の全体的な形状を生成する。
【0062】
図16は、形状生成処理により得られた雷保護範囲の形状を示す図である。雷保護範囲生成装置100は、
図16に示されるように、雷保護範囲の全体的な雷保護範囲の形状がひと目でわかる雷保護範囲の形状を生成する。この雷保護範囲の形状は、CADデータとして出力されるため、
図16に示される保護範囲を回転したり、拡大縮小することが可能である。また、例えば、
図17に示されるように、雷保護範囲の形状を2次元の図で表示可能である。
【0063】
さらに、任意の断面方向での雷保護範囲の形状も表示可能である。
図18は、建造物の平面図である。
図19(A)は、
図18に示される平面図におけるA-A'方向に鉛直に切ったときの断面を示す。
図19(B)は、
図18に示される平面図におけるB-B'方向に鉛直に切ったときの断面を示す。
図19(A)、
図19(B)に示される円弧が断面における保護形状である。例えば、
図15に示す避雷針と避雷導体を結ぶ雷保護範囲の形状は、断面の方向が少し変化するだけで異なる。そのため、本実施形態のように、任意の断面の方向における雷保護範囲の形状を表示することで、容易に検証を行うことができる。
【0064】
このように、雷保護範囲の形状を示すCADデータを用いて任意の方向の断面における保護形状も表示可能であることから、雷保護範囲の検証を容易に行うことができる。従来は、断面図を用意し、その断面図に回転球体法を行うことで検証が行われていたことと比較して、非常に効率よく、また容易に雷保護範囲の検証を行うことができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る雷保護範囲生成装置100は、まず第1対象部から等距離となる第1等距離面を生成する。これにより、第1対象部に接する半径rの球面の中心が存在する面が生成される。同様に、雷保護範囲生成装置100は、第2対象部から等距離となる第2等距離面を生成する。これにより、第2対象部に接する半径rの球面の中心が存在する面が生成される。
【0066】
次に、雷保護範囲生成装置100は、第1等距離面と第2等距離面とが交差する交差部分を導出する。これにより、第1対象部と、第2対象部とにともに接する球面の中心が存在する位置が導出される。そして、雷保護範囲生成装置100は、交差部分から等距離となる保護面を生成する。これにより、第1対象部と第2対象部の両方に接する球面が得られる。
【0067】
雷保護範囲生成装置100は、保護面と第1対象部とが接する点と、第3生成部により生成された保護面と第2対象部とが接する点とを保護面上で最短で結ぶ曲線を生成する。これにより、雷保護範囲の形状が生成される。
【0068】
このように、雷保護範囲生成装置100は、全ての対象部に対し、2つの対象部ずつ上記形状生成処理を行うことで、もれることなく雷保護範囲の形状を生成するので、雷保護範囲の形状を非常に精度よく生成できる。
【0069】
なお、上述した雷保護範囲生成装置100が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した雷保護範囲生成装置100が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した雷保護範囲生成装置100が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0070】
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0071】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に雷保護範囲生成装置100が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0072】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100 雷保護範囲生成装置
110 入力部
121 第1対象取得部
122 第2対象取得部
130 等距離面生成部
131 第1生成部
132 第2生成部
133 第3生成部
140 交差部分導出部
160 曲線生成部
170 雷保護範囲形状生成部