(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015039
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ソフトクローズ機構
(51)【国際特許分類】
A47B 88/453 20170101AFI20220114BHJP
【FI】
A47B88/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117640
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知孝
【テーマコード(参考)】
3B160
【Fターム(参考)】
3B160AA01
3B160AB31
3B160AB35
3B160AB46
3B160AB71
3B160BA02
3B160CA02
3B160EA32
3B160EA35
3B160EB03
3B160EB23
3B160EB33
3B160EB72
3B160EB83
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既存の家具等の収納部に取り付けでき、且つ、構造が簡単で小型であり取り扱いがし易いソフトクローズ機構の提供。
【解決手段】機構体11は、固定本体13と、固定本体に収容されて前後方へ摺動する可動体14と、可動体に取り付けられ、フック部材12に係合して可動体を前進移動させるロックカム15と、固定本体に設置され、固定本体と可動体との間に作動連結されたバネ部材16とから成り、固定体にはシリンダー部21が形成されており、可動体にはシリンダー部に挿入されるロッド部及びパッキンが設けられ、固定体には案内通路が形成されており、可動体には案内通路に挿入されるガイド棒が設けられ、ロックカムは、ガイド棒に結合されまたフック部材に係合して引出しと一体に移動し、可動体をバネ部材に対抗して前進移動させ、バネ部材は、可動体をバネ復元作用によりシリンダー部材の緩衝作用を伴って後退移動させることを特徴とするものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具本体に取り付けられた機構体;及び、
引出しの側面に取り付けられ前記機構体に対して係合、及び係合解除されるフック部材とから成り、
前記機構体は、
家具本体に結合されてベースを構成する固定本体と、
前記固定本体に収容され、当該固定本体の前方又は後方へ摺動運動する可動体と、
前記可動体に取り付けられ、引き出しに取り付けられたフック部材に係合して作動し、可動体を収容位置から引出し位置まで前進移動させるロックカムと、
前記固定本体の内部に設置され、当該固定本体と可動体との間に作動連結されたバネ部材と、から成り、
前記固定体にはその一部分に固定本体の長手方向へ中空となって延びるシリンダー部が形成されており、
前記可動体には前記シリンダー部に挿入されるロッド部及びロッド部先端のパッキンが設けられ、
前記シリンダー部の奥端にはシリンダー部からの空気の排出を緩衝する空気抜き管が設置され、
前記固定体には他の部分に固定本体の長手方向へ中空となって延びる案内通路が形成されており、
前記可動体には前記案内通路に挿入されるガイド棒が設けられ、
前記ロックカムは、前記ガイド棒に結合されて、前記引き出しの引出し移動時に、移動に際してフック部材に係合して前記引出しと一体に移動し、可動体を前記バネ部材の作用に対抗して収容位置から引出し位置まで前進移動させる一方、
前記バネ部材は、前記引き出しの収納移動時に前記可動体を、バネ復元作用により引き出し位置から収容位置まで、シリンダー部材の緩衝作用を伴って後退移動させる、
ことを特徴とするソフトクローズ機構。
【請求項2】
前記案内通路の側面には切欠部が設けられ、ロックカムは、可動体が引出し位置へ移動したときに前記切欠部に係合して可動体を引出し位置に保持することを特徴とする請求項1に記載のソフトクローズ機構。
【請求項3】
前記ロックカムは、前記可動体が引出し位置へ移動したときに前記切欠部に係合し、さらにフック部材との係合を解除して引出しの移動動作を解放することを特徴とする請求項2に記載のソフトクローズ機構。
【請求項4】
前記ロックカムは、前記引き出しの収納時、前記ロックカムに到達したフック部材と係合し、前記引出しを前記バネ部材のバネ復元作用により収容位置まで、シリンダー部材の緩衝作用を伴って後退移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のソフトクローズ機構。
【請求項5】
前記フック部材は片持梁構造に成形されており、前記可動体及びロックカムが先に収納位置へ後退したとき、最後部のロックカムに前記フック部材のしなり変形により係合し作動連結することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のソフトクローズ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具や事務機等(以下、家具で代表する)の引出しの機能向上のためのソフトクローズ機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家具や家具の引出しにおいて、物を出し入れするために開いた引出しを閉じる際における閉じ操作の半自動化、或いは閉じるときの騒音の防止及び閉動作の確実化のために、引出しが閉まる直前でゆっくりと自動的に閉止する機能、すなわちソフトクローズ機能を実現する機構(以下において、「ソフトクローズ機構」という。)を備えたものがあり、その従来例としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
上記従来の構成によれば、固定レール(固定部材)に取り付けるソフトクローズ機構及びプッシュオープン機構の構造が比較的複雑になるとともに、ソフトクローズ機構及びプッシュオープン機構を搭載する部分のサイズが大きくなる。
【0004】
したがって、ソフトクローズ機能及びプッシュオープン機能の両方の機能を実現する機構を組み込んだ機構ユニットとして、特に既設家具本体や引出しに取り付けて使用するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案登録3154197号公報
【特許文献2】特許第5720801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によれば、固定レールに取り付けるソフトクローズ機構及びプッシュオープン機構の構造が比較的複雑になるとともに、ソフトクローズ機構及びプッシュオープン機構を搭載する部分のサイズが大きくなる。したがって、ソフトクローズ機能及びプッシュオープン機能の両方の機能を実現する機構を組み込んだ機構ユニットとして、特に既設家具本体や引出しに取り付けて使用するのが困難である。
【0007】
特許文献2の発明は、上記特許文献1の技術の問題点を解決するために、既設家具本体や引出しに取り付けて使用するのに好適な、ソフトクローズ機構及びプッシュオープン機構を組み込んだ機構ユニットを実現しているが、それでも未だ構造が複雑でコンパクト性やメンテナンス性に欠けるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、既存の家具等の収納部に取り付けでき、且つ、構造が簡単で小型であり取り扱いがし易いソフトクローズ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るソフトクローズ機構は、家具本体に取り付けられた機構体;及び、引出しの側面に取り付けられ前記機構体に対して係合、及び係合解除されるフック部材とから成るものであり、その中で、前記機構体は、家具本体に結合されてベースを構成する固定本体と、前記固定本体に収容され、当該固定本体の前方又は後方へ摺動運動する可動体と、前記可動体に取り付けられ、引き出しに取り付けられたフック部材に係合して作動し、可動体を収容位置から引出し位置まで前進移動させるロックカムと、前記固定本体の内部に設置され、当該固定本体と可動体との間に作動連結されたバネ部材と、から成り、前記固定体にはその一部分に固定本体の長手方向へ中空となって延びるシリンダー部が形成されており、前記可動体には前記シリンダー部に挿入されるロッド部及びロッド部先端のパッキンが設けられ、前記シリンダー部の奥端にはシリンダー部からの空気の排出を緩衝する空気抜き管が設置され、前記固定体には他の部分に固定本体の長手方向へ中空となって延びる案内通路が形成されており、前記可動体には前記案内通路に挿入されるガイド棒が設けられ、前記ロックカムは、前記ガイド棒に結合されて、前記引き出しの引出し移動時に、移動に際してフック部材に係合して前記引出しと一体に移動し、可動体を前記バネ部材の作用に対抗して収容位置から引出し位置まで前進移動させる一方、前記バネ部材は、前記引き出しの収納移動時に前記可動体を、バネ復元作用により引き出し位置から収容位置まで、シリンダー部材の緩衝作用を伴って後退移動させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の別の態様に係るソフトクローズ機構は、前記案内通路の側面には切欠部が設けられ、ロックカムは、可動体が引出し位置へ移動したときに前記切欠部に係合して可動体を引出し位置に保持することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに別の態様に係るソフトクローズ機構においては、前記ロックカムは、前記可動体が引出し位置へ移動したときに前記切欠部に係合し、さらにフック部材との係合を解除して引出しの移動動作を解放することを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに別の態様に係るソフトクローズ機構においては、前記ロックカムは、前記引き出しの収納時、前記ロックカムに到達したフック部材と係合し、前記引出しを前記バネ部材のバネ復元作用により収容位置まで、シリンダー部材の緩衝作用を伴って後退移動させることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに別の態様に係るソフトクローズ機構においては、前記フック部材は片持梁構造に成形されており、前記可動体及びロックカムが先に収納位置へ後退したとき、最後部のロックカムに前記フック部材のしなり変形により係合し作動連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のソフトクローズ機構は、既存の家具等の収納部に後から取り付けでき、且つ、構造が簡単で小型であり取り扱いがし易いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るソフトクローズ機構が装着された家具本体及び引出しを示す斜視図である。
【
図2】前記実施の形態に係るソフトクローズ機構の収納状態を示す正面図である。
【
図3】前記実施の形態に係るソフトクローズ機構の引出し状態を示す正面図である。
【
図4】(a)前記実施の形態に係るソフトクローズ機構のロックカムが連結片に回転可能にピン結合されただけで、外力を受けていない時の自由な状態を示す正面図である。(b)前記実施の形態に係るソフトクローズ機構のロックカムが連結片とともに固定本体内の収容位置にある状態を示す正面図である。
【
図5】前記実施の形態に係るソフトクローズ機構の、引出し状態から収納状態へ移行するときの状態を示す正面図である。
【
図6】前記実施の形態に係るソフトクローズ機構において、ロックカムがエラー動作したときの回復動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図面に基づき説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす形態及び変更携帯の全てを含むものである。なお、本発明の実施の形態係るソフトクローズ機構が装着された家具として戸棚や机(家具本体)の引出しを事例として挙げるが、本明細書においては、方向の説明が必要な場合は、家具本体から引出しを引き出す方向を前方(図中、矢印A参照。)とし、前方に向かって左又は右をそれぞれ左、右というものとする。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態に係るソフトクローズ機構が装着された家具本体及び駆動ピンが装着された引出しを示す斜視図である。
図1において、符号1は全体が箱状構造を持ち前面に開口2を有する家具本体、3は家具本体1の左側壁、4は家具本体1の右側壁である。5は家具本体1に対して出し入れされる引出し、6は引出し5の前板、7は引出し5の左側板、8は引出し5の右側板である。家具本体1の左側壁3及び右側壁4の内面には、スライドレール装置9が取り付けられている。スライドレール装置9はガイド部材9aと当該ガイド部材9aに沿ってスライド移動するレール部材9bとから成り、ガイド部材9aは家具本体1の左側壁3及び右側壁4の内面に取り付けられる一方、レール部材9bは引出し5の左側板7及び右側板8の外面に取り付けられている。上記引出し5は、スライドレール装置9により支持され、家具本体1内に収容された状態と前方へ引き出した状態との間をスライド移動する。したがって、スライドレール装置9は家具本体1の内部で引出し5を支持する機能と、この引出し5のスライド移動を案内する機能とを併せ持つ。
【0018】
図2は本実施の形態に係るソフトクローズ機構の収納状態を示す正面図である。
図2において、符号10はソフトクローズ機構を示す。このソフトクローズ機構10は、従来から一般的存在するスライドレール装置に内蔵組込みされたタイプのものとは異なり、スライドレール装置9とは別体で構成され、家具等を改造することなく、後付けで家具等に装着することができる。
【0019】
そして、上記ソフトクローズ機構10は、家具本体1に取り付けられる機構体11と、引出し5に取り付けられて機構体11に対して係合、又は係合解除動作を行うフック部材12とから成る。機構体11は家具本体1の左側壁3及び右側壁4の内面に取り付けられる一方、フック部材12は全体としてL字状の片持梁構造に成形され、引出し5の左側板7及び/又は右側板8の外面に取り付けられている。また、機構体11は家具本体1の左側壁3及び右側壁4の内面において、上述したガイド部材9aと干渉しないように、その下側に隙間をおいて設置されている。フック部材12もまた、引き出し5に、上述したレール部材9bと干渉しないように、その下側に隙間をおいて設置されている。
【0020】
機構体11は、当該機構体11のベースを構成し家具本体1に結合される固定本体13と、固定本体13に収容され、固定本体13の前方又は後方へ摺動運動する可動体14と、可動体14に取り付けられ、引き出し5に設置されたフック部材12に係合して作動し、可動体14を収容位置から引出し位置まで前進移動させるロックカム15と、固定本体13の内部に設置され固定本体13と可動体14との間に作動連結されたバネ部材16とから成る。
【0021】
図2に示されるように、固定本体13は、略矩形状をしており、右端部に2カ所、左端部に1カ所の取付穴20を有している。固定本体13は、これらの取付穴20において家具本体1の左側壁3及び/又は右側壁4の内面にネジ等によって結合される。固定体13にはその上辺部に左右方向へ中空となって延びるシリンダー部21が形成されており、このシリンダー部の奥端(右端)にはO-リング22を介して空気抜き管23が取り付けられている。また、固定体13にはその下辺部に左右方向へ延びる中空の案内通路24が形成されている。また、固定本体13のシリンダー部21(上辺部)と案内通路24(下辺部)との間には空間部が形成され、この空間部にはバネ部材16が配設されている。
【0022】
可動体14は、
図2及び
図3に示されるように、横長矩形フレーム体の右端を切り取った構造を有しており、左端にあって上下に延びる先頭部25と、先頭部25の上端部に連結して左右方向後方へ延びるロッド部26と、ロッド部26の後端に取り付けられたパッキン27と、先頭部25の下端部に連結して左右方向後方へ延びるガイド棒28とを有して成る。そして、ロッド部26とパッキン27とが固定本体13のシリンダー部21に挿入される一方、ガイド棒28が固定本体13の案内通路24に挿入されることにより、固定本体13と可動体14が組み合わせられて機構体11が構成される。固定本体13のシリンダー部21と案内通路24との間の空間部に配設されたバネ部材16は、その後端が固定本体13の後端部(躯体の一部)に連結される一方、バネ部材16の他端は可動体14の先頭部25に連結されている。これにより可動体14は、固定本体13内に収容された状態(
図2)と前方へ引き出された状態(
図3)との間を摺動運動する。バネ部材16には引張りコイルバネが用いられ、可動体14を、固定本体13内に収容された状態に引張り保持しようとする。また、ロッド部26とパッキン27とが固定本体13のシリンダー部21に挿入されるに際して、パッキン27はシリンダー部21の内面に緊密に対接する寸法に設定されており、これにより、シリンダー部21、ロッド部26、及びパッキン27はエアシリンダー機構を構成している。このエアシリンダー機構は、その奥端(後端)に空気抜き管23が設置されていることにより、ピストン運動に当って空気の流入、流出が調整され、緩衝作用を伴ったソフトクローズ動作を行うことができる。また、固定体13に設けられた案内通路24の、前端に近い側面(
図2、
図3で見て上側の側面)には切欠部が設けられている。この切欠部にはロックカム15が係合する。
【0023】
固定本体13の案内通路24内において、可動体14のガイド棒28後端(右端)部分には連結片29が一体的に設けられている。この連結片29にはロックカム15がピン30により連結されている。
図4はロックカム15及びこれが取り付けられている連結片29の部分を
図2、
図3よりも拡大して示す図である。
図4において、(a)はロックカム15が連結片29に回転可能にピン結合されただけで、何も外力を受けていない時の自由な状態を示す正面図であり、(b)はロックカム15が連結片29にピン結合されるとともに固定本体13の案内通路24内に配置されて引出しを収容位置に保持している状態を示す正面図である。
【0024】
ロックカム15は、
図4(a)(b)に示されるように、連結片29へのピン結合部15aと、正面で見てロックカム15の上辺よりも最小の寸法だけ下方の位置に右側から左側へ向けて細長く切り込まれて成る切込み空間部15bと、切込み空間部15bの上側に上記最小の寸法で細長の片持梁状に成形された板バネ部15cとを有している。上記「最小の寸法」とは、数値的には限定されないが、一例としては3~5mm(ミリメートル)程度である。ロックカム15はまた、ピン結合部15aの下方部分において、正面で見て左右方向中央よりも右側に第1突起部15dが設けられる一方、左側に第2突起部15eが設けられ、これら第1突起部15d及び第2突起部15eの間には引出し5に取り付けられたフック部材12に係合する引掛け凹部15fが形成されている。かかる構成を有するロックカム15は可動体14の連結片29にピン30により回転可能に取り付けられることにより、ガイド棒28及び連結部片29とともに固定本体13の案内通路24内に収容されるが、ロックカム15は案内通路24よりも寸法が大きいため、案内通路の下が壁にスリットが形成されてロックカム15の一部(下側部分)が案内通路24からはみだしている。ロックカム15の引掛け凹部15fには、引出し5に取り付けられたフック部材12の先端(後方端)に設けられた鉤部12aが、引出し5の出し入れ動作に伴って引っ掛かり係合したり、係合解除したりする。
【0025】
以上の構成を有するソフトクローズ機構について、動作を説明する。
図2に示されるように、引出し5が家具本体1内に収容された状態にあるとき、引出し5に取り付けられたフック部材12は最も後方の位置にある。また、フック部材12の鉤部12aはロックカム15の引掛け凹部15fに係合しており、この係合状態でロックカム15及び可動体14もまた、その移動範囲の最も後方の位置にあって固定本体13の内部に収容された状態にある。
【0026】
引出し5が引出し操作を受けると、引出し5の前進移動に伴ってフック部材12が、鉤部12aをロックカム15の引掛け凹部15fに係合させた状態で前進移動し、ロックカム15を介して可動体14及びそのガイド棒28を前進移動させる。これにより、
図3に示されるように可動体14が固定体13の収容位置から引き出され、引出し位置まで前進移動する。このとき、バネ部材16は可動体14の前進移動に対抗しつつ伸長し、先頭部25に接続した部分も引出し位置へ前進、到達する。
【0027】
可動体14が引出し位置まで前進移動すると、ロックカム15が固定体13の案内通路24側面に設けられた切欠部に到達し、この切欠部に係合しようとして
図3中矢印Bの方向へ回転する(
図2から
図3へかけてのロックカム15の回転運動)。これにより、フック部材12の鉤部12aがロックカム15の引掛け凹部15fから外れてフック部材12を解放する。フック部材12が解放された後、可動体14はバネ部材16の作用により元の位置へ戻ろうとするが、ロックカム15が切欠部に引っ掛かっているため引出し位置に保持される。フック部材12が解放された後、引出し5は、自由に移動ができるようになり、引出し5自体の引き出し位置までスライドレール装置9により前方へスライド移動される。
【0028】
図5は、引出し5の収納動作にともなうソフトクローズ機構の引出し状態から収納状態へ移行するときの状態を示す正面図である。引出し5を収納する動作においては、引出し5が後方への移動操作を受けると、この引出し5は、スライドレール装置9により後方へスライド移動され、引出し5に取り付けられたフック部材12がロックカム15に到達する。すると、フック部材12の鉤部12aがロックカム15の引掛け凹部15fに係合するとともに、当該ロックカム15の第1突起部15dを後方へ押し込む。これにより、ロックカム15が
図3中矢印Bとは反対の方向へ回転して切欠部から外れ、固定本体13との引っ掛かりが解放されると、それまで伸長していたバネ部材16の復帰作用により可動体14が固定本体13の内部へと収納されて行く。シリンダー部21、ロッド部26、及びパッキン27により構成されたエアシリンダー機構には空気抜き管23が設置されていることにより、可動体14の収納動作は、当該エアシリンダー機構のピストン運動に当って空気の流入、流出が調整され、緩衝作用を伴ったソフトクローズ動作が実現される。
【0029】
図6は本実施の形態に係るソフトクローズ機構において、ロックカム15がエラー動作したときの回復動作を示す正面図である。ロックカム15のエラー動作とは、ソフトクローズ機構の引き出し動作において、万一、ロックカム15と切欠部との引っ掛かりが引出し5の戻り動作よりも先に外れてしまった場合をいう。この場合、可動体14が、一旦伸長したバネ部材16の復帰作用により固定本体13の内部へと収納されるのにともない、ロックカム15もまた収納位置へ戻る。すると、引出し5を収納する動作においては、引出し5が後方へ移動しても引出し5に取り付けられたフック部材12はロックカム15に到達せず、引出し5は、スライドレール装置9のみにより後方へスライド移動され、最後方の位置に来たところでフック部材12がロックカム15に到達する。すると、フック部材12がL字状の片持梁構造に成形されていることにより、そのしなり変形により鉤部12aがロックカム15の第2突起部15fへ乗り上げて引掛け凹部15fに係合し、ソフトクローズ機構は収納状態に復帰する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のソフトクローズ機構は、既存の家具等の収納部に取り付けでき、且つ、構造が簡単で小型であり取り扱いがし易いという利点がある。
【符号の説明】
【0031】
1 家具本体
2 開口
3 家具本体の左側壁
4 家具本体の右側壁
5 引出し
6 引出しの前板
7 引出しの左側板
8 引出し5の右側板
9 スライドレール装置
10 ソフトクローズ機構
11 機構体
12 フック部材
13 固定本体
14 可動体
15 ロックカム
16 バネ部材
21 シリンダー部
23 空気抜き管
24 案内通路
26 ロッド部
27 パッキン
28 ガイド棒
29 連結片
30 ピン