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  • 特開-工業用ガス供給配管設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150391
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】工業用ガス供給配管設備
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F27D17/00 104G
F27D17/00 104K
F27D17/00 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052971
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 啓介
(72)【発明者】
【氏名】尾形 孝
(72)【発明者】
【氏名】森山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕士
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA01
4K056AA02
4K056AA16
4K056CA02
4K056DB04
4K056DB27
4K056DB29
(57)【要約】
【課題】製鉄所で発生した副生ガスなどの工業用ガスを建屋内のガス使用設備に供給するガス導管内で発生する結露水を、効率的かつ持続的にドレンとして回収することを可能とする工業用ガス供給配管設備を提供する。
【解決手段】工業用ガスを建屋外の元配管から建屋内の工業用ガス使用設備に供給するガス導管に設けられた工業用ガス供給配管設備であって、上記元配管から建屋の側壁に沿って下方に立ち下げたガス導管の端末下部にドレンを回収するシールポットが配設されてなり、かつ、上記下方に立ち下げたガス導管の途中から建屋内に向けて上り勾配を持たせてガス導管を分岐させてなり、好ましくは、上記分岐点よりも高い位置に閉止弁を配設してなる工業用ガス供給配管設備。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用ガスを建屋外の元配管から建屋内の工業用ガス使用設備に供給するガス導管に設けられた工業用ガス供給配管設備であって、
上記元配管から建屋の側壁に沿って下方に立ち下げたガス導管の端末下部にドレンを回収するシールポットが配設されてなり、かつ、上記下方に立ち下げたガス導管の途中から建屋内に向けて上り勾配を持たせてガス導管を分岐させてなることを特徴とする工業用ガス供給配管設備。
【請求項2】
上記下方に立ち下げたガス導管の、建屋内に向けたガス導管の分岐点よりも高い位置に閉止弁を配設してなることを特徴とする請求項1に記載の工業用ガス供給配管設備。
【請求項3】
上記閉止弁は、ゴッグル弁であることを特徴とする請求項2に記載の工業用ガス供給配管設備。
【請求項4】
上記工業用ガスは、製鉄所で発生した副生ガスであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の工業用ガス供給配管設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所のコークス炉から発生するコークス炉ガスや、高炉から発生する高炉ガス、転炉から発生する転炉ガスなどの副生ガス等の工業用ガスを輸送・供給するガス導管において、上記ガス中に含まれる油や水などの液体や、粉塵や鉄粉などの異物をドレンとして効率的かつ持続的に回収することができ工業用ガス供給配管設備に関するものである。以下、工業用ガスが副生ガスである場合を例にとって本発明を説明する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、コークス炉から発生するコークス炉ガス(Cガス)や高炉から発生する高炉ガス(Bガス)、転炉から発生する転炉ガス等の各種副生ガスを回収し、これを燃料ガス等として使用している。また、鉄鋼の製造においては、酸素ガスや窒素ガス、アルゴンガス、アンモニア分解ガス(HNガス)、蒸気等の各種ガスを用いている。これらの工業用ガスは、ガス発生工場からガスホルダーあるいはガス使用工場等に、ガス導管を配設し、0.01~0.02MPa(1.0×10~2.0×10mmHO程度(ゲージ圧)の比較的低い圧力で供給している。
【0003】
上記工業用ガスは、一般に、可燃性であることに加え、多量の一酸化炭素等の有毒ガスを含むことが多いため、ガス導管内のガス圧の変動等の異常があっても、漏洩が起こらないよう万全を期す必要がある。また、上記ガス中には、水、油等の液体や、鉄粉、粉塵等の異物が多量に含まれていることが多いため、それらをドレンとして除去する必要がある。そこで、工業用ガスを輸送・供給するガス導管には、適当な間隔をおいて、ドレンを回収するシールポットが設置されているのが普通である。
【0004】
斯かるシールポットしては、従来、浸漬方式のものとU字管方式のものが一般的である。浸漬方式のシールポットは、ガス導管の下部に取り付けたドレン抜き配管の下端部を、水を溜めた水封タンク内の所定深さまで浸漬させることで、水封タンク内の水圧でガス導管内を流れるガスの漏れを防止するとともに、ガス導管内に溜まったドレンを、ドレン抜き配管を通してタンク内に落下させて除去する方式のものである(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
一方、U字管方式のシールポットは、ガス導管の下部に取り付けたドレン抜き配管の下端部をU字状として、この内部に水を入れ、ガス圧を受ける側の水柱高さと大気圧を受ける側の水柱高さの差から生ずる水圧によってガスを封止するものであり、ガス導管内に溜まったドレンは、前述した浸漬方式と同様、ドレン抜き配管を通してU字管内に落下させて除去するものである(例えば、特許文献3、4参照)。
【0006】
さらに、特許文献5には、上記U字管方式のシールポットでは、水封タンクあるいはU字管の高さが2.5m程度となるため、ガス閉止弁の設置高さは3m程度とせざるを得ず、緊急非常時に、迅速にガスを閉止することが難しいという問題に対する対応策として、U字管方式のシールポットにおいて、ガス圧を受ける側の管の径を、大気圧を受ける側の管の径に比べて大きくすることで、ガス閉止弁の設置高さを低くしたシールポットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭61-040756号公報
【特許文献2】実開平04-040756号公報
【特許文献3】特開平03-188209号公報
【特許文献4】実開平05-079229号公報
【特許文献5】特開2007-170580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1~5に開示されたシールポットでは、液体であるドレンを回収することができるが、気体である水蒸気は回収することができない。また、副生ガス中の水分を完全に無くすことは困難である。そのため、例えば、副生ガスを使用する設備が建屋内にある場合には、建屋外と建屋内の温度差が原因で、建屋内のガス導管内で結露が発生する。製鉄所で発生する副生ガス中には、硫黄分などの酸性成分が多く含まれており、それが結露水に溶けて酸性の液体となり、ガス導管や加熱設備等のガス使用設備を腐食させる。
【0009】
また、副生ガスを使用する設備の点検等を行う場合には、副生ガスの供給を閉める弁(閉止弁)をガス導管の途中に設置する必要があるが、建屋内のガス導管に閉止弁が設置されていると、弁内に溜まった結露水がシールポットに向かって流れるのを妨げたり、結露水が弁内に滞留して弁自体を腐食したりする。また、シールポットの入口には、粉塵や鉄粉等が付着し、ドレン回収効率が徐々に低下するが、シールポットの上流側に設置された閉止弁が腐食で使用できなくなると、シールポットの清掃ができなくなる虞もある。
【0010】
本発明は、従来技術が抱える上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、製鉄所で発生した副生ガス等の工業用ガスをガス使用設備に供給するために建屋内に配設したガス導管内で発生する結露水を、効率的かつ持続的にドレンとして回収することを可能とする工業用ガス供給配管設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記の課題を解決する方策について鋭意検討を重ねた。その結果、屋外の元配管から側壁(外壁)に沿って下方に立ち下げたガス導管の端末下部にシールポットを配設し、かつ、上記下方に立ち下げたガス導管の途中から建屋内に向けて上り勾配を持たせてガス導管を分岐させることで、建屋内のガス導管内に発生した結露水をシールポットに効率的に回収することが可能となること、また、ガス閉止弁については、上記下方に立ち下げたガス導管の建屋内向けガス導管の分岐点よりも高い位置に設置することで、ドレンの回収を阻害するのを防止できるとともに、弁自体の腐食も防止できることを知見し、本発明を開発するに至った。
【0012】
上記知見に基づく本発明は、工業用ガスを建屋外の元配管から建屋内の工業用ガス使用設備に供給するガス導管に設けられた工業用ガス供給配管設備であって、上記元配管から建屋の側壁に沿って下方に立ち下げたガス導管の端末下部にドレンを回収するシールポットが配設されてなり、かつ、上記下方に立ち下げたガス導管の途中から建屋内に向けて上り勾配を持たせてガス導管を分岐させてなることを特徴とする工業用ガス供給配管設備である。
【0013】
本発明の上記工業用ガス供給配管設備は、上記下方に立ち下げたガス導管の、建屋内に向けたガス導管の分岐点よりも高い位置に閉止弁を配設してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の上記工業用ガス供給配管設備における上記閉止弁は、ゴッグル弁であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の上記工業用ガス供給配管設備における上記工業用ガスは、製鉄所で発生した副生ガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、建屋の側壁に沿って下方に立ち下げたガス導管の端末下部にシールポットを配設し、上記下方に立ち下げたガス導管の途中に、建屋内の副生ガス使用設備に副生ガスを供給するガス導管の分岐点を設け、かつ、建屋内の上記ガス導管にシールポットに向かって下るように傾斜を持たせたので、建屋内のガス導管内で発生した結露水を、シールポットにドレンとして効率的に回収することが可能となる。そのため、本発明によれば、腐食成分が溶け込んだ結露水によるガス導管や副生ガス使用設備の腐食を防止することができるので、ガス導管系統に乾燥設備や吸湿設備を設置する必要がない。また、本発明は、副生ガスの供給を止める閉止弁を、建屋の側壁に沿って下方に立ち下げたガス導管における建屋内向けガス導管の分岐点よりも上に配設したので、閉止弁による結露水の排出の阻害や、弁自体の腐食を防止したりすることができる他、シールポットの点検や清掃を容易に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の工業用ガス配管設備を説明する例図である。
図2】本発明の基本的な技術思想を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
製鉄所内のコークス炉や高炉、転炉等から発生した副生ガスは、製鉄所内に縦横に配設されたガス導管を介して副生ガスを使用する設備(例えば燃焼装置や発電設備)が設置された建屋脇まで配送され、さらに、該建屋脇のガス導管から建屋内に分岐したガス導管を介して副生ガス使用装置に供給される。
【0019】
上記副生ガスには、ガス発生装置に由来する水分(水蒸気)や油分等の液体のほか、硫黄分等の不純物や、鉄粉や粉塵等の異物が多量に含まれているのが一般的である。そこで、上記副生ガス発生装置から副生ガス使用装置が設置された建屋脇までのガス導管の途中には、適当な間隔をおいて、シールポットが設置されている。
【0020】
図1は、本発明の工業用ガス配管設備の1例を説明する図であり、1は、図示していない副生ガス発生装置から副生ガスを使用する装置が設置された建屋脇まで副生ガスを供給するガス導管(以降、建屋内のガス導管と区別するため「ガス主管」ともいう)であり、上記ガス主管1は、建屋外の側壁(外壁)にそってほぼ垂直に下方に立ち下げられており、その端末下部には、U字管方式のシールポット4が設置され、ガス導管内で発生したドレンを回収する構造となっている。また、上記主管1の途中には、副生ガスを建屋内の副生ガス使用設備に供給するためのガス導管2(以降、建屋外のガス導管と区別するため「ガス支管」ともいう)の分岐点3が設けられている。
【0021】
ここで、本発明の上記工業用ガス配管設備の特徴は、上記副生ガスを建屋内の副生ガス使用設備に供給するためのガス導管2(ガス支管)が、図示されていない建屋内の副生ガス使用設備に向かって上り勾配を有するよう配設されているということである。
【0022】
その理由は、以下のとおりである。
建屋外と建屋内に温度差があり、建屋内の温度が低い場合には、建屋内に配設されたガス支管内で副生ガス中に含まれた水蒸気が結露して結露水となる。副生ガス中には、水分(水蒸気)の他に、副生ガス発生装置に由来する硫黄分等の酸性物質が多く含まれているため、上記結露水は腐食性の酸性溶液となる。
【0023】
この際、建屋外のガス主管1から副生ガスを建屋内に供給するガス支管2が、図2(a)に示したように水平に配設されていると、発生した結露水5(酸性溶液)はガス支管2内に留まり、ガス支管2を腐食する。
【0024】
そこで、本発明では、建屋外のガス主管1から副生ガスを建屋内に供給するガス支管2を、図2(b)に示したように、図示されていない建屋内の副生ガス使用設備に向かって上り勾配をもって配設することで、発生した酸性溶液を建屋外に流出させることにした。これにより、建屋内のガス支管2内で発生した結露水5(酸性溶液)が建屋外に設置されたシールポット4側に向かって流出するので、副生ガス内に含まれる不純物や異物も含めてドレンとしてスムーズに回収することができる。
【0025】
なお、上記ガス支管2の傾斜角は、結露水がスムーズに排出できる角度であればよく、特に規定しないが、水の表面張力などの観点から、1°以上とするのが好ましい。
【0026】
また、本発明の上記シールポットは、上記建屋外の側壁に沿ってほぼ垂直に下方に立ち下げたガス主管1の途中に設けられたガス支管2の分岐点3よりも高い位置に、閉止弁6を設けたものであることが好ましい。
【0027】
その理由は、図2には図示していないが、上記建屋内のガス支管の途中に、副生ガス使用設備の定期点検等のときに副生ガスを閉止するための閉止弁が設置されていると、該弁が結露水(酸性溶液)のシールポット側への流出を阻害し、ガス導管のみならず弁自体をも腐食する。そこで、本発明では、副生ガス使用設備用の副生ガスの閉止弁を結露水の流出を阻害しない、建屋外のガス主管に設置することとした。
【0028】
なお、シールポットの入口は、ドレン内に含まれる粉塵や鉄粉の付着により閉塞を起こし、ドレン回収効率が徐々に低下するが、シールポットより上流側に設けられた閉止弁が腐食で使用できなくなると、シールポットを清掃できなくなるおそれがある。その対応として、副生ガスの閉止に水封弁を使用することも考えられるが、ガス導管内に水分が入り込むため、水を使用しない閉止弁を使用するのが望ましい。水を使用しない閉止弁としては、バタフライ弁やゲート弁(仕切弁)、グローブ弁(玉形弁)、ボール弁、ダイヤフラム弁、ゴッグル弁等があるが、中でもゴッグル弁は、ガスを閉止しない状態では弁体がガスと接触せず、結露水やダストが堆積しない構造であるので好ましい。
【実施例0029】
製鉄所で発生した燃料ガス(副生ガス)を搬送する元配管から、建屋内に設置した加熱設備へ燃料ガスを供給する配管設備に、図2に示した本発明の燃料ガス供給配管設備、すなわち、燃料ガスを供給する元配管から建屋の外壁に沿って下方に立ち下げたガス導管(ガス主管)の最下部にシールポットを配置し、上記ガス主管の途中から、建屋内に向かって2°の上り勾配を有するガス導管(ガス支管)を分岐させた燃料供給配管設備を設置した。また、上記分岐点より上方0.5mの位置に、ゴッグル弁を閉止弁として設置した。
【0030】
上記燃料ガス供給配管設備を設置したことで、建屋内のガス支管内に発生した結露水が、ガス支管の分岐点に向かってスムーズに排出され、シールポットに回収されようになったので、ガス支管内での結露水の滞留がなくなり、配管の腐食が大幅に抑制された。また、シールポット内の堆積物の除去や建屋内の配管内部を清掃する際は、分岐点上方に設置したゴッグル弁を閉止することで、安全に作業を行うことが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の技術は、上記に説明した工業用ガスの供給配管設備への適用に限定されるものではなく、水分および腐食成分を含み、結露が起こり易いガスを供給する配管設備のすべてに適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:建屋外のガス導管(ガス主管)
2:建屋内のガス導管(ガス支管)
3:分岐点
4:シールポット
5:結露水
6:閉止弁
G:燃料ガス
P:建屋側壁
図1
図2