(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015040
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】作業機械、プログラム、及び作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20220114BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117641
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】520251209
【氏名又は名称】株式会社Fastics
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一臣
(72)【発明者】
【氏名】川口 英良
(72)【発明者】
【氏名】岸野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】水越 康太
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA02
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB00
(57)【要約】
【課題】交換可能なアタッチメントのアタッチメント情報を効率的かつ正確に取得することが可能な作業機械を得る。
【解決手段】判定部71は、角度検出手段から入力された角度データに基づいて、基準方向に対するアタッチメントの方向を特定し、第2方向データD2を出力する方向特定部711と、受信機から入力されたアタッチメント情報に含まれている第1方向データD1と、方向特定部711から入力された第2方向データD2とに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとの異同を判定する異同判定部712と、を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
交換可能なアタッチメントが装着され、前記本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置の駆動角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、
前記アタッチメントに配置された第1通信装置と、
前記本体部に配置された第2通信装置と、
判定部と、
を備え、
前記第1通信装置は、
所定の基準方向に対する前記アタッチメントの方向を検出し、第1方向データを出力する慣性センサと、
前記第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信する送信機と、
を有し、
前記第2通信装置は、
前記送信機から送信された前記アタッチメント情報を受信する受信機
を有し、
前記判定部は、
前記角度検出手段から入力された前記角度データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定し、第2方向データを出力する方向特定部と、
前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記方向特定部から入力された前記第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとの異同を判定する異同判定部と、
を有する、作業機械。
【請求項2】
前記作業装置を制御する制御部をさらに備え、
前記第1通信装置は、
自身が配置されたアタッチメントに関する制御情報を記憶する記憶部
をさらに有し、
前記送信機は、前記記憶部から読み出された前記制御情報をさらに含む前記アタッチメント情報を送信し、
前記制御部は、前記異同判定部によって、前記アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとが同じであると判定されたことを条件として、前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記制御情報に基づいて前記作業装置の制御パラメータを更新する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記アタッチメントは油圧制御され、
前記制御情報には、前記アタッチメントに供給される作動油の圧力情報、当該作動油の流量情報、及び前記アタッチメントの寸法情報の少なくとも一つが含まれる、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、
前記アタッチメントが交換されたことを検出する交換検出部を有し、
前記アタッチメントが交換されたことが前記交換検出部によって検出された場合には、交換後の新たな前記アタッチメントから前記アタッチメント情報を受信し、当該アタッチメント情報に基づいて前記作業装置の制御パラメータの更新処理を実行する、請求項2又は3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記異同判定部は、前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記方向特定部から入力された前記第2方向データとの差が、第1のしきい値以下であることを条件として、前記アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとは同じであると判定する、請求項1~4のいずれか一つに記載の作業機械。
【請求項6】
前記異同判定部はさらに、前記受信機が受信した前記アタッチメント情報の受信信号強度が第2のしきい値以上であることを条件として、前記アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとは同じであると判定する、請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記第2通信装置は、
前記受信機によって受信された前記アタッチメント情報を前記判定部に入力するか否かを、所定の転送条件に基づいて判定する転送処理部
をさらに有する、請求項1~6のいずれか一つに記載の作業機械。
【請求項8】
前記作業装置は、
前記本体部に回動可能に連結された一端を有するブームと、
前記ブームの他端に回動可能に連結された一端を有するアームと、
前記アームの他端に回動可能に装着された前記アタッチメントと、
を有し、
前記角度検出手段は、
前記本体部に対する前記ブームの角度であるブーム角を検出し、ブーム角データを出力するブーム角センサと、
前記ブームに対する前記アームの角度であるアーム角を検出し、アーム角データを出力するアーム角センサと、
前記アームに対する前記アタッチメントの角度であるアタッチメント角を検出し、アタッチメント角データを出力するアタッチメント角センサと、
水平方向に対する前記本体部の傾斜角度を検出し、傾斜角データを出力する傾斜角センサと、
を有し、
前記方向特定部は、前記ブーム角データ、前記アーム角データ、前記アタッチメント角データ、及び前記傾斜角データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定する、請求項1~7のいずれか一つに記載の作業機械。
【請求項9】
本体部と、交換可能なアタッチメントが装着され、前記本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置と、前記作業装置の駆動角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、前記アタッチメントに配置された第1通信装置と、前記本体部に配置された第2通信装置と、を備え、
前記第1通信装置は、所定の基準方向に対する前記アタッチメントの方向を検出し、第1方向データを出力する慣性センサと、前記第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信する送信機と、を有し、
前記第2通信装置は、前記送信機から送信された前記アタッチメント情報を受信する受信機を有する、
作業機械に搭載される情報処理装置を、
前記角度検出手段から入力された前記角度データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定し、第2方向データを出力する方向特定手段と、
前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記方向特定手段から入力された前記第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとの異同を判定する異同判定手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
本体部と、交換可能なアタッチメントが装着され、前記本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置と、前記作業装置の駆動角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、前記アタッチメントに配置された第1通信装置と、前記本体部に配置された第2通信装置と、を備え、
前記第1通信装置は、所定の基準方向に対する前記アタッチメントの方向を検出し、第1方向データを出力する慣性センサと、前記第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信する送信機と、を有し、
前記第2通信装置は、前記送信機から送信された前記アタッチメント情報を受信する受信機を有する、
作業機械の制御方法であって、
(A)前記角度検出手段から入力された前記角度データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定し、第2方向データを生成するステップと、
(B)前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記ステップ(A)によって生成された前記第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとの異同を判定するステップと、
を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の作業機械、プログラム、及び作業機械の制御方法に関し、特に、交換可能なアタッチメントに配置された通信装置から本体部に配置された通信装置に対してアタッチメント情報を送信する作業機械、プログラム、及び作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下部走行体及び上部旋回体を有する本体部と、交換可能なアタッチメントが装着され、本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置とを備える、建設機械等の作業機械が実用化されている。近年、作業機械の適切な制御、及び、その稼働状況の適切な管理のために、作業装置に装着されているアタッチメントをリアルタイムに識別することが要求されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された作業機械によると、アタッチメント情報を示す二次元バーコードが、アタッチメントに貼付されている。作業者が携帯端末を用いて二次元バーコードを読み取ることによって、アタッチメント情報が取得される。取得されたアタッチメント情報は、携帯端末から作業機械の制御部に無線送信される。制御部は、受信したアタッチメント情報に基づいて、アタッチメントに供給する作動油の最大流量を制御する。
【0004】
また、下記特許文献2に開示された作業機械によると、バケットの種別に応じた、油圧シリンダのシリンダ速度と油圧シリンダを動作させる操作指令値との関係を示す複数の相関データが、予め記憶部に記憶されている。取得部によって、バケットの種別を示す種別データが取得される。制御部は、記憶部に記憶されている複数の相関データの中から、取得部によって取得された種別データに対応する一の相関データを選択し、その選択した相関データに基づいて操作指令値を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-70004号公報
【特許文献2】特許第5990642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された作業機械によると、アタッチメント情報を取得するためには、作業者が作業機械から降車して二次元バーコードの読み取り作業を実施する必要があるため、作業効率が低い。
【0007】
また、上記特許文献2に開示された作業機械によると、バケットの種別に応じた、油圧シリンダのシリンダ速度と油圧シリンダを動作させる操作指令値との関係を示す複数の相関データを予め作成する必要があるため、その作成作業が煩雑かつ非効率である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、交換可能なアタッチメントのアタッチメント情報を、効率的かつ正確に取得することが可能な、作業機械、プログラム、及び作業機械の制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る作業機械は、本体部と、交換可能なアタッチメントが装着され、前記本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置と、前記作業装置の駆動角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、前記アタッチメントに配置された第1通信装置と、前記本体部に配置された第2通信装置と、判定部と、を備え、前記第1通信装置は、所定の基準方向に対する前記アタッチメントの方向を検出し、第1方向データを出力する慣性センサと、前記第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信する送信機と、を有し、前記第2通信装置は、前記送信機から送信された前記アタッチメント情報を受信する受信機を有し、前記判定部は、前記角度検出手段から入力された前記角度データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定し、第2方向データを出力する方向特定部と、前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記方向特定部から入力された前記第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとの異同を判定する異同判定部と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
この態様に係る作業機械によれば、第1通信装置の送信機は、第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信し、第2通信装置の受信機は、アタッチメント情報を受信する。また、方向特定部は、角度検出手段から入力された角度データに基づいて、基準方向に対するアタッチメントの方向を特定し、第2方向データを出力する。そして、異同判定部は、受信機から入力されたアタッチメント情報に含まれている第1方向データと、方向特定部から入力された第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとの異同を判定する。従って、判定部は、アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとが同じであると異同判定部によって判定されたことを条件として、作業装置を制御する制御部へのアタッチメント情報の入力を許可することができる。その結果、制御部は、交換可能なアタッチメントのアタッチメント情報を、効率的かつ正確に取得することが可能となる。例えば、駐機場に複数の作業機械が並んで駐機されている状況においても、近隣の作業機械に装着されているアタッチメントから送信されたアタッチメント情報を、自機に装着されているアタッチメントのアタッチメント情報として誤って取得してしまう事態を回避することが可能となる。
【0011】
上記態様に係る作業機械において、前記作業装置を制御する制御部をさらに備え、前記第1通信装置は、自身が配置されたアタッチメントに関する制御情報を記憶する記憶部をさらに有し、前記送信機は、前記記憶部から読み出された前記制御情報をさらに含む前記アタッチメント情報を送信し、前記制御部は、前記異同判定部によって、前記アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとが同じであると判定されたことを条件として、前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記制御情報に基づいて前記作業装置の制御パラメータを更新することが望ましい。
【0012】
この態様に係る作業機械によれば、送信機は、制御情報を含むアタッチメント情報を送信する。制御部は、アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとが同じであると異同判定部によって判定されたことを条件として、受信機から入力されたアタッチメント情報に含まれている制御情報に基づいて作業装置の制御パラメータを更新する。その結果、交換可能なアタッチメントが装着された作業装置の制御パラメータを、効率的かつ正確に更新することが可能となる。
【0013】
上記態様に係る作業機械において、前記アタッチメントは油圧制御され、前記制御情報には、前記アタッチメントに供給される作動油の圧力情報、当該作動油の流量情報、及び前記アタッチメントの寸法情報の少なくとも一つが含まれることが望ましい。
【0014】
この態様に係る作業機械によれば、第1通信装置から第2通信装置に送信される制御情報には、アタッチメントに供給される作動油の圧力情報、当該作動油の流量情報、及びアタッチメントの寸法情報の少なくとも一つが含まれる。作動油の圧力情報を含めることにより、アタッチメント毎に最適なリリーフ圧力制御及び過負荷警報制御等を行うことができる。作動油の流量情報を含めることにより、アタッチメント毎に最適なポンプ流量制御及びパイロット圧制御等を行うことができる。アタッチメントの寸法情報を含めることにより、アタッチメント毎に最適な干渉防止制御及び転倒警報制御等を行うことができる。
【0015】
上記態様に係る作業機械において、前記制御部は、前記アタッチメントが交換されたことを検出する交換検出部を有し、前記アタッチメントが交換されたことが前記交換検出部によって検出された場合には、交換後の新たな前記アタッチメントから前記アタッチメント情報を受信し、当該アタッチメント情報に基づいて前記作業装置の制御パラメータの更新処理を実行することが望ましい。
【0016】
この態様に係る作業機械によれば、制御部は、アタッチメントが交換されたことが交換検出部によって検出された場合には、交換後の新たなアタッチメントからアタッチメント情報を受信し、当該アタッチメント情報に基づいて作業装置の制御パラメータの更新処理を実行する。これにより、交換後の新たなアタッチメントに対して最適な駆動制御を実現することができる。
【0017】
上記態様に係る作業機械において、前記異同判定部は、前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記方向特定部から入力された前記第2方向データとの差が、第1のしきい値以下であることを条件として、前記アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとは同じであると判定することが望ましい。
【0018】
この態様に係る作業機械によれば、異同判定部は、受信機から入力されたアタッチメント情報に含まれている第1方向データと、方向特定部から入力された第2方向データとの差が、第1のしきい値以下であることを条件として、アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとは同じであると判定する。従って、第1方向データと第2方向データとの差を第1のしきい値と比較するという簡易な処理によって、両アタッチメントの異同を正確に判定することが可能となる。
【0019】
上記態様に係る作業機械において、前記異同判定部はさらに、前記受信機が受信した前記アタッチメント情報の受信信号強度が第2のしきい値以上であることを条件として、前記アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとは同じであると判定することが望ましい。
【0020】
この態様に係る作業機械によれば、異同判定部はさらに、受信機が受信したアタッチメント情報の受信信号強度が第2のしきい値以上であることを条件として、アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとは同じであると判定する。従って、たとえ第1方向データと第2方向データとの差が第1のしきい値以下であっても、受信機が受信したアタッチメント情報の受信信号強度が第2のしきい値未満であれば、異同判定部は、両アタッチメントは異なっていると判定する。第2のしきい値は、自機に装着されているアタッチメント(以下「自機アタッチメント」と称す)から送信されたアタッチメント情報を自機の受信機によって受信した際の受信信号強度は第2のしきい値以上となり、かつ、自機の近隣に駐機された作業機械に装着されているアタッチメント(以下「近隣アタッチメント」と称す)から送信されたアタッチメント情報を自機の受信機によって受信した際の受信信号強度は第2のしきい値未満となるように、その値が設定されている。従って、近隣アタッチメントの姿勢が自機アタッチメントの姿勢と同一又は近似している場合に、近隣アタッチメントから送信されたアタッチメント情報が自機アタッチメントのアタッチメント情報として誤って取得されてしまう事態を、より確実に回避することが可能となる。
【0021】
上記態様に係る作業機械において、前記第2通信装置は、前記受信機によって受信された前記アタッチメント情報を前記判定部に入力するか否かを、所定の転送条件に基づいて判定する転送処理部をさらに有することが望ましい。
【0022】
この態様に係る作業機械によれば、転送処理部は、受信機によって受信されたアタッチメント情報を判定部に入力するか否かを、所定の転送条件に基づいて判定する。従って、転送条件を満たさない場合はそのアタッチメント情報は判定部に転送されないため、受信機から判定部にアタッチメント情報を転送するか否かを、アタッチメントの種別又はメーカ等に応じて選別することができる。
【0023】
上記態様に係る作業機械において、前記作業装置は、前記本体部に回動可能に連結された一端を有するブームと、前記ブームの他端に回動可能に連結された一端を有するアームと、前記アームの他端に回動可能に装着された前記アタッチメントと、を有し、前記角度検出手段は、前記本体部に対する前記ブームの角度であるブーム角を検出し、ブーム角データを出力するブーム角センサと、前記ブームに対する前記アームの角度であるアーム角を検出し、アーム角データを出力するアーム角センサと、前記アームに対する前記アタッチメントの角度であるアタッチメント角を検出し、アタッチメント角データを出力するアタッチメント角センサと、水平方向に対する前記本体部の傾斜角度を検出し、傾斜角データを出力する傾斜角センサと、を有し、前記方向特定部は、前記ブーム角データ、前記アーム角データ、前記アタッチメント角データ、及び前記傾斜角データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定することが望ましい。
【0024】
この態様に係る作業機械によれば、方向特定部は、ブーム角データ、アーム角データ、アタッチメント角データ、及び傾斜角データに基づいて、基準方向に対するアタッチメントの方向を特定する。従って、ブーム、アーム、及びアタッチメントを含む作業腕を有する建設機械への適用が可能となる。また、ブーム角データ、アーム角データ、及びアタッチメント角データのみならず、本体部の傾斜角度を示す傾斜角データもが参照されるため、傾斜面上に作業機械が駐機されている場合であっても、基準方向に対するアタッチメントの方向を正確に特定でき、その結果、異同判定部による異同判定処理の精度を向上することが可能となる。
【0025】
本発明の一態様に係るプログラムは、本体部と、交換可能なアタッチメントが装着され、前記本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置と、前記作業装置の駆動角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、前記アタッチメントに配置された第1通信装置と、前記本体部に配置された第2通信装置と、を備え、前記第1通信装置は、所定の基準方向に対する前記アタッチメントの方向を検出し、第1方向データを出力する慣性センサと、前記第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信する送信機と、を有し、前記第2通信装置は、前記送信機から送信された前記アタッチメント情報を受信する受信機を有する、作業機械に搭載される情報処理装置を、前記角度検出手段から入力された前記角度データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定し、第2方向データを出力する方向特定手段と、前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記方向特定手段から入力された前記第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとの異同を判定する異同判定手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0026】
この態様に係るプログラムによれば、第1通信装置の送信機は、第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信し、第2通信装置の受信機は、アタッチメント情報を受信する。また、方向特定手段は、角度検出手段から入力された角度データに基づいて、基準方向に対するアタッチメントの方向を特定し、第2方向データを出力する。そして、異同判定手段は、受信機から入力されたアタッチメント情報に含まれている第1方向データと、方向特定手段から入力された第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとの異同を判定する。従って、情報処理装置は、アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとが同じであると異同判定手段によって判定されたことを条件として、作業装置を制御する制御部へのアタッチメント情報の入力を許可することができる。その結果、制御部は、交換可能なアタッチメントのアタッチメント情報を、効率的かつ正確に取得することが可能となる。例えば、駐機場に複数の作業機械が並んで駐機されている状況においても、近隣の作業機械に装着されているアタッチメントから送信されたアタッチメント情報を、自機に装着されているアタッチメントのアタッチメント情報として誤って取得してしまう事態を回避することが可能となる。
【0027】
本発明の一態様に係る作業機械の制御方法は、本体部と、交換可能なアタッチメントが装着され、前記本体部に対して姿勢変更可能に取り付けられた作業装置と、前記作業装置の駆動角度を検出し、角度データを出力する角度検出手段と、前記アタッチメントに配置された第1通信装置と、前記本体部に配置された第2通信装置と、を備え、前記第1通信装置は、所定の基準方向に対する前記アタッチメントの方向を検出し、第1方向データを出力する慣性センサと、前記第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信する送信機と、を有し、前記第2通信装置は、前記送信機から送信された前記アタッチメント情報を受信する受信機を有する、作業機械の制御方法であって、(A)前記角度検出手段から入力された前記角度データに基づいて、前記基準方向に対する前記アタッチメントの方向を特定し、第2方向データを生成するステップと、(B)前記受信機から入力された前記アタッチメント情報に含まれている前記第1方向データと、前記ステップ(A)によって生成された前記第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、前記作業装置に装着されている前記アタッチメントとの異同を判定するステップと、を備えることを特徴とするものである。
【0028】
この態様に係る作業機械の制御方法によれば、第1通信装置の送信機は、第1方向データを含むアタッチメント情報を無線信号として送信し、第2通信装置の受信機は、アタッチメント情報を受信する。また、ステップ(A)では、角度検出手段から入力された角度データに基づいて、基準方向に対するアタッチメントの方向が特定され、第2方向データが生成される。そして、ステップ(B)では、受信機から入力されたアタッチメント情報に含まれている第1方向データと、ステップ(A)によって生成された第2方向データとに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとの異同が判定される。従って、アタッチメント情報の送信元アタッチメントと、作業装置に装着されているアタッチメントとが同じであるとステップ(B)で判定されたことを条件として、作業装置を制御する制御部へのアタッチメント情報の入力を許可することができる。その結果、制御部は、交換可能なアタッチメントのアタッチメント情報を、効率的かつ正確に取得することが可能となる。例えば、駐機場に複数の作業機械が並んで駐機されている状況においても、近隣の作業機械に装着されているアタッチメントから送信されたアタッチメント情報を、自機に装着されているアタッチメントのアタッチメント情報として誤って取得してしまう事態を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、交換可能なアタッチメントのアタッチメント情報を、効率的かつ正確に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械の構成を模式的に示す図である。
【
図2】作業装置を動作させるための構成を簡略化して示すブロック図である。
【
図3】作業装置の構成の一部を抜き出して示す図である。
【
図5】子機の動作フローを示すフローチャートである。
【
図7】コントローラの構成を示すブロック図である。
【
図9】角度θ1~θ4と角度α2との関係を示す図である。
【
図10】判定部の処理フローを示すフローチャートである。
【
図11】変形例に係るコントローラの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業機械1の構成を模式的に示す図である。本実施の形態の例において、作業機械1は、交換可能なアタッチメント33としてニブラが装着された建設機械である。但し、ニブラに限らず、バケット又はブレーカ等の他のアタッチメント33が装着されても良い。また、建設機械に限らず、交換可能かつ姿勢変更可能な任意のアタッチメントが装着される農業機械又は工業機械等の他の作業機械であっても良い。
【0032】
図1に示すように、作業機械1は、クローラ式の下部走行体21と、下部走行体21上に旋回可能に配置された上部旋回体22と、上部旋回体22に取り付けられた作業装置3とを備えている。下部走行体21及び上部旋回体22は、作業機械1の本体部2を構成する。
【0033】
作業装置3は、上部旋回体22に対して起伏可能に取り付けられたブーム31と、ブーム31の先端に対して揺動可能に取り付けられたアーム32と、アーム32の先端に対して揺動可能に取り付けられたアタッチメント33とを備えている。また、図示は省略するが、作業装置3は、上部旋回体22に対してブーム31を起伏させるブームシリンダ等のアクチュエータと、ブーム31に対してアーム32を揺動させるアームシリンダ等のアクチュエータと、アーム32に対してアタッチメント33を揺動させるアタッチメントシリンダ等のアクチュエータとを備えている。
【0034】
上部旋回体22の内部には、作業機械1の全体の制御を司るコントローラ7が配置されている。作業機械1のオペレータのレバー操作に伴うコントローラ7の油圧制御によって、上部旋回体22に対するブーム31の角度(ブーム角度)、ブーム31に対するアーム32の角度(アーム角度)、及び、アーム32に対するアタッチメント33の角度(アタッチメント角度)がそれぞれ変更されることにより、作業装置3の姿勢が変更される。
【0035】
また、作業機械1は、ポテンショメータ又はロータリエンコーダ等によって構成される角度センサ41~43を備えている。角度センサ41(ブーム角センサ)は、上部旋回体22とブーム31とを連結する回転軸81(「ブームフットピン」とも称す)の回転角度を検出することにより、ブーム角θ1(
図9参照)を検出し、そのブーム角θ1を示すブーム角データを出力する。角度センサ42(アーム角センサ)は、ブーム31とアーム32とを連結する回転軸82(「ブームトップピン」又は「アームフットピン」とも称す)の回転角度を検出することにより、アーム角θ2(
図9参照)を検出し、そのアーム角θ2を示すアーム角データを出力する。角度センサ43(アタッチメント角センサ)は、アーム32とアタッチメント33とを連結する回転軸83(「アームトップピン」とも称す)の回転角度を検出することにより、アタッチメント角θ3(
図9参照)を検出し、そのアタッチメント角θ3を示すアタッチメント角データを出力する。角度センサ41~43は有線によってコントローラ7に接続されており、ブーム角データ、アーム角データ、及びアタッチメント角データは、角度センサ41~43からコントローラ7に入力される。
【0036】
また、作業機械1は、加速度センサ又はジャイロセンサ等の慣性センサによって構成される傾斜センサ5を備えている。傾斜センサ5は、上部旋回体22内に配置されている。傾斜センサ5は、水平方向Xに対する上部旋回体22の旋回面L1の傾斜角θ4(
図9参照)を検出し、その傾斜角θ4を示す傾斜角データを出力する。傾斜センサ5は有線によってコントローラ7に接続されており、傾斜角データは傾斜センサ5からコントローラ7に入力される。
【0037】
また、作業機械1は、第1通信装置としての子機61と、第2通信装置としての親機62とを備えている。子機61と親機62とは、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、又はLPWA(Low Power Wide Area)等の任意の通信方式によって、相互に無線通信が可能である。子機61はアタッチメント33に配置されており、親機62は上部旋回体22に配置されている。複数のアタッチメント33が存在する場合には、複数のアタッチメント33の各々毎に子機61が配置される。子機61と親機62との良好な通信状況を確保するために、子機61はアタッチメント33の後面30(上部旋回体22に対向する側の面)に配置されており、親機62は上部旋回体22の前面(アタッチメント33に対向する側の面)に配置されている。親機62とコントローラ7とは、CAN(Controller Area Network)等の任意の通信方式によって、相互に有線通信又は無線通信が可能である。
【0038】
図2は、作業装置3を動作させるための構成を簡略化して示すブロック図である。コントローラ7は制御情報S19によってアクチュエータ駆動回路78を制御し、アクチュエータ駆動回路78は制御情報S20によってアクチュエータ79を制御する。アクチュエータ79には、上述したブームシリンダ、アームシリンダ、及びアタッチメントシリンダ等が含まれる。アクチュエータ駆動回路78には、動力源としてのエンジンによって駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから各アクチュエータ79への作動油の供給量を調整するためのコントロールバルブ、及び、コントロールバルブを制御するためのパイロット圧を発生させる操作レバー等が含まれる。作業機械1のオペレータによって操作レバーが操作されると、その操作量に応じて変動するパイロット圧によってコントロールバルブが制御され、パイロット圧に応じた吐出量の作動油がアクチュエータ79に供給され、作動油の油圧によってアクチュエータ79が動作する。これにより、オペレータのレバー操作に従って、作業装置3が所望の動作を実行することとなる。
【0039】
図3は、作業装置3の構成の一部を抜き出して示す図である。アタッチメント33は、アタッチメント33の交換時に脱着可能なアームトップピン83によって、アーム32の先端に回動自在に固定されている。アイドラリンク89の一端は、アイドラリンクピン85によって、アーム32に回動自在に固定されている。アタッチメントリンク90の一端は、アタッチメント33の交換時に脱着可能なアタッチメントリンクピン84によって、アタッチメント33に回動自在に固定されている。アイドラリンク89の他端及びアタッチメントリンク90の他端は、アタッチメントロッドピン86によって、アタッチメントシリンダ87のロッド88の先端に回動自在に固定されている。本実施の形態の例において、アームトップピン83とアタッチメントリンクピン84とを結ぶ直線の延在方向は、子機61が配置されるアタッチメント33の後面30に対して垂直である。
【0040】
図4は、子機61の構成を示すブロック図である。
図4の接続関係で示すように、子機61は、加速度センサ又はジャイロセンサ等の慣性センサ611と、信号処理部612と、ROM等の不揮発性の記憶部613と、無線通信の送信機614と、所定の動作クロックのクロック数をカウントするカウンタ615とを備えている。
【0041】
慣性センサ611は、所定の基準方向に対する子機61の主面法線方向の角度α1(
図9参照)を検出し、その角度α1を示す第1方向データD1を含む信号S11を出力する。
図9に示すように、本実施の形態の例では、所定の基準方向は鉛直下向き方向Yであり、また、子機61の主面法線方向はアタッチメント33の後面30の法線Hが延在する方向に等しい。
【0042】
記憶部613には、自身の子機61が配置されるアタッチメント33に関する制御情報S12が格納されている。制御情報S12には、例えば、そのアタッチメント33の種別情報、固有識別情報、メーカ情報、及び制御パラメータ等が含まれる。制御パラメータには、そのアタッチメント33に供給される作動油の圧力情報(リリーフ圧力及びシリンダ内圧力の許容上限値等)、そのアタッチメント33に供給される作動油の流量情報(ポンプ流量及びパイロット圧等)、並びに、そのアタッチメントの寸法情報(外形寸法及び重心位置情報等)等が含まれる。
【0043】
信号処理部612は、慣性センサ611から入力された第1方向データD1と、記憶部613から読み出した制御情報S12とを含めてアタッチメント情報S13を生成し、生成したアタッチメント情報S13を送信機614に転送する。信号処理部612は、アタッチメント情報S13の生成処理及び転送処理を、カウンタ615によって規定される所定の送信時間間隔で繰り返し実行する。送信時間間隔は、例えば数秒から数分の範囲内で任意の値に設定することができる。
【0044】
送信機614は、信号処理部612から入力されたアタッチメント情報S13を変調することにより、無線信号のアタッチメント情報S14として所定の送信信号強度で送信する。
【0045】
図5は、子機61の動作フローを示すフローチャートである。子機61の駆動電源は、子機61に内蔵されるボタン電池等から供給される。子機61への電源供給が開始されると、まずステップSP21においてカウンタ615は、そのカウンタ値をクリアする。
【0046】
次にステップSP22においてカウンタ615は、所定の動作クロックのクロック数をカウントすることにより、カウンタ値をインクリメントする。
【0047】
次にステップSP23において信号処理部612は、カウンタ615のカウンタ値が所定の設定値(上記の送信時間間隔に対応する)に到達したか否かを判定する。
【0048】
カウンタ値が設定値に到達していない場合(ステップSP23:NO)は、ステップSP22,SP23の動作が繰り返し実行される。
【0049】
カウンタ値が設定値に到達した場合(ステップSP23:YES)は、次にステップSP24において信号処理部612は、第1方向データD1と制御情報S12とに基づいてアタッチメント情報S13を生成し、生成したアタッチメント情報S13を送信機614に入力する。これにより、送信機614から無線信号のアタッチメント情報S14が送信される。
【0050】
次にステップSP25において信号処理部612は、ボタン電池の残量不足等によって子機61への電源供給を停止するか否かを判定する。
【0051】
子機61への電源供給を停止しない場合(ステップSP25:NO)は、ステップSP21以降の動作が繰り返し実行される。
【0052】
子機61への電源供給を停止する場合(ステップSP25:YES)は、信号処理部612は、子機61の各部の動作を終了して、子機61への電源供給を停止する。
【0053】
図6は、親機62の構成を示すブロック図である。
図6の接続関係で示すように、親機62は、無線通信の受信機621と、信号処理部622と、転送処理部623とを備えている。
【0054】
受信機621は、子機61の送信機614から送信された無線信号のアタッチメント情報S14を受信し、アタッチメント情報S13を復調する。受信機621は、アタッチメント情報S14の受信信号強度を示すRSSI値をアタッチメント情報S13に付加することにより、RSSI値を含むアタッチメント情報S15を生成する。
【0055】
信号処理部622は、受信機621から入力されたアタッチメント情報S15に対して任意のアルゴリズムによる誤り検出処理及び誤り訂正処理を施すことにより、無線通信に伴う符号誤りが訂正されたアタッチメント情報S16を出力する。
【0056】
転送処理部623は、予め定められた転送条件に従って、信号処理部622から入力されたアタッチメント情報S16をコントローラ7に転送する。転送条件は、例えば、アタッチメントの種別がニブラの場合は転送し、それ以外の場合は転送しない、又は、アタッチメントの製造メーカが正規メーカである場合は転送し、それ以外の場合は転送しない、等である。なお、転送処理部623は省略しても良い。
【0057】
図7は、コントローラ7の構成を示すブロック図である。
図7の接続関係で示すように、コントローラ7は、CPU等の情報処理装置の機能として実現される判定部71と、制御部72と、ROM等の不揮発性の記憶部73とを備えている。記憶部73にはプログラム100が格納されている。
【0058】
図8は、判定部71の機能構成を示すブロック図である。
図7に示したプログラム100を記憶部73から読み出して情報処理装置が実行することにより、判定部71は、方向特定部711及び異同判定部712として機能する。換言すれば、プログラム100は、作業機械1に搭載される情報処理装置を、方向特定部711及び異同判定部712として機能させるためのプログラムである。
【0059】
方向特定部711は、角度検出手段(角度センサ41~43及び傾斜センサ5)から入力された角度データS17(第1乃至第4角度データ)に基づいて、上記基準方向(鉛直下向き方向Y)に対するアタッチメント33の方向を特定し、その方向を示す第2方向データD2を出力する。本実施の形態の例では、アタッチメント33の方向は、子機61の主面法線方向の角度α2(
図9参照)である。
【0060】
図9は、ブーム角θ1、アーム角θ2、アタッチメント角θ3、及び傾斜角θ4と、角度α2との関係を示す図である。
図9に示すように、ブーム角θ1は、上部旋回体22の旋回面L1と、ブームフットピン81及びブームトップピン82を通る直線L2とが成す角である。アーム角θ2は、直線L2と、アームフットピン82及びアームトップピン83を通る直線L3とが成す角である。アタッチメント角θ3は、直線L3と、アームトップピン83及びアタッチメントリンクピン84を通る直線L4とが成す角である。傾斜角θ4は、水平方向Xと上部旋回体22の旋回面L1とが成す角である。角度α2は、鉛直下向き方向Yと直線L4とが成す角である。ブーム角θ1、アーム角θ2、アタッチメント角θ3、傾斜角θ4、及び角度α2を上記のように定義すると、角度α2は、ブーム角θ1、アーム角θ2、アタッチメント角θ3、及び傾斜角θ4を用いて下記の式(1)のように表される。
【0061】
α2=θ3+θ2-θ1+θ4-90 ・・・(1)
【0062】
方向特定部711は、角度データS17に基づいて式(1)の演算を行うことによって角度α2を算出し、その角度α2を示す第2方向データD2を出力する。
【0063】
異同判定部712は、親機62から入力されたアタッチメント情報S16と、方向特定部711から入力された第2方向データD2とに基づいて、アタッチメント情報S14の送信元のアタッチメント(以下「送信元アタッチメント」と称す)と、自機の作業装置3に装着されているアタッチメント(以下「自機アタッチメント」と称す)との異同を判定する。
【0064】
図10は、判定部71の処理フローを示すフローチャートである。まずステップSP11において異同判定部712は、親機62からアタッチメント情報S16を取得する。アタッチメント情報S16には、第1方向データD1と制御情報S12とRSSI値とが含まれている。
【0065】
次にステップSP12において異同判定部712は、アタッチメント情報S16に含まれているRSSI値が、予め設定された所定のしきい値Vth2以上であるか否かを判定する。しきい値Vth2は、自機アタッチメントから送信されたアタッチメント情報S14を自機の受信機621によって受信した際のRSSI値がしきい値Vth2以上となり、かつ、自機の近隣に駐機された作業機械に装着されているアタッチメント(以下「近隣アタッチメント」と称す)から送信されたアタッチメント情報S14を自機の受信機621によって受信した際のRSSI値がしきい値Vth2未満となるように、その値が設定されている。
【0066】
アタッチメント情報S16に含まれているRSSI値がしきい値Vth2未満である場合(ステップSP12:NO)は、次にステップSP17において異同判定部712は、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとは異なると判定し、処理を終了する。
【0067】
アタッチメント情報S16に含まれているRSSI値がしきい値Vth2以上である場合(ステップSP12:YES)は、次にステップSP13において方向特定部711は、角度センサ41~43及び傾斜センサ5から角度データS17(ブーム角データ、アーム角データ、アタッチメント角データ、及び傾斜角データ)を取得する。
【0068】
次にステップSP14において方向特定部711は、角度データS17に基づいて上記の式(1)の演算を行うことによって角度α2を算出し、その角度α2を示す第2方向データD2を出力する。第2方向データD2は異同判定部712に入力される。
【0069】
次にステップSP15において異同判定部712は、アタッチメント情報S16に含まれている第1方向データD1で示される角度α1と、方向特定部711から入力された第2方向データD2で示される角度α2との差の絶対値を算出し、その値が所定のしきい値Vth1以下であるか否かを判定する。
【0070】
角度α1と角度α2との差の絶対値がしきい値Vth1より大きい場合(ステップSP15:NO)は、次にステップSP17において異同判定部712は、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとは異なると判定し、処理を終了する。
【0071】
角度α1と角度α2との差の絶対値がしきい値Vth1以下である場合(ステップSP15:YES)は、次にステップSP16において異同判定部712は、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとは同じであると判定し、アタッチメント情報S16に含まれている制御情報S12を制御情報S18として制御部72に入力し、処理を終了する。
【0072】
図7に示すように、制御部72は、アクチュエータ駆動回路78を制御するための制御情報S19を、判定部71から入力された制御情報S18によって更新する。例えば、制御部72は、制御情報S18に含まれている作動油圧力情報に基づいて、電磁リリーフ弁の駆動開始圧力値を更新する。あるいは、制御部72は、制御情報S18に含まれている作動油流量情報に基づいて、油圧ポンプの流量又はコントロールバルブのパイロット圧を更新する。あるいは、制御部72は、制御情報S18に含まれている寸法情報に基づいて、本体部2とアタッチメント33との干渉防止制御の制御パラメータ、又は、作業機械1の転倒警報制御の制御パラメータを更新する。
【0073】
なお、制御部72が制御情報S18に基づいて無条件に制御情報S19を更新する上記構成に代えて、判定部71から制御情報S18が入力されると、制御部72が制御情報S19の更新の要否をオペレータに問い合わせる確認メッセージを本体部2内の表示装置(図略)に表示し、オペレータから更新命令が入力されたことを条件として制御情報S19の更新処理を実行する構成としても良い。これにより、制御情報S19の更新が不要の場合に制御情報S19が意図せず更新されてしまうという事態を回避できる。
【0074】
また、各アタッチメント33の諸元情報を含む制御情報S12を子機61から親機62へ送信する上記構成に代えて、制御部72が参照可能な不揮発性記憶部に各アタッチメント33の諸元情報を固有識別情報に対応させて記憶しておき、子機61から親機62へは第1方向データD1及び固有識別情報のみを送信する構成としても良い。この場合、判定部71によって送信元アタッチメントと自機アタッチメントとは同じであると判定されると、子機61から受信した固有識別情報が制御部72に入力され、制御部72は、入力された固有識別情報に対応する諸元情報を制御情報S18として上記不揮発性記憶部から読み出す。これにより、子機61から親機62への送信データ量を削減することができる。
【0075】
さらに、コントローラ7内に判定部71を実装する上記構成に代えて、親機62内に判定部71を実装する構成としても良い。これにより、コントローラ7の処理負荷を軽減することができる。
【0076】
また、コントローラ7又は親機62は、ステップSP11で今回取得したアタッチメント情報S16の内容が、前回取得したアタッチメント情報S16の内容と同一である場合には、今回取得したアタッチメント情報S16に関してはステップSP12以降の処理を省略しても良い。具体的に、異同判定部712は、ステップSP11においてアタッチメント情報S16を取得すると、今回取得したアタッチメント情報S16に含まれている制御情報S12と、前回取得したアタッチメント情報S16に含まれている制御情報S12とを比較し、両者の内容(特に固有識別情報及び制御パラメータ)が同一であれば、今回取得したアタッチメント情報S16と前回取得したアタッチメント情報S16とは同一であると判定する。
【0077】
本実施の形態に係る作業機械1によれば、子機61(第1通信装置)の送信機614は、第1方向データD1を含むアタッチメント情報S14を無線信号として送信し、親機62(第2通信装置)の受信機621は、アタッチメント情報S14を受信する。また、方向特定部711は、角度検出手段(角度センサ41~43及び傾斜センサ5)から入力された角度データS17に基づいて、基準方向に対するアタッチメント33の方向を特定し、第2方向データD2を出力する。そして、異同判定部712は、受信機621から入力されたアタッチメント情報S16に含まれている第1方向データD1と、方向特定部711から入力された第2方向データD2とに基づいて、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとの異同を判定する。従って、判定部71は、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとが同じであると異同判定部712によって判定されたことを条件として、制御部72へのアタッチメント情報(制御情報S18)の入力を許可することができる。その結果、制御部72は、交換可能なアタッチメント33のアタッチメント情報(制御情報S18)を、効率的かつ正確に取得することが可能となる。例えば、駐機場に複数の作業機械1が並んで駐機されている状況においても、近隣の作業機械1に装着されているアタッチメント33から送信されたアタッチメント情報を、自機に装着されているアタッチメント33のアタッチメント情報として誤って取得してしまう事態を回避することが可能となる。
【0078】
また、本実施の形態に係る作業機械1によれば、送信機614は、制御情報S12を含むアタッチメント情報S14を送信する。制御部72は、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとが同じであると異同判定部712によって判定されたことを条件として、受信機621から入力されたアタッチメント情報S16に含まれている制御情報S12に基づいて作業装置3の制御パラメータ(制御情報S19)を更新する。その結果、交換可能なアタッチメント33が装着された作業装置3の制御パラメータ(制御情報S19)を、効率的かつ正確に更新することが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態に係る作業機械1によれば、子機61から親機62に送信される制御情報S12には、アタッチメント33に供給される作動油の圧力情報、当該作動油の流量情報、及びアタッチメント33の寸法情報の少なくとも一つが含まれる。作動油の圧力情報を含めることにより、アタッチメント33毎に最適なリリーフ圧力制御及び過負荷警報制御等を行うことができる。作動油の流量情報を含めることにより、アタッチメント33毎に最適なポンプ流量制御及びパイロット圧制御等を行うことができる。アタッチメント33の寸法情報を含めることにより、アタッチメント33毎に最適な干渉防止制御及び転倒警報制御等を行うことができる。
【0080】
また、本実施の形態に係る作業機械1によれば、異同判定部712は、受信機621から入力されたアタッチメント情報S16に含まれている第1方向データD1と、方向特定部711から入力された第2方向データD2との差が、第1のしきい値Vth1以下であることを条件として、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとは同じであると判定する。従って、第1方向データD1と第2方向データD2との差を第1のしきい値Vth1と比較するという簡易な処理によって、両アタッチメントの異同を正確に判定することが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態に係る作業機械1によれば、異同判定部712はさらに、受信機621が受信したアタッチメント情報S14のRSSI値(受信信号強度)が第2のしきい値Vth2以上であることを条件として、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとは同じであると判定する。従って、たとえ第1方向データD1と第2方向データD2との差が第1のしきい値Vth1以下であっても、受信機621が受信したアタッチメント情報S14のRSSI値が第2のしきい値Vth2未満であれば、異同判定部712は、両アタッチメントは異なっていると判定する。第2のしきい値Vth2は、自機アタッチメントから送信されたアタッチメント情報S14を自機の受信機621によって受信した際のRSSI値は第2のしきい値Vth2以上となり、かつ、近隣アタッチメントから送信されたアタッチメント情報S14を自機の受信機621によって受信した際のRSSI値は第2のしきい値Vth2未満となるように、その値が設定されている。従って、近隣アタッチメントの姿勢が自機アタッチメントの姿勢と同一又は近似している場合に、近隣アタッチメントから送信されたアタッチメント情報S14が自機アタッチメントのアタッチメント情報S14として誤って取得されてしまう事態を、より確実に回避することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態に係る作業機械1によれば、転送処理部623は、信号処理部622から入力されたアタッチメント情報S16をコントローラ7に転送するか否かを、所定の転送条件に基づいて判定する。従って、転送条件を満たさない場合はそのアタッチメント情報S16はコントローラ7に転送されないため、コントローラ7にアタッチメント情報S16を転送するか否かを、アタッチメント33の種別又はメーカ等に応じて選別することができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る作業機械1によれば、方向特定部711は、ブーム角θ1を示すブーム角データ、アーム角θ2を示すアーム角データ、アタッチメント角θ3を示すアタッチメント角データ、及び、本体部2の傾斜角θ4を示す傾斜角データに基づいて、基準方向に対するアタッチメント33の方向を特定する。従って、ブーム31、アーム32、及びアタッチメント33を含む作業腕を有する建設機械への適用が可能となる。また、ブーム角データ、アーム角データ、及びアタッチメント角データのみならず、本体部2の傾斜角θ4を示す傾斜角データもが参照されるため、傾斜面上に作業機械1が駐機されている場合であっても、基準方向に対するアタッチメント33の方向を正確に特定でき、その結果、異同判定部712による異同判定処理の精度を向上することが可能となる。
【0084】
<変形例>
図11は、変形例に係るコントローラ7の構成を示すブロック図である。コントローラ7は、
図7に示した構成に加えて交換検出部74を備えている。
【0085】
交換検出部74は、アーム32に装着されているアタッチメント33の自重を、アーム32の先端に配置された重量センサによって測定し、又は、アーム32に装着されているアタッチメント33の配管内圧力を、アーム32内の配管の先端に配置された圧力センサによって測定する。そして、交換検出部74は、それらの測定結果の変化を検出することにより、アタッチメント33が交換されたことを検出する。
【0086】
交換検出部74は、アタッチメント33が交換されたことを検出すると、交換検出信号S30を制御部72に入力する。制御部72は、交換検出信号S30が入力されると、交換後の新たなアタッチメント33に対してアタッチメント情報の送信を要求するアタッチメント情報要求信号S31を、親機62に入力する。親機62は、入力されたアタッチメント情報要求信号S31を無線信号として子機61に向けて送信する。子機61は、アタッチメント情報要求信号S31を受信すると、上記実施の形態と同様にアタッチメント情報S14を生成して親機62に向けて無線送信する。
【0087】
制御部72は、上記実施の形態と同様に、送信元アタッチメントと自機アタッチメントとが同じであると異同判定部712によって判定されたことを条件として、子機61から受信したアタッチメント情報S14に含まれている制御情報S12に基づいて作業装置3の制御パラメータ(制御情報S19)を更新する。
【0088】
本変形例に係る作業機械1によれば、制御部72は、アタッチメント33が交換されたことが交換検出部74によって検出された場合には、交換後の新たなアタッチメント33に配置されている子機61からアタッチメント情報S14を受信し、当該アタッチメント情報S14に基づいて作業装置3の制御パラメータ(制御情報S19)の更新処理を実行する。これにより、交換後の新たなアタッチメント33に対して最適な駆動制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 作業機械
2 本体部
3 作業装置
31 ブーム
32 アーム
33 アタッチメント
41,42,43 角度センサ
5 傾斜センサ
61 子機
611 慣性センサ
613 記憶部
614 送信機
62 親機
621 受信機
623 転送処理部
7 コントローラ
71 判定部
711 方向特定部
712 異同判定部
72 制御部
74 交換検出部
100 プログラム