IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同メタル工業株式会社の特許一覧 ▶ 大正製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸音装置 図1
  • 特開-吸音装置 図2
  • 特開-吸音装置 図3
  • 特開-吸音装置 図4
  • 特開-吸音装置 図5
  • 特開-吸音装置 図6
  • 特開-吸音装置 図7
  • 特開-吸音装置 図8
  • 特開-吸音装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150417
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】吸音装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20220929BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G10K11/16 150
G10K11/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053003
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 孝允
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 貴則
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA04
5D061AA07
5D061AA09
5D061AA11
5D061AA16
5D061AA22
5D061AA23
5D061AA26
5D061CC04
5D061CC12
(57)【要約】
【課題】手による保持が不要であり、鼻からの音の漏れを低減し、外部へ放出される音声が低減される吸音装置を提供する。
【解決手段】吸音装置10は、カバー部11、共鳴型吸音部12及び多孔質吸音部13を備える。カバー部11は、顔面の口及び鼻を覆う容器状である。共鳴型吸音部12は、カバー部11の顔面側である内側において、入力された音声が共鳴する共鳴空間25を形成する。多孔質吸音部13は、多孔質の材料で形成され、共鳴器型吸音部12の顔面側に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面の口及び鼻を覆う容器状のカバー部と、
前記カバー部の前記顔面側である内側において、入力された音声が共鳴する共鳴空間を形成する共鳴器型吸音部と、
多孔質の材料で形成され、前記共鳴器型吸音部の前記顔面側に設けられている多孔質吸音部と、
を備える吸音装置。
【請求項2】
前記共鳴器型吸音部は、前記カバー部から前記顔面側へ伸び、前記カバー部との間に前記共鳴空間を設定する設定部を有し、
前記多孔質吸音部は、前記設定部を挟んで前記カバー部との間に前記共鳴空間を形成する請求項1記載の吸音装置。
【請求項3】
前記共鳴器型吸音部は、前記カバー部の前記顔面側の面に対向する底部と、前記底部から前記顔面側へ伸びて前記底部との間に前記共鳴空間を設定する設定部を有し、
前記多孔質吸音部は、前記設定部を挟んで前記底部との間に前記共鳴空間を形成する請求項1記載の吸音装置。
【請求項4】
前記共鳴器型吸音部は、
前記カバー部の前記顔面側の面に対向する底部と、前記底部から前記顔面側へ伸びる設定部と、前記設定部を挟んで前記底部との間に前記共鳴空間を形成する蓋部と、前記蓋部の前記顔面側の面と前記共鳴空間側の面とを接続する接続孔部と、
を有する請求項1記載の吸音装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記共鳴空間を複数の共鳴室に区画する壁状である請求項4記載の吸音装置。
【請求項6】
前記共鳴器型吸音部は、前記顔面及び前記カバー部の前記顔面側の面に追従する柔軟な材料で形成されている請求項4又は5記載の吸音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、吸音装置に関し、特に口から発せられる音声を吸収する吸音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、秘密保持の要請や公共の場でのマナー向上などの要請から、例えば会話などによって口から発生される音声の拡散を低減することが求められている。例えば特許文献1に開示されている消音器は、空間を用いた音圧の減衰を図ることにより、口から発せられる音声の拡散の低減を図っている。特許文献1は、顔面の口に近い部分に押し当てる漏斗状の部分と、この漏斗状の部分から音声が導入される消音筒とを備えている。使用者は、漏斗状の部分を顔面の口の周辺に押し当て、これに向けて発声する。これにより、発せられた音声は、漏斗状の部分から消音筒へ導入され、音圧の低減が図られる。
【0003】
しかしながら、特許文献1の場合、使用者は、一方の手で消音器を保持する必要がある。そのため、使用者は、常に一方の手が使用され、両手での作業が困難であるという問題がある。また、特許文献1の場合、漏斗状の部分は顔面において口の周辺を覆うに過ぎない。そのため、鼻から漏れ出す音声を低減することができず、吸音性能の向上が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-244665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、手による保持が不要であり、鼻からの音の漏れを低減し、外部へ放出される音声が低減される吸音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態では、使用者の顔面の口及び鼻は、カバー部によって全体が覆われる。そのため、口だけでなく、鼻からの音の漏れも低減される。したがって、吸音性能が高められ、外部へ放出される音声を低減することができる。また、本実施形態では、カバー部の顔面側である内側に、共鳴型吸音部の共鳴空間が形成されるとともに、この共鳴型吸音部の顔面側に多孔質で形成される多孔質吸音部を備える。つまり、口から発せられた音声及び鼻から漏れる音声を減衰する共鳴型吸音部及び多孔質吸音部は、カバー部の内側に重ねて設けられる。そのため、共鳴型吸音部および多孔質吸音部は、カバー部と一体に構成され、カバー部とともにいわゆるマスクの形状にも形成しやすい。その結果、例えばゴム紐やベルトなどを用いることによって、カバー部と一体になった共鳴型吸音部及び多孔質吸音部は、顔面に容易に装着される。したがって、手による保持が不要となり、使用者は両手を用いた作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による吸音装置の構成を示す分解図であり、吸音装置を顔面側から見た概略的な斜視図
図2】第1実施形態による吸音装置を顔面に装着した状態を示す概略的な斜視図
図3】第1実施形態による吸音装置の共鳴型吸音部を顔面側から見た概略図
図4】第1実施形態による吸音装置の構成を説明するための一部を抜き出した模式的な断面図
図5】第1実施形態による吸音装置の作用を示す概略図であり、周波数と吸音率との関係を示す図
図6】第1実施形態による吸音装置の作用を示す概略図であり、無響室における吸音装置の有無と消音量との関係を示す図
図7】第1実施形態による吸音装置の作用を示す概略図であり、通常の環境下における吸音装置の有無と消音量との関係を示す図
図8】第2実施形態による吸音装置の構成を説明するための一部を抜き出した模式的な断面図
図9】第3実施形態による吸音装置の構成を説明するための一部を抜き出した模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、吸音装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示す第1実施形態による吸音装置10は、カバー部11、共鳴型吸音部12及び多孔質吸音部13を備える。吸音装置10は、図2に示すように使用者の顔面14に装着される。吸音装置10は、例えばベルト15やゴム紐などを用いて、使用者の顔面14に保持される。つまり、吸音装置10は、いわゆる顔面14の口及び鼻の周辺を覆うマスク形状である。
【0009】
図1及び図2に示すようにカバー部11は、吸音装置10の最も外側、つまり顔面14から最も遠い側に設けられる。カバー部11は、顔面14の口及び鼻部分を覆うカップ状に形成されている。カバー部11は、口及び鼻部分を覆うために、例えば正面視において、角部が丸められた三角形の容器状などに形成することが好ましい。このように、カバー部11は、顔面14の口及び鼻部分を覆うとともに、カップ状の形状によって顔面14との間に空間を形成する。カバー部11は、例えばポリエチレンなどの樹脂、紙、金属又は木材など、機能を達成できる任意の材質を用いて形成することができる。吸音装置10は、口から発せられた音声及び鼻から漏れた音声を吸音する。以下、口から発せられた音声及び鼻から漏れた音声は、単に「発声音」という。
【0010】
共鳴型吸音部12は、図1図3及び図4に示すように底部21、設定部22、蓋部23及び接続孔部24を有している。底部21は、図4に示すようにカバー部11の内側つまり顔面14側の面に対向する。設定部22は、底部21の顔面14側の面から顔面14側へ立ち上がっている。つまり、設定部22は、底部21から顔面14側へ伸びている。蓋部23は、設定部22の顔面14側に設けられており、底部21との間に共鳴空間25を形成する。つまり、蓋部23は、底部21との間に設定部22を挟み込んでいる。これにより、底部21と蓋部23との間には、設定部22に対応する距離が確保される。そして、底部21と蓋部23とは、それらの間に設定部22によって距離が確保された共鳴空間25を形成する。接続孔部24は、蓋部23の顔面14側の面と共鳴空間25との間を接続している。つまり、接続孔部24は、蓋部23を板厚方向へ貫いている。
【0011】
設定部22は、図3に示すように底部21の外縁に沿って設けられているとともに、共鳴空間25を複数の共鳴室26に区画している。つまり、設定部22は、底部21から壁状に顔面14側へ立ち上がっており、底部21及び蓋部23とともに接続孔部24を除き閉鎖された共鳴空間25を形成する。そして、この共鳴空間25は、蓋部23を貫く接続孔部24によって蓋部23の顔面14側と接続している。第1実施形態の場合、設定部22は、共鳴空間25を6角形の複数の共鳴室26に区画している。共鳴空間25を6角形の共鳴室26に区画することにより、単位面積あたりに収容される共鳴室26の数を増加することができる。接続孔部24は、各共鳴室26に対応してそれぞれ設けられている。つまり、接続孔部24は、1つの共鳴室26に1つ接続している。
【0012】
共鳴型吸音部12は、例えばシリコーンゴムやポリウレタンなどの弾性を有する材料で形成されている。つまり、共鳴型吸音部12を構成する底部21、設定部22及び蓋部23は、いずれも弾性を有する柔軟な材料によって形成されている。そして、共鳴型吸音部12を構成する底部21及び設定部22は、例えば3Dプリンタを用いることにより、継ぎ目なく一体に形成されている。また、共鳴型吸音部12は、底部21及び設定部22だけでなく、3Dプリンタを用いることにより、蓋部23も一体に形成してもよい。このように、共鳴型吸音部12は、弾性を有する柔軟な材料で形成されている。そのため、共鳴型吸音部12は、共鳴空間25を維持したまま、カップ状のカバー部11の形状にあわせて自由に変形することができる。
【0013】
共鳴型吸音部12は、上記のような構成により、接続孔部24から導入された発声音を減衰する。発声音は、接続孔部24を通して共鳴空間25へ進入する際に、接続孔部24を形成する蓋部23の内壁との間で摩擦を生じる。発声音に基づく空気の振動が蓋部23の内壁と摩擦を生じることにより、発声音のエネルギーは減衰される。これとともに、発声音が接続孔部24よりも広い共鳴空間25へ進入することにより、発声音のエネルギーは共鳴空間25における共鳴によっても減衰される。その結果、発声音は、共鳴型吸音部12において音圧が低減される。また、共鳴型吸音部12で減衰される音の周波数は、共鳴室26の体積に相関する。そのため、発声音に基づいて共鳴室26の体積を調整することにより、使用者の発声音の特性に応じて特定の周波数帯域の発声音の減衰を図ることができる。
【0014】
多孔質吸音部13は、図1及び図4に示すように共鳴型吸音部12の顔面14側に設けられている。多孔質吸音部13は、例えば発泡ポリウレタンなどの発泡材料、又はポリエステルなどの樹脂繊維の不織布などで構成されている。多孔質吸音部13は、上記の例示の他、紙などに加え、樹脂に限らず、金属やセラミックスなどを用いてもよい。このように、多孔質吸音部13は、周知の吸音性を有する多孔質の材料で形成されている。多孔質吸音部13は、共鳴型吸音部12の口に近い側に設けることにより、発声音が共鳴型吸音部12に進入する前に発声音のエネルギーを吸収する。また、共鳴型吸音部12と多孔質吸音部13とは、その吸音機構が異なることから、減衰する音の周波数帯域が異なる。そのため、共鳴型吸音部12と多孔質吸音部13とを組み合わせることにより、発声音はより広い周波数帯域で減衰が図られる。
【0015】
第1実施形態の場合、吸音装置10は、図1及び図4に示すようにインナー部28を備えている。インナー部28は、共鳴型吸音部12と多孔質吸音部13との間に設けられている。インナー部28は、カバー部11との間に共鳴型吸音部12を保持するとともに、顔面14側に多孔質吸音部13を保持する。つまり、インナー部28は、カバー部11の内側において、収容される共鳴型吸音部12及び多孔質吸音部13を保持し、これらの位置を規定する。また、インナー部28は、多孔質吸音部13の形状を保持しつつ、多孔質吸音部13と顔面14との間に適度な距離を確保する。インナー部28は、カバー部11と同様に任意の材料で形成されている。
【0016】
カバー部11及びインナー部28は、呼吸のための空気孔部を有することが好ましい。本実施形態の場合、空気孔部は、インナー部28に設けられ、顔面14との間の空気の通り道を確保する。具体的には、インナー部28は、顔面14の正面視において左右に両端に対応する位置に凹部29を有している。インナー部28は、凹部29に対応する位置で外縁の一部が窪んでいる。この凹部29によって、顔面14とインナー部28との間には呼吸のための空気が流れる通路が形成される。これにより、使用者は、この凹部29によって顔面14との間に形成される空気孔部を通して、容易に呼吸をすることができる。空気孔部は、上記した本実施形態の例に限らず、例えばカバー部11及びインナー部28を貫く構造とすることができる。発声音は、音の特性として、顔面14に対して正面方向へ進行する傾向にあり、顔面14の左右方向へ進行しにくい。そのため、インナー部28の左右両端に凹部29による空気孔部を設けても、吸音装置10の全体としての吸音性能に与える影響は小さい。
【0017】
次に、上記の構成による吸音装置10の性能について説明する。
(吸音率について)
共鳴型吸音部12及び多孔質吸音部13を備える第1実施形態の吸音装置10は、図5に示すように500Hzを超える周波数帯域の広い範囲で高い吸音率を発揮する。吸音率は、一般的な垂直入射吸音率を測定した。図5における実施例1は、多孔質吸音部13としてポリエステル繊維の不織布を適用した例である。また、実施例2は、多孔質吸音部13として発泡ポリウレタンを適用した例である。これら実施例1及び実施例2は、いずれも500Hzを超える周波数帯域で高い吸音率を示す。また、多孔質吸音部13は、材質によって吸音の特性が異なることが分かる。
【0018】
共鳴型吸音部12における周波数ごとの吸音率は、共鳴室26の体積に相関する。そのため、共鳴室26の体積を適切に設定することにより、特定の周波数帯域において高い吸音率を達成することができる。また、共鳴型吸音部12と多孔質吸音部13とは、吸音率の特性つまり吸音率が高くなる周波数に差がある。そこで、例えば素材によって決定される多孔質吸音部13の周波数特性にあわせて共鳴型吸音部12の周波数特性を調整することにより、幅広い周波数帯域で発声音の吸音率を高めることができる。
【0019】
(消音効果について)
図6は、無響室における消音量を示す結果である。この試験では、各周波数帯域において、吸音装置10を装着しない状態での発声音の音圧(dB)と、吸音装置10を装着した状態での漏れ音の音圧(dB)とを比較した。これら吸音装置10の装着の有無による音圧の差は、消音量とする。この結果、吸音装置10を装着した場合、各周波数帯域において、音圧は約10~20dB低下することが分かった。
【0020】
図7は、図示しない空気調和機が作動する通常の環境下において、吸音装置10を装着しない状態での発声音の音圧(dB)と、吸音装置10を装着した状態での漏れ音の音圧(dB)とを騒音計を用いて比較した。設定した環境は、空気調和機の作動によって、常時、46dBの音が測定される環境であった。この結果、吸音装置10を装着した場合、音圧は平均12.7dB低下することが確認できた。
【0021】
吸音装置10を装着した状態で測定された平均値である50dBは、例えば市街地の深夜、図書館の中、しとしとと降る雨の音などと同様の音量である。一方、吸音装置10を装着した状態で測定される平均値である63dBは、一般的な会話の音量である。これにより、吸音装置10を装着した場合、会話が気にならない程度まで十分に吸音されることが分かる。
【0022】
以上説明したように、第1実施形態では、使用者の顔面14の口及び鼻は、カバー部11によって全体が覆われる。そのため、口だけでなく、鼻からの音の漏れも低減される。したがって、吸音性能が高められ、外部へ放出される音声を低減することができる。
【0023】
また、第1実施形態では、カバー部11の顔面14側である内側に、共鳴型吸音部12の共鳴空間25が形成されるとともに、この共鳴型吸音部12の顔面14側に多孔質で形成される多孔質吸音部13を備える。つまり、口から発せられた音声及び鼻から漏れる音声を減衰する共鳴型吸音部12及び多孔質吸音部13は、カバー部11の内側に重ねて設けられる。そのため、共鳴型吸音部12および多孔質吸音部13は、カバー部11と一体に構成しやすく、カバー部11とともにいわゆるマスクの形状にも形成しやすい。その結果、例えばベルト15やゴム紐などを用いることによって、カバー部11と一体になった共鳴型吸音部12及び多孔質吸音部13は、顔面14に容易に装着される。したがって、手による保持が不要となり、使用者は両手を用いた作業を容易にすることができる。
【0024】
(第2実施形態)
図8に第2実施形態による吸音装置10を示す。
第2実施形態の吸音装置10は、第1実施形態と比較して構成が簡略化されている。
第2実施形態の場合、共鳴型吸音部30は、カバー部11と一体に構成されている。具体的には、共鳴型吸音部30は、カバー部11の顔面14側の面つまり内側の面から顔面14側へ伸びる設定部31を有している。設定部31は、共鳴空間25に共鳴室26を区画する壁部であってもよく、単なる柱状であってもよい。例えば、設定部31は、少なくとも共鳴空間25を定義する周囲部分を壁状に形成し、その内側を共鳴空間25として設定する。また、設定部31は、第1実施形態と同様に共鳴空間25を複数の共鳴室26に区画する壁部であってもよい。これにより、カバー部11の顔面14側には、顔面14側が開放された共鳴空間25が形成される。
【0025】
吸音装置10は、共鳴型吸音部30の顔面14側に多孔質吸音部13を備えている。多孔質吸音部は13、共鳴空間25の顔面14側を覆うように設定部31の顔面14側に設けられている。これにより、カバー部11と多孔質吸音部13との間には、設定部31によって距離が確保された共鳴空間25が形成される。多孔質吸音部13は、多孔質であることから、図示しない微細な孔を有している。この孔は、多孔質吸音部13の顔面14側と共鳴空間25との間を接続している。つまり、多孔質吸音部13の孔は、第1実施形態における接続孔部24に相当する。これにより、顔面14から共鳴空間25までの間には、多孔質吸音部13によって形成される孔が位置する。そのため、発声音は、多孔質吸音部13を通過する際に、多孔質吸音部13に特有の吸音効果によって減衰されるとともに、共鳴空間25へ進入する際の摩擦、及び共鳴空間25における共鳴によってエネルギーが減衰される。
【0026】
第2実施形態では、共鳴型吸音部30の構造が簡略化される。そして、多孔質吸音部13を形成する材料及び共鳴型吸音部30の共鳴空間25及び共鳴室26の体積などを設定することにより、所望の周波数帯域における発声音の減衰が図られる。したがって、より薄型かつ軽量で吸音性能を確保することができる。
【0027】
(第3実施形態)
図9に第3実施形態による吸音装置を示す。
第3実施形態の吸音装置10は、第1実施形態と比較して構成が簡略化されている。
第3実施形態の場合、共鳴型吸音部40は、第1実施形態の蓋部23に相当する部材を有していない。具体的には、共鳴型吸音部40は、底部41及び設定部42を有している。これら底部41及び設定部42は、第1実施形態と同様に3Dプリンタなどによって一体に形成することが好ましい。これにより、共鳴型吸音部40は、底部41及び設定部42で区画され、顔面14側が開放された共鳴空間25が形成される。共鳴空間25は、設定部42によって複数の共鳴室26に区画してもよい。
【0028】
吸音装置10は、共鳴型吸音部40の顔面14側に多孔質吸音部13を備えている。多孔質吸音部13は、共鳴空間25の顔面14側を覆うように設定部42の顔面14側に設けられている。これにより、底部41と多孔質吸音部13との間には、設定部42によって距離が確保された共鳴空間25が形成される。多孔質吸音部13は、第2実施形態と同様に接続孔部24に相当する微細な孔を有している。これにより、顔面14から共鳴空間25までの間には、多孔質吸音部13によって形成される孔が位置する。そのため、発声音は、多孔質吸音部13を通過する際に、多孔質吸音部13に特有の吸音効果によって減衰されるとともに、共鳴空間25へ進入する際の摩擦、及び共鳴空間25における共鳴によってエネルギーが減衰される。
【0029】
第3実施形態では、共鳴型吸音部40の構造が簡略化される。そして、多孔質吸音部13を形成する材料及び共鳴型吸音部40の共鳴空間25の体積などを設定することにより、所望の周波数帯域における発声音の減衰が図られる。また、第3実施形態では、共鳴型吸音部40に底部41及び設定部42を設けることにより、共鳴空間25の精度が向上する。したがって、より薄型かつ軽量で構成しつつ、吸音性能を確保することができる。
【0030】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
例えば、上述の複数の実施形態において、カバー部11の内側に有線又は無線で通信可能なマイクなどを設けてもよい。マイクで集音された発声音は、例えば携帯端末などへ送信される。これにより、吸音装置10による発声音の漏れを低減しつつ、マイクを通して会話を実施することができる。この場合、図示しないマイクは、カバー部11の外側に設けてもよく、吸音装置10において音の入口側つまり吸音装置10の顔面14に近い側、吸音装置10において音の出口側つまり吸音装置10のカバー部11に近い側など、音声を取得可能な位置であればいずれの位置に設けてもよい。また、吸音装置10は、顔面14に触れることから、衛生面を考慮して、カバー部11、共鳴型吸音部12、多孔質吸音部13及びインナー部28は、それぞれ分解することができ、洗浄可能である。この場合、カバー部11、共鳴型吸音部12、多孔質吸音部13及びインナー部28は、これら全て又は一部を例えば光触媒や金属イオンなどを用いて抗菌処理を施してもよい。
【符号の説明】
【0031】
図面中、10は吸音装置、11はカバー部、12、30、40は共鳴型吸音部、13は多孔質吸音部、21、41は底部、22、31、42は設定部、23は蓋部、24は接続孔部、25は共鳴空間、26は共鳴室を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9