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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150487
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 33/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
D05B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053112
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 典男
(72)【発明者】
【氏名】大橋 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 優
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CC04
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE03
3B150CE24
3B150CE27
3B150EB03
3B150LA40
3B150LB01
3B150NA34
3B150NB09
3B150NC03
3B150NC18
3B150QA04
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】作業者の作業負担の軽減を図る。
【解決手段】被縫製物を取り上げて搬送する搬送装置30において、被縫製物Pを保持する複数の保持ヘッド90と、被縫製物Pの形状を含む情報に基づいて複数の保持ヘッド90の配置を可変させる可変機構81とを備えている。
可変機構81は、例えば、二次元平面上でモータにより複数の保持ヘッド90をパーツPの形状に応じた配置に移動することで、各種の形状のパーツPの保持を可能とする。このため、パーツPを保持する構造を交換する必要がなくなる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物を取り上げて搬送する搬送装置において、
前記被縫製物を保持する複数の保持ヘッドと、
前記被縫製物の形状を含む情報に基づいて複数の前記保持ヘッドの配置を可変させる可変機構とを備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
複数の前記保持ヘッドが同一の二次元平面上に配置され、
前記可変機構は、前記二次元平面に沿ったX軸とY軸とからなる二軸方向に複数の前記保持ヘッドを移動させることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記可変機構は、
X軸に沿って相対的に移動可能な一対の前記保持ヘッドを二組保持し、
これら二組の前記保持ヘッドをY軸に沿って相対的に移動可能に保持することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
二組の内の一方の組の前記保持ヘッドについて、対をなす一方の前記保持ヘッドと他方の前記保持ヘッドとを個別にX軸に沿って移動させる二つの駆動源を備えることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送装置が、複数の前記保持ヘッドを、前記二次元平面に対して垂直な軸回りに旋回させて角度調節を行う角度調節機構を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記保持ヘッドは、
前記被縫製物を上方に引き寄せる引き寄せノズルと、
前記被縫製物を把持する把持機構とを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記引き寄せノズルが前記被縫製物を引き寄せてから前記把持機構が把持するように前記保持ヘッドを制御する保持制御部を備えることを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記引き寄せノズルの空気流量調整により前記被縫製物の引き寄せ力を調整可能とすることを特徴とする請求項6又は7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記保持ヘッドは、前記把持機構が把持した前記被縫製物の厚さを検知する検知部を有し、
前記検知部が検知した前記被縫製物の厚さから前記被縫製物の把持の成否を判定する判定処理部を備えることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製材料となるパーツを取り上げて搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の縫製システムは、所定の供給箇所に配置されたパーツを、先端に保持装置を有するアーム型の搬送装置で保持し、縫製を行うミシンに供給していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-024033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の搬送装置は、保持装置が平面上に規定の配置で固定された複数の吸着部でパーツの吸着を行う構造である。このため、パーツを変更する場合には、新しいパーツに適した配置で吸着部が設けられた別の保持装置に交換する必要があり、作業負担が大きくなっていた。
【0005】
本発明は、作業者の作業負担の軽減を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、搬送装置において、
被縫製物を取り上げて搬送する搬送装置において、
前記被縫製物を保持する複数の保持ヘッドと、
前記被縫製物の形状を含む情報に基づいて複数の前記保持ヘッドの配置を可変させる可変機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において、
複数の前記保持ヘッドが同一の二次元平面上に配置され、
前記可変機構は、前記二次元平面に沿ったX軸とY軸とからなる二軸方向に複数の前記保持ヘッドを移動させることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の搬送装置において、
前記可変機構は、
X軸に沿って相対的に移動可能な一対の前記保持ヘッドを二組保持し、
これら二組の前記保持ヘッドをY軸に沿って相対的に移動可能に保持することを特徴と
する。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の搬送装置において、
二組の内の一方の組の前記保持ヘッドについて、対をなす一方の前記保持ヘッドと他方の前記保持ヘッドとを個別にX軸に沿って移動させる二つの駆動源を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送装置が、複数の前記保持ヘッドを、前記二次元平面に対して垂直な軸回りに旋回させて角度調節を行う角度調節機構を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記保持ヘッドは、
前記被縫製物を上方に引き寄せる引き寄せノズルと、
前記被縫製物を把持する把持機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の搬送装置において、
前記引き寄せノズルが前記被縫製物を引き寄せてから前記把持機構が把持するように前記保持ヘッドを制御する保持制御部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7に記載の搬送装置において、
前記引き寄せノズルの空気流量調整により前記被縫製物の引き寄せ力を調整可能とすることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項6から8のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記保持ヘッドは、前記把持機構が把持した前記被縫製物の厚さを検知する検知部を有し、
前記検知部が検知した前記被縫製物の厚さから前記被縫製物の把持の成否を判定する判定処理部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、搬送装置が被縫製物の形状を含む情報に基づいて複数の保持ヘッドの配置を可変させる可変機構を備えているので、パーツの変更により大がかりな部品交換作業が不要となり、作業者の作業負担の軽減を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】発明の実施形態である縫製システムの全体構成を示す斜視図である。
図2】縫製システムの平面図である。
図3】裁断が行われたシート材料の平面図である。
図4】テンプレートの平面図である。
図5】テンプレートの側面図である。
図6】先端ツールの平面図である。
図7】一部の図示を省略した先端ツールの平面図である。
図8】ピックアップ装置の制御構成を示す概略ブロック図である。
図9】コントローラが等脚台形のパーツの四隅に保持ヘッドを個別に位置決めする場合の説明図である。
図10】平行四辺形のパーツに保持ヘッドを個別に位置決めする場合の説明図である。
図11】縫製システムの装置間で傾斜による誤差を生じた状態を示す概略平面図である。
図12】保持ヘッドによるパーツの取り上げ動作を示す側面図である。
図13図12に続く保持ヘッドによるパーツの取り上げ動作を示す側面図である。
図14】引き寄せチャックの引き寄せ力を調節可能とする回路構成を示す構成図である。
図15】コントローラにより強弱二段階の引き寄せ力の切り替えの判断を行うフローチャートである。
図16】コントローラが行うピックアップ装置の搬送動作における動作制御を示すフローチャートである。
図17】ピックアップ動作のタイミングチャートである。
図18】反転装置の平面図である。
図19】移送機構の平面図である。
図20】縫製システムの各構成の各種データ、各種指令の流れを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[縫製システムの全体構成]
以下、本発明の実施の形態である縫製システム100について図面に基づいて説明する。図1は縫製システム100の全体構成を示す斜視図、図2は平面図である。
縫製システム100は、裁断装置20により裁断処理されたシート材料Sから縫製が行われる被縫製物としてのパーツPを取り上げて縫製用のテンプレート70に搬送する搬送装置30と、テンプレート70を保持してパーツPに対して縫製を行うミシン60と、上記各構成の連携を図る中継端末110(図20参照)とを備えている。
裁断装置20、搬送装置30及びミシン60は、水平方向に一列に並んで配置されており、当該並び方向をY軸方向、水平且つY軸方向に直交する方向をX軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向とする。
【0018】
なお、パーツPは、サイズや形状ごとに区別して説明する必要がある場合にはP1,P2,P3,…のように個別の符号を付するが(図3参照)、特に区別する必要がない場合には、共通する符号Pを使用する。
また、本実施形態の縫製システム100では、上着のポケットの開口部に縫い付けられるフラップ布の材料となるペアとなるパーツP同士を縫い合わせる場合を例示するが、これに限らず、裁断後に被縫製物の縫製を行うあらゆる種類の縫製作業を行うことが可能である。
【0019】
[裁断装置]
裁断装置20は、図1及び図2に示すように、裁断が行われるシート材料Sを載置する裁断ステージ21と、裁断処理が行われたシート材料SからパーツPを取り上げる作業が行われる作業ステージ22と、裁断を行うメスを搭載した裁断ヘッド23と、裁断ヘッド23をX-Y平面に沿って任意に移動させる移動機構24と、裁断装置20の各部を制御する制御部25(図20参照)とを備えている。
【0020】
裁断ステージ21と作業ステージ22とは、いずれも上面が平坦であって互いに同じ高さに設定されている。
そして、裁断ステージ21の上面と作業ステージ22の上面とは、ベルトコンベア機構の搬送ベルトで構成されており、いずれも、上面に載置されたシート材料SをY軸方向に沿って搬送することができる。これにより、裁断ステージ21の上面のベルトと作業ステージ22の上面のベルトとを同じ速度で駆動させることにより、裁断ステージ21の上面に載置されたシート材料Sを裁断ステージ21から作業ステージ22に受け渡すように搬送することが可能である。
【0021】
裁断ヘッド23は、図示しないメスを下方に向けた状態で支持しており、その移動方向に沿ってシート材料Sを裁断することができる。
移動機構24は、裁断ヘッド23をX軸方向に沿って移動可能に支持するレール241と、レール241上の裁断ヘッド23のX軸方向の移動駆動源となる図示しないX軸モータと、裁断ヘッド23のY軸方向の移動駆動源となる図示しないY軸モータとを備えている。
【0022】
X軸モータは、レール241に内蔵された、例えば、ボールネジ機構やベルト機構等の直動動作機構を介してヘッド23にX軸方向に沿った移動動作を付与する。
Y軸モータは、裁断ステージ21に内蔵された、例えば、ボールネジ機構やベルト機構等の直動動作機構を介してレール241にY軸方向に沿った移動動作を付与する。
【0023】
裁断装置20の制御部25は、外部のCAD(computer-aided design)システム200からシート材料Sに対して形成すべき複数のパーツPの配置、サイズ、形状、向き等の情報が含まれた裁断データを取得し、それを移動機構24の制御のための裁断制御情報に変換して当該移動機構24の動作制御を実行する(図20参照)。
また、裁断装置20の制御部25は、通信ケーブルを介して中継端末110に接続されており、取得した裁断データに含まれるシート材料Sに対して形成すべき複数のパーツPの配置、サイズ、形状、向き等を含むパーツ情報(パーツを特定する情報)を中継端末110に送信する。
また、前述した裁断ステージ21と作業ステージ22のそれぞれのベルトコンベア機構の駆動源となるモータは、いずれもエンコーダによりその動作量が検出され、制御部25に入力している。
【0024】
[ミシン]
ミシン60は、いわゆる電子サイクル縫いミシンであり、図1及び図2に示すように、縫い針の上下動により縫製を行う本体部61と、前述したテンプレート70を保持してX-Y平面に沿って任意に移動位置決めする移動機構62と、作業台63と、ミシン60を制御するコントローラ64(図20参照)とを備えている。
本体部61は、縫い針の上下動機構と、釜機構等の周知のミシンが有する構成と同一である。
作業台63は、上面がX-Y平面に沿って水平となっており、上面においてパーツPの縫製作業が行われる。
【0025】
移動機構62は、テンプレート70を着脱可能に保持する保持部と、保持部のX軸方向の移動駆動源となるX軸モータと、保持部のY軸方向の移動駆動源となるY軸モータとを備えている。
X軸モータは、例えば、ボールネジ機構やベルト機構等の直動動作機構を介して保持部及びテンプレート70にX軸方向に沿った移動動作を付与する。
Y軸モータは、例えば、ボールネジ機構やベルト機構等の直動動作機構を介して保持部及びテンプレート70にY軸方向に沿った移動動作を付与する。
保持部は、エアシリンダやソレノイド等のアクチュエータにより進退可能な連結ピンをテンプレート70に設けられた連結孔に挿抜して、テンプレート70の着脱を可能とする。
【0026】
コントローラ64は、複数種類のテンプレート70に対応する複数の縫製パターンデータを記憶しており、当該縫製パターンデータに従って移動機構62の動作制御を実行する。
また、作業台63の角部には、後述するテンプレート70のICタグ73に対してデータの読み取り及び書き込みを行う記録部としてのタグリーダーライター65(図19参照)が設けられている。
【0027】
[シート材料及びテンプレート]
シート材料Sは、前述したように、CADデータに基づく裁断制御情報に従って裁断が行われる。図3は、裁断が行われたシート材料Sの平面図である。
ここでは、複数のパーツP1~P12が一枚のシート材料Sから切り出される場合を例示する。
パーツP1とP2とは対をなしており、これらは互いに貼り合わせる縫製が行われる。また、パーツP3とP4と、パーツP5とP6についても同様である。
また、パーツP7~P12は、パーツP1~P6と同様の関係にあり、なおかつ、パーツP1~P6はLサイズ(大型サイズ)、パーツP7~P12はSサイズ(小型サイズ)にサイズ設定されている。
各パーツP1~P12は、シート材料Sに対する配置が全てCADデータによって定められている。
【0028】
図4はテンプレート70の平面図、図5は側面図である。
テンプレート70は、被縫製物であるパーツPが載置される下板71と、当該下板71に対して起伏回動可能に支持されている押さえ板72とを備えており、押さえ板72が倒れて下板71と平行になると、パーツPを挟持して保持する構造となっている。また、パーツPの保持状態において、下板71と押さえ板72の双方には、重合する配置で縫製パターンに応じた開口部711~713(721~723)が形成されており、縫製の際に針落ち位置を避けてパーツPを押さえることができるようになっている。
【0029】
テンプレート70は、複数種類の縫製パターンデータに個別に対応して複数種類用意されている。
ここでは、LサイズのパーツP1とP2、パーツP3とP4、パーツP5とP6を規定の位置に配置して互いに縫着する縫製パターンデータと、SサイズのパーツP7とP8、パーツP9とP10、パーツP11とP12を規定の位置に配置して互いに縫着する縫製パターンデータとにそれぞれ対応する二枚のテンプレート70を使用する場合を例示する。
なお、パーツP1~P6に対応するテンプレート70とパーツP7~P12に対応するテンプレート70とは、寸法が異なるが形状はほぼ同一なので、図4では、図示を共通化している。
なお、このように、テンプレート70は、縫製パターンデータに個別に対応して設計されているので、図4に示すように、当該テンプレート70が対応する縫製パターンデータを特定するための識別IDやパターンデータナンバー等を示すデータ(縫製パターンを特定する情報)が記憶されたRFID(radio frequency identifier)のような記憶部としてのICタグ73が装備されている。
【0030】
搬送装置30は、後述する作業位置D1に配置されたテンプレート70に対して、下板71の開口部711に位置決めしてLサイズのパーツP1とP2(又はP7とP8)とを重ねて載置し、開口部712に位置決めしてLサイズのパーツP3とP4(又はP9とP10)とを重ねて載置し、開口部713に位置決めしてLサイズのパーツP5とP6(又はP11とP12)とを重ねて載置する。
【0031】
[搬送装置]
搬送装置30は、裁断装置20からパーツPを取り上げるピックアップ装置40と、パーツPの表裏を反転する反転装置35と、各テンプレート70を移送する移送機構50と、搬送装置30の各構成を制御するコントローラ31とを備えている(図20参照)。
【0032】
[搬送装置:ピックアップ装置]
ピックアップ装置40は、図2に示すように、Y軸方向について、裁断装置20と移送機構50との間に配置されている。
ピックアップ装置40は、図1に示すように、土台となるベース41と、ベース41にZ軸回りに回動可能に支持された第一アーム42と、第一アーム42によりZ軸回りに回動可能に支持された第二アーム43と、第二アーム43によりZ軸方向に沿って昇降可能且つZ軸回りに旋回可能に支持された先端ツール80とを備えるスカラ型ロボットの構造を有している。
また、ピックアップ装置40は、後述する図8に示すように、第一アーム42を回動させる第1水平移動モータ441と、第二アーム43を回動させる第2水平移動モータ442と、先端ツール80をZ軸方向に沿って昇降させる垂直移動モータ443と、先端ツール80をZ軸回りに旋回させる角度調節機構としての旋回モータ444とを備えている。これらのモータ441~444は、コントローラ31により動作制御が行われる。
なお、ピックアップ装置40は、スカラ型に限定されず、多関節型やXYZ直動型等の他の形態のロボットであっても良い。
【0033】
ピックアップ装置40は、図2に示すように、上記構成により平面視で可動領域Rの範囲内において任意の位置及び任意の高さで先端ツール80を位置決めし、Z軸回りに任意の角度に向けることができる。
【0034】
[搬送装置:先端ツール]
図6は先端ツール80の平面図、図7は一部の図示を省略した先端ツール80の平面図、図8はピックアップ装置40の制御構成を示す概略ブロック図である。なお、図8では、複数有する保持ヘッド90の図示を一つのみに省略している。
前述したように、ピックアップ装置40は、先端ツール80をZ軸回りに任意の向きに回動可能に支持している。つまり、先端ツール80の向きは、動作によって変動する。従って、以下に説明する先端ツール80におけるX軸方向及びY軸方向は、動作の過程で、縫製システム100全体におけるX軸方向及びY軸方向と一致しない場合も生じるが、以下の先端ツール80の各部の説明については、X軸方向及びY軸方向が図6及び図7の向きであることを前提として説明する。
【0035】
図6及び図7に示すように、先端ツール80は、パーツPを保持する四つの保持ヘッド90と、当該四つの保持ヘッド90を同一の二次元平面(X-Y平面)上に配置されるように支持する可変機構81とを備えている。
可変機構81は、X軸方向に沿って相対的に接離移動可能に支持した二つの保持ヘッド90の組を二組保持し、一方の組の保持ヘッド90(図6における左側の二つの保持ヘッド90)と他方の組の保持ヘッド90(図6における右側の二つの保持ヘッド90)とをY軸方向に沿って相対的に接離移動可能に支持している。
【0036】
なお、一方の組の二つの保持ヘッド90の中心を通過するX軸方向に沿った直線を「先端ツール80のx1軸」、他方の組の二つの保持ヘッド90の中心を通過するX軸方向に沿った直線を「先端ツール80のx2軸」とする。
また、後述する先端ツール80の中心Cを通過するY軸方向に沿った直線を「先端ツール80のy軸」とする。
可変機構81は、上記の支持構造により、組となる二つの保持ヘッド90が常にx1軸又はx2軸上に並ぶという条件の下で、四つの保持ヘッド90を同一のX-Y平面内で任意に位置決め可能に支持する。
【0037】
具体的には、可変機構81は、X軸方向に沿って長尺な一対の第1支持部材821と、これら第1支持部材821をX軸方向に沿って移動可能に支持する第1ガイド枠822とを有する。
第1支持部材821の一方と他方とは、それぞれX軸方向について互いに逆方向に延出され、それぞれの第1支持部材821の延出端部に保持ヘッド90が取り付けられている。
そして、これらの第1支持部材821は、保持ヘッド90の支持端部とは逆側の端部における互いの対向面側にラック歯823が形成されている。さらに、これらのラック歯823は、第1ガイド枠822内でZ軸回りに回転可能に設けられたピニオン歯車824の両側において各々が噛合している。
ピニオン歯車824は、第1ガイド枠822に設けられた駆動源としての第1モータ825の出力軸に接続されている。そして、第1モータ825は、ピックアップ装置40のコントローラ31が備えるプロセッサー(以下、単に、コントローラ31という)によって回転動作が制御される。
これにより、一対の第1支持部材821に支持された二つの保持ヘッド90は、いずれも第1ガイド枠822から等距離を維持しつつ、X軸方向に沿って任意に接離移動することができる。
なお、ピニオン歯車824と第1モータ825の間には、減速装置を設けてもよい。
【0038】
また、可変機構81は、X軸方向に沿って長尺な一対の第2支持部材831と、これら第2支持部材831をX軸方向に沿って移動可能に支持する第2ガイド枠832とを有する。
第2支持部材831の一方と他方とは、それぞれX軸方向について互いに逆方向に延出され、それぞれの第2支持部材831の延出端部に保持ヘッド90が取り付けられている。
そして、これらの第2支持部材831は、保持ヘッド90の支持端部とは逆側の端部における互いの対向面側にラック歯833が形成されている。さらに、これらのラック歯833は、第2ガイド枠832内でZ軸回りに回転可能に設けられた二つのピニオン歯車834に個別に噛合している。
また、それぞれのピニオン歯車834は、第2ガイド枠832に設けられた駆動源としての二つの第2モータ835の出力軸に各々が接続されている。そして、これら二つの第2モータ835も、ピックアップ装置40のコントローラ31によって回転動作が個別に制御される。
これにより、一対の第2支持部材831に支持された二つの保持ヘッド90は、各々が第2ガイド枠832から任意の距離で、X軸方向に沿って別々に移動することができる。
なお、ピニオン歯車834と第2モータ835の間にも減速装置を設けてもよい。
【0039】
さらに、可変機構81は、Y軸方向に沿って長尺な一対の第3支持部材841と、これら第3支持部材841をY軸方向に沿って移動可能に支持する第3ガイド枠842とを有する。
第3支持部材841の一方と他方とは、それぞれY軸方向について互いに逆方向に延出され、それぞれの第3支持部材841の延出端部には前述した第1ガイド枠822と第2ガイド枠832が取り付けられている。
そして、これらの第3支持部材841は、第1ガイド枠822又は第2ガイド枠832の支持端部とは逆側の端部における互いの対向面側にラック歯843が形成されている。さらに、これらのラック歯843は、第3ガイド枠842内でZ軸回りに回転可能に設けられたピニオン歯車844の両側において各々が噛合している。
また、ピニオン歯車844は、第3ガイド枠842に設けられた駆動源としての第3モータ845の出力軸に接続されている。そして、第3モータ845は、ピックアップ装置40のコントローラ31によって回転動作が制御される。
これにより、一対の第3支持部材841に支持された第1ガイド枠822及び第2ガイド枠832は、いずれも第3ガイド枠842から等距離を維持しつつ、Y軸方向に沿って任意に接離移動することができる。
つまり、x1軸側の一対の保持ヘッド90とx2軸側の一対の保持ヘッド90とが、互いにY軸方向に沿って任意に接離移動することができる。
なお、ピニオン歯車844と第3モータ845の間にも減速装置を設けてもよい。
【0040】
先端ツール80は、図6に示すように、第3モータ845の出力軸の中心(ピニオン歯車844の中心)が当該先端ツール80の中心Cに設定されている。
そして、ピックアップ装置40の第二アーム43は、先端ツール80を中心Cで支持すると共に当該中心Cを通過するZ軸回りに旋回可能に支持する。また、この中心Cは、前述した先端ツール80のy軸上に位置している。
【0041】
[搬送装置:先端ツールの保持ヘッドの位置合わせ]
図9はコントローラ31による動作制御に基づいて、等脚台形のパーツP1の四隅に保持ヘッド90を個別に位置決めする場合の説明図、図10は平行四辺形のパーツP3に保持ヘッド90を個別に位置決めする場合の説明図である。
搬送装置30のコントローラ31は、中継端末110からパーツ情報を取得することができ、これにより、各パーツPをピックアップする際の目的位置及び当該パーツPの形状、向き、寸法からパーツPの外縁部や四隅の頂点位置を示す位置座標を算出し、取得する。そして、先端ツール80が保持する各保持ヘッド90の位置をパーツPの形状に応じて適正な位置となるように、以下の動作制御を実行する。
【0042】
例えば、図9に示す等脚台形のパーツP1をピックアップする場合には、まず、パーツP1の中心Cpを求める。パーツP1の中心Cpは、重心演算で求めても良いし、パーツP1の外接矩形reを求めて、その中心から求めても良い。
そして、x1軸とx2軸がパーツP1の長手方向に平行となる向きで先端ツール80の中心CとパーツP1の中心Cpとが一致するように先端ツール80を位置決めする。
これにより、先端ツール80の向きと中心Cとy軸の位置とが適正化される。
さらに、第3モータ845の駆動により、パーツP1の台形における上底と下底の幾分内側となるように、先端ツール80のx1軸とx2軸との位置合わせを行う。
次に、第1モータ825の駆動により、パーツP1の上底の両端部よりも幾分内側となるように、x1軸の両側の保持ヘッド90の位置合わせを行う。
次に、二つの第2モータ835の駆動により、パーツP1の下底の両端部よりも幾分内側となるように、x2軸の両側の保持ヘッド90の位置合わせを行う。
これにより、台形のパーツP1の四つの頂点近傍の保持位置に各保持ヘッド90の位置合わせを行うことができる。
【0043】
また、図10に示す平行四辺形のパーツP3をピックアップする場合には、まず、パーツP3の中心Cpを求める。パーツP3の中心Cpも、重心演算で求めても良いし、パーツP3の外接矩形reを求めて、その中心から求めても良い。
そして、x1軸とx2軸がパーツP1の長手方向に平行となる向きで先端ツール80の中心CとパーツP1の中心Cpとが一致するように先端ツール80を位置決めする。これにより、先端ツール80の向きが適正化される。
さらに、平行四辺形のパーツP3の場合、当該パーツP3の長手方向について、先端ツール80のy軸の位置を補正する。即ち、パーツP3の平行四辺形のx1軸側の辺(図10における左側の辺)の二等分線となる位置に先端ツール80のy軸を移動させる(図10における上側に移動)。
これにより、先端ツール80の向きと中心Cとy軸の位置とが適正化される。
さらに、第3モータ845の駆動により、パーツP3の平行四辺形における平行な二辺の幾分内側となるように、先端ツール80のx1軸とx2軸との位置合わせを行う。
次に、第1モータ825の駆動により、パーツP3の平行四辺形におけるx1軸側の辺の両端部よりも幾分内側となるように、x1軸の両側の保持ヘッド90の位置合わせを行う。
次に、二つの第2モータ835の駆動により、パーツP3の平行四辺形におけるx2軸側の辺の両端部よりも幾分内側となるように、x2軸の両側の保持ヘッド90の位置合わせを個別に行う。この場合、一方の第2モータ835の動作量と他方の第2モータ835の動作量は異なっており、二つの保持ヘッド90について、個別に位置合わせ動作が行われる。
これにより、平行四辺形のパーツP3の四つの頂点近傍の保持位置に各保持ヘッド90の位置合わせを行うことができる。
【0044】
なお、上記パーツPの形状は一例であり、これらに限定されるものではない。パーツPが、当該パーツPの短手方向に沿った対称軸について対称となる形状の場合には、図9の例とほぼ同様の動作により各保持ヘッド90の位置を適正に調整することができる。また、パーツPが、平行となる一対の辺を有する形状の場合には、図10の例とほぼ同様の動作により各保持ヘッド90の位置を適正に調整することができる。また、パーツPの角が丸みを帯びている形状の場合には、角の近傍に位置合わせする際に各保持ヘッド90の位置を幾分内側に補正すれば良い。その他、多彩な形状のパーツPについて、複数の保持ヘッド90の位置を調整することが可能である。
【0045】
[搬送装置:先端ツールの旋回補正]
前述したように、ピックアップ装置40は、コントローラ31が取得したパーツ情報に基づいてパーツPが設定通り正確に配置されていることを前提として、先端ツール80を位置決めし、パーツPのピックアップを行う。
しかしながら、縫製システム100は、図11に示すように各装置を設置する際に、設置誤差、組み付け誤差が生じたり、床面の平面度や水平度が低かったりして平面内で傾斜等の誤差を生じ得る。その場合、ピックアップ装置40は、パーツPをピックアップ出来なかったり、パーツPの向きが異なる状態で下流側に供給したりするおそれがある。
【0046】
そのような場合、図11に示す装置間の傾斜角度θを予め測定したり、ピックアップ装置40により実動作で試しながらティーチングを実行して傾斜角度θを求めることができる。
そして、コントローラ31に接続された入力インターフェイスからなる入力部32から求めた角度θを補正角度θとして入力する。
コントローラ31は、この補正角度θの情報をパーツ情報に書き加え、中継端末110に送信する。
また、コントローラ31は、このような補正角度θが記録されたパーツ情報に基づくピックアップを行う場合には、ピックアップ直前に旋回モータ444を制御して、先端ツール80を補正角度θだけ旋回させて補正を行う補正制御を実行する。
【0047】
[搬送装置:保持ヘッド]
図12及び図13は保持ヘッド90によるパーツPの取り上げ動作を示す側面図である。
前述したように、ピックアップ装置40は、先端ツール80をZ軸回りに任意の向きに回動可能に支持している。つまり、保持ヘッド90の向きは、動作によって変動する。従って、以下に説明する保持ヘッド90におけるX軸方向及びY軸方向は、動作の過程で、縫製システム100全体におけるX軸方向及びY軸方向と一致しない場合も生じるが、以下の保持ヘッド90の各部の説明については、X軸方向及びY軸方向が図12及び図13に示す向きであることを前提として説明する。
【0048】
以下の説明では、後述する爪部材94の平坦な底面に平行であって当該爪部材94の進退移動方向をX軸方向、爪部材94の平坦な底面に平行であってX軸方向に直交する方向をY軸方向、X軸方向とY軸方向とに直交する方向をZ軸方向とする。
【0049】
保持ヘッド90は、全体を支持するベース体91と、ベース体91によりZ軸に沿って昇降可能に支持された水平シリンダ92と、水平シリンダ92によりX軸方向に沿って水平に往復動作が付与される上下シリンダ93と、上下シリンダ93によりZ軸に沿って上下動を行う爪部材94と、水平シリンダ92の下部に設けられた引き寄せノズルとしての引き寄せチャック95とを備えている。上記水平シリンダ92と上下シリンダ93と爪部材94とは、パーツPを把持する把持機構を構成している。
【0050】
ベース体91は、前述した先端ツール80の第1支持部材821又は第2支持部材831の延出端部に固定支持されている。
このベース体91の下部には、Z軸方向に沿ってスライド軸911が取り付けられており、水平シリンダ92を上下に滑動可能に支持している。
スライド軸911には、コイルバネからなる押圧バネ912が挿通されており、ベース体91に対して水平シリンダ92を常に下方に押圧して、可動範囲の最低位置を維持している。このスライド軸911及び押圧バネ912は、水平シリンダ92の下部に設けられた引き寄せチャック95が何らかの原因により外部の物体に上から接触した場合に、その接触圧によって押し上げ可能とすることにより、引き寄せチャック95の破壊を回避するための逃げ構造である。
【0051】
水平シリンダ92は、X軸方向に沿って突出可能なプランジャを備えるエアシリンダであり、当該プランジャの先端部には上下シリンダ93が連結されている。
水平シリンダ92は、コントローラ31により制御される電磁弁921により作動を行う。水平シリンダ92は、通常時には、プランジャが突出した状態にあり、作動時にはプランジャを退避させる。これにより、水平シリンダ92の非作動時には、上下シリンダ93及び爪部材94は、水平シリンダ92から離隔しており、作動時には、水平シリンダ92側に移動を行う。
【0052】
上下シリンダ93は、下方に向かって突出可能なプランジャを備えるエアシリンダであり、当該プランジャの先端部には爪部材94が連結されている。
上下シリンダ93は、コントローラ31により制御される電磁弁931により作動を行う。上下シリンダ93は、通常時には、プランジャが退避した状態にあり、作動時にはプランジャを下方に突出させる。これにより、爪部材94は、上下シリンダ93の非作動時には上方に位置し、作動時には下降する。
【0053】
爪部材94は、全体的に平板状であって、X軸方向における水平シリンダ92側の端部(以下、先端部という)が、当該水平シリンダ92側に向かうに従って厚みが薄くなる尖鋭形状となっている。これにより、パーツPの下側に爪部材94の先端部を差し込むことを容易にしている。
なお、先端ツール80に保持された四つの保持ヘッド90における爪部材94の先端の向きは、x1軸、x2軸、いずれも、各軸の両端部に位置する二つの保持ヘッド90の爪部材94の先端部が互いに対向する向きとされる。
【0054】
保持ヘッド90は、パーツPを保持する際には、まず、上下シリンダ93の突出動作により爪部材94を下降させ(図13の矢印a1)、次に、水平シリンダ92の退避動作により爪部材94を引き寄せチャック95側に引き寄せ(図13の矢印a2)、上下シリンダ93の退避動作により爪部材94を上昇させる(図13の矢印a3)。
これにより、引き寄せチャック95の底面と爪部材94の先端上面との間でパーツPを把持した状態で保持する。
コントローラ31は、保持ヘッド90に対して、パーツPの保持動作に際し、引き寄せチャック95がパーツPを吸い寄せた状態としてから爪部材94による把持動作を実行する制御を行う。即ち、コントローラ31は、保持制御部として機能する。
また、上記のように、保持ヘッド90は、パーツPは、吸い寄せた状態としてから爪部材94による把持動作を実行することが好ましいが、引き寄せチャック95による吸い寄せが行われない状態で、平面上に載置されたパーツPの下側に爪部材94を差し込んで把持することも可能である。
【0055】
また、爪部材94の先端部とは逆側の端部(後端部とする)には、爪部材94の高さを検出するための被検出体(永久磁石)941が取り付けられている。
これに対応して、上下シリンダ93における水平シリンダ92とは逆側の端部には、被検出体941に対向する配置で磁気センサからなる生地厚センサ932が垂下支持されている。
この生地厚センサ932は、永久磁石からなる被検出体941のZ軸方向における位置検出を行うことができ、その検出信号をコントローラ31に入力する。
【0056】
前述したように、爪部材94は、引き寄せチャック95との間でパーツPを挟んで把持する。
コントローラ31は、パーツPの把持の際に、生地厚センサ932の検出した爪部材94(被検出体941)の高さから、爪部材94が、パーツPを把持した適正状態か、把持し損じた不適正状態かを判定することができる。すなわち、コントローラ31は、生地厚センサ932が検知したパーツPの厚さからパーツPの把持の成否を判定する判定処理部として機能する。
【0057】
引き寄せチャック95は、いわゆるベルヌーイチャックであり、水平シリンダ92の下部に設けられ、パーツPの対向面である底面に円形に開口が形成されており、円形の開口からは下方に向かってエアーが吐出される。
引き寄せチャック95は、ファンやポンプ、正圧タンク等のエアー供給源951に接続されて正圧エアーが供給される。
これにより、円形の開口からパーツP側にエアーが吹き出されると、円形の開口の中央部側はエアーの逃げ道がないことから、半径方向外側に向かってエアーは吹き出される。これにより、ベルヌーイの法則に従って、引き寄せチャック95の底面の中央部に低圧領域が発生する。
従って、引き寄せチャック95の底面をパーツPに接触させなくともある程度接近させると、パーツPを非接触吸着状態で取り上げることができる。
なお、引き寄せチャック95の開口からは底面に対して垂直方向(パーツP側)にエアーが吐出される例を説明したが、エアーの吐出方向は、円形の開口の半径方向外側に向けて傾斜させてもよい。
【0058】
図14は引き寄せチャック95の引き寄せ力を調節可能とする回路構成を示す構成図である。
エアー供給源951から引き寄せチャック95までのエアーの供給経路の上流側には、エアーを供給するか否かを決定する作動用電磁弁952が設けられ、その下流側に引き寄せチャック95の引き寄せ力の強弱を切り替える調節用電磁弁953が設けられている。
調節用電磁弁953の下流側には、二つのエアー供給経路が接続されており、一方の供給経路には低圧用レギュレータ954が設けられ、他方の供給経路には高圧用レギュレータ955が設けられている。これらのエアー供給経路は、さらに下流側で合流して引き寄せチャック95に接続されている。また、各エアー供給経路における合流点のすぐ上流側には、いずれにも、エアー供給源951側へのエアーの逆流を防ぐ逆止弁956が設けられている。
【0059】
作動用電磁弁952は、2位置3ポートのシングルソレノイドの電磁弁であり、下流側への開通と閉鎖とを切り替えることができる。この作動用電磁弁952は、常閉式であって、コントローラ31の制御信号によりスイッチONにより電源供給が行われ、開通状態となる。
調節用電磁弁953は、2位置5ポートのシングルソレノイドの電磁弁であり、エアー供給源951を二つのエアー供給経路に対して択一的に接続することができる。この調節用電磁弁953は、通常時には、低圧用レギュレータ954側のエアー供給経路に接続されており、コントローラ31の制御信号によりスイッチONにより電源供給が行われ、高圧用レギュレータ955側のエアー供給経路に接続状態が切り替えられる。
【0060】
低圧用レギュレータ954と高圧用レギュレータ955は、いずれも空圧レギュレータであり、低圧用レギュレータ954は、設定された低い圧力でエアーを引き寄せチャック95側に供給し、高圧用レギュレータ955は、低圧用レギュレータ954よりも高い設定圧力でエアーを引き寄せチャック95側に供給する。
これにより、調節用電磁弁953が低圧用レギュレータ954側のエアー供給経路を接続している場合には、低圧のエアーが引き寄せチャック95に供給され、開口からは低圧エアーが吐出される。従って、引き寄せチャック95によるパーツPの引き寄せ力は小さくなる。
また、調節用電磁弁953が高圧用レギュレータ955側のエアー供給経路を接続している場合には、高圧のエアーが引き寄せチャック95に供給され、開口からは高圧エアーが吐出される。従って、引き寄せチャック95によるパーツPの引き寄せ力は大きくなる。
【0061】
このように、図14に示す回路構成によって、引き寄せチャック95は、強弱二段階の引き寄せ力の切り替えを行うことが可能である。
引き寄せチャック95の引き寄せ力の切り替えは、コントローラ31に接続された入力部32から選択して行っても良い。
また、前述したパーツ情報に、パーツPの厚さ又は重さ、引き寄せに適した材料であるか等の判断情報が含まれている場合には、コントローラ31が、パーツ情報から引き寄せチャック95の使用の有無、引き寄せ力の強弱を判断する構成としても良い。
【0062】
図15はコントローラ31により強弱二段階の引き寄せ力の切り替えの判断を行うフローチャートである。図示のように、パーツ情報を取得すると、コントローラ31は、引き寄せに適した材料であるか等の判断情報の有無により、引き寄せチャック95を使用するか否かを判定する(ステップS1)。
このとき、引き寄せに適した材料であるか等の判断情報が含まれていない場合や引き寄せが不適切な材料であることが情報として含まれている場合には、引き寄せチャック95を使用しないことを決定し、作動用電磁弁952のスイッチ(図示SW1)と調節用電磁弁953スイッチ(図示SW2)をOFFし、引き寄せチャック95にエアーを供給しない。
一方、引き寄せチャック95を使用する場合には、コントローラ31は、パーツ情報によりパーツPの重さの情報から引き寄せ力の強弱を判定する(ステップS5)。
そして、パーツPが軽い場合には、作動用電磁弁952のスイッチ(SW1)をONし、調節用電磁弁953のスイッチ(SW2)をOFFして、低圧エアーを引き寄せチャック95に供給する(ステップS7)。
また、パーツPが重い場合には、作動用電磁弁952のスイッチ(SW1)をONし、調節用電磁弁953のスイッチ(SW2)をONして、高圧エアーを引き寄せチャック95に供給する(ステップS9)。
【0063】
なお、図14に示す回路構成では、二つのエアー供給経路により引き寄せチャック95の引き寄せ力を強弱二段階で調節を可能としているが、エアー供給経路の本数を増やし、各経路には異なる圧力が設定された空圧レギュレータを設けることで、より多段階にチャック95の引き寄せ力を調節可能としてもよい。
また、作動用電磁弁952から引き寄せチャック95までを分岐しない一本のエアー供給経路で接続し、途中に電空レギュレータを設ける構成としてもよい。この場合、コントローラ31により、電空レギュレータの通過圧力を任意に制御することで、引き寄せチャック95の吐出エアーの圧力を任意に調整し、パーツPの引き寄せ力の強弱を無段階で任意に調節することができる。
【0064】
[ピックアップ装置の搬送動作説明]
図16はコントローラ31が行うピックアップ装置40の搬送動作における動作制御を示すフローチャート、図17はピックアップ動作のタイミングチャートである。これらの図に基づいてピックアップ装置40の搬送動作における動作制御を以下に説明する。
【0065】
コントローラ31は、中継端末110からパーツ情報を取得し、ピックアップの許可を受けると(ステップS11)、ピックアップ対象となるパーツPの形状、寸法等の情報から、前述した図9又は図10に示す工程により先端ツール80に保持された四つの保持ヘッド90の配置を決定する(ステップS13)。
【0066】
さらに、コントローラ31は、パーツ情報に前述した旋回補正の情報が含まれているか否かを判定し(ステップS15)、旋回補正の情報が含まれている場合には、旋回モータ444を制御して旋回補正を行う(ステップS17)。そして、ピックアップの目的位置においてパーツPのピックアップを実行する(ステップS19)。
また、パーツ情報に旋回補正の情報が含まれていない場合には、旋回補正を行うことなくピックアップの目的位置においてパーツPのピックアップを実行する(ステップS19)。
【0067】
ピックアップの際には、図17に示すように、コントローラ31は、目的位置において、垂直移動モータ443を制御して、先端ツール80を規定の最高位置から規定の最低位置まで下降させると共に、作動用電磁弁952を制御して各引き寄せチャック95を引き寄せ状態とする。
これにより、引き寄せチャック95がパーツPに接近し、パーツPは引き寄せチャック95の底面に吸い寄せられる(図12参照)。
そして、再び、コントローラ31は、垂直移動モータ443を制御して、各引き寄せチャック95を規定の中間位置に上昇させる。
【0068】
引き寄せチャック95の中間位置への到達と共に、コントローラ31は、各保持ヘッド90の上下シリンダ93の電磁弁931により爪部材94を下降させる(図13矢印a1)。さらに、下降動作に続いて、水平シリンダ92の電磁弁921を制御して、爪部材94を引き寄せチャック95側に進出させる(図13矢印a2)。さらに、進出移動に続いて、上下シリンダ93の電磁弁931により爪部材94を上昇させる(図13矢印a3)。
これにより、図13に示すように、各保持ヘッド90は、引き寄せチャック95の底面と爪部材94の先端上面との間でパーツPを把持する。
【0069】
なお、図17における「水平シリンダ後側オートスイッチ」は、水平シリンダ92のプランジャ突出位置にあるときにONとなるスイッチであり、水平シリンダ92の動作状態を検出するセンサである。
また、「上下シリンダ上側オートスイッチ」は、上下シリンダ93のプランジャ突出位置にあるときにONとなるスイッチであり、上下シリンダ93の動作状態を検出するセンサである。
【0070】
パーツPの把持状態と共に、コントローラ31は、作動用電磁弁952を制御して各引き寄せチャック95の引き寄せを停止する。
そして、コントローラ31は、垂直移動モータ443を制御して、先端ツール80を最高位置まで上昇させると共に、第1及び第2水平移動モータ441,442を制御して、搬送の目的位置までパーツPを搬送する。
【0071】
また、コントローラ31は、パーツPの把持状態と共に、生地厚センサ932によりピックアップが正常に行われているか否かを判定する(ステップS21)。このとき、生地厚センサ932がピックアップの非正常状態を示している場合には、連続的なエラー回数をカウントアップすると共にエラー回数が許容値か否かを判定する(ステップS23)。そして、エラー回数が許容値を超えた場合には、エラーを記録したパーツ情報を中継端末110に送信すると共にエラーの発生を報告する(ステップS25)。そして、搬送動作を終了する。
一方、エラー回数が許容内の場合には、ステップS19に処理を戻して、パーツPのピックアップのリトライを実行する。
【0072】
一方、ピックアップが正常に行われていると判定した場合には、コントローラ31は、パーツ情報に搬送の目的位置に対する旋回補正の情報が含まれているか否かを判定し(ステップS27)、旋回補正の情報が含まれている場合には、旋回モータ444を制御して旋回補正を行いつつ(ステップS29)、搬送の目的位置においてパーツPの解放を実行する(ステップS31)。
また、パーツ情報に旋回補正の情報が含まれていない場合には、旋回補正を行うことなく搬送の目的位置においてパーツPの解放を実行する(ステップS31)。
【0073】
パーツ解放の際には、図17に示すように、コントローラ31は、目的位置到着直前に、垂直移動モータ443を制御して、先端ツール80を中間位置まで下降させる。そして、到着と同時に、作動用電磁弁952を制御して各引き寄せチャック95を引き寄せ状態とする。
【0074】
次いで、コントローラ31は、各保持ヘッド90の上下シリンダ93の電磁弁931により爪部材94を下降させる(図13矢印a3と逆方向)。さらに、下降動作に続いて、水平シリンダ92の電磁弁921を制御して、爪部材94を反引き寄せチャック95側に退避させる(図13矢印a2と逆方向)。さらに、退避移動に続いて、上下シリンダ93の電磁弁931により爪部材94を上昇させる(図13矢印a1と逆方向)。
【0075】
そして、再び、コントローラ31は、垂直移動モータ443を制御して、各引き寄せチャック95を最低位置に下降させる。これに続いて、作動用電磁弁952を制御して各引き寄せチャック95引き寄せ状態を停止する。
これにより、引き寄せチャック95がパーツPを解放し、パーツPは搬送の目的位置に載置される。
そして、コントローラ31は、垂直移動モータ443を制御して、各引き寄せチャック95を最高位置に上昇させて、解放動作を終了する。
【0076】
その後、パーツ情報に定められた搬送の目的地に対して搬送すべきパーツPの搬送が全て完了したか否かを判定し、まだ完了していない場合にはステップS13に処理を戻して、次のパーツPの搬送を行う。
また、搬送すべきパーツPの搬送が全て完了した場合には、搬送動作の動作制御を終了する。
【0077】
[搬送装置:反転装置]
図18は反転装置35の平面図である。
反転装置35は、Y軸方向について、裁断装置20と移送機構50との間であって、X軸方向についてピックアップ装置40の隣に配置されている。
前述したように、複数のパーツP1~P12は、いずれも対となって重ねられた状態で互いの縫着が行われるため、対の一方のパーツP2,P4,P6,P8,P10,P12については、裁断装置20からテンプレート70まで搬送する際に、その途中で反転装置35を経由して、シート材料Sの表裏を反転させている。
【0078】
反転装置35は、図18に示すように、ヒンジ39によって連結された吸着板36,37を有する。各吸着板36,37の吸着面361,371には、引き寄せ口362,372が点在し、パーツPを吸い付けることができる。このため、一方の吸着板36にパーツPを吸着させた状態で、吸着板36を吸着板37側に回動し、吸着板36による吸着状態から吸着板37による吸着状態に切り替えると、吸着板37側でパーツPの表裏を反転させることができる。
この状態で、吸着板37を引き寄せ停止状態にしてパーツPをピックアップ装置40にピックアップさせることで、下流側に表裏が反転されたパーツPを供給することができる。
【0079】
[搬送装置:移送機構]
図19は移送機構50の平面図である。
移送機構50は、ピックアップ装置40がテンプレート70にパーツPを配置する作業位置D1と、ミシン60にテンプレート70を供給する供給位置D2と、縫製完了後にミシン60から戻される返却位置D3と、テンプレート70からパーツPを搬出する搬出位置D4とに順番にテンプレート70を移送する。
【0080】
移送機構50は、テンプレート70を載置する載置台51と、作業位置D1から供給位置D2にテンプレート70を移送する第一移送部52と、返却位置D3から搬出位置D4にテンプレート70を移送する第二移送部53と、搬出位置D4から作業位置D1にテンプレート70を移送する第三移送部54と、作業位置D1に位置するテンプレート70のICタグ73に対してデータの読み取り及び書き込みを行う判定結果記録部としてのタグリーダーライター55とを備えている。
【0081】
載置台51は、X-Y平面に沿った載置面を備え、当該載置面上には、Y軸方向における一端側(裁断装置20側)にX軸方向に隣接して作業位置D1と搬出位置D4とが設定されている。また、載置台51の載置面上のY軸方向における他端側(ミシン60側)にX軸方向に隣接して供給位置D2と返却位置D3とが設定されている。
また、作業位置D1と供給位置D2とがY軸方向に隣接し、返却位置D3と搬出位置D4とがY軸方向に隣接している。
なお、作業位置D1と搬出位置D4とは、前述したピックアップ装置40の可動領域R内に位置している。
【0082】
第一移送部52は、テンプレート70を作業位置D1から供給位置D2に移送する。
第一移送部52は、載置台51に設けられ、載置面上から出没可能な連結ピンと、連結ピンを介してY軸方向のミシン60側にテンプレート70を牽引する牽引機構とを有する。
連結ピンは、テンプレート70の下板71に形成された図示しない受け穴に挿入可能であり、エアシリンダやソレノイド等のアクチュエータにより出没動作が行われる。
牽引機構は、ボールネジ機構やベルト機構により連結ピンにY軸方向の牽引動作を付与する。
また、第一移送部52のライン上に正しくテンプレート70が移送されたか否かを監視するセンサ513を設けて、センサ513がテンプレート70の移送完了を検知した後に、テンプレート70の位置決め穴に対して、位置決めピン514を挿入することで移送されたテンプレート70を正確に位置決めしている。
【0083】
第二移送部53は、テンプレート70を返却位置D3から搬出位置D4に移送する。
第二移送部53は、載置台51に設けられ、載置面上から出没可能な連結ピンと、連結ピンを介してY軸方向の裁断装置20側にテンプレート70を牽引する牽引機構とを有する。連結ピンと牽引機構の具体的な構成は、第一移送部52と同様である。
【0084】
第三移送部54は、テンプレート70を搬出位置D4から作業位置D1に移送する。
第三移送部54は、載置台51に設けられ、載置面上から出没可能な連結ピンと、連結ピンを介してX軸方向に沿ってテンプレート70を牽引する牽引機構とを有する。連結ピンと牽引機構の具体的な構成は、第一移送部52とほぼ同様である。但し、牽引機構の牽引方向はX軸方向に向けられている。
なお、テンプレート70の供給位置D2から返却位置D3への移送は、ミシン60の移動機構62によって行われる。
また、第三移送部54にも、そのライン上に正しくテンプレート70が移送されたか否かを監視するセンサ515を設けて、センサ515がテンプレート70の移送完了を検知した後に、テンプレート70の位置決め穴に対して、位置決めピン516を挿入することで移送されたテンプレート70を正確に位置決めしている。
【0085】
また、前述したように、テンプレート70は、下板71に対して押さえ板72が起伏回動可能である。
移送機構50の載置台51における搬出位置D4には、下板71に設けられた図示しない貫通孔を通じて保持状態の押さえ板72を押し上げて起伏回動させる押し上げバー512が設けられている。
この押し上げバー512は、モータ、エアシリンダ、ソレノイド等のアクチュエータにより載置台51の載置面から出没可能であり、第二移送部53によって返却位置D3から搬出位置D4に移送されたテンプレート70に対して速やかに押さえ板72を押し上げる動作を行う。
なお、押し上げバー512は、テンプレート70のX軸方向両端部にそれぞれ設けられている。
【0086】
また、載置台51の作業位置D1及び搬出位置D4のY軸方向におけるミシン側端部近傍には、X軸方向に沿って伏臥バー511が設けられている。
この伏臥バー511は、押さえ板72が押さえ状態である場合のテンプレート70の厚さよりも幾分高位置であって、Y軸方向について前述した押し上げバー512よりも幾分ミシン60側に設けられている。
この伏臥バー511は、図5に示すように、作業位置D1において押さえ板72が起伏状態(開いた状態)のテンプレート70が供給位置D2に移送される際に、押さえ板72が伏臥バー511によって押し倒され、パーツPの保持状態にすることができる。
なお、テンプレート70が搬出位置D4から返却位置D3に移送される際には、テンプレート70の押さえ板72は閉じた状態にあるので、伏臥バー511と干渉せずに通過する。
また、伏臥バー511は、搬出位置D4において、押さえ板72が押し上げバー512によって押し上げられたときに、当該押さえ板72が伏臥バー511に寄りかかり、ミシン60側に傾斜した状態となるように配置されている。これにより、押さえ板72は、起伏状態を維持することができる。
【0087】
また、搬出位置D4に隣接して、Y軸方向の裁断装置20側には、縫製完了後のパーツPを次工程の縫製装置又は縫製システムに運搬する運搬用自律走行体101が待機している。この運搬用自律走行体101には、上部載置面に縫製完了後のパーツPを積載することができ、一定量に達すると、自律的に走行を開始して目的地まで縫製完了後のパーツPを運搬する。また、運搬が終わると、搬出位置D4の隣の待機位置に自律的に帰還する。
なお、搬出位置D4の隣の待機位置には、運搬用自律走行体101ではなく、作業者が運ぶスタッカ装置を配置しても良い。
【0088】
[中継端末]
図20は、縫製システム100の各構成の各種データ、各種指令の流れを示す構成図である。
中継端末110は、パーソナルコンピューター等の情報処理端末で構成され、裁断装置20の制御部25及び搬送装置30のコントローラ31とデータ通信可能な状態で接続されている。具体的には、これらと通信ケーブルで有線接続されているが、これらは無線通信により通信接続されていても良い。
また、中継端末110は、ネットワーク回線を通じて、外部の縫製作業における生産管理情報を管理する生産管理サーバ300と接続されている。
【0089】
[縫製システムの縫製動作]
中継端末110が行う処理を含めて、縫製時の縫製システム100全体の処理の流れを説明する。
まず、CADシステム200から裁断装置20の制御部25には、裁断を実行する裁断データが入力される。
そして、裁断装置20の制御部25は、裁断データから裁断制御情報を生成すると共に、裁断データに含まれるシート材料Sに対して形成すべき複数のパーツPの配置、サイズ、形状、向き等を含むパーツ情報(パーツを特定する情報)を中継端末110に送信する。
そして、裁断装置20は、裁断を実行し、裁断処理されたシート材料Sを作業ステージ22上の所定の位置まで搬送する。
【0090】
一方、中継端末110は、裁断装置20から稼働情報を取得し、裁断装置20の稼働状況を生産管理サーバ300に送信する。生産管理サーバ300では、縫製システム100の縫製実績、進行状況等を記録しており、裁断装置20の稼働情報も記録する。
また、中継端末110は、裁断装置20から取得した稼働情報に応じて、搬送装置30のコントローラ31に対して搬送動作の開始の許可の指令とパーツ情報を通知する。
【0091】
搬送装置30のコントローラ31は、ピックアップ装置40によって、パーツP1~P12についてピックアップと搬送を行う。
その際、先端ツール80は、ピックアップするパーツの向き、形状、寸法に応じて、四つの保持ヘッド90の配置が適宜調整位置決めされる。
そして、四つの保持ヘッド90によりパーツPのピックアップが行われる。
【0092】
パーツ情報に示されたパーツP1~P12の表裏の反転が必要ないずれかのパーツPについては、反転装置35を経由して、表裏反転を経てから、移送機構50の作業位置D1で待機するテンプレート70に搬送される。
また、表裏反転が必要ないパーツPについては、直接的に移送機構50の作業位置D1で待機するテンプレート70に搬送される。
従って、コントローラ31は、ピックアップ装置40のピックアップ中にこれらの搬送不良の判定を周期的に実行し、搬送不良と判定した場合には、中継端末110に搬送エラーを通知する。また、タグリーダーライター55により、作業位置D1で待機しているテンプレート70のICタグ73に対して、搬送不良の発生を記録する。
【0093】
これに対して、搬送エラーを受信した中継端末110は、搬送不良が発生したことを生産管理サーバ300に送信する。生産管理サーバ300では、現在ピックアップ中のテンプレート70において、搬送不良が発生したことを記録する。
【0094】
また、コントローラ31は、中継端末110からパーツ情報を取得すると、パーツ情報からLサイズ、SサイズのいずれのパーツPについて縫製を行うかを読み取り、作業位置D1にこれから縫製を行うサイズのパーツに対応するテンプレート70が配置されているか否かを、タグリーダーライター55によるテンプレート70のICタグ73の読み取りにより判定する。
【0095】
そして、作業位置D1にあるテンプレート70が適正な場合には、テンプレート70の配置について現状を維持する。
また、不適正な場合には、第一移送部52、ミシン60、第二移送部53及び第三移送部54を作動させて、作業位置D1にあるテンプレート70を移送し、搬出位置D4にあった次のテンプレート70を作業位置D1に移送して、適正なテンプレート70を作業位置D1に配置する。
【0096】
そして、作業位置D1にあるテンプレート70に対して配置すべき全てのパーツPがセットされると、当該テンプレート70は、第一移送部52により供給位置D2に移送される。
これに対して、ミシン60のコントローラ64は、供給位置D2にあるテンプレート70を保持すると、タグリーダーライター65によりテンプレート70のICタグ73に記録されたパターンナンバー等の縫製パターンを特定する情報を読み取り、縫製パターンに従って各パーツPの縫い合わせ縫製を実行する。そして、縫製後は、テンプレート70を返却位置D3に移動させる。
なお、ミシン60のコントローラ64は、テンプレート70のICタグ73を読み取ったときに、搬送不良の発生が記録されていた場合には、縫製を実行しないで、テンプレート70を返却位置D3に移動させる。
【0097】
また、搬出位置D4にあったテンプレート70は、第三移送部54により作業位置D1に移送される。
【0098】
作業ステージ22のシート材料Sに形成されたLサイズのパーツP1~P6とSサイズのパーツP7~P12とについて、交互に縫製が行われ、各サイズのパーツPに対応するテンプレート70は、作業位置D1、供給位置D2、返却位置D3、搬出位置D4を循環する。
【0099】
上述した搬送装置30の搬送動作において、コントローラ31は、動作状況を示す稼働情報を周期的に中継端末110に送信する。
【0100】
また、ミシン60のコントローラ64も、動作状況を示す稼働情報を周期的に搬送装置30のコントローラ31に送信する。搬送装置30のコントローラ31は、自己の稼働情報を周期的に中継端末110に送信する際に、ミシン60の稼働情報も送信する。
これに対して、中継端末110は、搬送装置30から取得した当該搬送装置30とミシン60の稼働情報により、搬送装置30とミシン60の稼働状況を生産管理サーバ300に送信する。生産管理サーバ300では、搬送装置30とミシン60の稼働情報に基づいて進行状況を記録する。
【0101】
前述したように、コントローラ31は、搬出位置D4のテンプレート70から縫製済みのパーツPをピックアップ装置40でピックアップし、運搬用自律走行体101の上部載置面に載置するよう制御して、搬出動作を実行する。
そして、シート材料S一枚ごとに、上述した処理及び動作が繰り返し実行される。
【0102】
[発明の実施形態の技術的効果]
上述のように、縫製システム100では、搬送装置30の先端ツール80が、パーツPを保持する複数の保持ヘッド90と、パーツPを特定するパーツ情報に基づいて複数の保持ヘッド90の配置を可変させる可変機構81とを備えている。
このため、形状の異なるパーツPを搬送する際にヘッドや先端ツール80の交換が不要となり、作業負担を軽減することが可能となる。
【0103】
また、先端ツール80において、複数の保持ヘッド90が同一の二次元平面上に配置され、可変機構81は、二次元平面に沿ったX軸とY軸とからなる二軸方向に複数の保持ヘッド90を移動させるので、種々の形状のパーツPに対応して各保持ヘッド90を配置することができ、作業負担をより軽減することが可能となる。
【0104】
また、可変機構81は、X軸に沿って相対的に移動可能な一対の保持ヘッド90を二組保持し、これら二組の保持ヘッド90をY軸に沿って相対的に移動可能に保持するので、種々の形状のパーツPに対応して各保持ヘッド90をより容易に配置することができ、作業負担のさらなる軽減を図ることが可能となる。
【0105】
また、先端ツール80は、x2軸側の組の保持ヘッド90について、対をなす一方の保持ヘッド90と他方の保持ヘッド90とを個別にX軸に沿って移動させる二つの駆動源としての第2モータ835を備えている。このため、x1軸側の保持ヘッド90の配置に対して、x2軸側の二つの保持ヘッド90のX軸方向における配置について制限が低減され、より多くの種類の形状のパーツPに対応して各保持ヘッド90を配置することができ、作業負担をより軽減することが可能となる。
また、駆動源となるモータの個体数を低減し、コスト低減を図ることが可能となる。
【0106】
また、搬送装置30のピックアップ装置40が、複数の保持ヘッド90を有する先端ツール80を、二次元平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸回りに旋回させて角度調節を行う角度調節機構としての旋回モータ444を備えているので、配置されるパーツPに誤差などが生じている場合に、角度調節により各保持ヘッド90の向きの補正を行い、適正にパーツPをピックアップ又は正確にパーツPを目的位置に配置することが可能となる。
【0107】
また、保持ヘッド90は、パーツPを上方に引き寄せる引き寄せチャック95と、パーツPを把持する把持機構としての水平シリンダ92、上下シリンダ93、爪部材94とを備えているので、引き寄せに適したパーツPも、把持に適したパーツPもいずれも取り上げることができ、より多種多彩のパーツPの取り上げを行うことが可能となる。
【0108】
また、搬送装置30では、コントローラ31が、引き寄せチャック95がパーツPを引き寄せてから爪部材94を有する把持機構が把持するように保持ヘッド90を制御するので、取り上げにくい材料のパーツPであっても、引き寄せてから把持することができ、把持エラーを低減し、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0109】
また、搬送装置30では、低圧用レギュレータ954と高圧用レギュレータ955とを用いて、引き寄せチャック95に対する空気流量調整を行い、パーツPの引き寄せ力を調整可能としている。このため、パーツPの軽重に応じて適正な引き寄せを行うことができ、より多種多彩のパーツPの取り上げを効果的に行うことが可能となる。
【0110】
また、搬送装置30では、保持ヘッド90が把持したパーツPの厚さを検知する検知部としての生地厚センサ932を有し、コントローラ31が、生地厚センサ932が検知したパーツPの厚さからパーツPの把持の成否を判定することができる。
このため、把持エラーの発生を検出し、報知やリトライ、エラーの記録などの対応を図ることが可能である。このため、把持エラーの影響を最小限に抑えることが可能である。
【0111】
[その他]
上記発明の実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、搬送装置30は、裁断装置20と移送機構50との間でパーツPの搬送を行っているが、ミシンとスタッカとの間で被縫製物を搬送するなど、被縫製物について必要となるあらゆる搬送を行うことが可能である。
【0112】
また、先端ツール80では、x1軸とx2軸とy軸の組み合わせで各保持ヘッド90の位置調節を行っているが、モータ数を増やして個々の保持ヘッド90について移動方向を増やしてもよい。
【符号の説明】
【0113】
30 搬送装置
31 コントローラ
32 入力部
40 ピックアップ装置
41 ベース
42 第一アーム
43 第二アーム
441 第1水平移動モータ(駆動源)
442 第2水平移動モータ(駆動源)
443 垂直移動モータ(駆動源)
444 旋回モータ(角度調節機構)
60 ミシン
70 テンプレート
80 先端ツール
81 可変機構
825 第1モータ(駆動源)
835 第2モータ(駆動源)
845 第3モータ(駆動源)
90 保持ヘッド
91 ベース体
92 水平シリンダ(把持機構)
93 上下シリンダ(把持機構)
932 生地厚センサ
94 爪部材(把持機構)
941 被検出体(永久磁石)
95 引き寄せチャック(引き寄せノズル)
951 エアー供給源
952 作動用電磁弁
953 調節用電磁弁
954 低圧用レギュレータ
955 高圧用レギュレータ
956 逆止弁
100 縫製システム
110 中継端末
C 中心
Cp 中心
P,P1~P12 パーツ(被縫製物)
S シート材料
θ 補正角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20