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特開2022-150517モーター、圧縮機、および冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150517
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】モーター、圧縮機、および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20220929BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20220929BHJP
   H02K 3/28 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/52 E
H02K3/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053155
(22)【出願日】2021-03-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妙摩 欣弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀平
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB04
5H603CB12
5H603CB18
5H603CD05
5H604AA08
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA19
5H604QB03
5H604QB14
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で巻線を巻くことが可能であって、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぎ、製造性が高く、オープン巻線型およびスター結線のいずれにも利用可能なモーター、このモーターを備える圧縮機、および冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】モーター12は、3の倍数のティース42を有する固定子鉄心43と、固定子鉄心43の軸方向両端面に設けられる2つの絶縁端板45と、3の倍数のティース42と絶縁端板45との間に巻き付けられる巻線48と、備えている。相毎の2つの圧接端子57は、それぞれのティース42に巻き付けられた巻線48を並列または直列に接続する。モーター12は、各相の圧接端子57の一方に接続される第一口出し線23と、各相の圧接端子57の他方に接続されてオープン巻線型を構成する第二口出し線23、またはスター結線を構成する中性線63と、を備えている。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固定子と、
前記固定子の内側に配置される回転子と、を備え、
前記固定子は、
筒状のヨーク、および前記ヨークの内側へ突出し、かつ間隔を隔てて周方向へ並ぶ3の倍数のティースを有する鉄心と、
前記鉄心の軸方向両端面に設けられる2つの絶縁端板と、
前記3の倍数のティースと前記2つの絶縁端板との間に巻き付けられる巻線と、を備え、
前記3の倍数のティースは、隣り合う三相の前記巻線が同じ順序で並ぶ複数の区分を有し、
前記固定子は、相毎に2つ設けられる複数の端子を備え、
相毎の2つの前記端子は、それぞれの前記ティースに巻き付けられた前記巻線を並列または直列に接続し、
各相の前記2つの端子の一方に接続される第一口出し線と、
各相の前記2つの端子の他方に接続されてオープン巻線型を構成する第二口出し線、またはスター結線を構成する中性線と、を備えるモーター。
【請求項2】
前記中性線は、2つの相の前記端子の他方を接続する第一電力線と、前記第一電力線の中途と他の1つの相の前記端子の他方とを接続する第二電力線と、の2つの電力線を備える請求項1に記載のモーター。
【請求項3】
前記中性線は、2つの相の前記端子の他方を接続する第一電力線と、前記第一電力線と異なる組み合わせの2つの相の前記端子の他方を接続する第二電力線と、の2つの電力線を備える請求項1に記載のモーター。
【請求項4】
前記中性線は、一方の端部が短絡され、他方の端部がそれぞれの相の前記端子の他方に接続される3つの電力線を備える請求項1に記載のモーター。
【請求項5】
密閉容器と、
前記密閉容器に収容され、かつ前記密閉容器内の導入される冷媒を圧縮可能な圧縮機構部と、
前記密閉容器に収容され、かつ前記圧縮機構部を駆動させる前記請求項1から4のいずれか1項に記載されるモーターと、を備える圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載される圧縮機と、
放熱器と、
膨張装置と、
吸熱器と、
前記圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して冷媒を流通させる冷媒配管と、を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター、圧縮機、および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに電気的に分離された三相(U相、V相、W相)の巻線を有するオープン巻線型モーターが知られている。オープン巻線型モーターでは、各相の巻線は、独立していて互いに結線されていない。各相の巻線の一方の端部は第一口出し線に接続され、各相の巻線の他方の端部は第二口出し線に接続されている。第一口出し線および第二口出し線は、モーターの外部に引き出されている。
【0003】
オープン巻線型モーターは、第一口出し線を介して各相の巻線の一方の端部に接続される第一インバーター回路と、第二口出し線を介して各相の巻線の他方の端部に接続される第二インバーター回路と、を備える駆動回路によって回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-150679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のオープン巻線型モーターは、各層に、並列に接続される3つの巻線を備えている。1つの相、例えばU相に着目すると、従来のオープン巻線型モーターは、1つの巻線の端末線と他の2つの巻線の間に架け渡される渡り線とが圧入される2つの圧接スロットを有して、3つの巻線を並列に接続する圧接端子を備えている。
【0006】
ところで、モーターは、巻線をスター結線(「Y結線」、および「星型結線」とも呼ばれる。)して利用される場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構造で巻線を巻くことが可能であって、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぎ、製造性が高く、オープン巻線型およびスター結線のいずれにも利用可能なモーター、このモーターを備える圧縮機、および冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係るモーターは、筒状の固定子と、前記固定子の内側に配置される回転子と、を備えている。前記固定子は、筒状のヨーク、および前記ヨークの内側へ突出し、かつ間隔を隔てて周方向へ並ぶ3の倍数のティースを有する鉄心と、前記鉄心の軸方向両端面に設けられる2つの絶縁端板と、前記3の倍数のティースと前記2つの絶縁端板との間に巻き付けられる巻線と、を備えている。前記3の倍数のティースは、隣り合う三相の前記巻線が同じ順序で並ぶ複数の区分を有している。前記固定子は、相毎に2つ設けられる複数の端子を備えている。相毎の2つの前記端子は、それぞれの前記ティースに巻き付けられた前記巻線を並列または直列に接続する。前記モーターは、各相の前記2つの端子の一方に接続される第一口出し線と、各相の前記2つの端子の他方に接続されてオープン巻線型を構成する第二口出し線、またはスター結線を構成する中性線と、を備えている。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る圧縮機は、密閉容器と、前記密閉容器に収容され、かつ前記密閉容器内の導入される冷媒を圧縮可能な圧縮機構部と、前記密閉容器に収容され、かつ前記圧縮機構部を駆動させる前記モーターと、を備えている。
【0010】
さらに、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、前記圧縮機と、放熱器と、膨張装置と、吸熱器と、前記圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して冷媒を流通させる冷媒配管と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の概略的な図。
図2】本発明の実施形態に係る電動機の固定子を回転軸の中心線方向から示す図。
図3】本発明の実施形態に係る電動機をオープン巻線型で利用する場合の結線図。
図4】本発明の実施形態に係る電動機をスター結線で利用する場合の結線図。
図5】本発明の実施形態に係る電動機の圧接端子の一例の図。
図6】本発明の実施形態に係る電動機の渡り線と端末線との配線状態を示す側面図。
図7】本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図。
図8】本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図。
図9】本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図。
図10】本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図。
図11】本発明の実施形態に係る電動機の巻線をスター結線する中性線の一例を示す図。
図12】本発明の実施形態に係る電動機の巻線をスター結線する中性線の他の例を示す図。
図13】本発明の実施形態に係る電動機の巻線をスター結線する中性線の他の例を示す図。
図14】本発明の実施形態に係る電動機をオープン巻線型で利用する他の例の結線図。
図15】本発明の実施形態に係る電動機をスター結線で利用する他の例の結線図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るモーター、圧縮機、および冷凍サイクル装置の実施形態について図1から図15を参照して説明する。なお、複数の図面中、同じまたは相当する構成には同一の符号が付されている。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の概略的な図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、密閉型の圧縮機2と、放熱器3と、膨張装置5と、吸熱器6と、アキュームレーター7と、冷媒配管8と、を備えている。冷媒配管8は、圧縮機2と放熱器3と膨張装置5と吸熱器6とアキュームレーター7とを順次に接続して冷媒を流通させる。
【0015】
圧縮機2は、冷媒配管8を通じて吸熱器6を通過した冷媒を吸い込み、圧縮し、冷媒配管8を通じて高温高圧の冷媒を放熱器3へ吐き出す。
【0016】
圧縮機2は、縦置きされる円筒状の密閉容器11と、密閉容器11内の上半部に配置されるモーター12と、密閉容器11内の下半部に配置される圧縮機構部13と、モーター12の回転駆動力を圧縮機構部13へ伝達する回転軸15と、回転軸15を回転自在に支持する主軸受16と、主軸受16と協働して回転軸15を回転自在に支持する副軸受17と、を備えている。
【0017】
密閉容器11は、上下方向に延びる円筒形状の胴部11aと、胴部の上端部を塞ぐ鏡板11bと、胴部の下端部を塞ぐ鏡板11cと、を備えている。
【0018】
密閉容器11の上側の鏡板11bには、冷媒の吐出用の吐出管8aが接続されている。吐出管8aは冷媒配管8に繋がれている。また、密閉容器11の上側の鏡板11bには、電力供給用の密封端子部18が設けられている。
【0019】
密封端子部18は、モーター12がオープン巻線型で利用される場合には、鏡板11bに2つ設けられ、モーター12がスター結線で利用される場合には、鏡板11bに1つ設けられる。
【0020】
モーター12は、圧縮機構部13を回転させる駆動力を発生させる。モーター12は、いわゆる三相誘導電動機である。モーター12は、密閉容器11の内壁に固定される筒状の固定子21と、固定子21の内側に配置され、かつ回転軸15に固定される回転子22と、固定子21から引き出されて密封端子部18に接続される複数の口出し線23と、を備えている。
【0021】
回転子22は、磁石収容孔(図示省略)を有する回転子鉄心25と、磁石収容孔に収容される永久磁石と、を備えている。回転子22は、固定子21に対して回転可能であり、かつ回転軸15に固定されている。回転子22および回転軸15の回転中心線Cは、実質的に固定子21の中心線Pに一致している。
【0022】
複数の口出し線23は、密封端子部18を通じて固定子21に電力を供給する配線であり、いわゆるリード線である。口出し線23は、モーター12の種類に応じて複数配線される。モーター12をオープン巻線型で利用する場合には、U相、V相、W相毎にそれぞれ2本、つまり合計6本の口出し線23が配線される。モーター12をスター結線で利用する場合には、U相、V相、W相にそれぞれ1本、つまり合計3本の口出し線23が配線される。
【0023】
回転軸15は、モーター12と圧縮機構部13とを連結している。回転軸15は、モーター12が発生させる回転駆動力を圧縮機構部13に伝達する。
【0024】
回転軸15の中間部分15aは、モーター12と圧縮機構部13とを繋ぎ、主軸受16によって回転可能に支持されている。回転軸15の下端部分15bは、副軸受17によって回転可能に支持されている。主軸受16および副軸受17は、圧縮機構部13の一部でもある。換言すると、回転軸15は、圧縮機構部13を貫通している。
【0025】
また、回転軸15は、主軸受16に支持されている中間部分15aと副軸受17に支持されている下端部分15bとの間に、偏心部26を備えている。偏心部26は、回転軸15の回転中心線に不一致な中心を有する円盤、あるいは円柱である。
【0026】
圧縮機構部13は、冷媒、つまり単一冷媒または混合冷媒を圧縮することができる。モーター12が回転軸15を回転駆動することによって、圧縮機構部13は、冷媒配管8からガス状の冷媒を吸込んで圧縮し、かつ密閉容器11内に吐出する。
【0027】
圧縮機構部13は、円形のシリンダー室31を有するシリンダー32と、シリンダー室31内に配置される環状のローラー33と、ローラー33の外周面に接して往復動し、シリンダー室31内を吸込室と圧縮室とに仕切るブレード35と、を備えている。
【0028】
シリンダー32は、密閉容器11に複数箇所で溶接、例えばスポット溶接によって固定されている。
【0029】
シリンダー室31は、シリンダー32の内側の空間であって、主軸受16および副軸受17によって閉鎖されている。シリンダー室31は、回転軸15の偏心部26を収容している。
【0030】
主軸受16は、ボルトなどの締結部材38によってシリンダー32に固定されている。主軸受16には、シリンダー室31内で圧縮された冷媒を吐出する吐出弁機構(図示省略)と、吐出弁機構に覆い被さる吐出マフラー37と、が設けられている。吐出弁機構は、圧縮機構部13の圧縮作用にともないシリンダー室31内の圧力と吐出マフラー37内の圧力との圧力差が所定値に達したときに吐出ポートを開放して、圧縮された冷媒を吐出マフラー37内に吐出する。吐出マフラー37は、吐出マフラー37の内外を繋ぐ吐出孔(図示省略)を有している。吐出マフラー37内に吐出された圧縮冷媒は、吐出孔を通じて密閉容器11内へ吐出される。
【0031】
副軸受17は、ボルトなどの締結部材38によってシリンダー32に固定されている。
【0032】
ローラー33は、偏心部26の周面に嵌合されている。ローラー33の外周面は、シリンダー室31の内周面に線接触している。ローラー33は、回転軸15の回転にともなって、その外周面をシリンダー室31の内周面に線接触させながら偏心運動する。
【0033】
なお、ローラー33とシリンダー32との接触は直接的な接触ではなく、潤滑油39の油膜(図示省略)を介在させた間接的なものであるが、説明の便宜のために、これら油膜を介した接触を単に「接触」と表現する。ローラー33と偏心部26との間、ローラー33と主軸受16との間、およびローラー33と副軸受17との間も同じである。
【0034】
吸込管7aは、密閉容器11を貫いて、シリンダー32のシリンダー室31に接続されている。シリンダー32は、吸込管7aに繋がってシリンダー室31に到達する吸込孔(図示省略)を有している。
【0035】
密閉容器11の下部は潤滑油39で満たされている。そして、圧縮機構部13の大部分は、密閉容器11内の潤滑油39中に浸されている。
【0036】
次いで、モーター12の固定子21について詳しく説明する。
【0037】
図2は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を回転軸の中心線方向から示す図である。
【0038】
なお、図2は、スター結線のモーター12を図示している。
【0039】
図1に加えて図2に示すように、本実施形態に係るモーター12は、三相3Nスロットタイプ(Nは正の整数)である。図2のモーター12は、三相9スロットタイプ(N=3)である。なお、説明を容易にするために以下、三相9スロットタイプのモーター12について説明するが、N=4以上であっても良い。つまり、モーター12は、三相12スロットタイプであっても良いし、三相15スロットタイプであっても良いし、それら以上のスロットを有していても良い。
【0040】
固定子21は、集中巻固定子である。固定子21は、筒状のヨーク41(いわゆる継鉄)と、ヨーク41の内側へ突出し、かつ間隔を隔てて周方向へ並ぶ9つのティース42と、を有する固定子鉄心43を備えている。また、固定子21は、固定子鉄心43のそれぞれの端面に設けられる2つの絶縁端板45と、複数の絶縁薄板(図示省略)と、ティース42と2つの絶縁端板45との間に巻き付けられる巻線48と、備えている。
【0041】
固定子21の中心線Pの方向を「軸方向」と呼ぶ。固定子21の中心線Pは、実質的に回転子22の回転中心線Cに一致している。また、固定子21の中心線Pに直交する平面において、固定子21の中心線Pを通る方向を「径方向」と呼び、固定子21の中心線Pを中心とする円周方向、つまり径方向に直交する方向を「周方向」と呼ぶ。
【0042】
固定子鉄心43は、電磁鋼板の積層体である。つまり、固定子鉄心43は、軸方向に積層され、かつ一体化された複数の薄板(図示省略)を有している。それぞれの薄板は、例えばプレスで打ち抜かれた電磁鋼板である。固定子鉄心43は、平行な一対の端面43a、43bを有している。一対の端面43a、43bの法線は、軸方向に向いている。固定子鉄心43の一方の端面43aは、固定子21の上方側の面、つまり、密閉容器11の上側の鏡板11bに近い。固定子鉄心43の他方の端面43bは、固定子21の下方側の面、つまり、密閉容器11の下方側の鏡板11cに近く、かつ一方の端面43aよりも圧縮機構部13に近い。一方の端面43aには、第一絶縁端板45Aが設けられ、他方の端面43bには、第二絶縁端板45Bが設けられている。
【0043】
筒状のヨーク41の中心線は、固定子21の中心線Pに一致している。
【0044】
9つのティース42は、固定子21の周方向へ実質的に等間隔、かつ放射状に並んでいる。それぞれのティース42は、ヨーク41から固定子21の径方向内側へ向かって延びている。それぞれのティース42は、固定子21の径方向内側へ向かってヨーク41から突出するティース基部42aと、ティース基部42aの先端部に設けられて固定子21の周方向へ延びるティース先端部42bと、を有している。ティース基部42aの先端は、固定子21の最内周に配置されている。ティース先端部42bは、ヨーク41の内側を臨むティース先端面42cを有している。ティース先端面42cは、固定子21を臨んでいる。
【0045】
ティース先端面42cは、固定子21の中心線Pを中心とする円弧形状に形成されている。回転子22は、複数のティース先端面42cによって画定される回転子収容空間43c内に配置されている。回転子22の外周面とティース先端面42cとの間には、空隙が隔てられている。
【0046】
ヨーク41、および周方向に隣接する2つのティース42は、スロット49を画定している。スロット49は、ティース42と同数、つまり9つある。スロット49は、隣接する2つのティース42のティース先端部42bの間にスロット開口部を有している。
【0047】
さらに、固定子鉄心43は、固定子鉄心43の一方の端面43aから他方の端面43bへ達する第一孔(図示省略)を有している。第一孔は、固定子鉄心43の外周縁部、かつティース42の根元部分に配置されている。第一孔は、固定子21の中心線Pに実質的に平行に延びている。
【0048】
絶縁端板45は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、Liquid Crystal Plastic、LCP、半・全芳香族ポリエステル)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、またはポリアミド(PA)の一体成型品である。先ず、2つの絶縁端板45で共通する構成を説明する。そこで、以下の説明では第二絶縁端板45Bの説明は省略し、第一絶縁端板45Aについて説明する。
【0049】
第一絶縁端板45Aは、環状の外壁部51と、外壁部51の内側に配置され、かつ間隔を空けて周方向へ並ぶ複数の内壁部52と、外壁部51とそれぞれの内壁部52との間に架け渡される複数の架設部53と、を備えている。
【0050】
外壁部51は、径方向に薄く、軸方向に延び、かつ周方向にひと続きのリングである。なお、周方向に不連続な略リング状であっても良い。
【0051】
それぞれの内壁部52は、径方向に薄く、軸方向および周方向へ延びる円弧状の板体である。複数の内壁部52は、環状に並んでいる。
【0052】
架設部53は、外壁部51の内周面と内壁部52の径方向外側の面との間に架け渡されている。
【0053】
外壁部51、複数の内壁部52、複数の架設部53は、巻線48を収容する複数の空間を区画している。それぞれの空間は、固定子21の中心線Pに沿う方向において、ティース42に重なっている
【0054】
また、第一絶縁端板45Aは、固定子鉄心43の端面43aに接する端面(図示省略)を有している。第一絶縁端板45Aの端面は、外壁部51、内壁部52、および架設部53に跨がっている。
【0055】
外壁部51、隣接する2つの内壁部52、および対応する2つの架設部53によって画定される空間は、固定子鉄心43のスロット49に繋がっている。
【0056】
第一絶縁端板45Aの外壁部51、内壁部52、および架設部53は、それぞれ固定子鉄心43のヨーク41、ティース42のティース先端部42b、およびティース基部42aに隣合わさるように配置される。
【0057】
第一絶縁端板45Aの外壁部51は、固定子鉄心43のヨーク41に隣り合わせて配置され、内壁部52は、固定子鉄心43のティース42のティース先端部42bに隣り合わせて配置され、架設部53は、固定子鉄心43のティース42のティース基部42aに隣合わせて配置されている。
【0058】
なお、内壁部52の内周面52aは、ティース42のティース先端面42cより回転子22側、つまり径方向内側に突出しない。また、外壁部51の径方向外側の面、つまり外周面51aは、ヨーク41の外周面41aより外側、つまり径方向外側に突出しない。
【0059】
ティース先端面42cは、固定子鉄心43の内周面であり、ヨーク41の外周面41aは、固定子鉄心43の外周面である。内壁部52の内周面52aは、第一絶縁端板45Aの内周面であり、外周面51aは、第一絶縁端板45Aの外周面である。
【0060】
それぞれの絶縁薄板は、それぞれのスロット49に挿入されている。絶縁薄板は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)をシート状に形成したものである。絶縁薄板は、固定子鉄心43の端面43a、43bから軸方向に突出している。そのため、絶縁薄板は、固定子鉄心43の端面43aと第一絶縁端板45Aとの境界部分、および固定子鉄心43の端面43bと第二絶縁端板45Bとの境界部分における絶縁不良を防止することができる。
【0061】
巻線48は、集中巻き方式により、固定子鉄心43のティース42のティース基部42aと第一絶縁端板45Aの架設部53、第二絶縁端板45Bの架設部53に巻き付けられている。
【0062】
巻線48は、U相の巻線48U、V相の巻線48V、およびW相の巻線48Wを含んでいる。巻線48は、相毎に独立して3つのティース42に連続して巻かれ、かつ個別に電圧が印加される独立巻線である。それぞれの相において、巻線48の巻き方向は、ティース42毎に交互に変わる。
【0063】
ここで、説明の便宜のため、回転子22の回転方向Rに見て、各相の巻線48に昇順の番号を付与する。つまり、U相の巻線48Uは、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、およびU相第三巻線48U3、を有している。V相の巻線48Vは、V相第一巻線48V1、V相第二巻線48V2、およびV相第三巻線48V3、を有している。W相の巻線48Wは、W相第一巻線48W1、W相第二巻線48W2、およびW相第三巻線48W3、を有している。
【0064】
そして、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、およびU相第三巻線48U3は、連続して3つのティース42に巻き付けられている。U相第二巻線48U2の巻き方向は、U相第一巻線48U1の巻き方向の逆方向であり、U相第三巻線48U3の巻き方向は、U相第二巻線48U2の巻き方向の逆方向である。巻線48を固定子21の外周側から見たとき、例えば、U相第一巻線48U1は左巻き(反時計方向)に巻かれ、U相第二巻線48U2は右巻き(時計方向)に巻かれ、U相第三巻線48U3は左巻き(反時計方向)に巻かれている。V相の巻線48V、およびW相の巻線48Wも同様であって、説明を省略する。
【0065】
巻線48は、相毎に周方向へ等間隔に並んでいる。換言すると、3つのU相の巻線48U1、48U2、48U3は、周方向へ120度毎に並んでいる。V相、W相も同じである。したがって、隣り合う三相の巻線48が同じ順序で並ぶ区分55(領域)が、3の倍数の区分(3の倍数の領域)存在している。本実施形態では、固定子21は、回転子22の回転方向Rへ向かって、U相第一巻線48U1、V相第二巻線48V2、W相第三巻線48W3がこの順序で並ぶ第一区分55Aと、U相第二巻線48U2、V相第三巻線48V3、W相第一巻線48W1がこの順序で並ぶ第二区分55Bと、U相第三巻線48U3、V相第一巻線48V1、W相第二巻線48W2がこの順序で並ぶ第三区分55Cと、を有している。
【0066】
9つのティース42についても、隣り合う三相の巻線48が同じ順序で並ぶ3の倍数の区分に分けられる。
【0067】
したがって、巻線48は、回転子22の回転方向Rに見て、U相第一巻線48U1、V相第二巻線48V2、W相第三巻線48W3、U相第二巻線48U2、V相第三巻線48V3、W相第一巻線48W1、U相第三巻線48U3、V相第一巻線48V1、W相第二巻線48W2の順に並んでいる。
【0068】
なお、U相、V相、W相の並び順は、異なっていても良い。
【0069】
図3は、本発明の実施形態に係る電動機をオープン巻線型で利用する場合の結線図である。
【0070】
図3に示すように、本実施形態に係るモーター12は、オープン巻線型で利用可能である。相毎の巻線48は、並列に接続されている。
【0071】
モーター12の固定子21は、相毎に2つ設けられる複数の圧接端子57を備えている。それぞれの圧接端子57は、巻線48の3箇所を導通可能に接続して3つのスロット49の巻線48(例えばU相の3つの巻線48U1、48U2、48U3)を並列に接続する。
【0072】
つまり、U相の2つの圧接端子57Uは、U相の巻線48Uの3箇所を導通可能に接続して3つの巻線48U1、48U2、48U3を並列に接続する2つの圧接端子57U1、57U2である。V相の2つの圧接端子57Vは、V相の巻線48Vの3箇所を導通可能に接続して3つの巻線48V1、48V2、48V3を並列に接続する2つの圧接端子57V1、57V2である。W相の2つの圧接端子57Wは、W相の巻線48Wの3箇所を導通可能に接続して3つの巻線48W1、48W2、48W3を並列に接続する2つの圧接端子57W1、57W2である。
【0073】
ここで、U相の巻線48Uの始端とU相第三巻線48U3との間の巻線48を第一渡り線58U1と呼び、U相第三巻線48U3とU相第二巻線48U2との間の巻線48を第二渡り線58U2と呼び、U相第二巻線48U2とU相第一巻線48U1との間の巻線48を第三渡り線58U3と呼び、U相第一巻線48U1とU相の終端との間の巻線48を第四渡り線58U4と呼ぶ。V相の巻線48V、およびW相の巻線48Wも同様とし、説明を省略する。
【0074】
U相第一圧接端子57U1は、U相の巻線48Uの始端に相当するU相第三巻線48U3の端末線59とU相の2つの巻線48U2、48U1の間の第三渡り線58U3とを接続している。U相第一圧接端子57U1は、U相第一口出し線23U1に接続されている。
【0075】
U相第二圧接端子57U2は、U相の巻線48Uの終端に相当するU相第一巻線48U1の端末線59とU相の2つの巻線48U3、48U2の間の第二渡り線58U2とを接続している。U相第二圧接端子57U2は、U相第二口出し線23U2に接続されている。
【0076】
V相第一圧接端子57V1は、V相の巻線48Vの始端に相当するV相第三巻線48V3の端末線59とV相の2つの巻線48V2、48V1の間の第三渡り線58V3とを接続している。V相第一圧接端子57V1は、V相第一口出し線23V1に接続されている。
【0077】
V相第二圧接端子57V2は、V相の巻線48Vの終端に相当するV相第一巻線48V1の端末線59とV相の2つの巻線48V3、48V2の間の第二渡り線58V2とを接続している。V相第二圧接端子57V2は、V相第二口出し線23V2に接続されている。
【0078】
W相第一圧接端子57W1は、W相の巻線48Wの始端に相当するW相第三巻線48W3の端末線59とW相の2つの巻線48W2、48W1の間の第三渡り線58W3とを接続している。W相第一圧接端子57W1は、W相第一口出し線23W1に接続されている。
【0079】
W相第二圧接端子57W2は、W相の巻線48Wの終端に相当するW相第一巻線48W1の端末線59とW相の2つの巻線48W3、48W2の間の第二渡り線58W2とを接続している。W相第二圧接端子57W2は、W相第二口出し線23W2に接続されている。
【0080】
U相第一口出し線23U1は、2つの密封端子部18の一方を介して、駆動回路(図示省略)の第一インバーター回路61のU相に接続されている。V相第一口出し線23V1は、2つの密封端子部18の一方を介して、駆動回路の第一インバーター回路61のV相に接続されている。W相第一口出し線23W1は、2つの密封端子部18の一方を介して、駆動回路の第一インバーター回路61のW相に接続されている。
【0081】
また、U相第二口出し線23U2は、2つの密封端子部18の他方を介して、駆動回路(図示省略)の第二インバーター回路62のU相に接続されている。V相第二口出し線23V2は、2つの密封端子部18の他方を介して、駆動回路の第二インバーター回路62のV相に接続されている。W相第二口出し線23W2は、2つの密封端子部18の他方を介して、駆動回路の第二インバーター回路62のW相に接続されている。
【0082】
以下、U相、V相、およびW相のそれぞれの相における巻線48、渡り線58、端末線59、口出し線23、ティース42、およびスロット49の関係を説明する場合には、各相を識別するためのU、V、Wの符号を付して説明し、U相、V相、およびW相に共通する巻線48、渡り線58、端末線59、口出し線23、ティース42、およびスロット49の関係を説明する場合には、各相を識別するためのU、V、Wの符号の記載を省略する。
【0083】
図4は、本発明の実施形態に係る電動機をスター結線で利用する場合の結線図である。
【0084】
本実施形態に係るモーター12は、図3に示すオープン巻線型の他に、図4に示すスター結線で利用可能である。スター結線で利用されるモーター12は、1つのインバーター回路61に接続される。
【0085】
なお、スター結線のモーター12について、図3に示すオープン巻線型のモーター12と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0086】
U相第二圧接端子57U2、V相第二圧接端子57V2、およびW相第二圧接端子57W2は、スター結線における中性点を構成する中性線63に接続されている。中性線63は、U相第二圧接端子57U2、V相第二圧接端子57V2、およびW相第二圧接端子57W2を相互に電気的に接続している。
【0087】
図5は、本発明の実施形態に係る電動機の圧接端子の一例の図である。
【0088】
図5に示すように、本実施形態に係るモーター12の圧接端子57は、4つの圧接用突部65と、隣り合う圧接用突部65の間に位置してU字状に切り込まれた3つの圧接スロット66と、口出し線23を接続するためのタブ67と、を備えている。圧接スロット66の周縁には、刃部が形成されている。圧接端子57は、2つの圧接スロット66のそれぞれに差し込まれる渡り線58の2箇所と、残る1つの圧接スロット66に差し込まれる端末線59と、を接続する。
【0089】
なお、圧接スロット66の数量は、並列に接続される巻線48の数量と同数あれば良い。本実施形態に係るモーター12は、相毎に並列に接続される3つの巻線48(例えば、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、U相第三巻線48U3)と同数の3つの圧接スロット66を有している。したがって、4つの巻線48を相毎に並列に接続する場合には、圧接端子57は、4つの圧接スロット66を有する。つまり、三相3Nスロットタイプ(Nは正の整数)のモーター12では、相毎にN数の巻線48を並列に接続するので、圧接端子57は、N数の圧接スロット66を有していれば良い。
【0090】
図6は、本発明の実施形態に係る電動機の渡り線と端末線との配線状態を示す側面図である。
【0091】
図2に加えて、図6に示すように、本実施形態に係るモーター12の上方側の第一絶縁端板45Aは、巻線48の3箇所および圧接端子57を一括で保持する端子受部68を備えている。
【0092】
また、端子受部68は、第一インバーター回路61に接続される圧接端子57を保持する第一端子受部69と、第二インバーター回路62または中性線63に接続される圧接端子57を保持する第二端子受部70を、を含んでいる。
【0093】
また、端子受部68は、巻線48を巻き始めるティース42の外周部、および巻線48を巻き終えるティース42の外周部に設けられている。端子受部68は、ティース42を周方向へ二分する中心線上に配置されている。端子受部68は、渡り線58と端末線59とを保持する保持部71と、圧接端子57の圧接用突部65が挿入される挿入部72と、を備えている。
【0094】
保持部71に保持された渡り線58と端末線59とは、圧接端子57の圧接スロット66に圧入されている。渡り線58と端末線59との被膜(図示省略)は、渡り線58と端末線59とが圧入される圧接スロット66の刃部に破られる。そして、渡り線58と端末線59とは、圧接端子57を介して電気的に接続される。
【0095】
保持部71は、ティース42の中心線に平行な3つの溝73r、73c、73lを有している。3つの溝73r、73c、73lには、圧接スロット66に圧入される渡り線58または端末線59が配置される。2つの溝73r、73lは、圧接端子57の圧接用突部65を下方に配置し、タブ67を上方に配置して固定子21の外周側から見たとき、端子受部68の右側を溝73rとし、左側を溝73lとする。
【0096】
圧接端子57のタブ67は、口出し線23に接続される。
【0097】
本実施形態に係るモーター12は、相毎に、2つの巻線48の間の渡り線58と1つの巻線48の端末線59とを圧接端子57に接続し、この圧接端子57を口出し線23に接続している。そのため、モーター12は、相毎に、3つの巻線48を個別に口出し線23に接続する場合に比べて、口出し線23の本数を削減できて、かつ接続作業に掛かる手間を軽減できる。しかも、モーター12は、渡り線58と端末線59とを、3つの圧接スロット66を有する圧接端子57で接続する。そのため、渡り線58と端末線59とを接続するに際して、渡り線58および端末線59の皮膜を剥離する必要がなく、接続作業に掛かる手間をさらに軽減できる。しかも、被膜を剥離することによる被膜片の発生がない。そのため、モーター12は、被膜片がモーター12の回転部の隙間に入り込むことがなく、モーター12の性能が損なわれることはない。
【0098】
次いで、巻線48の配線経路について説明する。
【0099】
図7は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図である。
【0100】
図8は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図である。
【0101】
なお、図8は、図7におけるV相とW相との図示を省略し、U相の巻線48Uの概略的な配線経路を示している。
【0102】
図7および図8に示すように、本実施形態に係るモーター12のU相第一端子受部69Uは、U相第一巻線48U1が巻き付けられるティース42U1の外周部に配置されている。U相第二端子受部70Uは、U相第二巻線48U2が巻き付けられるティース42U2の外周部に配置されている。
【0103】
そして、U相の巻線48Uは、U相第一端子受部69Uに保持される始端から巻き始まり、U相第二端子受部70Uに保持される終端で巻き終わる。U相の巻線48Uは、U相第一端子受部69Uから出発し、第二絶縁端板45Bの外周部をティース42U3へ向かって第一渡り線58U1として渡る。ティース42U3の近傍に達したU相の巻線48Uは、ティース42U3にU相第三巻線48U3として巻き付けられる。その後、U相の巻線48Uは、第二絶縁端板45Bの外周部をティース42U2へ向かって第二巻線48U2として渡る。ティース42U2の近傍に達したU相の巻線48Uは、U相第二端子受部70Uで折り返した後、ティース42U2にU相第二巻線48U2として巻き付けられる。その後、U相の巻線48Uは、第二絶縁端板45Bの外周部をティース42U1へ向かって第三渡り線58U3として渡る。ティース42U1の近傍に達したU相の巻線48Uは、U相第一端子受部69Uで折り返した後、ティース42U1にU相第一巻線48U1として巻き付けられる。その後、U相の巻線48Uは、第一絶縁端板45Aの外周部をU相第二端子受部70Uへ向かって第四渡り線58U4として渡り、巻き終わる。
【0104】
したがって、U相第一端子受部69Uは、U相の巻線48Uの始端(U相第三巻線48U3の端末線59)と、U相第二巻線48U2とU相第三巻線48U3との間の第三渡り線58U3の折り返し部分と、を保持している。U相第二端子受部70Uは、U相の巻線48Uの終端(U相第一巻線48U1の端末線59)と、U相第三巻線48U3とU相第二巻線48U2との間の第二渡り線58U2の折り返し部分と、を保持している。
【0105】
すなわち、U相第一端子受部69Uは、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、およびU相第三巻線48U3のそれぞれの巻線48の一方の端末線59を保持し、U相第二端子受部70Uは、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、およびU相第三巻線48U3のそれぞれの巻線48の他方の端末線59を保持している。
【0106】
そして、U相第一圧接端子57U1は、第三渡り線58U3の折り返し部分の2箇所の被膜を2つの圧接スロット66で破り、U相第三巻線48U3の端末線59の被膜を1つの圧接スロット66で破って、U相の3つの巻線48U1、48U2、48U3を並列に接続する。また、U相第二圧接端子57U2は、第二渡り線58U2の折り返し部分の2箇所の被膜を2つの圧接スロット66で破り、U相第一巻線48U1の端末線59の被膜を1つの圧接スロット66で破って、U相の3つの巻線48U1、48U2、48U3を並列に接続する。
【0107】
図9は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図である。
【0108】
なお、図9は、図7からU相とW相との図示を省略し、V相の巻線48Vの概略的な配線経路を示している。
【0109】
図10は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図である。
【0110】
なお、図10は、図7からU相とV相との図示を省略し、W相の巻線48Wの概略的な配線経路を示している。
【0111】
図8に加えて図9および図10に示すように、V相の巻線48V、およびW相の巻線48WもU相の巻線48Uと実質的に同様な配線経路を有するので、説明を省略する。
【0112】
そして、上述のとおり、巻線48は、回転子22の回転方向Rに見て、U相第一巻線48U1、V相第二巻線48V2、W相第三巻線48W3、U相第二巻線48U2、V相第三巻線48V3、W相第一巻線48W1、U相第三巻線48U3、V相第一巻線48V1、W相第二巻線48W2の順に並んでいる。つまり、巻線48は、回転子22の回転方向Rに見て、ティース42U1近傍のU相の巻き始めおよびU相の第三渡り線58U3の折り返し部分、ティース42V2近傍のV相の巻き終わりおよびV相の第二渡り線58V2の折り返し部分、ティース42W3を飛ばす、ティース42U2近傍のU相の巻き終わりおよびU相の第二渡り線58U2の折り返し部分、ティース42V3を飛ばす、ティース42W1近傍のW相の巻き始めおよびW相の第三渡り線58W3の折り返し部分、ティース42U3を飛ばす、ティース42V1近傍のV相の巻き始めおよびV相の第三渡り線58V3の折り返し部分、ティース42W2近傍のW相の巻き終わりおよびW相の第二渡り線58W2の折り返し部分、の順に有している。
【0113】
すなわち、複数の圧接端子57は、回転子22の回転方向Rに見て、U相第一圧接端子57U1、V相第二圧接端子57V2、1ティース42飛ばす、U相第二圧接端子57U2、1ティース42飛ばす、W相第一圧接端子57W1、1ティース42飛ばす、V相第一圧接端子57V1、W相第二圧接端子57W2、の順に並んでいる。換言すると、U相第一圧接端子57U1は、回転子22の回転方向RへV相第一圧接端子57V1の2ティース42隣に配置され、W相第一圧接端子57W1は、回転子22の反回転方向へV相第一圧接端子57V1の2ティース42隣に配置されている。また、U相第二圧接端子57U2は、回転子22の回転方向RへV相第二圧接端子57V2の2ティース42隣に配置され、W相第二圧接端子57W2は、回転子22の反回転方向へV相第二圧接端子57V2の2ティース42隣に配置されている。
【0114】
したがって、U相第一口出し線23U1、V相第一口出し線23V1、およびW相第一口出し線23W1は、オープン巻線型、およびスター結線の両方で共通して、回転子22の回転方向Rにおいて、W相第一圧接端子57W1からU相第一圧接端子57U1までの範囲(本実施形態では、5ティース42の間隔、中心角200度の範囲)で束ねられている。
【0115】
また、オープン巻線型におけるU相第二口出し線23U2、V相第二口出し線23V2、およびW相第二口出し線23W2は、回転子22の回転方向Rにおいて、W相第二圧接端子57W2からU相第二圧接端子57U2までの範囲(本実施形態では、5ティース42の間隔、中心角200度の範囲)で束ねられている。
【0116】
さらに、スター結線における中性線63は、回転子22の回転方向Rにおいて、W相第二圧接端子57W2からU相第二圧接端子57U2までの範囲(本実施形態では、5ティース42の間隔、中心角200度の範囲)に設けられている。
【0117】
そのため、オープン巻線型におけるU相第一口出し線23U1、V相第一口出し線23V1、およびW相第一口出し線23W1の配線の束と、U相第二口出し線23U2、V相第二口出し線23V2、およびW相第二口出し線23W2の配線の束とは、回転子22の回転方向Rにおいて、U相第一巻線48U1とW相第二巻線48W2との間で交差する。より詳しくは、U相第一口出し線23U1とW相第二口出し線23W2とが交差する。
【0118】
また、スター結線におけるU相第一口出し線23U1、V相第一口出し線23V1、およびW相第一口出し線23W1の配線の束と、中性線63とは、回転子22の回転方向Rにおいて、U相第一巻線48U1とW相第二巻線48W2との間で交差する。より詳しくは、U相第一口出し線23U1とW相第二巻線48W2へ結線される中性線63とが交差する。
【0119】
以上で説明したように、本実施形態に係る固定子21は、オープン巻線型およびスター結線のいずれにも適用可能であって、第二口出し線23および中性線63のいずれかを選択することで、容易にオープン巻線型およびスター結線を設定できる。
【0120】
なお、それぞれの相の巻線48の巻き始めは、同じ区分に属していても良く、それぞれの相の巻線48の巻き終わりは、同じ区分に属していても良い。例えば、U相第一巻線48U1、V相第一巻線48V1、およびW相第一巻線48W1は、同じ区分に属していても良い。U相第二巻線48U2、V相第二巻線48V2、およびW相第二巻線48W2も、同じ区分に属していても良い。この場合には、各相の第一端子受部69も、同じ区分に属していても良いし、各相の第二端子受部70も、同じ区分に属していても良い。
【0121】
次いで、オープン結線で中性点を構成する中性線63について説明する。
【0122】
図11は、本発明の実施形態に係る電動機の巻線をスター結線する中性線の一例を示す図である。
【0123】
図11に示すように、本実施形態のモーター12の巻線48をスター結線する中性線63は、2つの相の圧接端子57の他方(例えばW相第二圧接端子57W2とU相第二圧接端子57U2)を接続する第一電力線81と、第一電力線81の中途と他の1つの相の端子の他方(例えばV相第二圧接端子57V2)とを接続する第二電力線82と、の2つの電力線83を備えている。
【0124】
2つの電力線83は、編組線またはテフロン線である。
【0125】
編み込まれた第一電力線81の外被は、第一電力線81の両端部、および第一電力線81の中途の一部で剥き取られている。第一電力線81の一方の端部には、W相第二圧接端子57W2に接続される端子85が設けられている。第一電力線81の他方の端部には、U相第二圧接端子57U2に接続される端子85が設けられている。
【0126】
編み込まれた第二電力線82の外被は、第二電力線82の両端部で剥き取られている。第二電力線82の一方の端部には、V相第二圧接端子57V2に接続される端子85が設けられている。
【0127】
そして、外被が剥き取られた第一電力線81の中途の一部と、外被が剥き取られた第二電力線82の他方の端部とは、かしめによって接続されている。
【0128】
つまり、本実施形態の中性線63は、中途で剥かれた第一電力線81と第二電力線82との2つの電力線83で三相の巻線48の中性点を構成する。
【0129】
図12は、本発明の実施形態に係る電動機の巻線をスター結線する中性線の他の例を示す図である。
【0130】
図12に示すように、中性線63Aは、一方の端部が短絡され、他方の端部がそれぞれの相の第二圧接端子57に接続される3つの電力線83を備えていても良い。つまり、中性線63Aは、3つの電力線83で中性点を構成する。例えば、編み込まれた電力線83の外被は、それぞれの電力線83の両端部で剥き取られる。そして、それぞれの電力線83の一方の端部には、第二圧接端子57に接続される端子85が設けられる。全ての電力線83の他方の端部は、かしめによって纏めて接続される。
【0131】
図13は、本発明の実施形態に係る電動機の巻線をスター結線する中性線の他の例を示す図である。
【0132】
図13に示すように、中性線63Bは、2つの相の第二圧接端子57を接続する第一電力線81と、第一電力線81と異なる組み合わせの2つの相の第二圧接端子57を接続する第二電力線82と、の2つの電力線83を備えていても良い。この場合には、中性線63Bは、3つの電力線83と4つの端子85で中性点を構成する。例えば、編み込まれた電力線83の外被は、それぞれの電力線83の両端部で剥き取られる。電力線83のそれぞれの端部には、第二圧接端子57に接続される端子85が設けられる。この場合、V相第二圧接端子57V2は、2つ用いられ、第二端子受部70は、2つのV相第二圧接端子57V2を保持可能に設けられる。そして、一方の電力線83は、W相第二圧接端子57W2とV相第二圧接端子57V2とを繋ぎ、他方の電力線83は、U相第二圧接端子57U2とV相第二圧接端子57V2とを繋ぐ。したがって、第二端子受部70では、2つのV相第二圧接端子57V2が併設される。
【0133】
図14は、本発明の実施形態に係る電動機をオープン巻線型で利用する他の例の結線図である。
【0134】
図15は、本発明の実施形態に係る電動機をスター結線で利用する他の例の結線図である。
【0135】
図14および図15に示すように、本実施形態に係るモーター12の各相の巻線48U、48V、48Wは、直列に接続されていても良い。各相の巻線48U、48V、48Wの巻き始めを第一圧接端子57に接続し、各相の巻線48U、48V、48Wの巻き終わりを第二圧接端子57に接続することで、巻線48U、48V、48Wは、直列に接続される。
【0136】
以上で説明したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、およびモーター12は、相毎に2つの圧接端子57を備えている。これら圧接端子57は、相毎に、巻線48のN数の箇所を導通可能に接続してN数のスロット49の巻線48(例えばU相の3つの巻線48U1、48U2、48U3)を並列に接続する。また、冷凍サイクル装置1、圧縮機2、およびモーター12は、各相の第一圧接端子57(各相の2つの圧接端子57の一方)に接続される第一口出し線23U1、23V1、23W1と、各相の第二圧接端子57(各相の2つの圧接端子57の他方)に接続されてオープン巻線型を構成する第二口出し線23U2、23V2、23W2、またはスター結線を構成する中性線63と、を備えている。換言すると、モーター12は、各相の第一圧接端子57に接続される共通の第一口出し線23U1、23V1、23W1を備え、かつ各相の第二圧接端子57に接続される第二口出し線23U2、23V2、23W2を備えている場合には、オープン巻線型である。また、モーター12は、共通の第一口出し線23U1、23V1、23W1を備え、かつ各相の第二圧接端子57に接続される中性線63を備える場合には、スター結線である。
【0137】
そのため、モーター12は、各相の巻線48を並列に接続する場合であっても、直接に接続する場合であっても、簡単な構造で巻線48を巻くことが可能であって、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぎ、製造性が高く、オープン巻線型およびスター結線のいずれにも利用できる。
【0138】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、およびモーター12は、2つの相の第二圧接端子57を接続する第一電力線81と、第一電力線81の中途と他の1つの相の第二圧接端子57とを接続する第二電力線82と、の2つの電力線83で中性点を構成する中性線63を備えている。そのため、モーター12は、中性点を構成する電力線83の数量を抑制して費用を低減できる。
【0139】
さらに、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、およびモーター12は、2つの相の第二圧接端子57を接続する第一電力線81と、第一電力線81と異なる組み合わせの2つの相の第二圧接端子57を接続する第二電力線82と、の2つの電力線83で中性点を構成する中性線63Bを備えていても良い。中性線63Bは、それぞれの電力線83を個別に結線できる。そのため、モーター12は、電力線83の結線作業を容易化して費用を低減できる。
【0140】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、およびモーター12は、一方の端部が短絡され、他方の端部がそれぞれの相の第二圧接端子57に接続される3つの電力線83で中性点を構成する中性線63Aを備えていても良い。中性線63Aは、極めて容易に製造可能であって、モーター12は、費用を低減できる。
【0141】
したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、およびモーター12によれば、簡単な構造で巻線48を巻くことが可能であって、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぎ、製造性が高く、オープン巻線型およびスター結線のいずれにも利用できる。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…放熱器、5…膨張装置、6…吸熱器、7…アキュームレーター、7a…吸込管、8…冷媒配管、8a…吐出管、11…密閉容器、11a…胴部、11b…鏡板、11c…鏡板、12…モーター、13…圧縮機構部、15…回転軸、15a…中間部分、15b…下端部分、16…主軸受、17…副軸受、18…密封端子部、21…固定子、22…回転子、23…口出し線、25…回転子鉄心、26…偏心部、31…シリンダー室、32…シリンダー、33…ローラー、35…ブレード、36、38…締結部材、37…吐出マフラー、39…潤滑油、41…ヨーク、41a…外周面、42…ティース、42a…ティース基部、42b…ティース先端部、42c…ティース先端面、43…固定子鉄心、43a…端面、43b…端面、43c…回転子収容空間、45…絶縁端板、45A…第一絶縁端板、45B…第二絶縁端板、48…巻線、49…スロット、51…外壁部、51a…外周面、52…内壁部、52a…内周面、53…架設部、55…区分、57…圧接端子、58…渡り線、59…端末線、61…第一インバーター回路、62…第二インバーター回路、63、63A、63B…中性線、65…圧接用突部、66…圧接スロット、67…タブ、68…端子受部、69…第一端子受部、70…第二端子受部、71…保持部、72…挿入部、73r、73c、73l…溝、81…第一電力線、82…第二電力線、83…電力線、85…中性線の端子。
図1
図2
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図10
図11
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図15