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特開2022-150585液体吸引装置の動作確認システム及び液体吸引装置の動作確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150585
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】液体吸引装置の動作確認システム及び液体吸引装置の動作確認方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20220929BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N35/10 A
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053254
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】500240357
【氏名又は名称】住鉱テクノリサーチ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】槙 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿賀 亜希子
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AD06
2G052BA14
2G052CA28
2G052GA15
2G052HA08
2G052HA19
2G052HB09
2G058EA02
2G058ED02
2G058GA02
2G058GB04
2G058GB06
2G058GD05
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】液体吸引装置に対する外付けの構成により、吸引量の異常の検知を精度良く行う。
【解決手段】プローブ13の先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従してプローブ13が下方に変位する液体吸引装置10の動作確認システム1であって、液体吸引前後に亘ってプローブ13上の視標16を撮影した定点画像6pから視標16を認識する画像認識部2と、定点画像6pから、液体吸引前後に亘る視標16の変位量を計測する計測部3と、変位量に基づき、プローブ13が液体を正常に吸引したか否かを判定する判定部4と、を備える、液体吸引装置10の動作確認システム1及びその関連技術を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置の動作確認システムであって、
液体吸引前後に亘って前記プローブ上の視標を撮影した定点画像から前記視標を認識する画像認識部と、
前記定点画像から、液体吸引前後に亘る前記視標の変位量を計測する計測部と、
前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを判定する判定部と、
を備える、液体吸引装置の動作確認システム。
【請求項2】
前記定点画像は前記視標と前記視標の背景とを含み、
前記動作確認システムは、前記背景中での前記視標の位置座標を学習する学習部を備え、
画像認識された前記視標の位置座標を基に、前記プローブの下方への変位量を前記計測部が計測する、請求項1に記載の液体吸引装置の動作確認システム。
【請求項3】
前記動作確認システムは、複数の前記定点画像を撮影する複数の画像撮影部を備え、
複数の前記定点画像から得られた複数の前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを前記判定部が判定する、請求項1又は2に記載の液体吸引装置の動作確認システム。
【請求項4】
前記視標は、前記プローブから横方向に突出した部分に設けられる、請求項1~3のいずれか一つに記載の液体吸引装置の動作確認システム。
【請求項5】
プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置の動作確認システムであって、
液体吸引前後に亘って前記プローブ上の視標を撮影した定点画像から前記視標を認識する画像認識部と、
前記定点画像から、液体吸引前後に亘る前記視標の変位量を計測する計測部と、
前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記定点画像は前記視標と前記視標の背景とを含み、
前記動作確認システムは、前記背景中での前記視標の位置座標を学習する学習部を備え、
画像認識された前記視標の位置座標を基に、前記プローブの下方への変位量を前記計測部が計測し、
前記動作確認システムは、複数の前記定点画像を撮影する複数の画像撮影部を備え、
複数の前記定点画像から得られた複数の前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを前記判定部が判定し、
前記視標は、前記プローブから横方向に突出した部分に設けられる、請求項1に記載の液体吸引装置の動作確認システム。
【請求項6】
プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置の動作確認方法であって、
液体吸引前後に亘って前記プローブ上の視標を撮影した定点画像から前記視標を認識する画像認識工程と、
前記定点画像から、液体吸引前後における前記視標の変位量を計測する計測工程と、
前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを判定する判定工程と、
を有する、液体吸引装置の動作確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸引装置の動作確認システム及び液体吸引装置の動作確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、分注流路内の動圧の違いに着目することにより、溶液の吸引区間や吐出区間の圧力変動波形からでは空吸いなどの分注異常を検知することが難しい分注装置でも分注異常を検知することを可能にした分注装置、及び、分注装置を備え且つ自動化された分析装置が記載されている(特許文献1の[0025]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-271266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、従来の分注装置及び自動分析装置では、プローブにより吸引対象の液面を検出する。液面の検出は、微弱電流の導通が利用される。液面の検出を利用して、液体の吸引の際にはプローブの先端を液面より下に配置する。液体の吸引に伴い液面が下降する。従来の分注装置においては、プローブの先端もそれに追従して下方に変位する。
【0005】
その一方、以下の知見が本発明者により得られた。
上記微弱電流の導通が、分注装置の誤作動を引き起こし得る。具体例を挙げると、分注装置が高湿度雰囲気下(例えば蒸気存在下)にある場合、プローブの先端が液面下に配置されていないにもかかわらず、吸引作業が行われることがあり得る(以降、この現象を「空吸い」とも称する)。空吸いが行われたまま試料の分析が行われると、その分析結果は当然のことながら信頼性に欠ける。
【0006】
特許文献1に記載の分注装置を備えた自動分析装置では空吸いの検知を考慮しているが、上記高湿度雰囲気下でも空吸いを正常に検知できるかは不明である。また、空吸いの検知機能が存在しない従来の自動分析装置のユーザーにとっては、該自動分析装置のメーカーに対して空吸いの検知機能を自動分析のアルゴリズムに組み込むよう依頼しても、コストの関係で、該メーカーは容易にはその依頼に応えることができない。ユーザーが該自動分析装置の内部を改造することは、該自動分析装置のメーカー保証の関係上、容易ではない。
【0007】
以下、本明細書では、分注装置、及び分注装置を備えた自動分析装置のことを、液体吸引装置という。
【0008】
本発明の課題は、液体吸引装置に対する外付けの構成により、吸引量の異常の検知を精度良く行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、
プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置の動作確認システムであって、
液体吸引前後に亘って前記プローブ上の視標を撮影した定点画像から前記視標を認識する画像認識部と、
前記定点画像から、液体吸引前後に亘る前記視標の変位量を計測する計測部と、
前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを判定する判定部と、
を備える、液体吸引装置の動作確認システムである。
【0010】
本発明の第2の態様は、
前記定点画像は前記視標と前記視標の背景とを含み、
前記動作確認システムは、前記背景中での前記視標の位置座標を学習する学習部を備え、
画像認識された前記視標の位置座標を基に、前記プローブの下方への変位量を前記計測部が計測する、第1の態様に記載の液体吸引装置の動作確認システムである。
【0011】
本発明の第3の態様は、
前記動作確認システムは、複数の前記定点画像を撮影する複数の画像撮影部を備え、
複数の前記定点画像から得られた複数の前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを前記判定部が判定する、第1又は第2の態様に記載の液体吸引装置の動作確認システムである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれか一つの態様に記載の発明において、
前記視標は、前記プローブから横方向に突出した部分に設けられる、第1~第3のいずれか一つの態様に記載の液体吸引装置の動作確認システムである。
【0013】
本発明の第5の態様は、
プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置の動作確認システムであって、
液体吸引前後に亘って前記プローブ上の視標を撮影した定点画像から前記視標を認識する画像認識部と、
前記定点画像から、液体吸引前後に亘る前記視標の変位量を計測する計測部と、
前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記定点画像は前記視標と前記視標の背景とを含み、
前記動作確認システムは、前記背景中での前記視標の位置座標を学習する学習部を備え、
画像認識された前記視標の位置座標を基に、前記プローブの下方への変位量を前記計測部が計測し、
前記動作確認システムは、複数の前記定点画像を撮影する複数の画像撮影部を備え、
複数の前記定点画像から得られた複数の前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを前記判定部が判定し、
前記視標は、前記プローブから横方向に突出した部分に設けられる、第1の態様に記載の液体吸引装置の動作確認システムである。
【0014】
本発明の第6の態様は、
プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置の動作確認方法であって、
液体吸引前後に亘って前記プローブ上の視標を撮影した定点画像から前記視標を認識する画像認識工程と、
前記定点画像から、液体吸引前後における前記視標の変位量を計測する計測工程と、
前記変位量に基づき、前記プローブが液体を正常に吸引したか否かを判定する判定工程と、
を有する、液体吸引装置の動作確認方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体吸引装置に対する外付けの構成により、吸引量の異常の検知を精度良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る、液体吸引装置、元液入り容器、希釈液用容器、酸溶液入り容器、及び内標準物質を含有する溶液入り容器を示す概略側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る、液体吸引装置、元液入り容器、希釈液用容器、酸溶液入り容器、及び内標準物質を含有する溶液入り容器を示す概略平面図である。
図3図3は、本実施形態において視標を設けた場合の液体吸引前後に亘るプローブ及びプローブ連結部の動きを示す概略側面図であり、(a)は液体吸引開始時、(b)は液体吸引終了時を示す。
図4図4は、本実施形態において視標を設けた場合の液体吸引前後に亘ってプローブ上の視標を撮影した定点画像を示す概略図であり、(a)は液体吸引開始時、(b)は液体吸引終了時を示す。
図5図5は、本実施形態に係る、液体吸引装置の動作確認システムの構成を示すブロック図である。
図6図6は、本実施形態に係る、液体吸引装置の動作確認方法を示すフローチャートである。
図7図7は、本実施形態に係る学習部が、定点画像に含まれる背景中の所定箇所に視標が位置した時の位置座標を学習させる様子を示す概略図であり、(a)はファンが写り込んでいる背景のみが撮影された定点画像であり、(b)(c)は各々異なる所定箇所に視標が位置したと想定した時の定点画像である。
図8図8は、縦軸を視標の検出位置(単位:ピクセル)、横軸を経過時間(単位:秒)としたときのプロットであり、(a)は元液を正常に吸引させた場合、(b)は空吸いさせた場合のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において「~」は所定の値以上且つ所定の値以下を指す。
【0018】
本実施形態では、まず、液体吸引装置の概要、該装置の動作、及び吸引対象となる液体等の配置を説明する。
【0019】
<液体吸引装置>
本実施形態で使用する液体吸引装置は、プローブの先端を液面下に配置して液体を吸引する際に液面が下方に変位するのに追従して前記プローブが下方に変位する液体吸引装置であれば限定は無い。
【0020】
液体吸引装置自体は、市販の液体吸引装置を採用して構わない。本発明は、液体吸引装置に対する外付けの構成(システム等)に関する。「液体吸引装置に対する外付け」とは、液体吸引装置が、本発明に係る動作確認システムとは独立して液体吸引機能を奏することを指し、液体吸引装置における吸引のアルゴリズムに対して本発明に係る動作確認システムが組み込まれていないことを指す。
【0021】
液体吸引装置の用途には限定は無い。本実施形態においては、以下の用途を例示する。
【0022】
試料中の元素濃度を高精度に定量分析する場合には、ICP発光分光分析法や原子吸光光度法、ICP質量分析法を用いる場合が多い。これらの分析法を用いるには、その試料の形態を液体とする必要がある。固体試料なら、酸やアルカリを用いて分解或いは溶解して液体とする。
【0023】
液体となった試料溶液は、上記列挙した分析法に供される。但し、定量的な測定を行うためには、最適な濃度範囲がある。そのため、試料溶液中の元素が高濃度の場合には希釈する必要がある。この希釈に、上記液体吸引装置を用いる。
【0024】
具体的には、上記液体吸引装置により元液をプローブ内に吸引した後に別容器上に移動し、該別容器内に該元液を吐出する。それとは別に、上記液体吸引装置により、今度は希釈用の溶液(例えば酸溶液、内標準物質を含有する溶液)をプローブ内に吸引し、該別容器内に該希釈用の溶液を吐出し、該別容器内にて希釈液を作製する。上記液体吸引装置は、上記希釈液の作製を自動で行ってもよい。
【0025】
図1は、本実施形態に係る、液体吸引装置10、元液入り容器20、希釈液用容器30、酸溶液入り容器40、及び内標準物質を含有する溶液入り容器50を示す概略側面図である。
図2は、本実施形態に係る、液体吸引装置10、元液入り容器20、希釈液用容器30、酸溶液入り容器40、及び内標準物質を含有する溶液入り容器50を示す概略平面図である。但し、図2では液体吸引装置10の筐体11は不図示としている。
本明細書では、天地(上下)方向の天の方向を+Z方向、地の方向を-Z方向とする。上下方向に垂直な水平面をXY平面とし、図1の紙面右方向を+X方向、紙面左方向を-X方向(まとめてX方向)とし、図2の紙面上方向を+Y方向、紙面下方向を-Y方向(まとめてY方向)とする。
以降に示す構成図はあくまで概略図であり、寸法及び縮尺は任意に設定可能である。
【0026】
液体吸引装置10は、筐体11と、筐体11から下方(-Z方向)に延伸する棒状の延伸部12と、液体を吸引するための先端(開口、ノズル)を備えたプローブ13と、プローブ13と連結し且つ延伸部12と嵌合して筐体11内の駆動機構(不図示)によりプローブ13と共に下方(-Z方向)に変位可能なプローブ連結部14とを備える。筐体11がX方向及びY方向を移動することにより、プローブ13の先端を例えば元液入り容器20の直上に配置させる。筐体11の移動可能方向は、X方向、Y方向に加えてXY方向(斜め方向)が存在しても構わない。
【0027】
そして、筐体11中の駆動機構(不図示)によりプローブ連結部14ひいてはプローブ13の先端を下方(-Z方向)に変位させ、プローブ13の先端を液面下に配置する。プローブ13による液面の検出は、微弱電流の導通が利用される。この点は、従来の分注装置の機構を採用して構わない。プローブ13の先端が元液入り容器20の直上に位置するまで筐体11自体を下方(-Z方向)に変位させ、その後、液体吸引作業の開始と共にプローブ連結部14ひいてはプローブ13の先端を下方(-Z方向)に変位させても構わない。
【0028】
元液21の吸引後、筐体11中の駆動機構がプローブ13の先端を上方(+Z方向)に変位させる。そして、再び筐体11がXY平面上を移動し、プローブ13の先端を希釈液用容器30の直上に配置させる。そして、筐体11中の駆動機構によりプローブ13の先端を下方(-Z方向)に変位させ、プローブ13内の元液21を希釈液用容器30に吐出する。酸溶液41、内標準物質を含有する溶液51に関しても、同様の動作を行う。
【0029】
このとき、図2に示すように、希釈液用容器30と、他の各液体入り容器との間の経路(X方向、Y方向の2方向で移動する際の経路)には、他の容器を配置しないのが好ましい。他の容器内の液体による汚染を抑制するためである。
【0030】
元液入り容器20と希釈液用容器30は、X方向及びY方向に複数個配置しても構わない。酸溶液入り容器40、及び内標準物質を含有する溶液入り容器50は、1個配置で足りるが、複数個配置することは排除しない。
【0031】
<視標16>
本実施形態においては、上記液体吸引装置10に対し、画像認識可能な視標16を設定する。本実施形態においては、横方向(上下方向以外の方向のことを指し、特に水平方向)へと突出した板状の突出部15を有するプローブ連結部14を採用し、該突出部15に視標16を付する例を挙げる。板状の突出部15の厚さ方向はY方向とし、2つの主面はXZ平面上にある。
【0032】
もちろん、突出部15以外のプローブ連結部14又はプローブ13自体に視標16を付しても構わない。プローブ13に対して突出部15を設け、該突出部15に視標16を設けても構わない。また、市販の液体吸引装置10におけるプローブ連結部14又はプローブ13自体の構成を視標16として設定しても構わない。但し、市販の液体吸引装置10の全てに画像認識可能な構成が存在するとは限らない。そのため、別途、画像認識しやすい視標16を設けるのが好ましい。
【0033】
視標16の色、形状等には限定は無いが、画像認識しやすい視標16であるのがよい。本実施形態においては、板状の突出部15の一つの主面に対して矩形の白色のシール16aを張り付け、該シール16aに対して赤い丸(直径10mm)をマーク16bとして付し、該マーク16bが付された該シール16aを視標16とする。本実施形態では、視標16の位置座標として、矩形のシール16aに向かって左上の角の位置座標を検知する場合を例示する。
【0034】
<本実施形態の原理>
図3は、本実施形態において視標16を設けた場合の液体吸引前後に亘るプローブ13及びプローブ連結部14の動きを示す概略側面図であり、(a)は液体吸引開始時、(b)は液体吸引終了時を示す。
図4は、本実施形態において視標16を設けた場合の液体吸引前後に亘ってプローブ13上の視標16を撮影した定点画像6pを示す概略図であり、(a)は液体吸引開始時、(b)は液体吸引終了時を示す。
【0035】
図3に示すように、液体吸引装置10において、筐体11より先の構成(即ちプローブ連結部14及びプローブ13)は、液体の吸引量に応じて下方(-Z方向)に変位する。液体吸引前後に亘って視標16が写るように定点画像6pを得る。
【0036】
図3に示すように正常に吸引が行われていれば、筐体11より先の構成は正常に下方に変位する(図3だと実空間距離A(mm))。そうなると、定点画像6pにおいて、図4に示すように、液体吸引開始時での視標16の位置よりも、液体吸引終了時での視標16の位置が下方に位置する(図4だと画像上距離A´(pixel))。本実施形態では、この視標16の下方への変位量をもって、プローブ13が液体を正常に吸引したか否かを判定する。これが本実施形態の原理である。これを踏まえ、本実施形態に係る、液体吸引装置10の動作確認システム1及び確認方法について説明する。
【0037】
<動作確認システム及び確認方法>
図5は、本実施形態に係る、液体吸引装置10の動作確認システム1の構成を示すブロック図である。
図6は、本実施形態に係る、液体吸引装置10の動作確認方法を示すフローチャートである。
【0038】
本実施形態に係る液体吸引装置10の動作確認システム1では、画像認識部2が、液体吸引前後に亘ってプローブ13上の視標16を撮影した定点画像6pから上記視標16を認識する(画像認識工程)。そして、計測部3が、上記定点画像6pから、液体吸引前後に亘る上記視標16の変位量を計測する(計測工程)。そして、判定部4が、変位量に基づき、前記プローブ13が液体を正常に吸引したか否かを判定する(判定工程)。
【0039】
定点画像6pは、少なくとも液体吸引前後に亘って撮影方向が一定であればよいが、液体吸引前及び後においても撮影方向が常に一定であれば、上記システム1の好適な一構成である学習部5により視標16の背景の画像を含めた座標位置の学習が容易になる。
【0040】
図7は、本実施形態に係る学習部5が、定点画像6pに含まれる背景中の所定箇所に視標16が位置した時の位置座標を学習させる様子を示す概略図であり、(a)はファン60が写り込んでいる背景のみが撮影された定点画像6pであり、(b)(c)は各々異なる所定箇所に視標16が位置したと想定した時の定点画像6pである。
【0041】
図7が示すように、学習部5では、定点画像6p中のどれが視標16であるかをシステム1に理解させる。本実施形態では、マーク16bが付されたシール16aが視標16であることをシステム1に理解させる。この理解の具体的な処理としては、以下の内容が挙げられる。以下の理解は、液体吸引装置10の動作確認システム1の実施前に、学習部5により事前に行っておくのが好ましい。
【0042】
定点画像6pを複数(例えば1000枚)用意する。各定点画像6pの間の差分を求める。差分の特徴量を抽出する。そして、抽出した特徴量の中で共通する特徴量を有するものを視標16として動作確認システム1に認識させる。これにより、視標16についての登録作業等を要さずに、動作確認システム1に視標16を認識させることができる。
【0043】
そして、背景中での前記視標16の位置座標を学習させる。位置座標は、定点画像6p内の位置座標であってもよい。本実施形態では、視標16の位置座標として、矩形のシール16aに向かって左上の角の位置座標を検知する場合を例示するが、本発明はこの場合に限定されない。例えば、シール16a又はマーク16bの中心(或いは重心)を基準にしてもよいし、輪郭が特徴的である場合は特徴的な点を基準にしてもよい。いずれにせよ、本実施形態で撮影されるのは定点画像6pであるが故に、背景は変化しないため、定点画像6pは学習に好都合である。
【0044】
その場合、原点位置は任意に設定しても構わず、例えば定点画像6p内の中央の画素(ピクセル)を原点位置としてもよい。また、位置座標は、実空間内の位置座標であってもよい。その場合、原点位置は任意に設定しても構わず、例えば一連の液体吸引動作の開始前のプローブ13の初期位置(例えば先端の初期位置)を原点位置としても構わない。但し、実空間内の位置座標を採用する場合、定点画像6p内のピクセルと実空間内の位置座標を紐づけする必要がある。
【0045】
計測部3により、学習部5により学習された位置座標であって、画像認識された視標16の位置座標を基に、プローブ13の下方への変位量を計測するのが好ましい。位置座標がわかれば変位量が正確に求められる。変位量がゼロか否かを判定部4による判定基準とするならば、位置座標まで求めずとも判定工程は可能である。その一方、位置座標を基に変位量を計測することにより、変位量に応じたプローブ13による液体の吸引量が求められる。そうなると、変位量に閾値を設けて判定工程を行うことが可能となる。
【0046】
定点画像6pは、少なくとも液体吸引開始時と液体吸引終了時との2つあればよいが、液体吸引前後に亘るプローブ13及びプローブ連結部14の動きを正確に把握するには、液体吸引前後に亘って等しい時間間隔を空けて3つ以上の画像(好適には10以上の画像)取得するのが好ましい。
【0047】
本実施形態の動作確認システム1の一部として、上記定点画像6pを撮影する画像撮影部6を備えてもよい。また、本実施形態の動作確認方法の一部として、上記定点画像6pを撮影する画像撮影工程を設けてもよい。
【0048】
もちろん、本実施形態の動作確認システム1は上記定点画像6pが取得できれば本発明の効果を奏するため、本実施形態の動作確認システム1とは別の構成として画像撮影部6を存在させても構わない。
【0049】
なお、画像撮影部6の具体的な構成としては、上記定点画像6pをデータとして取得可能なものであれば限定は無く、例えば市販の撮影機器(例えばWebカメラ)を使用しても構わない。
【0050】
上記画像撮影部6は、複数の前記定点画像6pを撮影するよう複数設けるのがよい。その際、各画像撮影部6は、互いに異なる撮影角度で視標16が撮影されるよう配置してもよい。但し、各溶液の吸引の際に視標16が撮影可能な位置に画像撮影部6を配置する。この構成を採用することにより、各定点画像6pにおいて視標16の下方への変位量が得られる。例えば各変位量の平均値を視標16の変位量として採用し、該平均値が閾値を上回っていれば正常に吸引されたと判定し、そうでなければ異常な吸引が行われたと判定してもよい。なお、各種溶液の容器に対応するように溶液の種類の数だけ画像撮影部6を配置しても構わない。
【0051】
画像撮影部6の撮影方向(カメラの光軸方向)は水平面上にあるのが好ましい。そして、視標16は、画像撮影部6が撮影しやすいように、カメラの光軸方向に対して垂直面上に形成されるのが好ましい。
【0052】
学習部5、画像認識部2、計測部3、判定部4は(場合によっては画像撮影部6も)、動作確認システム1が有する制御部(不図示)により制御される。なお、本実施形態では、画像撮影部6以外の各構成がコンピュータ1に搭載される場合を例示する。その一方、本実施形態にて述べる構成のうちの一部を、コンピュータ1に搭載するのではなく、ネットワークに接続した別構成としても構わない。
【0053】
判定工程後、吸引量の異常が検知された場合、作業者に対して何らかの警告を行う(警告工程を行う)警告部7をシステム1が備えるのがよい。警告部7としては、コンピュータ1のディスプレイに警告メッセージを表示する機能を有する構成であってもよいし、コンピュータ1とは別に作業者の目につく位置に配置された警告灯であってもよい。
【0054】
以上の各構成(又は各工程)により、吸引量の異常の検知を精度良く行えるようになる。例えば、液体吸引装置10としてTECAN株式会社製の製品名Freedom EVO75を採用し、且つ、画像認識部2、計測部3、学習部5としてGRID株式会社製のソフトウエア製品名ReNomを採用し、画像撮影部6として市販のWebカメラを採用した。該Webカメラは、吸引対象となる元液入り容器20の-Y方向側に配置し、撮影方向を+Y方向とし、突出部15ひいては視標16とその背景とが撮影されるように配置した。この状況下で、元液21を正常に吸引させた場合、そして意図的に空吸いさせた場合における、視標16の変位量を得た。
【0055】
図8は、縦軸を視標16の検出位置(単位:ピクセル)、横軸を経過時間(単位:秒)としたときのプロットであり、(a)は元液21を正常に吸引させた場合、(b)は空吸いさせた場合のプロットである。縦軸の原点位置は、定点画像6pの最左下のピクセルとした。
【0056】
図8に示すように、(b)の場合だと視標16即ちプローブ13の下方への変位が無かった一方、(a)の場合だと視標16即ちプローブ13の下方への変位が生じた。つまり、(a)の場合だと元液21が正常に吸引されたと判定される一方で、(b)の場合だと空吸いが発生したと判定される。本実施形態ならば、例えば図8のプロットを基に、元液21が正常に吸引されたが空吸いされたかを明確に判定できる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0058】
本実施形態は液体吸引装置10の動作確認システム1及び動作確認方法に係るが、本実施形態は、該システム1の内容をコンピュータ1により実行させるプログラムにより実現可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…コンピュータ(液体吸引装置の動作確認システム)
2…画像認識部
3…計測部
4…判定部
5…学習部
6…画像撮影部
6p…定点画像
7…警告部
10…液体吸引装置(分注装置)
11…筐体
12…延伸部
13…プローブ
14…プローブ連結部
15…突出部
16…視標
20…元液入り容器
21…元液
30…希釈液用容器
40…酸溶液入り容器
41…酸溶液
50…内標準物質を含有する溶液入り容器
51…内標準物質を含有する溶液
60…ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8