(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150607
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】速度制御補助装置
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20220929BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G05B13/04
G05B11/36 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053285
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元哉
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA05
5H004GB12
5H004HA09
5H004HB09
5H004JA03
5H004JB21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の走行制御に用いるモデルが実際の車両の状態と異なる状態における車両の制御の精度を向上させる。
【解決手段】速度制御補助装置10は、車両の目標加減速度を指示する目標加減速指示を一定の周期で取得する取得部121と、車両の加減速度を、一定の周期で検出する検出部122と、第1時刻における目標加減速指示が入力されると、第1時刻において目標加減速指示が与えられた車両の加減速度であるモデル加減速度を出力する規範モデルを記憶する記憶部11と、第1時刻において検出部122が検出した加減速度と、第1時刻における目標加減速指示が入力された規範モデルが出力したモデル加減速度との差を、目標加減速指示に対応する加減速度に加算することにより、第1時刻に対応する周期の次の周期の第2時刻において車両の速度を制御する速度制御部4に指示する加減速度である補正加減速度を決定する決定部123と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の目標加減速度を指示する目標加減速指示を一定の周期で取得する取得部と、
前記車両の加減速度を、前記一定の周期で検出する検出部と、
第1時刻における前記目標加減速指示が入力されると、前記第1時刻において前記目標加減速指示が与えられた前記車両の加減速度であるモデル加減速度を出力する規範モデルを記憶する記憶部と、
前記第1時刻において前記検出部が検出した前記加減速度と、前記第1時刻における前記目標加減速指示が入力された前記規範モデルが出力した前記モデル加減速度との差を、前記目標加減速指示に対応する加減速度に加算することにより、前記第1時刻に対応する周期の次の周期の第2時刻において前記車両の速度を制御する速度制御部に指示する加減速度である補正加減速度を決定する決定部と、
を有する速度制御補助装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記車両の重量に対応する複数の前記規範モデルであって、前記車両の重量が大きければ大きいほど、絶対値が小さい前記モデル加減速度を出力する複数の前記規範モデルを記憶し、
前記取得部は、前記車両の重量を取得し、
前記決定部は、複数の前記規範モデルから、前記車両の重量に対応する1つの前記規範モデルを選択し、選択した前記規範モデルを使用して前記補正加減速度を決定する、
請求項1に記載の速度制御補助装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記車両の操舵角に対応する複数の前記規範モデルであって、前記車両の操舵角が大きければ大きいほど、絶対値が小さい前記モデル加減速度を出力する複数の前記規範モデルを記憶し、
前記取得部は、前記車両の操舵角を取得し、
前記決定部は、複数の前記規範モデルから、前記車両の操舵角に対応する1つの前記規範モデルを選択し、選択した前記規範モデルを使用して前記補正加減速度を決定する、
請求項1又は2に記載の速度制御補助装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記車両が走行する路面の曲率に対応する複数の前記規範モデルであって、前記車両が走行する路面の曲率が大きければ大きいほど、絶対値が小さい前記モデル加減速度を出力する複数の前記規範モデルを記憶し、
前記取得部は、前記車両が走行する路面の曲率を取得し、
前記決定部は、複数の前記規範モデルから、前記車両が走行する路面の曲率に対応する1つの前記規範モデルを選択し、選択した前記規範モデルを使用して前記補正加減速度を決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の速度制御補助装置。
【請求項5】
前記速度制御部に前記補正加減速度を入力するか、前記目標加減速指示に対応する加減速度を入力するか、を選択する操作を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部が受け付けた操作に基づいて、前記補正加減速度又は前記目標加減速指示に対応する加減速度のいずれか一方を選択し、選択した加減速度を前記速度制御部に出力する出力部と、をさらに有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の速度制御補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度制御補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の速度を制御するための速度制御装置が知られている。特許文献1には、車両モデルを用いることにより車両が走行するために適した加減速度と操舵角とを決定する車両用制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両モデルが実際の車両の状態と合っていないと、車両モデルを用いて決定した加減速度を用いて車両を制御した場合に、車両の加減速度が、加減速度の目標値から乖離してしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両の走行制御に用いるモデルが実際の車両の状態と異なる状態における車両の制御の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る速度制御補助装置は、車両の目標加減速度を指示する目標加減速指示を一定の周期で取得する取得部と、前記車両の加減速度を、前記一定の周期で検出する検出部と、第1時刻における前記目標加減速指示が入力されると、前記第1時刻において前記目標加減速指示が与えられた前記車両の加減速度であるモデル加減速度を出力する規範モデルを記憶する記憶部と、前記第1時刻において前記検出部が検出した前記加減速度と、前記第1時刻における前記目標加減速指示が入力された前記規範モデルが出力した前記モデル加減速度との差を、前記目標加減速指示に対応する加減速度に加算することにより、前記第1時刻に対応する周期の次の周期の第2時刻において前記車両の速度を制御する速度制御部に指示する加減速度である補正加減速度を決定する決定部と、を有する。
【0007】
前記記憶部は、前記車両の重量に対応する複数の前記規範モデルであって、前記車両の重量が大きければ大きいほど、絶対値が小さい前記モデル加減速度を出力する複数の前記規範モデルを記憶し、前記取得部は、前記車両の重量を取得し、前記決定部は、複数の前記規範モデルから、前記車両の重量に対応する1つの前記規範モデルを選択し、選択した前記規範モデルを使用して前記補正加減速度を決定してもよい。
【0008】
前記記憶部は、前記車両の操舵角に対応する複数の前記規範モデルであって、前記車両の操舵角が大きければ大きいほど、絶対値が小さい前記モデル加減速度を出力する複数の前記規範モデルを記憶し、前記取得部は、前記車両の操舵角を取得し、前記決定部は、複数の前記規範モデルから、前記車両の操舵角に対応する1つの前記規範モデルを選択し、選択した前記規範モデルを使用して前記補正加減速度を決定してもよい。
【0009】
前記記憶部は、前記車両が走行する路面の曲率に対応する複数の前記規範モデルであって、前記車両が走行する路面の曲率が大きければ大きいほど、絶対値が小さい前記モデル加減速度を出力する複数の前記規範モデルを記憶し、前記取得部は、前記車両が走行する路面の曲率を取得し、前記決定部は、複数の前記規範モデルから、前記車両が走行する路面の曲率に対応する1つの前記規範モデルを選択し、選択した前記規範モデルを使用して前記補正加減速度を決定してもよい。
【0010】
前記速度制御部に前記補正加減速度を入力するか、前記目標加減速指示に対応する加減速度を入力するか、を選択する操作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部が受け付けた操作に基づいて、前記補正加減速度又は前記目標加減速指示に対応する加減速度のいずれか一方を選択し、選択した加減速度を前記速度制御部に出力する出力部と、をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の走行制御に用いるモデルが実際の車両の状態と異なる状態における車両の制御の精度を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】速度制御補助システムSの構成を示す図である。
【
図3】目標加減速度と車両の加減速度とを示す図である。
【
図4】速度制御補助装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[速度制御補助システムSの概要]
図1は、速度制御補助システムSの構成を示す図である。速度制御補助システムSは、通知部1と、速度検出部2と、操作部3と、速度制御部4と、速度制御補助装置10と、を備える。速度制御補助システムSは、車両の走行制御に用いるモデルが実際の車両の状態と異なる状態であっても、目標加減速度に対応する加減速度で車両を走行させることにより、車両の制御の精度を向上させるためのシステムである。目標加減速度は、例えばECU(Electronic Control Unit)が指示した加減速度である。
【0014】
通知部1は、例えばECUから取得した車両の目標加減速度を指示する目標加減速指示、車両の重量、車両の操舵角及び車両が走行する路面の曲率を、一定の周期で速度制御補助装置10に通知する。
【0015】
速度検出部2は、例えば車両が備える速度センサ(不図示)が測定した車両の速度を一定の周期で速度制御補助装置10に出力する。
【0016】
操作部3は、例えばボタン又はタッチパネルを有する。車両の運転者は、操作部3が有するボタン又はタッチパネルを押すことにより、速度制御補助装置10が車両の加減速度を制御する動作を開始させるか停止させるかを操作する。操作部3は、車両の運転者が操作した結果を速度制御補助装置10に通知する。
【0017】
速度制御部4は、速度制御補助装置10が一定の周期で出力した加減速度に基づいて、車両の加減速度を制御する。速度制御部4は、例えば車両の設計データに基づいて作成された、車両の加減速指示に対応する図示トルクを特定するための伝達関数を含む。
【0018】
速度制御補助装置10は、車両の走行制御に用いる規範モデルを有している。規範モデルは、例えば車両の設計データに基づいて作成された伝達関数であり、目標加減速指示に対応するモデル加減速度を出力する。モデル加減速度は、規範モデルと車両の状態とが同じである場合の加減速度である。速度制御補助装置10は、通知部1が通知した目標加減速指示が入力された規範モデルから出力されるモデル加減速度と、速度検出部2が出力した車両の速度とに基づいて補正加減速度を決定し、速度制御部4に出力する。
【0019】
速度制御補助装置10がこのように動作することで、速度制御補助装置10は、規範モデルと実際の車両の状態とが異なっている場合であっても、車両を目標加減速度で走行させるための補正加減速度を速度制御部4に出力することができる。その結果、速度制御補助装置10は、車両の制御の精度を向上させることができる。以下、速度制御補助装置10の構成及び動作を詳細に説明する。
【0020】
[速度制御補助装置10の構成]
速度制御補助装置10は、記憶部11と、制御部12とを有する。制御部12は、取得部121と、検出部122と、決定部123と、操作受付部124と、出力部125とを有する。
【0021】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムと複数の規範モデルとを記憶している。規範モデルは、例えば線形時不変型の伝達関数を示すプログラムである。規範モデルの詳細は後述する。
【0022】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、取得部121、検出部122、決定部123、操作受付部124及び出力部125として動作する。
【0023】
取得部121は、通知部1から車両の目標加減速度を指示する目標加減速指示を一定の周期で取得する。取得部121は、通知部1から一定の周期で車両の重量、車両の操舵角及び車両が走行する路面の曲率を取得してもよい。
【0024】
検出部122は、車両の加減速度を、一定の周期で検出する。検出部122は、速度検出部2が一定の周期で出力した車両の速度に基づいて、一定の周期で車両の加減速度を検出する。速度検出部2が車両の速度を出力する周期と検出部122が加減速度を検出する周期とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0025】
決定部123は、取得部121が取得した目標加減速指示と検出部122が検出した加減速度と記憶部11が記憶している規範モデルとに基づいて補正加減速度を決定する。規範モデルは、第1時刻における目標加減速指示が入力されると、第1時刻において目標加減速指示が与えられた車両の加減速度であるモデル加減速度を出力する。モデル加減速度は、第1時刻における目標加減速指示に対応する加減速度であるが、例えば車両の経年変化に伴って規範モデルが実際の車両の状態に合っていない状態になっていると、目標加減速指示に適した加減速度でないという場合がある。
【0026】
そこで、決定部123は、第1時刻における車両の加減速度と目標加減速指示とに基づいて第1時刻に対応する周期の次の周期の第2時刻における補正加減速度を決定する。決定部123は、第1時刻において検出部122が検出した加減速度と、第1時刻における目標加減速指示が入力された規範モデルが出力したモデル加減速度との差を、目標加減速指示に対応する加減速度に加算する。そして、決定部123は、第1時刻に対応する周期の次の周期の第2時刻において車両の速度を制御する速度制御部4に指示する加減速度である補正加減速度を決定する。決定部123がこのように動作することで、決定部123は、規範モデルと実際の車両の状態とが異なる場合であっても、車両が目標加減速指示に対応する加減速度で走行するための補正加減速度を速度制御部4に出力できる。
【0027】
以下、
図2を用いて決定部123の構成及び動作を詳細に説明する。
図2は、決定部123の構成を示す図である。決定部123は、規範モデル制御部131と、減算器132と、補償器133と、加算器134とを有する。
【0028】
規範モデル制御部131は、記憶部11から取得した規範モデルに、第1時刻において取得部121が取得した目標加減速指示に対応する目標加減速度を入力することにより、目標加減速指示に対応するモデル加減速度を特定する。規範モデル制御部131は、特定したモデル加減速度を減算器132に出力する。
【0029】
減算器132は、第1時刻において規範モデル制御部131が出力したモデル加減速度と、第1時刻において検出部122が検出した車両の加減速度との差を補償器133に出力する。
【0030】
補償器133は、例えばPD(Proportional Differential)制御又はH∞(H-infinity)制御を用いた線形時不変型の伝達関数である。補償器133は、第2時刻における補正加減速度の精度を向上させるために、第1時刻において減算器132が出力したモデル加減速度と車両の加減速度との差を補償する。補償器133は、モデル加減速度と車両の加減速度との差を補償した補償値を加算器134に出力する。
【0031】
加算器134は、第1時刻において取得部121が取得した目標加減速指示に対応する目標加減速度と、第1時刻において補償器133が出力した補償値とを加算することにより、第2時刻における補正加減速度を生成する。加算器134は、第2時刻における補正加減速度を出力部125に出力する。
【0032】
第2時刻における補正加減速度Rは、第1時刻における目標加減速度r、第1時刻における車両の加減速度y、規範モデル制御部131が使用する規範モデルTd(s)、及び補償器133が用いる伝達関数D(s)を用いて以下の式(1)のように表現できる。
【数1】
【0033】
図3は、目標加減速度と車両の加減速度とを示す図である。
図3の横軸は時刻を示し、
図3の縦軸は加速度を示す。加速度A1は、目標加減速指示に対応する目標加減速度である。加速度A2は、速度制御部4が目標加減速度を取得した場合における車両の加減速度である。加速度A3は、速度制御部4が補正加減速度を取得した場合における車両の加減速度である。
【0034】
図3に示すように、時刻7において、補正加減速度に応じた車両の加減速度(加速度A3)は、目標加減速度に応じた車両の加減速度(加速度A2)よりも、目標加減速度(加速度A1)に近い加減速度である。
【0035】
決定部123は、このように目標加減指示に対応する目標加減速度を補正した補正加減速度を速度制御部4に出力する。その結果、決定部123は、例えば規範モデルが実際の車両の状態と異なることにより、目標加減速度と当該目標加減速度に基づいて走行する車両の加減速度とが異なる場合であっても、目標加減速度に対応する補正加減速度で車両を走行させることができる。
【0036】
具体的には、決定部123は、車両が備える内燃機関又はモータが経年劣化した場合であっても、経年劣化した内燃機関又はモータの出力特性(車両の速度)を検出部122が検出することにより、車両が目標加減速度で走行するための補正加減速度を決定する。その結果、決定部123は、車両の制御の精度を向上させることができる。
【0037】
さらに、決定部123は、速度制御部4に含まれる伝達関数を変更せずに、記憶部11に記憶している規範モデルを更新することにより、速度制御部4が出力する図示トルクを変更することができる。その結果、速度制御補助装置10は、車両の加減速度の制御を容易に変更することができる。
【0038】
決定部123は、記憶部11が記憶している複数の規範モデルのうち1つを選択し、選択した規範モデルを使用して補正加減速度を決定してもよい。記憶部11は、例えば車両の重量に対応する複数の規範モデルであって、車両の重量が大きければ大きいほど、絶対値が小さいモデル加減速度を出力する複数の規範モデルを記憶している。そして、決定部123は、複数の規範モデルから、取得部121が取得した車両の重量に対応する1つの規範モデルを選択し、選択した規範モデルを使用して補正加減速度を決定する。
【0039】
車両は、車両の重量が大きければ大きいほど、加減速度を大きくすることが困難である。これに対して、決定部123は、車両の重量に対応する規範モデルを使用して、車両の重量に応じた補正加減速度を決定する。具体的には、決定部123は、車両の重量が大きければ大きいほど、車両の速度が目標加減速指示に対応する目標加減速度に到達する時刻が遅くなるように補正加減速度を決定する。決定部123がこのように動作することで、決定部123は、車両の速度を変更する際の安全性を向上させることができる。
【0040】
決定部123は、取得部121が取得した車両の操舵角に対応する規範モデルを使用して補正加減速度を決定してもよい。この場合、記憶部11は、例えば車両の操舵角に対応する複数の規範モデルであって、車両の操舵角が大きければ大きいほど、絶対値が小さいモデル加減速度を出力する複数の規範モデルを記憶している。そして、決定部123は、複数の規範モデルから、車両の操舵角に対応する1つの規範モデルを選択し、選択した規範モデルを使用して補正加減速度を決定する。
【0041】
車両は、操舵角が大きければ大きいほど、加減速度を大きくすると安全性が低下する。これに対して、決定部123は、車両の操舵角に対応する規範モデルを使用して、車両の操舵角に応じた補正加減速度を決定する。具体的には、決定部123は、車両の操舵角が大きければ大きいほど、車両の速度が目標加減速度に到達する時刻が遅くなるように補正加減速度を決定する。決定部123がこのように動作することで、決定部123は、車両の操舵角が大きい場合であっても、車両の速度を変更する際の安全性を向上させることができる。
【0042】
決定部123は、取得部121が取得した、車両が走行する路面の曲率に対応する規範モデルを使用して補正加減速度を決定してもよい。この場合、記憶部11は、例えば車両が走行する路面の曲率に対応する複数の規範モデルであって、車両が走行する路面の曲率が大きければ大きいほど、絶対値が小さいモデル加減速度を出力する複数の規範モデルを記憶している。そして、決定部123は、複数の規範モデルから、車両が走行する路面の曲率に対応する1つの規範モデルを選択し、選択した規範モデルを使用して補正加減速度を決定する。
【0043】
車両は、車両が走行する路面の曲率が大きければ大きいほど、加減速度を大きくすると安全性が低下する。これに対して、決定部123は、車両が走行する路面の曲率に対応する規範モデルを使用して、車両の操舵角に応じた補正加減速度を決定する。具体的には、決定部123は、車両が走行する路面の曲率が大きければ大きいほど、車両の速度が目標加減速度に到達する時刻が遅くなるように補正加減速度を決定する。決定部123がこのように動作することで、決定部123は、車両が走行する路面の曲率が大きい場合であっても、車両の速度を変更する際の安全性を向上させることができる。
【0044】
操作受付部124は、操作部3が出力した、車両の運転者が操作した結果を受け付ける。操作受付部124は、速度制御部4に補正加減速度を入力するか、目標加減速指示に対応する加減速度を入力するか、を選択する操作を受け付ける。
【0045】
出力部125は、操作受付部124が受け付けた操作に基づいて、補正加減速度又は目標加減速指示に対応する加減速度のいずれか一方を選択し、選択した加減速度を速度制御部4に出力する。出力部125は、例えば運転者が車両の加減速度を制御するように操作した場合は補正加減速度を速度制御部4に出力し、運転者が車両の加減速度を制御しないように操作した場合は目標加減速度を速度制御部4に出力する。出力部125がこのように動作することで、運転者は、車両に補正加減速度を用いた走行をさせるか否かを、当該運転者の好みに応じて選択することができる。
【0046】
[速度制御補助装置10のフローチャート]
図4は、速度制御補助装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、速度制御補助装置10が目標加減速度に基づいて補正加減速度を決定する動作を示している。
【0047】
取得部121は、通知部1から第1時刻における目標加減指示を取得する(S11)。検出部122は、速度検出部2が検出した車両の速度に基づいて第1時刻における車両の加減速度を検出する(S12)。
【0048】
決定部123は、取得部121が取得した第1時刻における目標加減指示に対応する目標加減速度を規範モデルに入力することにより、第1時刻におけるモデル加減速度を特定する(S13)。決定部123は、第1時刻におけるモデル加減速度、車両の加減速度及び目標加減指示に基づいて、第1時刻の次の周期の時刻である第2時刻における補正加減速度を決定する(S14)。
【0049】
速度制御補助装置10は、処理を終了する操作が行われていない場合(S15のNO)、S11からS14の処理を繰り返す。処理を終了する操作が行われた場合(S15のYES)、速度制御補助装置10は、処理を終了する。
【0050】
[速度制御補助装置10の効果]
以上説明したように、速度制御補助装置10は、車両の目標加減速度を指示する目標加減速指示を一定の周期で取得する取得部121と、車両の加減速度を一定の周期で検出する検出部122と、を有する。そして、決定部123が、記憶部11が記憶している規範モデルに目標加減速指示を入力することによりモデル加減速度を特定し、特定したモデル加減速度と検出部122が検出した車両の加減速度とに基づいて補正加減速度を決定する。
【0051】
速度制御補助装置10がこのように動作することで、速度制御補助装置10は、車両の走行制御に用いるモデルが実際の車両の状態と異なる状態であっても、車両を目標加減速度で走行させることができる。速度制御補助装置10のこの特徴は、例えば車両が備える内燃機関若しくはモータが経年劣化した場合、又は、車両が備える内燃機関若しくはモータの出力特性を容易に補正したい場合に好適である。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0053】
1 通知部
2 速度検出部
3 操作部
4 速度制御部
10 速度制御補助装置
11 記憶部
12 制御部
121 取得部
122 検出部
123 決定部
124 操作受付部
125 出力部
131 規範モデル制御部
132 減算器
133 補償器
134 加算器