(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150619
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】動物捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01M 23/20 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A01M23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053300
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】304053946
【氏名又は名称】株式会社キャムズ
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅章
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA12
2B121BA16
2B121BA51
2B121BA58
2B121EA26
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】比較的低コストでありながら、長期的な信頼性を有する電動柵を備えた動物捕獲装置を提供する。
【解決手段】本発明の動物捕獲装置は、平面的あるいは立体的に閉空間をなす捕獲空間と、捕獲空間に出入り可能な侵入部と、侵入部を閉塞するための閉塞手段とを備えた動物を捕獲するための動物捕獲装置であって、閉塞手段は、回転駆動手段と、回転駆動手段により上下動する線状体と、線状体により吊り下げられた閉塞部保持手段と、閉塞部保持手段により保持される落下式閉塞部とを有し、閉塞部保持手段は落下式閉塞部を持ち上げた状態から、保持力を解放することで落下式閉塞部を落下させることが可能なことを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的あるいは立体的に閉空間をなす捕獲空間と、
上記捕獲空間に出入り可能な侵入部と、
上記侵入部を閉塞するための閉塞手段と、
を備えた動物を捕獲するための動物捕獲装置であって、
上記閉塞手段は、
回転駆動手段と、
上記回転駆動手段により上下動する線状体と、
上記線状体により吊り下げられた閉塞部保持手段と、
上記閉塞部保持手段により保持される落下式閉塞部と、
を有し、
上記閉塞部保持手段は上記落下式閉塞部を持ち上げた状態から、保持力を解放することで上記落下式閉塞部を落下させることが可能な
ことを特徴とする動物捕獲装置。
【請求項2】
双方向通信手段と、
捕獲空間内の状況を検知する検知手段と、
をさらに有し、
上記双方向通信手段により上記検知手段が検知した捕獲空間内の状況を送信し、
上記双方向通信可能な通信手段により、上記落下式閉塞部を遠隔操作により持ち上げることが可能な
ことを特徴とする請求項1に記載の動物捕獲装置。
【請求項3】
上記閉塞部保持手段は、把持部、挟持部、あるいは電磁石を用いた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の動物捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞手段に特徴を有する動物捕獲装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野生動物を捕獲するための装置として、檻の入口に落下柵を設け、野生動物が檻に入ったことをセンサー等で捉え、落下柵を落下させて、野生動物を捕獲する装置が広く使用されている。
【0003】
また、猪や鹿等の野生動物は群れで行動するため、農作物への被害は深刻であり、これを防止するために、複数頭の野生動物を捕獲するための捕獲装置も提案されている。この装置においては、捕獲用装置本体内の捕獲領域における野生動物の検出動作を所定の時間間隔で行うとともに、検出動作と次の検出動作との間の期間には電力が供給されないように構成された検出部と、検出部の検出動作による野生動物の検出頻度、検出部の検出動作により取得された野生動物の頭数以外の複数回の検出値、または、検出部が野生動物を検出した検出時間間隔の少なくとも1 つの関数に基づいて、捕獲領域における野生動物の捕獲処理を実行するための制御部とを備えている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
檻の入口に落下柵を設けた捕獲装置においても、あるいは、特許文献1に示したようなある程度の広さを持つ捕獲装置本体内に複数頭の動物を誘い込んで捕獲する捕獲装置においても、誤捕獲は必ず起こり得る問題である。
【0006】
例えば、農作物への被害をもたらさない犬や猫といった動物や、人間の子供を誤って捕獲した際には、できるだけ早く、落下柵を上げて解放する必要がある。しかし、こういった捕獲装置は山奥等に設置される場合も多く、迅速に対応するのが困難であるのが現状である。
【0007】
一般には、ネットカメラ等で捕獲装置内部を監視し、誤捕獲が起こった際には、捕獲装置まで行き、落下柵を上げて誤捕獲した動物や子供を解放することが行われている。しかし、山奥等へ直ちに出向くことは大変であり、また迅速な解放を行えないこともあり、捕獲装置における重大な課題となっている。
【0008】
このような問題を解決するために、落下柵を電動で上げることができる電動柵とし、インターネット等で遠隔操作を行うことが有効である。しかし、このような遠隔操作可能な電動柵は実用化されていない。
この原因は、長期的な信頼性を持つ堅牢な電動柵の作製は困難であり、あるいは非常に高コストになるからである。例えば、モーターと複数のギアを組み合わせて、落下柵を持ち上げることは可能である。そして、クラッチのようなギア間の接続を切る機構を設ければ、落下柵を落下させることも可能である。
【0009】
しかし、落下柵が落下し、捉えられたと認識した野生動物は、落下柵に何度も衝突して脱出を試みる。猪等の野生動物が衝突することで落下柵に大きな衝撃が繰り返し与えられ、ギア等にわずかな位置ずれが生じれば、落下柵を持ち上げる機構は作動しなくなる。このように、長期に渡り、幾度もの野生動物のアタックに耐えうる堅牢な機構を作製することは容易ではない。あるいは、作製できたとしても非常に高コストになってしまう。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、比較的低コストでありながら、長期的な信頼性を有する電動柵を備えた動物捕獲装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平面的あるいは立体的に閉空間をなす捕獲空間と、
上記捕獲空間に出入り可能な侵入部と、
上記侵入部を閉塞するための閉塞手段と、
を備えた動物を捕獲するための動物捕獲装置であって、
上記閉塞手段は、
回転駆動手段と、
上記回転駆動手段により上下動する線状体と、
上記線状体により吊り下げられた閉塞部保持手段と、
上記閉塞部保持手段により保持される落下式閉塞部と、
を有し、
上記閉塞部保持手段は上記落下式閉塞部を持ち上げた状態から、保持力を解放することで上記落下式閉塞部を落下させることが可能な
ことを特徴とするものである。
【0012】
さらに本発明は、双方向通信手段と、
捕獲空間内の状況を検知する検知手段と、
をさらに有し、
上記双方向通信手段により上記検知手段が検知した捕獲空間内の状況を送信し、
双方向通信可能な通信手段により、上記落下式閉塞部を遠隔操作により持ち上げることが可能な
ことを特徴とするものである。
【0013】
さらに本発明は、上記閉塞部保持手段が、把持部、挟持部、あるいは電磁石を用いた
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る動物捕獲装置はこのように構成されているので、比較的低コストでありながら、長期的な信頼性を有する電動柵を提供できる。また、電動柵の大きさや高さ等が自由に変更できるという、設計の自由度を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の動物捕獲装置の閉塞手段の正面図である。。
【
図2】本発明の動物捕獲装置の閉塞部保持手段の(a)正面図と(b)側面図である。
【
図3】本発明の動物捕獲装置の落下式閉塞部の(a)正面図と(b)側面図である。
【
図4】本発明の動物捕獲装置の閉塞手段の動作を示すための(a)正面図と(b)側面図である。。
【
図5】本発明の動物捕獲装置の閉塞手段の動作を示すための(a)正面図と(b)側面図である。
【
図6】本発明の動物捕獲装置の閉塞手段の動作を示すための(a)正面図と(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態.
以下に、本発明の実施の形態に係る動物捕獲装置について、図を用いて説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明の一例であって、特に本発明をこの一例に限定するものではない。例えば、本発明品およびその構成部品に関して材質や寸法等を開示するが、これらは本発明の良好な一例を示すにすぎない。したがって、以下の実施の形態と同様の発明概念を持つ発明品を本発明は含有するものである。
なお、動物捕獲装置の全体構成は従来の捕獲装置と変わらないため、本発明の特徴である落下柵に相当する機構についてのみ説明する。以下において、落下柵に相当するものを「落下式閉塞部」、上昇機構を含む落下柵システムを「閉塞手段」と呼ぶこととする。
【0017】
<本発明の構成概略>
まず、閉塞手段全体の構成を示す
図1と、主要部品の構成を示す
図2および
図3を用いて、本発明に係る動物捕獲装置の構成の概略について述べる。
動物捕獲装置は、囲いのように平面的、あるいは、檻のように立体的に閉空間をなす捕獲空間と、上記捕獲空間に出入り可能な侵入部と、上記侵入部を閉塞するための閉塞手段とを備えた動物を捕獲するための動物捕獲装置である。
上記閉塞手段は、回転駆動手段1と、上記回転駆動手段1により上下動する線状体3と、上記線状体3により吊り下げられた閉塞部保持手段5と、上記閉塞部保持手段により保持される落下式閉塞部7とを有し、上記閉塞部保持手段5は上記落下式閉塞部7を持ち上げた状態から、保持力を解放することで上記落下式閉塞部7を落下させることが可能なものである。落下式閉塞部7は、左右に設けたガイドレール6により、左右の動きが制約され、上下動のみ可能にしている。
【0018】
また、インターネットや携帯電話回線といった双方向通信手段と、ウエブカメラのような捕獲空間内の状況を検知する検知手段とをさらに有し、上記双方向通信手段により上記検知手段が検知した捕獲空間内の状況を送信し、上記双方向通信可能な通信手段により、上記落下式閉塞部7を遠隔操作により持ち上げることが可能なことを特徴とする。
【0019】
さらに、上記閉塞部保持手段5は、把持部、挟持部、あるいは電磁石を用いたことを特徴とするものである。
【0020】
<本発明の構成詳細>
次に、構成の詳細について説明する。
モーター等の回転駆動手段1により回転するリール2に巻かれたロープ等の線状体3は、滑車4を介して、閉塞部保持手段5に接続されている。これにより、回転駆動手段1により、閉塞部保持手段5を上下動させることができる。
【0021】
図2に示すように、閉塞部保持手段5は、線状体3を結束できる線状体結合部5aを上部に備え、下部には、落下式閉塞部7を保持するための保持部5bを備えている。
【0022】
図3に示すように、落下式閉塞部7には、落下式閉塞部7の保持部5bと結合するための被保持部7aが設けられている。
図2に拡大表示した保持部5bは、例えば、ピンが左右に動くことで、落下式閉塞部7の被保持部7aの開口部にピンが挿入され、保持部5bにより被保持部7aが把持される。
被保持部7aを把持する代わりに、左右から挟みこんで保持しても良い。
【0023】
さらに、保持部5bと被保持部7aの結合機構としては、電磁石を用いたものであっても良い。すなわち、保持部5bを電磁石とし、被保持部7aを鉄やステンレス等の強磁性体とすることで、磁力により結合および結合の解除が可能である。電磁石としては、電流を流した際に磁力が生じるものでも良いが、逆に、電流を流した際に磁力が生じないタイプのものが省電力のためには好適である。例えば、永久磁石と電磁石を組み合わせれば、電流を流さない際には永久磁石の磁力により結合し、電流を流すことで永久磁石の磁界が打ち消されて、結合が解除されるといった動作が可能である。
【0024】
落下式閉塞部7の大きさは捕獲したい動物の大きさにより変わるが、例えば、横が80cm、高さが120cm程度である。丈夫な金属枠と金属の網等により構成される。
【0025】
<本発明の動作>
次に、
図4から
図6を用いて、動作について説明する。
図4から
図6は、動作を分かりやすく説明するため、ロープ等の線状体3、閉塞部保持手段5、および落下式閉塞部7のみ示している。
【0026】
図4は、被保持部7aが落下し、動物捕獲装置が閉塞された状態である。この状態から、モーター等の回転駆動手段1を駆動し、線状体3を介して閉塞部保持手段5を下方に移動させる。そして、落下式閉塞部7の保持部5bと、落下式閉塞部7の被保持部7aが結合する(
図5)。なお、高さ位置センサー等を用いて、閉塞部保持手段5が落下式閉塞部7に対して適切な所定位置まで下降した際に回転駆動手段1を停止し、回転駆動手段1が停止後、保持部5bと被保持部7aが結合するようにすれば、一連の動作が自動的に行われる。
【0027】
回転駆動手段1を逆に回転させると、線状体3が巻き上げられ、閉塞部保持手段5と落下式閉塞部7が上昇する(
図6)。上記と同様に、高さ位置センサー等を用いて、閉塞部保持手段5が所定の位置まで上昇した際に、回転駆動手段1が停止するようにすれば、一連の動作が自動的に行われる。
【0028】
図6の状態から、保持部5bと被保持部7aの結合を解放すれば、落下式閉塞部7は落下し、
図4の状態になる。
【0029】
<本発明のシステム的な使用方法>
図4の状態において、動物等が動物捕獲装置内に入ったことを赤外線センサー等で検知する。群れを捕獲したい場合には、赤外線センサー等の信号をカウントし、あらかじめ定めた所定頭数がカウントされれば、自動的に落下式閉塞部7が落下し、動物を動物捕獲装置内に閉塞する。
【0030】
落下式閉塞部7の落下に対応し、管理者のスマートフォンに落下式閉塞部7が落下したことを知らせる連絡が送信される。管理者は、捕獲空間内の状況を検知するウエブカメラ等の検知手段により、動物捕獲装置内部の状況を把握できる。
【0031】
もし、人間の子供等が誤って捕獲されたことを確認した場合には、
図5および
図6の動作を行うように、管理者のスマートフォンから閉塞手段を遠隔操作し、子供を解放する。
【0032】
<本発明のまとめ>
以上において説明したように、本発明の閉塞手段は複雑なギア構成等を有さないため、比較的安価な構成であっても、高い長期的な信頼性を確保できる。すなわち、動物が落下式閉塞部付近に衝突を繰り返し、構成部品の位置が多少のずれを生じたとしても、簡素な機構であるため、動作に問題を生じることはなく、落下式閉塞部の上昇や落下動作を正常に行うことができる。
【0033】
また、回転駆動手段や滑車等の配置は比較的自由に行えるため、捕獲したい動物により落下式閉塞部の高さや持上げ位置が変わっても、容易に設計ができる。
【0034】
そして、電動で稼動する落下式閉塞部を備えたことで、遠隔操作で落下式閉塞部を上昇させることが可能になり、これにより、誤捕獲が行われた際に極めて迅速な対応が、現地に赴くことなく行える。
【符号の説明】
【0035】
1 回転駆動手段
2 リール
3線状体
3 下側網部
4 滑車
5 閉塞部保持手段
6 ガイドレール
7 落下式閉塞部