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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150620
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】自動車内装用部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20220929BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 91/08 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220929BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20220929BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L53/02
C08L91/08
C08L83/04
C08K5/3492
C08K5/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053301
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真由
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 悠典
(72)【発明者】
【氏名】一原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達弥
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE05X
4J002BP013
4J002BP02W
4J002CP034
4J002CP035
4J002EH127
4J002EU186
4J002FD056
4J002FD077
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】触感、耐傷付き性、耐光性及び耐熱性に優れた自動車内装部材を提供する。
【解決手段】下記成分(A)~(G)を特定の割合で含有する熱可塑性エラストマー組成物よりなる自動車内装用部材。
成分(A) プロピレン系重合体
成分(B) 芳香族ビニル化合物重合ブロックPの2以上と、共役ジエン化合物重合体ブロックQの1以上とを有する(水添)ブロック共重合体
成分(C) 炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(D) 高粘度ポリオルガノシロキサン
成分(E) 特定のアラルキル基含有ポリオルガノシロキサン
成分(F) N,N’,4,7-テトラキス{4,6-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン
成分(G) 2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル-3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゾエート
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー組成物より形成される自動車内装用部材であって、前記熱可塑性エラストマー組成物が、下記成分(A)~(G)を含有し、成分(A)~(C)の合計100質量%に対し、成分(A)を30~40質量%、成分(B)を20~30質量%、成分(C)を35~45質量%含有し、成分(A)~(C)の合計100質量部に対し、成分(D)を1.1~2.5質量部、成分(E)を0.5~1.5質量部、成分(F)を0.01~0.5質量部、成分(G)を0.001~0.05質量部含有する、自動車内装用部材。
成分(A) プロピレン系重合体
成分(B) 少なくとも2個の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合ブロックPと、少なくとも1個の共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物
成分(C) 炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(D) 粘度(JIS Z8803,25℃)が100,000cSt以上のポリオルガノシロキサン
成分(E) 分子中に下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するアラルキル基含有ポリオルガノシロキサン
【化1】
(一般式(1)中のRは炭素数1~18の炭化水素基を表し、Rは炭素数7~12のアラルキル基を表す。)
成分(F) N,N’,4,7-テトラキス{4,6-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン
成分(G) 2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル-3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゾエート
【請求項2】
成分(D)が、粘度(JIS Z8803,25℃)が1,000,000cSt以上のポリオルガノシロキサンである、請求項1に記載の自動車内装用部材。
【請求項3】
成分(B)の芳香族ビニル化合物単位がスチレン単位であり、共役ジエン化合物単位がブタジエン単位である、請求項1又は2に記載の自動車内装用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の熱可塑性エラストマー組成物からなる自動車内装用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内装用部材として、従来使用されてきた加硫ゴムや塩化ビニル樹脂等に代わる環境に優しい材料として、熱可塑性エラストマーが用いられている。熱可塑性エラストマーは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有するものであり、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、独特のゴム弾性を有し、また、リサイクルが可能であるという利点を有する一方で、従来材料と比較して耐傷付き性、柔軟性、触感、耐摩耗性に劣るという問題があった。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1には、熱可塑性エラストマー組成物として、スチレン系もしくはオレフィン系ゴムとポリプロピレンに、粘度(JIS Z8803,25℃)が100,000センチストークス(cSt)以上であるシリコーンオイルを添加して用いることで、機械強度を維持しながら低温衝撃性及び表面の耐傷付き性を向上できることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性エラストマー組成物として、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、ポリプロピレン系樹脂及び鉱物油系ゴム用軟化剤に、粘度(25℃)が1,000,000センチストークス以上であるシリコーンオイルを用いることで、成形性に優れるとともに、得られる成形品が優れた柔軟性と触感と耐摩耗性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-176353号公報
【特許文献2】特開2002-348433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自動車内装空間において、高級感や、快適さが求められると同時に、環境負荷や工程削減の観点から塗装レス化が進んでいる。このような要求への対応として、自動車内装用部材においても、自動車の使用環境を想定した耐光性及び耐熱性を維持しながら、耐傷付き性、触感の更なる改良が求められている。
【0007】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されている熱可塑性エラストマー組成物の成形品は自動車内装用部材に求められる耐傷付き性、触感、耐熱性において、未だ不十分と考えられ、これらの特性の両立が困難であった。
特許文献2に記載されている熱可塑性エラストマー組成物の成形品は、自動車内装用部材に求められる触感、耐熱性おいて、不十分と考えられ、これらの特性の両立が困難であった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決し、触感、耐傷付き性、耐光性及び耐熱性に優れた自動車内装部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、プロピレン系重合体と、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合ブロックPと少なくとも1個の共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物と、炭化水素系ゴム用軟化剤を特定の質量比で含む熱可塑性エラストマー成分に、2種類の特定のポリオルガノシロキサンと特定の光安定剤を特定の質量比で併用することにより、触感、耐傷付き性、耐光性及び耐熱性のすべてに優れた自動車内装部材を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
【0010】
[1]熱可塑性エラストマー組成物より形成される自動車内装用部材であって、前記熱可塑性エラストマー組成物が、下記成分(A)~(G)を含有し、成分(A)~(C)の合計100質量%に対し、成分(A)を30~40質量%、成分(B)を20~30質量%、成分(C)を35~45質量%含有し、成分(A)~(C)の合計100質量部に対し、成分(D)を1.1~2.5質量部、成分(E)を0.5~1.5質量部、成分(F)を0.01~0.5質量部、成分(G)を0.001~0.05質量部含有する、自動車内装用部材。
成分(A) プロピレン系重合体
成分(B) 少なくとも2個の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合ブロックPと、少なくとも1個の共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物
成分(C) 炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(D) 粘度(JIS Z8803,25℃)が100,000cSt以上のポリオルガノシロキサン
成分(E) 分子中に下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するアラルキル基含有ポリオルガノシロキサン
【化1】
(一般式(1)中のRは炭素数1~18の炭化水素基を表し、Rは炭素数7~12のアラルキル基を表す。)
成分(F) N,N’,4,7-テトラキス{4,6-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン
成分(G) 2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル-3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゾエート
[2]成分(D)が、粘度(JIS Z8803,25℃)が1,000,000cSt以上のポリオルガノシロキサンである、[1]に記載の自動車内装用部材。
[3]成分(B)の芳香族ビニル化合物単位がスチレン単位であり、共役ジエン化合物単位がブタジエン単位である、[1]又は[2]に記載の自動車内装用部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐傷付き性、触感、耐光性及び耐熱性に優れた自動車内装用部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0013】
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の自動車内装用部材を構成する熱可塑性エラストマー組成物(以下、「本発明の熱可塑性エラストマー組成物」と称す場合がある。)は、下記成分(A)~(G)を所定の割合で含むことを特徴とするものである。
成分(A) プロピレン系重合体
成分(B) 少なくとも2個の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合ブロックPと、少なくとも1個の共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物
成分(C) 炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(D) 粘度(JIS Z8803,25℃)が100,000cSt以上のポリオルガノシロキサン
成分(E) 分子中に下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するアラルキル基含有ポリオルガノシロキサン
【化2】
(一般式(1)中のRは炭素数1~18の炭化水素基を表し、Rは炭素数7~12のアラルキル基を表す。)
成分(F) N,N’,4,7-テトラキス{4,6-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン
成分(G) 2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル-3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゾエート
【0014】
<成分(A)>
本発明で用いる成分(A)のプロピレン系重合体(以下「プロピレン系重合体(A)」と称す場合がある。)としては、プロピレン系重合体(A)を構成する単量体単位中にプロピレン単位を50質量%以上含有するものであればよいが、耐熱性、剛性、結晶性、耐薬品性等の観点から、プロピレン系重合体(A)中のプロピレン単位の含有率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。一方、プロピレン単位の含有率の上限については特に限定されず、100質量%であってもよい。
なお、成分(A)中のプロピレン単位、以下に記載する他の共重合成分の各構成単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0015】
プロピレン系重合体(A)の種類は特に限定されず、具体的にはプロピレンの単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体(例えばプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体)を挙げることができ、これらのいずれであっても使用することができる。
【0016】
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、21.2N荷重)は、特に定めることはないが、通常0.05~2000g/10分であり、0.05~500g/10分であることが好ましく、0.1~200g/10分であることがより好ましい。メルトフローレートを上記範囲とすることで、成形性に優れ、得られる自動車内装用部材の外観が良好となり、また機械的特性、特に引張破壊強さを所望の範囲に制御することができる。
【0017】
プロピレン系重合体(A)を製造するに際して使用される触媒については特に限定されないが、例えば、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、以下に限定されないが、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられる。これらの触媒の中でも、メタロセン触媒が好ましい。
【0018】
チーグラー触媒としては、以下に限定されないが、例えば、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物と、ハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0019】
メタロセン触媒としては、以下に限定されないが、例えば、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0020】
プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、例えば、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法、重合モノマーを溶媒とするバルク重合法が挙げられる。例えば、スラリー法の場合には、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常-80~150℃であり、好ましくは40~120℃である。重合圧力は、1~60気圧が好ましい。得られるプロピレン系重合体(A)の分子量の調節は、水素又は他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。更に重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
【0021】
プロピレン系重合体(A)は、市販品を用いることができ、例えば、サンアロマー社製のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社製のノバテック(登録商標)PP、ウェイマックス(WAYMAX(登録商標))が挙げられる。
【0022】
プロピレン系重合体(A)は1種のみを用いてもよく、共重合組成や物性等の異なる2種以上を併用してもよい。
【0023】
<成分(B)>
本発明で用いる成分(B)は、少なくとも2個の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合ブロックP(以下、単に「ブロックP」と称す場合がある。)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQ(以下、単に「ブロックQ」と称す場合がある。)とを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物(以下「(水添)ブロック共重合体」と称す場合がある。)である。
【0024】
ここで、「主体とする」とは、対象の単量体単位を対象の重合体ブロック中に、50モル%以上含むことをいう。
【0025】
ブロックPを構成する芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレンが挙げられる。これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンが好ましく用いられる。より好ましくはスチレンである。
ブロックPは、1種の芳香族ビニル化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよい。また、ブロックPには、ビニル芳香族化合物単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0026】
ブロックQを構成する共役ジエン化合物とは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく用いられる。より好ましくは1,3-ブタジエンである。
ブロックQは、1種の共役ジエン化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上の共役ジエン化合物単位から構成されていてもよい。また、ブロックQには、共役ジエン化合物単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0027】
ブロックPの少なくとも2個と、ブロックQの少なくとも1個を有するブロック重合体は、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(I)又は(II)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。
P-(Q-P)m (I)
(P-Q)n (II)
(式中PはブロックPを、QはブロックQをそれぞれ表し、mは1~5の整数を表し、nは2~5の整数を表す。
ブロックP、ブロックQがそれぞれ複数存在する場合に、それらの化合物単位はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0028】
本発明で用いる成分(B)は、組成物のゴム弾性の観点から、式(I)で表されるブロック共重合体であることが好ましく、mが3以下である式(I)で表されるブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(I)で表されるブロック共重合体が更に好ましく、mが1である式(I)で表されるブロック共重合体が特に好ましい。
【0029】
本発明で用いる成分(B)は、ブロックPと、ブロックQとを有するブロック共重合体の水素添加物であってもよい。この場合、式(I)で表されるブロック共重合体の水素添加物であることが好ましく、mが3以下である式(I)で表されるブロック共重合体の水素添加物であることがより好ましく、mが2以下である式(I)で表されるブロック共重合体の水素添加物であることが更に好ましく、mが1である式(I)で表されるブロック共重合体の水素添加物が特に好ましい。
【0030】
成分(B)のブロック共重合体中のブロックPの含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。また、成分(B)のブロック共重合体中のブロックPの含有割合は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。上記範囲でブロックPの割合が高くなるほど、機械的強度に優れ、低くなるほど、柔軟性に優れ、ブリードアウトしにくい傾向にある。上記範囲とすることでブリードアウトを抑制しながら機械的強度と柔軟性を両立しやすくなる。
【0031】
成分(B)のブロック共重合体中のブロックQの割合は、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、ブリードアウトのしにくさの点から多い方が好ましく、また、一方、機械的強度の点から少ない方が好ましい。具体的には、成分(B)のブロック共重合体中のブロックQの含有割合は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、成分(B)のブロック共重合体中のブロックQの割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。上記範囲でブロックQの割合が高くなるほど、柔軟性に優れ、ブリードアウトしにくい傾向にあり、低くなるほど、機械的強度に優れる傾向にある。上記範囲とすることでブリードアウトを抑制しながら機械的強度と柔軟性を両立しやすくなる。なお、成分(B)のブロック共重合体中のブロックQを構成する芳香族ビニル化合物がスチレン単位である場合、上記したブロックQの含有割合はスチレン単位含有率として表すことができる。
【0032】
成分(B)の(水添)ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、また、一方、800,000以下であることが好ましく、650,000以下であることがより好ましく、500,000以下であることが更に好ましい。成分(B)の(水添)ブロック共重合体のMwは、上記範囲において、耐熱性、機械的強度の点では大きい方が好ましく、成形外観及び流動性、成形性の点では小さい方が好ましい。成分(B)の(水添)ブロック共重合体のMwを上記範囲とすることで耐熱性、機械的強度、成形外観、流動性及び成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0033】
ここで、Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する場合がある。)により、以下の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
機器:日本ミリポア社製「150C ALC/GPC」
カラム:昭和電工社製「AD80M/S」3本
検出器:FOXBORO社製赤外分光光度計「MIRANIA」
波長:3.42μm
溶媒:o-ジクロロベンゼン
温度:140℃
流速:1cm/分
注入量:200マイクロリットル
濃度:2mg/cm
酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-p-フェノール0.2質量%添加
【0034】
本発明で用いる成分(B)としては、好ましくは、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレン/ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物が挙げられる。
【0035】
成分(B)としては、市販品を用いることもできる。具体的には、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)G」、クラレ社製「セプトン(登録商標)」、旭化成社製「タフテック(登録商標)」、「S.O.E(登録商標)」、TSRC社製「TAIPOL(登録商標)」が挙げられる。
【0036】
成分(B)の(水添)ブロック共重合体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
<成分(C)>
本発明で用いる成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、流動性の向上に有効である。
【0038】
炭化水素系ゴム用軟化剤としては成分(B)に対する親和性が高いことから、鉱物油系軟化剤や合成樹脂系軟化剤が好ましく、鉱物油系軟化剤がより好ましい。
【0039】
鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素由来の炭素原子であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30~45%程度がナフテン系炭化水素由来の炭素原子であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素由来の炭素原子であるものが芳香族系オイルと各々呼ばれている。成分(C)として用いる炭化水素系ゴム用軟化剤は、上述の各種軟化剤の何れか1種でも、複数種の混合物でも構わないが、これらのうち、色相が良好であることから、パラフィン系オイルが好ましい。また、合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン及び低分子量ポリブタジエン等が挙げられる。
【0040】
炭化水素系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度(JIS K2283に準拠)は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の流動性の向上という点では低い方が好ましいが、フォギング等の起こり難さの点では高い方が好ましい。具体的には、20センチストークス(cSt)以上であることが好ましく、50センチストークス以上であることが更に好ましい。また、一方、800センチストークス以下であることが好ましく、600センチストークス以下であることが好ましい。
【0041】
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤は市販品として入手することができる。該当する市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン(登録商標)HV」シリーズ、出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW」シリーズが挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。
【0042】
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤は1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0043】
<成分(D)>
成分(D)は、粘度(JIS Z8803,25℃)が100,000cSt以上のポリオルガノシロキサン(以下、単に「高粘度ポリオルガノシロキサン」と称す場合がある。)であり、成分(D)の粘度の上限については特に制限されない。成分(D)の粘度が高いほど耐傷付き性、耐摩耗性向上の効果が高く好ましい。この観点から、成分(D)の粘度(JIS Z8803,25℃)は特に1,000,000cSt以上であることが好ましい。
【0044】
高粘度ポリオルガノシロキサンの分子構造におけるシロキサン主鎖に結合する置換基の種類は特に限定されないが、ジメチルシリコーン(ジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルシリコーン、あるいはアルキル変性シリコーンが好適に用いられる。
高粘度ポリオルガノシロキサンは、本発明のその他材料と十分に混合させるために、プロピレン系重合体やエチレン系重合体のマスターバッチとして用いることが好ましい。マスターバッチとして使用できるプロピレン系重合体としては、例えば、前掲した成分(A)のプロピレン系重合体に記載したプロピレン系重合体を用いることができる。
【0045】
成分(D)の高粘度ポリオルガノシロキサンは市販品として入手することができる。該当する市販品としては、例えば、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製「DOW CORNING TORAY(登録商標)」シリーズ、「DOW CORNING(登録商標)」シリーズ、信越化学工業社製「X-22-2101」、東レ・ダウコーニング社製「MB50-001G2」が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。
【0046】
成分(D)の高粘度ポリオルガノシロキサンは1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0047】
<成分(E)>
成分(E)は、分子中に下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するアラルキル基含有ポリオルガノシロキサンである(以下、単に「アラルキル基含有ポリオルガノシロキサン」と称す場合がある。)。
【0048】
【化3】
【0049】
(一般式(1)中のRは炭素数1~18の炭化水素基を表し、Rは炭素数7~12のアラルキル基を表す。)
【0050】
成分(D)の高粘度ポリオルガノシロキサンと成分(E)のアラルキル基含有ポリオルガノシロキサンを併用することで、本発明の自動車内装用部材の耐熱性を維持しつつ、触感と耐傷付き性を向上させることができる。
【0051】
一般式(1)において、Rは、炭素数1~18の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。Rは、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0052】
は、炭素数7~12のアラルキル基であり、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、2-フェニルプロピル基等のフェニルアルキル基が挙げられる。オルガノポリシロキサンがアラルキル基を有することで、透明性を維持しつつ触感に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。透明性の維持と触感の向上の観点からは、Rは2-フェニルプロピル基であることが好ましい。
【0053】
成分(E)は、分子中に前記一般式(1)で表される繰り返し単位と共に下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するアラルキル基含有ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0054】
【化4】
【0055】
(一般式(2)中のR及びRはそれぞれ独立に炭素数1~18の有機基を表す。)
【0056】
一般式(2)において、R,Rの炭素数1~18の有機基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、エポキシ基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。工業的な入手容易性の観点からR,Rはそれぞれ独立にアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0057】
本発明で用いる成分(E)のアラルキル基含有ポリオルガノシロキサンのアラルキル基の含有率は、ケイ素原子に結合する全有機基中、1~60モル%であることが好ましく、5~55モル%であることがより好ましく、5~50モル%であることが更に好ましい。アラルキル基の含有率が上記範囲であると、触感と耐傷付き性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得やすくなる。
【0058】
本発明で用いる成分(E)のアラルキル基含有ポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は好ましくは1cSt以上、より好ましくは5cSt以上、更に好ましくは10cSt以上であり、上限については特に制限されないが、通常100,000cStを超えない。上記範囲で動粘度が高いほど耐摩耗性向上の効果が高く、低いほどべたつき改良効果が高く、良触感となる。成分(E)の動粘度(25℃)を上記範囲とすることで、所望の耐摩耗性とべたつき改良効果を得ることができる。
ここで、成分(E)の動粘度は、ASTM D445-46T(又はJIS Z8803)に従ってウッベローデ粘度計を用いて測定した25℃における動粘度である。
【0059】
成分(E)としては、市販品を用いることもできる。成分(E)の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KF-410」が挙げられる。
【0060】
成分(E)のアラルキル基含有ポリオルガノシロキサンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
<成分(F)>
本発明で用いる成分(F)のN,N’,4,7-テトラキス{4,6-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンは、ヒンダードアミン系光安定剤であり、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の耐光ブリードの抑制に有効である。
成分(F)としては、市販品を用いることもできる。成分(F)の市販品としては、例えば、SONGWON社製「SABOSTAB UV119」が挙げられる。
【0062】
<成分(G)>
本発明で用いる成分(G)の2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル-3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゾエートは、ベンゾエート系光安定剤であり、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の耐光ブリードの抑制に有効である。
成分(G)としては、市販品を用いることもできる。成分(G)の市販品としては、例えば、BASF社製「チヌビン120」が挙げられる。
【0063】
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、成分(A)~(C)の含有割合は、これらの合計100質量%に対して、成分(A)が30~40質量%、成分(B)が20~30質量%、成分(C)が35~45質量%であり、好ましくは、成分(A)が32~38質量%、成分(B)が22~28質量%、成分(C)が37~43質量%であり、より好ましくは、成分(A)が32~36質量%、成分(B)が24~28質量%、成分(C)が38~42質量%である。
【0064】
成分(D)、成分(E)、成分(F)および成分(G)の含有割合は、成分(A)~(C)の合計100質量部に対して、成分(D)が1.1~2.5質量部、成分(E)が0.5~1.5質量部、成分(F)が0.01~0.1質量部、成分(G)が0.001~0.05質量部であり、好ましくは、成分(D)が1.2~2.4質量部、成分(E)が0.7~1.3質量部、成分(F)が0.01~0.08質量部、成分(G)が0.001~0.04質量部であり、より好ましくは、成分(D)が1.3~2.3質量部、成分(E)が0.8~1.2質量部、成分(F)が0.01~0.07質量部、成分(G)が0.001~0.01質量部である。
【0065】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(A)のプロピレン系重合体を上記範囲で含むことにより、他の成分の配合効果を十分に得た上で、成分(A)による耐熱性、機械的特性の向上効果を十分に得ることができる。
また、成分(B)の(水添)ブロック共重合体を上記範囲で含むことにより、他の成分の配合効果を十分に得た上で、成分(B)による柔軟性、良触感、耐傷付き性の向上効果を十分に得ることができる。
また成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤を上記範囲で含むことにより、他の成分の配合効果を十分に得た上で、成分(C)による柔軟性、流動性の向上効果を十分に得ることができる。
また、成分(A)~(C)の合計100質量部に対して、成分(D)および成分(E)を上記割合で含むことにより、良触感、耐熱性を維持しつつ耐傷付き性の向上効果を十分に得ることができる。
また、成分(A)~(C)の合計100質量部に対して、成分(F)および成分(G)を上記割合で含むことにより、良触感、耐熱性を維持しつつ耐傷付き性の向上効果を十分に得た上で、耐光性に優れたものとすることができる。
【0066】
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(A)~(G)以外の他の成分(本明細書において、単に「その他の成分」と称することがある。)を含有していてもよい。その他の成分としては、成分(A)、(B)以外の樹脂やエラストマー(本明細書においてはこれらをまとめて単に「その他の樹脂」と称することがある。)や各種添加剤が挙げられる。
【0067】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が含有し得るその他の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ただし、前記成分(A)に該当するものを除く。)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂(ただし、前記成分(B)に該当するものを除く。)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂や、エチレン・プロピレン・共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等のオレフィン系エラストマー;ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたもの等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が含有し得る添加剤としては、酸化防止剤、結晶核剤、滑剤等の成形加工助剤、紫外線吸収剤、成分(F)及び成分(G)以外の光安定剤、耐加水分解改良剤、顔料、染料等の着色剤、帯電防止剤、導電剤、補強剤、充填材、可塑剤(ただし、前記成分(C)に該当するものを除く。)、離型剤、発泡剤等が挙げられる。
【0069】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、酸化防止剤(熱安定剤)として、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を配合することができる。
【0070】
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤としては、N,N-ジアルキルヒドロキシルアミンが好ましく、一般式RNOH(式中、R及びRは各々独立してアルキルを表す。)で示される化合物が挙げられる。式中、好ましいR又はRは、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヘプタデシル基である。特に好ましいジアルキルヒドロキシルアミンはN,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン及びN,N-ジヘキサデシルヒドロキシルアミン又はこれらの混合物であり、市販品として、BASF社製「イルガノックス(登録商標)1010」が挙げられる。
【0071】
ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤としては、ジアルキルジチオカルバミン酸の金属塩が好ましく、中でもジアルキルジチオカルバミン酸ニッケルが好ましく、特にジブチルジチオカルバミン酸ニッケルが、耐熱老化性の改良効果が大きいことから好ましい。
【0072】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては公知のものが使用でき、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンのような分子量が500以上のものの使用が好ましい。
【0073】
イオウ系酸化防止剤とは、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオンエステル系等のイオウを含む化合物である。但し、上記のジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤に相当するものは含まない。これらの中でも、特にチオジプロピオンエステル系化合物が好ましい。
【0074】
リン系酸化防止剤としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリンを含む化合物が挙げられる。
【0075】
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部あたり、好ましくは0.01~5質量部である。この含有量が0.01質量部以上であると、耐熱劣化性の改良効果の観点で好ましく、一方、5質量部以下であると、ブリード等の問題を起こしにくい点、組成物の機械的強度の観点等から好ましい。
【0077】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の上記の酸化防止剤等の添加剤の合計の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部あたり、2質量部以下とすることが好ましく、1質量部以下とすることがより好ましい。
【0078】
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、常法に従って、成分(A)~成分(G)と必要に応じて用いられるその他の成分をドライブレンドした後、溶融混練することにより製造することができる。
その際に用いられる混合装置としては、特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、単軸押出機、二軸押出機等の混練装置が挙げられる。このうち、押出機を用いた溶融混合法により製造することが、生産性、良混練性の点から好ましい。混練時の溶融温度は、適宜設定することができるが、通常130~300℃の範囲であり、150~250℃の範囲であることが好ましい。
【0079】
[自動車内装用部材]
本発明の自動車内装用部材は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形することにより製造される。本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、通常の射出成形法、押出成形法等の各種成形方法を用いることができる。
【0080】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形する際の成形条件は以下の通りである。
成形温度は、通常160~250℃であり、好ましくは170~220℃である。射出圧力は、通常5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。金型温度は通常10~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
【0081】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形体は、プロピレン樹脂のようなオレフィン系硬質樹脂に熱融着して、複合成形体として自動車内装用部材に用いることもできる。
【実施例0082】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0083】
以下の実施例及び比較例において、熱可塑性エラストマー組成物の調製に用いた原料及び得られた熱可塑性エラストマー組成物の評価方法は次の通りである。
【0084】
[使用原料]
<成分(A)>
A-1:日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP BC06C」
プロピレン・エチレンブロック共重合体
プロピレン単位含有率:91質量%
MFR(JIS K7210、230℃、21.2N荷重):60g/10分
【0085】
<成分(B)>
B-1:TSRC社製「TAIPOL(登録商標)6159」
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物
重量平均分子量:400,000
スチレン単位含有率:30質量%
【0086】
<成分(C)>
C-1:出光興産社製「ダイアナ プロセスオイルPW90」
パラフィン系オイル
動粘度(40℃):90cSt
【0087】
<成分(D)>
D-1:東レ・ダウコーニング社製「MB50-001G2」
ジメチルポリシロキサンマスターバッチ
ジメチルポリシロキサン含有率:50質量%
粘度(JIS Z8803,25℃):1,000,000cSt以上
<成分(E)>
E-1:信越化学工業社製「KF-410」
前記一般式(1)で表される繰り返し単位と前記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有するアラルキル基含有オルガノポリシロキサン
一般式(1)中のR:メチル基
一般式(1)中のR:2-フェニルプロピル基
一般式(2)中のR,R:メチル基
アラルキル基含有率:39モル%
動粘度(25℃):900cSt
【0088】
<成分(F)>
F-1:SONGWON社製「SABOSTAB UV119」
【0089】
<成分(G)>
G-1:BASF社製「チヌビン120」
【0090】
<成分(X)>
X-1:信越化学工業社製「KF96-1000cs」
ジメチルポリシロキサン
粘度(JIS Z8803,25℃):1000cSt
【0091】
[熱可塑性エラストマー組成物の評価]
<触感評価>
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットから作成した射出成形体(350mm×100mm×2mm、自動車内装用革シボ)について、人差し指で撫でるように触った際の触感を調べ、下記基準で評価した。
射出成形体の触感は、ブリード物が表面に発生しておらず、手に付着しないものが好ましく、より好ましくはさらさらした触感である。
○:さらさらしており、手に付着物を感じない
×:べたべたしている、又は、さらさらしているが手に付着物を感じる
【0092】
<耐傷付き性評価>
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットから作成した射出成形体(350mm×100mm×2mm)について、引掻き針 先端曲率半径0.7mmを用いて、引掻き速度100mm/sec、荷重300gで試験片表面の傷付き度合いを目視で確認し、下記基準で評価した。
○:変化が認められない、または僅かに変化が認められる
△:変化が認められる
×:変化が著しい
【0093】
<耐光性評価>
JIS B7753に準拠してスガ試験機社製サンシャインウェザオメーターS80を
用いて、サンシャインカーボンアーク(ウルトラロングライフカーボン4対)光源で放電
電圧50V、放電電流60Aに設定し、照射にてブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件下、実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットから作成した射出成形体から切り出した平板(幅100mm×長さ100mm×厚さ2mm)の正方形の板面に対して、200時間照射処理を行った。ガラスフィルターはAタイプを用いた。照射処理後に表面のブリード、ベタツキ度合いを目視で確認し、下記基準で評価した。
○:変化が認められない
△:わずかに変化が認められる
×:変化が認められる
【0094】
<耐熱性評価>
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットから作成した射出成形体(350mm×100mm×2mm)について、恒温槽中で85℃にて10時間静置後に試験片を回収した。その後に、初期と耐熱試験後の光沢を測定し、変化量を算出し、下記基準で評価した。なお、光沢の測定は、光沢度計(BYK社製,micro-TRI-gloss,Cat.No.4563)を用いて、試験片の板面から60°の角度から行った。
○:光沢度変化量が±0.2未満
×:光沢変化量が±0.2以上
【0095】
[実施例1]
成分(A-1):34質量部、成分(B-1):26質量部、成分(C-1):40質量部の合計100質量部に対して、成分(D-1):1.5質量部(成分(D-1)中のジメチルポリシロキサンの配合量(実配合量の50%))と、成分(E-1)を1.0質量部、成分(F-1)を0.05質量部、成分(G-1)を0.01質量部、酸化防止剤(BASF社製商品名イルガノックス(登録商標)1010)0.1質量部を混合し、得られた混合物を二軸混練機により溶融混練(シリンダー温度180℃~220℃)し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物を、型締力180tで、電動の射出成形機(住友重機械工業株式会社製)で、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、縦350mm×横100mm×厚さ2mmのシート状の金型中に射出速度40mm/秒で射出充填した。充填完了後30秒間冷却してから射出成形体を取り出した。得られた射出成形体について触感、傷付き性、耐光性、および耐熱性の評価を行った。結果を表-1に示す。
【0096】
[実施例2、比較例1~4]
表-1に示す原料配合量とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表-1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
[評価結果]
表-1より、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に該当する実施例1と2は触感、傷付性、耐熱性のいずれにも優れていることがわかる。
これに対して、比較例1は、成分(D)の含有量が下限の1.1質量部を充足しない例であり、触感と耐傷付き性が劣っている。
比較例2は、成分(D)、(E)の替わりに成分(X)を含有する例であり、触感、耐傷付性、耐熱性のいずれもが劣っている。
比較例3は成分(D)を含有せず、成分(E)を上限の1.5質量部を超えて含有する例であり、触感と耐熱性が劣っている。
比較例4は成分(D)を規定の範囲内で含有し、成分(E)を含有しない例であり、触感と耐熱性が劣っている。
比較例5は成分(G)を含有せず、耐光性が劣っている。
比較例6は成分(F)を含有せず、耐光性が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物より得られた自動車内装用部材は、触感、耐傷付き性、耐光性及び耐熱性に優れ、自動車内装空間における高級化や快適化に用いられ、さらには環境負荷や工程削減の観点から塗装レス化に好適に用いられる。