(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150637
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20220929BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220929BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20220929BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/22 A
E02F9/26 A
B60W30/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053325
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹野 陽
(72)【発明者】
【氏名】北尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃弘
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3D241
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA06
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB03
2D015GA03
2D015HA03
3D241BA33
3D241BC01
3D241CA18
3D241CC08
3D241DB05Z
3D241DB32Z
(57)【要約】
【課題】作業効率を向上することが可能な作業機械を提供すること。
【解決手段】ホイールローダ100は、車両本体1と、走行方向検出部72と、後方検出部71と、制動部40と、シャットオフ弁45と、制御系26と、を備える。車両本体1は、走行可能である。後方検出部71は、車両本体1の後方向(所定方向の一例)における物体を検出する。制動部40は、後方検出部71による物体の検出に基づいて、車両本体1を自動で制動する自動ブレーキを実施して制動力を発揮可能である。シャットオフ弁45は、自動ブレーキによる制動力を発揮可能または発揮不可能になるよう制動部40を設定する。制御系26は、シャットオフ弁45を制御して、車両本体1が後方向に走行している場合は、制動力を発揮可能となるように制動部40を設定し、車両本体1が後方向以外に走行している場合は、制動力を発揮不可能となるように制動部40を設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車両本体と、
前記車両本体の走行方向を検出する走行方向検出部と、
前記車両本体の所定方向における物体を検出する物体検出部と、
前記物体検出部による前記物体の検出に基づいて、前記車両本体を自動で制動する自動ブレーキを実施して制動力を発揮可能な制動部と、
前記自動ブレーキによる前記制動力を発揮可能または発揮不可能になるよう前記制動部を設定する設定部と、
前記設定部を制御して、前記車両本体が前記所定方向に走行している場合は、前記制動力を発揮可能となるように前記制動部を設定し、前記車両本体が前記所定方向以外に走行している場合は、前記制動力を発揮不可能となるように前記制動部を設定する制御部と、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両本体が前記所定方向に走行している場合に、前記物体検出部によって前記物体が検出されたときは、前記自動ブレーキを実施するように前記制動部を制御する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記所定方向は、後方向である、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制動部は、
サービスブレーキと、
前記サービスブレーキへの作動油の供給量を調整可能な調整弁と、を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記設定部は、
前記調整弁への前記作動油の供給を遮断可能な遮断弁を有し、
前記制御部は、前記遮断弁を制御して、前記調整弁への前記作動油の供給を遮断することによって前記制動力を発揮不可能となるよう前記制動部を設定し、前記調整弁に前記作動油を供給することによって前記制動力を発揮可能となるよう前記制動部を設定する、
請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記走行方向検出部は、
前記車両本体の車輪の回転を検出する回転センサ、前記車両本体の加速度を検出する加速度センサ、またはFNRレバーの位置を検出する位置検出センサの少なくとも1つを有し、
前記制御部は、前記回転センサ、前記加速度センサ、または前記位置検出センサの検出に基づいて、前記車両本体の前記走行方向を判定する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制動部は、
前記サービスブレーキに作動油を供給するシャトル弁と、
ブレーキペダルの操作に基づいて前記シャトル弁に排出する作動油の流量を調整するブレーキ弁と、を更に備え、
前記調整弁は、前記シャトル弁に作動油を供給し、
前記シャトル弁は、前記調整弁から供給された作動油と、前記ブレーキ弁から供給された作動油のうち圧力が高い方を、前記サービスブレーキに供給する、
請求項4または5に記載の作業機械。
【請求項8】
前記作業機械は、ホイールローダであって、
作業機と、
前記作業機が取り付けられたフロントフレームと、
前記フロントフレームに回動可能に連結されたリアフレームと、を更に備えた、
請求項1~7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
車両本体の走行方向を検出する走行方向検出ステップと、
前記車両本体の所定方向における物体を検出する物体検出ステップと、
前記車両本体が前記所定方向に走行している場合は、前記物体検出ステップによる前記物体の検出に基づいて前記車両本体を自動で制動する自動ブレーキの実施による制動力を発揮可能となるよう設定し、前記車両本体が前記所定方向以外に走行している場合は、前記制動力を発揮不可能となるように設定する設定ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例であるホイールローダにおいて、後方の障害物を検出し自動で停止する自動停止システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
たとえば、特許文献1に示すホイールローダでは、ホイールローダから物体までのエリアを、物体からの距離が近い順に第一エリア、第二エリア、および第三エリアの3つのエリアに分け、ホイールローダからの距離が最も近い第三エリアにおいて自動でブレーキを作動させて車両を停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、意図しない走行方向において自動ブレーキが作動して制動が行われると作業の妨げになる場合がある。
【0006】
本開示は、所望の走行方向でだけ自動ブレーキによる制動力を発揮することによって誤動作を抑制すること可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様にかかる作業機械は、車両本体と、走行方向検出部と、物体検出部と、制動部と、実施設定部と、制御部と、を備える。車両本体は、走行可能である。物体検出部は、車両本体の所定方向における物体を検出する。制動部は、物体検出部による物体の検出に基づいて、車両本体を自動で制動する自動ブレーキを実施して制動力を発揮可能である。設定部は、自動ブレーキによる制動力を発揮可能または発揮不可能になるよう制動部を設定する。制御部は、設定部を制御して、車両本体が所定方向に走行している場合は、制動力を発揮可能となるよう制動部を設定し、車両本体が所定方向以外に走行している場合は、制動力を発揮不可能となるよう制動部を設定する。
【0008】
他の態様にかかる作業機械の制御方法は、走行方向検出ステップと、物体検出ステップと、設定ステップと、を備える。走行方向検出ステップは、車両本体の走行方向を検出する。物体検出ステップは、車両本体の所定方向における物体を検出する。設定ステップは、車両本体が所定方向に走行している場合は、物体検出ステップによる物体の検出に基づいて車両本体を自動で制動する自動ブレーキの実施による制動力を発揮可能となるよう設定し、車両本体が所定方向以外に走行している場合は、制動力を発揮不可能となるように設定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、所望の走行方向でだけ自動ブレーキによる制動力を発揮することによって誤動作を抑制することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示にかかる実施の形態のホイールローダの側面図。
【
図2】
図1のホイールローダの制御システムを示すブロック図。
【
図4】
図2の検出系および制御系の構成示すブロック図。
【
図5】
図1のホイールローダにおける障害物検出による自動ブレーキを説明するための側面図。
【
図6】本開示における実施の形態のホイールローダの制御動作を示すフロー図。
【
図7】本開示の実施の形態の変形例におけるホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系、検出系、およびコントローラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
(ホイールローダの概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ100(作業機械の一例)の構成を示す模式図である。本実施の形態のホイールローダ100は、車両本体1に、走行体2と作業機3を有する。作業機3は、走行体2に配置されている。走行体2は、車体フレーム10と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7、およびステアリングシリンダ9と、を備えている。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。
図1では、前後方向をZで示し、前方向を示すときはZf、後方向を示すときはZbで示す。
【0013】
ホイールローダ100は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0014】
車体フレーム10は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0015】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0016】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0017】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのハンドルや、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジン31が収納されている。
【0018】
図2は、ホイールローダ100の構成を示すブロック図である。
【0019】
ホイールローダ100は、駆動系21と、制動系22と、操作系23と、報知系24と、検出系25と、制御系26(制御部の一例)と、を有する。
【0020】
駆動系21は、ホイールローダ100の駆動を行う。制動系22は、ホイールローダ100の制動を行う。操作系23は、オペレータによって操作が行われる。報知系24は、検出系25による検出結果に基づいて、オペレータに対する報知を行う。検出系25は、車両本体1の走行方向、および車両本体1の後方(所定方向の一例)の物体の検出を行う。制御系26は、操作系23に対するオペレータの操作および検出系25による検出に基づいて、駆動系21、制動系22、および報知系24の操作を行う。
【0021】
(駆動系21)
駆動系21は、エンジン31と、HST32と、トランスファ33と、アクスル34と、フロントタイヤ4およびリアタイヤ7と、を有する。
【0022】
エンジン31は、例えばディーゼル式のエンジンであり、エンジン31で発生した駆動力がHST(Hydro Static Transmission)32のポンプ32aを駆動する。
【0023】
HST32は、ポンプ32aと、モータ32bと、ポンプ32aとモータ32bを接続する油圧回路32cと、を有する。ポンプ32aは、斜板式可変容量型のポンプであって斜板の角度をソレノイド32dによって変更することができる。ポンプ32aがエンジン31によって駆動されることにより作動油を吐出する。吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、斜板式ポンプであって、斜板の角度をソレノイド32eによって変更することができる。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と、第2駆動回路32c2と、を有する。作動油が、ポンプ32aから第1駆動回路32c1を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが一方向(例えば、前進方向)に駆動される。作動油が、ポンプ32aから第2駆動回路32c2を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが他方向(例えば、後進方向)に駆動される。なお、作動油の第1駆動回路32c1若しくは第2駆動回路32c2への吐出方向はソレノイド32dによって変更することができる。
【0024】
トランスファ33は、エンジン31からの出力を前後のアクスル34に分配する。
【0025】
前側のアクスル34には一対のフロントタイヤ4が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。また、後側のアクスル34には一対のリアタイヤ7が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。
【0026】
(制動系22)
図3は、
図2の制動系22の油圧回路を示す図である。
【0027】
制動系22は、制動部40と、シャットオフ弁45(設定部の一例、遮断弁の一例)と、を有する。制動部40は、ブレーキペダル54の操作に基づく車両本体1のブレーキの実施および制御系26からの指令に基づく車両本体1の自動ブレーキの実施を行う。シャットオフ弁45は、制動部40を、自動ブレーキによる制動力を発揮可能または発揮不可能な状態にする。
【0028】
制動部40は、ブレーキ弁ユニット41と、ブレーキ回路42a、42b(サービスブレーキの一例)と、パーキングブレーキ43(
図2参照)と、作動油供給路44a、44bと、EPC(Electric Proportional Valve)弁46(調整弁の一例)と、シャトル弁ユニット47と、タンク48と、を有する。
【0029】
作動油供給路44a、44bには、アキュームレータやポンプなどが接続されており、作動油が供給される。
【0030】
ブレーキ弁ユニット41は、後述するブレーキペダル54によって操作される。
図3に示すように、ブレーキ弁ユニット41は、リア用ブレーキ弁41aと、フロント用ブレーキ弁41bとを有している。リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの各々は、3つのポートを有する3位置切換弁である。
【0031】
リア用ブレーキ弁41aの第1ポートは、アキュームレータ49aを介して作動油供給路44aに接続されている。また、リア用ブレーキ弁41aの第2ポートは、タンク48に接続されている。リア用ブレーキ弁41aの第3ポートは、シャトル弁ユニット47のリア用シャトル弁47aに接続されている。
【0032】
リア用ブレーキ弁41aは、第1状態において第1ポートと第3ポートを繋ぎ、作動油供給路44aとリア用シャトル弁47aを接続し、リア用シャトル弁47aに作動油を供給する。リア用ブレーキ弁41aは、第2状態において、全てのポートを閉じる。リア用ブレーキ弁41aは、第3状態において第2ポートと第3ポートを接続し、リア用シャトル弁47aとリア用ブレーキ弁41aの間の作動油をタンク48に排出する。リア用ブレーキ弁41aは、第2状態および第3状態において、リア用シャトル弁47aへの作動油の供給を停止する。
【0033】
フロント用ブレーキ弁41bの第1ポートは、アキュームレータ49bを介して作動油供給路44bに接続されている。また、フロント用ブレーキ弁41bの第2ポートは、タンク48に接続されている。フロント用ブレーキ弁41bの第3ポートは、シャトル弁ユニット47のフロント用シャトル弁47bに接続されている。
【0034】
フロント用ブレーキ弁41bは、第1状態において第1ポートと第3ポートを繋ぎ、作動油供給路44bとフロント用シャトル弁47bを接続し、フロント用シャトル弁47bに作動油を供給する。フロント用ブレーキ弁41bは、第2状態において、全てのポートを閉じる。フロント用ブレーキ弁41bは、第3状態において第2ポートと第3ポートを接続し、フロント用シャトル弁47bとフロント用ブレーキ弁41bの間の作動油をタンク48に排出する。フロント用ブレーキ弁41bは、第2状態および第3状態において、フロント用シャトル弁47bへの作動油の供給を停止する。
【0035】
ブレーキペダル54の操作量に応じてリア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの開度が調整され、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。例えば、ブレーキペダル54の操作量が大きい場合には、リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bからシャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が多くなる。
【0036】
ブレーキ回路42aは、リアのアクスル34に設けられている。ブレーキ回路42aは、リア用シャトル弁47aに接続されている。ブレーキ回路42bは、フロントのアクスル34に設けられている。ブレーキ回路42bは、フロント用シャトル弁47bに接続されている。ブレーキ回路42a、42bは、油圧式のブレーキである。ブレーキ回路42aは、リア用シャトル弁47aから供給される作動油の量が多いまたは圧が大きいほど制動力が強くなる。ブレーキ回路42bは、フロント用シャトル弁47bから供給される作動油の量が多いまたは圧が大きいほど制動力が強くなる。
【0037】
シャットオフ弁45は、作動油供給路44bに接続されている。シャットオフ弁45は、4つのポートを有しており、開状態および閉状態の2状態をとるソレノイド弁である。シャットオフ弁45の第1ポートは、作動油供給路44bに接続されている。シャットオフ弁45の第2ポートはタンク48に接続されている。シャットオフ弁45の第3ポートは、EPC弁46に接続されている。シャットオフ弁45の第4ポートは、開状態においてエアーが通り、閉状態において遮蔽される。
【0038】
シャットオフ弁45は、制御系26からの指示に基づいて開閉される。具体的には、シャットオフ弁45は、制御系26からの開指令によって通電がされたときに開状態となり、制御系26からの閉指令によって通電が停止され閉状態となる。
【0039】
シャットオフ弁45は、開状態において、第1ポートと第3ポートを接続し、作動油供給路44bからEPC弁46に作動油を供給する。また、シャットオフ弁45は、開状態において、エアーが通る状態の第4ポートとタンク48に接続された第2ポートを接続する。
【0040】
シャットオフ弁45は、閉状態において、第2ポートと第3ポートを接続し、シャットオフ弁45とEPC弁の間の作動油をタンク48へ排出する。また、シャットオフ弁45は、閉状態において、第1ポートおよび第4ポートを閉じる。これにより、シャットオフ弁45は、閉状態において、作動油供給路44bからEPC弁46への作動油の供給を停止する。
【0041】
本実施の形態では、制御系26は、例えば、車両本体1が後方向に走行しているときにのみシャットオフ弁45を開状態にする。車両本体1の後方向への移動は、走行方向検出部72の検出結果に基づいて、制御系26が判断を行う。
【0042】
EPC弁46は、シャットオフ弁45とシャトル弁ユニット47を接続する流路に配置されている。EPC弁46は、3ポートを有するソレノイド弁である。EPC弁46の第1ポートは、シャットオフ弁45に接続されている。EPC弁46の第2ポートは、タンク48に接続されている。EPC弁46の第3ポートは、シャトル弁ユニット47に接続されている。
【0043】
EPC弁46は、開状態において、第1ポートと第3ポートを接続し、シャットオフ弁45から供給される作動油をシャトル弁ユニット47に供給する。EPC弁46は、制御系26からの指示に基づいて開度が調整され、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。
【0044】
EPC弁46は、閉状態において、第1ポートが閉じられ、第2ポートと第3ポートを接続し、EPC弁46からシャトル弁ユニット47までの流路の作動油をタンク48に排出する。これにより、EPC弁46は、閉状態において、シャットオフ弁45からシャトル弁ユニット47への作動油の供給を停止する。
【0045】
シャトル弁ユニット47は、リア用シャトル弁47aと、フロント用シャトル弁47bと、を有する。リア用シャトル弁47aは、リア用ブレーキ弁41aを介して供給される作動油と、EPC弁46を介して供給される作動油のうち圧力が大きい方の作動油をブレーキ回路42aに供給する。フロント用シャトル弁47bは、フロント用ブレーキ弁41bを介して供給される作動油と、EPC弁46を介して供給される作動油のうち圧力が大きい方の作動油をブレーキ回路42bに供給する。
【0046】
このような構成により、ブレーキペダル54が操作されずブレーキ弁ユニット41から作動油が供給されない場合でも、制御系26からの指示によってシャットオフ弁45およびEPC弁46が開状態にされると、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bからブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、自動ブレーキの制御が実施される。
【0047】
図2に示すパーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられている。パーキングブレーキ43としては、例えば、制動状態と非制動状態に切り替え可能な湿式多段式のブレーキや、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0048】
(操作系23)
操作系23は、
図2に示すように、アクセル51と、FNRレバー52と、パーキングスイッチ53と、ブレーキペダル54と、復帰スイッチ55と、を有する。
【0049】
アクセル51は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、アクセル51を操作してスロットル開度を設定する。アクセル51は、アクセル操作量を示す開度信号を生成して制御系26へ送信する。制御系26は、送信される信号に基づいてエンジン31の回転速度を制御する。
【0050】
FNRレバー52は、キャブ5に設けられている。FNRレバー52は、前進、ニュートラル、または後進の位置をとることができる。FNRレバー52の位置を示す操作信号が制御系26に送信され、制御系26は、ソレノイド32dを制御して前進または後進を切り替える。
【0051】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号を制御系26に送信する。制御系26は、送信される信号に基づいてパーキングブレーキ43を制動状態または非制動状態にする。
【0052】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられている。ブレーキペダル54は、ブレーキ弁ユニット41のリア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの開度を調整する。
【0053】
復帰スイッチ55は、後述する自動ブレーキによって車両本体1が停止した後、停止状態から復帰するためにオペレータによって操作される。
【0054】
(報知系24)
報知系24は、警報装置61と、自動ブレーキ作動通知ランプ63と、を有する。
【0055】
警報装置61は、後述する検出系25の後方検出部71の検出に基づいて後進時において車両本体1の後方に物体を検出した場合に制御系26からの指示によりオペレータに警報を行う。
【0056】
警報装置61は、例えば、ランプを有し、ランプを点灯させてもよい。また、ランプに限らず、警報装置61がスピーカを有し、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに警報を表示させてもよい。
【0057】
自動ブレーキ作動通知ランプ63は、自動ブレーキが作動している状態であることをオペレータに通知し、復帰スイッチ55による復帰動作が必要なことを通知する。なお、復帰スイッチ55が操作され自動ブレーキが解除されると、自動ブレーキ作動通知ランプ63が消灯する。
【0058】
なお、自動ブレーキ作動通知ランプ63は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0059】
上述のように報知系24によるオペレータに対する情報の報知の手段は、ランプ、音、モニター等適宜選択することができる。
【0060】
(検出系25)
図3は、検出系25および制御系26の構成を示すブロック図である。
【0061】
検出系25は、後方検出部71(物体検出部の一例)と、走行方向検出部72と、を有する。
【0062】
後方検出部71は、車両本体1の後方の状態に関する情報を検出する。後方検出部71は、例えば、
図1に示すように車両本体1の後端に取り付けられているが、後端に限らなくても良い。
【0063】
後方検出部71は、メインレーダ71aと、サブレーダ71bと、を有する。メインレーダ71aおよびサブレーダ71bは、例えばミリ波レーダである。メインレーダ71aおよびサブレーダ71bを備えることによって、一方が故障した場合などであっても他方で後方の物体を検出することが出来る。
【0064】
メインレーダ71aおよびサブレーダ71bの各々は、送信アンテナから発したミリ波帯の電波が物体の表面で反射して戻ってくる様子を受信アンテナで検出する。メインレーダ71aおよびサブレーダ71bによって検出された情報が制御系26に送信され、制御系26は、車両本体1の後方に物体が存在するか否かを判定できる。また、制御系26は、検出した物体までの距離を算出してもよい。
【0065】
走行方向検出部72は、車両本体1の走行方向に関する情報を検出する。制御系26は、走行方向検出部72で検出された情報に基づいて、車両本体1の走行方向を判定する。走行方向検出部72は、回転センサ72aと、加速度センサ72bと、を有する。回転センサ72aは、フロントタイヤ4またはリアタイヤ7の回転方向を検出する。加速度センサ72bは、車両本体1の加速度を検出する。
【0066】
回転センサ72aおよび加速度センサ72bの情報によって、車両本体1が前進、停止または後進のいずれの状態であるかを判定することができる。
【0067】
(制御系26)
制御系26は、検知コントローラ80と、車体コントローラ90と、を有する。
【0068】
検知コントローラ80と車体コントローラ90の各々は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリと、ストレージを含む。検知コントローラ80と車体コントローラ90は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。なお、本実施の形態では、検知コントローラ80と車体コントローラ90の各々がCPUを有していると記載したが、検知コントローラ80と車体コントローラ90が全体で1つのCPUを有していてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して検知コントローラ80と車体コントローラ90に配信されてもよい。
【0069】
検知コントローラ80は、後方検出部71で検出された情報に基づいて物体の存在を検出する。車体コントローラ90は、検知コントローラ80の検出結果に基づいて自動ブレーキの制御を実施する。車体コントローラ90は、車両本体1が前進している場合には、自動ブレーキによる制動力が発揮不可能となるように制動系22を設定する。
【0070】
検知コントローラ80は、後方情報取得部81と、物体判定部82と、を有する。
【0071】
後方情報取得部81は、後方検出部71のメインレーダ71aおよびサブレーダ71bによって検出された後方に関する情報を取得する。物体判定部82は、取得した後方に関する情報に基づいて、後方に物体が存在するか否かを判定する。物体判定部82による判定結果は、後述するEPC弁指令部94に送信される。
図5は、ホイールローダ100の後方に物体Mが存在する状態を示す図である。
【0072】
車体コントローラ90は、走行方向情報取得部91と、走行方向判定部92と、シャットオフ弁指令部93と、EPC弁指令部94と、報知系指令部95と、を有する。
【0073】
走行方向情報取得部91は、回転センサ72aおよび加速度センサ72bによる検出情報を取得する。
【0074】
走行方向判定部92は、取得した検出情報に基づいて、車両本体1の走行方向を判定する。本実施の形態では、後進時において後方に物体を検出した場合に自動ブレーキの制御を実施するため、走行方向判定部92は、回転センサ72aと加速度センサ72bの情報に基づいて、車両本体1が後進しているか否かを判定する。なお、走行方向の判定については、回転センサ72aおよび加速度センサ72bの検出結果だけでなく、FNRレバー52が後進の位置をとっていることを組み合わせてもよい。例えば、フロントタイヤ4およびリアタイヤ7が回転していない停止状態であっても、FNRレバー52が後進の位置をとっている場合、車両本体1が後進状態であると判定してもよい。FNRレバー52の位置を検出する位置検出センサとして、ポテンショメータが設けられていてもよいし、前進位置、後進位置およびニュートラル位置ごとにスイッチが設けられていてもよい。また、ポテンショメータとスイッチのうち一方が誤操作しても検出可能なように双方が設けられていてもよい。
【0075】
シャットオフ弁指令部93は、走行方向判定部92によって車両本体1が後進していると判定された場合に、シャットオフ弁45に開指令を行う。これにより、シャットオフ弁45に通電され、シャットオフ弁45が開状態となり、作動油供給路44bからEPC弁46に作動油が供給され、自動ブレーキを実施したときには制動力が発揮される状態となる。一方、走行方向判定部92によって車両本体1が前進していると判定された場合には、シャットオフ弁指令部93は、シャットオフ弁45に閉指令を行う。閉指令が送信された場合、シャットオフ弁45は非通電状態となり、閉状態になるため、EPC弁46に作動油が供給されない。
【0076】
EPC弁指令部94は、走行方向判定部92によって車両本体1が後進していると判定された場合に、物体判定部82によって車両本体1の後方に物体が存在すると判定されたとき、EPC弁指令部94に開指令を行う。EPC弁46の開度は、予め設定されていてもよいし、検出された物体までの距離に基づいて調整されてもよい。例えば、検出された物体までの距離から物体の手前で停止する減速度を算出し、その減速度を発揮する開度になるようにEPC弁指令部94がEPC弁46に開指令を送信してもよい。
【0077】
開指令に基づいてEPC弁46のソレノイドが操作され、開状態となり、EPC弁46からリア用シャトル弁47aとフロント用シャトル弁47bに作動油が供給される。リア用シャトル弁47aにおいて、リア用ブレーキ弁41aからの作動油とEPC弁46からの作動油のうち圧力が高い方がブレーキ回路42aに供給され、制動力が発揮される。また、フロント用シャトル弁47bにおいて、フロント用ブレーキ弁41bからの作動油とEPC弁46からの作動油のうち圧力が高い方がブレーキ回路42aに供給され、制動力が発揮される。これにより、オペレータによってブレーキペダル54の操作が行われない場合であっても自動ブレーキが実施されて制動力が発揮され、
図5に示すように物体Mの手前で車両本体1を停止することができる。停止した状態の車両本体1が二点鎖線で示されている。
【0078】
一方、シャットオフ弁45が閉じられた状態では、EPC弁46に作動油が供給されないため、たとえEPC弁46が誤動作により開状態になったとしてもEPC弁46からシャトル弁ユニット47に作動油が供給されない。そのため、自動ブレーキを実施したとしても制動力が発揮されない。これにより、例えば誤動作によって前進時に自動ブレーキが実施された場合でも、制動力が発揮されないため車両本体1は停止されず、作業が妨げられない。
【0079】
なお、自動ブレーキによる制動力が発揮されない場合であっても、オペレータがブレーキペダル54を操作し、ブレーキ弁ユニット41から作動油がシャトル弁ユニット47に供給されるとブレーキ回路42a、42bが作動する。
【0080】
報知系指令部95は、シャットオフ弁指令部93から開指令を行い、EPC弁指令部94から開指令を行った場合に、自動ブレーキ作動通知ランプ63に点灯指令を行い、警報装置61に駆動指令を行う。なお、オペレータが復帰スイッチ55を操作し、自動ブレーキが解除されると、報知系指令部95は自動ブレーキ作動通知ランプ63に消灯指示を行い、警報装置61に停止指令を行う
【0081】
<動作>
次に、本実施の形態のホイールローダ100の制御動作について説明する。
【0082】
図6は、本実施の形態のホイールローダ100の制御動作を示すフロー図である。
【0083】
はじめに、ステップS10において、走行方向情報取得部91が走行方向検出部72の検出情報を取得する。
【0084】
次に、ステップS20(走行方向検出ステップの一例)において、走行方向判定部92が、取得した検出情報に基づいて、車両本体1の走行方向が後進か否かを判定する。
【0085】
ステップS20において走行方向が後進であると判定された場合、ステップS30(設定ステップの一例)において、シャットオフ弁指令部93は、シャットオフ弁45に開指令を送信する。これによって、シャットオフ弁45に通電が行われ、シャットオフ弁45は開状態となり、EPC弁46に作動油が供給される。
【0086】
一方、ステップS20において走行方向が後進ではなく前進であると判定された場合、ステップS40(設定ステップの一例)において、シャットオフ弁指令部93は、シャットオフ弁45に閉指令を送信し、制御が終了する。これにより、シャットオフ弁45が非通電状態となり、シャットオフ弁45は閉状態となる。なお、現在のシャットオフ弁45の開閉状態が分かる場合には、現在と同じ状態の指令は送信しなくてもよい。例えば、シャットオフ弁45が現在閉状態の場合には、再度閉指令を送信しなくてもよい。
【0087】
ステップS30の次にステップS50(物体検出ステップの一例)において、物体判定部82が車両本体1の後方に物体が存在すると判定した場合には、制御はステップS60に進む。一方、ステップS50において物体判定部82が車両本体1の後方に物体が存在しないと判定した場合、制御は終了する。
【0088】
次に、ステップS60において、EPC弁指令部94がEPC弁46に開指令を送信する。これにより、EPC弁46のソレノイドが操作され、開状態となり、EPC弁46からリア用シャトル弁47aとフロント用シャトル弁47bを介してブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、自動ブレーキによる制動力が発揮される。
【0089】
次に、ステップS70において、報知系指令部95が、自動ブレーキ作動通知ランプ63に転倒指令を送信し、警報装置61に報知指令を送信する。これにより、自動ブレーキ作動通知ランプ63が点灯し、警報装置61による警報が報知される。
【0090】
以上のように、車両本体1が後方に走行している状態において、後方に物体Mを検出した場合には、自動ブレーキによって車両本体1を物体Mの手前で停止することができる(
図5参照)。一方、車両本体1が前方に走行している状態では、シャットオフ弁45が閉じられてEPC弁46に作動油が供給されないため、誤動作によって自動ブレーキが実施された場合であっても制動力が発揮されず車両本体1の停止を抑制できる。
【0091】
<特徴>
(1)
本実施の形態のホイールローダ100(作業機械の一例)は、車両本体1と、走行方向検出部72と、後方検出部71(物体検出部の一例)と、制動部40と、シャットオフ弁45(設定部の一例)と、制御系26(制御部の一例)と、を備える。車両本体1は、走行可能である。後方検出部71は、車両本体1の後方向(所定方向の一例)における物体を検出する。制動部40は、後方検出部71による物体の検出に基づいて、車両本体1を自動で制動する自動ブレーキを実施して制動力を発揮可能である。シャットオフ弁45は、自動ブレーキによる制動力を発揮可能または発揮不可能になるよう制動部40を設定する。制御系26は、シャットオフ弁45を制御して、車両本体1が後方向に走行している場合は、制動力を発揮可能となるように制動部40を設定し、車両本体1が後方向以外に走行している場合は、制動力を発揮不可能となるように制動部40を設定する。
【0092】
これにより、後方向に向かって走行しているときだけ、物体検出時に自動ブレーキによる制動力が発揮されるため、後方向以外(前進)では、誤動作によって自動ブレーキの制御が実施されたとしても制動力を発揮できない。このため、誤動作を抑制して所望の走行方向でだけ自動ブレーキによる制動力が発揮することができる。
【0093】
(2)
本実施の形態のホイールローダ100では、制御系26は、車両本体1が後方向に走行している場合に、後方検出部71によって物体が検出されたときは、自動ブレーキを実施するように制動部40を制御する。
【0094】
これにより、後方向において物体を検出した際に車両本体1を自動で停止させることができる。
【0095】
(3)
本実施の形態のホイールローダ100では、制動部40は、ブレーキ回路42a、42b(サービスブレーキの一例)と、EPC弁46(調整弁の一例)と、を有する。EPC弁46は、ブレーキ回路42a、42bへの作動油の供給量を調整可能である。
【0096】
これにより、サービスブレーキであるブレーキ回路42a、42bにより自動ブレーキを実施することができる。
【0097】
(4)
本実施の形態のホイールローダ100では、シャットオフ弁45は、EPC弁46への作動油の供給を遮断可能である。制御系26は、シャットオフ弁45を制御して、EPC弁46への作動油の供給を遮断することによって制動力を発揮不可能となるよう制動部40を設定し、EPC弁46に作動油を供給することによって制動力を発揮可能となるよう制動部40を設定する。
【0098】
これにより、シャットオフ弁45の開閉によって、自動ブレーキによる制動力を発揮可能または発揮不可能に設定することができる。
【0099】
(5)
本実施の形態のホイールローダ100では、走行方向検出部72は、回転センサ72a、加速度センサ72b、位置検出センサ(図示せず)の少なくとも1つを有する。回転センサ72aは、走行体2のフロントタイヤ4(車輪の一例)またはリアタイヤ7(車輪の一例)の回転を検出する。加速度センサ72bは、走行体2の加速度を検出する。位置検出センサは、FNRレバー52の位置を検出する。制御系26は、回転センサ72a、加速度センサ72b、または位置検出センサの検出に基づいて、車両本体1の走行方向を判定する。
【0100】
これにより、車両本体の走行方向を判定することができる。
【0101】
(6)
本実施の形態のホイールローダ100では、制動部40は、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bと、リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bと、を備える。リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bは、ブレーキ回路42a、42bに作動油を供給する。リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bは、ブレーキペダル54の操作に基づいてリア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bに排出する作動油の流量を調整する。EPC弁46は、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bに作動油を供給する。リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bは、EPC弁46から供給された作動油と、リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bから供給された作動油のうち圧力が高い方を、ブレーキ回路42a、42bに供給する。
【0102】
これにより、オペレータがブレーキペダル54を動作させた場合に、ブレーキペダル54からの作動油の圧力が高いときは、ブレーキペダル54の操作による制動を行うことができる。
【0103】
(7)
本実施の形態のホイールローダ100は、作業機3と、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、を更に備える。フロントフレーム11には、作業機3が取り付けられている。リアフレーム12は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。
これにより、ホイールローダにおいて、誤動作を抑制して所望の走行方向でだけ自動ブレーキによる制動力が発揮することができる。
【0104】
(8)
本実施の形態のホイールローダ100の制御方法は、ステップS20(走行方向検出ステップの一例)と、ステップS50(物体検出ステップの一例)と、ステップS30、S40(設定ステップの一例)と、を備える。ステップS20は、車両本体1の走行方向を検出する。ステップS50は、車両本体1の後方向(所定方向の一例)における物体を検出する。ステップS30、S40は、車両本体1が後方向に走行している場合は、ステップS50による物体の検出に基づいて車両本体1を自動で制動する自動ブレーキの実施による制動力を実施可能となるよう設定し、車両本体1が後方向以外に走行している場合は、制動力を発揮不可能となるように設定自動ブレーキを実施不可能となるように設定する。
【0105】
これにより、後方向に向かって走行しているときだけ、物体検出時に自動ブレーキによる制動力が発揮されるため、後方向以外(前進)では、誤動作によって自動ブレーキの制御が実施されたとしても制動力を発揮できない。このため、誤動作を抑制して所望の走行方向でだけ自動ブレーキによる制動力が発揮することができる。
【0106】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0107】
(A)
上記実施の形態では、走行方向検出部72が、メインレーダ71aおよびサブレーダ71bを有しているが、レーダに限らなくてもよく、例えばカメラなどであってもよい。後進時において後方検出部71によって後方に物体が存在することが検出された場合に、自動ブレーキが実行される。
【0108】
(B)
上記実施の形態では、駆動系21にHST32を用いているが、HSTに限らなくても良く、トルクコンバータであってもよい。
図7は、駆動系21にトルクコンバータ132とトランスミッション133が設けられた構成を示すブロック図である。エンジン31からの駆動力はトルクコンバータ132を介してトランスミッション133に伝達される。トランスミッション133は、トルクコンバータ132を介して伝達されるエンジン31の回転駆動力を変速してアクスル34に伝達する。トランスミッション133には、パーキングブレーキ43が設けられている。
【0109】
また、HSTに限らず、HMT(Hydro Mechanical Transmission)が用いられても良い。
【0110】
(C)
上記実施の形態のホイールローダはオペレータが搭乗して操作してもよいし、無人で操作されてもよい。
【0111】
(D)
上記実施の形態では、作業機械の一例としてホイールローダを用いて説明したが、ホイールローダに限らなくてもよく、油圧ショベル等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の作業機械および作業機械の制御方法によれば、作業効率を向上することが可能な効果を発揮し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0113】
1 :車両本体
26 :制御系
40 :制動部
45 :シャットオフ弁
71 :後方検出部
72 :走行方向検出部
100 :ホイールローダ