(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015067
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】格技用面マスクおよび面金
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220114BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220114BHJP
A63B 71/10 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 Z
A41D13/11 A
A41D13/11 E
A41D13/11 M
A62B18/02 Z
A63B71/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117682
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】504426517
【氏名又は名称】共栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 捷三
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA07
(57)【要約】
【課題】装着者の口元を前方から覆うマスク本体において、その前後方向の通気性を確保し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスク、および、この格技用面マスクを取り付けた状態で好適に使用できる面金を提供する。
【解決手段】格技用面マスクは、厚さ方向の通気性を有する生地によって形成されて、競技者の顔と面金との間に位置され、競技者の口元を前方から覆う口元覆いを有するマスク本体を備えている。また、格技用面マスクは、マスク本体における左右両側の縁部から延びだされて横金をくくり、この横金にマスク本体が留められた留め状態を実現させる留め部を備えている。面金は、横金が上下に並んだ構成において、ものみの下側の横金および/または最も下側に位置される横金に抗菌加工が施されたものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者の頭部および首を左右両側および上側から覆う面ぶとんと、競技者の顔の前方に位置されて、当該前方に湾曲して延びる横金が上下に並んだ構成を有してなる面金と、当該面金に取り付けられる取り付け部を有して、前記面ぶとんおよび前記面金を競技者の頭部にくくりつけられた装着状態にすることを実現させる面ひもと、を備えた格技用面防具に取り付けることができる格技用面マスクであって、
厚さ方向の通気性を有する生地によって形成されて、競技者の顔と前記面金との間に位置され、競技者の口元を前記前方から覆う口元覆いを有するマスク本体と、
前記マスク本体における左右両側の縁部から延びだされて前記横金をくくり、当該横金に前記マスク本体が留められた留め状態を実現させる留め部と、
を備えている、
格技用面マスク。
【請求項2】
請求項1に記載された格技用面マスクであって、
前記マスク本体は、前記口元覆いの上縁部から後方に傾斜した状態で延びだされて、競技者の鼻元を前記前方から覆う鼻元覆いを備えている、
格技用面マスク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された格技用面マスクであって、
前記マスク本体は、前記装着状態および前記留め状態の両方が実現された使用状態において、競技者の口元まわりのスペースを下側に向けて開放された状態にする、
格技用面マスク。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記横金の中の1本である取り付け横金に対して前記取り付け部がスライド移動可能に取り付けられ、かつ、前記取り付け部が後方に引っ張られた引っ張り状態で前記装着状態が実現されるタイプの格技用面防具に取り付けることができるものであり、
前記留め部は、前記取り付け横金をくくり、かつ、前記引っ張り状態にある前記取り付け部と前記面金との間に挟み込まれた挟み込み状態で、前記留め状態を実現させる、
格技用面マスク。
【請求項5】
請求項4に記載された格技用面マスクであって、
前記留め部が、前記挟み込み状態において、全体が前記取り付け部に覆い隠されるサイズとされている、
格技用面マスク。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記留め部は、前記マスク本体において前記前方に位置される面に取り付けられるものである、
格技用面マスク。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記留め部は、当該留め部が前記横金をくくった状態に留めることを実現させる点ファスナーを備えている、
格技用面マスク。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記マスク本体が、前記前方に凸となる曲面形状を呈する、
格技用面マスク。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記マスク本体は、複数枚のシート材を、縫いしろが前記前方に突出される形で縫い合わせてなるものである、
格技用面マスク。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記マスク本体における左右両側の前記縁部に、当該縁部が変形することを抑える芯材が付設されている、
格技用面マスク。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記留め状態において、前記縁部が、前記面ぶとんの前縁部と前記面金とが隣り合う部分をくるむシート材である面ぶちに沿った状態に位置される、
格技用面マスク。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記口元覆いが、通気性、吸水性、および、抗菌性をあわせもつ機能性素材の生地によって形成されている、
格技用面マスク。
【請求項13】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクであって、
前記口元覆いが、キョンのセーム革の生地によって形成されている、
格技用面マスク。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクを取り付けることが可能な面金であって、
前記横金が上下に並んだ構成において、他の部分よりも広い間隔で2本の前記横金が並んだ部分であるものみを備え、
前記ものみにおいて2本並んだ前記横金のうち、下側に位置される前記横金に抗菌加工が施されている、
面金。
【請求項15】
請求項1ないし請求項13のうちのいずれか1項に記載された格技用面マスクを取り付けることが可能な面金であって、
前記横金が上下に並んだ構成において、最も下側に位置される前記横金に抗菌加工が施されている、
面金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、格技用面防具に取り付けることができる格技用面マスク、および、この格技用面マスクを取り付けることが可能な面金に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示において、格技(Martial Arts)とは、相対する競技者が、互いに打突などの技をかけあって勝負する競技のことをいう。この格技には、競技者の頭部および首を覆う面ぶとんと、競技者の顔の前方に位置される面金と、面ぶとんおよび面金を競技者の頭部にくくりつけるための面ひもと、を有する面防具を着用して競技を行うものが存在する。このような面防具を使用する格技としては、例えば、剣道、逮捕術、なぎなた、銃剣道、槍術などが挙げられる。
【0003】
ここで、面防具は、打突などによる競技者の頭部へのダメージを防ぐために装着されるものであり、その面金および面ぶとんには、強度が高く重量が重い構成が採用される。このため、面防具の装着時には、面ぶとんは面ひもにより強く締められ、競技者の頭部を強い力で挟み込む。
【0004】
ところで、面防具を使用する格技の多くにおいては、技をかける際等に「キアイ」と呼ばれる掛け声をかけることが肝要とされる。ここで、キアイの掛け声は、しばしばその声量が非常に大きくなるものであり、発声時に口からしぶきが飛び散ることがあるものである。このため、競技者は、キアイをかける際に口から飛び散るしぶきについて、衛生上の不安を抱くことがある。
【0005】
この不安を解消するための方法としては、口元覆いの両側縁部から耳掛けを延びださせた構成の衛生マスクを着用した上から、面防具を着用することが考えられる。しかしながら、この場合は、競技者は、衛生マスクの耳掛けが面ぶとんによって強く押圧されることで不快感を覚える。また、競技者が格技の技量に優れるものである場合、面ぶとん(特に面ぶとんの前縁部となる部分であるウチワ部分)と競技者の頭部との間に耳掛けが介挿されることにより生じる面ぶとんのわずかな変形は、格技における正確な動きに影響を及ぼすレベルの違和感を競技者にもたらすことがある。
【0006】
この問題を解消するための技術としては、下記の非特許文献1に開示されているような技術が知られている。この技術においては、布地にくるまれたポリカーボネートの板をシールドとして、このシールドを面防具の面金に裏側(すなわち、面防具の装着状態において装着者の顔側となる側)から取り付けることで、装着者の口元を前方から覆われた状態とする。ここで、シールドは、そのポリカーボネートの板をたわめた状態で面金に係止され、このポリカーボネートの板が発揮する弾発力をもって面金に取り付けられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社福田武道具、「剣道マスク&綿100%飛沫吸収カバー 単品でもセットでも購入できます。」、[online]、[2020年6月26日検索]、インターネット<URL: http://www.f-budogu.jp/shopdetail/000000003901/001/X/page1/order/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の技術では、シールドの取り付けにおいて、ポリカーボネートの板は必須の構成要素である。しかるに、ポリカーボネートの板はその厚さ方向に通気性のないものであり、シールドが取り付けられた面防具の装着時においては、装着者の口元まわりにおける前後方向の通気を阻害する。このため、上記従来の技術では、シールドが取り付けられた面防具の装着時において、装着者が呼吸のしにくさを感じることがあった。
【0009】
本開示は、装着者の口元を前方から覆うマスク本体において、その前後方向の通気性を確保し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスク、および、この格技用面マスクを取り付けた状態で好適に使用できる面金を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示における1つの特徴によると、格技用面防具に取り付けることができる格技用面マスクが提供される。ここで、格技用面防具は、競技者の頭部および首を左右両側および上側から覆う面ぶとんを備えている。また、格技用面防具は、競技者の顔の前方に位置されて、この前方に湾曲して延びる横金が上下に並んだ構成を有してなる面金を備えている。また、格技用面防具は、面金に取り付けられる取り付け部を有して、面ぶとんおよび面金を競技者の頭部にくくりつけられた装着状態にすることを実現させる面ひもを備えている。また、格技用面マスクは、厚さ方向の通気性を有する生地によって形成されて、競技者の顔と面金との間に位置され、競技者の口元を上記前方から覆う口元覆いを有するマスク本体を備えている。また、格技用面マスクは、マスク本体における左右両側の縁部から延びだされて横金をくくり、この横金にマスク本体が留められた留め状態を実現させる留め部を備えている。
【0011】
上記の格技用面マスクによれば、格技用面マスクは、そのマスク本体が厚さ方向の通気性を有する。また、このマスク本体は、その縁部から延びだされる留め部によって格技用面防具の面金に取り付けられる。これにより、競技者の口元を覆うマスク本体において、その前後方向の通気性を確保し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスクを提供することができる。
【0012】
上記の格技用面マスクにおいては、マスク本体は、口元覆いの上縁部から後方に傾斜した状態で延びだされて、競技者の鼻元を上記前方から覆う鼻元覆いを備えているものが好ましい。
【0013】
上記の格技用面マスクによれば、競技者の口から飛び散るしぶきの流れが口元覆いの上縁部を乗り越えて広がることについての衛生上の不安を、口元覆いの上縁部から延びだされる鼻元覆いによって軽減させることができる。また、鼻元覆いを後方に傾斜されたものにする構成によれば、鼻元覆いを上記しぶきの流れを遮るように位置させて、このしぶきの流れに関する衛生上の不安の軽減度合いをより大きいものとすることができる。また、鼻元覆いを後方に傾斜されたものにする構成によれば、鼻元覆いによって生じる競技者の死角をより狭いものにすることができる。
【0014】
上記の格技用面マスクにおいては、マスク本体は、上記装着状態および上記留め状態の両方が実現された使用状態において、競技者の口元まわりのスペースを下側に向けて開放された状態にするものが好ましい。
【0015】
上記の格技用面マスクによれば、使用状態において、競技者における口元まわりのスペースの下側に空気の通り道を設定し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスクを提供することができる。
【0016】
上記の格技用面マスクにおいては、横金の中の1本である取り付け横金に対して取り付け部がスライド移動可能に取り付けられ、かつ、取り付け部が後方に引っ張られた引っ張り状態で上記装着状態が実現されるタイプの格技用面防具に取り付けることができるものが好ましい。この場合において、留め部は、取り付け横金をくくり、かつ、上記引っ張り状態にある取り付け部と面金との間に挟み込まれた挟み込み状態で、上記留め状態を実現させる。
【0017】
格技用面防具は、打突などによる競技者の頭部へのダメージを防ぐために装着されるものであり、その面金および面ぶとんには、強度が高く重量が重い構成が採用される。このため、格技用面防具の面金および面ぶとんを競技者の頭部に面ひもによってくくりつける際には、この面ひもを強く張られた状態にする必要がある。ここで、上記の格技用面マスクによれば、引っ張り状態にある面ひもの取り付け部と面金との間に留め部を挟み込み、この面ひもを強く張られた状態にする力をもって留め部のずれ動きを抑えることができる。
【0018】
上記の格技用面マスクにおいては、留め部が、上記挟み込み状態において、全体が取り付け部に覆い隠されるサイズとされているものが好ましい。
【0019】
上記の格技用面マスクによれば、面金の取り付け横金をくくる留め部を面ひもの取り付け部によって覆い隠し、もって格技用面マスクの使用による見た目の変化を分かりにくくすることができる。
【0020】
上記の格技用面マスクにおいては、留め部は、マスク本体において上記前方に位置される面に取り付けられるものが好ましい。
【0021】
上述した引っ張り状態においては、面ひもは、しばしばその取り付け部が取り付け横金において後方に位置される端部に達するまで引っ張られる。ここで、上記の格技用面マスクによれば、上記留め状態において面ひもの取り付け部が取り付け横金の端部に達するまで引っ張られたときに、マスク本体が上記端部よりも競技者の顔に近い位置に位置される。これにより、キアイをかける際のしぶきの飛び散りを抑える性能が高いという印象を与える格技用面マスクを提供することができる。
【0022】
上記の格技用面マスクにおいては、留め部は、この留め部が横金をくくった状態に留めることを実現させる点ファスナーを備えているものが好ましい。
【0023】
上記の格技用面マスクによれば、横金をくくった状態の留め部は、この留め部において点状に設定された点ファスナーの配設箇所にて留められる。これにより、留め部を留める位置にずれが生じて、格技用面防具に対する格技用面マスクの取り付け姿勢に変化が生じるおそれを減らすことができる。
【0024】
上記の格技用面マスクにおいては、マスク本体が、上記前方に凸となる曲面形状を呈するものが好ましい。
【0025】
上記の格技用面マスクによれば、競技者の口元まわりとマスク本体との間のスペースをこのマスク本体の形状の設定によって広くし、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスクを提供することができる。
【0026】
上記の格技用面マスクにおいては、マスク本体は、複数枚のシート材を、縫いしろが上記前方に突出される形で縫い合わせてなるものが好ましい。
【0027】
上記の格技用面マスクによれば、マスク本体の縫いしろを競技者の顔とは反対側に位置させてこの顔に接触しないようにし、この接触により不快感が生じることをさけることが可能な格技用面マスクを提供することができる。
【0028】
上記の格技用面マスクにおいては、マスク本体における左右両側の縁部に、この縁部が変形することを抑える芯材が付設されているものが好ましい。
【0029】
上記の格技用面マスクによれば、口元覆いの型崩れを芯材によって抑え、もって競技者の口元から口元覆いがずれるおそれが低減された格技用面マスクを提供することができる。
【0030】
上記の格技用面マスクにおいては、上記留め状態において、上記縁部が、面ぶとんの前縁部と面金とが隣り合う部分をくるむシート材である面ぶちに沿った状態に位置されるものが好ましい。
【0031】
上記の格技用面マスクによれば、口元覆いの位置ずれをマスク本体の縁部と面ぶちとの係合によって抑え、もって競技者の口元から口元覆いがずれるおそれが低減された格技用面マスクを提供することができる。
【0032】
上記の格技用面マスクにおいては、口元覆いが、通気性、吸水性、および、抗菌性をあわせもつ機能性素材の生地によって形成されているものが好ましい。
【0033】
上記の格技用面マスクによれば、競技者における、口から飛び散るしぶきが口元覆いに付着することに対しての衛生上の不安を、口元覆いが吸水性と抗菌性とをあわせもっていることをもって低減させることができる。
【0034】
上記の格技用面マスクにおいては、口元覆いが、キョンのセーム革の生地によって形成されているものが好ましい。
【0035】
本開示において、「セーム革」とは、ウシ亜目に属する動物から得られる原皮を油でなめして得られる革のことをいう。また、「キョン(Muntiacus reevesi)」は、ウシ亜目シカ科ホエジカ属に属する動物であり、その原皮を油でなめして得られるセーム革の生地は、人工化合物からなるクロス材では達成できないレベルの吸水性を発揮し、かつ、優れた通気性を有することが知られている。すなわち、上記の格技用面マスクによれば、競技者における、口から飛び散るしぶきに対しての衛生上の不安を、口元覆いが有する吸水性をもって低減させることができる。
【0036】
本開示における別の特徴によると、上述した格技用面マスクを取り付けることが可能な面金が提供される。この面金は、上記横金が上下に並んだ構成において、他の部分よりも広い間隔で2本の横金が並んだ部分であるものみを備えている。このものみにおいて2本並んだ横金のうち、下側に位置される横金には抗菌加工が施されている。
【0037】
格技用面防具においては、その面金に、他の部分よりも広い間隔で2本の横金が並んだ部分であるものみが設定されているものがある。このような格技用面防具を使用する競技者は、しばしば、自身の眼前にものみが位置されるように格技用面防具を装着し、もって良好な視界の確保を図る。このため、競技者が上述した格技用面マスクを使用するにあたっては、競技者は、格技用面マスクのマスク本体の上縁から漏れ出た呼気が面金におけるものみの下側の横金にかかると予想することが考えられる。ここで、上記の面金によれば、マスク本体の上縁から漏れ出た呼気が面金におけるものみの下側の横金にかかることに対しての衛生上の不安を、この横金に抗菌加工を施すことによって低減させることができる。
【0038】
本開示における別の特徴によると、上述した格技用面マスクを取り付けることが可能な面金が提供される。この面金は、上記横金が上下に並んだ構成において、最も下側に位置される横金に抗菌加工が施されている。
【0039】
競技者が上述した格技用面マスクを使用するにあたっては、競技者は、格技用面マスクのマスク本体の下縁から漏れ出た呼気が面金において最も下側に位置される横金にかかると予想することが考えられる。ここで、上記の面金によれば、マスク本体の下縁から漏れ出た呼気が面金において最も下側に位置される横金にかかることに対しての衛生上の不安を、この横金に抗菌加工を施すことによって低減させることができる。
【発明の効果】
【0040】
本開示によれば、装着者の口元を前方から覆うマスク本体において、その前後方向の通気性を確保し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスク、および、この格技用面マスクを取り付けた状態で好適に使用できる面金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示の第1の実施形態にかかる格技用面マスク30の使用状態を表した正面図である。
【
図2】
図1の格技用面防具10を表した左側面図である。
【
図5】
図1の格技用面マスク30を表した正面側斜視図である。
【
図6】
図1の格技用面マスク30を表した背面側斜視図である。
【
図7】
図1の格技用面マスク30を表した正面図である。
【
図8】
図1の格技用面マスク30を表した背面図である。
【
図9】
図1の格技用面マスク30を表した右側面図である。
【
図10】
図1の格技用面マスク30を表した左側面図である。
【
図11】
図1の格技用面マスク30を表した平面図である。
【
図12】
図1の格技用面マスク30を表した底面図である。
【
図13】本開示の第2の実施形態にかかる格技用面マスク40を表した正面側斜視図である。
【
図14】
図13の格技用面マスク40を表した背面側斜視図である。
【
図17】
図13の格技用面マスク40を表した右側面図である。
【
図18】
図13の格技用面マスク40を表した左側面図である。
【
図21】本開示の第3の実施形態にかかる格技用面マスク50の使用状態を表した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〈面金〉
始めに、本開示の一実施形態にかかる面金20およびこの面金20が適用された格技用面防具10について説明する。この格技用面防具10は、剣道の試合において競技者90が頭部に着用することができる面防具である。
【0043】
格技用面防具10は、
図1ないし
図3に示すように、競技者90の頭部および首を左右両側および上側から覆う面ぶとん10Bと、競技者90の顔を前方(
図3で見て右方)から覆う面金20と、競技者90の首の前方に位置される突きだれ10Aとを一体化された状態に備えている。また、格技用面防具10は、
図1および
図2に示すように、面ぶとん10Bおよび面金20を競技者90の頭部にくくりつけ、もって格技用面防具10を装着状態にすることを実現させる2本の面ひも11を備えている。
【0044】
面金20は、
図1および
図3に示すように、格技用面防具10を頭部に装着する競技者90に対して、この競技者90のひたいから競技者90のおとがいに向かって延び、かつ、前方に湾曲した縦金20Aを備えている。この縦金20Aには、複数本(本実施形態では14本)の横金21が挿通されている。これら横金21は、それぞれが前方に湾曲して延びる横架材であり、上下に並ぶことで縦金20Aとともに格子を構成する。本実施形態においては、面金20において縦金20Aと横金21とが構成する格子は、競技者90の顔の輪郭に対応する形状の輪をなす台枠20B(
図1参照)に組み付けられている。これれらの構成は、金属製とされている。
【0045】
ここで、格技用面防具10は、面ぶとん10Bの前縁部と面金20とが隣り合う部分をくるむシート材である面ぶち10Cを備えている。本実施形態においては、面ぶち10Cは、面金20の台枠20Bがなす輪に沿って、この台枠20Bをくるむパイピングの輪をなすように配設されている。このパイピングの輪は、本実施形態においては、その内周面が赤色に、その外周面が黒色に、それぞれ彩色されている。
【0046】
また、面金20は、その横金21が上下に並んだ構成において、他の部分よりも広い間隔で2本の横金21が並んだ部分であるものみ22を備えている。このものみ22は、格技用面防具10を装着する競技者90において、自身の眼前にものみ22が位置されるものみ合わせ状態(
図3および
図4を参照)を実現させ、もって競技者90の視界を良好にするための構成である。
【0047】
ここで、ものみ22において上下に2本並んだ横金21のうち、下側に位置される横金21は、
図1および
図2に示すように、抗菌加工が施された抗菌横金22Aとされている。また、面金20の横金21が上下に並んだ構成において。最も下側に位置される横金21は、抗菌加工が施された抗菌横金22Bとされている。本実施形態においては、抗菌横金22Aおよび抗菌横金22Bに施される抗菌加工は、抗菌剤が配合された塗料を塗布する抗菌塗装の加工である。この抗菌塗装の加工は、抗菌横金22Aおよび抗菌横金22Bの色を、他の横金21が呈する色(例えば銀色)とは異なる色(例えば金色)に変えるものである。
【0048】
2本の面ひも11は、
図1に示すように、それぞれ、面金20における横金21の中の1本を取り付け横金21Aとして、この取り付け横金21Aをくくる輪をなすちかわ11Aを備えている。このちかわ11Aは、取り付け横金21Aに対して面ひも11をスライド移動可能に取り付ける取り付け部として機能する。本実施形態においては、格技用面防具10は、そのちかわ11Aが取り付け横金21Aにおいて後方に位置される端部に達するまで引っ張られた引っ張り状態(
図2参照)で上記装着状態が実現される、ナナシャクタイプの格技用面防具である。
【0049】
〈格技用面マスクの第1の実施形態〉
続いて、本開示の第1の実施形態にかかる格技用面マスク30の構成について説明する。この格技用面マスク30は、
図1ないし
図4に示すように、上述した格技用面防具10の面金20に取り付けることができる格技用面マスクである。
【0050】
格技用面マスク30は、
図3および
図4に示すように、口元覆い31Bおよび鼻元覆い31Aを有してなるマスク本体31を備えている。ここで、口元覆い31Bは、競技者90の顔と面金20との間に位置されて、競技者90の口元を前方から覆う口元覆い状態を実現させるものである。また、鼻元覆い31Aは、口元覆い31Bの上縁部から後方に傾斜した状態で延びだされて、競技者90の鼻元を前方から覆う鼻元覆い状態を実現させるものである。
【0051】
マスク本体31は、
図5ないし
図12に示すように、ヒトの口から飛び散るしぶきを通さないように調製された複数枚のシート材を、縫いしろ30Aが前方に突出される形(
図9ないし
図12を参照)で縫い合わせて、前方に凸となる曲面形状を呈するようにしたものである。本実施形態においては、上記「複数枚のシート材」は、口元覆い31Bの右半分を構成するシート材である右半体31Eと、口元覆い31Bの左半分を構成するシート材である左半体31Fと、鼻元覆い31Aを構成するシート材と、の3枚のシート材である(特に
図5ないし
図8を参照)。これら3枚のシート材は、それぞれ、ナイロンを高分子段階で改質することによって得られる、通気性、吸水性、および、抗菌性をあわせもつ機能性素材の生地によって形成されている。これにより、マスク本体31の口元覆い31Bおよび鼻元覆い31Aは、その厚さ方向の通気性、吸水性、および、抗菌性をあわせもつものとされる。
【0052】
また、マスク本体31における前方に位置される面には、マスク本体31における左右両側の縁部31Cから延びだされるように1対の留め部32が取り付けられている。これら留め部32は、
図5ないし
図8に示すように、上下に隣接して並んだ状態で縁部31Cから延びだされる1対の平ひも32C、32Dの各先端部に、雌雄の点ファスナー32A、32Bを点状に設定した構成となっている。この構成の留め部32は、
図4に示すように、その各平ひも32C、32Dをもって横金21をくくり、これを点ファスナー32A、32Bのはめ合わせによって留めることで、横金21にマスク本体31が留められた留め状態を実現させる。
【0053】
ここで、留め部32は、上述したものみ合わせ状態、口元覆い状態、および、鼻元覆い状態のいずれもが実現された状態において、マスク本体31の縁部31Cが面金20の取り付け横金21Aに対向する位置に設けられる。これにより、留め部32は、取り付け横金21Aをくくり、かつ、上記引っ張り状態にあるちかわ11Aと面金20の取り付け横金21Aとの間に挟み込まれた挟み込み状態で、上記留め状態を実現させる。本実施形態においては、留め部32は、
図1および
図2に示すように、上記挟み込み状態においてその全体がちかわ11Aに覆い隠されるサイズとされている。
【0054】
また、マスク本体31における左右両側の縁部31Cには、
図5ないし
図12に示すように、これら縁部31Cに沿うように配設された芯材31Dが付設されている。本実施形態においては、縁部31Cは、口元覆い31Bにおける左右両側の縁部によって構成される(
図7参照)。また、各芯材31Dは、スリッター(図示せず)によって線状に裁断された牛革であり、縁部31Cに端ミシンの加工を施すことによって形成される筒の中に入れられることで、この縁部31Cに付設される。
【0055】
ここで、芯材31Dは、縁部31Cの変形を抑え、もって口元覆い31Bの型崩れを抑える機能を発揮する。このため、マスク本体31は、上記留め状態において上記引っ張り状態が実現されると、型崩れを起こすことなく後方に移動し(図示省略)、その縁部31Cを面ぶち10Cに沿った状態に位置させる(
図4参照)。本実施形態においては、マスク本体31は、後方に移動することで、面ぶち10Cがなすパイピングの輪の内側に引き込まれた状態となる。そして、マスク本体31の縁部31Cは、面ぶち10Cがなすパイピングの輪に対し、この輪の内周面(赤色に彩色された部分)に沿った状態に位置される。
【0056】
ところで、マスク本体31における口元覆い31Bは、右半体31Eと左半体31Fとの2枚のシート材を縫合してなるものであるところ、この縫合は、右半体31Eと左半体31Fとが互いに突き合わせられる前縁部のみに施される。また、右半体31Eおよび左半体31Fは、その下縁部が縫いしろ30Aから左右方向に分かれて延びだされる(
図12参照)ようにカットされた形状を呈する。この構成は、マスク本体31に、上記装着状態および上記留め状態の両方が実現された使用状態(
図3および
図4を参照)において競技者90の口元まわりのスペースを下側に向けて開放された状態にすることを実現させる。
【0057】
上述した格技用面マスク30によれば、格技用面マスク30は、そのマスク本体31が厚さ方向の通気性を有する。また、このマスク本体31は、その縁部31Cから延びだされる留め部32によって格技用面防具10の面金20に取り付けられる。これにより、競技者90の口元を覆うマスク本体31において、その前後方向の通気性を確保し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスク30を提供することができる。
【0058】
また、格技用面マスク30によれば、競技者90の口から飛び散るしぶきの流れ(図示せず)が口元覆い31Bの上縁部を乗り越えて広がることについての衛生上の不安を、口元覆い31Bの上縁部から延びだされる鼻元覆い31Aによって軽減させることができる。また、鼻元覆い31Aを後方に傾斜させる構成によれば、鼻元覆い31Aを上記しぶきの流れを遮るように位置させて、このしぶきの流れに関する衛生上の不安の軽減度合いをより大きいものとすることができる。まら、鼻元覆い31Aを後方に傾斜させる構成によれば、鼻元覆い31Aによって生じる競技者90の死角をより狭いものにすることができる。
【0059】
また、格技用面マスク30によれば、上述した使用状態において、競技者90における口元まわりのスペースの下側に空気の通り道を設定し、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスク30を提供することができる。
【0060】
また、格技用面マスク30によれば、上述した引っ張り状態にある面ひも11のちかわ11Aと面金20との間に留め部32を挟み込み、この面ひも11を強く張られた状態にする力をもって留め部32のずれ動きを抑えることができる。
【0061】
また、格技用面マスク30によれば、面金20の取り付け横金21Aをくくる留め部32を面ひも11のちかわ11Aによって覆い隠し、もって格技用面マスク30の使用による見た目の変化を分かりにくくすることができる。
【0062】
また、格技用面マスク30によれば、上記留め状態において面ひも11のちかわ11Aが取り付け横金21Aの端部に達するまで引っ張られたときに、マスク本体31が上記端部よりも競技者90の顔に近い位置に位置される。これにより、キアイをかける際のしぶきの飛び散りを抑える性能が高いという印象を与える格技用面マスク30を提供することができる。
【0063】
また、格技用面マスク30によれば、横金21をくくった状態の留め部32は、この留め部32において点状に設定された点ファスナー32A、32Bの配設箇所にて留められる。これにより、留め部32を留める位置にずれが生じて、格技用面防具10に対する格技用面マスク30の取り付け姿勢に変化が生じるおそれを減らすことができる。
【0064】
また、格技用面マスク30によれば、競技者90の口元まわりとマスク本体31との間のスペースをこのマスク本体31の形状の設定によって広くし、もって呼吸のしにくさを感じるおそれがより少なくされた格技用面マスク30を提供することができる。
【0065】
また、格技用面マスク30によれば、マスク本体31の縫いしろ30Aを競技者90の顔とは反対側に位置させてこの顔に接触しないようにし、この接触により不快感が生じることをさけることが可能な格技用面マスク30を提供することができる。ここで、格技用面マスク30のマスク本体31を競技者90の顔と面金20との間に位置させる構成によれば、マスク本体31の縫いしろ30Aを面金20における縦金20Aと横金21とがなす格子にまぎれさせて(
図1参照)、この縫いしろ30Aによる格技用面マスク30の見た目の悪化を抑えることができる。
【0066】
また、格技用面マスク30によれば、口元覆い31Bの型崩れを芯材31Dによって抑え、もって競技者90の口元から口元覆い31Bがずれるおそれが低減された格技用面マスク30を提供することができる。
【0067】
また、格技用面マスク30によれば、口元覆い31Bの位置ずれをマスク本体31の縁部31Cと面ぶち10Cとの係合によって抑え、もって競技者90の口元から口元覆い31Bがずれるおそれが低減された格技用面マスク30を提供することができる。
【0068】
また、格技用面マスク30によれば、競技者90における、口から飛び散るしぶきが口元覆い31Bに付着することに対しての衛生上の不安を、口元覆い31Bが吸水性と抗菌性とをあわせもっていることをもって低減させることができる。
【0069】
また、上述した面金20によれば、マスク本体31の上縁から漏れ出た呼気(図示省略)が面金20におけるものみ22の下側の横金21にかかることに対しての衛生上の不安を、この横金21に抗菌加工を施して抗菌横金22Aにすることによって低減させることができる。ここで、抗菌横金22Aの色を他の横金21が呈する色とは異なる色にする構成によれば、抗菌横金22Aの存在を明りょうに識別できるようにして、上記衛生上の不安を低減させる効果を発現しやすくすることができる。
【0070】
また、面金20によれば、マスク本体31の下縁から漏れ出た呼気(図示省略)が面金20において最も下側に位置される横金21にかかることに対しての衛生上の不安を、この横金21に抗菌加工を施して抗菌横金22Bにすることによって低減させることができる。ここで、抗菌横金22Bの色を他の横金21が呈する色とは異なる色にする構成によれば、抗菌横金22Bの存在を明りょうに識別できるようにして、上記衛生上の不安を低減させる効果を発現しやすくすることができる。
【0071】
〈格技用面マスクの第2の実施形態〉
続いて、本開示の第2の実施形態にかかる格技用面マスク40の構成について説明する。第2の実施形態にかかる格技用面マスク40は、第1の実施形態にかかる格技用面マスク30を変形した実施形態である。したがって、第1の実施形態にかかる格技用面マスク30の各構成と共通する構成については、第1の実施形態にかかる格技用面マスク30の各構成に付した符号から、その十の位の数字を「4」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0072】
第2の実施形態にかかる格技用面マスク40は、
図13ないし
図20に示すように、1対の平ひも32C、32Dを有する留め部32(
図5参照)の代わりに、全体が1本の平ひもによって構成された留め部42を備えている。この留め部42は、格技用面マスク40におけるマスク本体41の縁部41Cに沿って、これを前方から覆う覆い状態を実現させるように配設されている。
【0073】
また、留め部42は、
図13および
図15に示すように、その長さ方向で見た中央部分42Bにおける、幅方向片側の端42Aのみにおいて縁部41Cに縫い留められている。これにより、留め部42は、
図13に仮想線で示すように、縁部41Cに対して前方に起こしあげられた起こしあげ状態とすることが可能とされている。また、留め部42は、中央部分42Bから長さ方向両側に延びだされる延びだし部分42C、42Dをもって横金21(
図13では取り付け横金21A)をくくることが可能とされている。
【0074】
ここで、留め部42の延びだし部分42C、42Dには、
図13に示すように、雌雄の面ファスナー42E、42Fが設けられている。これら面ファスナー42E、42Fは、その貼り合わせにより横金21をくくった状態の延びだし部分42C、42Dを留めることで、横金21にマスク本体41が留められた留め状態を実現させる。
【0075】
上述した格技用面マスク40によれば、上記留め状態を実現させる留め部42を上記起こしあげ状態とすることで、マスク本体41をより競技者の顔(図示省略)に近い位置に位置させることができる。これにより、キアイをかける際のしぶきの飛び散りを抑える性能が高いという印象を与える格技用面マスク40を提供することができる。
【0076】
また、格技用面マスク40によれば、上記留め状態を実現させる際の延びだし部分42C、42Dの相対角度を、面ファスナー42E、42Fの貼り合わせの態様を変えることで変更することができる。これにより、留め部42を面金の横金21と面ひもの取り付け部(図示省略)との間に挟み込みやすくした格技用面マスク40を提供することができる。
【0077】
〈格技用面マスクの第3の実施形態〉
続いて、本開示の第3の実施形態にかかる格技用面マスク50の構成について説明する。第3の実施形態にかかる格技用面マスク50は、第1の実施形態にかかる格技用面マスク30から、いくつかのパーツの取り換えあるいは省略を行った実施形態である。したがって、上記第1の実施形態にかかる格技用面マスク30の各構成と共通するパーツあるいは構成については、このパーツあるいは構成に付した符号と同じ符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0078】
第3の実施形態にかかる格技用面マスク50は、
図21に示すように、ハッシャクタイプの剣道用面防具である格技用面防具91に取り付けることができる格技用面マスクである。この格技用面防具91は、競技者90の頭部および首を左右両側および上側から覆う面ぶとん91Bと、競技者90の顔を前方から覆う面金93と、競技者90の首の前方に位置される突きだれ91Aとを一体化された状態に備えている。
【0079】
面金93は、格技用面防具91を頭部に装着する競技者90に対して、この競技者90のひたいから競技者90のおとがいに向かって延び、かつ、前方に湾曲した縦金93Aを備えている。この縦金93Aには、複数本(本実施形態では14本)の横金93Bが挿通されている。これら横金93Bは、それぞれが前方に湾曲して延びる横架材であり、上下に並ぶことで縦金93Aとともに格子を構成する。本実施形態においては、面金93は、その各構成が金属製とされている。
【0080】
また、格技用面防具91は、面ぶとん91Bおよび面金93を競技者90の頭部にくくりつけ、もって格技用面防具91を装着状態にすることを実現させる面ひも92を備えている。この面ひも92は、面金93における縦金93Aの上端部をくくる輪をなすちかわ92Aから、二又に分かれて延びだされている。このちかわ92Aは、縦金93Aに対して面ひも92を取り付ける取り付け部として機能する。
【0081】
格技用面マスク50は、マスク本体31の縁部31Cにおいて面金20の取り付け横金21Aに対向する位置に配設される留め部32(
図1参照)の代わりに、マスク本体31の縁部31Cにおける上下両端に配設された留め部52を備えている。これら留め部52は、その配設位置を除いて、上述した留め部32と全く同じ構成を有するものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0082】
上述した格技用面マスク50によれば、マスク本体31の縁部31Cの両端を面金93の横金93Bにくくる(
図21参照)ことで、面金93に対するマスク本体31のずれ動きを抑えることができる。これにより、上述した引っ張り状態(
図2参照)を実現することができないハッシャクタイプの格技用面防具91に対しても好適に取り付けることができる格技用面マスク50を提供することができる。
【0083】
本開示は、上述した各実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本開示の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0084】
(1)格技用面マスクのマスク本体において、厚さ方向の通気性を有する鼻元覆いを口元覆いの上縁部から後方に傾斜した状態で延びださせる構成は必須のものではない。すなわち、鼻元覆いは、例えば、口元覆いとともに1つの平面をなすように配設された構成に変更してもよいものである。また、マスク本体において口元覆いに厚さ方向の通気性がある場合、鼻元覆いは通気性のない素材で構成されたものとしてもよい。また、マスク本体から鼻元覆いを省略した構成を採用してもよい。
【0085】
(2)格技用面マスクのマスク本体において、その縁部に芯材を付設する構成は上述したものに限定されない。すなわち、芯材は、例えば、マスク本体の縁部にパイピング加工によって設けられる筒の中に入れられることで、この縁部に付設されるものとすることができる。また、芯材は、例えば、マスク本体の縁部に直接縫い留められることで、この縁部に付設されるものとすることができる。また、マスク本体の縁部に付設される芯材は、これを省略してもよい。
【0086】
(3)格技用面マスクのマスク本体を形成する生地は、吸水性と抗菌性とをあわせもつ機能性素材の生地に限定されない。すなわち、マスク本体における口元覆いおよび鼻元覆いのうち一方または両方を、布帛または皮革など、種々の素材からなるものに変更することができる。この場合において、マスク本体における口元覆いおよび鼻元覆いは、同種の素材によって構成されるものであっても、別種の素材によって構成されるものであってもよい。また、マスク本体における口元覆いおよび/または鼻元覆いを構成する素材が抗菌性のない素材である場合、この素材に抗菌加工を施して、口元覆いおよび/または鼻元覆いが抗菌性を有するようにすることが好ましい。このようにすることで、競技者における、口から飛び散るしぶきが口元覆いおよび/または鼻元覆いに付着することに対しての衛生上の不安を低減させることができる。なお、上記「種々の素材」としては、ウシ亜目シカ科に属する動物のセーム革の生地、特にキョンのセーム革の生地を好適に用いることができる。ウシ亜目シカ科に属する動物のセーム革の生地は通気性と吸水性とをあわせもつことが知られており、特にキョンのセーム革の生地は人工化合物からなるクロス材では達成できないレベルの吸水性を発揮することが知られている。このため、競技者における、口から飛び散るしぶきに対しての衛生上の不安を、口元覆いおよび/または鼻元覆いが有する吸水性をもって低減させることができる。なお、セーム革の生地は抗菌性のない素材であるため、上述もしたように、口元覆いおよび/または鼻元覆いに用いる際には抗菌加工を施しておくことが好ましい。
【0087】
(4)本開示の格技用面マスクの取り付け対象となる格技用面防具は、上述した構成のものに限定されない。すなわち、格技用面マスクは、例えば、ちかわを介さずに面ひもを直接面金にくくりつけて取り付け部を構成するタイプの格技用面防具に取り付けることができる。また、格技用面マスクは、例えば、逮捕術、なぎなた、銃剣道、槍術などの、剣道以外の格技において使用される格技用面防具に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0088】
10 格技用面防具
10A 突きだれ
10B 面ぶとん
10C 面ぶち
11 面ひも
11A ちかわ(取り付け部)
20 面金
20A 縦金
20B 台枠
21 横金
21A 取り付け横金
22 ものみ
22A 抗菌横金
22B 抗菌横金
30 格技用面マスク
30A 縫いしろ
31 マスク本体
31A 鼻元覆い
31B 口元覆い
31C 縁部
31D 芯材
31E 右半体
31F 左半体
32 留め部
32A 点ファスナー
32B 点ファスナー
32C 平ひも
32D 平ひも
40 格技用面マスク
40A 縫いしろ
41 マスク本体
41A 鼻元覆い
41B 口元覆い
41C 縁部
41D 芯
41E 右半体
41F 左半体
42 留め部
42A 端
42B 中央部分
42C 延びだし部分
42D 延びだし部分
42E 面ファスナー
42F 面ファスナー
50 格技用面マスク
52 留め部
90 競技者
91 格技用面防具
91A 突きだれ
91B 面ぶとん
92 面ひも
92A ちかわ(取り付け部)
93 面金
93A 縦金
93B 横金