(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150670
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220929BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220929BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
H01M4/36 A
H01M4/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053373
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 壮吉
(72)【発明者】
【氏名】宮島 桃香
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA11
5H050EA10
5H050EA24
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA06
5H050GA22
5H050HA00
(57)【要約】
【課題】磁性キャリア粉体を用いることなく、乾式で集電箔上に活物質層を適切に形成できる電極板の製造方法を提供する。
【解決手段】電極板1の製造方法は、活物質粒子11に結着剤粒子13Pが付着した活物質複合粒子21同士が互いに結合した活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42を、均一厚みの層状に堆積整形して、成膜領域MR1に供給する供給工程S3,S6と、成膜領域MR1において、静電気力Fs1により、活物質造粒粒子41を集電箔3に向けて飛ばし、集電箔3上に活物質造粒粒子41を堆積させて、未圧縮活物質層5X,6Xを形成する未圧縮層形成工程S4,S7と、未圧縮活物質層5X,6X及び集電箔3を加熱プレスするプレス工程S5,S8とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電箔上に、活物質粒子及び結着剤を含む活物質層を備える電極板の製造方法であって、
上記活物質粒子に結着剤粒子が付着した活物質複合粒子同士が互いに結合した活物質造粒粒子が集合した活物質造粒粉体を、均一厚みの層状に堆積整形して、成膜領域に供給する供給工程と、
上記成膜領域において、静電気力により、上記活物質造粒粒子を上記集電箔に向けて飛ばし、上記集電箔上に上記活物質造粒粒子を堆積させて、未圧縮の未圧縮活物質層を形成する未圧縮層形成工程と、
上記未圧縮活物質層及び上記集電箔を加熱プレスして、上記未圧縮活物質層から上記活物質層を形成するプレス工程と、を備える
電極板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極板の製造方法であって、
前記供給工程は、
安息角θがθ≦40.0(deg)の前記活物質造粒粉体を用いる
電極板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電極板の製造方法であって、
前記供給工程に先立ち、前記活物質複合粒子が集合した活物質複合粉体から、前記活物質造粒粒子が集合した前記活物質造粒粉体を作製する造粒粉体作製工程を更に備えており、
上記造粒粉体作製工程は、
上記活物質複合粉体をプレスして、シート状圧粉体を得るシート成形工程と、
上記シート状圧粉体を破砕し、破砕粉体を得る破砕工程と、
上記破砕粉体を整粒して、予め定めた粒度範囲内の粒度を有する整粒粉体を得る整粒工程と、を有する
電極板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電極板の製造方法であって、
前記造粒粉体作製工程は、
前記整粒工程で得られた前記整粒粉体を分級して、予め定めた粒度範囲内の粒度を有する分級粉体を得る分級工程を更に有する
電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電箔上に、活物質粒子及び結着剤を含む活物質層を有する電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池に用いられる正極板や負極板など、集電箔上に、活物質粒子及び結着剤を含む活物質層が形成された電極板が知られている。このような電極板は、例えば以下の手法により製造する。即ち、予め、活物質粒子が集合した活物質粉体と、結着剤粒子が集合した結着剤粉体とを混合して、活物質粒子に結着剤粒子が付着した活物質複合粒子からなる活物質複合粉体を得ておく。そして、この活物質複合粉体を、別途用意した磁性キャリア粒子が集合した磁性キャリア粉体と混合して、個々の磁性キャリア粒子に多数の活物質複合粒子が静電吸着した複合キャリア粒子からなる複合キャリア粉体を得る。
【0003】
その後、この複合キャリア粉体をなす複合キャリア粒子をマグネットロールのロール表面に磁気吸着させる。続いて、このマグネットロールの回転により、ロール表面に磁気吸着させた複合キャリア粒子を、マグネットロールと、バックアップロールで搬送する集電箔との間隙(成膜領域)に搬送する。次に、この成膜領域において、静電気力により、複合キャリア粒子のうち活物質複合粒子をロール表面から集電箔に向けて飛ばし、集電箔上に活物質複合粒子を堆積させて、未圧縮の未圧縮活物質層を形成する。その後、この未圧縮活物質層及び集電箔からなる電極板を加熱プレスして、未圧縮活物質層から活物質層を形成する。なお、この電極板の製造方法に関連する従来技術として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の製造方法では、活物質粒子及び結着剤粒子を分散媒に分散させた活物質ペーストを用いることなく、乾式で活物質層を形成できるので、分散媒を除去するための加熱乾燥工程が不要であり、電極板の生産性が高い。
しかしながら、上述の製造方法では、磁性キャリア粉体が必要であり、また、活物質複合粉体と磁性キャリア粉体と混合して複合キャリア粉体を形成する工程が必要となるため、磁性キャリア粉体を用いることなく、電極板を製造する新たな手法が求められていた。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、磁性キャリア粉体を用いることなく、乾式で集電箔上に活物質層を適切に形成できる電極板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、集電箔上に、活物質粒子及び結着剤を含む活物質層を備える電極板の製造方法であって、上記活物質粒子に結着剤粒子が付着した活物質複合粒子同士が互いに結合した活物質造粒粒子が集合した活物質造粒粉体を、均一厚みの層状に堆積整形して、成膜領域に供給する供給工程と、上記成膜領域において、静電気力により、上記活物質造粒粒子を上記集電箔に向けて飛ばし、上記集電箔上に上記活物質造粒粒子を堆積させて、未圧縮の未圧縮活物質層を形成する未圧縮層形成工程と、上記未圧縮活物質層及び上記集電箔を加熱プレスして、上記未圧縮活物質層から上記活物質層を形成するプレス工程と、を備える電極板の製造方法である。
【0008】
本発明者は、まず、活物質粉体と結着剤粉体とを混合した前述の活物質複合粉体をそのまま用いて、供給工程、未圧縮層形成工程及びプレス工程を行って電極板を製造することを試みた。しかしながら、この製造方法では、集電箔上に未圧縮活物質層を適切に形成するのが難しいことが判ってきた。その原因は、活物質複合粉体は、活物質複合粒子同士の凝集力が強いため、活物質複合粒子に静電気力が掛かっても、活物質複合粒子が集電箔に向けて飛翔し難いからであると考えられた。
【0009】
これに対し、上述の電極板の製造方法では、活物質粒子に結着剤粒子が付着した活物質複合粒子同士が互いに結合した活物質造粒粒子からなる活物質造粒粉体を用いて、供給工程、未圧縮層形成工程及びプレス工程を行う。比較的小粒径の活物質複合粒子同士に比べて、複数の活物質複合粒子同士が結合して比較的大粒径となった活物質造粒粒子同士の凝集力は弱い。このため、未圧縮層形成工程において、静電気力により活物質造粒粒子を集電箔に向けて適切に飛翔させることができ、集電箔上に未圧縮活物質層を適切に形成できる。そして、プレス工程で活物質層を適切に形成できる。
【0010】
「活物質複合粒子」としては、例えば、活物質粒子に結着剤粒子のみが付着した活物質複合粒子のほか、活物質粒子及び結着剤粒子に加え、例えば導電粒子など他の粒子が更に付着した活物質複合粒子などが挙げられる。
「供給工程」において、活物質造粒粉体を均一厚みの層状に堆積整形して成膜領域に供給する手法としては、例えば、供給ロールのロール表面上に活物質造粒粉体を均一厚みの層状に堆積整形し、供給ロールの回転により、この活物質造粒粉体の堆積層を成膜領域に供給する手法や、供給ベルトのベルト表面上に活物質造粒粉体を均一厚みの層状に堆積整形し、供給ベルトの移動により、この活物質造粒粉体の堆積層を成膜領域に供給する手法などが挙げられる。
【0011】
更に、上記の電極板の製造方法であって、前記供給工程は、安息角θがθ≦40.0(deg)の前記活物質造粒粉体を用いる電極板の製造方法とすると良い。
【0012】
上述の電極板の製造方法では、供給工程において、流動性の高い、具体的には安息角θがθ≦40.0(deg)の活物質造粒粉体を用いる。このような流動性の高い活物質造粒粉体は、粒子間の凝集力が特に弱いため、未圧縮層形成工程において活物質造粒粒子をより一層、集電箔に向けて飛翔させて、未圧縮活物質層をより適切に形成でき、プレス工程で活物質層をより適切に形成できる。
【0013】
なお、「活物質造粒粉体の安息角θ」は、以下の測定方法により求める。即ち、安息角θは、活物質造粒粉体を、所定の高さに配置した漏斗から、水平な基板の上に落下させて、円錐状の粉体堆積物を形成し、この粉体堆積物の直径及び高さから底角を算出することで得る。具体的には、安息角θは、JIS R 9301-2-2:1999「アルミナ粉末物性測定方法-2:安息角」の規定に準じて測定する。
【0014】
更に、上記の電極板の製造方法であって、前記供給工程に先立ち、前記活物質複合粒子が集合した活物質複合粉体から、前記活物質造粒粒子が集合した前記活物質造粒粉体を作製する造粒粉体作製工程を更に備えており、上記造粒粉体作製工程は、上記活物質複合粉体をプレスして、シート状圧粉体を得るシート成形工程と、上記シート状圧粉体を破砕し、破砕粉体を得る破砕工程と、上記破砕粉体を整粒して、予め定めた粒度範囲内の粒度を有する整粒粉体を得る整粒工程と、を有する電極板の製造方法とすると良い。
【0015】
上述の電極板の製造方法では、活物質複合粉体から活物質造粒粉体を作製する造粒粉体作製工程を更に備えており、この造粒粉体作製工程は、上述のシート成形工程、破砕工程及び整粒工程を有する。このような造粒粉体作製工程を行うことで、安息角θ≦40.0(deg)で所望の流動性を有する活物質造粒粉体を容易に作製できる。従って、この活物質造粒粉体を用いて供給工程及び未圧縮層形成工程を行うことで、未圧縮活物質層をより適切に形成でき、プレス工程で活物質層をより適切に形成できる。
【0016】
更に、上記の電極板の製造方法であって、前記造粒粉体作製工程は、前記整粒工程で得られた前記整粒粉体を分級して、予め定めた粒度範囲内の粒度を有する分級粉体を得る分級工程を更に有する電極板の製造方法とすると良い。
【0017】
上述の電極板の製造方法では、造粒粉体作製工程は、上述の分級工程を更に有する。これにより、より適切な流動性を有する活物質造粒粉体を容易に作製できる。従って、この活物質造粒粉体を用いて供給工程及び未圧縮層形成工程を行うことで、未圧縮活物質層をより適切に形成でき、プレス工程で活物質層をより適切に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1,2及び変形形態1,2に係る電極板の斜視図である。
【
図2】実施形態1,2及び変形形態1,2に係る電極板の製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態1,2及び変形形態1,2に係り、混合粉体作製工程で作製する活物質複合粒子を模式的に示す説明図である。
【
図4】実施形態1,2及び変形形態1,2に係り、造粒粉体作製工程のうちシート成形工程で形成するシート状圧粉体の説明図である。
【
図5】実施形態1,2及び変形形態1,2に係り、造粒粉体作製工程のうち破砕工程で形成する破砕粒子を模式的に示す説明図である。
【
図6】実施形態1,2及び変形形態1,2に係り、造粒粉体作製工程のうち整粒工程で形成する整粒粒子の説明図である。
【
図7】実施形態1,2及び変形形態1,2に係り、造粒粉体作製工程のうち分級工程で形成する分級粒子の説明図である。
【
図8】実施形態1及び変形形態1に係る活物質層形成装置の説明図である。
【
図9】実施形態1及び変形形態1に係り、成膜領域において活物質造粒粒子がロール表面から集電箔に向けて飛翔する様子を模試的に示す説明図である。
【
図10】実施形態2及び変形形態2に係る活物質層形成装置の説明図である。
【
図11】実施形態2及び変形形態2に係り、成膜領域において活物質造粒粒子がベルト表面から集電箔に向けて飛翔する様子を模試的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態1に係る電極板1の斜視図を示す。なお、以下では、電極板1の長手方向EH、幅方向FH及び厚み方向GHを、
図1に示す方向と定めて説明する。この電極板1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池を製造するのに、具体的には、扁平状捲回型或いは積層型の電極体を製造するのに用いられる帯状の負極板である。
【0020】
電極板(負極板)1は、長手方向EHに延びる帯状で、銅箔からなる集電箔3を有する。この集電箔3の第1主面3aのうち、幅方向FHの中央でかつ長手方向EHに延びる領域上には、第1活物質層5(以下、単に「活物質層5」ともいう)が帯状に形成されている。また、集電箔3の反対側の第2主面3bのうち、幅方向FHの中央でかつ長手方向EHに延びる領域上にも、第2活物質層6(以下、単に「活物質層6」ともいう)が帯状に形成されている。電極板1のうち幅方向FHの両端部は、それぞれ、厚み方向GHに活物質層5,6が存在せず、集電箔3が厚み方向GHに露出した露出部1rとなっている。
【0021】
活物質層5,6は、それぞれ、活物質粒子11と結着剤13から構成されている。活物質粒子11及び結着剤13の重量割合は、活物質粒子:結着剤=97.5:2.5である。本実施形態1では、活物質粒子11は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子、具体的には黒鉛粒子である。また、結着剤13はポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0022】
次いで、上記の電極板1の製造方法について説明する(
図2~
図9参照)。まず「混合粉体作製工程S1」(
図2参照)において、活物質粒子11に結着剤粒子13Pが付着した活物質複合粒子21からなる活物質複合粉体22を作製する(
図3参照)。具体的には、活物質粒子11(本実施形態1では黒鉛粒子)が集合した活物質粉体12と、結着剤粒子13P(本実施形態1ではPVDF粒子)が集合した結着剤粉体14を用意する。そして、ミキサー(不図示)に、活物質粉体12及び結着剤粉体14を、活物質粉体:結着剤粉体=97.5:2.5の重量割合で投入し、1分間攪拌混合する。これにより、個々の活物質粒子11に複数の結着剤粒子13Pが付着した活物質複合粒子21からなり、粒度DA
50(メディアン径)がDA
50=約10μmの活物質複合粉体22を得る。
【0023】
次に、「造粒粉体作製工程S2」(
図2参照)において、上述の活物質複合粒子21が集合した活物質複合粉体22から、活物質複合粒子21同士が互いに結合した活物質造粒粒子41が集合した活物質造粒粉体42を作製する(
図4~
図7参照)。この造粒粉体作製工程S2は、シート成形工程S21、破砕工程S22、整粒工程S23及び分級工程S24をこの順に有する。
まず「シート成形工程S21」において、平板状に拡げた活物質複合粉体22を厚み方向にプレスして、シート状圧粉体30を得る(
図4参照)。具体的には、活物質複合粉体22を一対のプレスロール(不図示)を用いてロールプレスすることにより、帯状のシート状圧粉体30を形成する。
次に、「破砕工程S22」において、シート状圧粉体30を破砕し、破砕粒子31が集合した破砕粉体32を得る(
図5参照)。具体的には、シート状圧粉体30を攪拌羽(不図示)で破砕して、破砕粒子31からなり、粒度DB
50(メディアン径)がDB
50=約3mmの破砕粉体32を形成する。
【0024】
次に、「整粒工程S23」において、破砕粉体32を整粒して、整粒粒子33が集合した整粒粉体34を得る(
図6参照)。具体的には、破砕粉体32を20メッシュ(目開き800μm)の金網(不図示)上に配置し、この破砕粉体32を羽(不図示)で攪拌して金網を通過させる。これにより、予め定めた粒度範囲PR1(本実施形態1では、メディアン径D
50が130~170μmの範囲)内の整粒粉体34、具体的には粒度DC
50(メディアン径)がDC
50=約150μmの整粒粉体34を得る。なお、この整粒粉体34には、粒径50μmよりも小さな整粒粒子33から、粒径450μmを超える大きな整粒粒子33まで、様々大きさの整粒粒子33が含まれている。
【0025】
次に、「分級工程S24」において、整粒粉体34を分級して、所望の分級粒子35が集合した分級粉体36を得る(
図7参照)。具体的には、目開きが425μmの篩と212μmの篩と100μmの篩と53μmの篩を有する多段篩(不図示)を用いて、整粒粉体34を5つの大きさのグループに分ける。そして、このうち212μmの篩を通過し100μmの篩の上に残った、主に粒径100μm~212μmの分級粒子35からなる分級粉体36を回収する。これにより、予め定めた粒度範囲PR2(本実施形態1では、メディアン径D
50が130~170μmの範囲)内の分級粉体36、具体的には粒度DD
50(メディアン径)がDD
50=約150μmの分級粉体36を得る。なお、本実施形態1では、この分級粒子35からなる分級粉体36を、活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42として、以下の工程で用いる。この活物質造粒粉体42の安息角θは、θ≦40.0(deg)、具体的にはθ=35.8degである。なお、安息角θは、前述の手法により測定する。本実施形態では、ホソカワミクロン株式会社のパウダテスタを用いて安息角θを測定した。
【0026】
次に、「第1供給工程S3」(
図2参照)において、上述の活物質造粒粉体42を均一厚みの層状に堆積整形して、成膜領域MR1に供給する。この第1供給工程S3と後述する第1未圧縮層形成工程S4及び第1プレス工程S5は、活物質層形成装置200(
図8及び
図9参照)を用いて連続して行う。活物質層形成装置200は、集電箔3上に未圧縮の未圧縮活物質層5Xを形成する層形成部203と、未圧縮活物質層5X及び集電箔3を加熱プレスして未圧縮活物質層5Xから活物質層5を形成するプレス部205とを備える。
【0027】
このうち層形成部203は、ホッパー210と、ホッパー210の下方に配置された供給ロール220と、供給ロール220と平行に配置され、集電箔3を長手方向EHに搬送するバックアップロール230と、これら供給ロール220及びバックアップロール230に電気的に接続する直流電源240とを有する。
このうちホッパー210は、ホッパー210内に投入された活物質造粒粉体42を一時的に収容すると共に、活物質造粒粉体42を下方の排出口から排出して、供給ロール220のロール表面220m上に配置する。
【0028】
供給ロール220は、これに連結されたモータ(不図示)によって、
図8及び
図9中、時計回りに回転可能に構成されており、供給ロール220の回転によって、ホッパー210からロール表面220m上に配置された活物質造粒粉体42を、供給ロール220と集電箔3との間隙KB(成膜領域MR1)に向けて搬送する。また、供給ロール220の
図8中、右上の近傍には、ロール間隙KCを空けて、供給ロール220と平行にロール状のスキージ225が配置されている。このスキージ225は、これに連結されたモータ(不図示)によって、供給ロール220と同方向(
図8中、時計回り)に回転可能に構成されている。このスキージ225は、ロール表面220m上の活物質造粒粉体42を均して、活物質造粒粉体42を均一厚みの層状に堆積整形し、活物質造粒粉体42の堆積層43を形成する。
【0029】
バックアップロール230は、ロール間隙KAを空けて、供給ロール220に対し平行かつ水平方向(
図8及び
図9中、右方)に配置されている。バックアップロール230は、これに連結されたモータ(不図示)によって、供給ロール220と同方向(
図8及び
図9中、時計回り)に回転し、
図8中、右下から活物質層形成装置200の層形成部203に供給される集電箔3の第2主面3bに接触して、巻きつけた集電箔3を後述するプレス部205に向けて長手方向EHに搬送する。
【0030】
直流電源240は、その正極がバックアップロール230に、負極が供給ロール220に電気的に接続され、また、バックアップロール230は接地されている。この直流電源240により、本実施形態1では、供給ロール220とバックアップロール230との間に直流電圧Vd1=-2kVを掛ける。具体的には、バックアップロール230を基準(0V)として、供給ロール220の電位を-2kVとする。これにより、供給ロール220上の活物質造粒粉体42をなす活物質造粒粒子41に静電気力Fs1が掛かり、活物質造粒粒子41がロール表面220mから集電箔3に向けて飛翔する。
【0031】
活物質層形成装置200のプレス部205は、ロール間隙KDを空けて平行に配置された一対のプレスロール271,272を有する。これらのプレスロール271,272は、層形成部203から搬送される集電箔3及び未圧縮活物質層5Xを、ロール間隙KDにおいて加熱プレス可能に構成されている。
【0032】
次に、上述の活物質層形成装置200を用いて行う第1供給工程S3、第1未圧縮層形成工程S4及び第1プレス工程S5(
図2参照)について説明する(
図8及び
図9参照)。まず「第1供給工程S3」において、活物質造粒粉体42を均一厚みの層状に堆積整形して、活物質造粒粉体42の堆積層43を形成し、これを成膜領域MR1に供給する。具体的には、ホッパー210から下方に供給された活物質造粒粉体42は、供給ロール220のロール表面220m上に配置される。このロール表面220m上の活物質造粒粉体42は、供給ロール220の回転により成膜領域MR1に向かう途中で、スキージ225によって均され、均一厚みの層状に堆積整形される。更に、この活物質造粒粉体42の堆積層43は、供給ロール220の回転に伴って、成膜領域MR1に搬送される。
【0033】
続く「第1未圧縮層形成工程S4」では、成膜領域MR1において、供給ロール220と集電箔3との間に印加した直流電圧Vd1により、活物質造粒粒子41をロール表面220mから集電箔3に向けて飛ばし、集電箔3上に活物質造粒粒子41を堆積させて未圧縮活物質層5Xを形成する。これにより、集電箔3の第1主面3a上に活物質造粒粒子41が堆積した未圧縮活物質層5Xが連続して形成される。本実施形態1では、安息角θ≦40.0(deg)、具体的には安息角θ=35.8degの流動性の高い活物質造粒粉体42を、成膜領域MR1に供給しているため、活物質造粒粉体42をなす活物質造粒粒子41同士が凝集せず、活物質造粒粒子41が個々に容易に飛翔し、効率よく堆積して未圧縮活物質層5Xが形成される。
【0034】
続いて、「第1プレス工程S5」において、未圧縮活物質層5X及び集電箔3を加熱プレスして、未圧縮活物質層5Xから活物質層5を形成する。具体的には、未圧縮活物質層5Xが形成された集電箔3を、層形成部203からプレス部205に搬送し、プレス部205の一対のプレスロール271,272により加熱プレスする。これにより、未圧縮活物質層5Xに含まれる結着剤粒子13Pが一旦溶融して、結着剤13を介して活物質粒子11同士や活物質粒子11と集電箔3とが結着する。かくして、活物質粒子11及び結着剤13からなる活物質層5が集電箔3上に連続形成される。なお、この集電箔3上に活物質層5を有する電極板を「片側電極板1Y」ともいう。
【0035】
次に、上述の片側電極板1Yについて、前述の第1供給工程S3と同様な「第2供給工程S6」(
図2参照)と、第1未圧縮層形成工程S4と同様な「第2未圧縮層形成工程S7」を行って、集電箔3の第2主面3b上に第2未圧縮活物質層6X(以下、単に「未圧縮活物質層6X」ともいう)を形成する。即ち、まず第2供給工程S6において、活物質造粒粉体42を均一厚みの層状に堆積整形し、成膜領域MR1に供給する。続いて、第2未圧縮層形成工程S7において、成膜領域MR1において、活物質造粒粒子41を集電箔3に向けて飛ばし、集電箔3上に活物質造粒粒子41を堆積させて未圧縮活物質層6Xを形成する。その後、前述の第1プレス工程S5と同様な「第2プレス工程S8」(
図2参照)を行う。即ち、第2未圧縮活物質層6X、集電箔3及び第1活物質層5を加熱プレスして、第2未圧縮活物質層6Xから第2活物質層6を形成する。かくして、
図1に示した電極板1が製造される。
【0036】
(変形形態1)
次いで、実施形態1の変形形態1について説明する。実施形態1では、負極板である電極板1の製造について説明したのに対し、本変形形態1では、正極板である電極板101を製造する点が異なる。
【0037】
本変形形態1の電極板(正極板)101は、実施形態1の電極板(負極板)1と基本的に同様な形態を有する。即ち、電極板101は、帯状のアルミニウム箔からなる集電箔103を有し、集電箔103の第1主面103aには、第1活物質層105(以下、単に「活物質層105」ともいう)が帯状に形成され、集電箔103の反対側の第2主面103bには、第2活物質層106(以下、単に「活物質層106」ともいう)が帯状に形成されている。また、電極板101のうち幅方向FHの両端部は、それぞれ露出部101rとなっている。
【0038】
活物質層105,106は、それぞれ、活物質粒子111と結着剤113と導電粒子115から構成されている。活物質粒子111、結着剤113及び導電粒子115の重量割合は、活物質粒子:結着剤:導電粒子=90:5:5である。本変形形態1では、活物質粒子111は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子、具体的にはリチウム遷移金属複合酸化物粒子、詳細にはリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子である。また、結着剤113は、実施形態1の結着剤13と同様にPVDFである。また、導電粒子115は、アセチレンブラック(AB)粒子である。
【0039】
この電極板101も、実施形態1の電極板1と概ね同様にして製造する。即ち、まず「混合粉体作製工程S101」において、活物質粒子111(本変形形態1ではリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子)からなる活物質粉体112と、結着剤粒子113P(本変形形態1ではPVDF粒子)からなる結着剤粉体114と、導電粒子115(AB粒子)からなる導電粉体116とを用い、それ以外は実施形態1の混合粉体作製工程S1と同様に混合して、活物質粒子111に結着剤粒子113P及び導電粒子115が付着した活物質複合粒子121からなる活物質複合粉体122を作製する(
図3参照)。
【0040】
次に、「造粒粉体作製工程S102」のうち「シート成形工程S121」で、活物質複合粉体122をプレスして、シート状圧粉体130を得る(
図4参照)。その後、「破砕工程S122」で、このシート状圧粉体130を破砕して、破砕粒子131が集合した破砕粉体132を得る(
図5参照)。
【0041】
その後、「整粒工程S123」で、破砕粉体132を整粒して、整粒粒子133が集合した整粒粉体134を得る(
図6参照)。具体的には、実施形態1の整粒工程S23と同様にして、予め定めた粒度範囲PR1(本変形形態1では、メディアン径D
50が130~170μmの範囲)内の整粒粉体134、具体的には粒度DC
50(メディアン径)がDC
50=約150μmの整粒粉体134を形成する。
【0042】
次に、「分級工程S124」で、整粒粉体134を分級して、所望の分級粒子135が集合した分級粉体136を得る(
図7参照)。具体的には、実施形態1の整粒工程S23と同様にして、予め定めた粒度範囲PR2(本変形形態1では、メディアン径D
50が130~170μmの範囲)内の分級粉体136、具体的には、粒度DD
50(メディアン径)がDD
50=約150μmの分級粉体136を得る。この分級粒子135からなる分級粉体136を、活物質造粒粒子141からなる活物質造粒粉体142として、その後の工程で用いる。この活物質造粒粉体142の安息角θは、θ≦40.0(deg)、具体的にはθ=36.9degである。
【0043】
次に、「第1供給工程S103」において、活物質造粒粉体142を均一厚みの層状に堆積整形し、活物質造粒粉体142の堆積層143を形成して、これを成膜領域MR1に供給する。
続いて、「第1未圧縮層形成工程S104」において、成膜領域MR1において、活物質造粒粒子141を集電箔103に向けて飛ばし、集電箔103上に活物質造粒粒子141を堆積させて未圧縮活物質層105Xを形成する。本変形形態1でも、安息角θ≦40.0(deg)、具体的には安息角θ=36.9degの流動性の高い活物質造粒粉体142を、成膜領域MR1に供給しているため、活物質造粒粉体142をなす活物質造粒粒子141同士が凝集せず、活物質造粒粒子141が個々に容易に飛翔し、効率よく堆積して未圧縮活物質層105Xが形成される。
その後、「第1プレス工程S105」において、未圧縮活物質層105X及び集電箔103を加熱プレスして、未圧縮活物質層105Xから活物質層105を形成し、片側電極板101Yを作製する。
【0044】
次に、「第2供給工程S106」において、活物質造粒粉体142を均一厚みの層状に堆積整形し、成膜領域MR1に供給する。続いて、「第1未圧縮層形成工程S107」において、成膜領域MR1において、活物質造粒粒子141を集電箔103に向けて飛ばし、集電箔103上に活物質造粒粒子141を堆積させて未圧縮活物質層106Xを形成する。その後、「第2プレス工程S108」において、未圧縮活物質層106X、集電箔103及び活物質層105を加熱プレスして、未圧縮活物質層106Xから活物質層106を形成し、電極板101を作製する。
【0045】
(実施形態2及び変形形態2)
次いで、実施形態2及びその変形形態2について説明する。実施形態1及び変形形態1では、電極板(負極板)1又は電極板(正極板)101の製造にあたり、活物質層形成装置200(
図8及び
図9参照)の供給ロール220を用いて、活物質造粒粉体42,142を成膜領域MR1に供給した。これに対し、実施形態2及び変形形態2では、電極板(負極板)1又は電極板(正極板)101の製造にあたり、活物質層形成装置300(
図10及び
図11参照)のベルト型供給装置320を用いて、活物質造粒粉体42,142を成膜領域MR2に供給する点が異なる。
【0046】
この活物質層形成装置300は、集電箔3,103上に未圧縮活物質層5X,105Xを形成する層形成部303と、実施形態1の活物質層形成装置200と同様なプレス部205とを備える。このうち層形成部303は、実施形態1のホッパー210、バックアップロール230及び直流電源240と同様のホッパー310、バックアップロール330、直流電源340のほか、供給ロール220に代わるベルト型供給装置320を有する。
【0047】
一方、ベルト型供給装置320は、ホッパー310から供給ベルト321のベルト表面321m上に供給された活物質造粒粉体42,142を、供給ベルト321と、バックアップロール330で搬送される集電箔3,103との間隙KF(成膜領域MR2)に向けて搬送可能に構成されている。具体的には、供給ベルト321は、一対の搬送ロール322,323に架け渡されている。各搬送ロール322,323の回転によって、供給ベルト321のうち上側の部分は、ホッパー310の下方から、バックアップロール330の下方の成膜領域MR2に向かって、
図10中、右方に進む。
【0048】
また、供給ベルト321の近傍には、第1振動子325及び第2振動子326が配置されている。第1振動子325は、ホッパー310からベルト表面321m上に供給された活物質造粒粉体42,142に、供給ベルト321の下方から振動を与えることによって活物質造粒粉体42,142を均して、活物質造粒粉体42,142を均一厚みの層状に堆積整形し、活物質造粒粉体42,142の堆積層43,143を形成する。
一方、第2振動子326は、成膜領域MR2の下方に配置されており、ベルト表面321m上の活物質造粒粉体42,142の堆積層43,143に、供給ベルト321の下方から振動を与えることによって、成膜領域MR2において、堆積層43,143をなす活物質造粒粒子41,141が集電箔3,103に向けて上方に飛翔し易くする。
【0049】
次いで、実施形態2及び変形形態2による電極板1,101の製造方法について説明する。本実施形態2及び変形形態2でも、混合粉体作製工程S1,S101及び造粒粉体作製工程S2,S102は、実施形態1及び変形形態1と同様にして行う。その後、第1供給工程S3,S103以降の各工程を、上述の活物質層形成装置300を用いて行う。
【0050】
第1供給工程S3,S103では、活物質造粒粉体42,142を均一厚みの層状に堆積整形し、活物質造粒粉体42,142の堆積層43,143を形成して、成膜領域MR2に供給する。具体的には、ホッパー310から下方に供給された活物質造粒粉体42,142は、供給ベルト321のベルト表面321m上に配置される。このベルト表面321m上の活物質造粒粉体42,142は、搬送ロール322,323による供給ベルト321の移動に伴って、
図8及び
図9中、右方へ搬送され、第1振動子325による振動によって均一厚みの層状に堆積整形され、更にこの活物質造粒粉体42,142の堆積層43,143は成膜領域MR2に搬送される。
【0051】
続いて、第1未圧縮層形成工程S4,S104で、成膜領域MR2において、供給ベルト321と集電箔3,103との間に印加した直流電圧Vd2(実施形態2及び変形形態2では、Vd2=-2kV)により、活物質造粒粒子41,141をベルト表面321mから集電箔3,103に向けて飛ばし、集電箔3,103上に活物質造粒粒子41,141を堆積させて未圧縮活物質層5X,105Xを形成する。実施形態2及び変形形態2でも、安息角θ≦40.0(deg)の流動性の高い活物質造粒粉体42,142を、成膜領域MR2に供給しているため、活物質造粒粉体42,142をなす活物質造粒粒子41,141同士が凝集せず、活物質造粒粒子41,141が個々に容易に飛翔し、効率よく堆積して未圧縮活物質層5X,105Xが形成される。
【0052】
続いて、第1プレス工程S5,S105において、実施形態1及び変形形態1と同様に、プレス部205において未圧縮活物質層5X,105X及び集電箔3,103を加熱プレスして、未圧縮活物質層5X,105Xから活物質層5,105を形成し、片側電極板1Y,101Yを作製する。
【0053】
次に、この片側電極板1Y,101Yについて、活物質層形成装置300を用い、第1供給工程S3,S103と同様な第2供給工程S6,S106と、第1未圧縮層形成工程S4,S104と同様な第2未圧縮層形成工程S7,S107を行って、集電箔3,103上に第2未圧縮活物質層6X,106Xを形成する。更に、第1プレス工程S5,S105と同様な第2プレス工程S8,S108を行って、第2未圧縮活物質層6X,106Xから第2活物質層6,106を形成し、電極板(負極板)1又は電極板(正極板)101を作製する。
【0054】
(実験結果)
次いで、本発明の効果を検証するために行った実験結果について説明する。まず電極板(負極板)1の製造において、供給工程S3で用いる活物質粉体(活物質複合粉体22または活物質造粒粉体42)の安息角θ(deg)と、未圧縮層形成工程S4において活物質粒子(活物質複合粒子21または活物質造粒粒子41)が集電箔3に向けて飛翔する飛翔し易さ(飛翔性)との関係について調査した。
【0055】
比較例1として、実施形態1の混合粉体作製工程S1で得た(造粒粉体作製工程S2は行っていない)、活物質複合粒子21からなる活物質複合粉体22(安息角θ=46.2deg)をそのまま用いて、それ以外は実施形態1と同様に供給工程S3~プレス工程S5を行って、片側電極板1Yを作製した。
【0056】
【0057】
次に、実施例1~5として、供給工程S3で用いる活物質造粒粉体42の製造手法以外は、実施形態1と同様に混合粉体作製工程S1~プレス工程S5を行って、片側電極板1Yをそれぞれ作製した。具体的には、実施例1では、分級工程S24において53μmの篩から落ちた、主に粒径53μm未満の活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42(安息角θ=40.5deg)を用いて、供給工程S3~プレス工程S5を行い、片側電極板1Yを作製した。
実施例2では、分級工程S24において100μmの篩を通過したが53μmの篩の上に残った、主に粒径53~100μmの活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42(安息角θ=36.1deg)を用いて供給工程S3~プレス工程S5を行った。
【0058】
実施例3では、分級工程S24において212μmの篩を通過したが100μmの篩の上に残った、主に粒径100~212μmの活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42(安息角θ=35.8deg)を用いて供給工程S3~プレス工程S5を行った。
実施例4では、分級工程S24において425μmの篩を通過したが212μmの篩の上に残った、主に粒径212~425μmの活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42(安息角θ=35.3deg)を用いて供給工程S3~プレス工程S5を行った。
実施例5では、分級工程S24において425μmの篩の上に残った、主に粒径425μmを超える活物質造粒粒子41からなる活物質造粒粉体42(安息角θ=34.1deg)を用いて供給工程S3~プレス工程S5を行った。
【0059】
次に、電極板(正極板)101についても同様に、比較例2及び実施例6~10の片側電極板101Yをそれぞれ作製した。即ち、比較例2として、変形形態1の混合粉体作製工程S101で得た(造粒粉体作製工程S2は行っていない)、活物質複合粒子121からなる活物質複合粉体122(安息角θ=67.6deg)をそのまま用いて、それ以外は変形形態1と同様に供給工程S103~プレス工程S105を行って、片側電極板101Yを作製した。
【0060】
また、実施例6~10として、供給工程S103で用いる活物質造粒粉体142の製造手法以外は、変形形態1と同様に混合粉体作製工程S101~プレス工程S105を行って、片側電極板101Yをそれぞれ作製した。具体的には、実施例6では、分級工程S124において53μmの篩から落ちた、主に粒径53μm未満の活物質造粒粒子141からなる活物質造粒粉体142(安息角θ=50.4deg)を用いて、供給工程S103~プレス工程S105を行い、片側電極板101Yを作製した。
また、実施例7では、分級工程S124において100μmの篩を通過したが53μmの篩の上に残った、主に粒径53~100μmの活物質造粒粒子141からなる活物質造粒粉体142(安息角θ=39.6deg)を用いて供給工程S103~プレス工程S105を行った。
【0061】
また、実施例8では、分級工程S124において212μmの篩を通過したが100μmの篩の上に残った、主に粒径100~212μmの活物質造粒粒子141からなる活物質造粒粉体142(安息角θ=35.8deg)を用いて供給工程S103~プレス工程S105を行った。
また、実施例9では、分級工程S124において425μmの篩を通過したが212μmの篩の上に残った、主に粒径212~425μmの活物質造粒粒子141からなる活物質造粒粉体142(安息角θ=35.3deg)を用いて供給工程S103~プレス工程S105を行った。
また、実施例10では、分級工程S124において425μmの篩の上に残った、主に粒径425μmが超える活物質造粒粒子141からなる活物質造粒粉体142(安息角θ=34.1deg)を用いて供給工程S103~プレス工程S105を行った。
【0062】
その結果、比較例1,2では、未圧縮層形成工程S4,S104において、活物質複合粒子21,121が殆ど集電箔3,103に向けて飛翔しなかった(表1の飛翔性評価の欄に「×」印を示す)。このため、未圧縮活物質層5X,105Xは殆ど形成されず、活物質層5,105も殆ど形成されなかった。活物質複合粉体22,122は、活物質造粒粉体142よりも安息角θが大きく、流動性が低い。このような流動性の低い活物質複合粉体22,122は、粒子間の凝集力が強いため、成膜領域MR1において活物質複合粒子21,121が集電箔3,103に向けて飛翔しなかったと考えられる。
【0063】
これに対し、実施例1~10では、未圧縮層形成工程S4,S104において、成膜領域MR1に供給した活物質造粒粒子41,141のうち、30%以上の活物質造粒粒子41,141が集電箔3,103に向けて飛翔した。このため、未圧縮活物質層5X,105Xが適切に形成され、活物質層5,105も適切に形成された。特に実施例2~5,7~10では、成膜領域MR1に供給した活物質造粒粒子41,141のうち、80%以上の活物質造粒粒子41,141が集電箔3,103に向けて飛翔した。このため、実施例1,6よりも実施例2~5,7~10で、目付量の多い未圧縮活物質層5X,105Xが形成され、目付量の多い活物質層5,105が形成された。なお、表1の飛翔性評価の欄に、実施例1,5は「〇」印、実施例2~5,7~10は「◎」印を示す。
【0064】
実施例1~10で用いた活物質造粒粉体42,142は、流動性が高く、活物質造粒粒子41,141同士が凝集し難い。特に実施例2~5,7~10で用いた活物質造粒粉体42,142は、いずれも安息角θが40.0deg以下で流動性が高く、活物質造粒粒子41,141同士が特に凝集し難い。このように個々の活物質造粒粒子41,141がバラバラになっている一方、大きさに応じた適量の電荷が帯電しているため、成膜領域MR1において、印加された直流電圧Vd1により、活物質造粒粒子41,141が容易に個々に飛翔する。これにより、多くの活物質造粒粒子41,141を集電箔3,103に向けて飛翔させ得た考えられる。
これらの結果から、供給工程S3,S103~プレス工程S5,S105は、活物質造粒粒子41,141からなる活物質造粒粉体42,142を用いて行うのが好ましく、更には、安息角θ≦40.0(deg)を満たす活物質造粒粉体42,142を用いて行うのが特に好ましいことが判る。
【0065】
以上で説明したように、電極板1,101の製造方法では、活物質粒子11,111に結着剤粒子13P,113Pが付着した活物質複合粒子21,121同士が互いに結合した活物質造粒粒子41,141からなる活物質造粒粉体42,142を用いて、供給工程S3,S6,S103,S106、未圧縮層形成工程S4,S7,S104,S107及びプレス工程S5,S8,S105,S108を行う。比較的小粒径の活物質複合粒子21,121同士に比べて、複数の活物質複合粒子21,121同士が結合して比較的大粒径となった活物質造粒粒子41,141同士の凝集力は弱い。このため、未圧縮層形成工程S4,S7,S104,S107において、活物質造粒粒子41,141を静電気力Fs1,Fs2により集電箔3,103に向けて適切に飛翔させることができ、集電箔3,103上に未圧縮活物質層5X,6X,105X,106Xを適切に形成できる。そして、活物質層5,6,105,106を適切に形成できる。
【0066】
更に、電極板1,101の製造方法では、供給工程S3,S6,S103,S106において、流動性の高い、具体的には安息角θがθ≦40.0(deg)の活物質造粒粉体42,142を用いている。このような流動性の高い活物質造粒粉体42,142は、粒子間の凝集力が特に弱いため、未圧縮層形成工程S4,S7,S104,S107において、活物質造粒粒子41,141がより一層、集電箔3,103に向けて飛翔し易くなり、未圧縮活物質層5X,6X,105X,106Xをより適切に形成でき、活物質層5,6,105,106をより適切に形成できる。
【0067】
また、電極板1,101の製造方法では、シート成形工程S21,S121、破砕工程S22,S122及び整粒工程S23,S123を有する造粒粉体作製工程S2,S102を備えている。このような造粒粉体作製工程S2,S102を行うことで、安息角θ≦40.0(deg)で所望の流動性を有する活物質造粒粉体42,142を容易に作製できる。従って、この活物質造粒粉体42,142を用いることにより、未圧縮活物質層5X,6X,105X,106Xをより適切に形成でき、活物質層5,6,105,106をより適切に形成できる。
【0068】
また、電極板1,101の製造方法では、造粒粉体作製工程S2,S102は、分級工程S24,S124を更に有する。これにより、より適切な流動性を有する活物質造粒粉体42,142を容易に作製できる。従って、この活物質造粒粉体42,142を用いることにより、未圧縮活物質層5X,6X,105X,106Xをより適切に形成でき、活物質層5,6,105,106をより適切に形成できる。
【0069】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は実施形態1,2及び変形形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1,2等では、造粒のほか、整粒及び分級を行って得た活物質造粒粉体42,142を用いて、供給工程S3,S6,S103,S106を行ったが、これに限られない。整粒や分級を行わないで得た活物質造粒粉体を用いて、供給工程S3,S6等を行ってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 電極板(負極板)
101 電極板(正極板)
3,103 集電箔
5,105 第1活物質層
5X,105X 第1未圧縮活物質層
6,106 第2活物質層
6X,106X 第2未圧縮活物質層
11,111 活物質粒子
12,112 活物質粉体
13,113 結着剤
13P,113P 結着剤粒子
14,114 結着剤粉体
21,121 活物質複合粒子
22,122 活物質複合粉体
30,130 シート状圧粉体
31,131 破砕粒子
32,132 破砕粉体
33,133 整粒粒子
34,134 整粒粉体
35,135 分級粒子
36,136 分級粉体
41,141 活物質造粒粒子
42,142 活物質造粒粉体
43,143 (活物質造粒粉体の)堆積層
200,300 活物質層形成装置
210,310 ホッパー
220 供給ロール
230,330 バックアップロール
240,340 直流電源
320 ベルト型供給装置
321 供給ベルト
DA50 (活物質複合粉体の)メディアン径
DB50 (破砕粉体の)メディアン径
DC50 (整粒粉体の)メディアン径
DD50 (分級粉体の)メディアン径
PR1 (整粒粉体の予め定めた)粒度範囲
PR2 (分級粉体の予め定めた)粒度範囲
MR1,MR2 成膜領域
Fs1,Fs2 静電気力
S1,S101 混合粉体作製工程
S2,S102 造粒粉体作製工程
S21,S121 シート成形工程
S22,S122 破砕工程
S23,S123 整粒工程
S24,S124 分級工程
S3,S103 第1供給工程
S4,S104 第1未圧縮層形成工程
S5,S105 第1プレス工程
S6,S106 第2供給工程
S7,S107 第2未圧縮層形成工程
S8,S108 第2プレス工程