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特開2022-150694電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法
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  • 特開-電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法 図1
  • 特開-電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法 図2
  • 特開-電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法 図3
  • 特開-電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法 図4
  • 特開-電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150694
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/04 20060101AFI20220929BHJP
   H02G 1/08 20060101ALI20220929BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220929BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02G15/04 030
H02G1/08 010
H02G1/02
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053408
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博之
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信彦
(72)【発明者】
【氏名】高安 央也
(72)【発明者】
【氏名】森田 大
(72)【発明者】
【氏名】坂野 健太
【テーマコード(参考)】
5G352
5G375
【Fターム(参考)】
5G352AA08
5G352AA15
5G352CA09
5G352CB01
5G352CK08
5G352DA06
5G375AA01
5G375BA08
5G375BB55
5G375DA11
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】装着部を電力ケーブルに装着させる工程の簡略化を図り、ひいては電力ケーブルの牽引作業の効率化を図ることが可能な装着部材および作業方法を提供する。
【解決手段】電力ケーブルの先端部に装着される装着部材は、電力ケーブルを牽引する際に当該電力ケーブルの先端部に装着される装着部材であって、先端部が挿入される挿入孔を有し、挿入孔の延在方向一端側で牽引部が設けられ、挿入孔の延在方向他端側で先端部を前記挿入孔へ挿入可能に開口する、装着部を備え、挿入孔の内部空間を囲む前記装着部の内面は、先端部を接着するための接着剤が塗布される接着剤塗布部を構成し、接着剤塗布部に塗布された接着剤が溜まるように、外側に凹む凹部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルを牽引する際に当該電力ケーブルの先端部に装着される装着部材であって、
前記先端部が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔の延在方向一端側で牽引部が設けられ、前記挿入孔の延在方向他端側で前記先端部を前記挿入孔へ挿入可能に開口する、装着部を備え、
前記挿入孔の内部空間を囲む前記装着部の内面は、
前記先端部を接着するための接着剤が塗布される接着剤塗布部を構成し、
前記接着剤塗布部に塗布された前記接着剤が溜まるように、外側に凹む凹部を有する、
電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項2】
前記装着部は、前記装着部の外面から前記挿入孔に向けて貫通する貫通孔を有する、
請求項1に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記挿入孔に挿入された前記先端部を固定するための固定部材を挿通可能に設けられる、
請求項2に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項4】
前記外面は、前記装着部において前記内面の周囲に位置する外面を含み、
前記貫通孔は、前記装着部を前記外面から前記挿入孔まで貫通して設けられる、
請求項3に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記挿入孔に挿入された前記先端部の端面に打ち込まれる楔部材を挿通可能に設けられる、
請求項2に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項6】
前記楔部材は、前記先端部の端面に打ち込まれるとき、前記先端部の端面を外方に押し広げて前記端面と前記内面との間の前記接着剤に押し付ける、
請求項5に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項7】
前記外面は、前記装着部において前記延在方向一端側の端面を含み、
前記貫通孔は、前記装着部を前記端面から前記挿入孔まで貫通して設けられる、
請求項5または6に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項8】
前記装着部は、前記内面において、前記先端部の端面部分を受ける受け部を有する、
請求項1~7の何れか1項に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項9】
前記挿入孔と前記先端部との間に設けられるスペーサーを備える、
請求項1~8の何れか1項に記載の電力ケーブルの先端部に装着される装着部材。
【請求項10】
電力ケーブルの先端部が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔の延在方向一端側で牽引部が設けられ、前記挿入孔の延在方向他端側で前記先端部を前記挿入孔へ挿入可能に開口する、装着部を備え、前記挿入孔の内部空間を囲む前記装着部の内面は、前記先端部を接着するための接着剤が塗布される接着剤塗布部を構成し、前記接着剤塗布部に塗布された前記接着剤が溜まるように、外側に凹む凹部を有する装着部材を用いた、前記電力ケーブルを牽引するための作業方法であって、
前記先端部を前記挿入孔に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の前または後に、前記先端部および前記内面の少なくとも一方に前記接着剤を塗布する塗布工程と、を含み、前記先端部を前記装着部に接着させる接着工程と、
前記接着工程の後に、前記装着部を介して前記牽引部により前記電力ケーブルを牽引する牽引工程と、
を有する、
装着部材を用いた、前記電力ケーブルを牽引するための作業方法。
【請求項11】
前記接着工程の前に前記先端部に凹凸形状を加工形成する加工工程を有する、
請求項10に記載の、装着部材を用いた、前記電力ケーブルを牽引するための作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの先端部に装着される装着部材、および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブルを敷設する、または、既設の電力ケーブルを撤去する際、電力ケーブルの端末部に装着されるプーリングアイと呼ばれる治具(装着部材)が知られている。電力ケーブルに装着されたプーリングアイを牽引装置で牽引することにより、電力ケーブルを管路等に引き込み、電力ケーブルの接続相手となる対象機器が設置された接続場所まで容易に移動させることが可能となる。
【0003】
一般的に、プーリングアイは、電力ケーブルの端末部において露出するケーブル導体に圧縮接続される方法が知られている。また、特許文献1には、光ケーブルの先端部とプーリングアイ内の挿入孔の内面との間に接着剤が塗布され、かつ、光ケーブルの先端部に防水コンパウンドが塗布されることで、プーリングアイと光ケーブルとを接続させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-2827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プーリングアイで牽引して電力ケーブルを移動させる際において、敷設線路が長く、複数の牽引作業を行う場合、作業時間が長くかかる。具体的には、電力ケーブルの被覆部分を剥ぎ取ってケーブル導体を露出させる工程、プーリングアイを装着させる工程、牽引後のケーブルを切断させる工程が繰り返し行われる。
【0006】
これらの工程の中では、プーリングアイを装着させる工程、つまり、プーリングアイの装着部分(装着部)をケーブル導体に圧縮接続させる工程に最も多くの時間を要するため、上記作業の効率化の観点から、プーリングアイを電力ケーブルに装着させる工程の簡略化が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、装着部を電力ケーブルに装着させる工程の簡略化を図り、ひいては電力ケーブルの牽引作業の効率化を図ることが可能な、電力ケーブルの先端部に装着される装着部材および、当該装着部材を用いた、電力ケーブルを牽引するための作業方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電力ケーブルの先端部に装着される装着部材は、
電力ケーブルを牽引する際に当該電力ケーブルの先端部に装着される装着部材であって、
前記先端部が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔の延在方向一端側で牽引部が設けられ、前記挿入孔の延在方向他端側で前記先端部を前記挿入孔へ挿入可能に開口する、装着部を備え、
前記挿入孔の内部空間を囲む前記装着部の内面は、
前記先端部を接着するための接着剤が塗布される接着剤塗布部を構成し、
前記接着剤塗布部に塗布された前記接着剤が溜まるように、外側に凹む凹部を有する。
【0009】
本発明に係る装着部材を用いた、前記電力ケーブルを牽引するための作業方法は、
電力ケーブルの先端部が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔の延在方向一端側で牽引部が設けられ、前記挿入孔の延在方向他端側で前記先端部を前記挿入孔へ挿入可能に開口する、装着部を備え、前記挿入孔の内部空間を囲む前記装着部の内面は、前記先端部を接着するための接着剤が塗布される接着剤塗布部を構成し、前記接着剤塗布部に塗布された前記接着剤が溜まるように、外側に凹む凹部を有する装着部材を用いた、前記電力ケーブルを牽引するための作業方法であって、
前記先端部を前記挿入孔に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の前または後に、前記先端部および前記内面の少なくとも一方に前記接着剤を塗布する塗布工程と、を含み、前記先端部を前記装着部に接着させる接着工程と、
前記接着工程の後に、前記装着部を介して前記牽引部により前記電力ケーブルを牽引する牽引工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装着部を電力ケーブルに装着させる工程の簡略化を図り、ひいては電力ケーブルの牽引作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る装着部を有するプーリングアイを示す半断面図である。
図2】装着部の挿入孔内に接着剤が充填された状態のプーリングアイを示す半断面図である。
図3】凹みを形成したケーブル導体を挿入したプーリングアイを示す半断面図である。
図4】スペーサーを有する変形例に係るプーリングアイを示す半断面図である。
図5】楔部材を有する変形例に係るプーリングアイを示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る装着部を有するプーリングアイ1を示す半断面図である。
【0013】
図1に示すように、プーリングアイ1は、電力ケーブル2を牽引するための装着部材であり、連結部10と、装着部20とを有する。連結部10は、電力ケーブル2を接続場所に牽引する例えばアイナット等の牽引装置(図示せず)に連結される牽引部であり、装着部20に接続されている。
【0014】
装着部20は、電力ケーブル2に装着される部分である。装着部20は、所定方向に延びており、有底筒状に構成されている。因みに、所定方向とは、電力ケーブル2を牽引する際に牽引方向となる方向である。装着部20は、挿入孔21を有する。挿入孔21は、連結部10との接続部分とは反対側の端部(挿入孔21の延在方向他端側)において開口する。挿入孔21は、連結部10との接続部分側(挿入孔21の延在方向一端側)に位置する底部まで所定方向に延び、電力ケーブル2におけるケーブル導体3(先端部)が挿入される。
【0015】
挿入孔21の径は、ケーブル導体3の径より大きくなっており、ケーブル導体3を挿入孔21に挿入した際に、挿入孔21の内部空間を囲む装着部20の内周面である内面21Aとケーブル導体3との間に、僅かな隙間が空くようになっている。内面21Aとケーブル導体3との間の隙間は、他の部材が入り込めない程度の極小な隙間である。なお、図1等においては、図面の見易さを考慮して、内面21Aとケーブル導体3との間の隙間を大きく示している。
【0016】
装着部20の内面21Aには、ケーブル導体3を接着するための接着剤が塗布される。つまり、装着部20の内面21Aは、電力ケーブル2の先端部を接着するための接着剤が塗布される接着剤塗布部を構成する。
【0017】
なお、装着部20の内面21Aとケーブル導体3との隙間の長さは、接着剤の種類に応じて適宜設定可能である。
【0018】
装着部20の内面21Aは、挿入孔21の内部空間とは反対側つまり外側に凹む凹部21Bを有する。具体的には、凹部21Bは、挿入孔21の延在方向においては複数設けられており、内面21Aの周方向においては全体に設けられている。言い換えると、挿入孔21の内面21Aは、例えばねじ切り形状となっている。なお、凹部21Bは、これに限定されず、例えば、粗目の切削バイトにより形成されたものでも良い。
【0019】
このように凹部21Bが設けられることにより、図2に示すように、挿入孔21の内面21A(接着剤塗布部)に塗布された接着剤Gが凹部21B内に溜まるようになっている。
【0020】
これにより、凹部21B内に溜まった接着剤Gのせん断力に基づくアンカー効果により、装着部20と電力ケーブル2との接着強度を高めつつ、電力ケーブル2の引っ張り力を安定化させることができる。
【0021】
具体的には、ケーブル導体3と装着部20とが接着剤Gで接着されて、プーリングアイ1を引っ張ると、ケーブル導体3には張力として反抗力T(N)が発生する。この反抗力Tは接着剤Gのせん断強度P(N/mm)に依存する。
【0022】
ケーブル導体3の表面と内面21Aとの間で面状に広がる接着剤Gの反抗力Tに加え、牽引方向に対して交差する方向である径方向に厚みをもつよう凹部21Bに入り込んで溜まった接着剤Gのせん断応力t1が加算された合計張力が、プーリングアイ1を引っ張る際に働く。これにより、装着部20と電力ケーブル2との接着強度を高めつつ、牽引方向における電力ケーブル2の引っ張り力を安定化させることが可能となる。
【0023】
なお、反抗力Tとせん断力Pとの関係は以下の式(1)のようになる。
L>T/(d×π×P)・・・(1)
【0024】
式(1)におけるLはケーブル導体3の長さ(mm)である。式(1)におけるdはケーブル導体3の径の長さ(mm)である。
【0025】
また、接着剤Gとしては、例えばシアノアクリレート系接着剤、反応形樹脂系接着剤(反応形アクリル系)、アルキルシアノアクリレート系接着剤、一液熱硬化型エポキシ系接着剤、メタクリレート系嫌気性固着剤、α-シアノアクリレート系ゼリー状瞬間接着剤等が挙げられる。また、接着剤Gは、例えば、ゼリー状のもの、液体状のもの等、凹部21Bに溜まることが可能であり、かつ、装着部20とケーブル導体3とを接着可能である限りどのようなものでも良い。
【0026】
また、装着部20は、装着部20の内面の周囲に位置する外面から挿入孔21に向けて貫通する貫通孔21Cが設けられている。言い換えると、貫通孔21Cは、装着部20における、挿入孔21にケーブル導体3が挿入された際の、ケーブル導体3の側面と対向する位置に配置されている。貫通孔21Cは、図1および図2においては装着部20の上側に4つ設けられている。
【0027】
このように、貫通孔21Cを設けることにより、挿入孔21内にケーブル導体3を装着した後、貫通孔21Cを介して接着剤Gを装着部20とケーブル導体3との間に注入することが可能となる。
【0028】
また、貫通孔21Cを設けることにより、装着部20とケーブル導体3との間が接着剤Gで充填した場合、貫通孔21Cから接着剤Gが溢れ出るため、装着部20とケーブル導体3との間が接着剤Gで充填したことを確認することも可能となる。
【0029】
また、貫通孔21Cを設けることにより、止めねじ等の固定部材30を、貫通孔21Cを通して設けることにより、装着部20とケーブル導体3とを機械的に固定することが可能となる。固定部材30は、例えばケーブル導体3に食い込み可能な先端部を有するものである。なお、ケーブル導体3に固定部材30の先端が入り込む穴をあけても良い。
【0030】
このように、固定部材30を設けることにより、固定部材30の機械的把持力t2が、上記の合計張力(Tとt1)に加算されて、合計張力をさらに高めることができる。その結果、装着部20とケーブル導体3との接着強度をさらに高めることができる。
【0031】
また、固定部材30を挿入する貫通孔21Cの大きさは、固定部材30の大きさに応じて、他の貫通孔21Cの大きさと異ならせても良い。
【0032】
また、固定部材30は、複数設けても良い。複数の固定部材30を設けることにより、固定部材30による機械的把持力を高めることができるので、装着部20とケーブル導体3との接着強度をさらに高めることができる。
【0033】
次に、プーリングアイ1を電力ケーブル2に装着してから移動させるまでの一連の作業工程の一例について説明する。
【0034】
まず、作業者は、電力ケーブル2のケーブル導体3および装着部20の挿入孔21の両方に接着剤Gを塗布する。なお、作業者による接着剤Gの塗布は、電力ケーブル2のケーブル導体3および装着部20の挿入孔21の何れかであっても良い。
【0035】
次に、作業者は、ケーブル導体3を装着部20の挿入孔21に挿入する。また、作業者は、ケーブル導体3を装着部20の挿入孔21に挿入後、貫通孔21Cを介して装着部20とケーブル導体3との間に接着剤Gを注入しても良い。
【0036】
これにより、ケーブル導体3と装着部20との間に、接着剤Gを充填させやすくすることができる。また、貫通孔21Cから接着剤Gが溢れ出すことを作業者が確認することができ、ひいてはケーブル導体3と装着部20との間に、接着剤Gが充填したことを確認しやすくすることができる。
【0037】
また、作業者は、ケーブル導体3を装着部20の挿入孔21に挿入後、固定部材30によって、装着部20とケーブル導体3とを機械的に固定しても良い。
【0038】
これにより、装着部20と電力ケーブル2との接着強度をさらに高めることができる。
【0039】
そして、作業者は、挿入孔21にケーブル導体3を挿入後、プーリングアイ1および電力ケーブル2を放置して接着剤Gを硬化させて、装着部20と電力ケーブル2とを接着させた後、牽引装置等でプーリングアイ1の連結部10を引っ張らせて、装着部20を介して電力ケーブル2を牽引する。このようにして、電力ケーブル2を移動させて、電力ケーブル2の敷設、または、撤去を行う。
【0040】
ところで、電力ケーブルに圧縮接続するプーリングアイを用いる場合、まず、圧縮接続するためのプレス装置を、作業場所に運ぶ必要があるが、プレス装置は電力ケーブル2のサイズに応じて重量が大きくなる。
【0041】
そのため、圧縮接続をするための作業者を複数人確保したり、複数人の作業者の作業日時の調整も必要となることから、作業において手間と時間が必要以上にかかる。
【0042】
それに対し、本実施の形態では、接着剤Gでプーリングアイ1と電力ケーブル2とを接続するので、簡易な作業により、プーリングアイ1と電力ケーブル2とを接着させることができる。すなわち、本実施の形態では、プーリングアイ1を電力ケーブル2に装着させる工程の簡略化を図り、ひいては電力ケーブル2の牽引作業の効率化を図ることができる。
【0043】
また、装着部20の挿入孔21の内面に凹部21Bが設けられているので、接着剤Gを凹部21B内に溜めた状態にして、接着剤Gを硬化させることができる。これにより、接着剤Gのアンカー効果によって、装着部20と電力ケーブル2との接着強度を高めつつ、電力ケーブル2の引っ張り力を安定化させることができる。
【0044】
また、ケーブル導体3が、複数の素線をより合わせたより線で構成される場合、素線と素線との間にも凹みが形成されるので、ケーブル導体3側の凹みにも接着剤Gが溜まる。これにより、凹部21Bと、ケーブル導体3側の凹みとに溜まりこむ接着剤Gによるアンカー効果をさらに高めることができ、ひいては電力ケーブル2の引っ張り力をさらに安定化させることができる。
【0045】
また、貫通孔21C内に接着剤Gが入り込むことによっても、接着剤Gのアンカー効果をさらに高めることができ、ひいては電力ケーブル2の引っ張り力をさらに安定化させることができる。
【0046】
また、図3に示すように、作業者によってケーブル導体3の表面に凹み3Aを加工形成して、凹凸形状を形成して、凹み3Aに接着剤Gを溜めることによって、上記の接着剤Gによるアンカー効果を高めるようにしても良い。また、凹み3Aを凹部21Bに対応する位置に設けることで、アンカー効果を高めやすくすることができる。このケーブル導体3の表面に凹凸形状を加工形成する工程は、ケーブル導体3を挿入孔21に挿入する前等、ケーブル導体3を装着部に接着させる工程の前に行われる。また、上記の凹凸形状は、ケーブル導体3の表面をヤスリ等で粗面加工することで形成しても良い。
【0047】
また、上記実施の形態では、内面21Aとケーブル導体3との間の隙間は極小な隙間であったが、装着部20とケーブル導体3との隙間がある程度大きくなる場合は、例えば図4に示すように、スペーサー40を設けても良いし、挿入孔21におけるケーブル導体3の端面部分を受ける受け部21Dを設けても良い。
【0048】
スペーサー40は、ゴムやパッキン等の弾性部材であり、例えば第1部41と、第2部42を有する。第1部41および第2部42は、円筒状に構成されており、ケーブル導体3の周囲に配置可能な形状に構成されている。
【0049】
より詳細には、第1部41は、装着部20とケーブル導体3との隙間に配置される部分であり、ケーブル導体3の側面に沿う方向(装着部20の延出方向)に延びて構成されている。第2部42は、第1部41における、装着部20の挿入孔21の縁部分に対応する端部に接続されて、当該縁部分に密着して配置される部分であり、第1部41よりもケーブル導体3の径方向に突出して構成されている。
【0050】
つまり、スペーサー40は、第1部41と第2部42とで構成されるL字断面を有している。このスペーサー40の第1部41を装着部20とケーブル導体3との隙間に配置することで、当該隙間を一定の幅に維持しやすくすることができる。
【0051】
また、受け部21Dは、挿入孔21のケーブル導体3の端面部分に対応する位置に位置しており、当該端面が嵌合可能な形状を有する。この受け部21Dを設けることにより、ケーブル導体3の端面部分の挿入孔21内での位置決めがなされて、装着部20とケーブル導体3との隙間を一定の幅に維持しやすくすることができる。
【0052】
また、スペーサー40および受け部21Dにより、装着部20とケーブル導体3との隙間が一定に保たれて、接着剤を十分、かつ、均一に充填させることができる。その結果、上記のアンカー効果を発揮しながら、プーリングアイ1の引っ張り方向に偏心しないので、曲げモーメントが加わることがなくなり、電力ケーブル2の引っ張り力をさらに安定化させることができ、繰り返し使用性を向上させることができる。
【0053】
また、図5に示すように、楔部材50を設けた構成であっても良い。この形態に係るプーリングアイ1の装着部20は、挿入孔21の底面(装着部20における、上記の延在方向の一端側の端面)部分には、装着部20の外面から挿入孔21の底面に向けて、装着部20の延出方向(図5に示す左右方向)に貫通する貫通孔21Eが設けられている。言い換えると、貫通孔21Eは、装着部20における、挿入孔21にケーブル導体3が挿入された際の、ケーブル導体3の端面と対向する位置に配置されている。
【0054】
楔部材50は、貫通孔21Eを通してケーブル導体3の端面に打ち込まれることにより設けられる。こうすることで、ケーブル導体3の端面側の部分が楔部材50によって外方に(例えば放射状に)押し広げられて、ケーブル導体3の端面部分の外周と内面21Aとの隙間で面状に広がる接着剤Gに押し付けられるため、ケーブル導体3の端面部分と装着部20との接着力を補完することができる。また、楔部材50によって、ケーブル導体3の端面を挿入孔21の底面部分に固定することができるので、ケーブル導体3と装着部20との接着力を高めることができる。なお、牽引装置は、楔部材50が打ち込まれた状態で連結部10に連結しても良いし、打ち込んだ楔部材50をケーブル導体3の接着後に取り外してから連結部10に連結しても良い。前者の場合、連結する牽引装置で楔部材50を打ち込み方向へ押圧することにより、ケーブル導体3の端面部分と装着部20との接着力をさらに補完することができる。
【0055】
また、上記実施の形態では、凹部21Bは、ねじ切り形状によるものであったが、本発明はこれに限定されず、溝形状や複数の凹み形状等、接着剤を溜め込むことが可能である限り、どのような形状によるものであっても良い。また、アンカー効果向上の観点から凹部をケーブル導体3のより線のピッチに対応した位置に設けても良い。
【0056】
また、上記実施の形態では、装着部20が筒状に構成されていたが、本発明はこれに限定されず、挿入孔内でケーブル導体との間に接着剤を充填可能である限り、どのような構成であっても良い。
【0057】
また、上記実施の形態では、連結部10と装着部20とが別体であったが、本発明はこれに限定されず、連結部と装着部とが一体に構成されていても良い。
【0058】
また、上記実施の形態では、プーリングアイ1を装着部材としていたが、装着部を装着部材としても良い。
【0059】
また、上記実施の形態では、貫通孔21Cが設けられていたが、本発明はこれに限定されず、貫通孔が設けられていなくても良い。
【0060】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 プーリングアイ
2 電力ケーブル
3 ケーブル導体
10 連結部
20 装着部
21 挿入孔
21A 内面
21B 凹部
21C 貫通孔
21D 受け部
30 固定部材
40 スペーサー
41 第1部
42 第2部
50 楔部材
図1
図2
図3
図4
図5