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特開2022-150701コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150701
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20220929BHJP
   G01N 25/02 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20220929BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E04G21/02 ESW
G01N25/02 Z
C04B40/02
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053415
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】東 邦和
【テーマコード(参考)】
2E172
2G040
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA10
2E172EA13
2G040AB08
2G040AB12
2G040BA02
2G040BA14
2G040CA02
2G040DA02
2G040DA15
2G040EA08
2G040HA06
2G040HA08
2G040ZA08
4G055AA01
4G055BA02
4G112RA00
(57)【要約】
【課題】より確実にコンクリートを冷却させること。
【解決手段】コンクリート養生装置であって、コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定部と、推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御部と、温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定部と、設定された上限温度および下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成部と、を備え、制御部は、コンクリートの温度が、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線の間で推移するように、冷媒の流量および温度を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定部と、
推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御部と、
前記温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、前記温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、前記温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定部と、
設定された前記上限温度および前記下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンクリートの温度が、前記上限温度分布曲線および前記下限温度分布曲線の間で推移するように、前記冷媒の流量および温度を制御する、コンクリート養生装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ピーク温度に到達した時点以降の時間において、前記コンクリートの温度が、前記上限温度および前記下限温度の間の第1温度を維持するように、前記冷媒の流量および温度を制御し、
前記ピーク温度に到達した時点以降の第1時間において、前記第1温度が前記第1時間における上限温度と同じ温度となった場合、前記第1時間以降の時間において、前記コンクリートの温度を前記第1時間における下限温度である第2温度に維持するように、前記冷媒の流量および温度を制御し、
前記第1時間以降の第2時間において、前記第2温度が前記第2時間における上限温度と同じ温度となった場合、前記第2時間以降の時間において、前記コンクリートの温度を前記第2時間における下限温度である第3温度に維持するように、前記冷媒の流量および温度を制御し、
前記第2時間以降冷却終了時間まで同様の制御を繰り返す、請求項1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ピーク温度に到達する時点以前の時間において、前記冷媒を最大流量および下限温度となるように制御して、前記冷却パイプに供給する、請求項1または2に記載のコンクリート養生装置。
【請求項4】
コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定ステップと、
推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御ステップと、
前記温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、前記温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、前記温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定ステップと、
設定された前記上限温度および前記下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成ステップと、
を含み、
前記制御ステップにおいて、前記コンクリートの温度が、前記上限温度分布曲線および前記下限温度分布曲線の間で推移するように、前記冷媒の流量および温度を制御する、コンクリート養生方法。
【請求項5】
コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定ステップと、
推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御ステップと、
前記温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、前記温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、前記温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定ステップと、
設定された前記上限温度および前記下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御ステップにおいて、前記コンクリートの温度が、前記上限温度分布曲線および前記下限温度分布曲線の間で推移するように、前記冷媒の流量および温度を制御する、コンクリート養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水とセメントとの化学反応によって硬化する際に熱を発生する。特に、コンクリート打設後数日は、反応が急速に進み多量の熱が発生するため、熱の影響によりコンクリートのひび割れが生じる場合がある。そのため、コンクリート打設時のひび割れ対策として、パイプクーリングによってコンクリートの温度上昇を抑制して、ひび割れの低減が図られている。パイプクーリングを行う場合、パイプの配置やパイプ径、クーリング水の流量や温度設定等について適切に管理する必要がある。
【0003】
上記技術分野において、特許文献1には、コンクリートを冷却するために、パイプを循環させる流体の温度をコンクリートの外部温度と内部温度との温度差に基づいて、自動制御する技術が開示されている(同文献請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-89357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリートの内部温度と外部温度とに基づいた温度制御を行うものであり、コンクリートの特性、例えば、コンクリートの管理用温度推移データに基づいた温度制御ではないため確実にコンクリートを冷却させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置は、
コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定部と、
推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御部と、
前記温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、前記温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、前記温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定部と、
設定された前記上限温度および前記下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンクリートの温度が、前記上限温度分布曲線および前記下限温度分布曲線の間で推移するように、前記冷媒の流量および温度を制御する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生方法は、
コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定ステップと、
推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御ステップと、
前記温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、前記温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、前記温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定ステップと、
設定された前記上限温度および前記下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成ステップと、
を含み、
前記制御ステップにおいて、前記コンクリートの温度が、前記上限温度分布曲線および前記下限温度分布曲線の間で推移するように、前記冷媒の流量および温度を制御する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生プログラムは、
コンクリートを打設してからの養生時間に伴う前記コンクリートの温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する推定ステップと、
推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線に基づいて、打設されたコンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を制御する制御ステップと、
前記温度分布曲線において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、前記温度分布曲線に対して所定温度高い上限温度、および、前記温度分布曲線に対して所定温度低い下限温度を設定する設定ステップと、
設定された前記上限温度および前記下限温度に基づいて、上限温度分布曲線および下限温度分布曲線を生成する生成ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御ステップにおいて、前記コンクリートの温度が、前記上限温度分布曲線および前記下限温度分布曲線の間で推移するように、前記冷媒の流量および温度を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリートの管理用温度推移データに基づいて、コンクリートを冷却するためのパラメータ制御をするので、より確実にコンクリートを冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置の概要を説明するための図である。
図1B】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置によるコンクリートの冷却方法を説明するための図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置の有する温度テーブルの一例を説明するための図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図5】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明の好ましい実施形態としてのコンクリート養生装置100について、図1A図5を参照して説明する。コンクリート養生装置100は、コンクリート110が従うべき温度分布データをプロットした温度分布曲線140に基づいて、コンクリート110の温度を管理して、冷却するための冷媒の流量および温度を制御する装置である。まず、図1Aを参照して、コンクリート養生装置100の動作の概要を説明する。
【0013】
コンクリート養生装置100は、コンクリート110を打設してからの養生時間に伴うコンクリート110の温度の温度分布データを推定し、推定した温度分布データをグラフ上にプロットした温度分布曲線140を参照して、打設したコンクリート110を冷却するために、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122に対して供給する冷媒の流量および温度を制御して、コンクリート110の温度を管理する装置である。
【0014】
打設されたコンクリート110の内部に設置される冷却パイプ122は、例えば、図1A(a)に示したように、シース管123の内部に設置されている。そして、冷却パイプ122に接続した送水用ホース121を介して冷媒供給装置120から冷媒を供給すると、シース管123の内部に冷媒が満たされ、シース管123から冷媒が溢れ出す。なお、溢れ出した冷媒は、不図示の冷媒回収機構により回収され、再利用されることにより、循環するようになっている。また、冷却パイプ122の設置形式は、図1A(a)および(b)においては、コンクリート110の上部から下部に向けて垂直に埋設された形式となっているが、これには限定されない。なお、図1A(a)に示した温度分布曲線140においては、横軸は、コンクリート110の養生時間(冷却時間)、縦軸は、コンクリート110の温度をそれぞれ示している。
【0015】
次に、図1A(b)および(c)を参照して、コンクリート110に設置される温度センサ130の配置位置について説明する。コンクリート110には、複数の温度センサ130が設置される。温度センサ130は、図1A(b)および(c)に示したように、コンクリート110の高さ方向には、中央付近および下方付近に設置されている。また、コンクリート110の表面付近(表面から約10cm)と、コンクリート110に配置された冷却パイプ122(シース管123)同士の間の位置(中間の位置)と、に設置されている。なお、温度センサ130の配置位置はここに示した例には限定されない。
【0016】
そして、コンクリート養生装置100は、温度センサ130により計測された温度データを取得し、コンクリート110の温度が、温度分布曲線140に従うように、冷却パイプ122に供給する冷媒の流量および温度を制御する。
【0017】
なお、温度センサ130は、熱電対形式のセンサであるが、温度を計測可能なセンサであれば、いずれのセンサであってもよい。また、供給される冷媒の流量は、好ましくは、0~100(l/min)である。供給される冷媒の温度は、好ましくは、5℃~30℃であり、より好ましくは、10℃~20℃である。さらに、冷却パイプ122の径は、好ましくは、φ25~φ75であり、より好ましくは、φ25~φ50であり、冷却パイプ122の長さは、好ましくは、50~100mである。冷却パイプ122の配置間隔は、好ましくは、0.5m~1.2mであり、より好ましくは、0.5~0.8mである。
【0018】
次に、図1Bに示したグラフ150を参照して、コンクリート養生装置100によるコンクリート110の温度の管理について説明する。
【0019】
コンクリート養生装置100は、コンクリート110にひび割れが生じないように、コンクリート110の冷却を行う。コンクリート110の冷却によるひび割れについては、熱伝導方程式を用いて、冷却に伴うコンクリート110の内部の温度を予測し、予測された温度からコンクリート110の熱膨張率を算出して、コンクリート110の応力ひずみ関係から、ひび割れが発生するか否かの検討が行われる。
【0020】
ここで、グラフ150において、横軸は、コンクリート110の養生時間(冷却時間)[h]、縦軸は、コンクリート110の温度[℃]をそれぞれ示している。図1Bにおいて、温度分布曲線160は、コンクリート110の冷却を行わない場合のコンクリート110の温度変化を示している。このように、コンクリート110の冷却を行わない場合には、コンクリート110の温度は、所定時間経過後に飽和温度に達し、そのまま推移する。
【0021】
温度分布曲線140は、コンクリート110を冷却する場合の予測されたコンクリート110の温度推移を示している。そして、コンクリート養生装置100は、コンクリート110の温度が、温度分布曲線140に従うように、供給する冷媒の流量および温度を制御する。しかしながら、コンクリート110の温度が、温度分布曲線140に従うように、冷媒の流量および温度を制御することは困難な場合がある。そのため、コンクリート養生装置100は、温度分布曲線140に対して、所定温度高い上限温度および所定温度低い下限温度を設定し、コンクリート110の温度が、上限温度分布曲線151および下限温度分布曲線152の間で推移するように、供給する冷媒の流量および温度を制御する。
【0022】
上限温度分布曲線151により表される温度は、コンクリート110の温度が、上限温度で示される温度を超えると、コンクリート110にひび割れなどの不具合が発生し易くなる温度を示している。また、下限温度分布曲線152により表される温度は、コンクリート110の温度が、下限温度で示される温度を下回ると、コンクリート110が急激に冷えすぎることにより、ひび割れなどの不具合が発生し易くなる温度を示している。
【0023】
そして、コンクリート養生装置100は、コンクリート110の温度が、上限温度および下限温度の間で推移するように、冷媒の流量および温度を制御する。つまり、コンクリート養生装置100は、コンクリート110の温度が、所定の温度幅を有する、上限温度分布曲線151と下限温度分布曲線152との間で推移するように、冷媒の流量および温度を制御する。このように、コンクリート110の温度が、上限温度および下限温度の間で推移するように冷媒の流量および温度を制御することで、コンクリート110にひび割れなどが発生しないようにすることが可能となる。
【0024】
詳細には、コンクリート養生装置100は、コンクリート110の温度が、温度推移線153に従うように、冷媒の流量および温度を制御する。温度推移線153は、階段形状の推移線となっており、コンクリート養生装置100は、温度推移線153に沿うようにコンクリート110の温度を管理する。
【0025】
このように、階段形状の温度推移線153のように、コンクリート110の温度を制御することは、コンクリート110の温度が、温度分布曲線140に沿うように冷媒の流量および温度を制御する場合に比べて比較的容易な制御となっている。
【0026】
すなわち、曲線の形状が複雑な温度分布曲線140に対して、コンクリート110の温度が、これに沿うように制御するためには、細かな冷媒の流量および温度の制御が必要となり、例えば、ダムや巨大建造物としてのコンクリート(マスコンクリート)においては、細かな制御に対して、コンクリート110の温度の変化が必ずしも敏感に変化するものではないため、制御が難しくなる傾向にある。つまり、大量のコンクリート110の温度をセンシティブに制御することは、少量のコンクリートの温度を制御することに比べて非常に困難である。
【0027】
そのため、コンクリート養生装置100は、上限温度と下限温度との間で、一定の温度を維持するように、冷媒の流量および温度を制御し、維持していた温度が、ある時間における上限温度と同じ温度となると、コンクリート110の温度が、当該ある時間における下限温度になるようにする。そして、コンクリート養生装置100は、以降の時間において、当該下限温度を維持するようにする。その後、コンクリート養生装置100は、維持した下限温度が、別のある時間における上限温度と同じ温度となると、コンクリート110の温度が、当該別のある時間における下限温度になるようにする。そして、コンクリート養生装置100は以降の時間において、当該下限温度を維持するようにする。そして、コンクリート養生装置100は、上述の制御を、コンクリート110の冷却終了時間まで繰り返す。コンクリート養生装置100は、このように、コンクリート110の温度を管理する。なお、コンクリート温度の管理の詳細については後述する。
【0028】
次に、図2を参照して、コンクリート養生装置100の構成について説明する。コンクリート養生装置100は、推定部201、設定部202、生成部203および制御部204を有する。
【0029】
推定部201は、コンクリート110を打設してからの養生時間に伴うコンクリート110の温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する。3次元の熱伝導方程式は、例えば、以下の式(1)のようになる。
【0030】
【数1】
【0031】
そして、3次元の現象は、1次元の現象から予測できるので、推定部201は、式(1)の3次元熱伝導方程式を1次元熱伝導方程式に変換して、コンクリート110の温度推移を示す温度分布データを推定する。
【0032】
設定部202は、推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線140において、ピーク温度に到達した時点以降の時間について、温度分布曲線140に対して所定温度高い上限温度、および、温度分布曲線140に対して所定温度低い下限温度を設定する。
【0033】
生成部203は、設定された上限温度および下限温度に基づいて、上限温度分布曲線151および下限温度分布曲線152を生成する。
【0034】
制御部204は、推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線140に基づいて、打設されたコンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122に供給する冷媒の流量および温度を制御する。つまり、制御部204は、生成された上限温度分布曲線151および下限温度分布曲線152の間で推移するように、冷媒の流量および温度を制御する。以下、ピーク時間(t)の到達の前後に分けて、制御部204による制御を説明する。
【0035】
<ピーク時間(t)以前の制御>
制御部204は、まず、コンクリート110の打設後、図1Bに示したグラフ150の温度分布曲線140により示されるピーク温度(T)に到達する時点(ピーク時間t)以前の時間(0~tの間)においては、冷媒を最大流量および冷媒の下限温度となるように制御して、冷却パイプ122に供給する。すなわち、ピーク時間(t)以前の時間帯においては、コンクリート110は、冷媒供給装置120の最大冷却能力で冷却される。つまり、コンクリート110の打設直後の時間帯においては、未反応のコンクリート110が大量に残存しているため、これらのコンクリート110が、矢継ぎ早に反応し、発熱するため、冷媒供給装置120の最大能力でコンクリート110を冷却する。
【0036】
<ピーク時間(t)以降の制御>
そして、推定部201により推定された温度分布データ(温度分布曲線140)において、コンクリート110の温度がピーク温度(T)に到達した時点(ピーク時間t)以降の時間(ピーク時間t~)においては、制御部204は、コンクリート110の温度が所定温度範囲の温度となるように、冷媒の流量および温度を制御する。すなわち、制御部204は、コンクリート110の温度が温度推移線153に従うように、冷媒の流量および温度を制御する。
【0037】
まず、制御部204は、コンクリート110の温度が、上限温度および下限温度の間の第1温度(T)を維持するように、冷媒の流量および温度を制御する(図1B参照)。そして、制御部204は、第1温度(T)に維持されたコンクリート温度が、第1時間(t)において、上限温度分布曲線151と交わる。そのため、第1時間(t)以降の時間帯において、コンクリート110の温度が第1温度(T)を超えないようにしなければならない。
【0038】
したがって、制御部204は、第1時間(t)において、温度推移線153が、下限温度分布曲線152と交わる温度(下限温度)である第2温度(T)にコンクリート110の温度を維持するように、冷媒の流量および温度を制御する。
【0039】
そして、制御部204は、コンクリート110の温度が第2温度(T)を維持するように、冷媒の制御を行うが、しばらくすると、第1時間(t)以降の第2時間(t)において、温度推移線153が上限温度分布曲線151と交わる。そのため、第2時間(t)以降の時間帯において、コンクリート110の温度が第2温度(T)を超えないようにしなければならない。
【0040】
したがって、制御部204は、第2時間(t)において、温度推移線153が、下限温度分布曲線152と交わる温度(下限温度)である第3温度(T)にコンクリート110の温度を維持するように、冷媒の流量および温度を制御する。
【0041】
そして、第3温度(T)を維持するように冷媒の流量および温度を制御してしばらくすると、再び上限温度分布曲線151と交わるので、制御部204は、以後の時間帯において、以上の制御をコンクリート110の冷却終了時間(t)まで繰り返す。以上のように、制御部204は、コンクリート110の温度が、温度推移線153に従うように、冷媒の流量および温度を制御する。
【0042】
図3は、本実施形態に係るコンクリート養生装置100が有する温度テーブル301の一例を示す図である。温度テーブル301は、経過時間311に関連付けて上限温度312および下限温度313を記憶する。経過時間311は、コンクリート110を打設してからの時間である。上限温度312は、所定時間帯(または所定時間)におけるコンクリート110に対して許容される温度の上限である。下限温度313も同様に、所定時間帯(または所定時間)におけるコンクリート110に対して許容される温度の下限である。そして、コンクリート養生装置100は、温度テーブル301を参照して、コンクリート110の温度を管理する。
【0043】
図4を参照して、コンクリート養生装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2のコンクリート養生装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0044】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。温度データ441は、打設したコンクリート110に設置された温度センサ130から取得したコンクリート110の実測温度である。冷媒データ442は、冷却パイプ122に供給する冷媒の流量や温度などのデータである。上限下限温度データ443は、所定時間帯(または所定時間)における、コンクリート110に対して許容される温度の上限値および下限値のデータである。
【0045】
送受信データ444は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域445を有する。
【0046】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、温度テーブル301を格納する。温度テーブル301は、図3に示した、経過時間311と上限温度312などとの関係を管理するテーブルである。
【0047】
ストレージ450は、さらに、推定モジュール451、設定モジュール452、生成モジュール453および制御モジュール454を格納する。推定モジュール451は、コンクリート110を打設してからの養生時間に伴うコンクリート110の温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定するモジュールである。設定モジュール452は、推定された温度分布データをプロットした温度分布曲線140において、ピーク温度(Tp)に到達した時点以降の時間について、温度分布曲線140に対して、所定温度高い上限温度および所定温度低い下限温度を設定するモジュールである。生成モジュール453は、設定された上限温度および下限温度に基づいて、上限温度分布曲線151および下限温度分布曲線152を生成するモジュールである。制御モジュール454は、コンクリート110の温度が、上限温度分布曲線151および下限温度分布曲線152の間で推移するように、冷媒の流量および温度を制御するモジュールである。これらのモジュール451~454は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域445に読み出され、実行される。制御プログラム455は、コンクリート養生装置100の全体を制御するためのプロブラムである。
【0048】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート養生装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0049】
図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート養生装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2のコンクリート養生装置100の各機能構成を実現する。
【0050】
ステップS501において、推定部201は、コンクリート110を打設してからの養生時間に伴うコンクリート温度の温度分布データについて、熱伝導方程式を用いて推定する。ステップS503において、設定部202は、温度分布データをプロットした温度分布曲線140に対して、所定温度高い上限温度および所定温度低い下限温度を設定する。ステップS505において、生成部203は、設定された上限温度および下限温度に基づいて、上限温度分布曲線151および下限温度分布曲線152を生成する。
【0051】
ステップS507において、制御部204は、上限温度および下限温度の間の第1温度(T)を維持するように、冷媒の流量および温度を制御する(図1B参照)。ステップS509において、制御部204は、コンクリート110の温度がピーク温度(T)に到達した時点(ピーク時間t)以降の第1時間(t)において、第1温度(T)が第1時間(t)における上限温度と同じ温度となったか否かを判定する。第1時間における上限温度と同じ温度となっていないと判定した場合(ステップS509のNO)、制御部204は、ステップS507に戻る。第1時間における上限温度と同じ温度となったと判定した場合(ステップS509のYES)、制御部204は、ステップS511へ進む。
【0052】
ステップS511において、制御部204は、コンクリート110の温度を第1時間(t)における下限温度である第2温度(T)に維持するように、冷媒の流量および温度を制御する。ステップS513において、第1時間(t)以降の第2時間(t)において、第2温度(T)が第2時間(t)における上限温度と同じ温度となったか否かを判定する。第2時間(t)における上限温度と同じ温度となっていないと判定した場合(ステップS513のNO)、制御部204は、ステップS511へ戻る。第2時間における上限温度と同じ温度となっていると判定した場合(ステップS513のYES)、制御部204は、ステップS515へ進む。
【0053】
ステップS515において、制御部204は、第2時間(t)以降の時間において、コンクリート110の温度を第2時間(t)における下限温度である第3温度(T)に維持するように、冷媒の流量および温度を制御する。
【0054】
そして、ステップS517において、制御部204は、コンクリート110の冷却終了時間(t)に到達したか否かを判定する。冷却終了時間(t)に到達していないと判定した場合(ステップS517のNO)、制御部204は、ステップS515以降の処理を繰り返す。つまり、制御部204は、ステップS509~S511、ステップS515~S515の処理を繰り返す。冷却終了時間(t)に到達したと判定した場合(ステップS517のYES)、制御部204は、処理を終了する。
【0055】
本実施形態によれば、コンクリートの温度が、コンクリート温度の温度分布データに対する上限温度および下限温度の間の温度となるように、冷媒の流量および温度を制御するので、簡易、簡便な制御方法により、より確実にコンクリートを冷却させることができる。
【0056】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0057】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5