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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150702
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電子レンジ調理袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053417
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】殿柿 智也
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BB12
3E013BC14
3E013BD13
3E013BE01
3E013BF06
3E013BF26
3E013BF39
(57)【要約】
【課題】収容部に食材等を収容して電子レンジで加熱調理した後、それを再度電子レンジで温めて使用することが可能な電子レンジ調理袋を提供する。
【解決手段】本発明の電子レンジ調理袋は、シート部材3,4を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部Sと、収容部Sを構成する一方の側面の中間位置において、シート部材の一部を重合し、側面から突出するように形成される重合部7と、を有する。重合部7は、両側部7aが溶着されると共に、両側部間の先端側に、所定間隔をおいて複数の溶着部12が断続的に形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部と、
前記収容部を構成する一方の側面の中間位置において、前記シート部材の一部を重合し、前記側面から突出するように形成される重合部と、を有し、
前記重合部は、両側部が溶着されると共に、前記両側部間の先端側に、所定間隔をおいて複数の溶着部が断続的に形成されていることを特徴とする電子レンジ調理袋。
【請求項2】
前記重合部には、前記両側部間の基端側で前記収容部と接続される領域に亘って、一部に開口を具備するシール部が、前記複数の溶着部と間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理袋。
【請求項3】
前記開口は、前記シール部の中央領域に形成されており、
前記シール部は、収容部側の溶着ラインが前記複数の溶着部に向けて接近するようにテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子レンジ調理袋。
【請求項4】
前記複数の溶着部の一部は、前記開口が形成される領域と対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子レンジ調理袋。
【請求項5】
シート部材を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部と、
前記収容部を構成する一方の側面の中間位置において、前記シート部材の一部を重合し、前記側面から突出するように形成される重合部と、を有し、
前記重合部は、両側部が溶着されると共に、前記両側部間の先端側に、所定間隔をおいて複数の溶着部が断続的に形成されており、
前記重合部には、前記両側部間の基端側で前記収容部と接続される領域に亘って、易剥離性シール部が設けられており、
前記易剥離性シール部は、前記複数の溶着部と間隔をおいて形成されていることを特徴とする電子レンジ調理袋。
【請求項6】
前記易剥離性シール部の一部には、易通蒸部が形成されており、
前記複数の溶着部の一部は、前記易通蒸部が形成される領域と対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子レンジ調理袋。
【請求項7】
前記複数の溶着部は、前記重合部の先端縁を断続的に溶着するように形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子レンジ調理袋。
【請求項8】
前記複数の溶着部は、前記重合部の両側部間で等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電子レンジ調理袋。
【請求項9】
前記シート部材には、前記収容部を開閉するチャックが形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電子レンジ調理袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に食材等を収容して電子レンジで加熱処理可能な電子レンジ調理袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の食材等を収容し、これを電子レンジで加熱、調理することが可能な電子レンジ調理袋(以下、調理袋とも称する)が知られている。このような調理袋は、あらかじめ食材を冷凍状態で収容して冷凍食品として構成したり、ユーザが好みの食材を収容して電子レンジで加熱、調理できるように袋単体で構成したものがある。
【0003】
前記調理袋に食材を入れて電子レンジで加熱すると、内圧が高まって調理袋が破裂してしまうので、調理袋の一部に、内圧が高まった状態で通蒸を可能にする通蒸機構を設けることが知られている。例えば、特許文献1には、調理袋の側面の一部に、収容部の内圧が高まったときに容易に剥離する重合部(合掌部)を形成した調理袋が開示されている。前記重合部は、イージーオープンフィルムを介在した易剥離性シールで構成されており、更に、重合部の先端の中央部に略半楕円形状の易通蒸部を形成することで、内圧が高まった際、その部分で容易に剥離させて通蒸させるように構成されている。
【0004】
また、上記したような重合部を有する調理袋には、ユーザが購入した後、好みの食材を収容し、これを電子レンジで加熱して調理するものも知られている。このような調理袋には、開閉可能なチャックが形成されており、ユーザはチャックを開けて好みの食材・調味料を充填し、チャックを閉じて電子レンジで加熱、調理することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-185777
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した調理袋は、中身の食材を十分に温める或いは調理するため、通蒸機構からの通蒸後も電子レンジ加熱が続けられることが多い。通蒸機構は、上記したように、イージーオープンフィルムを介在する等、易剥離性シールで構成されているため、一旦通蒸がされてしまうと、そのまま通り道が広がった状態を維持してしまい、外気が流入し易い状態になってしまう。このため、電子レンジ加熱終了後は、調理袋が閉塞した状態を保つことができない。
このように、従来の調理袋は、一度、電子レンジで使用してしまうと、上記したように通蒸機構が開いた状態を維持することから、その後の使用では、中身が漏れてしまう、外気が袋内部に入ってしまう等、保存し直して再度、電子レンジで温めて使用する、といった使い方ができない。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、収容部に食材等を収容して電子レンジで加熱調理した後、それを再度電子レンジで温めて使用することが可能な電子レンジ調理袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子レンジ調理袋は、シート部材を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部と、前記収容部を構成する一方の側面の中間位置において、前記シート部材の一部を重合し、前記側面から突出するように形成される重合部と、を有し、前記重合部は、両側部が溶着されると共に、前記両側部間の先端側に、所定間隔をおいて複数の溶着部が断続的に形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記した電子レンジ調理袋は、電子レンジで加熱処理した際に収容部の内圧が高まると、重合部に圧力が作用する。重合部には、所定間隔をおいて複数の溶着部が断続的に形成されているため、溶着部間の隙間を介して通蒸することが可能となる。この重合部は、易剥離性シールでないことから、一旦通蒸されても、そのまま通り道が広がった状態が維持されることはなく、外気の流入を抑止することが可能となる。すなわち、電子レンジで加熱して内圧が高まった際、重合部で一旦通蒸しても、通り道が広がった状態を維持することがないので、外気の流入を抑止することができると共に略全ての内部蒸気が抜けることができ、これにより、1度目の加熱処理の後、そのまま冷凍保存して2度目の加熱使用を行なうことが可能となる。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る電子レンジ調理袋は、シート部材を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部と、前記収容部を構成する一方の側面の中間位置において、前記シート部材の一部を重合し、前記側面から突出するように形成される重合部と、を有し、前記重合部は、両側部が溶着されると共に、前記両側部間の先端側に、所定間隔をおいて複数の溶着部が断続的に形成されており、前記重合部には、前記両側部間の基端側で前記収容部と接続される領域に亘って、易剥離性シール部が設けられており、前記易剥離性シール部は、前記複数の溶着部と間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記したように、重合部に易剥離性シール部が設けられた構成であっても良い。このような構成では、重合部全てを易剥離性シール部で構成するのではなく、重合部の先端側に、所定間隔をおいて複数の溶着部を断続的に形成すると共に、基端側に、前記収容部と接続される領域に亘って、易剥離性シール部を設けておけば良い。このような構成では、収容部の内圧が高まって易剥離性シール部が通蒸しても、それよりも先端側にある複数の溶着部が閉塞性を維持することが可能となるので、外気の流入を抑止することができ、これにより、1度目の加熱処理の後、そのまま冷凍保存して2度目の加熱使用を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収容部に食材等を収容して電子レンジで加熱調理した後、それを再度電子レンジで温めて使用することが可能な電子レンジ調理袋が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電子レンジ調理袋の第1の実施形態を示す斜視図。
図2図1に示す電子調理袋の分解斜視図。
図3図1に示す電子調理袋の平面図(溶着部分を斜線で示す)。
図4】電子調理袋の第2の実施形態を示す平面図(溶着部分を斜線で示す)。
図5】電子調理袋の第3の実施形態を示す平面図(溶着部分を斜線で示す)。
図6】電子調理袋の第4の実施形態を示す平面図(溶着部分を斜線で示す)。
図7】第4の実施形態において、通蒸性と閉塞性のバランスを検証するに際して重合部の構成(その1)を示す平面図であり、(a)は易通蒸部に対応する位置に溶着部を設けた構成を示す図、(b)は易通蒸部に対応する位置に溶着部を設けない構成を示す図。
図8】第4の実施形態において、通蒸性と閉塞性のバランスを検証するに際して重合部の構成(その2)を示す平面図であり、(a)は易通蒸部に対応する位置に溶着部を設けた構成を示す図、(b)は易通蒸部に対応する位置に溶着部を設けない構成を示す図。
図9】第4の実施形態において、通蒸性と閉塞性のバランスを検証するに際して重合部の構成(その3)を示す平面図であり、(a)は易通蒸部に対応する位置に溶着部を設けた構成を示す図、(b)は易通蒸部に対応する位置に溶着部を設けない構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子レンジ調理袋(調理袋)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1から図3は、本発明に係る電子レンジ調理袋の第1の実施形態を示す図であり、図1は斜視図、図2は電子調理袋の分解斜視図、図3は平面図(溶着部分を斜線で示す)である。
本実施形態の調理袋1は、略矩形状のシート部材3と、シート部材3と略同じ形状で上下に分割された分割シート4A,4Bで構成されるシート部材4とを重ね合わせて、周囲を溶着(溶着部分を斜線で示す)することで構成される袋状の収容部Sを備えた本体2を有している。図1に示す調理袋1は、両側部2a、下端部2bを溶着すると共に上端部2cを未溶着とし、上端側に収容部Sを封止/開封が可能な公知のチャック5を取着した構成となっている。このような調理袋1は、ユーザが食材や調味料等を収容部Sに充填して電子レンジで調理することができる。なお、調理袋1は、例えば、上端部2cを未溶着としておき、本体2の収容部Sに食材などの収容物を充填した後、上端部2cを溶着し、食材入りの冷凍食品(食材が収容された電子レンジ調理袋)として構成することも可能である。また、本実施形態の本体2は、いわゆる三方体として構成されているが、本発明は、底部を有する自立袋、ガゼット袋、ピロー袋として構成しても良い。
【0016】
前記シート部材3,4は、本体2の側面を構成している。前記収容部Sを形成する本体2の一方の側面には、その中間位置(本実施形態ではやや上方寄りとしている)に、シート部材の一部を幅方向に亘って重合し、側面から突出するように構成された重合部(合掌部)7が形成されている。この重合部7は、例えば、上記したシート部材4を構成する分割シート4Aの下端と、分割シート4Bの上端をそれぞれ同じ長さで屈曲してそれぞれ屈曲部4a,4bを形成し、これらの屈曲部4a,4bを面接させて、その両側部7a,7aを溶着する(ヒートバー等で熱溶着する)ことで形成することが可能である。
【0017】
前記重合部7については、調理袋1を作成する際、一般的に公知の手法によって形成することが可能であり、重合部7は、収容部Sの内圧が高まった際、通蒸する通蒸機構10を備えている。
【0018】
前記シート部材3,4については、電子レンジで加熱処理した際、必要な耐熱性を有する食品用包装材料(プラスチック材料)として使用されるものであれば、特に限定されることはない。シート部材3,4を構成する基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ポリオレフィン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の二軸延伸又は無延伸樹脂フィルム、ポリプロピレン/エチレン-ビニルアルコール共重合体共押出し樹脂フィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)などを用いることが可能である。また、その基材の内層側には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-αオレフィン共重合体等の熱溶融性樹脂によるシーラント層が積層されており、シート部材同士を溶着可能にしている。
【0019】
前記シート部材3,4については、更に多層構造の複合シート材を用いることが可能であり、その積層構造については、収容部Sに収容される収容物に応じて適宜選択することができ、特定の積層構造や構成材料に限定されることはない。例えば、ガスバリア性を有するフィルムシートや、光バリア性を有するフィルムシートを積層しても良い。そして、上記した積層構造については、各種公知の手法、例えば、押出機などを用いて、溶融した樹脂を製膜して、積層体状に層形成したり、あらかじめフィルム状に形成したものをドライラミネーション等によるラミネート法を用いて作成することが可能である。
【0020】
本実施形態の調理袋1は、縦方向の長さHが195mm、横方向の長さLが200mmに形成されており、重合部7の突出長さH1は、25mmで形成されている。前記重合部7は、分割シート4Aの下端の屈曲部4a及び分割シート4Bの上端の屈曲部4bが重なった部分であり、本体2の側面の横方向に亘って形成されており、その両側部7aが溶着されている。また、重合部7には、両側部7a,7a間に所定間隔をおいて複数の溶着部(所定の形状を有する溶着スポット)12が断続的に形成されている。
【0021】
これらの溶着部12は、重合部7の先端側に形成されていれば良いが、本実施形態の各溶着部12は、横方向に直線状に配列され、重合部7の先端縁7Aを断続的に溶着するように形成されている。具体的に各溶着部12は、矩形形状で同一の大きさ(横方向の長さW2が10mm、縦方向の長さH2が5mm)で等間隔に形成されており、隣接する溶着部間の隙間G(10mmの隙間)が通蒸機能を発揮するようになっている。このように、断続的に形成される溶着部12によって、隙間部分で一旦通蒸しても、そのまま通り道が広がった状態を維持することなく、各溶着部12の溶着力によって隙間Gが閉塞作用を受け、外気の流入を抑止する機能を発揮することが可能となる。
【0022】
また、前記重合部7には、前記両側部7a,7a間の基端側で前記収容部Sと接続される領域(収容部Sとの接続ライン7B)に亘って、一部に開口15aを具備するシール部15が、複数の溶着部12と間隔(縦方向に10mm程度の間隔)をおいて形成されている。本実施形態のシール部15は、両側部7a,7a側での縦方向の長さH3が10mm程度に形成されており、開口15aは、前記シール部15の中央領域で、その幅W3が30mm程度に形成されている。
【0023】
このようなシール部15を形成することで、通蒸した後、外気が収容部S内へ流入することを効果的に防止することができ、通蒸性、及び、閉塞性を確保することが可能となる。なお、本実施形態のシール部15は、先端側の溶着ライン15Aが前記接続ライン7Bと平行に形成され、かつ、収容部側の溶着ライン15Bが前記複数の溶着部12に向けて接近するようにテーパ状に形成されており、通蒸し易く外気が流入し難い形状に構成されている。
【0024】
上記した調理袋1によれば、電子レンジで加熱して収容部Sの内圧が高まった際、開口15a及び溶着部12の間の各隙間Gを介して通蒸することができる。そして、各隙間Gで一旦通蒸しても、横方向に断続的に形成された溶着部12によって、通り道がそのまま広がった状態になることはなく、重合部7の先端縁7Aでは、閉塞性を発揮して外気の流入を抑止することが可能となる。すなわち、外気の流入が抑止され、収容部内の略全ての内部蒸気が抜けることが可能となり、1度目の加熱処理の後、そのまま冷凍保存して2度目の加熱使用を行なうことが可能となる。
【0025】
例えば、収容部S内の食材を一旦、加熱してマイクロ波による殺菌処理を行ない、中身を取り出すことなくそのまま冷凍保存しても外気が流入することが抑止されるため、再び、電子レンジで加熱調理することが可能となる。或いは、本実施形態の構成では、チャック5を開封して収容部Sに食材を充填した後、チャック5を閉塞し、この状態で加熱調理して中身の一部を取り出した後、残りをそのまま冷凍保存して、再度、電子レンジで加熱調理することも可能となる。
【0026】
上記したような調理袋1は、通蒸し易く、かつ外気が流入し難く構成されることが好ましい。本実施形態のシール部15は、収容部側の溶着ライン15Bが複数の溶着部12に向けて接近するようにテーパ状に形成されているので、開口15aに向けて蒸気が流れ易く通蒸し易いと共に、先端側の溶着ライン15Aは前記接続ライン7Bと平行に形成されているため、外気が収容部内に流入し難くすることができる。
【0027】
特に、本実施形態では、前記複数の溶着部12の一部(溶着部12aで示す)を、開口15aが形成される領域と対向する位置に形成したことで、外気を流入し難くすることができる(この作用効果については後述する)。また、各溶着部12は、同一の大きさで等間隔に形成されており、重合部7の先端縁7Aを断続的に溶着した状態になっているため、通蒸した後の先端縁7Aの閉塞性を高めることが可能となる。
【0028】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
以下の実施形態では、第1の実施形態と同様な構成については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0029】
図4は、電子調理袋の第2の実施形態を示す平面図(溶着部分を斜線で示す)である。
この実施形態では、重合部7の基端側に形成されるシール部15について、先端側の溶着ライン15A及び収容部側の溶着ライン15Bが、共に重合部7の前記接続ライン7Bと平行に形成されている。この場合、シール部15の縦方向の長さH3は10mm程度に形成されている。
【0030】
このような構成では、第1の実施形態と比較すると、収容部Sの内圧が高まった際に、テーパが形成されていないことで蒸気が抜け難くなることから、耐圧強度を高くすることが可能となる。
【0031】
図5は、電子調理袋の第3の実施形態を示す平面図(溶着部分を斜線で示す)である。
この実施形態では、重合部7の基端側に、上記した実施形態のようなシール部15を形成しない構成としている。このような構成では、未シール領域が多くなるため、収容部の内圧が高まった際、良好な通蒸性を得ることが可能となる。
【0032】
図6は、電子調理袋の第4の実施形態を示す平面図(溶着部分を斜線で示す)である。
上記した実施形態では、調理袋の一方の側面に形成される重合部7について、易剥離性シールにしないことを特徴としたが、通蒸後に重合部7の先端側が開いた状態を維持しなければ、重合部にそのような易剥離性シール部が設けられていても良い。すなわち、重合部7の基端側に、上記したシール部15に替えて、例えばイージーオープンフィルムを介在した易剥離性シール部20(格子状に示す部分)を設けておき、その先端側に、上記した実施形態と同様、所定の隙間をおいて溶着部12を断続的に形成した構成であっても良い。
【0033】
易剥離性シール部20は、収容部の内圧が高まった際に容易に剥離できるように、剥離強度が低い易剥離層で構成され、公知のように、例えば、ポリオレフィン系の樹脂によるフィルムテープ(イージーオープンフィルム)を介在して形成したり、或いは、そのような樹脂を積層して構成することが可能である。
この場合、本実施形態では、重合部7の突出量は、25mmで形成されており、各溶着部12は、上記した実施形態と同様、横方向に直線状に配列され、重合部7の先端縁7Aを断続的に溶着するように形成されている。各溶着部12は、同一の大きさ(横方向の長さW2が10mm、縦方向の長さH2が5mm)で等間隔に形成されており、各溶着部間の隙間が10mmとなるように形成されている。また、易剥離性シール部20の縦方向の長さH3は17mm程度に形成されている。
【0034】
上記した易剥離性シール部20については、収容部の内圧が高まった際に通蒸し易いように、一部に易通蒸部21を形成しておくことが好ましい。
本実施形態の易通蒸部21は、易剥離性シール部20の中央領域に形成されており、例えば、収容部側に切欠き(未溶着部)21aを形成すると共に、先端側の対応する位置に切欠き(未溶着部)21bを形成することで、中央領域に幅狭の閉塞部(連結部)21cが形成されている。
【0035】
このような構成では、内圧が高まると、閉塞部21cに圧力が作用して、この部分が剥離して通蒸し、上記した実施形態と同様、溶着部12の間の各隙間を介して通蒸するようになる。そして、上記した実施形態と同様、各隙間で一旦通蒸しても、横方向に断続的に形成された溶着部12によって、通り道が広がった状態を維持することはなく、重合部7の先端縁7Aでは、閉塞性を発揮して外気の流入を抑止することが可能となる。
【0036】
ここで、上記した第1の実施形態(図3の構成)、第2の実施形態(図4の構成)、第3の実施形態(図5の構成)及び第4の実施形態(図6の構成)に係る調理袋についてそれぞれサンプルを作成し、通蒸性、閉塞性及び耐圧強度性について行った試験結果について説明する。
【0037】
各調理袋のサンプルを構成するフィルムシートは、ポリアミド系の樹脂(Ny♯15)に、シーラント層としてポリエチレン系の樹脂(LLDPE♯60)を積層したものを使用した。また、第4の実施形態では、易剥離性シール部20として、ポリオレフィン系の樹脂によるフィルムテープを介在した。
各サンプルには、それぞれ水100gを封入し、600W条件で電子レンジで加熱処理を行ない、通蒸機構10からの蒸気抜けを確認してから追加で1分間の電子レンジ加熱処理を行ない、加熱を停止した。この状態で、各サンプルの通蒸性と閉塞性について3段階(〇△×)で評価した。
【0038】
通蒸性に関しては、蒸気口(隙間)から通蒸した際の通蒸音が小さいものを〇、通蒸音が大きいものを△、破袋したものを×で評価した。また、閉塞性については、殆どの空気が抜け、シートと液面の接触個所が多いものを〇、一部の空気が残ったもの(フィルムが広がって閉塞し難い)を△、全く閉塞しないもの(膨らんだ状態が維持されている)を×で評価した。
さらに、各サンプルについては、耐圧強度についても試験を行なった。この耐圧強度試験については、各サンプルを90℃の雰囲気下に1分間投入後に、1.0L/minの条件でエアーを送入し、内圧が抜けるまでの最大圧で評価した。そして、この耐圧強度試験については、一旦、通蒸した後に、同一の条件で2回目を行なった。
以下、その評価試験の結果を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
上記の試験結果から、図5に示す第3の実施形態では、重合部7の未シール部分が広いため通蒸性は良好であるものの、広い未シール部分によって蒸気が抜けて開いた状態を維持し易い(外気が流入し易い)傾向となってしまい、減圧による閉塞性については劣るという結果が得られた。すなわち、2回目の使用については、あまり適さないという結果が得られた。ただし、耐圧強度については、低い値であるものの1回目及び2回目とも略同等の結果が得られた。
【0041】
これに対し、図4に示す第2の実施形態では、重合部7の基端側にシール部15を形成したことで、通蒸後に空気が流入し難くなり、第3実施形態よりも高い閉塞性を発揮することができた(〇と△の間の評価)。また、耐圧強度については、高い値で1回目及び2回目とも略同等の結果が得られた。この結果、電子レンジ加熱時の通蒸に要する内圧が高くなるものと予測される。さらに、図3に示す第1の実施形態では、シール部15にテーパを形成することで、第2実施形態と比較して、更に良好な通蒸性、閉塞性を維持しながら、第3実施形態と同様、1回目及び2回目とも略同等の耐圧強度が得られた。
【0042】
また、図6に示す第4の実施形態では、第2の実施形態と同様、通蒸性と閉塞性についてはバランスの良い結果が得られたが、耐圧強度については、1回目の通蒸と2回目の通蒸の挙動が異なる結果が得られた。すなわち、1回目の通蒸では、易剥離性シール部20がシールしており、密封状態が維持されて高い耐圧強度が得られたが、2回目の通蒸では、既に易剥離性シール部20が剥離しており、その状態が維持されてしまうことから低い耐圧強度となった。このため、複数回の使用については、同等の耐圧強度が得られないことから、第1の実施形態及び第2の実施形態と比較して、通蒸性、閉塞性、耐圧強度についてのバランスが多少、劣る結果となった。
【0043】
以上の試験結果によれば、第1及び第2の実施形態の調理袋のように、重合部7の先端側、特に先端縁7Aを断続的に閉塞するように溶着部12を連続的に形成し、かつ、収容部と接続される領域(重合部の基端位置)に亘って、一部に開口15aを具備するシール部15を形成することが好ましい構成と考えられる。
【0044】
次に、重合部7において、断続的に形成される溶着部の構成と通蒸性・閉塞性とのバランスを検証した結果について、図7から図9を参照して説明する。
この検証に使用したサンプルは、第4の実施形態と同様、重合部7の基端側に易剥離性シール部20を形成すると共に、その中央部分に易通蒸部21を形成した構成となっている。また、溶着部12については、重合部7の先端側に断続的に形成し、隣接する溶着部の隙間Gの間隔を10mm、縦方向の長さH2を5mmとして全てのサンプルで同一にしており、横方向の長さW2については、図7のサンプルでは10mm、図8のサンプルでは20mm、図9のサンプルでは30mmとした。
【0045】
図7(a)は、断続的に形成される溶着部12について、易通蒸部21の開口となる領域(閉塞部21cが形成される領域)と対向する位置に溶着部を形成した構成(そのような溶着部を符号12aで示す)である。また、図7(b)は、断続的に形成される溶着部12について、易通蒸部21の開口となる領域(閉塞部21cが形成される領域)と対向する位置に溶着部を形成しない構成(溶着部12bは、開口となる領域からずれて形成され、閉塞部21cが剥離した際、溶着部12b間の隙間から直接通蒸できる構成)である。
【0046】
このようなサンプルに同量の水を充填し、同一の条件下で、電子レンジで加熱したところ、通蒸性・閉塞性のバランスは、図7(a)の構成が良好であるという結果が得られた。これは、開口領域と対向する位置に溶着部12aを形成することで、通蒸後に、溶着部12aが外気の流入を効果的に抑制したためと考えられる。
【0047】
また、図8(a)(b)のように、溶着部の長さを20mmにした構成、及び、図9(a)(b)のように、溶着部の長さを30mmにした構成であっても、図7に示した構成と同様、通蒸性・閉塞性のバランスは、図8(a)、図9(a)の構成が良好であるという結果が得られた。すなわち、重合部の先端側に断続的に溶着部を形成する構成においては、収容部の内圧が高まって通蒸がされる開口領域と対向する位置(通蒸を妨げる位置)に溶着部を形成した方が、外気の流入を抑制して通蒸性・閉塞性のバランスの向上が図れるようになる。そして、図7図8図9の各構成を相互に比較、検証したところ、溶着部の長さW2については、短い方が良好な結果が得られた。
【0048】
以上の検証結果によれば、重合部7に断続的に溶着部12を形成するに際しては、通蒸部の開口の範囲内に溶着部の少なくとも一部が存在するように構成し、かつ、重合部の長手方向に沿って、その長さを短くした溶着部を多数形成するほうが好ましいと考えられる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態の構成に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。
前記調理袋1は、その大きさや形状について種々変形することが可能であり、重合部7に形成される溶着部12についても、その大きさ、形状について種々変形することが可能である。また、溶着部12は、直線状に配列されなくても良く、溶着部間の隙間や形成位置についても適宜、変形することが可能である。さらに、シール部15の形状、開口が形成される位置やその大きさ等についても適宜、変形することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 調理袋(電子レンジ調理袋)
2 本体
3,4,4A,4B シート部材
7 重合部
12,12a,12b 溶着部
15 シール部
15a 開口
20 易剥離性シール部
21 易通蒸部
S 収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9