(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150748
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】急速充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20220929BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220929BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220929BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02J7/04 N
H02J7/00 P
H02J7/04 C
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053489
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祥一
(72)【発明者】
【氏名】金丸 就吾
(72)【発明者】
【氏名】原澤 紀雄
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CB02
5G503FA06
5G503GC04
5H030AA02
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF27
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】次の急速充電を開始できるまでの待ち時間を知らせることができる。
【解決手段】交流電力を直流電力に変換して電流を出力する電力変換部と、走行用バッテリに電気的に接続されるコネクタを有するケーブルと、ケーブルの温度を検出する、温度センサと、表示部と、温度が予め定められた閾値温度未満である場合に、ケーブルの定格電流を上回る電流を電力変換部に出力させる制御を開始可能であり、温度が予め定められた閾値温度以上である場合に、温度が低下して閾値温度未満になるまでの予測時間を表示部に表示させる制御部と、を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された走行用バッテリを急速充電するための急速充電装置であって、
交流電力を直流電力に変換して、電流を出力する、電力変換部と、
前記走行用バッテリに電気的に接続されるコネクタを有し、前記電流を前記コネクタを介して前記走行用バッテリへ伝送する、ケーブルと、
前記ケーブルの温度を検出する、温度センサと、
文字又は画像を表示する、表示部と、
前記温度が予め定められた閾値温度未満である場合に、前記ケーブルの定格電流を上回る電流を前記電力変換部に出力させる制御を開始可能であり、前記温度が予め定められた閾値温度以上である場合に、前記温度が低下して前記閾値温度未満になるまでの予測時間を前記表示部に表示させる、制御部と、
を備える、
ことを特徴とする急速充電装置。
【請求項2】
前記制御部は、
現在の前記温度と前記閾値温度との差を、直近の、予め定められた単位時間での温度変化量で除することにより、前記予測時間を算出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の急速充電装置。
【請求項3】
前記制御部は、
現在の前記温度と前記閾値温度との差を、直近の、予め定められた単位時間での温度変化量で除し、更に、予め定められた定数で除する又は乗ずることにより、前記予測時間を算出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の急速充電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記単位時間毎に、前記予測時間を算出し、前記予測時間を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の急速充電装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記温度が前記閾値温度以上から前記閾値温度未満に低下したら、前記定格電流を上回る電流を前記電力変換部に出力させる制御を開始可能である、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の急速充電装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記温度が予め定められた閾値温度以上である場合に、前記定格電流以下の電流を前記電力変換部に出力させる制御を開始可能である、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の急速充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)及びプラグインハイブリッド自動車(PHV)に搭載されている走行用バッテリを充電する装置として、急速充電装置が用いられている(非特許文献1参照)。急速充電装置は、交流電力の供給を系統電源から受けて、直流電力を車両に出力する。
【0003】
特許文献1には、充電待ち時間を表示する充電スタンドが記載されている。特許文献2には、充電終了目安時間を表示する充電システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-24334号公報
【特許文献2】特開2014-236582号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一般社団法人電動車両用電力供給システム協議会、“EV・PHV用普通充電器のご紹介”、[online]、2019年9月、[令和2年12月15日検索]、インターネット(URL:https://evpossa.or.jp/download/pdf/jyudenki_setsumei.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
急速充電装置は、出力電流が大きいので、ケーブルが高温になり得る。従って、前のユーザの急速充電の終了後、ケーブルが冷却されるまで、次のユーザは、急速充電を開始できず、待つ必要がある。しかし、ユーザーフレンドリーの観点から、急速充電を開始できるまでの待ち時間の目安をユーザに知らせることが好ましい。
【0007】
本発明は、次の急速充電を開始できるまでの待ち時間を知らせることができる急速充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の急速充電装置は、
車両に搭載された走行用バッテリを急速充電するための急速充電装置であって、
交流電力を直流電力に変換して、電流を出力する、電力変換部と、
前記走行用バッテリに電気的に接続されるコネクタを有し、前記電流を前記コネクタを介して前記走行用バッテリへ伝送する、ケーブルと、
前記ケーブルの温度を検出する、温度センサと、
文字又は画像を表示する、表示部と、
前記温度が予め定められた閾値温度未満である場合に、前記ケーブルの定格電流を上回る電流を前記電力変換部に出力させる制御を開始可能であり、前記温度が予め定められた閾値温度以上である場合に、前記温度が低下して前記閾値温度未満になるまでの予測時間を前記表示部に表示させる、制御部と、
を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
前記急速充電装置において、
前記制御部は、
現在の前記温度と前記閾値温度との差を、直近の、予め定められた単位時間での温度変化量で除することにより、前記予測時間を算出する、
ことを特徴とする。
【0010】
前記急速充電装置において、
前記制御部は、
現在の前記温度と前記閾値温度との差を、直近の、予め定められた単位時間での温度変化量で除し、更に、予め定められた定数で除する又は乗ずることにより、前記予測時間を算出する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記急速充電装置において、
前記制御部は、
前記単位時間毎に、前記予測時間を算出し、前記予測時間を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする。
【0012】
前記急速充電装置において、
前記制御部は、
前記温度が前記閾値温度以上から前記閾値温度未満に低下したら、前記定格電流を上回る電流を前記電力変換部に出力させる制御を開始可能である、
ことを特徴とする。
【0013】
前記急速充電装置において、
前記制御部は、
前記温度が予め定められた閾値温度以上である場合に、前記定格電流以下の電流を前記電力変換部に出力させる制御を開始可能である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様の急速充電装置は、次の急速充電を開始できるまでの待ち時間を知らせることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態の急速充電装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態の急速充電装置の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態の急速充電装置のブーストモード充電のプロファイル例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施の形態の急速充電装置の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施の形態の操作部の表示面に表示される画面の例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2の実施の形態の操作部の表示面に表示される画面の例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の急速充電装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
<第1の実施の形態>
(全体構成)
図1は、第1の実施の形態の急速充電装置の構成を示す図である。急速充電装置1は、交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換し、充電ケーブル21の末端に接続された充電コネクタ22及び車両3の車両インレット3aを介して、車両3に搭載された走行用バッテリ4を急速充電する。交流電源2は、系統電源が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0018】
充電コネクタ22は、充電ガンとも呼ばれ、車両インレット3aに着脱自在に挿着される。充電コネクタ22の内部の接触子付近に、充電ケーブル21の温度を検出するためのケーブル温度センサ22aが内蔵されている。ケーブル温度センサ22aは、温度により抵抗値が変化するサーミスタ等の感温素子が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0019】
急速充電装置1は、入力部11と、電力変換部12と、出力部13と、操作部14と、周囲温度センサ15と、制御部16と、を含む。
【0020】
入力部11は、交流電源2に電気的に接続され、交流電力が入力される。入力部11は、入力コンデンサ、フィルタ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0021】
電力変換部12は、入力部11に電気的に接続されている。電力変換部12は、並列接続された複数のAC-DCコンバータが例示されるが、本開示はこれに限定されない。電力変換部12は、制御部16から出力される制御信号S1に基づいて、入力部11から入力される交流電力を直流電力に変換し、充電電流を出力する。
【0022】
出力部13は、電力変換部12に電気的に接続され、電力変換部12から入力される直流電力を充電ケーブル21に出力する。出力部13は、出力コンデンサ、フィルタ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0023】
操作部14は、充電の開始、中止等の情報を入力するとともに、各種の情報を表示するものであり、タッチパネルディスプレイ(タッチ検出機能付きディスプレイ)、物理キーと表示装置との組み合わせ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0024】
図2は、第1の実施の形態の急速充電装置の外観斜視図である。急速充電装置1は、筐体31と、充電ケーブル21と、充電コネクタ22と、コネクタホルダ(冷却インレット)32とを備える。
【0025】
筐体31は、直方体形状であり、長手方向が鉛直方向に沿うように、地面に設置されている。
図1に示した回路部(入力部11、電力変換部12、出力部13、操作部14、周囲温度センサ15及び制御部16)は、筐体31の内部に収容されている。
【0026】
筐体31の前面33には、操作部14が配置されている。充電ケーブル21は、筐体31内の出力部13に電気的に接続され、筐体31の側面34から外側に延びている。充電ケーブル21は可撓性を有する。充電コネクタ22は、充電ケーブル21の先端に設けられている。充電コネクタ22のグリップ部の基端部側に充電ケーブル21が接続されている。
【0027】
コネクタホルダ32は、筐体31の側面34の前端側に設けられる。充電コネクタ22が車両インレット3aから取り外されて車両3の充電に利用されていないときに、充電コネクタ22がコネクタホルダ32に保持される。
【0028】
再び
図1を参照すると、周囲温度センサ15は、筐体31の内部又は外部の周囲温度を検出する。周囲温度センサ15は、温度により抵抗値が変化するサーミスタ等の感温素子が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0029】
制御部16は、制御信号S1を電力変換部12に出力し、電力変換部12の出力電流を制御する。制御部16は、ケーブル温度計測部16a、周囲温度計測部16b及び充電電流指令部16cを含む。
【0030】
ケーブル温度計測部16aは、ケーブル温度センサ22aから出力される温度信号S2に基づいて、充電ケーブル21のケーブル温度を計測して充電電流指令部16cに出力する。
【0031】
周囲温度計測部16bは、周囲温度センサ15から出力される温度信号S3に基づいて、急速充電装置1の周囲温度を計測して充電電流指令部16cに出力する。
【0032】
充電電流指令部16cは、充電開始時に、ケーブル温度が予め定められたブースト開始温度閾値Kmax2未満、又は、周囲温度が予め定められたブースト開始温度閾値Lmax2未満の場合には、充電ケーブル21の定格電流を超えた充電電流を出力させるための制御信号S1を電力変換部12に出力する。
【0033】
以降、急速充電装置1が充電ケーブル21の定格電流を超えた充電電流を出力して走行用バッテリ4を充電することを、「ブーストモード充電」と称する。また、このときの充電電流を、「ブースト電流」と称する。
【0034】
充電電流指令部16cは、充電中に、ケーブル温度が予め定められたブースト継続温度閾値Kmax1未満、又は、周囲温度が予め定められたブースト継続温度閾値Lmax1未満の場合には、ブースト電流を継続出力させるための制御信号S1を電力変換部12に出力し、ブーストモード充電を継続する。
【0035】
第1の実施の形態では、Kmax2<Kmax1であることとするが、本開示はこれに限定されない。例えば、Kmax2=Kmax1であることとしても良い。また、Lmax2<Lmax1であることとするが、本開示はこれに限定されない。例えば、Lmax2=Lmax1であることとしても良い。
【0036】
充電電流指令部16cは、充電中に、ケーブル温度がブースト継続温度閾値Kmax1以上、又は、周囲温度がブースト継続温度閾値Lmax1以上となった場合には、定格電流を出力させるための制御信号S1を電力変換部12に出力し、ブーストモード充電から定格充電に移行する。
【0037】
充電電流指令部16cは、充電中に、ケーブル温度が予め定められた高温閾値Kmax3以上、又は、周囲温度が予め定められた高温閾値Lmax3以上となった場合には、制御信号S1の出力を停止して、電力変換部12を停止させ、充電を中止する。
【0038】
第1の実施の形態では、Kmax1<Kmax3であることとするが、本開示はこれに限定されない。例えば、Kmax1=Kmax3であることとしても良い。また、Lmax1<Lmax3であることとするが、本開示はこれに限定されない。例えば、Lmax1=Lmax3であることとしても良い。
【0039】
充電電流指令部16cは、走行用バッテリ4への充電時間を計測するタイマ16c1を有する。充電電流指令部16cは、タイマ16c1で計測された充電時間に基づき、ブースト電流による充電時間が予め定められたブースト最長継続時間Tmaxに達した場合には、定格電流を出力させるための制御信号S1を電力変換部12に出力し、ブーストモード充電から定格充電に移行する。
【0040】
(動作)
図3から
図9までは、第1の実施の形態の急速充電装置の充電のプロファイル例を示す図である。
図3から
図9までの各図において、横軸は時間を示し、縦軸は充電電流を示す。
【0041】
図3は、充電時間条件での充電制御のプロファイル例を示す図である。波形100は、充電電流の波形である。充電の設定時間を例えば30(分)とする。
【0042】
急速充電装置1は、ブースト電流を出力してブーストモード充電を開始する。急速充電装置1は、ブーストモード充電開始からブースト最長継続時間Tmax(分)経過すると、充電電流を定格電流まで下げ、残り時間(30-Tmax)(分)の間、定格充電を行う。
【0043】
図4は、ケーブル温度条件での第1の充電制御のプロファイル例を示す図である。波形101は、充電電流の波形である。波形102は、ケーブル温度の波形である。充電の設定時間を例えば30(分)とする。
【0044】
急速充電装置1は、ブースト電流を出力してブーストモード充電を開始する。急速充電装置1は、ブーストモード充電開始からα(分)経過時に、ケーブル温度がブースト継続温度閾値Kmax1に達すると、充電電流を定格電流まで下げ、残り時間(30-α)(分)の間、定格充電を行う。これにより、ケーブル温度が低下していく。
【0045】
図5は、ケーブル温度条件での第2の充電制御のプロファイル例を示す図である。波形103は、充電電流の波形である。波形104は、ケーブル温度の波形である。充電の設定時間を例えば30(分)とする。
【0046】
充電開始時に、ケーブル温度が、ブースト開始温度閾値Kmax2以上である。従って、急速充電装置1は、定格電流を出力して定格充電を開始する。急速充電装置1は、定格充電開始からα(分)経過時に、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2未満に低下すると、定格充電からブーストモード充電に移行する。急速充電装置1は、ブーストモード充電中に、ケーブル温度がブースト継続温度閾値Kmax1に達すると、ブーストモード充電から定格充電に移行し、残り時間(30-α-Tmax)(分)の間、定格充電を行う。
【0047】
つまり、制御部16は、ブーストモード充電及びその後の定格充電において、ケーブル温度がブースト継続温度閾値Kmax1を超えないように、フィードバック制御を行う。
【0048】
図6は、ケーブル温度条件での第3の充電制御のプロファイル例を示す図である。波形105は、充電電流の波形である。波形106は、ケーブル温度の波形である。充電開始時に、ケーブル温度が、高温閾値Kmax3未満である。従って、急速充電装置1は、ブーストモード充電を開始する。急速充電装置1は、ブーストモード充電中に、短絡等によってケーブル温度が急激に上昇し、ケーブル温度が高温閾値Kmax3に達すると、保護のために充電を中止する。
【0049】
図7は、周囲温度条件での第1の充電制御のプロファイル例を示す図である。波形107は、充電電流の波形である。波形108は、周囲温度の波形である。充電の設定時間を例えば30(分)とする。
【0050】
充電開始時に、周囲温度が、ブースト継続温度閾値Lmax1よりも低い。従って、急速充電装置1は、ブーストモード充電を開始する。急速充電装置1は、ブーストモード充電開始からα(分)経過時に、周囲温度がブースト継続温度閾値Lmax1に達すると、ブーストモード充電から定格充電に移行し、残り時間(30-α)(分)の間、定格充電を行う。これにより、周囲温度が低下していく。
【0051】
図8は、周囲温度条件での第2の充電制御のプロファイル例を示す図である。波形109は、充電電流の波形である。波形110は、周囲温度の波形である。充電の設定時間を例えば30(分)とする。
【0052】
充電開始時に、周囲温度が、ブースト開始温度閾値Lmax2以上である。従って、急速充電装置1は、定格充電を開始する。急速充電装置1は、定格充電開始からα(分)経過時に、周囲温度がブースト開始温度閾値Lmax2未満に低下すると、定格充電からブーストモード充電に移行する。急速充電装置1は、ブーストモード充電中に、周囲温度がブースト継続温度閾値Lmax1に達すると、ブーストモード充電から定格充電に移行し、残り時間(30-α-Tmax)(分)の間、定格充電を行う。
【0053】
つまり、制御部16は、ブーストモード充電及びその後の定格充電において、周囲温度がブースト継続温度閾値Lmax1を超えないように、フィードバック制御を行う。
【0054】
図9は、周囲温度条件での第3の充電制御のプロファイル例を示す図である。波形111は、充電電流の波形である。波形112は、周囲温度の波形である。充電開始時に、周囲温度が、高温閾値Lmax3未満である。従って、急速充電装置1は、ブーストモード充電を開始する。急速充電装置1は、ブーストモード充電中に、短絡等によって周囲温度が急激に上昇し、周囲温度が高温閾値Lmax3に達すると、保護のために充電を中止する。
【0055】
(動作手順)
図10は、第1の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。急速充電装置1は、充電開始操作入力を操作部14で受け付けると、
図10に示す動作を開始する。
【0056】
充電電流指令部16cは、ステップS100において、ケーブル温度計測部16aで計測されたケーブル温度及び周囲温度計測部16bで計測された周囲温度に基づいて、ブーストモード充電開始判定を行う。充電電流指令部16cは、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2(
図5参照)未満の場合、又は、周囲温度がブースト開始温度閾値Lmax2(
図8参照)未満の場合には、ブーストモード充電開始可能と判定し(Yes)、処理をステップS102に進める。充電電流指令部16cは、その他の場合には、ブーストモード充電開始不可能と判定し(No)、処理をステップS108に進める。
【0057】
充電電流指令部16cは、ステップS102において、ブースト電流を出力させるための制御信号S1を電力変換部12に出力する。電力変換部12は、ブースト電流を出力する。
【0058】
制御部16は、ステップS104において、例えば、車両3から送信されてくるバッテリ電圧信号等に基づいて、走行用バッテリ4の充電終了判定を行う。制御部16は、充電終了と判定した場合(Yes)には、処理を終了する。制御部16は、充電未終了と判定した場合(No)には、処理をステップS106に進める。
【0059】
充電電流指令部16cは、ステップS106において、タイマ16c1で計測された充電時間、ケーブル温度計測部16aで計測されたケーブル温度及び周囲温度計測部16bで計測された周囲温度に基づいて、ブーストモード充電終了判定を行う。充電電流指令部16cは、ブーストモード充電時間がブースト最長継続時間Tmax(
図3参照)に達したら、ケーブル温度がブースト継続温度閾値Kmax1(
図4参照)に達したら、又は、周囲温度がブースト継続温度閾値Lmax1(
図7参照)に達したら、ブースモード充電を終了すると判定し(Yes)、処理をステップS108に進める。充電電流指令部16cは、その他の場合には、ブーストモード充電を終了しないと判定し(No)、処理をステップS102に進める。
【0060】
充電電流指令部16cは、ステップS108において、定格電流を出力させるための制御信号S1を電力変換部12に出力する。電力変換部12は、定格電流を出力する。
【0061】
制御部16は、ステップS110において、例えば、車両3から送信されてくるバッテリ電圧信号等に基づいて、走行用バッテリ4の充電終了判定を行う。制御部16は、充電終了と判定した場合(Yes)には、処理を終了する。制御部16は、充電未終了と判定した場合(No)には、処理をステップS112に進める。
【0062】
充電電流指令部16cは、ステップS112において、ケーブル温度計測部16aで計測されたケーブル温度及び周囲温度計測部16bで計測された周囲温度に基づいて、ブーストモード充電再開判定を行う。充電電流指令部16cは、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2(
図5参照)未満の場合、又は、周囲温度がブースト開始温度閾値Lmax2(
図8参照)未満の場合には、ブーストモード充電再開可能と判定し(Yes)、処理をステップS102に進める。充電電流指令部16cは、その他の場合には、ブーストモード充電再開不可能と判定し(No)、処理をステップS108に進める。
【0063】
図11は、第1の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。急速充電装置1は、充電中に、
図11に示す動作を行う。
【0064】
制御部16は、ステップS120において、充電中止操作入力が操作部14に入力されたか否かを判定する。制御部16は、充電中止操作入力が操作部14に入力されていないと判定したら(No)、ステップS120で待機する。制御部16は、充電中止操作入力が操作部14に入力されたと判定したら(Yes)、処理をステップS122に進める。
【0065】
充電電流指令部16cは、ステップS122において、充電電流の出力を中止させるための制御信号S1を電力変換部12に出力する。電力変換部12は、充電電流の出力を中止する。
【0066】
図12は、第1の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。急速充電装置1は、充電中に、
図12に示す動作を行う。
【0067】
制御部16は、ステップS130において、ケーブル温度が高温閾値Kmax3(
図6参照)を超えたか否か、又は、周囲温度が高温閾値Lmax3(
図9参照)を超えたか否か、を判定する。制御部16は、ケーブル温度が高温閾値Kmax3を超えた、又は、周囲温度が高温閾値Lmax3を超えた場合と判定したら(Yes)、処理をステップS132に進める。制御部16は、その他の場合に、ステップS130で待機する。
【0068】
充電電流指令部16cは、ステップS132において、充電電流の出力を中止させるための制御信号S1を電力変換部12に出力する。電力変換部12は、充電電流の出力を中止する。
【0069】
(効果)
急速充電装置1は、充電ケーブル21の定格電流を超えたブースト電流での充電を行うことができる。従って、急速充電装置1は、車両3に搭載された走行用バッテリ4の充電時間を短縮することができる。これにより、急速充電装置1は、利便性を著しく向上することができる。
【0070】
(変形例)
第1の実施の形態は、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)~(c)のようなものが例示される。
(a)急速充電装置1は、
図1に図示以外の構成に変形しても良い。例えば、制御部16は、ケーブル温度センサ22aで検出されたケーブル温度が許容される上限温度よりも低ければ、充電ケーブル21の定格電流を超えたブースト電流を出力するための制御信号S
1を電力変換部12に出力する構成に変形しても、第1の実施の形態と略同様の効果が得られる。
(b)
図3から
図9までは、図示以外の動作パターンに変形しても良い。
(c)
図10の充電動作のフローチャートは、前記(a)に記載された急速充電装置1における構成の変形に応じて、処理内容を変更できる。
【0071】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の構成要素のうち、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0072】
図13は、第2の実施の形態の急速充電装置のブーストモード充電のプロファイル例を示す図である。波形121は、1回目の充電電流の波形である。波形122は、2回目の充電電流の波形である。波形123は、ケーブル温度の波形である。
【0073】
1回目のブーストモード充電によって充電ケーブル21が発熱する。1回目の充電の終了時に、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2より高い場合は、2回目のブーストモード充電を開始する前に、充電ケーブル21の冷却期間、つまり、待ち時間を設ける必要がある。ブースト開始温度閾値Kmax2は、40℃から50℃程度が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0074】
周囲温度が高いと、充電ケーブル21及び充電コネクタ22の冷却期間は相対的に長くなり、周囲温度が低いと、充電ケーブル21及び充電コネクタ22の冷却期間は相対的に短くなる。また、充電ケーブル21及び充電コネクタ22の冷却期間は、充電コネクタ22をコネクタホルダ32に戻すか戻さないか、或いは、車両インレット3aに接続するか接続しないか、といった状況によっても変化する。
【0075】
充電コネクタ22がコネクタホルダ32(
図2参照)に保持されている間は、充電ケーブル21及び充電コネクタ22の熱が、コネクタホルダ32に伝導するので、充電ケーブル21及び充電コネクタ22の冷却が促進される。
【0076】
そこで、第2の実施の形態の急速充電装置1Aは、ブーストモード充電を開始できるまでの冷却期間(待ち予測時間)をユーザに知らせる。
【0077】
図14は、第2の実施の形態の急速充電装置の構成を示す図である。急速充電装置1Aは、急速充電装置1(
図1参照)と比較して、制御部16に代えて、制御部16Aを含む。制御部16Aは、制御部16と比較して、時間計算部16dを更に含む。
【0078】
時間計算部16dは、ケーブル温度計測部16aからケーブル温度を取得する。そして、時間計算部16dは、次の式(1)により、冷却期間終了までの待ち予測時間を算出する。
(待ち予測時間)
=((現在のケーブル温度)-(ブースト開始温度閾値Kmax2))
÷((1分前のケーブル温度)-(現在のケーブル温度)) ・・・(1)
【0079】
式(1)で示す通り、時間計算部16dは、現在のケーブル温度からブースト開始温度閾値Kmax2までの温度差(低下しなければならない温度)を、直近の、予め定められた単位時間での温度変化量で除することにより、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2に達するまでの予測時間、つまり、待ち予測時間を算出する。式(1)では、単位時間は1分間としたが、本開示はこれに限定されない。
【0080】
ただし、実際の装置では、式(1)で算出される待ち予測時間は、充電ケーブル21が冷えるのに実際に掛かる時間よりも短くなる場合があり得る。
【0081】
そこで、時間計算部16dは、次の式(2)により、実際の装置に更に即した待ち予測時間を算出することとすると良い。
(待ち予測時間)
=((現在のケーブル温度)-(ブースト開始温度閾値Kmax2))
÷((1分前のケーブル温度)-(現在のケーブル温度))
÷(余裕率X) ・・・(2)
【0082】
式(2)は、式(1)の右辺を、予め定められた余裕率Xで除したものである。余裕率Xは、1より小さい値であり、0.7から0.9程度が例示されるが、本開示はこれに限定されない。なお、余裕率Xは、1より大きな値とし、式(1)の右辺に乗じてもよい。その場合、余裕率Xは、1.1から1.4程度が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0083】
時間計算部16dは、式(1)又は式(2)で算出した待ち予測時間を操作部14に表示させる。
【0084】
時間計算部16dは、待ち予測時間の算出を定期的(例えば、単位時間毎)に行い、待ち予測時間を定期的に更新し、操作部14に表示させる。
【0085】
図15は、第2の実施の形態の操作部の表示面に表示される画面の例を示す図である。詳しくは、待ち時間中に、操作部14の表示面に表示される第1画面41の例を示す図である。
【0086】
第1画面41は、待ち予測時間(目安時間)として、「10」分を示す画像42を含む。なお、急速充電装置1Aは、待ち時間中であっても、定格電流以下の充電電流で充電を開始することは可能である(例えば、
図5参照)。そこで、第1画面41は、現在の利用可能(充電可能)電力として、「90」kW(定格以下の充電電力の一例)を示す画像43を含む。
【0087】
図16は、第2の実施の形態の操作部の表示面に表示される画面の例を示す図である。詳しくは、待ち時間終了後に、操作部14の表示面に表示される第2画面51の例を示す図である。
【0088】
待ち時間が終了しているので、第2画面51には、待ち予測時間(目安時間)の画像42(
図15参照)は含まれていない。また、第2画面51は、利用可能(充電可能)電力として、「150」kW(ブースト充電電力の一例)を示す画像52を含む。
【0089】
なお、式(1)及び式(2)では、単位時間(例えば、1分)前のケーブル温度を使用する。しかし、ブーストモード充電の終了直後で、1分前のケーブル温度が存在しない場合があり得る。そこで、時間計算部16dは、ブーストモード充電の終了直後で、1分前のケーブル温度が存在しない場合に1回目の計算においては、現在のケーブル温度に応じたデフォルトの目安時間の画像を、第1画面41に含ませることとすると良い。例えば、ケーブル温度が50℃以下の場合はデフォルトは5分、65℃以下の場合はデフォルトは10分、85℃以下の場合はデフォルトは30分等が例示されるが、本開示はこれらに限定されない。
【0090】
(動作手順)
図17は、第2の実施の形態の急速充電装置の動作手順を示すフローチャートである。急速充電装置1Aは、1回の充電が終了すると、
図17に示す動作を開始する。
【0091】
時間計算部16dは、ステップS140において、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2未満であるか否かを判定する。時間計算部16dは、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2未満であると判定したら(Yes)、処理をステップS150に進める。時間計算部16dは、ケーブル温度がブースト開始温度閾値Kmax2未満ではないと判定したら(No)、処理をステップS142に進める。
【0092】
時間計算部16dは、ステップS142において、第1画面41(
図15参照)を操作部14に表示させる。このとき、時間計算部16dは、現在のケーブル温度に応じたデフォルトの目安時間の画像を、第1画面41に含ませる。
【0093】
時間計算部16dは、ステップS144において、単位時間(例えば、1分)待機する。
【0094】
時間計算部16dは、ステップS146において、式(1)又は式(2)によって、待ち予測時間を算出する。時間計算部16dは、待ち予測時間を表す画像42を、第1画面41に含ませる。操作部14は、画像42を含む第1画面41を、表示する。
【0095】
時間計算部16dは、ステップS148において、待ち予測時間が「0」であるか否かを判定する。時間計算部16dは、待ち予測時間が「0」であると判定したら(Yes)、処理をステップS150に進める。時間計算部16dは、待ち予測時間が「0」ではないと判定したら(No)、処理をステップS144に進める。
【0096】
時間計算部16dは、ステップS150において、第2画面51を操作部14に表示させる。
【0097】
ステップS142からステップS148までが、冷却期間に実行されるステップである。
【0098】
(効果)
第2の実施の形態の急速充電装置1Aは、次のブーストモード充電を開始できるまでの待ち予測時間をユーザに知らせることができる。急速充電装置1Aは、待ち予測時間をユーザに知らせることで、ユーザのストレス緩和や、待ち時間を他の事に有効に利用できることによる実質的な時間短縮といった利便性を向上させることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1、1A 急速充電装置
2 交流電源
3 車両
4 走行用バッテリ
11 入力部
12 電力変換部
13 出力部
14 操作部
15 周囲温度センサ
16、16A 制御部
16a ケーブル温度計測部
16b 周囲温度計測部
16c 充電電流指令部
16c1 タイマ
16d 時間計算部
21 充電ケーブル
22 充電コネクタ
22a ケーブル温度センサ
31 筐体
32 コネクタホルダ(冷却インレット)