(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150772
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20220929BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053529
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】張 梓懿
(72)【発明者】
【氏名】久志本 真希
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA32
5F173AF12
5F173AF32
5F173AH22
5F173AP33
5F173AP42
5F173AP47
5F173AR62
(57)【要約】
【課題】素子抵抗の低いレーザダイオードを提供する。
【解決手段】レーザダイオードは、Alを含む窒化物半導体基板と、窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、を備え、半導体積層部は、窒化物半導体基板上に配置された、第1導電型の窒化物半導体層を含む第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層上に配置された、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、発光層上に配置された、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有し、半導体積層部の少なくとも一部は、光共振および射出のために形成されたメサ構造であり、メサ構造の側面のうち光共振方向に垂直ではない側面は、平面視において複数の凸部を有している。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを含む窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に配置された半導体積層部と、
を備え、
前記半導体積層部は、
前記窒化物半導体基板上に配置された、第1導電型の窒化物半導体層を含む第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に配置された、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、
前記発光層上に配置された、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、
を有し、
前記半導体積層部の少なくとも一部は、光共振および射出のために形成されたメサ構造であり、
前記メサ構造の側面のうち光共振方向に垂直ではない側面は、複数の凸部を有する
レーザダイオード。
【請求項2】
平面視における複数の前記凸部の頂部同士の間の距離は、1μm以上10μm以下である、
請求項1に記載のレーザダイオード。
【請求項3】
平面視における前記凸部の高さは、1μm以上11μm以下である、
請求項1または2に記載のレーザダイオード。
【請求項4】
平面視における、前記凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士のなす角の最小角度は、1度以上120度以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項5】
前記メサ構造は、前記窒化物半導体基板の結晶方位(1-100)面に平行な端面を共振ミラー端面とする共振器を有し、<1-100>方向に光を射出する端面発光型紫外レーザダイオードである
請求項1から4のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項6】
前記メサ構造は、平面視で長辺と短辺とを有する矩形状であり、前記長辺が<1-100>方向に平行であって、
前記凸部は、平面視において<11-20>方向および<-1-120>方向の少なくとも一方に突出している
請求項1から5のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項7】
前記窒化物半導体基板は、AlN単結晶基板である
請求項1から6のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項8】
前記第1導電型クラッド層と前記発光層との間に配置されて、前記発光層へ光を閉じ込める第1導電型導波路層と、
前記第2導電型クラッド層と前記発光層との間に配置されて、前記発光層へ光を閉じ込める第2導電型導波路層と、
を備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項9】
前記第2導電型クラッド層上に配置され、GaNを含む窒化物半導体で形成された第2導電型コンタクト層を更に備え、
前記第2導電型クラッド層は、AlfGa1-fN(0.1≦f≦1)を含み、前記窒化物半導体基板から遠ざかるにつれてAl組成eが小さくなる組成傾斜を有し、膜厚が0.5μm未満である第2導電型縦伝導層と、AlgGa1-gN(0<g≦1)を含む第2導電型横伝導層と、を有する、
請求項8に記載のレーザダイオード。
【請求項10】
前記第2導電型縦伝導層と前記第2導電型導波路層との間に配置されて、AlhGa1-hN(0<h≦1.0)で形成された中間層、を備える、
請求項9に記載のレーザダイオード。
【請求項11】
前記第2導電型縦伝導層の膜厚は、250nm以上450nm以下である、
請求項9または10に記載のレーザダイオード。
【請求項12】
前記第2導電型縦伝導層のうちの前記第2導電型導波路層との界面を含む一部または全ての領域は、不純物がドープされていない領域である、
請求項9から11のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項13】
前記第1導電型クラッド層は、AlaGa1-aN(0.6<a≦0.8)で形成されており、
前記第2導電型縦伝導層および前記第2導電型横伝導層は、前記窒化物半導体基板に対して完全歪で形成されている、
請求項9から12のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項14】
前記第2導電型横伝導層の前記第2導電型縦伝導層と対向する面における前記Al組成gは、前記第2導電型縦伝導層の前記Al組成fの最小値よりも大きい、
請求項9から13のいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、直接遷移の再結合形態を有することから、高い再結合効率および高い光学利得を得ることができる点で、レーザダイオードのための材料として適している。例えば、窒化物半導体を用いた、紫外領域での電流注入型のレーザダイオードを発振させる技術が開示されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
レーザダイオードの技術常識を参酌すると、紫外光を発光するレーザダイオードは、低い発振閾値電流密度にて発振させる構成が好ましい。また、紫外光を発光するレーザダイオードでは、熱による素子性能の低下を防ぐため、素子抵抗を低減させて、より低い駆動電力による発振特性を有することが好ましい。素子抵抗を低減させてレーザダイオードを低い電力にて発振させるためには、メサ構造上に配置される電極を、メサ構造の側面に極力近づけて配置する構成が適切であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zhang et al., Applied Physics Express 12、124003(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外光を発光するレーザダイオードにこのような構成を適用しても、所望の低い発振閾値電流密度を得られないのが実情である。その理由として、メサ構造の側面付近においては、メサ構造の側面から導入される転位がメサ構造上に設けられた電極の直下の発光層に到達することによって、光利得を阻害する非発光領域が生ずるためであると考えられる。
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、より低い素子抵抗を達成するレーザダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係るレーザダイオードは、Alを含む窒化物半導体基板と、窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、を備え、半導体積層部は、窒化物半導体基板上に配置された、第1導電型の窒化物半導体層を含む第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層上に配置された、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、発光層上に配置された、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有し、半導体積層部の少なくとも一部は、光共振および射出のために形成されたメサ構造であり、メサ構造の側面のうち光共振方向に垂直ではない側面は、平面視において複数の凸部を有している。
なお、上述した発明の概要は、本開示の特徴の全てを列挙したものではない。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、発振閾値電流の低いレーザダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの一構成例を示す平面模式図である。
【
図1B】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの一構成例を示す断面模式図である。
【
図2A】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの凸部の一構成例を示す断面模式図である。
【
図2B】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの凸部の一構成例を示す断面模式図である。
【
図2C】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの凸部の一構成例を示す断面模式図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面模式図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面模式図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面模式図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面模式図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るレーザダイオードの他の構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を通じて本開示に係るレーザダイオードを説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
また、以下、説明の便宜上、「上」とは、図面に描かれた第2電極側を意味するものとし、「下」とは、図面に描かれた基板側を意味するものとする。ただし、「上」、「下」とは、便宜的に定められたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0011】
1.実施形態
本開示の実施形態に係るレーザダイオードについて説明する。
【0012】
(1.1)紫外レーザダイオードの構造
本開示に係るレーザダイオードは、
Alを含む窒化物半導体基板と、窒化物半導体基板上に配置される半導体積層部と、を備え、半導体積層部は、窒化物半導体基板上に配置された、第1導電型の窒化物半導体層を含む第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層上に配置された、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層と、発光層上に配置された、第2導電型の窒化物半導体を含む第2導電型クラッド層と、を有し、半導体積層部の少なくとも一部は、光共振および射出のために形成されたメサ構造であり、メサ構造の側面のうち光共振方向に垂直ではない側面は、平面視において複数の凸部を有している。
【0013】
本開示に係るレーザダイオードが低い素子抵抗を実現できる理由としては、メサ構造の側面のうち光共振方向に垂直ではない側面(共振器ミラー端面ではない側面)に複数の凸部を有していることで、このような凸部を備えない形態と比較して、メサ構造の側面から導入される転位が抑制され、光利得を阻害する非発光領域が低減するためであると考えられる。
以下、本開示に係る紫外レーザダイオードの各構成を説明をする。
【0014】
<窒化物半導体基板>
窒化物半導体基板(以下、基板と記載することがある)は、Alを含む窒化物半導体を含んでいる。Alを含む窒化物半導体は、例えばAlNである。すなわち、基板はAlN単結晶基板であることが好ましい。また、Alを含む窒化物半導体は、AlNに限定されず、例えばAlGaNであってよい。例えば、基板がAlN、AlGaN等の窒化物半導体単結晶基板である場合、基板の上側に形成される窒化物半導体層との格子定数差が小さくなり、窒化物半導体層を格子整合系で成長させることで貫通転位を少なくできる。
基板の貫通転位密度は、5×104cm-2以下であることが好ましい。特に、発振閾値電流の低減の観点から、貫通転位密度は1×103以上1×104cm-2以下であることがより好ましい。
【0015】
ここで、「窒化物半導体を含む」という表現における「含む」とは、窒化物半導体を主に層内に含むことを意味するが、その他の元素を含む場合もこの表現に含まれる。具体的には、窒化物半導体以外の元素を少量(例えばGa(Gaが主元素でない場合)、In、As、P、またはSb等の元素を数%以下)加える等してこの層の組成に軽微な変更を加える場合についてもこの表現に含まれる。その他の層の組成の表現においても、「含む」という文言は、同様の意味を有する。また、含まれる少量元素については前述の限りではない。
【0016】
また、基板は、ドナー不純物またはアクセプタ不純物によって、n型またはp型にドーピングされてよい。また、基板は、AlN等の窒化物半導体と、サファイア(Al2O3)、Si、SiC、MgO、Ga2O3、ZnO、GaNまたはInNとの混晶であってもよい。
【0017】
基板は、一例として100μm以上600μm以下の層厚を有することが好ましい。
また、面方位はc面(0001)、a面(11-20)、m面(10-10)などが挙げられるが、c面(0001)基板がより好ましい。さらに、c面(0001)法線方向からいくらかの角度(例えば-4°~4°、好ましくは-0.4°~0.4°)に傾いた面上に形成することができるが、これに限らない。
【0018】
<第1導電型クラッド層>
第1導電型クラッド層は、基板上に形成される。ここで、例えば「第1導電型クラッド層は基板上に形成される」という表現における「上に」という文言は、基板の一方の面上に第1導電型クラッド層が形成されることを意味する。また、基板と第1導電型クラッド層との間に別の層がさらに存在する場合も上述の表現に含まれる。その他の層同士の関係においても、「上の」という文言は、同様の意味を有する。例えば、後述する第1導電型導波路層上に電子ブロック層を介して第2導電型クラッド層が形成される場合も、「第2導電型クラッド層は第1導電型導波路層上に形成される」という表現に含まれる。また、本実施形態の説明において、「第1導電型」および「第2導電型」は、それぞれ異なる導電型を示す半導体であることを意味し、例えば、一方がn型導電性である場合は、他方がp型導電性となる。
【0019】
本実施形態のレーザダイオードにおける第1導電型クラッド層は、AlおよびGaを含む窒化物半導体の層である。第1導電型クラッド層は、例えばAlaGa(1-a)N(0<a<1)により形成される。これにより、深紫外領域のバンドギャップエネルギーに対応する材料を発光層として形成する場合に、発光層の結晶性を高め、発光効率を向上させることが可能となる。高い発光効率を実現する観点から、第1導電型クラッド層を構成する窒化物半導体は、AlNおよびGaNの混晶であることが好ましい。また、基板に対して完全歪で成長させる観点から、第1導電型クラッド層は、AlaGa(1-a)N(0.6≦a≦0.8)により形成されることがより好ましい。
【0020】
第1導電型クラッド層は、不純物によりドーピングされていてもよい。不純物としては、例えば、Si、Ge、C、Oなどが挙げられる。不純物としては、これらの不純物の何れか1つが選択されてもよいし、これらの不純物の複数が選択されてもよい。不純物の濃度は、特に限定されるものではないが、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましく、5×1018cm-3以上5×1019cm-3以下であることがより好ましい。
【0021】
第1導電型クラッド層は、第1導電型クラッド層内での格子緩和の観点と膜抵抗の観点から、200nm以上800nm以下の層厚を有することが好ましく、300nm以上750nm以下の層厚を有することがより好ましく、300nm以上500nm以下の層厚を有することが更に好ましい。
【0022】
<発光層>
発光層は、第1導電型クラッド層の上方に設けられている。発光層では、発光波長が210nm以上360nm以下であることが好ましい。
発光層は、1つ以上の量子井戸層を有している。量子井戸層では、所望する発光波長により、材料が適宜選択されてよい。量子井戸層に用いられる材料としては、紫外領域の発光波長を得る目的である場合、例えば、AlbGa1-bN(0≦b≦0.8)などが挙げられる。
【0023】
発光層は、量子井戸層の上方若しくは下方、又は上方及び下方の双方が、量子井戸層と異なる材料で形成された層により挟まれた構造を有している。量子井戸層と異なる材料で形成された層としては、例えば、厚さ1nm以上20nm以下のAlcGa1-cN(0.5≦c<0.7)層などが挙げられる。
発光層は、一部が、不純物によりドーピングされていてもよい。不純物としては、例えば、Si、Cなどが挙げられる。なお、発光層は、意図的に不純物がドーピングされていない構造(アンドープ層)であってもよい。
【0024】
<導波路層>
本実施形態のレーザダイオードは、光閉じ込めの観点から、第1導電型クラッド層と発光層との間に配置されて、発光層へ光を閉じ込める第1導電型導波路層と、第2導電型クラッド層と発光層との間に配置されて、発光層へ光を閉じ込める第2導電型導波路層と、を備えていても良い。
これにより、導波路層は、発光層を挟み込むように発光層の上下に形成され、発光層から放出された光を発光層内に閉じ込める効果を有する。すなわち、導波路層は、発光層に対して第1導電型クラッド層側に配置された第1導電型導波路層)と、発光層に対して第2導電型クラッド層側に配置された第2導電型導波路層の2層から構成されることが好ましい。
【0025】
導波路層は、光閉じ込めの観点から、発光層よりエネルギーの高いバンドギャップを持つAl、Gaを含む窒化物半導体であることが好ましい。導波路層は、デバイス内で定在する光の電界強度分布と発光層の重なりを増大させるAl組成と膜厚とを有することが好ましい。特に、第1導電型導波路層と第2導電型導波路層との膜厚比は、発光層への光閉じ込めと、第1導電型クラッド層と第2導電型クラッド層とにおけるAlGaNのAl組成によってさまざまに取りうる。
【0026】
発光層へのキャリア閉じ込めの観点から、発光層をAlbGa(1-b)N(0<b<1)とし、導波路層をAldGa(1-d)N(0<d<1)としたとき、b<dであり、d≧b+0.05であることがより好ましい。たとえば発光波長が265nmの発光層を例とした場合、b=0.52であり、dは0.57以上であることが好ましい。また、光閉じ込めと、層抵抗の観点から、第一導電型導波路層と第2導電型導波路層との合計膜厚は70nm以上150nm以下であることが好ましい。
【0027】
第1導電型導波路層及び第2導電型導波路層のAl組成のそれぞれは、膜厚方向において均一であることが好ましいが、この限りではない。後述する第2導電型コンタクトの上方に存在する金属(例えば第2電極)への光吸収を回避するために、第2導電型導波路層のAl組成が第1導電型導波路層のAl組成より高くなっていてもよい。同様の目的で、第2導電型導波路層の膜厚が第1導電型導波路の膜厚より厚くなっていてもよい。
【0028】
第1導電型導波路層がn型導電性半導体層の場合は、第1導電型クラッド層と同じ伝導型を得る目的などからNの他にP、As、Sb等のN以外のV族元素,H、C、O、F、Mg、Si等の不純物が混入していて良いが、この限りではない。
【0029】
<第2導電型クラッド層>
第2導電型クラッド層は、発光層上に設けられている。第2導電型クラッド層は、第2導電型窒化物半導体層を有している。第2導電型クラッド層は、例えばAleGa1-eN(0<e<1)により形成される。また、発光層上に導波路層(第2導電型導波路層)が設けられている場合には、第2導電型クラッド層は、導波路層(第2導電型導波路層)状に形成される。これにより、第2導電型クラッド層は、発光層または導波路層に対して格子整合が容易であり、貫通転位密度の抑制が可能となる。
【0030】
第2導電型クラッド層は、キャリア(電子または正孔)を発光層へ注入するに足りる導電性を有しており、デバイス内で定在する光モードの電界強度分布と発光層の重なりを増大させる(すなわち光閉じ込めを増大させる)ことが可能であれば、導電型は特に限定されない。第2導電型クラッド層は、たとえば一部にMgをドーピングしたp型AlGaNであってよい。
第2導電型クラッド層がp型導電性半導体層の場合、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、不純物の元素の種類としてはこの限りではない。
【0031】
第2導電型クラッド層は、第2導電型クラッド層の全体または一部が、例えば、Mg、B、Be、Si、Liなどの第2導電型不純物を有していないことがより好ましい。第2導電型クラッド層が第2導電型不純物を有していないことで、従来の紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0032】
キャリアをより効率よく発光層へ注入する観点から、第2導電型クラッド層はAl組成fが基板の上面から遠ざかる方向へ減少する様に傾斜したAlfGa(1-f)Nで形成された組成傾斜層である第2導電型縦伝導層と、AlgGa(1-g)N(0<g≦1)を含む第2導電型横伝導層と、を備えることが好ましい。
以下、第2導電型縦伝導層および第2導電型横伝導層について説明する。
【0033】
(第2導電型縦伝導層)
第2導電型縦伝導層は、第2導電型クラッド層のうちの発光層側の領域を構成する層である。第2導電型縦伝導層は、AlfGa1-fNを含む層である。第2導電型縦伝導層は、発光層と第2導電型クラッド層との界面から遠ざかる方向に向かって、Al組成比が1.0から連続的に減少していく層であってよい。第2導電型クラッド層は、Al組成が傾斜することで、光閉じ込めおよび発光層へのキャリア注入、および電子のブロック層としての役割を果たし、レーザダイオードの発振閾値電流密度を低くする効果が得られる。
【0034】
第2導電型縦伝導層におけるAl組成fのプロファイル(傾斜)は、連続的に減少してもよいし、断続的に減少してもよい。ここで、「断続的に減少する」とは、第2導電型縦伝導層の膜中にAl組成fが同じ(膜厚方向に一定)になっている部分を含むことを意味する。つまり、第2導電型縦伝導層には、基板から遠ざかる方向にAl組成fが減少しない部分が含まれていてもよいが、増加する部分は含まれていない。第2導電型クラッド層が、このような組成傾斜層を含むことで、光閉じ込めおよび発光層へのキャリア注入、および電子のブロック層としての役割を果たすことから、紫外レーザダイオード100の発振閾値電流密度を低くする効果が期待される。
【0035】
第2導電型縦伝導層の膜厚は、格子整合の観点から500nm以下であることが好ましい。また、第2導電型縦伝導層の膜厚は、発光層への光閉じ込め及びキャリア注入の観点から、250nm以上450nm以下であることがより好ましく、300nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
(第2導電型横伝導層)
第2導電型横伝導層は、第2導電型クラッド層のうちの発光層と反対側の領域を構成する層であり、第2導電型縦伝導層上に形成される。第2導電型横伝導層は、AlgGa1-gN(0<g≦1)を含む層である。ここで、第2導電型横伝導層の第2導電型縦伝導層と対向する面におけるAl組成gは、第2導電型縦伝導層のAl組成fの最小値よりも大きいことが好ましい。
第2導電型横伝導層は、第2導電型横伝導層の縦抵抗率を制御する目的などから、H、Mg、Be、Zn、Si、B等の不純物を意図的に混入されることができる。混入される不純物の量は、第2導電型横伝導層の表面および内部に誘積される正味の電界量に応じて、一例として、1×1019cm-3以上5×1021cm-3であってよい。
【0037】
第2導電型横伝導層の膜厚は、第2導電型横伝導層を貫通するキャリアの量子透過を容易とする観点から、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
第2導電型横伝導層の上に後述する第2導電型コンタクト層が設けられる場合、第2導電型横伝導層の第2導電型コンタクト層との界面におけるAl組成は、第2導電型コンタクト層におけるAl組成よりも小さく、かつ基板に対して完全歪であることが好ましい。このような第2導電型横伝導層は、第2導電型横伝導層の表面および表面付近の内部に蓄積される正味内部電界が負となって、界面に正孔が誘積されることで横伝導率を向上させることができる。
【0039】
第2導電型縦伝導層は、分極ドーピング効果によりキャリア(例えば第2導電型縦伝導層がp型半導体により形成されている場合には正孔)を生成させて、キャリアを効率良く発光層内の活性層に注入する作用を有する。このため、第2導電型縦伝導層が発光層と第2導電型コンタクト層との間に設けられることで、レーザダイオードのキャリア注入効率を高め、閾値電圧を低減することができる。
第2導電型横伝導層は、電極下部に集中する電界によって狭められる正孔分布を横方向に広げる効果を有する。この効果によって、第2導電型横伝導層は、第2導電型縦伝導層と同様にキャリア注入効率を高めることができる。
【0040】
(中間層)
第2導電型縦伝導層と第2導電型導波路層との間には、伝導率を向上させる観点かつ/または第2導電型横伝導層および第2導電型コンタクト層を完全歪で形成させるためなどの観点から、基板の上面から遠ざかる方向へAl組成hが増加するようなAlhGa(1-h)N(0<h≦1.0)から成る中間層を設けることができる。第2導電型縦伝導層と第2導電型導波路層の中間層は、所望する発光波長の光を吸収しないバンドギャップでない混晶であって良く、さらに50nm以下の膜厚であることが好ましく、アンドープであって良い。
【0041】
<第2導電型コンタクト層>
本実施形態のレーザダイオードは、第2導電型クラッド層上に配置された第2導電型コンタクト層を更に備えていても良い。第2導電型コンタクト層を構成する窒化物半導体は、例えばGaN、AlNまたはInNおよび、それらを含む混晶で形成されることが好ましく、GaNを含む窒化物半導体であることがより好ましい。
【0042】
第2導電型コンタクト層は、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si、Be等の不純物が混入していてよい。原料ガスの汎用性から、第2導電型コンタクト層に含まれる不純物はMgであることが好ましい。コンタクト抵抗低減の観点から、Mgの濃度が8×1019cm-3以上5×1021cm-3以下であることが好ましく、5×1020cm-3以上5×1021cm-3以下であることがより好ましい。
【0043】
また、第2導電型コンタクト層の層厚は、1nm以上20nm以下であることが好ましい。第2導電型コンタクト層の層厚が薄いほどレーザダイオードのキャリア注入効率が向上し、層厚が厚いほどキャリア注入効率が低下する。
【0044】
<第1電極>
第1電極は、第1導電型クラッド層上に設けられている。第1電極は、第1導電型クラッド層と電気的に接続される第1導電性材料で形成されることが好ましい。第1導電性材料としては、例えば、Mo、Nb、Zr、Ti、Al、W、Ni、Au、V、Inの何れかを含む合金などが挙げられる。第1導電性材料として、特に、V、Ti、Al、Ni、Auの何れかを含む合金を用いることで、コンタクト抵抗を低減させることができる。
【0045】
<第2電極>
第2電極は、第2導電型クラッド層上に設けられている。第2電極は、第2導電型クラッド層と電気的に接続される第2導電性材料で形成されることが好ましい。第2導電性材料としては、例えば、Ti、Pt、Ni、Pd、Au、Pt、Co、Cu、Ni、Ta、Ruの何れか又は何れかを含む合金などが挙げられる。第2導電性材料として、特に、Ti、Pt、Ni、Au、Pdの何れかを含む合金を用いることで、コンタクト抵抗を低減させることができる。
【0046】
<メサ構造と共振器>
メサ構造は、第2導電型層と第1導電型層とを電気的に分離するために形成される。メサ構造は、半導体積層部の一部を除去した構造である。ここで、「半導体積層部」とは、少なくとも第1導電型クラッド層、発光層および第2導電型クラッド層をいい、上述した導波路層(第1導電型導波路層および第2導電型導波路層)、中間層および第2導電型コンタクト層が設けられている場合にはこれらの層も含む。
【0047】
メサ構造は、平面視において、基板の結晶方位(1-100)面に平行な共振器を有し、<1-100>方向に光を射出する端面発光型レーザダイオードを可能にする形態を取ることが望ましい。これは、劈開法やエッチング法などさまざまな方法によってレーザ共振器の共振ミラー端面を得る場合に、原子的に平坦な(1-100)面が最も容易に共振ミラー端面を形成できるためである。つまり、メサ構造が基板の結晶方位に対して平面視において(1-100)面に平行なメサ端面を共振ミラー端面とする共振器を有し、<1-100>方向に光を射出する端面発光型レーザダイオードであることが好ましい。
【0048】
メサ構造は、窒化物半導体層の積層体を誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)エッチング等でエッチングすることで形成できる。この時のエッチング条件により、メサ構造の側面から転位が多量に発生し、メサ構造の内部方向へ伝搬する。これは、窒化物半導体層の積層体が基板に対して格子整合に成長するシュードモルフィック成長であり、窒化物半導体積層体には歪が蓄積されているためである。歪はメサ構造の形成を含むデバイスプロセスにおいて一部解放されるが、歪が開放される際メサ構造に転位の発生を伴う。発生する転位線は、典型的にメサ構造の側面を起点とする。
【0049】
メサ構造に転位が発生する範囲が第2電極下部に至る場合、発振閾値電流が著しく悪化する。この理由から、第2電極は、メサ構造側面近傍に発生した転位の最大発生範囲よりもメサ構造の内側に設けることが好ましい。これにより、メサ構造の歪み解放に伴って発生する転位が第2電極直下の発光層に到達することが回避され、発振閾値電流密度を構造本来の最良水準に到達させることができる。
レーザダイオードの素子抵抗は、第2電極とメサ構造側面との最大距離Dによって決定される。素子抵抗を低減する観点から、より小さいDが達成されることが好ましい。従って、メサ構造側面近傍に発生した転位の最大範囲を抑制することが求められる。
【0050】
出願者らの鋭意検討により、平面視におけるメサ構造の形状を規定することでメサ構造側面近傍に発生した転位の最大範囲を抑制することが可能となることを明らかにした。メサ構造は、平面視で長辺と短辺とを有する矩形状であり、長辺が<1-100>方向に平行であって、凸部は、平面視において<11-20>方向および<-1-120>方向の少なくとも一方に突出していることが好ましい。すなわち、凸部は、メサ構造の共振ミラー端面が形成された面以外の側面に設けられていることが好ましい。凸部を設けることにより、凸部先端にメサ構造の歪み応力を集中させることが可能となる。従って、メサ構造形成時における応力解放過程に伴ってメサ構造内部に導入される転位の発生起点を意図的に制御することで、効率的に転位の対消滅を発生させて、発生した転位の広がりを抑制することが可能となる。
【0051】
凸部の頂部への十分な応力集中を達成する観点および効率的に転位の対消滅を発生させる観点から、凸部は、平面視における高さが1μm以上11μm以下であることが好ましく、1μm以上3.5μm以下であることがより好ましい。凸部の高さが上述の範囲内である場合、凸部の側面の凹凸が微小で応力集中が不十分となったり、凸部の底面から頂部までの距離が大きく、発生した転位の会合の頻度が低下して転位の最大範囲が拡大することを抑制することができる。
【0052】
また、凸部の頂部への十分な応力集中を達成する観点から、平面視における凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角(以下、凸部頂部の角度と記載する場合がある)の最小角度が1度以上130度以下であることが好ましく、1度より大きく120度以下であることがより好ましい。凸部頂部の最小角度が上述の範囲内である場合、凸部が損傷しにくく、凸部の側面の凹凸が微小で応力集中が不十分となることを抑制して、凸部の頂部への十分な応力集中を達成することができる。
【0053】
さらに、メサ内部方向への転位伝搬を抑制の観点から、転位の発生起点となる複数の凸部の頂部同士の間の距離は、1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上6μm以下であることがより好ましい。凸部の頂部同士の間の距離が上述の範囲内である場合、凸部を容易に形成することができるとともに、効率的に発生した転位を会合させてメサ内部方向への転位伝搬を抑制することが可能となる。
【0054】
(1.2)レーザダイオードの製造方法
本実施形態のレーザダイオードは、基板上に各層を形成する工程を経て製造される。
【0055】
(基板の形成)
基板は、昇華法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法等の気相成長法および液相成長法等の一般的な基板成長法により形成される。
【0056】
(半導体積層部の形成)
基板上に形成される半導体積層部の各層は、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法または有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等で行うことができる。
ここで、基板上に形成された各層のうち窒化物半導体の層は、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)を含むAl原料、トリメチルガリウム(TMGa)もしくはトリエチルガリウム(TEGa)等を含むGa原料、またはアンモニア(NH3)を含むN原料を用いて形成することができる。
レーザダイオードは、基板上に形成された半導体積層部の各層の不要部分をエッチングによって除去する工程を経て製造される。半導体積層部の各層の不要部分の除去は、例えば誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング等で行うことができる。
【0057】
(電極の形成)
レーザダイオードは、電極を形成する工程を経て製造され得る。第1電極および第2電極等の電極は、例えば抵抗加熱蒸着、電子銃蒸着またはスパッタ等により形成されるが、これら方法には限定されない。電極は、単層で形成してもよく、複数層積層して形成してもよい。また、電極は、層の形成後に酸素、窒素または空気雰囲気等で熱処理が行われてもよい。
最後に、上述した各工程を経て各層が形成された基板をダイシングにより個片へと分割してレーザダイオードが製造される。
【0058】
2.レーザダイオードの具体例
次に、図面を用いて本実施形態のレーザダイオードをより具体的に説明する。なお、以下の各具体例の各層の詳細な構成は、上述した通りである。
【0059】
(3.1)第1の実施形態
図1Aは、第1の実施形態にかかるレーザダイオード1の平面構成を示す平面模式図であり、
図1Bは、
図1Aに示すレーザダイオード1の光共振方向に垂直な面の断面構成を示す断面模式図である。
図1A及び
図1Bにおいて、<1-100><11-20><0001><-1-120>はそれぞれ結晶方位を示している。
【0060】
図1Aに示すように、本実施形態のレーザダイオード1は、Alを含む基板10と、基板10上に配置された半導体積層部20とを備えている。また、レーザダイオード1には、図示しない第1電極及び第2電極を備えている。
半導体積層部20は、第1導電型の窒化物半導体層を含む第1導電型クラッド層21と、一つ以上の量子井戸を含む窒化物半導体で形成された発光層22と、第2導電型の窒化物半導体層を含む第2導電型クラッド層23と、を有する。第1導電型クラッド層21の一部、発光層22及び第2導電型クラッド層23は、光共振および射出のためメサ構造201となっている。
【0061】
図1Aに示すように、メサ構造201の側面のうち、光共振方向D1に平行な側面は、平面視において複数の凸部を有している。複数の凸部は、
図1Aに示したように光共振方向D1に垂直ではない側面の全ての側面に備えられていても良いし、一つの側面に備えられていても良い。また、メサ構造201の側面の全領域に渡って複数の凸部を備えていても良いし、一部領域にのみ凸部を備えていても良い。
【0062】
複数の凸部について、
図2Aから
図2Cを用いて詳細に説明する。
図2Aから
図2Cは、複数の凸部の形状の一例を示すための平面模式図である。図中、凸部の頂部の間の距離W、凸部の高さ(凸部の基底部から凸部の頂部の距離)H、側面の基底部から凸部の頂部を結んだ線分がなす最小角φをそれぞれ示している。
複数の凸部のパターンは、
図2Aに示すように平面視で三角形状の凸部が連続して並んでいても良いし、
図2Bに示すように平面視で頂部が円弧状の凸部であっても良いし、
図2Cに示すように平面視で三角形状の凸部が間隔を空けて並んでいても良い。凸部の頂部へ十分な応力集中を達成する観点から、凸部は
図2Aから
図2Cに共通するように、凸部の頂部が平坦ではない形状であることが好ましい場合がある。
【0063】
(3.2)第2の実施形態
図3は、第2の実施形態にかかるレーザダイオード2を説明するための模式図である。
図3は、レーザダイオード2の断面模式図である。
レーザダイオード2は、第1導電型導波路層24と、第2導電型導波路層25とを更に備える半導体積層部20Aを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード2は、発光層22への光閉じ込め効果が向上し、発光強度が向上する。
【0064】
(3.3)第3の実施形態
図4は、第3の実施形態にかかるレーザダイオード3を説明するための模式図である。
図4は、レーザダイオード3の断面模式図である。
レーザダイオード3は、第2導電型クラッド層23上に配置された第2導電型コンタクト層26を備える半導体積層部20Bを有している点で、第2の実施形態に係るレーザダイオード2と相違する。
このようなレーザダイオード3は、発光層22へのキャリア注入効率が向上し、発光効率が向上する。
【0065】
なお、第2導電型コンタクト層26は、例えば第2実施形態にかかるレーザダイオード2と組み合わされてもよい。すなわち、レーザダイオード2の第2導電型クラッド層23上に第2導電型コンタクト層26が配置されたレーザダイオードであっても良い(不図示)。
【0066】
(3.4)第4の実施形態
図5は、第4の実施形態にかかるレーザダイオード4を説明するための模式図である。
図5は、レーザダイオード4の断面模式図である。
レーザダイオード4は、第2導電型縦伝導層23Aと第2導電型横伝導層23Bとで構成された第2導電型クラッド層23及び第2導電型コンタクト層26を備える半導体積層部20Cを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード4は、発光層22へのキャリア注入効率が向上し、発光効率が向上する。
【0067】
(3.5)第5の実施形態
図6は、第5の実施形態にかかるレーザダイオード5を説明するための模式図である。
図6は、レーザダイオード5の断面模式図である。
レーザダイオード5は、第1導電型導波路層24及び第2導電型導波路層25と、第2導電型縦伝導層23Aと第2導電型横伝導層23Bとで構成された第2導電型クラッド層と、第2導電型縦伝導層23Aと第2導電型導波路層25との間に設けられた中間層27とを備える半導体積層部20Dを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
このようなレーザダイオード5は、中間層27におけるキャリアの伝導率を向上させつつ、第2導電型横伝導層23B及び第2導電型コンタクト層26を完全歪で形成させることによるキャリアの横伝導率を向上させることができる
【0068】
(3.6)第6の実施形態
図7は、第6の実施形態にかかるレーザダイオード6を説明するための模式図である。
図7は、レーザダイオード6の断面模式図である。
レーザダイオード6は、第1導電型導波路層24及び第2導電型導波路層25、第2導電型コンタクト層26を更に備え、レーザダイオード6のメサ構造は二段構造になっており、第1導電型クラッド層21を含むメサ構造201と、第1導電型クラッド層21を含まないメサ構造203とを備える半導体積層部20Eを有している点で、第1の実施形態に係るレーザダイオード1と相違する。
【0069】
4.効果
上述した本開示のレーザダイオードは、以下の効果を有する。
(1)レーザダイオードは、半導体積層部の少なくとも一部に形成された光共振および射出のためのメサ構造の側面のうち、光共振方向に垂直ではない側面に、複数の凸部を有している。
これにより、凸部先端にメサ構造の歪み応力を集中させて、メサ構造形成時における応力解放過程に伴ってメサ構造内部に導入される転位の発生起点を制御することが可能となる。
【0070】
(2)レーザダイオードでは、平面視における複数の凸部の頂部同士の間の距離が1μm以上10μm以下であることが好ましい。
これにより、効率的に発生した転位を会合させてメサ内部方向への転位伝搬を抑制することが可能となる。
(3)レーザダイオードでは、平面視における凸部の高さが1μm以上11μm以下であることが好ましい。
これにより、発生した転位の会合の頻度が低下して転位の最大範囲が拡大することを抑制することができる。
【0071】
(4)レーザダイオードでは、平面視における、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士のなす角の最小角度は、1度以上120度以下である、
これにより、凸部の頂部への十分な応力集中を達成できる。
(5)レーザダイオードでは、メサ構造は、窒化物半導体基板の結晶方位(1-100)面に平行な端面を共振ミラー端面とする共振器を有し、<1-100>方向に光を射出する端面発光型紫外レーザダイオードであることが好ましい。
これにより、レーザ共振器の共振ミラー端面を原子的に平坦な(1-100)面に容易に形成できる。
【0072】
(6)レーザダイオードでは、メサ構造が、平面視で長辺と短辺とを有する矩形状であり、長辺が<1-100>方向に平行であって、凸部が、平面視において<11-20>方向および<-1-120>方向の少なくとも一方に突出していることが好ましい。
これにより、共振ミラー端面が形成された面以外の側面にメサ構造の歪み応力を集中させて転位の最大範囲を抑制することが可能となる凸部を設けることができる。
(7)レーザダイオードでは、窒化物半導体基板は、AlN単結晶基板であることが好ましい。
これにより、基板の上側に形成される窒化物半導体層との格子定数差が小さくなり、窒化物半導体層を格子整合系で成長させることで貫通転位を少なくすることができる。
【0073】
(8)レーザダイオードでは、発光層の上下に、発光層へ光を閉じ込める第1導電型導波路層及び第2導電型導波路層を備えることが好ましい。
これにより、発光層へ光を閉じ込める効果が向上し、発光効率が向上する。
【0074】
(9)レーザダイオードでは、第2導電型クラッド層上にGaNを含む第2導電型コンタクト層を更に備え、第2導電型クラッド層がAlfGa1-fN(0.1≦f≦1)を含み、窒化物半導体基板から遠ざかるにつれてAl組成fが小さくなる組成傾斜を有し、膜厚が0.5μm未満である第2導電型縦伝導層と、AlgGa1-gN(0<g≦1)を含む第2導電型横伝導層と、を有することが好ましい。
これにより、キャリアをより効率よく発光層へ注入して発光効率を向上させることができる。
【0075】
(10)レーザダイオードでは、第2導電型縦伝導層と第2導電型導波路層との間に配置されて、AlhGa1-hN(0<h≦1.0)で形成された中間層、を備えることが好ましい。
これにより、第2導電型横伝導層および第2導電型コンタクト層を完全歪で形成させてキャリアの伝導率を向上させることができる。
(11)レーザダイオードでは、第2導電型縦伝導層の膜厚は、250nm以上450nm以下であることが好ましい。
これにより、発光層への光閉じ込め効果が向上するとともに、キャリア注入効果が向上し、レーザダイオードの発光効率が向上する。
【0076】
(12)レーザダイオードでは、第2導電型縦伝導層のうちの第2導電型導波路層との界面を含む一部または全ての領域が不純物がドープされていない領域であることが好ましい。
これにより、不純物の拡散を抑制してキャリアを効率的に発光層に注入することができ、発振効率を高めることができる。
【0077】
(13)レーザダイオードでは、第1導電型クラッド層がAlaGa1-aN(0.6<a≦0.8)で形成されており、第2導電型縦伝導層および第2導電型横伝導層が窒化物半導体基板に対して完全歪で形成されていることが好ましい。
第1導電型クラッド層をAlaGa1-aN(0.6<a≦0.8)で形成することにより、第2導電型縦伝導層および第2導電型横伝導層を基板に対して完全歪で形成してキャリアの伝導率を向上させることができる。
(14)レーザダイオードでは、第2導電型横伝導層の第2導電型縦伝導層と対向する面におけるAl組成gがAl組成fの最小値よりも大きいことが好ましい。
これにより、キャリアを横方向に拡散することができ、キャリアの注入効率を高めることができる。
【実施例0078】
以下、本開示の実施例及び比較例について説明する。
【0079】
<実施例1>
基板として厚さ550μmの(0001)面AlN単結晶基板を用い、この基板に対して有機金属気相成長(MOCVD)装置を用いてアニール処理を行った。アニール処理は、1300℃の環境下において、NH3雰囲気中での5分間のアニールおよびH2雰囲気中での5分間のアニールを1セットとして、2セットの処理を行った。
【0080】
次に、基板上に、バッファ層としてホモエピタキシャル層であるAlN層を形成した。AlN層は、1200℃の環境下において500nmの厚さで形成した。このとき、III族元素原料ガスの供給レートと窒素原料ガスの供給レートとの比率(V/III比)は50とした。また、アニールを行ったチャンバーの真空度を50mbarとした。このときのAlN層の成長レートは0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、N原料としてアンモニア(NH3)を用いた。
【0081】
上述したように形成したAlN層上に、第1導電型クラッド層を形成した。第1導電型クラッド層は、Siをドーパント不純物として用いたn型AlGaN層(Al:70%、すなわちAl0.70Ga0.30N層)とした。第1導電型クラッド層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で350nmの厚さで形成した。このときの第1導電型クラッド層の成長レートは0.4μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。また、N原料としてアンモニア(NH3)を用いた。また、Si原料としてモノシラン(SiH4)を用いた。
【0082】
続いて、第1導電型クラッド層上に第1導電型導波路層であるn型導波路層を形成した。n型導波路層は、Siをドーパント不純物として用いたn型AlGaN層(Al:63%、すなわちAl0.63Ga0.37N層)とした。n型導波路層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で60nmの厚さで形成した。このときのn型導波路層の成長レートは0.35μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。また、N原料としてアンモニア(NH3)を用いた。
【0083】
続いて、n型導波路層上に発光層を形成した。発光層は、量子井戸層とバリア層とを3周期積層させた多重量子井戸構造を有するように成膜して形成した。ここで、量子井戸層は、3.0nmの厚さを有するAlGaN層(Al:52%、すなわちAl0.52Ga0.48N層)とした。また、6.0nmの厚さを有するバリア層は、AlGaN層(Al:63%、すなわちAl0.63Ga0.37N層)とした。
発光層は、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で形成した。このときの量子井戸層の成長レートは0.18μm/hrであった。また、バリア層の成長レートは0.15μm/hrであった。
【0084】
続いて、発光層上に第2導電型導波路層であるp型導波路層を形成した。p型導波路層は、ドーパントを含まないAlGaN層(Al:63%、すなわちAl0.63Ga0.37N層)とした。p型導波路層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で60nmの厚さで形成した。このときのp型導波路層の成長レートは0.35μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。
【0085】
続いて、p型導波路層上に第2導電型クラッド層を形成した。第2導電型クラッド層は、第2導電型縦伝導層と、第2導電型横伝導層とを備える積層構造であり、Al組成比が傾斜するグレーデッド層である。第2導電型縦伝導層は、基板から遠ざかる方向にAl組成が分布をもち、Al=0.63から1.0まで変化する、層厚20nmのp型AlGaN層とした。また、第2導電型横伝導層は、基板から遠ざかる方向にAl組成が分布をもち、Al=1.0から0.7まで変化する、層厚320nmのp型AlGaN層とした。第2導電型クラッド層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で形成した。このときの第2導電型クラッド層の成長レートは0.3~0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)を用いた。
【0086】
続いて、第2導電型クラッド層上に第2導電型コンタクト層であるp型コンタクト層を形成した。ここで、pコンタクト層は、AlGaN層とGaN層とにより形成した。AlGaN層は、Mgをドーパント不純物として用い、基板から遠ざかる方向にAl組成が分布をもち、Al=0.7から0.4まで変化する、層厚30nmのp型窒化物半導体層とした。また、GaN層は、10nmの厚さを有するGaN(すなわちAl:0%)で形成した。
【0087】
p型コンタクト層は、950℃の温度で、真空度を150mbarに設定し、V/III比を3650とした条件で形成した。このときのp型コンタクト層の成長レートは0.2μm/hrであった。
【0088】
以上のようにして、AlN基板上に、半導体積層部を形成した。この半導体積層部に対してXRDによる逆格子マッピング測定を実施したところ、半導体積層部はp型コンタクト層まで緩和のないシュードモルフィック成長をしていることが分かった。
【0089】
上述したように形成された半導体積層部に対して、N2雰囲気中、700℃で10分以上アニーリングを行うことによって、p型コンタクト層を更に低抵抗化した。
フォトリソグラフィーによって、p型コンタクト層上に<1-100>方向のメサ境界に複数の凸部を設けるようなレジストパターン(IPCエッチングのフォトレジストマスク)を形成した。次いで、ICPを用いてCl2およびBCl3を含むガスによりドライエッチングを行うことによって、n型クラッド層を露出させた。n型クラッド層は、平面視で<1-100>方向長い矩形の領域に形成した。このとき、ICPの条件は、アンテナ電力が320W、バイアス電力が30W、自動圧力調整(APC:Adaptive Pressure Control valve)が2Pa、プロセス圧力が600Paであり、ガス流量はCl2ガスが20sccm、BCl3ガスが5sccmであった。
【0090】
形成されたメサ構造は<1-100>方向の長さが600μmであり、<11-20>方向の長さが40μmであった。ここで、メサ構造の<1-100>方向の長さは平面視における共振器ミラー端面同士の間の距離であり、<11-20>方向の長さはメサ構造の側面同士の間の距離である。
【0091】
メサ構造におけるp型コンタクト層上に、<1-100>方向に長い矩形状にNiおよびAuを順に成膜して電極金属領域を複数形成して第2電極とした。このとき、第2電極の幅は5μmであり、長さは600μmであった。
メサ構造に対して、発光波長における単色Cathode Luminescence測定を行い、非発光領域となるメサ構造周囲の転位発生領域の幅を確認したところ、5.6μmであった。レーザダイオードの発振閾値を低減の観点から、第2電極とメサ構造周囲の転位発生領域とが重ならないように、メサ構造の側面から5.6μm離れた位置に第2電極を配置した。
【0092】
また、メサ構造のn型クラッド層が露出した領域において、<1-100>方向に長い矩形状にV、Al、Ni、Ti及びAuを順に成膜して電極金属領域を複数形成して第1電極とした。さらに、電極金属領域内において、<11-20>方向に複数回劈開させることによって、基板をストライプ状に分割し、個片化されたレーザダイオードを形成した。最終的なメサ構造の<1-100>方向の長さは600μmであった。
【0093】
このようにして得られたレーザダイオードにおいて、メサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は1.0μmであり,凸部の高さは1.0μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は20度であった。また、レーザダイオードの素子抵抗は5.4Ωであった。
【0094】
<実施例2>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は6μmであり、凸部の高さは1μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は20度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ10.5μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から10.5μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は7Ωであった。
【0095】
<実施例3>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は12μmであり、凸部の高さは1μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は20度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ11.4μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から11.4μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は7.4Ωであった。
【0096】
<実施例4>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は5μmであり、凸部の高さは3.5μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は20度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ9.3μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から9.3μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は6.6Ωであった。
【0097】
<実施例5>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は5μmであり、凸部の高さは10μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は20度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ11.3μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から11.3μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は7.3Ωであった。
【0098】
<実施例6>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は5μmであり、凸部の高さは12μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は20度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ11.6μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から11.6μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は7.4Ωであった。
【0099】
<実施例7>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は5μmであり、凸部の高さは1μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は10度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ5.4μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から5.4μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は5.3Ωであった。
【0100】
<実施例8>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は5μmであり、凸部の高さは1μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は60度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ7.9μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から7.9μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は6.1Ωであった。
【0101】
<実施例9>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は5μmであり、凸部の高さは1μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は100度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ9.5μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から9.5μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は6.7Ωであった。
【0102】
<実施例10>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部の頂点間距離は1μmであり、凸部の高さは1μmであり、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度は130度であった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ11.2μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から11.2μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は7.3Ωであった。
【0103】
<比較例1>
フォトレジストマスクの形状を変更してメサ構造の側面の形状を変更した以外は、実施例1と同様の方法でレーザダイオードを得た。
得られたレーザダイオードのメサ構造の<1-100>方向の側面(共振器ミラー端面ではない側面)の平面視における形状を測定したところ、凸部は無かった。メサ構造周囲の非発光領域の幅を測定したところ12μmであった。第2電極とメサ構造周囲の暗線領域とが重ならないように、メサ構造の側面から12μm離れた位置に第2電極を配置したところ、レーザダイオードの素子抵抗は7.5Ωであった。
以下の表1に、各実施例及び各比較例の評価結果を示す。
【0104】
【0105】
表1に示すように、レーザダイオードのメサ構造の側面に凸部を有する実施例1から実施例10のレーザダイオードは、メサ構造の側面に凸部を有していない比較例1のレーザダイオードと比較して、素子抵抗が低下した。
また、メサ構造の側面に形成された凸部の頂部間の距離が1μm以上10μm以下である実施例1及び実施例2のレーザダイオードは、凸部の頂部間の距離が10μmを超える実施例3のレーザダイオードと比較して、さらに素子抵抗が低下した。
【0106】
さらに、凸部の底部と頂部とを結んだ線分同士がなす角の最小角度が1度より大きく120度以下である実施例7から実施例9のレーザダイオードは、最小角度が120度を超える実施例10のレーザダイオードと比較して、さらに素子抵抗が低下した。
このように、レーザダイオードの素子抵抗を低下させるために、メサ構造の側面に凸部を設けることが好ましく、凸部の形状(頂点間距離、高さ、頂点の平面視における角度)を調整することがさらに好ましいことがわかった。
【0107】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。