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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150797
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】傾斜センサおよびデータ取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/06 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01C9/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053570
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】笠原 史年
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】東海林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌絵
(72)【発明者】
【氏名】阿部 淳
(57)【要約】
【課題】加速度センサの出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができるとともに、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる傾斜センサ、および傾斜センサを備えたデータ取得装置を提供すること。
【解決手段】傾斜センサ6は、第1軸65および第2軸64を中心に回転自在に支持されたジンバル機構60と、第1モータ654と、第2モータ644と、座標軸の原点が第1軸65の軸心656と第2軸64の軸心646との交点に一致した状態でジンバル機構60に設置された加速度センサ631と、第1軸65および第2軸64を同時に回転させることにより第1軸65および第2軸64を中心として加速度センサ631を連続的に回転させ、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する制御部66と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸と前記第1軸に直交する第2軸とを有し、前記第1軸および前記第2軸を中心に回転自在に支持されたジンバル機構と、
前記第1軸を回転させる第1モータと、
前記第2軸を回転させる第2モータと、
座標軸の原点が前記第1軸の軸心と前記第2軸の軸心との交点に一致した状態で前記ジンバル機構に設置された加速度センサと、
前記第1モータおよび前記第2モータを駆動して前記第1軸および前記第2軸を同時に回転させることにより前記第1軸および前記第2軸を中心として前記加速度センサを連続的に回転させ、前記加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する制御部と、
を備えたことを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
前記第1モータにより回転する前記第1軸の回転角を検出する第1エンコーダと、
前記第2モータにより回転する前記第2軸の回転角を検出する第2エンコーダと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記加速度センサの出力値に対して前記周波数解析を適用したときの前記第1エンコーダにより検出された前記第1軸の基準位置からの回転角および前記第2エンコーダにより検出された前記第2軸の基準位置からの回転角の少なくともいずれかに基づいて前記傾斜角を演算することを特徴とする請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1エンコーダにより検出された前記第1軸の回転角および前記第2エンコーダにより検出された前記第2軸の回転角の少なくともいずれかが所定角度を示すタイミングで前記加速度センサの出力値を取得し、前記第1軸の回転角および前記第2軸の回転角の少なくともいずれかと、前記加速度センサの出力値と、を同期させることを特徴とする請求項2に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1エンコーダの出力信号および前記第2エンコーダの出力信号の少なくともいずれかに基づいて前記タイミングを検知することを特徴とする請求項3に記載の傾斜センサ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1モータの制御周期および前記第2モータの制御周期の少なくともいずれかと、前記加速度センサの出力値を取得する時間間隔と、を一致させることを特徴とする請求項3または4に記載の傾斜センサ。
【請求項6】
前記第1軸は、前後方向に延び、
前記第2軸は、左右方向に延び、
前記座標軸は、前記第1軸の軸心に一致したX軸と、前記第2軸の軸心に一致したY軸と、を有することを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の傾斜センサ。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1エンコーダにより検出された前記第1軸の回転角に基づいて前記第1軸の回転速度を演算し、前記第2エンコーダにより検出された前記第2軸の回転角に基づいて前記第2軸の回転速度を演算し、前記第1軸の回転速度および前記第2軸の回転速度により前記加速度センサの前記出力値に含まれる遠心力に関する成分を除去する演算を実行することを特徴とする請求項2~6のいずれか1項に記載の傾斜センサ。
【請求項8】
測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子と、を有し、前記受光素子からの前記受光信号に基づいて測定対象物の測距を行う測距部と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の傾斜センサと、
前記測距部を制御する制御部と、
を備え、
前記傾斜センサの制御部は、第1制御部であり、
前記測距部を制御する制御部は、第2制御部であることを特徴とするデータ取得装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に対する傾斜角の検知を必要とする測量装置および画像取得装置等のデータ取得装置に設けられる傾斜センサ、および傾斜センサを備えたデータ取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測量装置および画像取得装置等のデータ取得装置の水平方向に対する傾斜角を検出するセンサとして、例えばチルトセンサが挙げられる。しかし、チルトセンサは、高精度で水平を検出することができる一方で、傾斜角の検出範囲が比較的狭いという問題を有する。
【0003】
これに対して、特許文献1には、チルトセンサと加速度センサとを備えた姿勢検出装置が開示されている。加速度センサは、チルトセンサと比較すると、大きい傾斜角を検出できる。そのため、特許文献1に記載された姿勢検出装置は、検出精度を確保しつつ全姿勢での姿勢検出が可能である。しかし、姿勢検出装置がチルトセンサおよび加速度センサの両方を備えると、姿勢検出装置が大型化するという点において、特許文献1に記載された姿勢検出装置には、改善の余地がある。
【0004】
そこで、水平方向に対する傾斜角を検知する傾斜センサの小型化を実現するために、チルトセンサを設けず加速度センサだけを設けることが一策として挙げられる。しかし、加速度センサには、チルトセンサと比較すると、検出精度が低いという問題がある。すなわち、加速度センサが温度や気圧や湿度や磁場などの環境の変化による影響を受けることにより、加速度センサの出力値にドリフトが生ずることがある。あるいは、加速度センサが環境の変化による影響を受け続けることにより、加速度センサの出力値が経時的に変化し、加速度センサの出力値にドリフトが生ずることがある。また、測量装置および画像取得装置等のデータ取得装置に用いられる傾斜センサには、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することが望まれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-151423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、加速度センサの出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができるとともに、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる傾斜センサ、および傾斜センサを備えたデータ取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、第1軸と前記第1軸に直交する第2軸とを有し、前記第1軸および前記第2軸を中心に回転自在に支持されたジンバル機構と、前記第1軸を回転させる第1モータと、前記第2軸を回転させる第2モータと、座標軸の原点が前記第1軸の軸心と前記第2軸の軸心との交点に一致した状態で前記ジンバル機構に設置された加速度センサと、前記第1モータおよび前記第2モータを駆動して前記第1軸および前記第2軸を同時に回転させることにより前記第1軸および前記第2軸を中心として前記加速度センサを連続的に回転させ、前記加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する制御部と、を備えたことを特徴とする本発明に係る傾斜センサにより解決される。
【0008】
本発明に係る傾斜センサによれば、加速度センサは、座標軸の原点がジンバル機構の第1軸の軸心とジンバル機構の第2軸の軸心との交点に一致した状態で、ジンバル機構に設置されている。そして、制御部は、第1モータおよび第2モータを駆動して第1軸および第2軸を同時に回転させることにより第1軸および第2軸を中心として加速度センサを連続的に回転させる。また、制御部は、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する。このように、本発明に係る傾斜センサの制御部は、加速度センサの出力値自体ではなく加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用した結果に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。そのため、制御部は、加速度センサの高精度な出力値を取得しなくとも、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することで水平方向に対する傾斜角を演算することができる。これにより、本発明に係る傾斜センサは、周波数解析を用いることで、加速度センサの出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。また、高精度な検出が可能なチルトセンサなどが不要であるため、傾斜センサの小型化を図ることができる。
【0009】
また、制御部が第1軸および第2軸を同時に回転させることで、加速度センサの各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)に第1モータおよび第2モータの両方の回転の影響が表れてしまう。これに対して、本発明に係る傾斜センサの制御部は、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより、第1モータが回転した時の加速度センサの各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、第2モータが回転した時の加速度センサの各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、を互いに分離し、水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。 つまり、制御部は、例えば、第1モータのみを駆動し第1軸のみを回転させたり、第2モータのみを駆動し第2軸のみを回転させたりしなくとも、第1モータおよび第2モータを駆動して第1軸および第2軸を同時に回転させ、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算できる。そのため、制御部は、第1軸のみを回転させた場合と、第2軸のみを回転させた場合と、で別々に水平方向に対する傾斜角を演算する必要はなく、第1軸および第2軸を同時に回転させて水平方向に対する傾斜角を演算できる。これにより、本発明に係る傾斜センサは、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる。
【0010】
好ましくは、本発明に係る傾斜センサは、前記第1モータにより回転する前記第1軸の回転角を検出する第1エンコーダと、前記第2モータにより回転する前記第2軸の回転角を検出する第2エンコーダと、をさらに備え、前記制御部は、前記加速度センサの出力値に対して前記周波数解析を適用したときの前記第1エンコーダにより検出された前記第1軸の基準位置からの回転角および前記第2エンコーダにより検出された前記第2軸の基準位置からの回転角の少なくともいずれかに基づいて前記傾斜角を演算することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る傾斜センサによれば、制御部は、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用したときの第1エンコーダにより検出された第1軸の基準位置からの回転角および第2エンコーダにより検出された第2軸の基準位置からの回転角の少なくともいずれかに基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。言い換えれば、制御部は、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用したときの第1エンコーダの位相および第2エンコーダの位相の少なくともいずれかに基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。これにより、本発明に係る傾斜センサは、水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができるとともに、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる。
【0012】
本発明に係る傾斜センサにおいて、好ましくは、前記制御部は、前記第1エンコーダにより検出された前記第1軸の回転角および前記第2エンコーダにより検出された前記第2軸の回転角の少なくともいずれかが所定角度を示すタイミングで前記加速度センサの出力値を取得し、前記第1軸の回転角および前記第2軸の回転角の少なくともいずれかと、前記加速度センサの出力値と、を同期させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る傾斜センサによれば、制御部は、第1軸の回転角および第2軸の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサの出力値と、を同期させる。これにより、加速度センサが所定の出力値を示すタイミングと、そのタイミングにおける第1軸の回転角および第2軸の回転角と、の関係がずれることを抑えることができる。また、制御部は、第1エンコーダにより検出された第1軸の回転角および第2エンコーダにより検出された第2軸の回転角の少なくともいずれかが所定角度を示すタイミングで加速度センサの出力値を取得する。すなわち、制御部は、一定時間ごとではなく、第1エンコーダおよび第2エンコーダの少なくともいずれかの一定角度ごとに加速度センサの出力値のサンプリングを実行する。これにより、例えば、加速度センサが回転する際に、加速度センサやジンバル機構などの回転体のアンバランスによって、第1モータおよび第2モータの少なくともいずれかに加減速が生じた場合であっても、加速度センサが所定の出力値を示すタイミングと、そのタイミングにおける第1軸の回転角および第2軸の回転角と、の関係がずれることをより確実に抑え、第1軸の回転角および第2軸の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサの出力値と、をより確実に同期させることができる。
【0014】
本発明に係る傾斜センサにおいて、好ましくは、前記制御部は、前記第1エンコーダの出力信号および前記第2エンコーダの出力信号の少なくともいずれかに基づいて前記タイミングを検知することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る傾斜センサによれば、制御部は、第1エンコーダおよび第2エンコーダの少なくともいずれかの出力信号をトリガとして加速度センサの出力値を取得し、第1軸の回転角および第2軸の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサの出力値と、を同期させる。これにより、加速度センサが所定の出力値を示すタイミングと、そのタイミングにおける第1軸の回転角および第2軸の回転角と、の関係がずれることをより確実に抑え、第1軸の回転角および第2軸の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサの出力値と、をより確実に同期させることができる。
【0016】
本発明に係る傾斜センサにおいて、好ましくは、前記制御部は、前記第1モータの制御周期および前記第2モータの制御周期の少なくともいずれかと、前記加速度センサの出力値を取得する時間間隔と、を一致させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る傾斜センサによれば、第1モータおよび第2モータの少なくともいずれかに周期的な加減速が生じた場合であっても、第1モータおよび第2モータの周期的な加減速が加速度センサの出力値に与える影響を抑えることができる。これにより、本発明に係る傾斜センサは、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0018】
本発明に係る傾斜センサにおいて、好ましくは、前記第1軸は、前後方向に延び、前記第2軸は、左右方向に延び、前記座標軸は、前記第1軸の軸心に一致したX軸と、前記第2軸の軸心に一致したY軸と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る傾斜センサによれば、加速度センサの座標軸のX軸が、前後方向に延びた第1軸の軸心と一致する。また、加速度センサの座標軸のY軸が、左右方向に延びた第2軸の軸心と一致する。そのため、第1モータおよび第2モータに依存する影響を抑えつつ、本発明に係る傾斜センサは、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0020】
本発明に係る傾斜センサにおいて、好ましくは、前記制御部は、前記第1エンコーダにより検出された前記第1軸の回転角に基づいて前記第1軸の回転速度を演算し、前記第2エンコーダにより検出された前記第2軸の回転角に基づいて前記第2軸の回転速度を演算し、前記第1軸の回転速度および前記第2軸の回転速度により前記加速度センサの前記出力値に含まれる遠心力に関する成分を除去する演算を実行することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る傾斜センサによれば、例えば第1軸および第2軸が一定速度で回転するときに加速度センサに発生する遠心力や、加速度センサの座標軸が第1軸の軸心および第2軸の軸心に一致していない場合に加速度センサに発生する遠心力などの影響による加速度が、加速度センサの出力値に含まれる場合であっても、制御部は、第1軸の回転速度および第2軸の回転速度を演算し、第1軸の回転速度および第2軸の回転速度の少なくともいずれかにより加速度センサの出力値に含まれる遠心力に関する成分を除去する演算を実行する。これにより、本発明に係る傾斜センサは、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0022】
前記課題は、測定光を発する発光素子と、前記測定光を射出する測定光射出部と、反射測定光を受光する受光部と、前記反射測定光を受光して受光信号を発生する受光素子と、を有し、前記受光素子からの前記受光信号に基づいて測定対象物の測距を行う測距部と、上記のいずれかの傾斜センサと、前記測距部を制御する制御部と、を備え、前記傾斜センサの制御部は、第1制御部であり、前記測距部を制御する制御部は、第2制御部であることを特徴とする本発明に係るデータ取得装置により解決される。
【0023】
本発明に係るデータ取得装置によれば、傾斜センサが有する加速度センサは、座標軸の原点がジンバル機構の第1軸の軸心とジンバル機構の第2軸の軸心との交点に一致した状態で、ジンバル機構に設置されている。そして、第1制御部は、第1モータおよび第2モータを駆動して第1軸および第2軸を同時に回転させることにより第1軸および第2軸を中心として加速度センサを連続的に回転させる。また、第1制御部は、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する。このように、本発明に係るデータ取得装置の傾斜センサの第1制御部は、加速度センサの出力値自体ではなく加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用した結果に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。そのため、第1制御部は、加速度センサの高精度な出力値を取得しなくとも、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することで水平方向に対する傾斜角を演算することができる。これにより、本発明に係るデータ取得装置の傾斜センサは、周波数解析を用いることで、加速度センサの出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。また、高精度な検出が可能なチルトセンサなどが不要であるため、傾斜センサの小型化を図ることができる。これにより、データ取得装置の小型化を図ることができる。
【0024】
また、第1制御部が第1軸および第2軸を同時に回転させることで、加速度センサの各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)に第1モータおよび第2モータの両方の回転の影響が表れてしまう。これに対して、本発明に係るデータ取得装置の傾斜センサの第1制御部は、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより、第1モータが回転した時の加速度センサの各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、第2モータが回転した時の加速度センサの各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、を互いに分離し、水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。つまり、第1制御部は、例えば、第1モータのみを駆動し第1軸のみを回転させたり、第2モータのみを駆動し第2軸のみを回転させたりしなくとも、第1モータおよび第2モータを駆動して第1軸および第2軸を同時に回転させ、加速度センサの出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算できる。そのため、第1制御部は、第1軸のみを回転させた場合と、第2軸のみを回転させた場合と、で別々に水平方向に対する傾斜角を演算する必要はなく、第1軸および第2軸を同時に回転させて水平方向に対する傾斜角を演算できる。これにより、本発明に係るデータ取得装置の傾斜センサは、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加速度センサの出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができるとともに、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる傾斜センサ、および傾斜センサを備えたデータ取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る傾斜センサを表す概略図である。
図2】本実施形態に係る傾斜センサを表すブロック図である。
図3】加速度センサの座標軸とジンバル機構の回転軸の軸心との関係を表す概念図である。
図4】本実施形態の加速度センサの出力値を表すグラフである。
図5】比較例の加速度センサの出力値を表すグラフである。
図6】比較例の加速度センサの出力値を表すグラフである。
図7】本実施形態の制御部が加速度センサの出力値を取得するタイミングを説明するグラフである。
図8】本実施形態の制御部が取得した加速度センサの出力値のサンプリングを表すグラフである。
図9】エンコーダのアナログ出力値のサンプリングを説明するグラフである。
図10】本実施形態の制御部が取得した加速度センサの出力値のサンプリングの第1例を例示するグラフである。
図11】加速度センサのZ軸が鉛直軸と平行である場合を説明する模式図である。
図12】本実施形態の制御部が取得した加速度センサの出力値のサンプリングの第2例を例示するグラフである。
図13】加速度センサのZ軸が鉛直軸から傾いている場合を説明する模式図である。
図14】本実施形態の加速度センサのX軸の軌跡の一例を例示する模式図である。
図15】本発明の実施形態に係るデータ取得装置を表す斜視図である。
図16】本実施形態のレーザスキャナを表すブロック図である。
図17】本実施形態の偏向部を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る傾斜センサを表す概略図である。
図2は、本実施形態に係る傾斜センサを表すブロック図である。
なお、図1に表した概略図において、重力の方向および重力の反対方向は、図1の紙面に垂直な方向である。
【0029】
本実施形態に係る傾斜センサ6は、矩形枠形状の外フレーム61と、外フレーム61の内部に設けられた矩形枠形状の内フレーム62と、内フレーム62の内部に設けられた傾斜検出ユニット63と、を備える。
【0030】
傾斜検出ユニット63は、左右軸64に支持されている。本実施形態の左右軸64は、本発明の「第2軸」の一例である。左右軸64の両端部は、内フレーム62に設けられた軸受641,641に回転自在に嵌合する。左右軸64は、左右軸心646を有する。傾斜検出ユニット63は、左右軸64を中心に前後方向に360゜回転自在となっている。
【0031】
前後軸65,65が、内フレーム62の後面(図1では上面)、前面(図1では下面)から突設されている。本実施形態の前後軸65は、本発明の「第1軸」の一例である。前後軸65,65は、外フレーム61に設けられた軸受651,651と回転自在に嵌合する。前後軸65,65は、左右軸心646と直交する前後軸心656を有する。内フレーム62は、前後軸65,65を中心に左右方向に360゜回転自在となっている。
【0032】
傾斜検出ユニット63は、外フレーム61に対して2軸方向に回転自在に支持されている。内フレーム62を回転自在に支持する機構、および傾斜検出ユニット63を回転自在に支持する機構は、ジンバル機構60を構成する。傾斜検出ユニット63は、外フレーム61に対してジンバル機構60を介して支持されている。内フレーム62の回転を制約する機構が存在しないため、傾斜検出ユニット63は、外フレーム61に対して全方向に自在に回転することができる。
【0033】
左右軸64の一端部には、第2被動ギア642が嵌着されている。第2被動ギア642には、第2駆動ギア643が噛合している。又、内フレーム62の側面(図1では左側面)には、第2モータ644が設けられている。第2駆動ギア643は、第2モータ644の出力軸に嵌着されている。
【0034】
左右軸64の他端部には、第2エンコーダ645が設けられている。第2エンコーダ645は、内フレーム62に対する傾斜検出ユニット63の前後方向の回転角すなわち左右軸64の回転度を検出する。第2エンコーダ645としては、例えばインクリメントタイプのロータリーエンコーダや、アブソリュートタイプのロータリーエンコーダなどが挙げられる。
【0035】
前後軸65,65の一方(図1では下側)の前後軸65には第1被動ギア652が嵌着されている。第1被動ギア652には、第1駆動ギア653が噛合している。又、外フレーム61の下面には第1モータ654が設けられている。第1駆動ギア653は、第1モータ654の出力軸に嵌着されている。
【0036】
前後軸65,65の他方(図1では上側)の前後軸65には、第1エンコーダ655が設けられている。第1エンコーダ655は、内フレーム62の外フレーム61に対する左右方向の回転角すなわち前後軸65の回転度を検出する。第1エンコーダ655としては、例えばインクリメントタイプのロータリーエンコーダや、アブソリュートタイプのロータリーエンコーダなどが挙げられる。
【0037】
図2に表したように、制御部66は、演算処理部661と、入出力制御部662と、を有する。本実施形態の制御部66は、本発明の「傾斜センサの制御部」すなわち「第1制御部」の一例である。第1エンコーダ655は、A/D変換器664を介して入出力制御部662に電気的に接続されている。第2エンコーダ645は、A/D変換器664を介して入出力制御部662に電気的に接続されている。
【0038】
傾斜検出ユニット63は、加速度センサ631を有する。加速度センサ631は、入出力制御部662に電気的に接続されている。具体的には、加速度センサ631は、A/D変換器664を介して入出力制御部662に検出信号を送信する。また、加速度センサ631は、入出力制御部662から送信された制御信号を受信する。
【0039】
傾斜センサ6について、図2により更に説明する。
傾斜センサ6は、第1エンコーダ655と、第2エンコーダ645と、加速度センサ631と、第1モータ654と、第2モータ644と、記憶部663と、制御部66と、を具備している。制御部66は、演算処理部661と、入出力制御部662と、を有する。
【0040】
記憶部73は、傾斜角を検出する為の演算プログラム等のプログラム、及び演算データ等のデータ類を格納している。
【0041】
入出力制御部662は、演算処理部661から出力される制御指令に基づき第1モータ654および第2モータ644を駆動し、演算処理部661で演算された傾斜検出結果を出力する。第1モータ654は、第1駆動ギア653および第1被動ギア652を介して前後軸65を回転させる。第2モータ644は、第2駆動ギア643および第2被動ギア642を介して左右軸64を回転させる。
【0042】
第1エンコーダ655は、第1モータ654の回転角すなわち第1モータ654により回転する前後軸65の回転角を検出する。第2エンコーダ645は、第2モータ644の回転角すなわち第2モータ644により回転する左右軸64の回転角を検出する。
【0043】
加速度センサ631は、傾斜変化を高応答性で検出することができる。加速度センサ631は、各軸が互いに直交する3軸の加速度を取得可能となっている。
【0044】
演算処理部661は、入出力制御部662を介して加速度センサ631から受信した検出結果に基づき、傾斜角および傾斜方向を演算し、演算した傾斜角および傾斜方向に相当する第1エンコーダ655の回転角および第2エンコーダ645の回転角を演算する。例えば、演算制御部661は、以下の式を用い、加速度センサ631から受信した検出結果に基づいて水平方向に対する傾斜角を算出する。

【数1】
【0045】
傾斜センサ6は、外フレーム61が水平に設置された場合に、加速度センサ631が水平を検出する様に設定され、更に第1エンコーダ655の出力および第2エンコーダ645の出力が共に基準位置(回転角0゜)を示す様に設定される。
【0046】
以下、傾斜センサ6の作用について説明する。
図3は、加速度センサの座標軸とジンバル機構の回転軸の軸心との関係を表す概念図である。
図4は、本実施形態の加速度センサの出力値を表すグラフである。
図5および図6は、比較例の加速度センサの出力値を表すグラフである。
【0047】
なお、図5は、前後軸65のみを中心として回転する加速度センサ631の出力値を表すグラフである。図6は、左右軸64のみを中心として回転する加速度センサ631の出力値を表すグラフである。
また、図4(a)、図5(a)および図6(a)は、時間と、加速度センサ631のX軸出力値と、の関係を表すグラフである。図4(b)、図5(b)および図6(b)は、時間と、加速度センサ631のY軸出力値と、の関係を表すグラフである。図4(c)、図5(c)および図6(c)は、時間と、加速度センサ631のZ軸出力値と、の関係を表すグラフである。
【0048】
まず、加速度センサ631の座標軸と、ジンバル機構60の回転軸(左右軸64および前後軸65)の軸心(左右軸心646、前後軸心656)と、の関係を、図3を参照して説明する。
【0049】
加速度センサ631の座標軸は、X軸632と、Y軸633と、Z軸634と、を有する。図3に表したように、加速度センサ631は、加速度センサ631の座標軸の原点が左右軸64の左右軸心646と前後軸65の前後軸心656との交点に一致した状態で、内フレーム62を回転自在に支持する機構と傾斜検出ユニット63を回転自在に支持する機構とを有するジンバル機構60に設置されている。そのため、加速度センサ631は、左右軸64の左右軸心646と前後軸65の前後軸心656との交点(すなわちジンバル機構60の原点)を中心として回転することができる。X軸632は、前後軸65の前後軸心656に一致する。Y軸633は、左右軸64の左右軸心646に一致する。Z軸634は、鉛直軸心676に一致する。
【0050】
制御部66(具体的には入出力制御部662)は、図3に表した矢印A1および矢印A2のように、第1モータ654および第2モータ644の両方を同時に駆動して前後軸65および左右軸64の両方を同時に回転させ、前後軸65および左右軸64を中心として加速度センサ631を連続的に回転させる。そして、制御部66(具体的には演算処理部661)は、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する。
【0051】
次に、本実施形態に係る傾斜センサ6の作用を、図4(a)~図6(c)を参照してさらに説明する。
【0052】
まず、図5(a)~図5(c)を参照して、制御部66が第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを中心として加速度センサ631を連続的に回転させる場合を説明する。制御部66が第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを中心として加速度センサ631を連続的に回転させると、時間と、加速度センサ631の出力値と、の関係は、図5(a)~図5(c)に表したグラフの通りになる。
【0053】
すなわち、加速度センサ631が前後軸65のみを中心として回転するため、加速度センサ631が連続的に回転しても、加速度センサ631のX軸632は、重力の方向に略垂直のままである。一方で、加速度センサ631が前後軸65のみを中心として回転するため、加速度センサ631が連続的に回転すると、加速度センサ631のY軸633および加速度センサ631のZ軸634のそれぞれは、一定周期毎に、重力の方向に略平行になったり、重力の方向に略直交になったり、重力の反対方向に略平行になったりする。そのため、図5(a)~図5(c)に表したように、加速度センサ631のX軸出力値の振幅は、加速度センサ631のY軸出力値の振幅および加速度センサ631のZ軸出力値の振幅よりも小さい。言い換えれば、加速度センサ631のY軸出力値の振幅および加速度センサ631のZ軸出力値の振幅は、加速度センサ631のX軸出力値の振幅よりも大きい。
【0054】
図5(b)に表したように、Y軸出力値は、Y軸633の正方向が重力の方向に略平行になったときに極大になり、Y軸633の正方向が重力の反対方向に略平行になったときに極小になり、Y軸633の正方向が重力の方向に略直交するときに中央値になる。言い換えれば、Y軸出力値は、Y軸633の正方向が重力の方向に一致したときに最大になり、Y軸633の正方向が重力の反対方向に一致したときに最小になり、Y軸633の正方向が重力の直交方向に一致したときに中央値になる。これは、図5(c)に表したように、Z軸出力値についても同様である。
【0055】
続いて、図6(a)~図6(c)を参照して、制御部66が第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを中心として加速度センサ631を連続的に回転させる場合を説明する。制御部66が第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを中心として加速度センサ631を連続的に回転させると、時間と、加速度センサ631の出力値と、の関係は、図6(a)~図6(c)に表したグラフの通りになる。
【0056】
すなわち、加速度センサ631が左右軸64のみを中心として回転するため、加速度センサ631が連続的に回転しても、加速度センサ631のY軸633は、重力の方向に略垂直のままである。一方で、加速度センサ631が左右軸64のみを中心として回転するため、加速度センサ631が連続的に回転すると、加速度センサ631のX軸632および加速度センサ631のZ軸634のそれぞれは、一定周期毎に、重力の方向に略平行になったり、重力の方向に略直交になったり、重力の反対方向に略平行になったりする。そのため、図6(a)~図6(c)に表したように、加速度センサ631のY軸出力値の振幅は、加速度センサ631のX軸出力値の振幅および加速度センサ631のZ軸出力値の振幅よりも小さい。言い換えれば、加速度センサ631のX軸出力値の振幅および加速度センサ631のZ軸出力値の振幅は、加速度センサ631のY軸出力値の振幅よりも大きい。
【0057】
図6(a)に表したように、X軸出力値は、X軸632の正方向が重力の方向に略平行になったときに極大になり、X軸632の正方向が重力の反対方向に略平行になったときに極小になり、X軸632の正方向が重力の方向に略直交するときに中央値になる。言い換えれば、X軸出力値は、X軸632の正方向が重力の方向に一致したときに最大になり、X軸632の正方向が重力の反対方向に一致したときに最小になり、X軸632の正方向が重力の直交方向に一致したときに中央値になる。これは、図6(c)に表したように、Z軸出力値についても同様である。
【0058】
ここで、図5(a)~図5(c)に関して前述したように、制御部66は、第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを回転させる場合には、加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)に第1モータ654および第2モータ644の両方の回転の影響が表れてしまうことを抑え、加速度センサ631のX軸出力値よりも加速度センサ631のY軸出力値を高くすることができる。また、図6(a)~図6(c)に関して前述したように、制御部66は、第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを回転させる場合には、加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)に第1モータ654および第2モータ644の両方の回転の影響が表れてしまうことを抑え、加速度センサ631のY軸出力値よりも加速度センサ631のX軸出力値を高くすることができる。これによれば、傾斜センサ6は、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0059】
しかし、制御部66が、第1モータ654および第2モータ644のいずれか一方のみを駆動し前後軸65および左右軸64のいずれか一方のみを回転させる場合には、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知するという点において改善の余地がある。すなわち、制御部66は、第1モータ654および第2モータ644のいずれか一方のみを駆動し前後軸65および左右軸64のいずれか一方のみを回転させる場合には、第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを回転させる場合と、第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを回転させる場合と、で別々に水平方向に対する傾斜角を演算する必要がある。また、傾斜センサ6が用いられる測量装置および画像取得装置等のデータ取得装置によっては、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することが望まれる場合がある。このような場合において、制御部66が、第1モータ654および第2モータ644のいずれか一方のみを駆動し前後軸65および左右軸64のいずれか一方のみを回転させると、第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを回転させる場合と、第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを回転させる場合と、で別々に水平方向に対する傾斜角を演算する必要があるため、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知するという点において改善の余地がある。
【0060】
これに対して、本実施形態に係る傾斜センサ6の制御部66は、第1モータ654および第2モータ644の両方を同時に駆動して前後軸65および左右軸64の両方を同時に回転させ、前後軸65および左右軸64を中心として加速度センサ631を連続的に回転させる。この場合において、時間と、加速度センサ631の出力値と、の関係は、図4(a)~図4(c)に表したグラフの通りになる。
【0061】
すなわち、加速度センサ631が前後軸65および左右軸64を中心として回転するため、加速度センサ631が連続的に回転すると、加速度センサ631のX軸632、Y軸633およびZ軸634は、一定周期毎に、重力の方向に略平行になったり、重力の方向に略直交になったり、重力の反対方向に略平行になったりする。そのため、図4(a)~図4(c)に表したように、加速度センサ631の出力値の極値は、前後軸65の回転角および左右軸64の回転角の両方の影響を受ける。すなわち、加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)に第1モータ654および第2モータ644の両方の回転の影響が表れてしまう。このままでは、制御部66が水平方向に対する傾斜角を導出することは困難である。
【0062】
これに対して、本実施形態に係る傾斜センサ6の制御部66は、加速度センサ631の出力値(すなわちX軸出力値、Y軸出力値、Z軸出力値)に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算する。
【0063】
本実施形態に係る傾斜センサ6によれば、制御部66は、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することにより、第1モータ654が回転した時の加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、第2モータ644が回転した時の加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、を互いに分離し、水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。つまり、制御部66は、例えば、第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを回転させたり、第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを回転させたりしなくとも、第1モータ654および第2モータ644を駆動して前後軸65および左右軸64を同時に回転させ、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算できる。そのため、制御部66は、前後軸65のみを回転させた場合と、左右軸64のみを回転させた場合と、で別々に水平方向に対する傾斜角を演算する必要はなく、前後軸65および左右軸64を同時に回転させて水平方向に対する傾斜角を演算できる。これにより、本実施形態に係る傾斜センサ6は、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる。
【0064】
また、加速度センサが温度や気圧や湿度や磁場などの環境の変化による影響を受けると、加速度センサの出力値にドリフトが生ずることがある。あるいは、加速度センサが環境の変化による影響を受け続けると、加速度センサの出力値が経時的に変化し、加速度センサの出力値にドリフトが生ずることがある。
【0065】
これに対して、本実施形態に係る傾斜センサ6の制御部66は、加速度センサ631の出力値自体ではなく加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用した結果に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。そのため、制御部66は、加速度センサ631の高精度な出力値を取得しなくとも、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することで水平方向に対する傾斜角を演算することができる。これにより、本実施形態に係る傾斜センサ6は、周波数解析を用いることで、加速度センサ631の出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。また、高精度な検出が可能なチルトセンサなどが不要であるため、傾斜センサ6の小型化を図ることができる。
【0066】
また、第1モータ654および第2モータ644の制御周期に依存する加速度変化や、第1モータ654および第2モータ644が有するコギングトルクの影響による加速度変化などが、加速度センサ631の出力値に含まれることがある。
これに対して、本実施形態に係る傾斜センサ6では、加速度センサ631のサンプリング周期と、第1モータ654および第2モータ644の制御周期と、を互いに一致させることで、周波数解析を適用した際に制御周期に依存する加速度、コギングトルクの影響による加速度変化の平均値を0にすることで、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0067】
なお、制御部66は、第1モータ654および第2モータ644の駆動を制御し、前後軸65および左右軸64を一定速度で回転させてもよく、前後軸65および左右軸64を変速で回転させてもよい。制御部66は、前後軸65および左右軸64を一定速度で回転させる場合には、重力以外の加速度が加速度センサ631に発生することを抑えることができる。また、図4(a)~図4(c)に表したように、制御部66は、X軸出力値およびY軸出力値の少なくともいずれかを正弦波にフィッティングさせ、ノイズを軽減した状態で傾斜角を算出することができる。これにより、制御部66が前後軸65および左右軸64を一定速度で回転させる場合には、本実施形態に係る傾斜センサ6は、より高い精度で傾斜角を検出することができる。なお、制御部66は、前後軸65および左右軸64の回転速度を例えば20rps以下程度に設定する。但し、前後軸65および左右軸64の回転速度は、20rps以下に限定されるわけではない。また、制御部66は、前後軸65および左右軸64を互いに同じ速度で回転させてもよく、互いに異なる速度で回転させてもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る傾斜センサ6の具体的な作用を、図面を参照してさらに説明する。
図7は、本実施形態の制御部が加速度センサの出力値を取得するタイミングを説明するグラフである。
図8は、本実施形態の制御部が取得した加速度センサの出力値のサンプリングを表すグラフである。
図9は、エンコーダのアナログ出力値のサンプリングを説明するグラフである。
【0069】
なお、図7(a)は、時間と、本実施形態のエンコーダの出力信号と、の関係を表すグラフである。図7(b)は、時間と、加速度センサ631の出力値と、の関係を表すグラフである。図7(c)は、本実施形態のエンコーダの角度と、加速度センサ631の出力値のサンプリングと、の関係を表すグラフである。
また、図8(a)は、エンコーダの角度と、加速度センサ631のX軸出力値と、の関係を表すグラフである。図8(b)は、エンコーダの角度と、加速度センサ631のY軸出力値と、の関係を表すグラフである。図8(c)は、エンコーダの角度と、加速度センサ631のZ軸出力値と、の関係を表すグラフである。
図7(a)および図7(c)~図8(c)に表した「エンコーダ」は、第1エンコーダ655および第2エンコーダ645の少なくともいずれかである。
【0070】
本実施形態の制御部66は、エンコーダの角度が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631の出力値を取得する。すなわち、本実施形態の制御部66は、エンコーダの一定角度ごとに加速度センサ631の出力値のサンプリングを実行する。そして、制御部66は、エンコーダの角度と、加速度センサ631の出力値と、を同期させる制御を実行する。
【0071】
例えば、図7(a)に表したように、エンコーダがインクリメントタイプのロータリーエンコーダである場合において、エンコーダの出力信号は、矩形波を呈する。この場合において、図7(b)に表したように、制御部66は、エンコーダの出力信号の立ち上がり(オフ(暗)からオン(明)への切り替わり)のタイミング、およびエンコーダの出力信号の立ち下がり(オン(明)からオフ(暗)への切り替わり)のタイミングで加速度センサ631の出力値を取得する。すなわち、制御部66は、エンコーダの出力信号に基づいて加速度センサ631の出力値を取得するタイミングを検知し、そのタイミングで加速度センサ631の出力値を取得する。これにより、図7(c)に表したように、制御部66は、エンコーダの角度と加速度センサ631の出力値との関係、すなわちエンコーダの角度に対する加速度センサ631の出力値を導き出すことができる。そして、制御部66は、エンコーダの角度と、加速度センサ631の出力値と、を同期させる制御を実行する。
【0072】
具体的に説明すると、図8(a)に表したように、制御部66は、エンコーダの角度が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のX軸出力値を取得し、エンコーダの角度と、加速度センサ631のX軸出力値と、を同期させる。また、図8(b)に表したように、制御部66は、エンコーダの角度が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のY軸出力値を取得し、エンコーダの角度と、加速度センサ631のY軸出力値と、を同期させる。また、図8(c)に表したように、制御部66は、エンコーダの角度が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のZ軸出力値を取得し、エンコーダの角度と、加速度センサ631のZ軸出力値と、を同期させる。
【0073】
図8(a)~図8(c)に表したグラフでは、説明の便宜上、加速度センサ631が、X軸632に一致した前後軸心656を有する前後軸65を中心として回転する場合を例に挙げている。但し、図3図4(c)に関して前述したように、本実施形態に係る傾斜センサ6では、前後軸65および左右軸64の両方が同時に回転し、加速度センサ631は、前後軸65および左右軸64を中心として回転する。
【0074】
図8(a)に表したグラフの例では、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のX軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のX軸出力値と、を同期させる。また、図8(b)に表したグラフの例では、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のY軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のY軸出力値と、を同期させる。また、図8(c)に表したグラフの例では、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のZ軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のZ軸出力値と、を同期させる。
【0075】
本実施形態の制御部66は、第1モータ654の制御周期および第2モータ644の制御周期の少なくともいずれかと、加速度センサ631の出力値を取得する時間間隔(すなわちサンプリング間隔あるいはサンプリング周期)と、を一致させる。図7(a)~図8(c)に表したグラフの例では、第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)が45度の倍数を示すタイミングで加速度センサ631の出力値を取得し、第1エンコーダ655の角度と、加速度センサ631の出力値と、を同期させている。なお、制御部66が加速度センサ631の出力値を取得するタイミングは、これだけに限定されるわけではない。例えば、制御部66は、エンコーダの角度が360/2^k[deg](k∈N)を示すタイミングで2^l(l∈N)個の加速度センサ631の出力値を取得してもよい。
【0076】
また、図7(a)に表したグラフでは、エンコーダの出力は、A/D変換後のデジタル出力(矩形波)である。但し、エンコーダの出力は、これだけに限定されるわけではない。例えば、制御部66は、図9(a)に表したようなエンコーダのアナログ出力値を、図9(b)に表したように、エンコーダの角度が45度の倍数を示すタイミングでサンプリングを行い、必要に応じて各測定点間の内挿を行ってもよい。これにより、エンコーダの高分解能や所望の分解能を実現することができる。なお、エンコーダのアナログ出力値のサンプリングを行うタイミングは、エンコーダの角度が45度の倍数を示すタイミングに限定されるわけではない。
【0077】
前述したように、図8(a)~図8(c)に表したグラフでは、説明の便宜上、加速度センサ631が、X軸632に一致した前後軸心656を有する前後軸65を中心として回転する場合を例に挙げた。図8(a)~図8(c)に関する説明は、加速度センサ631が、Y軸633に一致した左右軸心646を有する左右軸64を中心として回転する場合についても同様である。そして、制御部66は、図7(a)~図8(c)に関して説明したタイミングで取得した加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用したときのエンコーダの位相に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。これについて、図面を参照してさらに説明する。
【0078】
図10は、本実施形態の制御部が取得した加速度センサの出力値のサンプリングの第1例を例示するグラフである。
図11は、加速度センサのZ軸が鉛直軸と平行である場合を説明する模式図である。
なお、図11に表したz軸は、鉛直軸である。図11に表したx軸は、鉛直軸に垂直な軸の1つである。図11に表したy軸は、z軸(鉛直軸)およびx軸に垂直な軸である。
【0079】
図11に表した加速度センサ631は、説明の便宜上、X軸632に一致した前後軸心656を有する前後軸65を中心として回転する。但し、図3図4(c)に関して前述したように、本実施形態に係る傾斜センサ6では、前後軸65および左右軸64の両方が同時に回転し、加速度センサ631は、前後軸65および左右軸64を中心として回転する。
【0080】
図7(a)~図8(c)に関して前述したように、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のX軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のX軸出力値と、を同期させる。この結果は、図10(a)に表したグラフの通りである。また、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のY軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のY軸出力値と、を同期させる。この結果は、図10(b)に表したグラフの通りである。また、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のZ軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のZ軸出力値と、を同期させる。この結果は、図10(c)に表したグラフの通りである。
【0081】
図10(a)~図10(c)に表したグラフの例では、第1エンコーダ655のスリット円板は、互いに等しい間隔で設けられた4個以上のスリットを有する。そのため、制御部66は、第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)が45度の倍数を示すタイミングで加速度センサ631の出力値を取得し、第1エンコーダ655の角度と、加速度センサ631の出力値と、を同期させている。
【0082】
例えば、エンコーダのスリット円板がN個のスリットを有する場合において、基準位置(回転角0°)からみたi番目のスリットの角度は、360i/Nで表される。そのため、図10(b)に表したグラフの例において、加速度センサ631のY軸出力値が極大を示すときの第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)A11は、基準位置からみて90度である。また、図10(c)に表したグラフの例において、加速度センサ631のZ軸出力値が極大を示すときの第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)A12は、基準位置からみて180度である。
【0083】
そして、制御部66は、図10(a)~図10(c)に表した加速度センサ631のX軸出力値、Y軸出力値およびZ軸出力値に対して周波数解析を適用したときの第1エンコーダ655の位相(すなわち前後軸65の基準位置からの回転角)に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。
【0084】
なお、前述したように、図10(a)~図11では、説明の便宜上、加速度センサ631が、X軸632に一致した前後軸心656を有する前後軸65を中心として回転する場合を例に挙げた。図10(a)~図11に関する説明は、加速度センサ631が、Y軸633に一致した左右軸心646を有する左右軸64を中心として回転する場合についても同様である。
【0085】
図12は、本実施形態の制御部が取得した加速度センサの出力値のサンプリングの第2例を例示するグラフである。
図13は、加速度センサのZ軸が鉛直軸から傾いている場合を説明する模式図である。
なお、図13に表したx軸、y軸およびz軸は、図11に関して前述した通りである。
【0086】
図13に表した加速度センサ631は、説明の便宜上、X軸632に一致した前後軸心656を有する前後軸65を中心として回転する。但し、図3図4(c)に関して前述したように、本実施形態に係る傾斜センサ6では、前後軸65および左右軸64の両方が同時に回転し、加速度センサ631は、前後軸65および左右軸64を中心として回転する。
【0087】
図7(a)~図8(c)に関して前述したように、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のX軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のX軸出力値と、を同期させる。この結果は、図12(a)に表したグラフの通りである。また、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のY軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のY軸出力値と、を同期させる。この結果は、図12(b)に表したグラフの通りである。また、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角が所定角度を示すタイミングで加速度センサ631のZ軸出力値を取得し、前後軸65の回転角と、加速度センサ631のZ軸出力値と、を同期させる。この結果は、図12(c)に表したグラフの通りである。
【0088】
図12(a)~図12(c)に表したグラフの例では、第1エンコーダ655のスリット円板は、互いに等しい間隔で設けられた4個以上のスリットを有する。そのため、第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)が45度の倍数を示すタイミングで加速度センサ631の出力値を取得し、第1エンコーダ655の角度と、加速度センサ631の出力値と、を同期させている。
【0089】
図12(b)に表したグラフの例において、加速度センサ631のY軸出力値が極大を示すときの第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)A13は、基準位置からみて45度である。また、図12(c)に表したグラフの例において、加速度センサ631のZ軸出力値が極大を示すときの第1エンコーダ655の角度(すなわち前後軸65の回転角)A14は、基準位置からみて135度である。
【0090】
そして、制御部66は、図12(a)~図12(c)に表した加速度センサ631のX軸出力値、Y軸出力値およびZ軸出力値に対して周波数解析を適用したときの第1エンコーダ655の位相(すなわち前後軸65の基準位置からの回転角)に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。
【0091】
なお、前述したように、図12(a)~図13では、説明の便宜上、加速度センサ631が、X軸632に一致した前後軸心656を有する前後軸65を中心として回転する場合を例に挙げた。図12(a)~図13に関する説明は、加速度センサ631が、Y軸633に一致した左右軸心646を有する左右軸64を中心として回転する場合についても同様である。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係る傾斜センサ6によれば、制御部66は、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用したときの第1エンコーダ655により検出された前後軸65の基準位置からの回転角および第2エンコーダ645により検出された左右軸64の基準位置からの回転角の少なくともいずれかに基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。言い換えれば、制御部66は、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用したときの第1エンコーダ655の位相および第2エンコーダ645の位相の少なくともいずれかに基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。これにより、本実施形態に係る傾斜センサ6は、水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができるとともに、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる。
【0093】
また、制御部66は、前後軸65の回転角および左右軸64の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサ631の出力値と、を同期させる。これにより、加速度センサ631が所定の出力値を示すタイミングと、そのタイミングにおける前後軸65の回転角および左右軸64の回転角と、の関係がずれることを抑えることができる。また、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角および第2エンコーダ645により検出された左右軸64の回転角の少なくともいずれかが所定角度を示すタイミングで加速度センサ631の出力値を取得する。すなわち、制御部66は、一定時間ごとではなく、第1エンコーダ655および第2エンコーダ645の少なくともいずれかの一定角度ごとに加速度センサ631の出力値のサンプリングを実行する。これにより、例えば、加速度センサ631が回転する際に、加速度センサ631やジンバル機構60などの回転体のアンバランスによって、第1モータ654および第2モータ644の少なくともいずれかに加減速が生じた場合であっても、加速度センサ631が所定の出力値を示すタイミングと、そのタイミングにおける前後軸65の回転角および左右軸64の回転角と、の関係がずれることをより確実に抑え、前後軸65の回転角および左右軸64の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサ631の出力値と、をより確実に同期させることができる。
【0094】
また、制御部66は、第1エンコーダ655の出力信号および第2エンコーダ645の出力信号の少なくともいずれかに基づいて加速度センサ631の出力値を取得するタイミングを検知し、そのタイミングで加速度センサ631の出力値を取得する。つまり、制御部66は、第1エンコーダ655の出力信号および第2エンコーダ645の出力信号の少なくともいずれかをトリガとして加速度センサ631の出力値を取得し、前後軸65の回転角および左右軸64の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサ631の出力値と、を同期させる。これにより、加速度センサ631が所定の出力値を示すタイミングと、そのタイミングにおける前後軸65の回転角および左右軸64の回転角と、の関係がずれることをより確実に抑え、前後軸65の回転角および左右軸64の回転角の少なくともいずれかと、加速度センサ631の出力値と、をより確実に同期させることができる。
【0095】
さらに、制御部66は、第1モータ654の制御周期および第2モータ644の制御周期の少なくともいずれかと、加速度センサ631の出力値を取得する時間間隔と、を一致させる。これにより、第1モータ654および第2モータ644の少なくともいずれかに周期的な加減速が生じた場合であっても、第1モータ654および第2モータ644の周期的な加減速が加速度センサ631の出力値に与える影響を抑えることができる。これにより、本実施形態に係る傾斜センサ6は、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0096】
次に、本実施形態に係る傾斜センサの自己キャリブレーション機能を、図面を参照して説明する。
図14は、本実施形態の加速度センサのX軸の軌跡の一例を例示する模式図である。
【0097】
本実施形態に係る傾斜センサ6は、前後軸65の前後軸心656と、加速度センサ631のX軸632と、の軸ぶれ(すなわち軸の角度ずれ)を計算する自己キャリブレーション機能を有する。
【0098】
すなわち、制御部66は、軸ぶれの自己キャリブレーション機能を実行する場合には、図14(a)に表した矢印A1のように、第1モータ654を駆動して前後軸65を360度以上回転させ、前後軸65を中心として加速度センサ631を360度以上回転させる。前後軸65の前後軸心656と、加速度センサ631のX軸632と、の軸ぶれが存在する場合には、加速度センサ631のX軸632の軌跡は、例えば図14(b)あるいは図14(c)に表した通りになる。図14(b)に表した例では、加速度センサ631のX軸632の軌跡と、前後軸65の前後軸心656と、の間の角度θは、0度よりも大きく45度未満である。また、図14(c)に表した例では、加速度センサ631のX軸632の軌跡と、前後軸65の前後軸心656と、の間の角度θは、45度である。
【0099】
前後軸65の前後軸心656と、加速度センサ631のX軸632と、の軸ぶれR1,R2が相対的に大きいほど、加速度センサ631の出力値の振幅は、相対的に大きい。そのため、制御部66は、第1モータ654を駆動して前後軸65を360度以上回転させ、前後軸65を中心として加速度センサ631を360度以上回転させて、加速度センサ631の出力値の振幅を取得することにより、前後軸65の前後軸心656と、加速度センサ631のX軸632と、の軸ぶれR1,R2を算出することができる。
【0100】
なお、制御部66は、第2モータ644を駆動して左右軸64を360度以上回転させ、左右軸64を中心として加速度センサ631を360度以上回転させることができる。この場合には、制御部66は、加速度センサ631の出力値の振幅を取得することにより、左右軸64の左右軸心646と、加速度センサ631のY軸633と、の軸ぶれを算出することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る傾斜センサ6は、加速度センサ631に発生する遠心力を計算する自己キャリブレーション機能を有する。
【0102】
すなわち、制御部66は、第1エンコーダ655により検出された前後軸65の回転角に基づいて前後軸65の回転速度を演算する。また、制御部66は、第2エンコーダ645により検出された左右軸64の回転角に基づいて左右軸64の回転速度を演算する。そして、制御部66は、加速度センサ631に発生する遠心力を演算する。さらに、制御部66は、加速度センサ631の出力値から、演算により求めた加速度センサ631に発生する遠心力を除去する演算を実行する。すなわち、制御部66は、加速度センサ631の出力値に含まれる遠心力に関する成分を除去する演算を実行する。
【0103】
これによれば、例えば前後軸65および左右軸64が一定速度で回転するときに加速度センサ631に発生する遠心力や、加速度センサ631のX軸632が前後軸65の前後軸心656に一致していない場合および加速度センサ631のY軸633が左右軸64の左右軸心646に一致していない場合に、加速度センサ631に発生する遠心力などの影響による加速度が、加速度センサ631の出力値に含まれる場合であっても、制御部66は、加速度センサ631の出力値に含まれる遠心力に関する成分を除去する演算を実行することができる。これにより、本実施形態に係る傾斜センサ6は、より高い精度で傾斜角を検出することができる。
【0104】
次に、本発明の実施形態に係るデータ取得装置ついて説明する。
なお、本実施形態に係るデータ取得装置が備える傾斜センサの構成要素が、図1図14に関して前述した本実施形態に係る傾斜センサの構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0105】
図15は、本発明の実施形態に係るデータ取得装置を表す斜視図である。
本実施形態に係るデータ取得装置の例としては、例えば、測定点の3次元座標(3次元データ)を高精度に測定するトータルステーション、測距光としてパルスレーザ光を回転照射しパルスレーザ光毎に測距を行い点群データを取得するレーザスキャナユニット、土木工事などを行う際の基準線を設定するレーザ照射装置(パイプレーザ)、および回転レーザなどが挙げられる。本実施形態の説明では、本実施形態に係る傾斜センサ6を備えるデータ取得装置の一例として、レーザスキャナユニットを挙げる。なお、以下に説明するレーザスキャナユニットには、一対の光学プリズム36a,36bを有する偏向部35が設けられているが、本実施形態に係る傾斜センサ6は、一対の光学プリズム36a,36bが設けられたレーザスキャナユニットだけに適用されるわけではなく、一対の光学プリズム36a,36bが設けられていない一般的なレーザスキャナユニットにも適用可能である。また、本実施形態に係る傾斜センサ6は、レーザスキャナ専用として使用されるわけではなく、一般的な傾斜センサとして使用可能である。
【0106】
図15に表したデータ取得装置1は、レーザスキャナユニットであり、本発明の「データ取得装置」の一例である。図15に表した基準光軸Oは、後述する偏向部35により偏向されていない状態での光軸を示す。偏向部35により偏向されていない状態での光軸は、偏向部35の中心を透過する真直な光軸であり、基準光軸に相当する。
【0107】
データ取得装置1は、主に、支持装置としての三脚2と、レーザスキャナ3と、操作装置4と、設置台ユニット5と、を備える。図1図14に関して前述した傾斜センサ6は、レーザスキャナ3の内部に設けられている。設置台ユニット5は、三脚2の上端に取り付けられている。レーザスキャナ3は、横回転可能および縦回転可能に設置台ユニット5に取り付けられている。このように、本実施形態に係る傾斜センサ6は、三脚2および設置台ユニット5により静止状態で設置されたレーザスキャナ3の内部に設けられている。
【0108】
設置台ユニット5には、横方向に延びるレバー7が設けられる。作業者は、レバー7の操作により、レーザスキャナ3を上下方向(鉛直方向)または横方向(水平方向)に回転させることができ、レーザスキャナ3を所要の姿勢で固定することも可能となっている。
【0109】
レーザスキャナ3は、測距部3A(図16参照)と、傾斜センサ6(図16参照)と、を内蔵する。測距部3Aは、測定光23を測定対象物あるいは測定範囲に射出し、反射測定光24(図16参照)を受光して測定を行う。また、傾斜センサ6は、レーザスキャナ3の水平(又は鉛直)に対する姿勢を高精度に検出可能である。例えば、傾斜センサ6は、レーザスキャナ3の水平方向に対する傾斜角を検出する。
【0110】
操作装置4は、レーザスキャナ3との間で有線、無線等所要の手段を介して通信を行う通信機能を有する。また、操作装置4は、アタッチメント8を介してレーザスキャナ3に着脱可能となっている。作業者は、取り外した操作装置4を片手で保持し操作可能であり、操作装置4によりレーザスキャナ3の遠隔操作を行うことができる。
【0111】
さらに、レーザスキャナ3は、画像、測定状態、測定結果等を操作装置4に送信する。レーザスキャナ3から送信された画像、測定状態、測定結果等は、操作装置4に記憶され操作装置4の表示部(図示せず)に表示される。操作装置4は、例えばスマートフォンであってもよい。
【0112】
図16は、本実施形態のレーザスキャナを表すブロック図である。
図17は、本実施形態の偏向部を表す概略図である。
【0113】
レーザスキャナ3は、測定光射出部11と、受光部12と、測距演算部13と、撮像部14と、射出方向検出部15と、モータドライバ16と、傾斜センサ6と、通信部18と、演算制御部19と、記憶部20と、撮像制御部21と、画像処理部22と、を具備する。これらは、筐体9に収納され、一体化されている。なお、測定光射出部11、受光部12、測距演算部13等は、測距部3Aの少なくとも一部を構成する。また、本実施形態の演算制御部19は、本発明の「測距部を制御する制御部」すなわち「第2制御部」の一例である。
【0114】
測定光射出部11は、射出光軸26を有する。射出光軸26上には、例えばレーザダイオード(LD)などの発光素子27が設けられている。また、射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。さらに、射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32と、によって、射出光軸26は、受光光軸31と合致する様に偏向される。第1反射鏡29と第2反射鏡32とで射出光軸偏向部の少なくとも一部が構成される。発光素子27は、パルスレーザ光線を発する。測定光射出部11は、発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測定光23として射出する。
【0115】
受光部12について説明する。受光部12には、測定対象物(即ち測定点)からの反射測定光24が入射する。受光部12は、受光光軸31を有する。受光光軸31には、上記した様に、第1反射鏡29、第2反射鏡32によって偏向された射出光軸26が合致する。
【0116】
偏向された射出光軸26上に、即ち受光光軸31上に偏向部35(後述)が配設される。偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。基準光軸Oは、偏向部35によって偏向されなかった時の射出光軸26または受光光軸31と合致する。
【0117】
偏向部35を透過し、入射した受光光軸31上に、結像レンズ34と、例えばフォトダイオード(PD)などの受光素子33と、が設けられている。結像レンズ34は、反射測定光24を受光素子33に結像する。受光素子33は、反射測定光24を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、測距演算部13に入力される。測距演算部13は、受光信号に基づき測定点までの測距を行う。
【0118】
ここで、図17を参照して、偏向部35について説明する。偏向部35は、一対の光学プリズム36a,36bを有する。光学プリズム36a,36bは、それぞれ円板状であり、受光光軸31上に直交して配置され、重なり合い、平行に配置されている。光学プリズム36a,36bとして、それぞれリズレープリズムが用いられることが、装置を小型化するために好ましい。偏向部35の中央部は、測定光23が透過し、射出される第1偏向部である測定光偏向部35aとなっており、中央部を除く部分は反射測定光24が透過し、入射する第2偏向部である反射測定光偏向部35bとなっている。
【0119】
光学プリズム36a,36bとして用いられるリズレープリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素37a,37bと、多数のプリズム要素38a,38bと、を有し、円板形状を呈する。光学プリズム36a,36bと、各プリズム要素37a,37bと、プリズム要素38a,38bと、は、同一の光学特性を有する。
【0120】
プリズム要素37a,37bは、測定光偏向部35aを構成する。プリズム要素38a,38bは、反射測定光偏向部35bを構成する。リズレープリズムは、光学ガラスから製作されてもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形されてもよい。リズレープリズムを光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なリズレープリズムを製作できる。
【0121】
光学プリズム36a,36bは、それぞれ受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。光学プリズム36a,36bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出光軸26を通過する測定光23を任意の方向に偏向し、受光される反射測定光24を受光光軸31と平行に偏向する。光学プリズム36a,36bの外形形状は、それぞれ受光光軸31を中心とする円形である。光学プリズム36a,36bの直径は、反射測定光24の広がりを考慮し、光学プリズム36a,36bが充分な光量を取得できる様に設定されている。
【0122】
光学プリズム36aの外周には、リングギア39aが嵌設されている。光学プリズム36bの外周には、リングギア39bが嵌設されている。リングギア39aには、駆動ギア41aが噛合している。駆動ギア41aは、モータ42aの出力軸に固着されている。同様に、リングギア39bには、駆動ギア41bが噛合している。駆動ギア41bは、モータ42bの出力軸に固着されている。モータ42a,42bは、モータドライバ16に電気的に接続されている。
【0123】
モータ42a,42bとしては、回転角を検出することができるもの、あるいは駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。あるいは、モータの回転量は、モータの回転量(回転角)を検出する例えばエンコーダ等の回転角検出器を用いて検出されてもよい。モータ42a,42bの回転量がそれぞれ検出され、モータドライバ16によりモータ42a,42bが個別に制御される。なお、リングギア39a,39bにそれぞれ直接取付けられたエンコーダが、リングギア39a,39bの回転角を直接検出してもよい。
【0124】
駆動ギア41a,41b、モータ42a,42bは、測定光射出部11と干渉しない位置、例えばリングギア39a,39bの下側に設けられている。
投光レンズ28、第1反射鏡29、第2反射鏡32、測定光偏向部35a等は、投光光学系の少なくとも一部を構成する。反射測定光偏向部35b、結像レンズ34等は、受光光学系の少なくとも一部を構成する。
【0125】
測距演算部13は、発光素子27を制御し、測定光23としてパルスレーザ光線を発光させる。測定光23が、プリズム要素37a,37b(測定光偏向部35a)により、測定点に向うよう偏向される。
【0126】
測定対象物から反射された反射測定光24は、プリズム要素38a,38b(反射測定光偏向部35b)と、結像レンズ34と、を介して入射し、受光素子33に受光される。受光素子33は、受光信号を測距演算部13に送出する。測距演算部13は、受光素子33からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測定光23が照射された点)の測距を行う。測距データは、記憶部20に格納される。而して、測距演算部13は、測定光23をスキャンしつつ、パルス光毎に測距を行うことで各測定点の測距データを取得できる。
【0127】
射出方向検出部15は、モータ42a,42bに入力する駆動パルスをカウントすることで、モータ42a,42bの回転角を検出する。あるいは、射出方向検出部15は、エンコーダからの信号に基づき、モータ42a,42bの回転角を検出する。また、射出方向検出部15は、モータ42a,42bの回転角に基づき、光学プリズム36a,36bの回転位置を演算する。
【0128】
さらに、射出方向検出部15は、光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置とに基づき、測定光23の射出方向を演算し、演算結果を演算制御部19に出力する。演算制御部19は、測定光23の射出方向から基準光軸Oに対する測定点の水平角θ1および鉛直角θ2を演算し、各測定点について、水平角θ1および鉛直角θ2を測距データに関連付けることで、測定点の3次元データを求めることができる。
【0129】
傾斜センサ6について説明する。傾斜センサ6は、筐体9に固定され、あるいは構造部材に固定され、レーザスキャナ3と一体となっている。前述したように、傾斜センサ6は、ジンバル機構60を介して加速度センサ631が取り付けられている。加速度センサ631は、直交する2軸を中心に360゜回転自在となっている。
【0130】
加速度センサ631が傾斜していた場合(レーザスキャナ3が傾斜していた場合)、加速度センサ631の検出結果に基づき、レーザスキャナ3の傾斜角、傾斜方向が検出される。これは、図1図14に関して前述した通りである。加速度センサ631は、2軸について360゜回転自在であるので、傾斜センサ6がどの様な姿勢となろうとも(例えば、傾斜センサ6の天地が逆になった場合でも)、全方向での姿勢検出が可能である。
【0131】
演算制御部19は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時であっても、加速度センサ631からの信号に基づき、モータを制御する。また、演算制御部19は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時であっても、加速度センサ631からの信号に基づき、モータを制御する。
【0132】
撮像部14は、レーザスキャナ3の基準光軸Oと平行な撮像光軸43を有し、例えば50°の画角を有するカメラであり、レーザスキャナ3のスキャン範囲を含む画像データを取得する。撮像光軸43と射出光軸26及び基準光軸Oとの関係は既知となっている。また、撮像部14は、動画像、又は連続画像を取得可能である。
【0133】
撮像制御部21は、撮像部14の撮像を制御する。撮像制御部21は、撮像部14が動画像、又は連続画像を撮像する場合に、動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングとレーザスキャナ3でスキャンするタイミングとの同期を取っている。演算制御部19は画像と点群データとの関連付けも実行する。
【0134】
撮像部14の撮像素子44は、画素の集合体であるCCDあるいはCMOSセンサである。撮像素子44の各画素は、画像素子上での位置を特定できる。例えば、各画素は、撮像光軸43を原点とした座標系での画素座標を有する。画像素子上での位置は、画素座標によって特定される。画像処理部22は、撮像部14で取得した画像データに操作装置4で表示させる情報を重ね合わせる画像処理等を行う。画像処理部22が生成した画像は、演算制御部19により操作装置4の表示部4aに表示される。
【0135】
本実施形態に係るデータ取得装置1によれば、傾斜センサ6の制御部66は、加速度センサ631の出力値自体ではなく加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用した結果に基づいて水平方向に対する傾斜角を演算する。そのため、制御部66は、加速度センサ631の高精度な出力値を取得しなくとも、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することで水平方向に対する傾斜角を演算することができる。これにより、傾斜センサ6は、周波数解析を用いることで、加速度センサ631の出力値にドリフトが発生しても水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。また、高精度な検出が可能なチルトセンサなどが不要であるため、傾斜センサ6の小型化を図ることができる。これにより、データ取得装置1の小型化を図ることができる。
【0136】
また、傾斜センサ6の制御部66は、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することにより、第1モータ654が回転した時の加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、第2モータ644が回転した時の加速度センサ631の各軸(例えばX軸、Y軸、Z軸)の振る舞いと、を互いに分離し、水平方向に対する傾斜角の検出精度を確保することができる。つまり、制御部66は、例えば、第1モータ654のみを駆動し前後軸65のみを回転させたり、第2モータ644のみを駆動し左右軸64のみを回転させたりしなくとも、第1モータ654および第2モータ644を駆動して前後軸65および左右軸64を同時に回転させ、加速度センサ631の出力値に対して周波数解析を適用することにより水平方向に対する傾斜角を演算できる。そのため、制御部66は、前後軸65のみを回転させた場合と、左右軸64のみを回転させた場合と、で別々に水平方向に対する傾斜角を演算する必要はなく、前後軸65および左右軸64を同時に回転させて水平方向に対する傾斜角を演算できる。これにより、本実施形態に係るデータ取得装置1の傾斜センサ6は、水平方向に対する傾斜角をリアルタイムで検知することができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0138】
1:データ取得装置、 2:三脚、 3:レーザスキャナ、 3A:測距部、 4:操作装置、 4a:表示部、 5:設置台ユニット、 6:傾斜センサ、 7:レバー、 8:アタッチメント、 9:筐体、 11:測定光射出部、 12:受光部、 13:測距演算部、 14:撮像部、 15:射出方向検出部、 16:モータドライバ、 18:通信部、 19:演算制御部、 20:記憶部、 21:撮像制御部、 22:画像処理部、 23:測定光、 24:反射測定光、 26:射出光軸、 27:発光素子、 28:投光レンズ、 29:第1反射鏡、 31:受光光軸、 32:第2反射鏡、 33:受光素子、 34:結像レンズ、 35:偏向部、 35a:測定光偏向部、 35b:反射測定光偏向部、 36a、36b:光学プリズム、 37a、37b、38a、38b:プリズム要素、 39a、39b:リングギア、 41a、41b:駆動ギア、 42a、42b:モータ、 43:撮像光軸、 44:撮像素子、 60:ジンバル機構、 61:外フレーム、 62:内フレーム、 63:傾斜検出ユニット、 64:左右軸、 65:前後軸、 66:制御部、 73:記憶部、 631:加速度センサ、 632:X軸、 633:Y軸、 634:Z軸、 641:軸受、 642:第2被動ギア、 643:第2駆動ギア、 644:第2モータ、 645:第2エンコーダ、 646:左右軸心、 651:軸受、 652:第1被動ギア、 653:第1駆動ギア、 654:第1モータ、 655:第1エンコーダ、 656:前後軸心、 661:演算処理部、 662:入出力制御部、 663:記憶部、 664:A/D変換器、 676:鉛直軸心

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