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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150889
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】プレス成形方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20220929BHJP
   B21D 53/88 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D53/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053688
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】星野 樹
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA19
4E137BB01
4E137CA09
4E137CA24
4E137CA26
4E137DA13
4E137EA02
4E137GA02
4E137GA16
4E137GB01
(57)【要約】
【課題】成形品を軽量化する。
【解決手段】プレス成形方法は、第一成形装置13によってブランク材1から中間成形品2を成形する予備成形工程と、第二成形装置17によって中間成形品2から最終成形品3を成形する本成形工程と、を備える。予備成形工程では、ブランク材1に下方に凹む凹部5を成形することで、この凹部5を有する中間成形品2を成形する。本成形工程では、中間成形品2の凹部5を第二成形装置17の第二パンチ19に対向するように下方に向けて配置した状態で、中間成形品2に絞り加工を施す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成形装置によってブランク材から中間成形品を成形する予備成形工程と、第二成形装置によって中間成形品から最終成形品を成形する本成形工程と、を備えるプレス成形方法において、
第一成形装置は、第一ダイと、第一ダイの下方に配置される第一パンチと、を備え、
第二成形装置は、第二ダイと、第二ダイの下方に配置される第二パンチと、を備え、
予備成形工程では、第一ダイ及び第一パンチによってブランク材に下方に凹む凹部を成形することで、凹部を有する中間成形品を成形し、
本成形工程では、中間成形品の凹部を第二成形装置の第二パンチに対向するように下方に向けて配置した状態で、中間成形品に絞り加工を施すことを特徴とするプレス成形方法。
【請求項2】
第一成形装置の第一ダイは、中間成形品の凹部を成形するための凹部成形面を有する請求項1に記載のプレス成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車体における金属製のパネル部品は、ブランク材に絞り加工等のプレス成形を施すことで所定形状に構成される。一般に、絞り加工に使用されるプレス成形装置(金型)は、可動側となるダイと、固定側となるパンチと、ブランク材の端部を保持するブランクホルダと、を備える。
【0003】
特許文献1には、上記のプレス成形装置を使用してブランク材に凸曲げ部及び縦壁部を形成するプレス成形方法が開示されている。このプレス成形方法は、ダイとブランクホルダによってブランク材の端部を把持した状態で、このブランク材をパンチに押し付けることで、ブランク材に凸面状の張り出し部を形成する予備成形工程(張出工程)と、予備成形工程後に、張り出し部を有するブランク材(中間材)から凸曲げ部及び縦壁部を有する成形品を成形する本成形工程(絞り工程)とを備える。
【0004】
上記のプレス成形方法では、予備成形工程によって、予めブランク材の中央側の材料を引き伸ばし、薄肉状の張り出し部を形成することができる。この張り出し部を本成形工程によって凸曲げ部に成形することで、凸曲げ部の厚さを縦壁部よりも薄肉にでき、成形品を軽量化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-38025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のプレス成形方法において、凸曲げ部とともに縦壁部をも薄肉にできれば、成形品の更なる軽量化が可能となる。しかしながら、この場合には、ブランク材に対してより広い範囲に張り出し部を形成する必要がある。このため、張り出し部が大型化し、本成形工程においてダイとブランクホルダとによってブランク材を把持する場合に、張り出し部の一部がダイの一部に接触し、本成形工程を妨げるおそれがあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、成形品を軽量化することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、第一成形装置によってブランク材から中間成形品を成形する予備成形工程と、第二成形装置によって中間成形品から最終成形品を成形する本成形工程と、を備えるプレス成形方法において、第一成形装置は、第一ダイと、第一ダイの下方に配置される第一パンチと、を備え、第二成形装置は、第二ダイと、第二ダイの下方に配置される第二パンチと、を備え、予備成形工程では、第一ダイ及び第一パンチによってブランク材に下方に凹む凹部を成形することで、凹部を有する中間成形品を成形し、本成形工程では、中間成形品の凹部を第二成形装置の第二パンチに対向するように下方に向けて配置した状態で、中間成形品に絞り加工を施すことを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、予備成形工程でブランク材に形成した凹部を、本成形工程において、第二成形装置の第二パンチに対向するように下方に向けて配置することで、凹部が第二成形装置の第二ダイに接触することを防止することができる。したがって、本発明では、予備成形工程において、ブランク材に対してより広い範囲を成形することができる。これにより、成形品を従来よりも軽量化することが可能となる。
【0010】
上記構成のプレス成形方法において、第一成形装置の第一ダイは、中間成形品の凹部を成形するための凹部成形面を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形品を軽量化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】プレス成形方法を説明するためのブランク材及び成形品の断面図である。
図2】予備成形工程を行う第一成形装置の断面図である。
図3】予備成形工程を行う第一成形装置の断面図である。
図4】予備成形工程を行う第一成形装置の断面図である。
図5】本成形工程を行う第二成形装置の断面図である。
図6】本成形工程を行う第二成形装置の断面図である。
図7】中間成形品の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図7は、本発明に係るプレス成形方法の一実施形態を示す。
【0014】
本発明に係るプレス成形方法は、ブランク材1から中間成形品2を成形する予備成形工程と、予備成形工程によって成形された中間成形品2に絞り加工を施すことによって最終成形品3を成形する本成形工程とを備える。
【0015】
なお、予備成形工程や本成形工程により、中間成形品2及び最終成形品3の厚みには部分的な差が生じ、均一ではなくなるが、図1乃至図7では、便宜上その厚みを一定として図示している。
【0016】
図1(a)に示すように、ブランク材1は、例えば矩形状に構成される金属板(例えば鋼板)である。ブランク材1は、一方の端部1aから他方の端部1aまでの全長にわたり、一定の厚みを有する。図1(b)に示すように、ブランク材1は、予備成形工程によって凹凸状の張り出し部を有する中間成形品2となる。
【0017】
中間成形品2は、端部4と、端部4よりも内側の位置で凹む凹部(凹状の張り出し部)5と、凹部5よりも内側の位置で上方に突出する凸部(凸状の張り出し部)6とを有する。凹部5は、端部4よりも下方に凹んでいる。換言すると、凹部5は、下方に突出する凸部と見做すこともできる。凹部5は、凸部6の周囲を囲むように構成される。凸部6は、端部4及び凹部5よりも上方に突出している。凹部5及び凸部6における中間成形品2の厚みは、端部4と比較して薄肉とされている。
【0018】
図1(b)に示すように、凹部5は、下端部7と、側壁部8a,8bとを有する。側壁部8a,8bは、下端部7よりも内側(凸部6側)に位置する第一側壁部8aと、下端部7よりも外側(端部4側)に位置する第二側壁部8bとを含む。
【0019】
図1(c)に示すように、最終成形品3は、フランジ状の端部9と、端部9よりも内側で上方に突出する凸曲げ部10とを有する。端部9は、本成形工程後のトリミング加工によって除去され得る部分(除去予定部)である。凸曲げ部10は、上壁部11と、上壁部11と端部9とを繋ぐ側壁部12とを有する。この最終成形品3は、本成形工程後に、例えば自動車のリアフロアパンその他の部品に加工される。
【0020】
図2乃至図4は、予備成形工程を実行する第一成形装置を示す。第一成形装置13は、第一ダイ14と、第一パンチ15と、第一ブランクホルダ16とを備える。
【0021】
第一ダイ14は、図示しない駆動装置によって昇降可能に構成される可動型である。第一ダイ14は、ブランク材1を成形する成形面14a,14bを有する。成形面14a,14bは、中間成形品2の凹部5をブランク材1に形成するための凹部成形面14aと、中間成形品2の凸部6をブランク材1に形成するための凸部成形面14bとを含む。凹部成形面14aは、下方に突出する凸状曲面として構成される。凸部成形面14bは、上方に向かって凹む凹状曲面として構成される。
【0022】
第一パンチ15は、第一ダイ14の下方に配置される。第一パンチ15は、図示しない駆動装置によって昇降可能に構成される可動型である。第一パンチ15は、ブランク材1を成形する成形面15a,15bを有する。成形面15a,15bは、中間成形品2の凹部5をブランク材1に形成するための凹部成形面15aと、中間成形品2の凸部6をブランク材1に形成するための凸部成形面15bとを含む。凹部成形面15aは、下方に凹む凹状曲面として構成される。凸部成形面15bは、上方に突出する凸状曲面として構成される。
【0023】
第一ブランクホルダ16は、上ブランクホルダ16aと、下ブランクホルダ16bとを含むが、この構成に限定されるものではない。各ブランクホルダ16a,16bは、図示しない駆動装置によって昇降可能に構成される。
【0024】
図2に示すように、予備成形工程では、まずブランク材1の端部1aを第一成形装置13の第一ブランクホルダ16により把持する。上ブランクホルダ16a及び下ブランクホルダ16bは、予備成形工程の前後でブランク材1の全幅(全長)が変化しないように、所定のクッション圧にてブランク材1の端部1aを挟持する。
【0025】
次に、第一成形装置13は、ブランク材1の上方に位置する第一ダイ14を下降させるとともに、ブランク材1の下方に位置する第一パンチ15を上昇させる。これにより、第一ダイ14の成形面14a,14bと、第一パンチ15の成形面15a,15bをブランク材1に接触させる。
【0026】
図3及び図4に示すように、第一ダイ14と第一パンチ15の動作により、第一ダイ14の凹部成形面14a及び第一パンチ15の凹部成形面15aは、ブランク材1の一部に凹部5を成形する。また、第一ダイ14の凸部成形面14b及び第一パンチ15の凸部成形面15bは、ブランク材1の一部に凸部6を成形する。図4に示すように、第一ダイ14が下死点まで到達し、第一パンチ15が上死点まで到達すると、凹部5及び凸部6を有する中間成形品2が形成される。
【0027】
この予備成形工程では、第一ブランクホルダ16がブランク材1の端部1aを移動不能に把持した状態で成形を行うため、中間成形品2は、凹部5及び凸部6の成形により伸びが生じて、ブランク材1よりも線長が長くなる。このことから凹部5及び凸部6の厚さは端部4の厚さよりも薄くなる。このように中間成形品2の線長がブランク材1よりも長くなることから、予備成形工程を行わない通常の成形方法と比較して、材料を縮小でき、製造コストを低減することが可能となる。
【0028】
図5及び図6は、本成形工程を実行する第二成形装置を示す。第二成形装置17は、第二ダイ18と、第二パンチ19と、第二ブランクホルダ20とを備える。
【0029】
第二ダイ18は、図示しない駆動装置によって昇降可能に構成される可動型である。第二ダイ18は、中間成形品2に対して最終成形品3の凸曲げ部10を成形するための凹状の成形面18a,18bと、第二ブランクホルダ20とともに中間成形品2の端部4を挟む押さえ面18cと、を有する。
【0030】
成形面18a,18bは、主として最終成形品3の上壁部11を成形するための上面18aと、主として最終成形品3の側壁部12を成形するための側面18bとを含む。押さえ面18cは、下方に面する平坦面として構成される。
【0031】
第二パンチ19は、第二ダイ18の下方に配置される固定型である。第二パンチ19は、中間成形品2から最終成形品3を成形するための凸状の成形面19a,19bを有する。成形面19a,19bは、主として最終成形品3の上壁部11を成形するための上面19aと、主として最終成形品3の側壁部12を成形するための側面19bとを含む。
【0032】
第二ブランクホルダ20は、第二ダイ18の押さえ面18cの下方に配置されている。第二ブランクホルダ20は、図示しない駆動装置によって昇降可能に構成される。
【0033】
図5に示すように、本成形工程では、第二パンチ19の上方位置において、第二ダイ18の押さえ面18cと第二ブランクホルダ20とによって中間成形品2の端部4を把持する。この場合において、中間成形品2は、凹部5が下方に向くように配置される。
【0034】
中間成形品2が第二ダイ18と第二ブランクホルダ20とによって保持された初期の状態において、中間成形品2の凹部5及び凸部6は、第二ダイ18の成形面18a,18bから離れており、これらに接触しない。
【0035】
この状態において、第二パンチ19の上面19aは、中間成形品2の断面における二つの凹部5の間に位置する。すなわち、第二パンチ19における上面19aの幅寸法W1は、中間成形品2の断面における二つの凹部5の間隔(二つの下端部7の間隔)W2よりも小さい。また、中間成形品2の凹部5は、第二パンチ19の側面19bと対向する(隣り合う場合を含む)ように、側面19bから離れた位置にある。
【0036】
第二ダイ18及び第二ブランクホルダ20によるクッション圧は、予備成形工程における第一ブランクホルダ16のクッション圧よりも小さい。このため、本成形工程の前後における中間成形品2の全幅は可変となる。
【0037】
次に、第二ダイ18と第二ブランクホルダ20を一体的に下降させて中間成形品2を第二パンチ19に接触させる。この場合において、第二パンチ19の上面19aは、中間成形品2の凸部6にその下面側から接触する。また、第二パンチ19の側面19bは、第二ダイ18の側面18bよりも先に、中間成形品2の凹部5に接触する。具体的には、第二パンチ19の側面19bは、凹部5の第二側壁部8bよりも先に、凹部5の第一側壁部8aに接触する。
【0038】
第二ダイ18及び第二ブランクホルダ20の下降に伴って、第二ダイ18の成形面18a,18b及び第二パンチ19の成形面19a,19bによる中間成形品2の成形が進行する。成形の進行に応じて、第二ダイ18と第二ブランクホルダ20に挟持されている中間成形品2の端部4における一部の材料が第二ダイ18と第二パンチ19の間に流入する。
【0039】
図6に示すように、第二ダイ18が下死点まで到達することで、凸曲げ部10を有する最終成形品3が形成される。
【0040】
図7は、予備成形工程によって成形された中間成形品の他の例を示す。
【0041】
図7(a)に示す中間成形品2では、凸部6の形状が上記の実施形態と異なる。この中間成形品2における凸部6は、端部4及び凹部5から上方に突出しておらず、上下方向において端部4と同位置にある平坦の部分により構成される。
【0042】
図7(b)に示す中間成形品2では、上記の実施形態における凸部6を備えていない。すなわち、中間成形品2は、下方に突出する凹部5のみを有する。
【0043】
以上説明した本実施形態に係るプレス成形方法によれば、予備成形工程によってブランク材1に形成した凹部5を、本成形工程において、第二成形装置17の第二パンチ19に対向するように下方に向けて配置することで、凹部5及び凸部6が第二ダイ18の成形面18a,18bに接触することを防止することができる。
【0044】
したがって、予備成形工程では、ブランク材1に対して従来よりも広い範囲を成形することができる。すなわち、中間成形品2において、最終成形品3(凸曲げ部10)における上壁部11に対応する凸部6だけでなく、側壁部12に対応する凹部5をも薄肉状に引き伸ばすことができる。
【0045】
このようにすることで、中間成形品2の材料費が下がり、しかも最終成形品3の上壁部11のみならず側壁部12をも軽量化でき、最終成形品を従来よりも軽量化することが可能となる。これにより、最終成形品の製造コストを可及的に低減することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
上記の実施形態では、凸曲げ部10を簡略化して例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、自動車における各種のパネル部品を成形する場合に適用可能である。
【0048】
上記の実施形態では、第一成形装置13の第一パンチ15が可動型として構成された例を示したが、第一成形装置13の構成は上記実施形態に限定されない。例えば、第一成形装置13の第一パンチ15は、固定型であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ブランク材
2 中間成形品
3 最終成形品
5 中間成形品の凹部
13 第一成形装置
14 第一ダイ
14a 第一ダイの凹部成形面
15 第一パンチ
17 第二成形装置
18 第二ダイ
19 第二パンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7