(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150893
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20220929BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220929BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053692
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519417676
【氏名又は名称】株式会社アパード
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】村山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隆晴
(57)【要約】
【課題】給電装置の漏れ磁束を低減させる。
【解決手段】給電装置1は、給電コイル11と、受電コイル13と、給電コイル11が巻回される第一コア12と、受電コイル13が巻回される第二コア14と、給電コイル11の全周及び受電コイル13の全周を被覆するシールド部材15a,15bと、を備える。シールド部材15a,15bは、導電体20と、絶縁体21とを備える。導電体20は、互いに対向するように配置される、第一端部20a及び第二端部20bを有する。絶縁体21は、導電体20の第一端部20aと第二端部20bとの間に配される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電コイルと、
受電コイルと、
前記給電コイルが巻回される第一コアと、
前記受電コイルが巻回される第二コアと、
前記給電コイルの全周及び前記受電コイルの全周を被覆するシールド部材と、を備える給電装置であって、
前記シールド部材は、導電体と、絶縁体とを備え、
前記導電体は、互いに対向するように配置される、第一端部及び第二端部を有し、
前記絶縁体は、前記第一端部と前記第二端部との間に配されることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記第一コア又は前記第二コアを給電可能な位置に案内するためのガイド部を備える請求項1に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスで給電を行う給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)や自動搬送車(AGV)等に搭載されたバッテリに給電するシステムとして、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス給電(非接点型給電)が採用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、電磁共鳴を利用する給電装置が開示されている。給電装置は、給電設備に設けられた給電部と、車両に搭載された受電部とを備える。
【0004】
給電部は、電源からの高周波電力が供給される給電側コイルユニットを備える。給電側コイルユニットは、給電側コイルと、この給電側コイルが巻回された給電側コアと、給電側コイル及び給電側コアを収容する給電側シールドケースと、を備える。
【0005】
給電側シールドケースは、銅やアルミを用いた金属シールドから構成されている。給電側シールドケースは、給電側コイルが巻回された給電側コアの一部を覆う底壁と、底壁の周縁から立設する立壁とを備え、一部が開口された箱型に構成されている(同文献の段落0021参照)。
【0006】
受電部は、受電側コイルユニットを備える。受電側コイルユニットは、給電側コイルと電磁共鳴する受電側コイルと、この受電側コイルが巻回された受電側コアと、受電側コイル及び受電側コアを収容する受電側シールドケースと、を備える。
【0007】
受電側シールドケースは、給電側シールドケースと同様に、金属シールドから構成されている。受電側シールドケースは、受電側コイルの一部を覆う底壁と、底壁の周縁から立設する立壁とを備え、一部が開口された箱型に構成されている(同文献の段落0027参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の給電装置において、給電側シールドケース及び受電側シールドケースは、一部が開口した構成であることから、給電側コイルの一部及び受電側コイルの一部が各シールドケースから露出した状態となる。このため、各コイルの露出部分から漏れ磁束が生じ、電力の伝送効率の低下を招いていた。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、給電装置の漏れ磁束を低減させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、給電コイルと、受電コイルと、前記給電コイルが巻回される第一コアと、前記受電コイルが巻回される第二コアと、前記給電コイルの全周及び前記受電コイルの全周を被覆するシールド部材と、を備える給電装置であって、前記シールド部材は、導電体と、絶縁体とを備え、前記導電体は、互いに対向するように配置される、第一端部及び第二端部を有し、前記絶縁体は、前記第一端部と前記第二端部との間に配されることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、第一コアに巻回された給電コイルの全周及び第二コアに巻回された受電コイルの全周をシールド部材によって被覆することで、各コイル及び各コアの露出をなくし、給電装置の漏れ磁束を低減させることができる。また、シールド部材に係る第一端部と第二端部とが導通しないように絶縁体によって絶縁することで、給電時に導電体に生じる渦電流を抑制することができる。以上により、給電装置による電力の伝送効率を向上させることが可能となる。
【0013】
上記の給電装置は、前記第一コア又は前記第二コアを給電可能な位置に案内するためのガイド部を備えていてもよい。このガイド部によって、各コイル及び各コアを給電可能な位置に精度良く配することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給電装置の漏れ磁束を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図2のIII-III矢視線に係る断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV矢視線に係る断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る給電装置の磁界結合部を示す平面図である。
【
図7】
図6のVII-VII矢視線に係る断面図である。
【
図8】他の実施形態に係る給電装置の磁界結合部を示す平面図である。
【
図9】他の実施形態に係る給電装置の磁界結合部を示す平面図である。
【
図10】他の実施形態に係る給電装置の磁界結合部を示す平面図である。
【
図11】他の実施形態に係る給電装置の磁界結合部を示す平面図である。
【
図12】他の実施形態に係る給電装置の磁界結合部を示す平面図である。
【
図13】漏れインダクタンスの測定結果を示すグラフである。
【
図14】励磁インダクタンスの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図5は、本発明に係る給電装置の一実施形態を示す。本実施形態では、磁界結合型の給電装置を例示する。
【0017】
給電装置は、例えば電気自動車(EV)、自動搬送車(AGV)等の充電システムに利用することができる。これに限らず、給電装置は、他の電力供給システムに利用することが可能である。本実施形態では、一例として、給電装置が自動搬送車の充電システムに使用された場合について説明する。
【0018】
図1に示すように、給電装置1は、充電ステーションに備えられる一次回路としての給電部2と、自動搬送車に備えられる二次回路としての受電部3と、磁界結合によって給電部2から受電部3への電力の伝送を可能にする磁界結合部4と、を備える。
【0019】
給電部2は、例えば電源5及びスイッチング回路6を備える。スイッチング回路6は、例えば四個のスイッチング素子7a及びダイオード7bを含むHブリッジ回路と、キャパシタ7cとにより構成される。給電部2は、電源5により印加される直流電圧をスイッチング回路6によって方形波交流電圧に変換する。
【0020】
受電部3は、例えば整流回路8及び二次電池としてのバッテリ10を備える。整流回路8は、共振キャパシタ9aをそれぞれ並列に接続した四個のダイオード9bと、平滑キャパシタ9cとにより構成される。受電部3は、給電部2から伝送される交流電圧を整流回路8によって直流電圧に変換し、バッテリ10の充電を行う。
【0021】
図2乃至
図4に示すように、磁界結合部4は、給電部2に接続される給電コイル11と、給電コイル11が巻回される第一コア12と、受電部3に接続される受電コイル13と、受電コイル13が巻回される第二コア14と、漏れ磁束を抑制するためのシールド部材15a,15bと、を備える。
【0022】
給電コイル11及び受電コイル13は、絶縁電線により構成されており、所定の巻数で各コア12,14に巻回されている。
【0023】
第一コア12及び第二コア14は、例えばフェライト等の磁性体により構成される。各コア12,14は、平面視においてU字形状に構成されている。第一コア12は、一対の直線部16と、直線部16同士を繋ぐ連結部17とを有する。同様に、第二コア14は、一対の直線部18と、直線部18同士を繋ぐ連結部19とを有する。各コア12,14の各直線部16,18は、その突出端部に端面16a,18aを有する。
【0024】
図4に示すように、各コア12,14の断面は、矩形状に構成されているが、この形状に限定されるものではない。各コア12,14は、各々、矩形状の各辺に対応して、第一面12a,14a、第二面12b,14b、第三面12c,14c及び第四面12d,14dを有する。
【0025】
シールド部材15a,15bは、給電コイル11及び第一コア12を被覆する第一シールド部材15aと、受電コイル13及び第二コア14を被覆する第二シールド部材15bとを含む。
【0026】
図3及び
図4に示すように、各シールド部材15a,15bは、導電体20と、絶縁体21とを備える。導電体20は、例えば金属箔、金属シート等により構成される。導電体20に用いられる金属の例としては、アルミニウム、銅等が挙げられる。
【0027】
絶縁体21は、絶縁性の接着材を導電体20に塗布すること、あるいは絶縁性を有するポリウレタン等の樹脂シートや樹脂膜を導電体20に張り付けること等により、絶縁体21と一体に構成される。
【0028】
図5は、各コイル11,13及び各コア12,14に取り付けられる前のシールド部材15a,15bを示す。各シールド部材15a,15bの導電体20は、平面視において矩形状に構成されるが、この形状に限定されず、他の形状を有していてもよい。導電体20は、第一端部20aと、第二端部20bを有する。各端部20a,20bは、絶縁体21によって、その表裏両面及び端面が被覆されている。
【0029】
図4に示すように、各シールド部材15a,15bが各コア12,14に取り付けられた状態において、導電体20の第一端部20aと第二端部20bとは、互いに重なり合っている。この状態において、第一端部20aと第二端部20bは、その厚さ方向又は各コイル11,13の径方向において対向している。絶縁体21は、この対向する第一端部20aと第二端部20bの間に位置して両者を絶縁する。
【0030】
この状態において、給電コイル11は、その全周が第一シールド部材15aによって被覆されている。また、給電コイル11が巻回された第一コア12の第一面12a乃至第四面12dの全てが第一シールド部材15aによって被覆されている。受電コイル13は、その全周が第二シールド部材15bによって被覆されている。また、受電コイル13が巻回された第二コア14は、第一面14a乃至第四面14dの全てが第二シールド部材15bによって被覆されている。
【0031】
なお、第一コア12における直線部16の端面16aには、第一シールド部材15aが重ねられていない。また、第二コア14における直線部18の端面18aには、第二シールド部材15bが重ねられていない。
【0032】
バッテリ10の充電が必要となった場合、給電コイル11、第一コア12、受電コイル13及び第二コア14は、給電が可能となる位置(以下、「給電位置」という)に配される。
図2及び
図3は、給電位置に配された各コイル11,13及び各コア12,14を示している。
【0033】
給電位置において、第二コア14における直線部18の端面18aは、第一コア12における直線部16の端面16aと対向している。本実施形態において、第二コア14の端面18aは、第一コア12の端面16aと接触しているが、この構成に限定されない。給電が可能である限り、第二コア14の端面18aは、給電位置において第一コア12の端面16bから離間されてもよい。
【0034】
以上説明した本実施形態に係る給電装置1によれば、給電コイル11の全周及び受電コイル13の全周をシールド部材15a,15bによって被覆することで、給電コイル11及び受電コイル13の露出をなくすことができる。これにより、給電装置1の漏れ磁束を低減させることが可能となる。
【0035】
また、各コイル11,13により生じる磁界を、導電体20によって各コア12,14に向けて反射させることができる。さらに、シールド部材15a,15bに係る第一端部20aと第二端部20bとが導通しないように絶縁体21によって絶縁することで、給電時において導電体20に生じる渦電流を抑制することができる。これにより、磁界結合部4における結合係数を高めることができ、給電装置1による電力の伝送を効率良く行うことが可能となる。
【0036】
図6乃至
図12は、本発明に係る給電装置(磁界結合部)の他の実施形態を示す。
【0037】
図6及び
図7に示す例では、磁界結合部4のシールド部材15a~15cは、上記の第一シールド部材15a及び第二シールド部材15bの他、第一コア12における直線部16の一部と第二コア14における直線部18の一部とを被覆する第三シールド部材15cを含む。本例において、各コア12,14の直線部16,18は、連結部17,19側の一部が第一シールド部材15a及び第二シールド部材15bによって被覆され、端面16a,18a側の一部が第三シールド部材15cによって被覆される。
【0038】
第三シールド部材15cは、筒状又は管状に構成されており、第一コア12の直線部16の一部及び第二コア14の直線部18の一部を収容可能な空間を内側に有する。第三シールド部材15cは、第一コア12の直線部16を挿入可能な第一開口部22と、第二コア14の直線部18を挿入可能な第二開口部23とを有する。第三シールド部材15cは、第一開口部22に第一コア12の直線部16の一部が挿入された状態で、この第一コア12に固定されている。
【0039】
なお、各コア12,14の各直線部16,18において第三シールド部材15cに収容される部分には、各コイル11,13は巻回されていない。
【0040】
図6は、第二コア14が給電位置に配される直前の状態を示している。この状態から、第二コア14における直線部18の端部(端面18a)を第三シールド部材15cの第二開口部23に挿入することで、第三シールド部材15cは第二コア14を給電位置へと案内することができる。すなわち、第三シールド部材15cは、第二コア14を給電位置へと案内するガイド部としても機能する。さらに第三シールド部材15cは、第二コア14が給電位置へと配された後において、第一コア12の端面16aと第二コア14の端面18aとがずれることなく接触するように、各コア12,14の位置決めを行うことができる。
【0041】
図7に示すように、第三シールド部材15cは、第一シールド部材15a及び第二シールド部材15bと同様に、導電体20及び絶縁体21を備える。本例において、導電体20の第一端部20aと第二端部20bとは重なり合っていない。第一端部20aと第二端部20bは、絶縁体21を介して各コイル11,13の周方向において対向している。絶縁体21は、第一端部20aと第二端部20bとの間に位置し、両者を連結している。第三シールド部材15cは、この例に限らず、第一シールド部材15a及び第二シールド部材15bと同様に、第一端部20aと第二端部20bとが絶縁体21を介して重なり合う構造を有していてもよい。
【0042】
図8に示す例では、磁界結合部4の第二コア14における直線部18の端部に第三シールド部材15cが固定されている。第二コア14における直線部18の一部は、予め第三シールド部材15cの第二開口部23から挿入されている。この状態で、第三シールド部材15cは、第二コア14の直線部18に固定されている。
【0043】
受電コイル13及び第二コア14を給電位置まで移動させる際、第二コア14は第一コア12へと接近し、第三シールド部材15cの第二開口部23には、第一コア12における直線部16の端部が挿入される。その後、第二コア14は、その直線部18の端面18aが第一コア12における直線部16の端面16aに接触する給電位置まで、第三シールド部材15cに案内されつつ移動する。
【0044】
図9に示す例では、磁界結合部4における第三シールド部材15cの導電体20は、第一コア12の直線部16の一部及び第二コア14の直線部18の一部が挿入される第一の部分24と、第一の部分24と一体に構成される第二の部分25とを備える。
【0045】
第一の部分24は、
図6及び
図7に例示した第三シールド部材15cと同様に、第一開口部22及び第二開口部23を有する。第三シールド部材15cは、予め第一コア12における直線部16の一部を第一の部分24の第一開口部22から挿入した状態で、この直線部16に固定されている。
【0046】
第二の部分25は、第二コア14の直線部18を第一の部分24の第二開口部23に案内するガイド部として機能する。第二の部分25の内面25aは、第一の部分24に対して所定の角度で傾斜している。
【0047】
受電コイル13及び第二コア14を給電位置まで移動させる際、第二コア14の位置が所期の位置からずれていると、第二コア14における直線部18の一部は、第三シールド部材15cの第一の部分24に挿入される前に、まず第二の部分25の内面25aに接触する。
【0048】
その後、第二コア14の直線部18は、第二コア14の移動に伴って第二の部分25の内面25aと接触した状態で摺動し、第一の部分24の第二開口部23まで案内される。これにより、第二コア14の位置ずれを修正しながら、この第二コア14を給電位置まで正確に移動させることが可能となる。
【0049】
図10に示す例では、磁界結合部4における第三シールド部材15cの導電体20は、第一の部分24と、第二の部分25と、第三の部分26とを有する。第一の部分24の構成は、
図6及び
図7に示す第三シールド部材15cと同じである。
【0050】
第二の部分25は、第一の部分24の第一開口部22側に形成されている。第二の部分25は、第一コア12における直線部16の一部を被覆する第一シールド部材15aの外側に重ねられている。すなわち、第二の部分25は、第一シールド部材15aの一部を被覆する被覆部として機能する。第二の部分25は、第一シールド部材15aの一部に固定されている。
【0051】
第三の部分26は、第一の部分24の第二開口部23側に形成されている。第三の部分26は、第二コア14が給電位置に配された場合に、第二コア14における直線部18の一部を被覆する第二シールド部材15bの外側に重ねられる。すなわち、第三の部分26は、第二シールド部材15bの一部を被覆する被覆部として機能する。
【0052】
受電コイル13及び第二コア14を給電位置まで移動させる際、第二コア14における直線部18の端部は、第三シールド部材15cの内部に第三の部分26から挿入される。直線部18の端部は、第三の部分26の内面に接触することなく、この第三の部分26の内部を通過する。その後、この直線部18の端部は、第一の部分24の第二開口部23に挿入される。さらに、第二コア14の直線部18を被覆している第二シールド部材15bの一部が第三シールド部材15cに係る第三の部分26の内側に挿入される。
【0053】
第二コア14における直線部18の端面18aが、第一コア12における直線部16の端面16aと接触する給電位置まで移動すると、第二シールド部材15bの一部は、第三シールド部材15cの第三の部分26によって被覆された状態となる。
【0054】
図11に示す例では、磁界結合部4における二つの第三シールド部材15cのうち、一方の第三シールド部材15cが第一コア12に係る一対の直線部16の一方に予め固定され、他方の第三シールド部材15cが第二コア14に係る一対の直線部18の一方に予め固定されている。
【0055】
受電コイル13及び第二コア14を給電位置まで移動させる際、第二コア14を第一コア12に接近させると、第二コア14に設けられている第三シールド部材15cの第一開口部22に、対向する第一コア12における直線部16の端部が挿入される。また、第一コア12に設けられている第三シールド部材15cの第二開口部23に、対向する第二コア14における直線部18の端部が挿入される。第二コア14は、各第三シールド部材15cに案内されつつ、給電位置まで移動する。
【0056】
図12に示す例において、シールド部材15a~15dは、既述した第一シールド部材15a乃至第三シールド部材15cの他、第三シールド部材15cに係合する第四シールド部材15dを含む。第三シールド部材15cは、第一コア12の直線部16に予め固定されており、第四シールド部材15dは、第二コア14の直線部18に予め固定されている。
【0057】
第四シールド部材15dは、第二コア14の直線部18が挿入される第一開口部27と、第三シールド部材15cが挿入される第二開口部28とを有する。第四シールド部材15dは、第一開口部27に第二コア14の直線部18が挿入された状態で、この直線部18に固定されている。第二コア14の直線部18は、その一部が第四シールド部材15dの内側に収容されている。この状態において、第四シールド部材15dの内面は、第二コア14の第一面14a乃至第四面14dに接触せず、これらの面14a~14dから離間されている。すなわち、第四シールド部材15dの内面と、第二コア14の各面14a~14dとの間には、第三シールド部材15cの一部が挿入される隙間が形成されている。
【0058】
受電コイル13及び第二コア14を給電位置まで移動させる際、第二コア14を第一コア12に接近させると、第一コア12の直線部16に固定されている第三シールド部材15cが第四シールド部材15dの第二開口部28に挿入される。
【0059】
第二コア14が第一コア12に向かってさらに移動すると、第四シールド部材15dは、第三シールド部材15cの外面によって案内されつつ、第一コア12に接近する。これにより、第四シールド部材15dの内部に位置する第二コア14の直線部18は、第三シールド部材15cの第二開口部23に挿入される。その後、第二コア14は、その直線部18の端面18aが第一コア12の直線部16の端面16aと接触する給電位置まで移動する。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
上記の実施形態では、第一シールド部材15a乃至第四シールド部材15dが別々の部材により構成された例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、第三シールド部材15c又は第四シールド部材15dは、第一シールド部材15a又は第二シールド部材15bと一体に構成されてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、導電体20の各端部20a,20bのみを被覆する絶縁体21を例示したが、これに限らず、絶縁体21は、導電体20の全面(各端部20a,20b及び表面、裏面の全て)を被覆してもよい。
【0063】
上記実施形態では、第二コア14が第一コア12に向かって移動する構成を備えた給電装置1を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。給電装置1は、第一コア12が第二コア14に向かって移動するように構成されてもよく、第一コア12及び第二コア14の双方が移動可能に構成されてもよい。
【実施例0064】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0065】
本発明者らは、本発明の効果を確認するために、給電装置の電磁結合部における励磁インダクタンス及び漏れインダクタンスの測定を行った。好適な電力伝送を実現するには、電磁結合部における漏れインダクタンスを低減させ、かつ励磁インダクタンスが低減しないことが望ましい。
【0066】
図2で例示した給電装置における給電コイル、第一コア、受電コイル及び第二コアを、シールド部材としてのアルミニウム箔によって被覆したものを実施例とした。実施例では、アルミニウム箔の端部同士を重ね合わせ、この端部間に絶縁性の樹脂を配置した。また、各コイル及び各コアをシールド部材によって被覆していない給電装置を比較例1として用意した。さらに、各コイル及び各コアを被覆するアルミニウム箔の端部同士を重ね合わせ、絶縁体を介することなく、この端部同士を接触(導通)させた給電装置を比較例2とした。各例における給電コイルと受電コイルとの巻数比は、50:9である。
【0067】
測定結果を
図13及び
図14に示す。
図13は、漏れインダクタンスと周波数の関係を示し、
図14は、励磁インダクタンスと周波数の関係を示す。
【0068】
図13に示すように、例えば周波数10000~100000Hzの範囲における漏れインダクタンスを比較すると、実施例は、比較例1よりも漏れインダクタンスが小さいことが判る。一方、実施例は、比較例2と比較して漏れインダクタンスが大きい。
【0069】
また、
図14に示すように、励磁インダクタンスを比較すると、実施例の励磁インダクタンスは、比較例1の励磁インダクタンスと同程度であり、かつ比較例2の励磁インダクタンスよりも大きい。比較例2は、実施例よりも漏れインダクタンスが大きいものの、励磁インダクタンスか大幅に低下してしまうため、高効率の電力伝送に適していないことが判明した。
【0070】
以上によれば、実施例は、励磁インダクタンスを高く維持した状態で、漏れインダクタンスを低下させることが可能となった。