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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150906
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20220929BHJP
【FI】
G02B1/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053710
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 塁
(72)【発明者】
【氏名】緒方 啓介
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 泰佑
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA04
2K009BB28
2K009CC09
2K009CC24
2K009CC26
2K009CC47
2K009DD02
(57)【要約】
【課題】反射率が低く、耐擦傷性及び指紋拭き取り性が良好な反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材上に低屈折率層が設けられた反射防止フィルムであって、低屈折率層には、内部に空孔を持つ中空シリカ粒子が単層で配列され、低屈折率層の膜厚が80~120nmであり、中空シリカ粒子の直径が低屈折率層の膜厚の90~105%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に低屈折率層が設けられた反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層には、内部に空孔を持つ中空シリカ粒子が単層で配列され、
前記低屈折率層の膜厚が80~120nmであり、
前記中空シリカ粒子の直径が前記低屈折率層の膜厚の90~105%であることを特徴とする、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記中空シリカ粒子の含有量が、前記低屈折率層の塗膜固形分の20~45質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記低屈折率層が、
上記中空シリカ粒子と、
アクリロイル基もしくはメタアクリロイル基を分子中に3つ以上持つアクリル樹脂と、
下記一般式(1)で表されるパーフルオロ基を有するフッ素樹脂と、
下記一般式(2)で表されるレベリング剤と
を含有する組成物の硬化膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
一般式(1):R-(CF)k-R
一般式(2):
【化1】

ここで、R及びRは、アクリロイル基であり、R~Rは、Hまたはアクリロイル基であって、R~Rの少なくとも1つはアクリロイル基であり、Xは、FまたはCFであり、k、l、m、n、o、pは、整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基材の最表面に低屈折率層が設けられた反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置には、外光の反射を抑制するための反射防止フィルムが設けられる。反射防止フィルムは、透明基材または透明基材に積層された光学機能層上に、下地層より屈折率が低い低屈折率層を積層することにより構成される。反射防止フィルムの反射率は、低屈折率層の屈折率が下地層の屈折率の平方根に近付くほど低減することが知られており、低屈折率層の屈折率を低下させる試みが種々行われている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、低屈折率層内に中空微粒子を充填し、中空微粒子の内部の空洞により低屈折率層の低屈折率化を図った反射防止膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4378972号公報
【特許文献2】特許第5881096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低屈折率層の低屈折率化を図るために、特許文献1及び2に記載される中空微粒子の配合量を増やすと、耐擦傷性が悪化する。すなわち、中空微粒子を配合した低屈折率層においては、低屈折率層の屈折率の低減と耐擦傷性の向上とがトレードオフの関係となっている。また、上述したような反射防止フィルムは、画像表示装置の最表面に設けられる場合があるため、付着した使用者の指紋を容易に拭き取れることが望まれている。
【0006】
それ故に、本発明は、反射率が低く、耐擦傷性及び指紋拭き取り性が良好な反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明基材上に低屈折率層が設けられた反射防止フィルムに関するものであり、低屈折率層には、内部に空孔を持つ中空シリカ粒子が単層で配列され、低屈折率層の膜厚が80~120nmであり、中空シリカ粒子の直径が低屈折率層の膜厚の90~105%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射率が低く、耐擦傷性及び指紋拭き取り性が良好な反射防止フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における低屈折率層内の中空シリカ粒子の配列状態を示す模式図
図2】比較例における低屈折率層内の中空シリカ粒子の配列状態を示す模式図
図3】実施例1に係る反射防止フィルムの低屈折率層表面及び断面のSTEM写真
図4】比較例2に係る反射防止フィルムの低屈折率層表面及び断面のSTEM写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る反射防止フィルムは、透明基材と、透明基材の上層に積層される低屈折率層とを備える。
【0011】
<透明基材>
透明基材は、反射防止フィルムの基体となるフィルムであり、透明性及び可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明基材の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、トリアセチルセルロース、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。透明基材の厚みは、特に限定されないが、10~200μmとすることが好ましい。
【0012】
<低屈折率層>
図1は、実施形態における低屈折率層内の中空シリカ粒子の配列状態を示す模式図であり、図2は、比較例における低屈折率層内の中空シリカ粒子の配列状態を示す模式図である。図1及び2においては、低屈折率層のみを模式的に示し、低屈折率層の下地となる層や透明基材の記載を省略している。
【0013】
低屈折率層は、少なくとも、バインダーと中空シリカ粒子とを含有する。中空シリカ粒子は、内部に空孔を有する粒子であり、本実施形態では、図1に示すように、低屈折率層内において単層で(それぞれの粒子が低屈折率層の厚み方向に重ならない状態で)配列されている。低屈折率層内において、図2の比較例に示すように、中空シリカ粒子が低屈折率層の厚み方向に重なった状態で2層以上に配列された場合、低屈折率層表面の平坦性が損なわれることにより、耐擦傷性と指紋拭き取り性が悪化したり、低屈折率層に白化を生じたりする。本実施形態のように、低屈折率層内に中空シリカ粒子を単層で配置することにより、低屈折率層の低屈折率化を図りつつ、比較例に生じる上記課題を解決することができる。
【0014】
低屈折率層内に中空シリカ粒子を単層で配列する場合、低屈折率層の膜厚を80~120nmとし、中空シリカ粒子の直径を低屈折率層の膜厚の90~105%(すなわち、72~126nm)の範囲とする。下記表1に示す通り、低屈折率層内で中空シリカ粒子を単層で配列し、中空シリカ粒子の直径を上記範囲とすることにより、低屈折率層の屈折率を十分に低下させつつ、耐擦傷性と指紋拭き取り性を良好とすることができる。これに対し、中空シリカ粒子の直径が低屈折率層の膜厚の105%を超えると、中空シリカ粒子がバインダーによって十分に被覆されないため、耐擦傷性及び指紋拭き取り性が悪化する。また、中空シリカ粒子の直径が低屈折率層の膜厚の90%を下回ると、中空シリカ粒子が単層に配列する構造と、中空シリカ粒子が2層以上に積層して配列する構造とのいずれかになる。単層の配列構造では低屈折率層に占める中空シリカ粒子の割合が低下することにより、低屈折率層の低屈折率化が図れなくなる。一方、2層以上の配列構造では低屈折率層の表面凹凸が大きくなり、耐擦傷性や指紋拭取り性が悪化する。上記2つの配列構造のどちらになるかの制御は困難であり、いずれの配列構造でも低屈折率化、耐擦傷性・指紋拭取り性の向上の両立は不可能である。
【0015】
【表1】
【0016】
中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層の塗膜固形分の20~45質量%であることが好ましい。この範囲内でも、中空シリカ粒子の含有量が低屈折率層の塗膜固形分の45質量%を超えると、低屈折率層内で中空シリカ粒子が2層以上に配列されやすくなるため好ましくない。また、中空シリカ粒子の含有量が低屈折率層の塗膜固形分の20質量%を下回ると、低屈折率層に占める中空シリカ粒子の割合が低下することにより、低屈折率層の低屈折率化に不利となるため好ましくない。上記範囲内でも、中空シリカ粒子の含有量を、低屈折率層の塗膜固形分の35~40質量%とすると、低屈折率層の屈折率をより低減し、反射防止フィルムの反射率を小さくできるのでより好ましい。
【0017】
本実施形態に係る低屈折率層は、上述した中空シリカ粒子(A)と、アクリル樹脂(B)と、パーフルオロ基を有するフッ素樹脂と(C)、レベリング剤(D)とを含有する低屈折率層形成用組成物を透明基材または透明基材上に積層された他の光学機能層に塗布し、共重合により硬化させることにより形成することができる。尚、低屈折率層形成用組成物(塗工液)の塗工方法は特に限定されず、公知のウェットコーティング法を採用することができる。塗工液の塗膜を硬化させる方法としては、例えば、紫外線照射や電子線照射を利用することができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100~800mJ/cm程度である。
【0018】
アクリル樹脂(B)は、低屈折率層に強度を付与する成分である。アクリル樹脂(B)としては、アクリロイル基もしくはメタアクリロイル基を分子中に3つ以上持つものを使用する。
【0019】
アクリル樹脂(B)の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0020】
また、アクリル樹脂(B)として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0022】
低屈折率層形成用組成物中のアクリル樹脂(B)の配合量は、全固形分の10~60質量%とする。アクリル樹脂(B)の配合量が60質量%を超えると、低屈折率層の低屈折率化を図れなくなるため好ましくない。また、アクリル樹脂(B)の配合量が、10質量%を下回ると、低屈折率層の強度低下に繋がるため好ましくない。
【0023】
パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)は、低屈折率層の低屈折率化に寄与する成分である。パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)としては、下記一般式(1)で表されるものを使用する。パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)は、低屈折率層の低屈折率化に寄与すると共に、後述するレベリング剤(D)とアクリル樹脂(B)とを橋渡しする成分である。また、パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)は、後述するパーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)を使用する場合、アクリル樹脂(B)とパーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)とを橋渡しする役割も有する。
一般式(1):R-(CF-R
(R及びRは、アクリロイル基またはメタアクリロイル基であり、kは整数である。)
【0024】
パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)の配合量は、全固形分の10~70質量%とする。パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)の配合量が70質量%を超えると、樹脂同士の架橋密度が低下し、低屈折率層の強度低下に繋がるため好ましくない。また、パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)の配合量が、10質量%を下回ると、屈折率層の低屈折率化を図れなくなるため好ましくない。
【0025】
レベリング剤(D)は、塗膜形成過程で油滴状になって塗膜表面に配向し、塗膜表面からの溶剤の蒸発を均一化すると共に、表面張力変化を小さくすることによって表面を平滑化する機能を有する添加剤である。レベリング剤(D)としては、下記一般式(2)で表されるものを使用することができる。下記一般式(2)で表されるレベリング剤(D)は、パーフルオロエーテル基を有するフッ素化合物であり、塗膜表面に偏在した状態で他の成分と重合することにより、硬化膜表面に滑り性を付与し、耐擦傷性及び指紋拭き取り性を向上させる。また、下記一般式(2)で表されるレベリング剤(D)は、低屈折率層の低屈折率化にも寄与する。
【0026】
一般式(2):
【化1】
(R~Rは、Hまたはアクリロイル基またはメタアクリロイル基であって、R~Rの少なくとも1つはアクリロイル基またはメタアクリロイル基であり、Xは、FまたはCFであり、l、m、n、o、pは、整数である。)
【0027】
低屈折率層形成用組成物中のレベリング剤(D)の配合量は、全固形分の5~10質量%とする。レベリング剤(D)の配合量が10質量%を超えると、中空シリカ粒子、樹脂の配合量が低下するため、屈折率低減や機械強度向上が図れない。また、レベリング剤(D)の配合量が5質量%を下回ると、硬化膜表面に滑り性を十分に付与できなくなるとともに、塗膜の表面を十分に平滑化できない可能性があるため好ましくない。
【0028】
低屈折率層形成用組成物には更に、シランカップリング剤(E)及びパーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)の一方または両方を配合することが好ましい。
【0029】
シランカップリング剤(E)は、中空シリカ粒子(A)とアクリル樹脂(B)との橋渡しをする成分であり、シランカップリング剤(E)を配合することにより、機械強度を向上することができる。シランカップリング剤(E)としては、アクリロイル基もしくはメタアクリロイル基を分子中に1つ以上持つものを使用できる。低屈折率層形成用組成物中のシランカップリング剤(E)の配合量は、全固形分の10~30質量%とすることが好ましい。
【0030】
パーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)は、低屈折率層の低屈折率化に寄与すると共に、低屈折率層の硬化膜表面に滑り性を付与し、耐擦傷性及び指紋拭き取り性を向上させる成分である。パーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)を配合することにより、さらなる低屈折率化と機械強度向上を図ることができる。パーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)としては、下記一般式(3)で表されるものを使用できる。パーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)は、アクリル樹脂(B)との相溶性が悪いが、上述したパーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)を併用すると、パーフルオロ基を有するフッ素樹脂(C)を介して、パーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)とアクリル樹脂とを共重合させることができる。低屈折率層形成用組成物中のパーフルオロエーテル基を有するフッ素樹脂(F)の配合量は、全固形分の10~25質量%とすることが好ましい。
一般式(3):R-(CF-CFX-O)-(CF-O)-R
(R及びRは、アクリロイル基またはメタアクリロイル基であり、Xは、FまたはCFであり、q、rは、整数である。)
【0031】
低屈折率層形成用組成物には、光重合開始剤を添加しても良い。光重合開始剤の種類は特に限定されず、例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用して良い。
【0032】
また、低屈折率層形成用組成物には、必要に応じて溶剤を配合しても良い。また、その他の添加剤として、防汚剤、表面調製剤、屈折率調製剤、光増感剤、導電材料等を加えても良い。
【0033】
本実施形態に係る反射防止フィルムは、透明基材の表面に反射防止層として上記の低屈折率層が設けられたものであっても良いし、透明基材上にハードコート層や高屈折率層等の他の光学機能層を積層し、最表面に反射防止層として上記の低屈折率層が設けられたものであっても良い。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る反射防止フィルムにおいては、低屈折率層の膜厚の90~105%の範囲の直径を有する中空シリカ粒子を、低屈折率層中に単層で配列させたことにより、反射率が低く、耐擦傷性及び指紋拭き取り性が良好な反射防止フィルムを実現することができる。
【実施例0035】
以下、本発明に係る反射防止フィルムを具体的に実施した実施例を説明する。
【0036】
(実施例1~8、比較例1~3)
透明基材として、厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用した。透明基材の一方面に、東洋インキ製LiodurasLCH2000を塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量140mJ/cmで紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。尚、ハードコート層の膜厚は5μmになるようにした。上記ハードコートフィルム上に、下記の表2に示す組成の低屈折率層形成用組成物を塗布し、乾燥させた。紫外線照射装置を用いて照射線量160mJ/cmで紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。尚、低屈折率層形成用組成物の塗工量は、硬化後の膜厚が表2に示す水準になるよう調整した。
【0037】
表2に、各実施例及び各比較例に係る低屈折率層形成用組成物の組成と、低屈折率層の形態(膜厚、中空シリカ粒子の配列、低屈折率層の膜厚に対する中空シリカ粒子の直径の比率)と、低屈折率層の白化の有無、反射率、耐擦傷性、指紋拭き取り性の評価結果を併せて示す。
【0038】
【表2】
【0039】
各実施例及び各比較例に係る反射防止フィルムの特性の評価方法は以下の通りである。
【0040】
<白化の有無>
各実施例及び各比較例に係る反射防止フィルムの低屈折率層表面を目視で観察し、白化の有無を評価した。
【0041】
<反射率>
反射率は、日東電工製脱鉛タイプビニールテープ NO.21を反射防止フィルムの塗工裏面側に貼合後、分光光度計(U-4100、株式会社日立製作所)を用いて、表面側(低屈折率層側)から入射角5°で光を照射し、視感反射率(Y値)を測定した。
【0042】
<耐擦傷性>
耐擦傷性は、装置はテスター産業製AB-301、スチールウールはボンスター#0000を用い、500g/cmの荷重で10回往復で擦った後、キズの本数をカウントした。
【0043】
<指紋拭き取り性>
低屈折率層の表面の1cm×1cmの大きさの範囲に指紋を付着させた後、約1000g荷重の力でティッシュペーパーにて30回、指紋の拭き取りを行い、指紋の拭き取りやすさを、「◎:よく拭き取れる、○:拭き取れる、×:拭き取れない」の3段階で評価した。
【0044】
表2に示すように、実施例1~8に係る反射防止フィルムのそれぞれについて、中空シリカ粒子の配列状態を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察したところ、いずれの実施例においても、中空シリカ粒子が低屈折率層の厚み方向に重ならず単層に配列していた。この結果、低屈折率層に白化がなく、低屈折率層の低屈折率化により反射率を低下させることができ、かつ、耐擦傷性にも優れていた。
【0045】
また、実施例1、4~8のように、中空シリカ粒子が低屈折率層の塗膜固形分の35質量%以上配合されている場合、低屈折率層の屈折率を透明基材の屈折率の平方根に近づけることにより、反射率をより低減することができた。
【0046】
これに対して、比較例1に係る反射防止フィルムの低屈折率層を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察したところ、中空シリカ粒子が単層に配列されていたが、比較例1の反射防止フィルムにおいては、中空シリカ粒子の直径が低屈折率の膜厚の105%を超えたことにより、低屈折率層表面から中空シリカ粒子が飛び出し、低屈折率層の表面凹凸が大きくなったことで、低屈折率層に白化が認められ、耐擦傷性及び指紋拭き取り性の評価も低かった。
【0047】
また、比較例2に係る反射防止フィルムの低屈折率層を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察したところ、中空シリカ粒子が2層以上に積層した状態で配列されており、この結果、低屈折率層の表面凹凸が大きくなり、低屈折率層に白化が認められ、耐擦傷性及び指紋拭き取り性の評価も低かった。低屈折率層の塗膜固形成分に占める中空シリカ粒子が45質量%を超え、中空シリカ粒子が塗膜中に過剰に含有されることで、中空シリカ粒子が2層以上に積層した状態で配列されたと考えられる。
【0048】
比較例3に係る反射防止フィルムの低屈折率層を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察したところ、中空シリカ粒子が2層以上に積層した状態で配列されており、低屈折率層の表面凹凸が大きくなったことで、同じ反射率である実施例2と比較して、耐擦傷性と指紋拭取り性の評価が悪化した。中空シリカの直径が低屈折率の膜厚の90%を下回ったことにより、中空シリカ粒子が2層以上配列可能な部分が生じたことで、中空シリカ粒子が2層以上に積層した状態で配列されたと考えられる。
【0049】
図3は、実施例1に係る反射防止フィルムの低屈折率層表面及び断面のSTEM写真であり、図4は、比較例2に係る反射防止フィルムの低屈折率層表面及び断面のSTEM写真である。
【0050】
実施例2に係る反射防止フィルムにおいては、図3(b)から明らかなように、低屈折率層内において、中空シリカ粒子が重なり合わず単層に配列されている。これに対して、比較例2に係る反射防止フィルムにおいては、図4(a)及び(b)から分かるように、中空シリカ粒子が厚み方向に重なって2層以上に積層された部分が生じており、低屈折率層の表面の平坦性が損なわれていた。この結果、比較例2に係る反射防止フィルムでは、耐擦傷性及び指紋拭き取り性の評価が悪く、低屈折率層の白化に繋がったと考えられる。
【0051】
以上より、本発明によれば、透明基材または透明基材上の光学機能層上に、中空シリカ粒子を単層に配列した低屈折率層を設け、当該屈折率層の膜厚に対する中空シリカ粒子の直径を所定範囲とすることにより、低反射率、耐擦傷性及び指紋拭き取り性の全てが良好な反射防止フィルムを得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、画像表示装置等に使用される反射防止フィルムとして利用できる。
図1
図2
図3
図4