(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150907
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】耐火タイル及び保護用耐火タイルシステム
(51)【国際特許分類】
F22B 37/10 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F22B37/10 602B
F22B37/10 602D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053711
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古宮山 常夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 信宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅章
(57)【要約】
【課題】従来よりも耐久性の高い耐火タイルを実現する技術を提供する。
【解決手段】
耐火タイルは、2個の保護部と、2個の保護部間に設けられている固定部を備えている。2個の保護部は、隣り合う2個の被保護部材の各々の外周面の一部を囲うとともに、各外周面に沿って延伸方向に延びる形状を有している。また、固定部は、両保護部を連結しており、被保護部材に固定するための構造が設けられている。この耐火タイルでは。被保護部材に対向する面と反対側の面に、一方の保護部から固定部を経て他方の保護部に至る平面部が設けられている
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に延びる複数の被保護部材を保護するための耐火タイルであって、
隣り合う2個の前記被保護部材の各々の外周面の一部を囲うとともに、各外周面に沿って延伸方向に延びる形状を有する2個の保護部と、
前記2個の保護部間に設けられているとともに両保護部を連結しており、前記被保護部材に固定するための構造が設けられている固定部と、を備え、
前記被保護部材に対向する面と反対側の面に、一方の前記保護部から前記固定部を経て他方の前記保護部に至る平面部が設けられている耐火タイル。
【請求項2】
前記耐火タイルは、SiCを主体とし、さらにSiO2を含む材料で構成されている請求項1に記載の耐火タイル。
【請求項3】
前記耐火タイルの見掛気孔率が3%以上18%以下である請求項1または2に記載の耐火タイル。
【請求項4】
前記被保護部材に前記耐火タイルを固定するための構造が、前記被保護部材と前記耐火タイルを固定するための固定部材が挿入される挿入孔であり、
前記挿入孔が、前記延伸方向において前記固定部の両側に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の耐火タイル。
【請求項5】
平行に延びる複数の被保護部材を保護するための耐火タイルであって、
隣り合う2個の前記被保護部材の各々の外周面の一部を囲うとともに、各外周面に沿った形状を有する2個の保護部と、
前記2個の保護部間に設けられているとともに両保護部を連結しており、前記被保護部材に固定するための構造が設けられている固定部と、を備え、
前記被保護部材に前記耐火タイルを固定するための構造が、前記被保護部材と前記耐火タイルを固定するための固定部材が挿入される挿入孔であり、
前記挿入孔が、前記延伸方向において前記固定部の両側に設けられている、耐火タイル。
【請求項6】
前記固定部の前記延伸方向の一方の端面において、前記挿入孔が平坦面に設けられている、請求項5に記載の耐火タイル。
【請求項7】
前記挿入孔の形状が非円形である請求項5または6に記載の耐火タイル。
【請求項8】
平行に延びる2個の被保護部材と、
前記2個の被保護部材を連結している連結部と、
請求項1から7のいずれか一項に記載の耐火タイルと、を備え、
前記連結部と前記耐火タイルに設けられている前記固定部とが、前記被保護部材及び前記耐火タイルとは別体の固定部材によって固定されている、保護用耐火タイルシステム。
【請求項9】
前記被保護部材が水管である、請求項8に記載の保護用耐火タイルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、耐火タイルに関する技術を開示する。特に、平行に延びる複数の被保護部材を保護するための耐火タイルと、その耐火タイルを用いた保護用耐火タイルシステムに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、耐火タイルが開示されている。特許文献1の耐火タイルは、ボイラ付焼却炉の炉壁に配置される水管に取り付けられる。耐火タイルは、隣り合う2個の水管に対して取付けられ、水管を高温ガス(腐食性ガス)から保護する。特許文献1の耐火タイルは、耐火タイルの表面(炉内に露出する側の面)の形状が、水管の外面に沿ったアーチ状である。耐火タイルの表面形状をアーチ状にすることにより、耐火タイルの中央部分(隣り合う水管の間)の薄肉化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐火タイルの表面を水管の外面に沿ったアーチ状にすると、耐火タイルの中央部分に凹部が形成される。そのため、耐火タイルが膨張、収縮する際、耐火タイルの中央部に応力が集中し、中央部が損傷しやすくなる。すなわち、特許文献1の耐火タイルは、部分的な脆弱部を有しており、耐久性を向上させることが難しい。本明細書は、従来よりも耐久性の高い耐火タイルを実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する耐火タイルは、平行に延びる複数の被保護部材を保護することができる。この耐火タイルは、2個の保護部と、2個の保護部間に設けられている固定部を備えていてよい。2個の保護部は、隣り合う2個の被保護部材の各々の外周面の一部を囲うとともに、各外周面に沿って延伸方向に延びる形状を有していてよい。また、固定部は、両保護部を連結しており、被保護部材に固定するための構造が設けられていてよい。この耐火タイルでは、被保護部材に対向する面と反対側の面に、一方の保護部から固定部を経て他方の保護部に至る平面部が設けられていてよい。
【0006】
本明細書では、平行に延びる複数の被保護部材を保護することができる他の耐火タイルも開示する。この耐火タイルは、2個の保護部と、2個の保護部間に設けられている固定部を備えていてよい。2個の保護部は、隣り合う2個の被保護部材の各々の外周面の一部を囲うとともに、各外周面に沿って延伸方向に延びる形状を有していてよい。また、固定部は、両保護部を連結しており、被保護部材に固定するための構造が設けられていてよい。この耐火タイルでは。被保護部材に耐火タイルを固定するための構造が、被保護部材と耐火タイルを固定するための固定部材が挿入される挿入孔であり、その挿入孔が、延伸方向において固定部の両側に設けられていてよい。
【0007】
本明細書では、上述の耐火タイルを用いた保護用耐火タイルシステムについても開示する。この保護用耐火タイルシステムは、平行に延びる2個の被保護部材と、2個の被保護部材を連結している連結部と、上述した耐火タイルを備えていてよい。また、この保護用耐火タイルシステムでは、被保護部材を連結している連結部と耐火タイルに設けられている固定部が、被保護部材及び耐火タイルとは別体の固定部材によって固定されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図を示す。
【
図6】耐火タイルの取り付け手順を説明する図を示す。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で開示する耐火タイルは、平行に延びる複数の被保護部材を保護するために用いられる。すなわち、耐火タイルは、被保護部材を、外部の高温環境から保護するために用いられる。被保護部材として、例えば、筒状の配管が挙げられる。配管の形状は任意であり、三角形、四角形等の多角形、あるいは、円形であってよい。また、配管は、内部に配線等を配設したり、流体を通過させることができる。配管内に流体を通過させる場合、流体は、空気、ガス等の気体、水、溶媒等の液体であってよい。特に、本明細書で開示する耐火タイルは、配管内を水が流通する水管を保護するために好適に用いることができる。具体的には、耐火タイルは、炉壁内に水管が配設されるボイラ付焼却炉の炉壁として用いることができる。
【0010】
耐火タイルはセラミックス製であってよい。耐火タイルの材料として、例えば、SiC質、アルミナ質、ムライト質が挙げられる。特に、SiC質は熱伝導率が高く、耐火タイルの厚みを厚くした場合であっても、熱伝導が低下することを抑制することができる。また、熱伝導率が高い材料(SiC質)を用いることにより、耐火タイル内の温度ムラが抑制され、耐火タイルに局所的な応力(熱応力)が加わることを抑制することもできる。SiC質の一例として、SiCを主体(85質量%以上)とし、SiO2を微量(15質量%以下)に含む材料が挙げられる。このような材料は、耐酸化性が良好であり、耐火タイルの耐久性(寿命)を向上させることが可能であり、耐火タイルの交換頻度を減少させることができる。具体的には、SiC85質量%以上、SiO215質量%以下、見掛気孔率3%以上18%以下、かさ比重2.6以上2.9以下に調整することにより、350℃において10~60W/m・k程度の熱伝導率が得られる。また、この材料は、耐酸化試験における重量増加率を0.1%以下に抑制することができ、高い耐酸化性を得ることができる。
【0011】
ここで、耐酸化試験の試験条件を記す。まず、試料(耐火タイル)を、1050℃の水蒸気雰囲気で50時間加熱し、試料重量(W50)を測定する。その後、さらに、試料を1050℃の水蒸気雰囲気で25時間(合計加熱時間75時間)加熱し、試料重量(W75)を測定する。そして、下記式(1)より重量増加率ΔWを算出する。
式1:ΔW=(W75-W50)/W50×100
【0012】
耐火タイルの厚み(表裏面の幅)は、特に限定されないが、10mm以上25mm以下であってよい。耐火タイルの厚みが10mm以上であれば、耐火タイル自体の強度が確保され、高い耐久性を得ることができる。また、耐火タイルの厚みが25mm以下であれば、表裏面の温度差を小さくすることができ、耐火タイル内の温度ムラを抑制することができる。耐火タイルの厚みは、11mm以上であってよく、12mm以上であってよく、15mm以上であってよく、18mm以上であってよく、20mm以上であってもよい。また、耐火タイルの厚みは、20mm以下であってよく、18mm以下であってよく、15mm以下であってもよい。なお、耐火タイルの厚みとは、耐火タイルの表裏面の幅のうち、最も幅が小さい部分を意味する。
【0013】
上記したように、耐火タイルは、平行に延びる複数の被保護部材を保護するために用いられる。耐火タイルは、複数の被保護部材のうちの隣り合う2個の被保護部材の各々の外周面の一部を囲う2個の保護部と、2個の保護部間に設けられているとともに両保護部を連結している固定部を備えていてよい。保護部は、2個の被保護部材の各外周面に沿って延伸方向に延びる形状を有していてよい。すなわち、保護部の裏面(被保護部材に対向する面)は、被保護部材の外周面と同形状であってよい。例えば、被保護部材が円筒状の配管の場合、保護部の裏面は円弧状であってよい。一方、保護部の表面(被保護部材に対向する面と反対側の面)は、平坦であってよい。すなわち、被保護部材に対向する面と反対側の面に、一方の保護部から固定部を経て他方の保護部に至る平面部が設けられていてよい。保護部の表面が平坦であれば(上記平面部を設けることで)、保護部(耐火タイル)が熱膨張する際、局所的な応力集中を抑制することができる。また、保護部の表面が平坦であれば、保護部の表面に燃焼物等が付着することが抑制され、保護部のメンテナンスを容易にすることができる。
【0014】
保護部の裏面に、突出部が設けられていてよい。複数の突出部が、被保護部材の周方向に間隔をあけて設けられていてよい。また、複数の突出部が、被保護部材の延伸方向に間隔をあけて設けられていてもよい。保護部の裏面に突出部を設けることにより、耐火タイルを被保護部材に取り付けた際、耐火タイルと被保護部材の間に隙間を確保することができる。すなわち、耐火タイルを被保護部材に取り付けた際、耐火タイル(保護部)の裏面全体が被保護部材に接触することを抑制することができる。その結果、耐火タイルを被保護部材に固定する際、耐火タイルと被保護部材の間に、セメント等の接合材が介在する空間を確保することができる。
【0015】
固定部は、2個の保護部を連結しているとともに、被保護部材に固定部を固定するための構造(被保護部材に耐火タイルを固定するための構造)を有している。すなわち、固定部を被保護部材に固定することによって、耐火タイルが被保護部材に固定される。被保護部材に耐火タイルを固定するための構造として、固定部材を挿入するための挿入孔が挙げられる。固定部材は、固定部(耐火タイル)及び被保護部材と別体であってよい。固定部に挿入孔を設けることによって、2個の被保護部材の間に両者を連結する連結部を設け、連結部に貫通孔を有する取付部材を固定し、取付部材の貫通孔と固定部の挿入孔に固定部材を挿入することにより、被保護部材と耐火タイルを固定することができる。
【0016】
挿入孔は、上記した延伸方向において、固定部の両側に設けられていてよい。延伸方向の両側に設けられている挿入孔は、ともに底部を有する窪みであってよい。すなわち、延伸方向両側の挿入孔は、連通していなくてよい。被保護部材の延伸方向に複数の耐火タイル(例えば、第1耐火タイルと第2耐火タイル)を固定する場合、第1耐火タイルの延伸方向一端の挿入孔(第1挿入孔)と、第2耐火タイルの延伸方向他端の挿入孔(第2挿入孔)に、共通の固定部材が挿入されてよい。この場合、まず、第1耐火タイルの第1挿入孔と取付部材(被保護部材)の貫通孔に、第1挿入孔の深さより長い固定部材を挿入して第1耐火タイルと被保護部材を固定する。次に、第2耐火タイルの第2挿入孔を、第1挿入孔から突出している固定部材に嵌める。その後、第2耐火タイルの第1挿入孔(延伸方向一端の挿入孔)と取付部材の貫通孔に、第1挿入孔の深さより長い固定部材を挿入する。この作業を繰り返すことによって、被保護部材の延伸方向に複数の耐火タイルを固定することができる。なお、耐火タイルを被保護部材に固定する際、耐火タイルの裏面にセメント等の接合材を塗布してもよい。耐火タイルを被保護部材に強固に固定することができる。
【0017】
固定部の裏面形状は特に限定されないが、表面は平坦であってよい。この場合、2個の保護部のうちの一方の保護部から固定部を経て他方の保護部に至る範囲に平面部が設けられていてよい。すなわち、2個の保護部と固定部によって、1個の平面部が形成されていてよい。固定部は、保護部と別体であってよいし、一体であってもよい。すなわち、保護部と別体の固定部によって2個の保護部が連結されていてもよいし、固定部と保護部が一体成形品であってもよい。固定部と保護部が一体成形品である場合、両者の間に明確な境界は存在しない。そのため、固定部も、被保護部材を保護するための保護部としての機能を果たす。また、固定部の側面にも、突出部が設けられていてよい。耐火タイルと固定部の接触面積を小さくすることができる。なお、保護部の裏面、及び/又は、固定部の側面に突出部を設けることにより、耐火タイルを被保護部材に固定する際に、両者の間に隙間が確保される。耐火タイルを被保護部材に固定する際に接合材を使用する場合に、耐火タイルと被保護部材の間に接合材が存在するための十分な隙間を確保することができる。
【0018】
固定部の延伸方向長さは、保護部の延伸方向長さより短くてよい。例えば、上記した延伸方向において、固定部の一端面は保護部の一端面に対して窪んだ場所に位置し、固定部の他端面は保護部の他端面と同一面に位置していてよい。この場合、延伸方向の他端において、固定部の端面と保護部の端面によって平坦面が形成される。そのため、固定部の他端に設けられる挿入孔は、平坦面に設けられる。換言すると、固定部の他端の挿入孔は、耐火タイルの他端面に設けられる。
【0019】
なお、平坦面に設けられる挿入孔は、上述した例において、第2挿入孔であることが好ましい。上述したように、第2挿入孔は、他の耐火タイル(第1耐火タイル)の第1挿入孔から突出している固定部材に嵌める。そのため、第2挿入孔を固定部材に嵌める作業は、第1挿入孔に固定部材を挿入する作業と比較して、挿入孔と固定部材の位置合わせが難しい。第2挿入孔が平坦面(耐火タイルの延伸方向端面)に設けられていれば、固定部材を視認し易くなり、耐火タイルを被保護部材に固定する作業を容易にすることができる。また、固定部の延伸方向長さを保護部の延伸方向長さより短くすることにより、上述した第1耐火タイルの固定部の一端面と、第1耐火タイルの保護部と、第2耐火タイルの固定部の他端面によって、被保護部材の取付部材の周囲を囲うことができる。その結果、被保護部材の取付部材も高温環境から保護することができる。
【0020】
挿入孔の形状は、特に限定されないが、円形、あるいは、矩形等の非円形であってよい。円形の挿入孔は作製が容易であり、また、非円形の挿入孔は耐火タイルを被保護部材に固定する際、両者が相対回転することを防止することができる。
【実施例0021】
図1から
図3を参照し、耐火タイル10について説明する。
図1及び
図2に示すように、耐火タイル10は、Z方向に延びる被保護部材(
図4を参照して後述する水管構造体30)を保護する2個の保護部5と、2個の保護部5を連結している固定部12を備えている。固定部12は、2個の保護部5間に設けられている。保護部5と固定部12は一体成形されている。そのため、耐火タイル10には、保護部5が2箇所形成されており、保護部5,5間に固定部12が形成されていると捉えることもできる。耐火タイル10は、SiCを主体とし、さらにSiO
2を含む材料で形成されている。具体的には、耐火タイル10は、SiC89質量%、SiO
211質量%の材料で形成されている。また、耐火タイル10は、見掛気孔率が9%、かさ比重が2.75、厚み12mmに調整されている。
【0022】
保護部5の裏面8(水管構造体30と対向する面:+X方向の面)は円弧状であり、円弧が被保護部材の延伸方向(Z方向)に延びる形状を有している。また、保護部5の表面(水管30と対向する面と反対側の面:-X方向の面)は、固定部12の表面と共通面である。2個の保護部5の表面の一部と、固定部12の表面によって、平面が形成されている。すなわち、耐火タイル10の表面には、一方の保護部5から固定部12を経て他方の保護部5に至る平面部4が設けられている。また、耐火タイル10の裏面側(保護部5の裏面8及び固定部12の側面)に、複数の突出部16が設けられている。突出部16は、Z方向に間隔をあけて並んで形成されている。また、突出部16は、被保護部材の周方向(Y方向)にも間隔をあけて並んで形成されている(
図7を参照)。
【0023】
図3に示すように、固定部12のZ方向の両端面に、挿入孔14,22が設けられている。挿入孔14,22は、耐火タイル10を後述する水管30に固定するための構造である。各挿入孔14,22は、底部を有しており、互いに独立している。すなわち、挿入孔14と挿入孔22は連通していない。各挿入孔14,22の形状は矩形(非円形)である。また、各挿入孔14,22の側壁は傾斜しており、各挿入孔14,22のサイズは、底部から開口部に向けて大きくなっている。
【0024】
固定部12のZ方向の長さは、保護部5のZ方向の長さより短い。具体的には、固定部12の一方(+Z方向)の端面18は保護部5の一方の端面6に対して窪んだ位置(端面6よりも-Z側)に設けられている(
図2も参照)。それに対し、固定部12の他方(-Z方向)の端面20は保護部5の他方の端面2と同一面に位置している。端面2,20は、各々平坦である。そのため、端面2,20は一つの平坦面24を形成していると捉えることができ、挿入孔22は平坦面24に設けられていると捉えるとともできる。
【0025】
図4を参照し、水管構造体30について説明する。水管構造体30は、第1水管30aと、第1水管30aに対して平行に延びる第2水管30bと、第1水管30aと第2水管30bを連結している第1連結部32を備えている。第1連結部32は、水管30a,30bの双方に固定されている。水管30a,30bと第1連結部32は、1個のセットを構成しており、水管30a,30bと第1連結部32のセットに対して耐火タイル10が固定される。第1連結部32には、耐火タイル10を取り付けるための取付部材34が固定されている。取付部材34は、水管30a,30bの延伸方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0026】
各取付部材34に、貫通孔36が設けられている。貫通孔36の形状は矩形である。耐火タイル10は、貫通孔36を利用して、水管構造体30に固定される。すなわち、耐火タイル10は、水管構造体30の取付部材34が設けられている側に固定される。耐火タイル10は、各取付部材34の間に配置される。耐火タイル10を水管構造体30に固定すると、耐火タイル10が、水管30a,30bの外周面の一部(取付部材34が設けられている側の外周面)を囲う。なお、水管30a,30bには、第2連結部33も固定されている。第2連結部33は、別のセットの水管に固定されている。第2連結部33には、取付部材34は固定されていない。
【0027】
図5に、耐火タイル10と水管構造体30を固定する連結バー(固定部材)40を示す。連結バー40は、四角柱の板材であり、耐火タイル10及び水管構造体30とは別部品である。連結バー40を貫通孔36及び挿入孔14,22に挿入することにより、水管構造体30の第1連結部32と、耐火タイル10の固定部12が固定される。
【0028】
図6を参照し、水管構造体30に耐火タイル10を固定する手順を説明する。手順(a)は、第1連結部32に耐火タイル10aが取り付けられている状態を示している。図示は省略しているが、手順(a)の状態では、耐火タイル10aの平坦面24に設けられている挿入孔22と取付部材34の貫通孔36に連結バー40が挿入されている(
図3から
図5も参照)。一方、固定部12の端面18に設けられている貫通孔14には連結バー30は挿入されていない。そのため、手順(a)の状態では、水管構造体30に対する耐火タイル10aの固定作業は完了していない。
【0029】
手順(b)に示すように、耐火タイル10aを水管構造体30に固定するためには、貫通孔36と耐火タイル10aの挿入孔14に連結バー40を挿入する。これにより、耐火タイル10aは、延在方向の両端において、固定部12が取付部材34に固定される。その結果、耐火タイル10aは、水管構造体30に固定される。手順(b)は、連結バー40を貫通孔36と挿入孔14に挿入するだけである。そのため、連結バー40を、挿入孔14の深くまで容易に挿入することができる。その結果、耐火タイル10aを水管構造体30に確実に固定することができる。また、手順(b)に示すように、連結バー40の長さは挿入孔14の深さより長い。そのため、耐火タイル10aが水管構造体30に固定された後も、連結バー40は、耐火タイル10aの挿入孔14及び固定部材34の貫通孔36から突出している。
【0030】
次に、耐火タイル10bを水管構造体30に固定する。まず、手順(c)に示すように、耐火タイル10bの固定部12に設けられている挿入孔22を、連結バー40に嵌め込む。挿入孔22は、耐火タイル10bの平坦面24に設けられている。そのため、挿入孔22を連結バー40に嵌め込む際、挿入孔22と連結バー40の位置を容易に視認することができる。また、挿入孔22の側壁は傾斜している。そのため、耐火タイル10を第1連結部32に対して斜めにした状態で、連結バー40に挿入孔22を嵌めることができる。
【0031】
なお、固定部12の端面18は、保護部5の端面6に対して窪んだ位置に設けられている。換言すると、端面6は、端面18に対して突出している。そのため、耐火タイル10bを水管構造体30に取り付けると、固定部材34の周囲が、耐火タイル10aの端面18と、耐火タイル10aの保護部5と、耐火タイル10bの平坦面24に囲われる。
【0032】
次に、手順(d)に示すように、貫通孔36と耐火タイル10bの挿入孔14に連結バー40を挿入する。手順(d)は、実質的に手順(b)と同じ作業であり、手順(b)と同様の利点が得られる。これにより、耐火タイル10bは、水管構造体30に固定される。手順(b)から(d)の作業を繰り返すことにより、水管構造体30に複数の耐火タイル10が固定された保護用耐火タイルシステム100が完成する。なお、耐火タイル10を水管構造体30に固定する際、耐火タイル10の裏面にセメントを塗布した状態で耐火タイル10を水管構造体30に取り付ける。セメントは、耐火タイル10と水管構造体30を接合する接合材として機能する。なお、
図6では、図面の明瞭化のため、セメントの図示を省略している。セメントは、耐火タイル10と水管構造体30の隙間、及び耐火タイル10挿入孔14内(挿入孔14と連結バー40の隙間)に充填されている。
【0033】
図7を参照し、保護用耐火タイルシステム100の特徴について説明する。
図7に示すように、複数の突出部16が、耐火タイル10の裏面8に、水管30a,30bの周方向に間隔をあけて並んでいる。水管30a,30bの外周面は、突出部16に接触している。そのため、水管30a,30bと耐火タイル10の裏面の間に、適切な間隔が設けられる。耐火タイル10と水管構造体30の間に、セメントが充填される空間を確実に確保することができる。また、耐火タイル10と水管構造体30の相対的位置がずれることも抑制することができる。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。